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発声指導法研究 Ⅳ : 児童への指導 ( 1 )

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Bulletin ofFaculty ofEducation,NagasakiUniversity:Curriculum and TeachingNu42(2004)39‑47

発声指導法研究 Ⅳ : 児童への指導 ( 1 )

宮 下 茂

(平成15年10月31日受理)

Thevocalizingguidemethodresearch

Thevocalizingguidetothechildren(1)

Shigem MIYASHITA

(Received October31,2003)

I は じめに

筆者 は 「発声指導法研究Ⅲ」 (註 1) に於 いて,附属 中学校 との連携授業 の中で筆者 が 試 みた,生徒への発声指導 に対す る考 え,指導方法,指導 の結果等を述べた。 これ らの発 声指導 内容 は,筆者 が これ まで行 って きた大学生を対象 と した発声指導 と同等 の内容 杏, 生徒 か理解 できるよ うに可能 な限 り分 か りやす く伝えよ うと した ものであ った。.この授業 の中で実際 に発声指導 を行 った結果,筆者 の抱 く発声 に対す る考 えや発声指導 内容 を,坐 徒 に伝え ることは可能 であることが実感 で きた。

これ ら実践結果 を受 け,次 に筆者 が考 えた ことは, これ らの指導 内容 によ り,児童 に対 して も発声指導が可能 であるかであ った。

その ような中,筆者 は長崎市立桜 町小学校 の合唱 クラブの児童 に対す る発声指導 を行 ラ 機会 を得 た。児童 を対象 と した発声指導 は,筆者 にとって初めての経験 であ った。

今回の指導 は,音楽 の授業 とは異 な り,歌 うことの好 きな児童が 自主的に参加 す る, ク ラブ活動 での発声指導 であ るため,必 ず しも平均 的な児童への発声指導 とは言 えないが, この指導 を通 して,児童 の歌声 に対 して筆者 が何 を考え,言葉 を表 し,指導 を行 な ったか を今 回の論文 で述べ ることとす る. それ によ り筆者 の考えを.明 らか と し,児童 を対象 と し た発声指導 のための助言 となることを願 うものである。

尚,発声指導 中の筆者 の考 えに関す る説 明並 びに分析等 は, 「考察」 阜 して記す ことと す る。

長崎市立桜町小学校 に於 ける発声指導

今回の発声指導 は,合唱 コンクール に向 けて練習中であ った長崎市立桜町小学校 コー ラ ス部 の練習 日である,平成156月25計に行 なわ れた。

同校 コーラス部 は, 4月 に児童 が入れ替 わ り,6月 に入 って本格的な練習 を開始 し,岩 瀬 由佳教諭 の指導 の もと,週3回,12時間程の練習を行 な っていた。その編成 は,3

(2)

年生か ら6年生の各学年12,3名が参加 し,男子5名,女子44名,合計49名か らなっていた。

岩瀬教諭 によると,10名の男子 が卒業のために退部 したこともあ り,前年度 に比べ,比較 的お とな しく,教諭 の話 を良 く聞 き,良 く練習 に励 んでいる。 しか し,新入部員の中に, 合唱 コンクールで入賞す ることばか りに気持 ちが傾 く児童 が多 く,合唱を歌 うことによっ て得 られ る,合唱活動本来 の 目的を持 たせ ることや,児童 の気持 ちをまとめ ることに苦労 を しているとの ことであ った。

尚,今回の コンクールに向けての曲 目は,合唱 コンクールの課題曲である 「や さしい風」

(萩原 あゆみ作詞, グ ッチ裕三作曲) と, 自由曲 「七つの子」 (野 口雨情作詞,本居長世 作曲,松下耕編曲)である。

同校 コーラス部の歌声の第一印象

「は じめに」で も述べた通 り,筆者 は これ まで児童 に対す る指導 の経験 はな く,児童 の 歌声の特徴や,歌 唱の為の方法等の知識 に乏 しく,児童 の持つ歌 唱に対す る可能性 さえ も 知 らなか った。

