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―友人ストレッサーと学業ストレッサーに着目して―

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(1)

問題と目的

思春期・青年期は心身ともに成長が著しく、 自分自身の様々 な変化や周りの環境に非常に敏感になる時期である。 学校で 過ごす時間が一日の大半を占めるこの時期は特に、 学校での 様々な出来事が児童生徒の心身の健康に大きな影響力を与え ていると考えられている。 岡安・嶋田・丹羽・森・矢冨 (1992)は学校環境において受けるストレッサーのことを学校 ストレッサーと命名した。 学校ストレッサーとは、 児童生徒 が学校生活を送る上で意識的または無意識的に受けているス トレッサーのことで、 教師や友人との対人関係から受けるス トレッサー、 先輩・後輩の人間関係の問題や練習の厳しさな ど部活動で受けるストレッサー、 授業中や進路選択・決定な ど学業に関するストレッサー、 規則に関するストレッサーな どがあげられている。 また、 入学や転校、 運動会や遠足など 学校生活を送る上で特定の時期にのみ受けるストレッサーも ある。

以上のように、 学校ストレッサーには様々な種類があるこ とが報告されているが、 中でも友人関係におけるストレッサー の占める割合は大きい(岡安ら,1992)。 例えば、 不登校の原因 の一つとして、 対人関係能力の乏しさ、 つまり友人ストレッ サー耐性や対処能力の低さが共通して認められている(高山, 1993)。 また、 学業に関するストレッサーが心身の健康に及 ぼす影響も大きいとされている(神藤,1998)。 特に小学校から 中学校への進学は、 英語科などの新しい科目への対応や進路 選択・進路決定等の学業に関するストレッサーが増える時期 であり、 学業ストレッサーに対する介入の必要性が提唱され ている(岡安ら,1992)。

三浦・坂野(1996)によると、 これらの学校ストレッサーや ストレッサー認知の違いによってストレス反応の表出の程度 や様相に違いが見られることが明らかになっている。 岡安ら (1992)はストレッサーを受けたことによる心身の反応形態と して 不機嫌・怒り感情 身体的反応 抑うつ・不安感情

無力的認知・思考 を挙げている。 また、 個人の特性や性 差、 ストレッサーを受けた時期、 以前にストレッサーを受け た経験やその頻度、 ストレスへの嫌悪性・影響性・コントロー ル可能性などの認知的評価、 コーピングの方法の違いにより、

ストレス反応の形態や様相は異なるとされている(加藤, 2001;三浦ら,1996)。

Lazarus&Folkman(1984)のストレス理論では、 個人の心 理的ストレス過程において 「先行条件→認知的評価→コーピ ング→精神的健康」 という一連の流れを想定している。 個人 が何らかのストレスフルなイベントを経験したとき、 どのよ うな対処が可能かという認知的評価がなされる。 そしてその 認知的評価に基づきコーピングが行なわれ、 その結果ストレッ サーが個人の精神的健康に影響を及ぼす。 この認知的評価と コーピングはストレッサーと精神的健康との媒介過程とされ、

先行しているストレッサーに影響を受けるとされている。 こ のように心理的ストレス研究の領域では、 ストレス反応の表 出はストレッサーに対する認知的評価と対処行動、 すなわち コーピングとの関連が重要な指標になっている。

小学校から中学校への転換期、 または人生においての重要 な時期となる青年前期のストレス問題の解決を目的とすると き、 学校生活におけるストレッサーへの長期的な介入や度重 なるストレス事態に対して適切に対処できる体制を整えるこ とが重要である。 そして多くのストレッサーを常日頃から受 けている児童生徒に対しては、 ストレッサーの内容を明確に し、 ストレッサーに対する適切なコーピングのしかたを指導 することが必要である(三浦ら,1996;三浦・嶋田・坂野,1997)。

このような観点からもストレッサーへの認知的・行動的な変 数や、 ストレス反応との関連性、 ストレス反応に至る経路を 明確にする必要があるとされ、 多くの先行研究において様々 な検討がなされてきた。 しかし、 先行研究においては、 認知 的側面やストレス反応との関連に留まり、 コーピングの有効 性について細かく検討したものは少ない。 ストレスマネジメ ント教育にコーピングを生かしていくためにも、 コーピング の活用頻度や有効性を検討することは必要であると考える。

