企業と市場に係る刑事法制の研究グループは,2004 年3月以降,企業法制において刑事法制の 果たす役割とその限界を明らかにすることを目的として研究会を開催してきている。
企業社会のあり方にとって,紛争処理に関する多様な制裁手段の研究は,企業に関する法シス テムの構築にとって中核的問題の一つである。しかし,これまでの企業紛争に関する研究は,刑 事法上の問題にしても,民事法上の問題にしても,ともすれば当該専門分野の領域内に限定され,
また大学研究者のみによる研究が多かったように思われる。いうまでもなく,企業犯罪に関する 法システムの構築という大きな問題を研究するについては,このような狭い領域での閉鎖的な研 究では限界がある。
そこで,本グループの研究では,学際的・国際的な研究をめざすとともに,単に大学研究者の みではなく,関係官庁に所属する実務家あるいは企業法務を担っている企業実務家との共同研究 をも含めて,より総合的な研究を進めて行きたいと考えている。今後,企業犯罪に関する実態調 査や統計資料の分析などを進め,シンポジウムの開催などを企画する予定でいるが,今回は,こ れまでの研究会の成果として刑事法に関する3本の論文を特集することとした。
大学研究者からは,早稲田大学法学部の曽根威彦教授の論文(「政・官・業の癒着をめぐる構造 汚職―入札談合における汚職事件を中心として」)は,刑事実体法の視点から幅広い問題提起を なし,法務省刑事局の高
]
秀雄氏の論文(「企業犯罪に関する刑事法制の問題について」)は,刑 事立法の視点からの問題点を概観し,また,内閣府経済社会総合研究所の白石賢氏の論文(「米国のwhite collar crime・企業犯罪の動向」)は,実務家の視点からアメリカ法の動向を伝えるもの
で,いずれも今後の研究の基礎となる貴重な論文である。
なお,研究会では,早稲田大学法学部の野村稔教授の研究報告(「独占禁止法改正の問題点につ いて」)も行われたが,同報告の趣旨はすでに他の雑誌に掲載済みであるので本特集での掲載は割 愛したことを付言しておく(野村稔「経済刑法の観点からみた独占禁止法改正問題―犯則調査 権限の導入・罰則規定の見直しを中心として」現代刑事法第6巻第6号 58 頁以下参照)。
―
148
―* 刑事法制研究企画代表者,早稲田大学法学部教授