ネットワーク犯罪における捜査上の問題点 : 捜索
・差押えを中心に
その他のタイトル The Issue of Investigation on the
Network‑crime: especially the Search and Seizure
著者 道谷 卓
雑誌名 關西大學法學論集
巻 50
号 6
ページ 1337‑1368
発行年 2001‑02‑28
URL http://hdl.handle.net/10112/00023580
ネットワーク犯罪における捜査上の問題点 らのアプローチはあまりなされてこなかった
しかし︑これまでネットワーク犯罪の研究 ネット上のわいせつ犯罪や不正アクセスなど
一
︑ は じ め に
一四
五
いる今日︑それに伴うインター
目 次
一︑
はじ
めに
二︑
ネッ
トワ
ーク
犯罪
にお
ける
捜索
・差
押え
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題点
三︑
改正
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努力
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規定
と捜
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問題
四︑
おわ
りに
我が国ではインターネットの急速な普及によりネットワーク社会が日々進展して
のネットワーク犯罪も連日のごとく発生し︑社会問題となっている︒
(1 )
については実体法からのアプローチに終始してきた感があり︑手続法か
(2 )
ように思う︒
ー捜索・差押えを中心に'││
道
谷
ネットワーク犯罪における捜査上の問題点
︵一
三三
七︶
卓
︵一
三三
八︶
ただ︑実務では︑すでに捜査当局が︑ネットワーク犯罪の捜査を行う際︑例えば︑プロバイダーを捜索する場合に
いきなりホストコンピュータの電源を落としてしまってデータを完全に消失してしまったり︑事件とは全く関係のな
(3 )
い情報が蔵置された記憶媒体を差し押さえたりというように︑多くの混乱が生じているのが実状である︒
また︑これまでに出されたネットワーク犯罪にかかる裁判例も︑実体法についての検討はなされているものの︑手
(4 )
続法上の論点にはほとんど触れられていない︒ことに︑平成十二年三月に出された
F
Lマスク事件の大阪地裁判決で
は︑捜査に当たった警察官の捜査方法に対して︑当該警察官への証人尋問をはじめとする証拠調べが一年近くも行わ
(5 )
れたにもかかわらず︑この点に関する問題を判決では全く示していないことが象徴するように︑裁判所もどちらかと
いえば︑実体法上の問題点の判断は示してきたが︑手続法上の問題点については︑手を付けてこなかったと判断せざ
そこで︑本稿ではネットワーク犯罪の捜査上の問題︑ことに捜索差押えに関する点を中心に︑問題点を指摘したい
と思
う︒
(1
)
主なものとして園田寿﹁サイバーボルノと刑法ー﹁物﹂を規制する刑法一七五条の限界﹂︵﹃法学セミナー五0
一 号 ﹄ ︶
四頁
以下
(‑
九九
六年
︶︑
山中
敬一
﹁イ
ンタ
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論文
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三巻
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頁以
下
るを得ない︒ 関
法 第 五
0巻第六号
一四
六
ネットワーク犯罪における捜査上の問題点
一四
七
︵一九九九年︶︑塩見淳﹁インターネットとわいせつ犯罪﹂︵﹃現代刑事法
(N
o8
)﹄︶三五頁以下(‑九九九年︶︑加藤俊幸
﹁不正アクセス﹂︵サイバーロー研究会編﹃サイバースペース法ーー新たな法的空間の出現とその衝撃﹄︱一三頁以下︵ニ0
0
年︶︑山口厚﹁プロバイダーの刑事責任﹂︵﹃法曹時報五二巻四号﹄︶一頁以下︵二000年︶など︑サイバーポルノ関0
係の論考を中心に実体法上の問題を扱った研究成果が数多く公表されている︒
(2
)
インターネットが普及する以前の︑コンピュータ犯罪についての手続法からの問題点を考察したものに︑新保佳宏﹁手続