よって本研究では、 様々なストレッサーを体験しやすいと 考えられる中学生を被験者とし、 学業活動と友人関係の2つ のストレッサーを取り上げる。 そして、 先行研究で用いられ てきた線形回帰とパス解析によるストレス発症経路を新たな モデルによって検証していくことを通して、 2つのストレス 場面に活用されているコーピングスタイルとその有効性を検 討することを目的とする。 さらに、 近年注目されているスト

― 19 ― 富山大学教育学部研究論集 №7:−(2004)

―友人ストレッサーと学業ストレッサーに着目して―

松崎多千代・小林 真

School Stressors and Effects of Stress Coping Strategies in Junior High School Students:

Focused on Stressors in Relationship among Friends and Stressors in Study

Tachiyo MATSUZAKI and Makoto KOBAYASHI

(2)

レスマネジメント教育に生かせる有効なコーピング方略につ いて考察していく。

方 法

調査時期 平成14年12月上旬

対象者 富山県内の公立中学校の生徒1年生〜3年生272名の うち、 有効回答者220名(1年男子30名、 女子25名、 2年男子 38名、 女子44名、 3年男子46名、 女子37名)を分析対象とし た(有効回答率=80.8%)。

手続き 友人ストレッサーに関する質問紙を実施した群(以 下、 友人ストレッサー群とする)、 学業に関する質問紙を実 施した群(以下、 学業ストレッサー群とする)の2群に分けて、

クラスごとの一斉法により無記名による質問紙調査を実施し た。 項目数が多くならないようにストレッサーごとに2種類

の質問紙を作成し、 クラスごとに任意に分割し調査を実施し た。 各質問紙の対象生徒の打ち分けは以下の通りである。

①友人ストレッサー群 1年生〜3年生 計136名

(1年生男子15名・女子12名、 2年生男子26名・女子27名、 3 年生男子30名・女子26名)

②学業ストレッサー群 1年生〜3年生 計84名

(1年生男子15名・女子13名、 2年生男子12名・女子17名、 3 年生男子16名・女子11名)

調査材料 ①岡安ら(1992)によって作成された学校ストレッ サー尺度の一部を用いた。 本研究では、 「友人関係(誰かにい じめられた、 友だちから暴力をふるわれたなど計8項目)」

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Table.1 友人ストレッサー群の探索的因子分析結果

(3)

が悪かったなど計8項目)」 の2因子計16項目を用いた。 今 回の分析においては、 ストレスを受けた経験頻度(全然なかっ た1〜よくあった4)を用いた。 ②コーピング尺度:三浦・坂 野(1996)によって作成された中学生用コーピング尺度を用い た。 各項目について4件法(全くしなかった1〜よくした4) で回答を求めた。 ③ストレス反応尺度:抑うつ・不安・ストレ ス症状を問うMINI-27の27項目と、 NHK世論調査部(1991)を 参考に中学生に分かりやすいように書き換えた身体の症状7 項目(吐き気、 胃痛、 肩こり、 めまい、 頭痛、 下痢、 息苦し さ)を採用した。

結 果

コーピングの種類の検討

まず、 友人ストレッサー群のコーピング方略について主成 分分析(Varimax回転)を行い、 負荷量の絶対値0.4以上のも のを採用した。 その結果5つの因子(計21項目)が得られ、 第 1因子から 「サポート希求」 「問題解決的対処」 「あきらめ」

「気分の改善」 「思考の肯定的転換」 と命名した。 三浦・坂野 (1996)では 「積極的対処」 としてまとまっていた項目が、 本 研究では 「問題解決的対処」 と 「気分の改善」 の2因子に分 かれた(Table1)。

中学生の学校ストレッサーとストレスコーピングの有効性

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Table.2 学業ストレッサー群のコーピング探索的因子分析結果

(4)