そ こで,児童 が練習 中の課題 曲並 びに自由曲を演奏 して もらい,実際の歌 唱を通 して歌 声の特徴 を, まず考え ることと した。

その演奏 を聴 いて,以下 の よ うな印象 を受 けた。

1.児童 の歌声か ら,明 るい響 きが聞 き取 れ る。

2.児童 の歌声 か ら, 「喉声 を出 さないよ うに注意す る。」 との意識 が感 じられ る。

3.児童 の歌声か ら, 「紡 麗 な歌声 で歌 唱す る。」 との意思 が感 じられ る。

「児童 の歌声 は,甲高 く,響 きを感 じさせない,喉声 にな りやすい。」と筆者 は予め予 想 していた。 しか し,同校 コーラス部 による演奏か らは, 「明るい響 き」が聞 き取れ, 「喉 声」 と言 われ る声 は聞 き取 れ なか った。

これは,̀岩瀬教諭 による指導 内容 の豊 か さと的確 さによる ものであ る。 また, その指導 内容 に従 お うと して きた児童 の努力 による ものである。

この演奏 を聴 くことによ り, 「児童 の歌唱は,筆者 の予想 を大 き く上 回 る ものであ り, 多 くの可能性 を秘 めている。」 との確信 を,筆者 は得た。

発声 に関する課題 と指導 目標の決定

同校 コーラス部 による演奏 を受 け,筆者 は幾つかの課題 (問題点)を見つ け出 し, その 課題 (問題点)を解消す ることを,当 日の指導 目標 と した。

筆者 は.以下 のような課題 (問題点)を挙 げた。

1.児童 の歌声か ら. 「歌声 の浅 さ」が感 じられ る。

2.児童 の歌声 か ら, 「喉が擦 れ るよ うな息 の音」, 「雑音」が聞 き取 れ る

3.児童の歌声か ら, 「優 しさ」を感 じるが, 「浮いたよう‑な声」 とも言え, 「弱 々 しさ」

(3)

.宮下 茂 :発声指導法研究Ⅳ :児童への指導(1)

を感 じて しま う。

これ らの課.堰 (問堰 卓)から,.以下 の・目標 を挙 げた。

1・児童 の歌声 か ら, 、「歌声 の深 さJ̲・を感 じられ るよ うにす ること.

2.児童 の歌声 か ら, 「雑音 」を取 り除 くこと。

3.児童 の歌声 か ら, 「力強 さ」 を感 じられ るよ うにす ること。

児童の持 つ発声 に関する知識 と内容

41

発声指導 を開始す るにあた り,筆者 はまず,児童 の持つ 「発声 に対す る心掛 け」を聞 き, 児童 の持 つ 「発声 に関す る知識」.を探 る ことと した。

数名の生徒 に対 し質問を行 な った結果,今員が 「発声 に注意 して いる。」.との返事 であ っ た。

続 けて 「具体 的 な注意 の内容」 を質 問 し,.以下 の回 答 を得 た。

1・.I 「ツイス ト」 .

2. 「腹筋」

3. 「口 (喉)を開 ける」

尚,上記 の 「ツイス ト」 とは,一 種 の 「腹筋練習」であ り,膝 を立 てた状態 で床 .の上 に 楓 にな り;腰 を左右 にひね る運動 を繰 り返す ものであ った?

r児童の持つ発声 に関する知識 と内容」 に関する考察

上記 の 「ツイス ト」練習 によ り, 「腹 筋 を使 って歌 唱す ること」 を児童 は学 び,歌 唱の 際, 「腹筋」 に意識 と注意 を持 つ よ うにな った と考 え ら.れ るo しか し,児童 によろ歌 唱を 聞いた限 り, 「歌声 の豊か さ」や 「歌声 の安定感」等 は聞 き取れず, 「腹筋を使 った歌 唱」