法を
めぐ
る諸
問題
﹂︵
﹃犯
罪と
刑罰
第三
号﹄
︶一
0七頁以下(‑九八七年︶︑廣畑史朗﹁コンピュータ犯罪と検証﹂︵﹃警察学論
集四0巻︱一号﹄︶一頁以下(‑九八七年︶︑同﹁コンピュータ犯罪と鑑定﹂︵﹃警察学論集四0巻︱二号﹄︶二三頁以下︵一
九八七年︶︑同﹁コンピュータ犯罪と捜索・差押え﹂︵﹃警察学論集四一巻三号﹄︶六五頁以下(‑九八八年︶︑岩田研二郎
﹁捜査手続上の問題﹂︵日本弁護士連合会刑法改正対策委員会編﹃コンピュータ犯罪と現代刑法﹄︶一九一頁以下(‑九九〇
年︶︑的場純男﹁コンピュータ犯罪と捜査﹂︵﹃刑事訴訟法の争点︵新版︶﹄︶九四頁以下(‑九九一年︶などがある︒また︑
インターネットが普及するにつれて問題が生じてきたネットワーク犯罪に関しての手続法からのアプローチとしては︑指宿
信﹁インターネットを使った犯罪と刑事手続﹂︵﹃法律時報六九巻七号﹂︶一0頁以下(‑九九七年︶︑貴志浩平﹁ハイテク犯
罪と捜査手続﹂︵﹃捜査研究五六四号﹄︶一八頁以下(‑九九八年︶︑古田佑紀﹁コンピュータネットワーク上の捜査と第三者
の保護﹂︵﹃松尾浩也先生古希祝賀記念論文集下巻﹂︶一八五頁以下(‑九九八年︶︑長沼範良﹁ネットワーク犯罪への手続的
対応﹂︵﹃ジュリストー一四八号﹄︶ニ︱二頁以下(‑九九九年︶︑安冨潔﹃ハイテク犯罪と刑事手続﹄︵二0
0
0年
︶が
ある
︒
(3
)
筆者は一九九九年三月︱二日︑日本地域プロバイダー協会主催のシンポジウム﹁ネット犯罪と法律﹂で︑ネットワーク犯
罪の捜査とプロバイダーの関係について報告する機会を得たが︑その際︑捜査対象となったプロバイダーの多くが本文記載
のような被害にあっていることをプロバイダーの方々から直接うかがうことができた︒
(4)FLマスク事件については︑園田寿﹁
FL
MA
SK
(エ
フエ
ルマ
スク
︶リ
ンク
事件
﹂︵
﹃捜
査研
究ぬ
5 8 3
﹂
10
頁以下︵二
0 0
0年︶を参照︒また︑園田教授のホームページ﹁電脳世界の刑法学﹂︵アドレスニ
h tt p
: /, w ︑
3. sc an .o r. jp s/ on od a/ )
に判決文
の全文が掲載されている︒
(5
)
大阪地裁で開かれた
F
Lマスク事件の公判全二五回︵平成九年八月ニ︱日より平成︱二年三月一︱
10
日まで︶のうち︑第四
回か
ら第
一
0回公判の計七回が捜査を担当した大阪府警の警察官に対する証人尋問に費された︒筆者はこの公判の大部分を
︵一
三三
九︶
問題の所在
二
︑ ネ ッ ト ワ ー ク 犯 罪 に お け る 捜 索
・ 差 押 え の 問 題 点
︵一
三四
0)
傍聴したが︑この証人尋問で︑警察が捜査でインターネット上からダウンロードしたデータを保存した
M
Oや
被告
人の
正犯
者の契約するプロバイダーを捜索・差押えした際のサーバーのデータを保存した
M
O︑
押収
した
正犯
者の
パソ
コン
のハ
ード
ディスクのデータをコピーした
M
Oをはじめそれらのデジタル情報をパソコンの画面に表示しそれを写真撮影した紙媒体と
いった証拠物の入手経路とそれら証拠の管理などを中心に尋問がなされたが︑証人に立った警察官は弁護側からの反対尋問
で︑
証拠
の入
手や
証拠
管理
のず
さん
さを
さら
けだ
すこ
とと
なっ
てし
まっ
た︒
現行刑事訴訟法は第九九条一項で﹁裁判所は︑必要があるときは︑証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し
押えることができる﹂と差押えの規定を置いており︑これを第二二二条一項が捜査機関にも準用している︒また︑第
10
二条一項では﹁裁判所は︑必要があるときは︑被告人の身体︑物又は住居その他の場所に就き︑捜索をすること
ができる﹂という捜索の規定を置き︑これを第二二二条一項が捜査機関に準用している︒そして︑これらの規定から
一般的に︑﹁捜索﹂とは一定の場所︑物︑または人の身体について物または人の発見を目的として行われる強制処分︑
(6 )
﹁差押え﹂とは他人の占有を排除して物の占有を強制的に取得する処分であると定義されている︒
ここで︑捜索をした結果︑差押えの対象となる目的物はあくまでも﹁証拠物又は没収すべき物と思料するもの﹂で