同様に、 学業ストレッサー群について分析した結果、 6つ の因子(計23項目)が得られ、 第1因子から 「サポート希求」

「情報収集と励まし」 「思考の肯定的転換」 「問題解決的対処」

「あきらめ」 「気分の改善」 と命名した(Table2)。

ストレッサーとコーピング、 ストレス反応の関係

ストレッサー、 コーピング、 ストレス反応の関係について 調べるために、 Lazarusのストレス発症経路(Lazarus,R.S.,

&Folkman,S.,1984)に基づいて 「ストレッサー→コーピング

→ストレス反応」 という経路を設定し、 共分散構造分析を行っ た。 なお、 Lazarus(Lazarus,R.S.,&Folkman,S.,1984)の心 理的ストレス過程では 「ストレッサー→認知的評価→コーピ ング→ストレス反応」 となっているが、 本研究においてはス トレッサーの経験頻度と認知的評価の相関が高かった。 従っ て、 経験頻度が高いということは嫌悪的だと認知していると いうことになる。 主成分分析の結果を元に、 コーピングの各 因子に該当した項目を観測変数、 各コーピングを構成概念と し、 コーピングとストレッサーの共変関係を想定した上で、

各コーピングからストレス反応への影響性を検討した。 なお、

パス図作成において、 ストレッサー、 コーピング、 身体症状 の確認的因子分析の数値は除外した。 確認的因子分析結果を Table3,Table4に示す。

友人ストレッサー群(Figure.1)

友人ストレッサーと5つのコーピングの相関は、 順に 「サ ポート希求」 とは.13(ns)、 「問題解決的対処」 とは−.12(ns)、

「あきらめ」 とは.63(p<.01)、 「気分の改善」 とは.21(ns)、

「思考の肯定的転換」 とは−.21(ns)、 であった。 友人関係に おいてストレスフルな状況にあるときは、 多くの生徒は 「あ きらめ」 コーピングを用いる傾向が強く、 「思考の肯定的転 換」 コーピングはあまり活用されていないことが分かった。

χ=2299.642であり、 GFI=.357、 AGFI=.305であった。

各コーピングからストレス反応へのパスを検討した結果、

ストレス反応を緩和・減少させる働きのあるコーピングとそ うでないコーピングに分かれた。 ストレス反応を緩和してい たコーピングは 「サポート希求」 「気分の改善」 「思考の肯定 的転換」 コーピングであった。 第1因子の 「サポート希求」

コーピングから 「抑うつ」 へは−.20(p<.01)、 第4因子の

「気分の改善」 コーピングから 「抑うつ」 へは−.49(p<.01)、

第5因子の 「思考の肯定的転換」 コーピングから 「抑うつ」

へは−.13(ns)、 「不安・心労」 へは−.53(p<.01)、 「ストレス 症状」 へは−.63(p<.01)、 「身体症状」 へは−.17(ns)であっ た。

ストレス反応を増加させていたコーピングは 「問題解決的 対処」 「あきらめ」 コーピングであった。 第2因子の 「問題

― 22 ―

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Table.3 友人ストレッサー群の確認的因子分析の負荷量 㪫㪸㪹㫃㪼㪅㪊 ෹ੱ䉴䊃䊧䉾䉰䊷⟲䈱⏕⹺⊛࿃ሶಽᨆ䈱⽶⩄㊂㩷

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(5)

解決的対処」 から 「抑うつ」 へは.43(p<.01)、 「不安・心労」

へは.47(p<.01)、 「ストレス症状」 へは.52(p<.01)、 「身体症 状」 へは.74(ns)であった。 第3因子の 「あきらめ」 コーピン グから 「抑うつ」 へは.21(p<.01)、 「不安・心労」 へは.42(p<

.01)、 「ストレス症状」 へは.51(p<.01)、 「身体症状」 へは.48 (ns) であった。 「問題解決的対処」 「あきらめ」 コーピング 共に、 全てのストレス反応を増加させていた。

学業ストレッサー群(Figure2)

学業ストレッサー群のストレッサーと6つのコーピングの 相関は、 「サポート希求」 とは.14 (ns)、 「情報収集と励まし」

とは.47(p<.01)、 「思考の肯定的転換」 とは−.15 (ns)、 「問 題解決的対処」 とは−.23(ns)、 「あきらめ」 とは−.28(p<

.01)、 「気分の改善」 とは.35 (ns) であった。 学業ストレッ サー群の生徒は、 「情報収集と励まし」 「気分の改善」 コーピ ングを活用し、 「問題解決的対処」 「あきらめ」 コーピングを あまり活用しないことが分かった。 χ=1357.679であり、