と呼べ る ものは感 じ取 れなか った。

児童 の姿勢 に注 目 してみ ると,歌 唱の前 か ら,体 が 「7'レる」 こtとな .く直立 していた。

歌 唱の際 に も,姿勢 の変化 は見 られ なか ったが,唯一 呼吸の際,全員 が大 き く肩 を上 げ下 げす る姿 が見 られた。 これ は, 「腹筋 に対す る意識 」の現 われ と見 られ,一種 の 「硬直.状 態」 と言 え, 「歌唱の為の腹筋への意識」が, 「姿勢 を保つ為 の腹筋への意識」 と変 わ り, 歌 唱 に生か されていないだけではな く, 「胸式 呼吸」 を促 してい ると考 え られた。

また, 「口を開 けること」 は,豊 かな 「響 きと 「共 鳴」 を得 るため に欠かせ ない もの であ るが,児童 の歌 唱を聞いた限 り, 口角 を大 き く開 けす ぎ,舌根 と共 に喉が上 が り,共 鳴 口が狭 くな り, その結果, 「歌声 の浅 さ

」,

「雑音」等 を生み出 した と考 え られ た。

それ に加 えて,

̲

「口を横 に向か って大 き く開 く」児童 も見 られ, その結果, 「取声 の浅 さ」 と共 に,声 と体 との関係 が断 ち切 られ,歌声 が 「浮 いた」 と考 え られた。

筆者 は これ までに も何度か,児童 の歌 唱に於 ける 「口の開 けす ぎ」を 目にす る機会 があ っ

(4)

た。 この児童 の歌 唱 に於 ける 「口の開 けす ぎ」 は,外見上 「子供 ら しさ」を感 じることが で きるが,舌根 と共 に喉が上 が り,共 鳴 口が狭 くな る結果 を生 みやす い と考 え られ る。酒 井弘氏 も, その著書 (註2)で詳 しく述べているが, 「どの様 に口を開 き,歌唱す るか。」

につ いて は,指導上重要 な事 であ るが,同時 に指導上難 しい問題 で もあ ると述 べ られてい る筆者 の抱 いていた, 「児童 の歌声 は, 甲高 く,響 きを感 じさせない,喉声 にな りやす い。」 との印象 も, この 「口の開 けす ぎ」 の印象 か ら来 ていた。

発声指導 内容 につ いての考察

発声指導 によ り導 き出そ うとす る歌声 と,歌声 を導 き出す ための手段 について,発声指 導 によ り導 き出そ うとす る歌 声が, 「癖別 な声」であ ると仮定す るな らば; 「特別 な声」

を出す ためには, 「特 別 な発声方法」が必要 であ ると考 え られ る。 しか し,児童 への発声 指導 によ り導 き出そ うとす る歌声 は, 「自然 な声」 であ るべ きと筆者 は考 えていた。

人 は, 日頃の生活の中で, 自分の感情を表すために,様 々な声 を出 している。 その声 は, 自然 な感情 の変化 によ り声 が変化す る場合 の他 に,感情 を表す ため に意識的 に声 を変化 さ せ る場合があ る。 また, 自然 な感情の変化 によ って生 じる声 を,意識的に出す場合がある。

自然 な感情 の変化 によ り声 が変化す る場合 には, 「自然 な感情 の変化」 によ り, 「発声 のための状態」 は変化 し, 「発声 に必要 な力」 が呼 び起 こされ,感情 の変化 に見合 った声 が発 せ られ る と考 え られ る。 そ して, この 「感情 の変化」 を意識 的 に行 ない/ 「感情 を演 じる」 ことによ り,発声 のための状態 の変化 を起 こ し,発声 に必要 な力 を呼 び起 こす こと も可能 であ る と.筆者 は考 えてい る。