ある︒ネットワーク社会が進展し︑それに伴って様々なネットワーク犯罪が発生している今日において︑それらの犯
罪の証拠が︑従来の証拠物と異なり可視性・可読性を備えていない電磁的記録︑
関 法 第 五 0巻 第 六 号
つまり﹁情報﹂である場合が大部分
を占めており︑このような情報そのものの捜査︑とりわけ捜索・差押えについては︑これまでの捜査手法でそれを行
一四
八
ネッ
トワ
ーク
犯罪
にお
ける
捜査
上の
問題
点
一四
九
えるのかが問題となってこよう︒つまり︑差押えにおける﹁証拠物又は没収すべき物と思料するもの﹂は﹁有体物﹂
(7 )
に限られるという解釈がこれまでの支配的な見解であり︑ネットワーク犯罪で問題となるコンピュータのハードディ
スクに蔵置された電磁的記録︑すなわち﹁情報﹂そのものは有体物ではないので︑差押えの対象にはならないとする
のが一般的な解釈となっているからである︒思うに︑現行法の差押えの規定が﹁物﹂の占有を強制的に取得する処分
であり有体物以外の﹁情報﹂を差押える規定にはなっていないことや︑現行法制定時には有体物以外の無体物を差押
えるということをおよそ想定していたとは考えられないことに鑑みれば︑差押えの対象となる目的物は有体物に限ら
れるとするのが相当であろう︒また︑対象が有体物に限られると解せば︑当然その帰結として有体物ではない﹁情
報﹂そのものは差押えの対象とはならないとするのが素直なとらえ方であるように思われる︒
ところが︑情報そのものは有体物でないため差押えの対象にならないとしても︑情報が蔵置されたコンピュータそ
のもの、当該情報が入ったフロッビー•CDー
ROM.Mo
(光磁気ディスク)といった記憶媒体、また、当該情報(9 )
をプリントアウトした紙︑これらは有体物であるため︑差押えの対象となる可能性が出てくるのである︒
それでは︑いかなる場合でも︑捜査機関は捜索差押令状で︑例示したような有体物ではない﹁情報﹂が︑何らかの
有体物に化体した物を差押えられるのであろうか︒この点につき︑ネットワーク社会が構築されつつある近年に出さ
れた学説は︑ネットワーク犯罪に係る捜査手続において当該情報を蔵置したコンピュータが被疑者自身の所有物であ
る場合と︑被疑者以外の所有物︵たとえば︑プロバイダーや勤務先のコンピュータなど︶
( 10 )
している場合が多い︒ である場合とに分けて考察
そこでまず︑以下これまでの研究成果にならって︑ネットワーク犯罪に係る捜査手続において当該情報を蔵置した
︵一
三四
一︶
摘することにする︒ コンピュータが被疑者自身の所有物である場合と︑被疑者以外の所有物である場合に分けて︑それぞれの問題点を指
(6
)
田宮裕﹃刑事訴訟法[新版]﹂ーO二貝二九九六年︶
(7
)
田宮・前掲書一0
二頁︑渡辺咲子﹃大コンメンタール刑事訴訟法第二巻﹂︵藤永幸治他編︶二四一頁(‑九九四年︶︑田
□
守一﹃基本法コンメンタール刑事訴訟法﹂︵高田卓爾編︶九四頁(‑九九三年︶︑小早川義則﹃新・判例コンメンタール刑
事訴訟法2﹂︵高田卓爾・鈴木茂嗣編︶三頁(‑九九五年︶など︒
(8
)
田宮・前掲書一0
二頁︑渡辺・前掲二四一頁︑白取祐司﹃刑事訴訟法﹂︱一五頁(‑九九九年︶︑田口守一﹃刑事訴訟法
[第
二版
]﹄
七六
頁︵
二 000
年︶︑井上正仁﹃捜査手段としての通信・会話の傍受﹄九二頁(‑九九七年︶︑古田・前掲論
文一九三頁など。これに対し、「情報」そのものも差押えの対象となるとする説に、安冨•前掲書一六四頁。安冨教授は、
﹁憲法三五条の﹁住居︑書類及び所持品﹂についての﹁侵入︑捜索及び押収を受けることのない権利﹂を保障しているが︑
この基本権保障規定はコモンロー以来の伝統を継受し︑アメリカ合衆国憲法第四修正において示されている個人のプライバ シーを保護するものと同様であると解すれば︑住居などに対する物理的な支配権や利用権といったものを保護しているので
はなく︑可視性・可読性のない無体情報も憲法第三五条の押収の対象となると解することができよう︒﹂︵同書・一六四頁︶
と︑刑事訴訟法の捜索・差押えの上位規定である憲法第三五条の母法たるアメリカ憲法の趣旨から﹁情報﹂そのものも差押
えの対象となることを肯定される︒
(9
) 田宮・前掲書一〇七頁では﹁コンピュータに入力されているデータ自体は有体物ではないので差押えの対象とならないこ とは記述のとおりであるが︑それが磁気ディスク等の電子記憶媒体の形になっていたり︑文書にプリントアウトされれば︑