GFI=.492、 AGFI=.451であった。

各コーピングからストレス反応へのパスを検討した結果、

友人ストレッサー群と同様、 ストレス反応を抑制する働きの あるものとそうでないものに分かれた。 ストレス反応を抑制 していたコーピングは 「サポート希求」 「思考の肯定的転換」

「問題解決的対処」 であった。 第1因子の 「サポート希求」

から 「身体症状」 へは−.51 (ns) の影響が見られ、 ストレ

ス反応としての特に身体症状をわずかに緩和・抑制させる働 きを持っていた。 第3因子の 「思考の肯定的転換」 から 「抑 うつ」 へは−.32(p<.01)、 「不安・心労」 へは−.24(p<.05)、

「ストレス症状」 へは−.37(p<.01)であり、 「身体症状」 以外 のストレス反応を緩和させていた。 第4因子の 「問題解決的 対処」 から 「抑うつ」 へは−.80(p<.01)の影響があり、 スト レス反応、 特に抑うつ傾向を緩和させるコーピングであった。

ストレス反応を高めていたコーピングは 「情報収集と励ま し」 「あきらめ」 であった。 第2因子の 「情報収集と励まし」

から 「抑うつ」 へは.28(p<.01)、 「不安・心労」 へは.28(p<

.01)、 「ストレス症状」 へは.40(p<.01)、 「身体症状」 へは.63 (ns)であり、 全てのストレス反応を増加させていた。 第5因 子の 「あきらめ」 から 「不安・心労」 へは.88(p<.01)、 「スト レス症状」 へは.78(p<.01)、 「身体症状」 へは.48(ns)の影響 性が見られた。 第6因子の 「気分の改善」 から 「抑うつ」 へ は.17(ns)の影響があったが、 他のストレス反応への影響は特 に見られなかった。

中学生の学校ストレッサーとストレスコーピングの有効性

― 23 ― 㪫㪸㪹㫃㪼㪅㪊 ෹ੱ䉴䊃䊧䉾䉰䊷⟲䈱⏕⹺⊛࿃ሶಽᨆ䈱⽶⩄㊂㩷

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Table.4 学業ストレッサー群の確認的因子分析の負荷量

(6)

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(7)

考 察

共分散構造分析では、 友人ストレッサー群、 学業ストレッ サー群ともに十分な適合度を得ることができなかったが、 有 意なパスが得ることができたので、 以下ではストレス発症経 路について検討していく。

1. 友人ストレッサー群

共分散構造分析の結果から、 活用されるコーピングによっ て表出されるストレス反応の程度は異なることが分かった。

友人ストレッサー群においては、 ストレス反応を緩和させる ものとして3つのコーピングを得ることができた。 「サポー ト希求」 コーピングと 「思考の肯定的転換」 コーピングは全 てのストレス反応を緩和・減少する効果があり、 友人ストレッ サーに対するコーピングとしての有効性は十分にあることが 明らかとなった。 友人関係でのトラブルが生じた場合、 悩み を聞いてもらったり相談したりする友人の存在、 プラス思考 をもつことの大切さなどが示唆された。 「気分の改善」 コー ピングは 「抑うつ」 以外のストレス反応を緩和・抑制する働 きを持っていた。 先行研究(三浦・坂野,1996)においては、 本 研究で新たに抽出された 「気分の改善」 コーピングは 「問題 解決的対処」 と共に 「積極的対処」 という一つの因子にまと まっており、 ストレス反応を高めるコーピングであった。 し かし本研究では、 ストレッサーに対して積極的に働きかける コーピングは 「問題解決的対処」 と 「気分の改善」 という2 つに分かれ、 「気分の改善」 コーピングは 「抑うつ」 以外の ストレス反応を抑制するコーピングであるという結果が得ら れた。 友人関係で生じた問題に対して積極的に働きかけるコー ピングの中でも、 情動焦点型のコーピングはストレス反応を 緩和・抑制する働きを持っていることが明らかとなった。 こ の結果は、 自己コントロール力を高めることを目的としてス トレスマネジメント教育の一環として多く用いられているリ ラクセーションの重要性を証明することとなった。

