体育学習における「態度」に関する研究
著者 渡邉 彰
雑誌名 同志社スポーツ健康科学
号 9
ページ 24‑30
発行年 2017‑06‑15
権利 同志社大学スポーツ健康科学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016343
体育学習における「態度」に関する研究
渡邉 彰
1Study on “manner” in the physical education learning
Akira Watanabe
1As for the current course of study, revision was carried out for. 2009 years in 2008. Mention content is greatly different in an elementary and junior high school, a high school, and, in “a manner of health and physical education, the health education and physical education,” there is the precise anxiety that may not be transcribed.
I weighed how to catch of “the manner” by a school class and the subject to clarify the problems about “the manner” that wanted to let children wear it in this study. As a result, about the manner to work on of the physical education learning, the following differences were seen.
1) School classification
It is unified by the notation “which I advance and work” on from a first grader to a sixth grader for learning content to be developed with grade progress in the elementary school. However, in a junior high school, the high school,
“I wrestle with a seventh grader in second graders positively” and “wrestle with a ninth grader in tenth graders voluntarily” and establish the difference for contents and the notation in an eleventh grader and third graders saying “it is independent and wrestles”.
2) Subject distinction
The notation of “the manner” greatly varies according to each subject. The health and music department like the elementary school health and physical education think in a way. How to catch of “the manner” is not unified for physical education and the health in the same subject.
【Keywords】 Course of study, Physical education, Learning manner, Subject
現行の学習指導要領は2008年・2009年に改訂が行われたが,体育科・保健体育科の「態度」においては,
小学校と中学校・高等学校で記載内容が大きく異なり,的確な表記になっていないのではないかという危惧が ある.
本研究では,子どもたちに身に付けさせたい「態度」についての課題等を明らかにするため,学校種や教科 による「態度」の捉え方を比較検討した.その結果,体育学習の取り組む態度については,以下のような相違 が見られた.
1)学校種別
小学校では学年進行に伴い高度化する学習内容に対して,1年生から6年生まで「進んで取り組む」と いう表記で統一されているのに対し,中学校・高等学校では,中学1年生と2年生を「積極的に取り組む」,
中学3年生と高校1年生を「自主的に取り組む」,高校2年生と3年生を「主体的に取り組む」と表記に差 を設けている.
2)教科別
「態度」の表記は各教科により大きく異なる.保健や音楽科は小学校体育科と同様の考え方をしている.
同一教科内の体育と保健で「態度」の捉え方が統一されていない.
【キーワード】学習指導要領,体育,学習態度,教科
1 同志社大学スポーツ健康科学部(Faculty of Health and Sports Science, Doshisha University)
Ⅰ.緒言
2008年に小学校及び中学校学習指導要領が,2009 年に高等学校学習指導要領がそれぞれ改訂され,全国 の小学校・中学校・高等学校においては,現在この学
習指導要領に基づく授業が展開されている.一方,新 しい教育課程の考え方については,2016年12月の中 央教育審議会の答申を踏まえ,2017年3月31日に小 学校及び中学校の学習指導要領が改訂された.このよ うな節目の時期に,改めて現行学習指導要領の「態度」
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に焦点を当て,課題を追究することにした.
2008年・2009年の体育科・保健体育科の改訂は,「発 達段階における指導内容の明確化」に重点を置き,「技 能」はもとより「態度」「知識,思考・判断」においても,
児童・生徒の発達段階を踏まえ改善が図られている.
しかし,「態度」においては,小学校と中学校・高等 学校との学習指導要領の記載内容が大きく異なり,的 確な発達段階を踏まえた表記になっていないのではな いかという危惧がある.
Ⅱ.方法
1.研究の目的2008年・2009年改訂の小学校・中学校・高等学校 の現行学習指導要領では,体育・保健体育科に限らず 全教科において子どもたちに身に付けさせたい観点と して「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能」「知識・
理解」の4観点を挙げている.この中でも体育・保健 体育科の「態度」に関わる「関心・意欲・態度」につ いては,小学校の表記と中学校・高等学校の表記が異 なるなど,大きな課題があるものと考える.
学習指導要領等から「態度」に関する表記の相違を 明らかにするとともに,改めて体育科・保健体育科で 身に付けさせたい「態度」について考察する.
2.方法
学習指導要領(同解説を含む)及び国立教育政策研 究所が作成した『評価規準作成のための参考資料』等 を用い,学校種や教科による「態度」の捉え方を比較 検討する.
Ⅲ.結果と考察
現行学習指導要領(小学校:運動領域,中学校:体 育分野,高等学校:科目体育,以下これらをまとめて
「体育」という.)における各学年の「態度」の表記は,
表1のようになっている.
学習指導要領(体育)における「態度」に関する表 記は,「目標」と「内容」に見ることができ,小学校・
中学校・高等学校を通じて,①運動に積極的に取り組 むなどの「愛好的態度」,②ルールを守る・仲間と協 力するなどの「公正・協力に関する態度」,及び③ケ ガに注意するなどの「安全に関する態度」の3つに大 別することができる.この視点は1998年改訂された 前回学習指導要領(表2)においても同様のものとなっ ている.