差押えできる。」とされており、情報が有体物に化体した物を差押えることを肯定的にとらえている。また、長沼•前掲論
文ニ︱三頁も︑﹁電磁的記録の差押え﹂と言う表現を用いて︑情報が有体物に化体した物を差押えることを前提に記述を進めて
いる
︒
(10)
長沼•前掲論文ニ―三頁以下、安冨・前掲書一六三頁以下、古田・前掲論文一九一頁以下、貴志・前掲論文一八頁以下な
ど ︒ 関
法 第 五
0巻
第 六 号
一五
〇
︵一
三四
二︶
被疑者自身の所有するコンピュータに情報が蔵置されている場合
一 五
有体物ではない﹁情報﹂が何らかの有体物に化体した物を差押えることになった際︑当該情報が被疑者自身の所有
するコンピュータに蔵置されている場合について生じる問題点は︑インターネットの普及によるネットワーク犯罪が
( 11 )
顕在化する以前のコンピュータ犯罪に関する捜査の場合にすでに議論されていた︒その第一番目の問題点が﹁差押対
象物の特定﹂である︒すなわち︑これは従来の通常の有体物を差押える際の基準で︑﹁情報﹂が何らかの有体物に化
憲法第三五条は﹁捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ﹂ならないと規定し︑それを受け刑事訴
訟法第ニ︱九条一項は﹁捜索すべき場所﹂﹁差し押さえるべき物﹂の記載を要求している︒なかでも﹁情報﹂が何ら
かの有体物に化体した物を差押えるといった際に︑﹁差し押さえるべき物﹂についてはどの程度まで特定することが
必要かという問題が生ずるのである︒従来の判例は︑例示物件を掲げて記載した後﹁その他本件に関係ありと思料せ
られる一切の文書及び物件﹂︵いわゆる一般的︑包括的な記載︶と記載された令状を﹁明示として欠くるところはな
( 12 )
い﹂と判示し︵都教組事件︶︑包括的記載による差押えを認めており︑実務でもこのような記載で包括的な差押えが
行われているのが実状のようである︒学説も差押対象物を完全に特定して記載するよう求めることは︑捜査の初期段
( 13 )
階の流動性から捜査活動に不可能を強いる場合も考えられ︑ある程度の包括的記載を認める方向にある︒
通常の有体物に対する差押えではこのような包括的記載による差押えをある程度は認めざるをえないかもしれない
が︑﹁情報﹂が何らかの有体物に化体した物を差押えると言う場合︑話は違ってくるように思われる︒例えば︑被疑
ネッ
トワ
ーク
犯罪
にお
ける
捜査
上の
問題
点
体した物を差押える事が可能かという問題である︒ ー.差押対象物の特定 (2)
︵一
三四
三︶
︵一
三四
四︶
者自身の所有にかかるパソコンについてパソコンの機種等を特定せず単にパソコンと令状に記載した上で包括的記載
をなして︑犯罪情報がハードディスクの一部に蔵置されたパソコンを含めて捜索場所にあるすべてのパソコンを差押
さえた場合や︑被疑者所有のフロッピーやCD│ROM.Moなどの記憶媒体をどれかを特定せずに包括的記載をし
て捜索場所にあったすべての記憶媒体を差押えた場合︑このような包括的差押えを許容できるのだろうか︒
この点につき学説は︑被疑者自身の所有するコンピュータ等に情報が蔵置されている場合︑包括的記載による包括
( 14 )
的差押えを認める傾向にあるととらえることができる︒例えば︑安冨教授は﹁包括的な差押えがおよそ許されないと
までは言えないと考えるが︑ネットワーク化されている今日のコンピュータ・システムにおいて︑被処分者の業務に
対する重大な影響があることを考えると︑証拠保全の必要性という観点からはなるべく当該電磁的記録のコピーを作
( 15 )
成して︑それを差し押さえるという方策をとるべきであろう︒﹂と︑オリジナル情報の包含された記憶媒体のコピー
をとれば︑それらの包括的な差押えも許される可能性を残している︒また︑廣畑氏も︑すべての電磁的記録を差押え
( 16 )
るのも違法ではないとして︑包括的な差押えを許容している︒古田氏は︑電磁的記録の包括的差押えをした場合には
無関係な大量のデータが同時に差押えられると言う批判に対して︑それは文書の差押えでも生じる問題で︑電磁情報
に特有の問題ではないし︑電磁記録のコピーをとるようにすれば業務にも支障はきたさないとして︑包括的な差押え