その為 ,今 回の指導 では,児童 が 日頃の生活 の中か ら, 「自然 な発声方法」を得 られ る よ う,心掛 け ることと した。

発声措辞の手順

実際 に児童 への指導 を開始 す るにあた り,筆者 は以下 の手 順 で指導 を行 う事 と した。

1.喉 を開いて声 を出す

2.喉が上 が らない方 向をつ け,声 を出す 3.母音 の練 習

4.言葉 へ移行 5.歌 唱へ移行

r境を開 いて声 を出す」ための指導 内容 につ いての考察

人 は, 日頃の生活の中で, 自分の感情を表すために,様 々な声を出 している。その中で,

「わ っ」, 「あ っ」, 「あー つ」 と言 った, 「他 人 を脅 かす ことを 目的 と して,発せ られ る声」があ る

この声 には,以下 の特徴が見 られ る。

(5)

宮下 茂 :発声指導法研究Ⅳ :児童への指導(1) 43

1.顎骨関節 を緩 ませ, 口腔 内を拡 げ,共 鳴腔 を拡 く利用 した母音 「ア」が発せ られ る。

2・日頃発 せ られ る声 よ りも, は っき りと した声 が,脅 かそ うとす る,前方 の対象者 に向 か って発 せ られ るこ

3.日頃発 せ られ る声 よ・りも,少 し低 く感 じられ る。

4.日頃発せ られ る声 よ りも,太 くて大 きな声であ る

5.日頃発せ られ る声 よ りも∴ しっか りと して,安定感 のある声 であ る。

これ らの特徴 を基 に, この声を歌唱における発声 によって生 じた歌声であると仮定 して, 上記 の特徴 を置 き換 えてみ ると,以下 のようになる。

1

.

「口腔内や唇な どを, ほとん ど意識す ることな く口を開いたままの状態で発声できる, 母音 『ア』」 (註3)を発声す る。

2. 「鼻腔 (頭部)共 鳴」 を利用 して, 「額 (両眼の間)か ら前方 に,明 る く,は っき りと した声 を発声す る。 (註4)

3. 4. 「中咽頭腔,下咽頭腔の共鳴」を利用 して,力強 い,大 きな声 を発声す る. (詠 4)

5. 「横隔膜」の働 きによ り, しっか り.と して,安定感 のあ i声 を発声す る.〜

以上 の ことか ら, 「他人を脅かす ことを 目的 と して,発 せ られ る声」を発声す ることに は,声楽 的な発声行為 と多 くの共通点が見 られ る。

r他人を脅かす ことを 目的 と して,発せ られる声」 に於 け.る体の変化 についての考察

この声 を発声す るために起 きる,体 の状態の変化 は,以下 の ように確認 が出来 る。

1.胸 に手 を当て, 「他人 を脅かす ことを 目的 と して,発せ られ る声」を発声す.ると,p胸 郭 の内腔が拡 が る様子 が確認 され る。 この様子 か ら,外筋間筋 の働 きによ り,肋骨が 引き上 げ られ,それに伴い,肺内部の容積が拡大 した ことが分かる。 (註5) (図1) 2.みぞお ちに手 を当て, 「他人を脅かす ことを 目的 と.して,発せ られ る声」を発声す る と,圧迫 され た内臓 が,・腹壁を押 し出す様子 が確認 され る. この様子か ら,横隔膜が 収縮 し,下方 に下が り:それに伴い,肺内部の容横が拡大 したこと.が分かる。・(註6)

(図2)

3.脇腹 に手 を当て, 「他人 を脅かす ことを 目的 と して.発 せ られ る声」を発声す ると, 脇腹が拡 がる様子が確認 される。 この様子か ら,肺内部の容積が拡大 と共 に,腹筋 (料 腹筋等)が働 いた ことか分か る。 (註7) (図3)

4.首 に手 を当て, 「他 人を脅かす ことを 目的 と して,発 せ られ る声」を発声す ると,咽 頭 の位置 が下 降す る様子 が確認 で きる。 この 「咽頭 の下降」か ら, 「咽頭腔が開かれ た状態」 (註8), いわゆる 「喉の開いた状態」であ ることが分かる。 (図4)

(6)