1.「目標」における態度の表記
現行学習指導要領の小学校の各学年の目標,中学校 の体育分野の目標及び高等学校の科目体育の目標を見 ると,小学校の第1学年及び第2学年を除き,「公正・
協力に関する態度」→「安全に関する態度」→「愛好 的態度」の順で文章が構成されている.小学校第1学 年及び第2学年の目標では「公正に関する態度」の視 点が欠落しているが,具体的な指導に関わる各領域の 内容を見ると「公正に関する態度」は存在している.
目標と内容とに齟齬が生じており,整合性を図る必要 があると考える.
前回学習指導要領では,「愛好的態度」に関する表 記が小学校第3学年及び第4学年と第5学年及び第6 学年でうかがい知ることができる程度で,それ以外の 学年ではほとんど記述されていなかったが,現行学習 指導要領では,全ての学年に「愛好的態度」の表記が されている.
2.「内容」における態度の表記
前回学習指導要領は,目標と同様に愛好的態度の表 記が各学年・各領域の内容でほとんどないが,現行学 習指導要領においては冒頭部分に書き込まれ,全学年 を通じ「愛好的態度」→「公正・協力に関する態度」
→「安全に関する態度」の順で文章が構成されている.
1)愛好的態度
ア.発達段階における表記の視点から
小学校は,愛好的態度を示すものとして,各学年の 全ての領域において「運動に進んで取り組む」という 表現になっている.発達段階に応じた指導内容の明確 化という視点から見れば,学習内容そのものが学年が 進行するにつれて高度になり,その高度となった学習 内容に対して「進んで取り組む」という姿勢(さま)
は変わらないという考え方である.
一方,中学校及び高等学校は,中学校第1学年及び 第2学年が「○○運動に積極的に取り組む」,中学校 第3学年・高等学校第1学年が「○○運動に自主的に 取り組む」(※高等学校第1学年は学習指導要領から 読み取ることはできないが,文科省は4-4-4の「発 達の段階のまとまり」の考え方から高等学校第1学年 は「自主的に取り組む」としている.),高等学校第2 学年・第3学年が「○○運動に主体的に取り組む」と いう表記になっている.発達段階に応じた指導内容の 明確化という視点から見れば,中学校・高等学校の場 合,学年進行により学習内容そのものが高度化するこ とに加え,取り組む姿勢(さま)でも「積極的」→「自 主的」→「主体的」と発達段階に応じて使い分けている.
〔小学校〕
当該学年の学習内容 + 進んで取り組む
〔中学校・高等学校〕 積極的に取り組む 当該学年の学習内容 + 自主的に取り組む 主体的に取り組む
「積極的」「自主的」「主体的」の各用語を広辞苑で 引いてみると,「積極的」は“物事をすすんでしよう とするさま”,「自主的」は“他からの干渉などを受け ないで,自分で決定して事を行うさま”,「主体的」は“他 のものによって導かれるのではなく,自己の純粋な立 場において行うさま”となっており,それぞれ異なる 意味であることが分かる.
小学校の「進んで取り組む」と中学校第1学年及び 第2学年の「積極的に取り組む」はほとんど同意語と 受け止められるのに対し,中学校第3学年・高等学校 第1学年の「自主的に取り組む」と高等学校第2学年・
第3学年の「主体的に取り組む」は,取り組む姿勢(さ ま)に相違があると考える.現状として,多くの中学 校や高等学校は「自主的に取り組む」「主体的に取り 組む」姿勢(さま)を評価するのではなく,「積極的 に取り組む」姿勢(さま)を評価しているのではない かと思われる.
また,「積極的」「自主的」「主体的」の関係につい ても,「積極的」の上位概念が「自主的」であり,「自 主的」の上位概念が「主体的」であるという位置付け を国(文科省)が示したことになると考える.
積
中1・中2
極的 < 自
中3・高1
主的 < 主
高2・高3
体的
これは今回の改訂で初めて文科省が示したものであ るが,行動発達学的見地から広く認知されているとは 言い難く,慎重に扱うべきと考える.
イ.各教科の表記の視点から(表3)
他教科における学習指導要領の内容は「知識」が中 心であり,体育のように「態度」まで記述されている ものはほとんどない.しかし,文科省は学習指導要領 に基づき指導したことを評価する視点(換言すれば「子 どもたちに身に付けさせたい視点」)として全教科を 通じて「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能」「知識・
理解」の4観点注1)で行うことを求めている.これを 受け,国立教育政策研究所は,2010年から2012年に
『評価規準作成のための参考資料』等を作成し,各教 科における「態度」について子どもたちに身に付けさ
せたいことを示している.
保健の愛好的態度は,当該学年の学習内容に対し小 学校では「進んで取り組む」,中学校・高等学校では「意 欲的に取り組む」という表記をしており,ほとんど小 学校体育と同様の考え方に立っている.同一の教科で ある体育科・保健体育科において,体育と保健の「態 度」の捉え方に大きな差異があることは好ましくなく,
改善する必要があると考える.