( 17 )
を認める方向にある︒さらに︑長沼教授は︑後述する包括的な差押えを許容する方向にある最高裁決定の評釈として︑
包括的に差押えた電磁的記録について︑事後的な内容確認を速やかに実施し︑無関係な部分を返還する趣旨であれば
( 18 )
判旨は正当であるとして︑事後に無関係な部分を返還するのであれば包括的差押えも認める可能性を示唆している︒
そして︑判例もまた︑情報が包含されたフロッピーディスクなどを内容確認せずに包括的に差押えることができる
関 法 第 五 0巻 第 六 号
一五
ネッ
トワ
ーク
犯罪
にお
ける
捜査
上の
問題
点
とする方向にある︒まず︑大阪高裁は平成三年︱一月六日判決で︑有印私文書偽造・行使の被疑事実で発付された捜
索差押令状で現場にあったフロッピーディスクニ七一枚すべてが押収された事案で︑その場に存在するフロッピー
ディスクの一部に被疑事実に関する記載が含まれていると疑うに足りる合理的な理由があり︑かつ︑捜索差押の現場
で被疑事実と関連性がないものを選別することが容易でなく︑選別に長時間を費やす間に︑被押収側から罪証隠滅を
されるおそれがあるようなときは全部のフロッピーディスクを包括的に差押えることも許容されるとした︵なお︑そ
の後︑最終的に証拠能力を認められたフロッピーディスクはそのうちの六枚にすぎなかった︶︒さらに︑最高裁は平
( 2 0 )
成一
0年五月一日の決定で︑自動車登録ファイルに不実の記録をさせたという被疑事実で︑差し押さえるべき物を
﹁組織的犯行を明らかにするための磁気記録テープ︑光磁気ディスク︑
して発付された捜索差押令状で︑パソコン︑
た事案で︑差し押さえようとするディスクなどに被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められ︑現場で
内容を確認していたのでは記録された情報が損壊される危険性がある時は︑内容を確認せずに差し押さえることは許
されるとした︒ フロッピーディスク︑パソコン一式﹂などと
フロッピーディスク一0八枚などを差し押さえた処分の取消が求められ
それでは︑被疑者自身の所有するコンピュータ等に情報が蔵置されているような場合に︑学説や判例が許容する方
向にあるようにこれらの包括的な差押えを認めると言うことは妥当なのであろうか︒私はこのような場合の包括的な
差押えは認めるべきではないように思う︒確かに︑ネットワーク社会が構築される以前の単なるコンピュータ犯罪の
場合には︑パソコンのハードディスクやフロッピーディスクの中の情報は意図的に手を加えない限り情報はもとのま
まで保存され変化しないためこれまでの文書の差押えに類似しているともとらえられるので︑先に紹介した古田氏の
一 五 = ︱
︵一
三四
五︶
電磁的記録の包括的差押えをした場合に無関係な大量のデータが同時に差押えられると言う批判は文書の差押えでも
生じ電磁情報に特有の問題ではないとする指摘は一理あるが︑インターネットでつながれたネットワークの中にある
コンピュータでもそのような指摘は的を得ているとは思われないのである︒というのも︑ネットワーク社会の中にあ
る被疑者自身の所有するコンピュータに情報が蔵置されている場合︑その情報は被疑者個人の情報だけではなく︑被
疑者以外の他人の情報までもが包含され︑それらの情報はネットワークにつないでいる限り︑刻一刻と変化していき︑
情報の増加︑書き換え︑消去が可能なのだ︒しかも︑それは捜索差押令状を執行している時にも起こりうるのである︒
例えば︑最近普及しつつあるケープル回線で被疑者個人所有のパソコンが常時インターネット回線に接続されている
という場合︑令状執行中でも電子メールや
W e b
サイト上の情報が自動的にパソコンのハードディスク内にダウン
ロードされるといったことも当然あるだろう︒ネットワークの中にあれば被疑者所有のコンピュータと言えども︑イ
ンターネットを通じて世界の無数のコンピュータとつながっており︑それらのコンピュータと情報を共有しあってい
るといっても過言ではない︒従って︑被疑者所有のコンピュータ等の情報を包括的に差押えるということはネット
ワークの中にあるすべての情報を差し押さえることを認める可能性も出てくることになろう︒また︑電子メールに関
しては︑通信の秘密が十分に保障される必要があり︑ネットワーク社会の中にあるコンピュータについて︑被疑者所