一方、 「問題解決的対処」 や 「あきらめ」 コーピングはス トレス反応を増加させる傾向があった。 多くの生徒は 「あき らめ」 コーピングを活用している反面、 活用することによっ て逆にストレス反応を高めていた。 「あきらめ」 コーピング は活用頻度が高いものの、 コーピングとしての有効性は低い ことが明らかとなった。 「あきらめ」 コーピングは、 一時的 なストレス回避であって結果的に問題は何も解決されること はないため、 ストレス反応が増加すると推測できる。

「問題解決的対処」 は、 友人とのトラブルに対して、 問題 の原因を取り除くように努力したり積極的に友人に働きかけ て関係改善を図るコーピングとして、 一般的にはストレス反 応の緩和・減少に有効であるとされる。 しかし、 今回の分析 においては 「問題解決的対処」 はストレス反応を高めるとい う結果が得られた。 問題を解決するという積極的なコーピン グは、 それを行うこと自体ある程度のストレス反応を引き起 こすものであり、 「問題解決的対処」 から引き起こされるス トレス反応はその過程で生じたものだと推測される。 しかし、

今回の分析においては質問紙の作成上、 ストレス反応が高ま る原因がコーピングを活用した結果であるのか、 活用する過 程で高まったものなのか明確にすることができず、 原因究明 に至らなかった。 この点に関しては今後の再検討課題である。

2. 学業ストレッサー群

学業ストレッサー群では、 「情報収集と励まし」 と 「思考 の肯定的転換」 を活用する生徒が比較的多く、 「問題解決的 対処」 「あきらめ」 を活用する生徒は少なかった。

学業ストレッサー群においては、 「サポート希求」 「思考の 肯定的転換」 「問題解決的対処」 がストレス反応を緩和・減少 させるのに有効なコーピングであった。 「サポート希求」 「思 考の肯定的転換」 においては、 友達など周りの人に愚痴を聞 いてもらったり一緒に勉強したりして周りのサポートを求め る、 勉強のことを一時的に忘れて気晴らし的行動を行う、 試 験などで悪い成績をとったとしても気持ちを切り替えてプラ ス思考で学習に取り組む、 などサポートを求めたり気持ちの 切り替えをする項目が該当した。 これらは、 学業ストレッサー から生じた嫌悪感や無力感などに対して活用されるコーピン グであり、 友人ストレッサーへのコーピングとしても有効な ものであった。 しかし 「思考の肯定的転換」 コーピングは、

学業ストレッサー群では活用されていないコーピングであっ た。 よって、 ストレスコーピングとして、 プラス思考で取り 組むことの大切さを伝える、 悩み相談の聞き役になる、 など の教師側の取り組みをよりいっそう重視することが学業スト レッサーの低減につながるであろう。 「問題解決的対処」 に は 問題を整理する 問題の原因を取り除くよう努力する などの項目が該当したが、 このコーピングは6つのコーピン グの中でも一番ストレス反応を緩和・減少させる働きを持っ ていることが明らかとなった。 学業ストレッサーへの一番効 果的なコーピングは、 ストレッサーへのコーピング、 つまり 学習に取り組むことであることが明らかとなった。 よって、

「問題解決的対処」 をより有効にするためには、 指導者側は 一方通行の学習をさせるのではなく、 問題を整理して児童生 徒が自主的に考えることができるような環境を整備するなど の工夫が必要である。

ストレス反応を高めていたコーピングは 「情報収集と励ま し」 「あきらめ」 であった。 「情報収集と励まし」 は多くの生 徒が活用する傾向のあるコーピングであったが、 ストレス反 応を高めていた。 普段の学習や試験への対策として関連した 情報を集めて学習に取り組もうと積極的に働きかけたり、 勉 強することを試練だと捉え自分自身を励ましながらがんばる が、 コーピング自体が辛さであると考えられるために、 スト レス反応が高まっていたのかもしれない。 「あきらめ」 コー ピングを活用している生徒は、 勉強することから回避してい るだけで何も問題解決はなされていないため、 当然ストレス 反応は高まったのだろう。

中学生の学校ストレッサーとストレスコーピングの有効性

― 25 ―

(8)

学校教育への提言

児童生徒が学校生活を送る上で、 ストレッサーから逃れる ことは不可能に近い。 学校ストレッサーは多々存在する中で 児童生徒が様々な環境に適応していくためには、 ストレスコー ピング能力を身につけ活用していくことが重要である。 近年、