図 1)体 の状態 の変化 の確認

図 3)体 の状態 の変化 の確認

図2)体 の状態 の変化 の確認

図4)体 の状態 の変化 の確認

上記 の 1. と2.は, 「安静呼吸 (註9)の特徴 と言え, 「呼吸 による体 の状態の変 化」 と言 え るが,2.の 「横 隔膜 の動 き」 と3.の 「腹筋の動 き」 は,歌唱のための呼吸 の特徴 と一致 し, 「腹式呼吸が取 られた。」 と考え られ るO

また,4.の 「喉の開 いた状態」か ら, この呼吸が,.共鳴腔を拡 げ,豊 かな響 きの有 る 声 を出す ために有効 な呼吸であると考 え られ る。

この ことか ら, 「他人 を脅かす ことを 目的 と して,発せ られ る声」 を発声す るための呼 吸 は,歌 唱のための呼吸 に置 き換 え ることも可能 であると,筆者 は考 え る。

尚,実際の指導 の中で, これ らの確認 を行 な うことも可能 である。

しか し,上記2.の横隔膜 の動 きの確認 は,手 を添え ることによ り,横隔膜 への意識 が 高 ま り, 自ら動かそ うとす る可能性 があ る。 その為 に,不必要 な力を入れて しまい,横隔 膜 の 自然 な動 きを妨 げて しま うことが考 え られ る

上記3.の腹筋の動 きの確認 は,確認 しよ うとす る手 の位置 によ り,不 自然 に肩 を上 げ て しまい,反対側 の肩 に不必要 な力が入 って しまうことが考 え られ る。

上記4.の喉の開いた状態の確認 は,手 を添え ることによ り,喉への意識 が高 ま り, 自 ら喉を下 げようとす る可能性 があ る。 その為 に,喉 に不必要 な力が入 って しま うことが考 え られ る。

(7)

宮下 茂 :発声指導法研究Ⅳ :児童への指導(1) 45

しか し,上記 1.‑の胸郭 内腔 の拡 が りの確認 では, 自 ら胸郭 の中心部分 を拡 げ ることは 難 しい と考え られ る。 その為,指導 の中での確認 は, 「胸 に手 を当て る」 ことによ って行 い,胸郭 の内腔 の拡 が りが確認 で きれ ば,横 隔膜 が動 き,腹筋が動 き,喉の開 いた状態 で あ ることを伝え ることが望 ま しい と・,筆者 は考 え る。

「他人 を脅かす ことを 目的 と して ,発せ られ る声」の吸気行為 につ いての考察

これ らの 「体 の状態 の変化」が, 「声 を出す ための行為」 であ る事 か ら,筆者 は以下 の 点 に注 目を してい る。}

1.前項 の 「胸郭 の内腔 が拡 が る様子」,「圧迫 された内臓 が,腹壁 を押 し出す様子」,

「脇腹が拡 が る様子

」,

「咽頭 の位 置 が下 降す る様子十 は全 て,声を 出そ うとす る直 前 に見 られ, その動 きを確認 す る ことが出来 る。

2. 「他人 を脅 かす ことを 目的 と した声」 を発 している間, その動 きが止 ま ってい ること も確認 で きる。

3.呼吸 は呼気 と吸気 に分 け られ るが,前項 の動 きは吸気 にのみ見 られ,呼気 の間,前項 の動 きが止 ま って しま う。 この こ とか ら, この声 を発 してい る間,吸気筋 に対す る呼 気筋の措抗 が生 じてい ると考 え られ る。 また,.一般 に吸気筋 と呼気筋 によ って得 られ

る桔抗 は, 「支 えと呼 ばれ てし丁る。 (註 lo)

以上 の点か ら

,

「他人を脅かす こ‑tを 目的 と した声」を発声す るための行動 を利 用 して,

「喉 を開 いて声 を由す

」・ ‥

「腹式 呼吸 を行 な う

」I

「声 を支 え る」等を 目的 と した発声指 導 を行 うことを,筆者 は考え た。

また,声 を出す直前 で停止 す る こと も可能 であ り,停止 した状態 を作 ることによ り,起 声 のため に最 も重要 なポイ ン トとされ る, 「直前準備行為 (註11)を指導 す ること も 可能 であ ると考 え られ た。