有の場合に包括的な差押えを認めてしまうとこの通信の秘密を犯しかねないおそれがでてくるのではないだろうか︒
こうなってくると︑後で述べる被疑者以外の所有にかかるコンピュータに情報が蔵置されている場合と区別する必
要がどこまであるのかという疑問が生じてくる︒ところが︑被疑者所有の場合に包括的な差押えを認める傾向にある
( 21 )
学説も︑被疑者以外の所有にかかるコンピュータに情報が蔵置されている場合は後に詳しく検討するが︑包括的な差
関 法 第 五
0巻
第 六 号
一五
四
︵一
三四
六︶
ネッ
トワ
ーク
犯罪
にお
ける
捜査
上の
問題
点
一五
五
( 22 )
押えは被疑者所有の場合とは同列に論じるわけにはいかないとしているのである︒被疑者以外の所有にかかる場合に
は包括的な差押えを規制する方向にあるのであれば︑被疑者所有の場合にも包括的な差押えを規制することを考える
べき
であ
ろう
︒
被疑者自身の所有するコンピュータ等に犯罪情報が蔵置されている場合について︑これらの情報を包含するフロッ
ピーディスクなどの電磁的記録を差押えた場合︑そのままでは可視性・可読性を備えていないので︑それらの﹁情
報﹂に可視性・可読性を備えさせる必要が出てこよう︒この可視性・可読性を備えさせる一般的な方法は︑当該情報
をコンピュータのディスプレイの画面に呼び出すか︑プリンターでプリントアウトするという方法である︒刑事訴訟
法第一︱一条︵捜査機関については第二二二条で本条を準用している︶は捜索差押状の執行にあたって﹁必要な処
分﹂をすることができると定めており︑この﹁必要な処分﹂の例示として﹁錠をはずし︑封を開き︑その他必要な処
分をすることができる﹂と規定している︒例えば︑判例では未現像のフィルムを現像する場合を﹁必要な処分﹂とし
( 23 )
て許容している︒従って︑差押えたフロッピーディスクなどの電磁的記録を捜査機関が自己のコンピュータシステム
を用いて︑ディスプレイの画面に呼び出したり︑プリンターでプリントアウトして可視化・可読化させることはこの
( 24 )
﹁必要な処分﹂の範囲として認められよう︒
ただ︑このような押収物を捜査機関側の機器で可視化・可読化できるといっても︑包括的な差押えを行った上で︑
その後に可視化・可読化して犯罪情報を特定することまでをも﹁必要な処分﹂として認めることはできないであろう︒
前述の通り︑私は被疑者所有の場合における包括的な差押えは認めるべきではないと考えるので︑﹁必要な処分﹂と 2.必要な処分
︵一
三四
七︶
であ
る︒
一方︑別個の司法審査を必要とする説は︑被処分者
︵一
三四
八︶
して押収物を捜査機関側の機器で可視化・可読化できるのは︑令状で特定がなされた物でそれを差押えた場合︵例え
ば︑フロッピーディスクのラベルに犯罪情報をうかがわせる文言が記載されている場合など︶に限定されることにな
差押え後︑捜査機関が自己のコンピュータシステムを利用して可視化・可読化することが﹁必要な処分﹂として許
されるとしても︑実際には︑被処分者所有のコンピュータによって処理された電磁的記録は当該コンピュータ固有の
O
Sあるいは文書作成ソフトをはじめとする多様なソフトで情報が作成されている可能性があるので︑捜索差押えの
現場において︑被処分者所有のコンピュータを利用してディスプレイの画面に呼び出しプリンターでプリントアウト
するという犯罪情報の可視化・可読化を迫られる場合が多いのではないだろうか︒そこで︑こうした︑捜査機関によ
る被処分者のコンピュータを利用した犯罪情報の可視化・可読化が認められるのかということが問題となってくるの
この点について︑大部分の学説は︑捜査機関は被処分者のコンピュータを用いて犯罪情報をアウトプットすると
( 2 5 )
いった可視化・可読化を認めている︒ただ︑この場合︑学説はその法的根拠として︑刑事訴訟法第一︱一条一項の
﹁必要な処分﹂に含まれるとして肯定する距と﹁必要な処分﹂には含まれずに別個の司法審査を必要とする距にわか
れている︒﹁必要な処分﹂に含まれるとする説は︑捜査上必要なデータをプリンターでプリントアウトすることは関
( 28 )
係者に必要以上に迷惑をかけたり︑原状回復不能となるものではないので必要な処分の範囲にあると説明することに