児童生徒の学校不適応の予防措置の一貫としてストレスマネ ジメントプログラムの試みが期待されている。 児童生徒のス トレス反応の緩和・軽減には一般的にリラクセーション訓練 やソーシャルスキルトレーニングが有効とされており、 スト レスマネジメント教育の実践的な試みがいくつか報告されて いる(三浦・上里,2002;嶋田2002;寺嶋・日高・宮田・岡田・田 中,2002)。

本研究では、 友人ストレッサーと学業ストレッサーに有効 なコーピングをいくつか得ることができた。 友人ストレッサー 対処としては、 友人からのサポートを増やす環境の整備を目 的とした構成的グループエンカウンターやソーシャル・スキ ル・トレーニング、 認知的思考を肯定的に転換させることを 目的とした認知療法的介入、 ストレス反応を緩和し自己コン トロール力を高めることを目的としたリラクセーションなど があげられる。 これらを 「学級活動」 や 「総合的な学習の時 間」 をはじめとして、 授業の中に積極的に組み込むことで児 童生徒のストレス問題に対応できると考える。 学業ストレッ サー対処としては、 自主的・積極的に学習に参加できる環境 を整備したり、 教師によるサポートを強めた個別教育を行う ことなどが効果的である。

最後に、 児童生徒のストレス問題解決にあたってコーピン グを有効に活用するためには、 まず何がストレス源となって いるのかを明確にする必要がある。 ストレス問題の解決にあ たってはそのストレスの要因を一概に言うことはできないが (特に思春期の複雑な心理状態においてはそうであるが)、 ス トレスマネジメント教育などにおいてコーピングを指導する 際は、 対象となる児童生徒が何をストレッサーとしているの か、 個々の内面的要因や集団としてのストレス状況を把握し ておくことも大切なことである。 そうすることによって、 よ り具体的で効果的な対処方法の指導ができるであろう。

引用文献

加藤司 2001 対人ストレス課程の検証 教育心理学研究, 49,295-304

ラザルスR.S・フォルクマンS. 本明寛・春木豊・織田正美(監 訳 ) 1991 ス ト レ ス の 心 理 学 実 務 教 育 出 版 (Lazarus, R.S., & Folkman,S. 1984 Stress, ap- praisal, and coping. New York : Springer Publishing Company.)

三浦正江・上里一郎 2002 中学校におけるストレスマネジ メントプログラムの実施と効果の検討 行動療法研究, 29(1),49‐58

三浦正江・坂野雄二 1996 中学生における心理的ストレス の継時的変化 教育心理学研究,44,368-378

三浦正江・嶋田洋徳・坂野雄二 1997 中学生におけるテスト 不安の継時的変化 教育心理学研究,45,31-40

村上宣寛・村上千恵子 1999 性格は五次元だった 培風館 NHK世論調査部編 1991 現代中学生・高校生の生活と意

識 明治図書出版

岡安孝弘・嶋田洋徳・丹羽洋子・森俊夫・矢冨直美 1992 中 学生の学校ストレッサーの評価とストレス反応との関係

心理学研究,63,5,310-318

岡安孝弘・嶋田洋徳・坂野雄二 1993 中学生におけるソーシャ ル・サポートの学校ストレス軽減効果 教育心理学研究

41,302-312

嶋田洋徳 2002 中学生における社会的スキル訓練が心理的 ストレス反応に及ぼす影響

神藤貴昭 1998 中学生の学業ストレッサーと対処方略がス トレス反応および自己成長感・学習意欲に与える影響 教育心理学研究,46,442-451

高山巌 1993 ケースに学ぶ中学生 上里行動療法ケース研 究9 登校拒否Ⅰ 岩波出版社 91-96

寺嶋繁典・日高なぎさ・宮田智基・岡田弘司・田中・英高 2002 小中学校におけるストレス・マネジメント教育の指導 案開発に関する実践的研究 関西大学 社会学部紀要

33(3),137‐171

付 記

本研究の実施にあたり、 ご協力をいただいた中学生の皆さ ん、 ならびに調査の取りまとめをして下さった先生方をはじ め学校関係者の皆様に心より感謝します。

参照

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