発声指導 1 :喉を開いて声を出す

「喉を開いて声 を出す」 ための発声指導 は,以下 の手順 で行 った。

① 自然 な声 で,短 く母音 「ア」 を発音 させ る。

② 「他 の人 のいたず らを,注意 す るよ うに

」,

「び っ くりさせ るつ もりで

」,

「意地 悪 をす るつ もりで」等 の イ メー ジを持 たせて,太 く,力強 い母音 「ア」・を,長 めに

■発音 させ る。

③ 自然 な母音 「ア」 と力強 い母音 「アー ツ」 を交互 に発音 させ, それぞれの発音 時の 特徴 を,体 で感 じられ るよ うに指導 す る

④ 力強 い母音 「アーツ」が発 せ られ る直前 で, 口を開 L..たまま,止 まるよ うに指示す る。 この止 ま った状態 を, 「お どかす真 似」 と呼ぶ ことを説明す る。

⑤ 「お どかす真似」 を練習 させ る。

(8)

⑥ 「お どかす真 似」 を したまま,軽 く, 明 る く,母音 「ア」 を発音 させ る。

自然 な母音 「ア」 と力強 い母音 「アー ツ」 が, どの よ うな声 であるか については,指導 の際,筆者 白身 が繰 り返 し発声 し,児童 が筆者 の求 め る声 を発声 す るよ うに誘導 して行 っ た. この声 を,紙面 に載 せ ることは不可能 であ るため, その声 のイメー ジが伝 わ るよ う, 図5に示す こととす る。

5) 自然 な母音 と力強 い母 音 「アー」 の発声 イメー ジ

上記 の指導 の結果 ,児童 は喉を開 いた まま,母音 「ア」 を発 す るよ うにな った。

その声 は.明 るい響 きを感 じさせ る,息 の音 や雑音の混 ざっていない,円やかな声 であ っ た。 しか し,天井 に向か って浮かぶ印象 を与 え る声 であ■り,小 さ く,弱 々 しさを 感 じる声 で もあ った。

その為,共 鳴 によ り声 を大 き くさせ ることを考 え,次 の発声指導 に移●ることと した。

おわ りに

今回の 「発声指導法研 究Ⅳ」では,筆者 が行 な った,児童 に対す る発声指導 の内容 を述 べて きた。 その指導 は筆者 にとって初 めての経験 であ り,指導 内容 につ いて,筆者 自身 , 多 くを考 え る機会 とな った。

それ らの指導 内容 は,紙面 の都合上 ,納 ま りきれ な くな った為 , 「発声指導2」以 降の 内容 を, 引 き続 き次 回の論文 にて述 べ ることとす る。

(9)

宮下 茂 :発声指導法研究Ⅳ :児童への指導(1) 47

註釈

(註 1)宮下 茂 「発 声指導 法研 究 Ⅲ :授業 に於 け る指導」:長 崎大 学教育学部教 科教育学 研 究報 告 第38号 ,平成14年3月

(註2)酒井 弘 新版 「発声 の技巧 とその活 用法」 :p.127「第5章 児童発声 とその指導 法 児童発声 における指導 の要点 3 口の開 け方」,音楽の友社,1974参照。

(註3)母音 「アの特徴 につ いては,酒井 弘 新 版 「発 声 の技巧 とその活 用法」 :p.87

「第 4章 発 声 法 Ⅲ正 しい講書 法 1 母音発 声 時 の 口形 と方法(1)「ア」 の 口径 と発 声 」 ,音 楽 の友社,1974か ら引用。

(註4) これ ら 「声 の共 鳴」 につ いて は,酒井 弘 新版 「発 声 の技巧 とその活 用法」 :p.