代表されるように︑捜査機関が被処分者のコンピュータを用いて犯罪情報をアウトプットするといった可視化・可読
化は当然﹁必要な処分﹂の中に含まれると解しているのである︒ ろ
う︒
関 法 第 五
0巻
第 六 号
一五
六
ネッ
トワ
ーク
犯罪
にお
ける
捜査
上の
問題
点
一五
七
を﹁被疑者・被害者﹂とそれ以外の事件に無関係の﹁第三者﹂に分け︑第三者の場合は﹁必要な処分﹂を根拠にアウ
トプットすることはできず別個の司法審査を必要とするとし︑被疑者・被害者の場合︑原則は事前の司法審査を必要
( 29 )
とするが第三者ほど厳格ではなく︑場合によっては﹁必要な処分﹂としてアウトプットも可能であるとしている︒そ
( 30 )
して︑この場合の司法審査は検証令状の可能性を示唆している︒
捜査機関は情報が可視化・可読化できてこそ目的とする犯罪情報か否かが判明するのであって︑捜査機関による被
処分者のコンビュータを利用した犯罪情報の可視化・可読化が差押えの際の﹁必要な処分﹂に当然含まれるとしてこ
れを認めることは一定の合理性を持っているようには思う︒また︑別個の司法審査を要するとする考えも事件とは無
関係の第三者の保護を念頭に置き︑当該行為が﹁必要な処分﹂に含まれるとすると﹁捜査の公益性﹂を重視すること
になり妥当ではないとする説明も一理あるように思う︒ただ︑ここでの両説の議論はフロッピーディスクなどの記録
媒体に包含された情報を被処分者のコンピュータでアウトプットできるかという事例を念頭に置いているように思え
る︒記録媒体が対象ではなくコンピュータのハードディスク内に蔵置された情報そのものが対象となるような場合で
も両説のような基準をあてはめてよいかは疑問の残るところである︒ことにネットワークでつながれたコンピュータ
は︑前にも述べた通り︑インターネットを通じて世界の無数のコンピュータとつながっており︑それらのコンピュー
タと情報を共有しあっている状態にあり︑差押えの際の﹁必要な処分﹂としてハードディスク内に蔵置された情報を
アウトプットできるとすれば︑ネットワーク社会の中にあるあらゆる情報をアウトプットできることになってしまい
﹁必要な処分﹂の範囲が広がりすぎることになりはしないだろうか︒この﹁必要な処分﹂は捜査のためという公益上
( 31 )
の要請のもとには必要最小限の私権の制約もやむを得ないという趣旨に基づくものであり︑﹁必要な処分﹂なら何で
︵一
三四
九︶
( 1 1 )
被疑者に対して任意での協力を求めるしかないであろう︒ あっては自己と第三者を区別する必然性がどこまであるのか疑問である︒
︵一
三五
0)
もできるわけではないのである︒第一二者の場合には別の司法審査を要するという考えも︑ネットワーク社会の中に
結局︑ネットワーク社会の中にない単独のコンピュータシステムの場合︑記録媒体に包含される情報を被処分者の
コンピュータでアウトプットすることについては︑それが必要最小限の私権の制約にとどまるのであれば﹁必要な処
分﹂として許されると解してもよいであろう︒しかし︑ネットワーク社会の中にあるコンピュータについてはハード
ディスク内に蔵置された情報を可視化・可読化することについては︑捜索差押令状とは別に︑新たな司法審査を求め︑
差押えによるというよりむしろ当該コンピュータそのものに対する検証令状で行うとするほうが適しているように思
ところで︑押収したデジタル情報が包含されているフロッピーディスクなどの記録媒体を捜査機関のコンピュータ
を用いてアウトプットすることは先に述べたように﹁必要な処分﹂の範囲内であると思われるが︑被疑者がパスワー
ドなどを設定していて容易にはデータを開示できないときなどは︑被疑者にパスワードを知らせるために何らかの強
制手段を用いることは﹁必要な処分﹂の中に含まれるであろうか︒この場合の﹁必要な処分﹂とは︑錠を破壊すると
いった物の損壊も予定していると考えられるが︑それでも︑被疑者への物理的有形力の行使や内心を侵害するような
( 3 2 )
処分までは認められないと思われる︒従って︑錠を破壊することと同様な行為である捜査機関が独自にパスワードの
( 33 )
解読作業を行ってデータを開示することを行うようつとめるか︑さもなければこのような場合は捜査機関はあくまで︑
前掲
・注
(2
のインターネットが普及する以前のコンピュータ犯罪についての手続法からの問題点を考察した文献を参照︒) 二 つ