また,音楽科においても「態度」は,小学校から高 等学校まで「○○の学習に主体的に取り組む」という 表現に統一されている.小学校体育と同様の考え方に 立ち,前段部分の「当該学年の学習内容」により発達 段階の違いを示している.また,「主体的」という言 葉に注目してみれば,体育では発達段階を踏まえ高等 学校第2学年及び第3学年の特有な表現として使用 しているが,音楽科では小学校から使用しており統一 性を欠くものとなっている.
さらに,「態度」の表記は各教科により大きく異な り,統一されたものとはなっていない.教科の特性を 踏まえこのような表記の違いが生じていると思われる が,現場の教師,特に小学校では一人の教師が全教科 を担当する訳であり,もう少し統一性のある表記を行 う必要があるのではないかと考える.
2)公正・協力,安全に関する態度
前回学習指導要領の内容は,「協力」については各 領域まんべんなく書き込まれていたが,それ以外の「公 正」「安全」は欠落している割合が高かった.現行学 習指導要領はこの点をしっかりと見直し,小学校から 高等学校まで「公正」「協力」「安全」の視点がほとん ど書き込まれている.
発達段階に応じた指導内容の明確化を踏まえ,態度 を「公正」「協力」「安全」別に見ていくと以下のよう にまとめることができる.
①「公正」
その運動の特有な表現があり各領域が全て同様の表 記とはなっていないが,小学校第1学年及び第2学年 から第3学年及び第4学年は「きまりを守る」,第5 学年及び第6学年は「約束を守る」が共通的表記とし て基本的に使用されている.一方,中学校第1学年及 び第2学年から高等学校は陸上競技系や球技系の「勝 敗を認め,ルールやマナーを守る」をはじめ,その運 動特有の表記をしている.また,「公正」を記述して いない領域もあり目的と整合性を図る観点からも整理 する必要があると考える.
注1)平成12年12月教育課程審議会答申を受け,観点別学習 状況の評価を基本とすることを維持.
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②「協力」
小学校第1学年及び第2学年から第3学年及び第4 学年は「仲よく運動をする」,第5学年及び第6学年 は「助け合って運動をする」,中学校第1学年及び第 2学年は「分担した役割を果たす」,中学校第3学年 は「自己の責任を果たす」,高等学校は「役割を積極 的に引き受け自己の責任を果たす,合意形成に貢献す る」が各領域共通的表記として基本的に使用されてい る.
③「安全」
その運動(領域)特有の表現はあるものの,小学校 第1学年及び第2学年は「場の安全に気をつける」,
第3学年及び第4学年は「場や用具の安全に気をつ ける」,第5学年及び第6学年は自分だけでなく周囲 の安全へも働きかける態度として「場や用具の安全に 気を配る」という共通的表記となっている.また,中 学校第1学年及び第2学年は「健康・安全に気を配る」,
中学校第3学年から高等学校は「健康・安全を確保す る」など,小学校と比べ発達段階を踏まえた包括的表 記なっている.
Ⅳ.結論
本研究では,子どもたちに身に付けさせたい「態度」
についての課題等を明らかにするため,学習指導要領 及び国立教育政策研究所が作成した『評価規準作成の ための参考資料』等を用い,学校種や教科による「態 度」の捉え方を比較検討した.
1.体育学習の「目標」
小学校第1学年及び第2学年の目標では「公正に関 する態度」の視点が欠落しているが,具体的な指導に 関わる各領域の内容を見ると「公正に関する態度」は 存在しており,目標と内容とに齟齬が生じている.
2.愛好的態度
体育学習の「愛好的態度」の表記については,小学 校と中学校・高等学校で考え方の相違がみられる.
〔小学校〕
学習内容そのものが学年が進行するにつれて高度に なり,その高度となった学習内容に対して「進んで取 り組む」という姿勢(さま)は変わらない.
〔中学校・高等学校〕
学年進行により学習内容そのものが高度化すること に加え,取り組む姿勢(さま)でも「積極的」→「自 主的」→「主体的」と発達段階に応じて使い分けている.
また,体育学習では「積極的」の上位概念が「自主 的」,「自主的」の上位概念が「主体的」という考え方
を示したが,この考え方は広く認知されているとは思 われない.例えば,「主体的」という言葉は,体育で は高等学校第2学年及び第3学年の特有な表現とし て使用しているが,音楽科では小学校から使用されて いる.
3.各教科との比較
「態度」の表記は各教科により大きく異なる.
保健や音楽科の愛好的態度は小学校体育科と同様の 考え方をしている.同一教科である体育科・保健体育 科において,体育と保健の「態度」の捉え方に大きな 差異がある.
参考文献
文部科学省,小学校学習指導要領解説体育編,東洋館出版社,
2008
文部科学省,中学校学習指導要領解説保健体育編,東山書房,
2008
文部科学省,高等学校学習指導要領解説保健体育編・体育編,
東山書房,2009
評価規準作成のための参考資料-小学校-,国立教育政策研 究所教育課程研究センター,2010
評価規準作成のための参考資料-中学校-,国立教育政策研 究所教育課程研究センター,2010
評価規準作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料-
高等学校-,国立教育政策研究所教育課程研究センター,
2011