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氏 名 三上 謙一
学 位 の 種 類 博士(心理学)
学 位 記 番 号 人博 第155号 学位授与の日付 2020年1月16日 課程・論文の別 学位規則第4条第2項該当
学 位 論 文 題 名 青年期以降のクライエントとの心理療法におけるアタッチメント の活用に関する研究
論 文 審 査 委 員 主査 教授 永井 撤 委員 教授 下川 昭夫 委員 准教授 酒井 厚
【論文の内容の要旨】
本研究の目的は、John Bowlby の構築したアタッチメント理論とその実証研究の知見を、
青年期以降のクライエントとの心理療法に活用するためのモデルを提案することである。
「はじめに」では筆者がアタッチメント理論に興味を持ったきっかけから、その後の臨床お よび研究の流れをまとめることで、本研究の視点を明らかにした。
本研究は第Ⅰ部序論、第Ⅱ部本論、第Ⅲ部結論の3部構成になっている。第Ⅰ部序論は文 献研究である。第1章「Bowlby の思想」では
Bowlbyの生涯を振り返り、
Bowlby自身の生育 歴がアタッチメント理論の構築過程に与えた影響を検討した。 次に
Bowlbyの著作を中心に、
アタッチメント理論の基本的概念を整理した。最後に晩年の著作で
Bowlby自身が提示した アタッチメントに基づいた心理療法のモデルを検討した。第2章「アタッチメント研究の発
展」では
Bowlbyの共同研究者であった
Ainsworthが開発したストレンジ・シチュエーショ
ン(SSP)による乳幼児アタッチメント研究の発展と、その教え子である
Mainの開発したア ダルト・アタッチメント・インタビュー(AAI)による成人アタッチメント研究の発展をま とめ、その後世代間伝達、内省機能、獲得安定型など臨床実践に関連した研究を概観し、臨 床に活用する上での課題を考察した。次に第3章では「Crittenden の「アタッチメントと 適応の動的―成熟モデル(DMM) 」による成人アタッチメント研究の展望:理論編」として、
Ainsworth
のもう一人の教え子である
Crittendenが、従来のアタッチメント研究の限界を
乗り越えるために、提唱した新しいアタッチメントのパラダイムである
DMMについて理論 的に考察した。第4章は
DMMの「研究・実践編」として
DMM-AAIを用いた実証研究と事例研 究、および司法場面への応用についてまとめ、
DMMの臨床的可能性を検討した。第5章では
「心理療法研究における治療同盟とアタッチメント」として、心理療法についての実証研究
である心理療法研究の中の治療同盟とアタッチメントとの関連について取り上げた。治療
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同盟は心理療法の結果に関連することが知られているが、治療同盟の形成にセラピストと クライエントのアタッチメントが影響することも示されており、両者の複雑な相互作用に ついての知見をまとめ、考察した。第6章は「治療同盟の破綻と修復」と題して、治療同盟 の破綻は危機であるが、同時にクライエントの問題を理解する機会でもあるという観点か ら、その理論と実証研究について概観し、臨床実践への示唆をまとめた。第7章「アタッチ メントと精神分析」では
Anna Freudや
Spitzなどの精神分析家による
Bowlbyへの批判を 概観した上で、近年なぜ精神分析の中でアタッチメント理論が再評価されるようになって きているのかを考察した。その背景を
Greenberg & Mitchell (1983)による「欲動/構造モデル」と「関係/構造モデル」の区別に基づいて、いわゆる関係論的転回をした後の精神分 析ではアタッチメント理論は後者に位置づけられることを確認した。その上で「関係/構造 モデル」の問題も考察し、
DMM-AAIの導入によって個と関係性を統合する視点を持てるので はないかと論じた。第8章「アタッチメントとエビデンスに基づいた心理療法:対人関係療 法(IPT)とメンタライゼーションに基づいた治療(MBT) 」ではアタッチメントを応用した エビデンスに基づいた心理療法の例として
IPTと
MBTを取り上げた。両者の共通点と相違 点を考察した上で、両者をアタッチメント理論の視点から見ると、どのような臨床実践上の 示唆が得られるのかを検討した。
第Ⅱ部本論は事例研究である。第9章「本研究の目的と方法」では日本の心理臨床におい
てもアタッチメント理論に基づいた事例研究が少ないことを指摘した。その上で臨床家に
とってなぜアタッチメント理論とその研究が使いづらいのかについて考察した。実証研究
では観察者が外部にいて被観察者と相互作用はしないが、事例研究では観察者でもあるセ
ラピストは治療関係の内部でクライエントと相互作用しながらデータを得ていると考察し
た。その上で前者を「外部観察データ」 、後者を「内部観察データ」と呼び、このデータの
性質の違いのために実証研究と臨床実践との間にギャップがあると指摘した。その上で実
証研究から得られた「ファクト」を、臨床家が心理療法過程という時間の流れの中で見通し
を得られるための「物語」へ転換する必要性があると想定し、アタッチメントの概念を「ア
セスメント」 「心理療法過程」 「介入技法」という心理療法の3つの側面に結びつける必要が
あると提案した。これまでの日本の臨床心理学では事例研究と実証研究は対立するものと
捉えられていたが、本研究では相補的なものとして捉え直した。具体的には先行研究でレビ
ューしたアタッチメントの実証研究を一般化可能性を担保する骨組みとして、事例研究を
実証研究では捉えきれない臨床の個別性を提供する肉付けとして位置づけた。このような
観点から6つの事例を検討した。第
10章「事例
1:「安心の基地」を確立するためのセラピ
ストの機能について」では、これまで当然の前提とされがちであったセラピストや治療関係
が「安心の基地」になるためには何が必要なのかを考察した。第
11章「事例
2:アタッチメント理論から見た心理療法の行き詰まりとその回復過程:逆転移としてのセラピストの
眠気の意味」ではセラピストが逆転移を起こした時にそこからどのように回復していくの
かを考察した。第
12章「事例
3:心理的に不安定な友人からの自殺の脅しに悩む学生への3