゜
関 法 第 五
0巻
第 六 号
一五
八
ネットワーク犯罪における捜杏上の問題点
一五
九
( 1 2 )
最大決昭和三三年七月二九日︑刑集︱二巻︱二号二七七六頁︒
( 1 3 )
田宮・前掲書一0
四頁
など
︒
(14)
廣畑•前掲「コンピュータ犯罪と捜索・差押え」七三頁、長沼・前掲論文ニ―三頁、貴志•前掲論文一八頁、古田・前掲
論文一九二頁以下、安冨•前掲書一六七頁など。(15)安冨•前掲書一六七頁。(16)
廣畑•前掲「コンピュータ犯罪と捜索・差押え」七三頁。
( 1 7 )
古田・前掲論文一九三頁︒(18)長沼•前掲論文ニ―三頁。
( 1 9 )
大阪裔判平成三年︱一月六日・判例タイムズ七九六号二六四頁︒この判決については小津博司﹁令状による差押え(2)
フロッピーディスクの差押え﹂︵﹃刑事訴訟法判例百選[第七版U
︶五四頁以下二九九八年︶など
o
( 2 0 )
最決
平成
一
0年五月一日・刑集五二巻四号二七五頁︒この決定については川出敏裕﹁フロッピーディスク等の内容を確認
せずに差し押さえることの可否﹂︵﹃平成一0年度重要判例解説﹄︶一八一頁以下(‑九九九年︶など︒
( 2 1 )
前掲・注
( 1 4 )
参照
︒
( 2 2 )
例えば︑長沼・前掲論文ニ︱四頁︒
( 2 3 )
東京高判昭和四五年一0月︱二日・高刑集二三巻四号七四九頁以下︒
(24)白取•前掲書―一六頁、古田・前掲論文一九三頁、貴志•前掲論文一九頁。
(25)
白取•前掲書―一六頁で、白取教授は、このような差押えの現場で被処分者のコンピュータを利用してディスプレイに呼
び出し︑プリントアウトする必要がある場合に︑操作を被処分者などに協力を得る必要も生じてくることから︑第一︱一条 の﹁必要な処分﹂として行うには無理があり︑関係者の任意の協力をえるしかないと考えられ︑強制処分として捜査機関が被処分者のコンビュータを用いて犯罪情報をアウトプットすることを否定的にとらえておられる︒(26)安冨•前掲書一七六頁、田宮・前掲書一0
八頁、田口•前掲書七五頁、的場・前掲論文九五頁、渡辺•前掲三六二頁、長
沼•前掲論文ニ―三頁、廣畑・前掲「コンピュータ犯罪と捜索・差押え」七一頁、小川新二「磁気のディスクと捜索差押え」(平野•松尾編『新実例刑事訴訟法I』)二五九頁(-九九八年)。
︵ニ
ニ五
一︶
(3)
(27)新保•前掲論文――一頁、及び同『コンピュータ犯罪に関する刑法一部改正
一 頁 ︒
(28)
廣畑•前掲「コンピュータ犯罪と捜索·差押え」七一頁。( 2 9 )
新保﹃コンピュータ犯罪に関する刑法一部改正︵注釈)[改訂増補版ご
(30)
新保•前掲論文―――頁。(31)安冨•前掲書一七四頁。(32)
安冨•前掲書一七六頁、白取・前掲書――六頁。(33)
貴志・前掲論文二0頁。長沼•前掲論文ニ―三頁。一五
一頁
以下
︒ 被疑者以外の所有にかかるコンピュータに情報が蔵置されている場合
︵ 注釈 ︶
︵ ︱ ‑ ︱
‑ 五 二 ︶
[改
訂増
補版
]﹄
︵中
山研
一編
︶ これまで検討してきたように︑ネットワーク犯罪に係る捜査手続において当該情報を蔵置したコンピュータが被疑
者自身の所有物である場合には包括的記載による包括的差押えを認める傾向にある近年の学説も︑当該情報を蔵置し たコンビュータが被疑者以外の所有物︵たとえば︑プロバイダーのサーバーや勤務先のホストコンピュータなど︶
( 34 )
ある場合には︑被疑者自身の所有するコンピュータにおける場合とは同列に論じられないとしているのである︒
インターネット上のホームページに掲載されたわいせつ情報に関する犯罪や不正アクセスといった犯罪については︑
犯罪を立証するための証拠を収集する過程において︑被疑者所有のコンピュータを捜査する以外に︑被疑者の契約す るプロバイダーのサーバーに︑蔵置されている被疑者作成の犯罪情報や︑プロバイダーの通信記録︵ログ︶などを捜 査する必要が生じてこよう︒さらにそれらの犯罪が被疑者所有のコンピュータで行われたのではなく︑勤務先等のコ ンピュータで行われた場合には︑それらのホストコンピュータや端末のコンピュータなども捜査する可能性が出てこ
関 法 第 五
0巻第六号
一六
〇
で
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