63Ⅰ発声練 習 に際 しての予備知識 4 声 の共 鳴」 ,音 楽 の友社,1974参照。

(註5) 「吸気 に さい して は外筋 間筋 か はた らいて,肋骨 を ひ きあげ る と同時 に横 隔膜 が 収縮 して下 方 に下 が るが, この とき胸郭 の内腔 は,前 後左右 ,上下 に大 き く拡 が る ことにな る。」:酒井弘 新版 「発声の技巧 とその活用法」 :p.37「第三章 Ⅲ 呼 吸法 1 安 静 呼吸,胸式 呼吸,腹式 呼吸」,音 楽 の友社,1974参照 。

(註6) 「腹式 呼吸 の吸気 のはあい には横 隔膜 が下 が るため,腹腔 内の臓器 は押 し下 げ ら れ て弾 力性 の あ る, み ぞお ちの部 分 に移動 して くる と同時 に, み ぞお ちや腹部 は膨 張す る。」 :酒井弘 新版 「発声 の技巧 とその活用法」 :p.41「第三章 呼吸法

3 歌 唱時 の呼吸 の仕方 とその保持法 」,音楽 の友社,1974参照 。

(註7) 「 (腹 式 ) とは,腹 をふ くらませ るの ではな く,腹 筋 (斜 腹筋,背 筋,肋骨筋 な ど) を使 うことで ・・」声楽 ライブ ラ リー3.呼吸 と発声 :p.11Ⅰ声楽 呼吸の原 点 声楽技 術 にま ぐれ な し 腹式 呼吸 の正 しい解釈 (柴 田睦 陸)」,音楽 の友社 , 昭和58年 参照 。

(註8) 「結 果 と して咽頭 は低 い位置 に来 る。 これ によ って咽頭腔 は よ く開 く し,鼻腔 へ の通路 もよ く拡 が る。」声楽 ライブラ リ‑3.呼吸 と発声 :p.92

Ⅳ呼吸 と発声 会 話 発声 と声楽 発 声 咽頭 の位置 と共 鳴腔 の形,大 き さ (小野 田正 之)」,音楽 の友 杜 ,昭和58年 参照。

(註9) 「呼吸 は人 間が生 きるため に空 気 中 よ り酸素 を体 内 に と りこむ 目的 で営 まれ る も の であ って, この作業 は胸 ,腹 ,横 隔膜 の共 同作業 に よ って 自動 的 に行 なわれ る も のである。 これを安静 呼吸 とい う。」 :酒井弘 新版 「発声 の技巧 とその活用法」 : p.37「第三章 呼吸法 1 安静呼吸,胸式呼吸,腹式呼吸」,音楽の友杜,1974

参照。

(註lo) 「括抗筋 とい うのは, プラス (+) とマイナス (‑)の相反す る力が対抗 してバ ラ ンスを保 とうとす る筋肉の ことを言 うので (支え) に共通す る言葉 で,同義語的に扱 っ て もよい と思 う。 ・・・呼気筋 と吸気筋の力のバ ラ ンスであ ると理解 してよい」声 楽 ライブ ラ リ‑3.呼吸 と発声 :p.20Ⅰ声楽 呼吸の原点 声楽技術 にま ぐれな し

措抗 筋 の働 き,支 え (柴 田睦陸)」,音楽 の友 社 , 昭和58年 参照。

(註11) 「吸気完 了か ら起声 に移 る前 に一 瞬の停止 があ ると言 ったが, この停止 こそ起声 の ための直前準備行為 であ って最 も重要 なポイ ン トであ るo」声楽 ライブ ラ リ‑3.呼 吸 と発声 :p.20「Ⅰ声楽呼吸の原点 声楽技術 にま ぐれな し 措抗筋の働 き,支え (柴 田睦 陸)」,音 楽 の友社,昭和58年 参照。

図 1)体 の状態 の変化 の確認 図 3)体 の状態 の変化 の確認 図 2) 体 の状態 の変化 の確認図 4) 体 の状態 の変化 の確認 上記 の 1. と 2. は, 「安静呼吸 」 ( 註 9) の特徴 と言え, 「呼吸 による体 の状態の変 化」 と言 え るが, 2

参照

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