医薬系大学 における入学時MMPIの 適応予測性 の検討 一退学 との関連で一
○谷 野幸子 * 成
瀬 優 知 * * 四
間丁 千 枝 * 桑
守美 千 代 *松 井 三 枝 * * 松 井 祥子 *井 上博*
Yukiko Tanin。 ,Yuchi Naruse,Chie Shikenchol lⅦ ichiyo Kuwarrlori, Mie Matsui, Shoko Matsui, Hiroshi lnoue:
Prediction of withdrawal using MNIPI measurernent
I は じめに
学生相談 に携わ っていると、多 くの大学生がさ まざまな環境、対人関係等の中で悩んでいること が実感 され る。彼 らが抱える問題 は多種多様であ り、近年 自殺 との関連で増加が懸念 されているう つ状態や、青年期を好発年齢 とす る統合失調症圏 内にあるもの も散見 され る。来談す る学生 には危 うく危機を脱する者 も多いが、キャンパス内にあっ て も来談す ることな く、精神的な問題を抱えたま ま学生生活か ら脱落 してい く者 も存在す る。 この ような状況 に対 し、入学時のメンタルな状況 を質 問紙等で把握 し、新入生 の大学生活への適応を援 助 しよ うとす る試みは全国で行われている1)'2)。
富山大学杉谷キ ャンパ スの前身である富山医科 薬科大学 において も、統合前 の8年間、大学生 の 適 応 援 助 、 精 神 障害 の予 防 を視 野 に、 入 学 時 NIMPI (ヽ 4innesOta n/1ultiphasic Personality lnventOry)が 実施 された。
MMPIは 元来疾患 との関連で考案 された質問 紙法であ り、問題を呈す る対象者 に臨床 の場で施 行す る査定法 として有用 なバ 、 ソテ リーの一つであ る。一方、質問紙法の中で も質問項 目数が多 く、
回答 に要す る時間を考えると健常者が大半を占め
る対象への一斉施行には慎重 にな らぎるを得ない。
また、結果の処理 について も、個 々の状態像 とつ き合わせたバ ッテ リーの一つ として用 い られる臨 床 の場 とは異な り、 スク リーニ ング法や取 り出さ れた対象への告知や対策のあ り方等、一連の事柄 が課題 となろう。
本論文 では、学生生活か らの脱落の指標 として 退学 をとりあげ、2005年までの 8年 間の資料 に基 づ き、退学者 と他 の学生 の MMPI臨 床尺度 のス コアを比較 し、大半が健康な集団のスク リーニ ン グ法 としてのMMPIに ついて、 その適応予測性 について検討を加えた。
Ⅱ 方 法 1、 対象者
統合前 の富 山医科薬科大学 の構成 は、 医学部 (医学科90人定員、看護学科60人定員)と 薬学部 (薬科学科105人定員)の 2学部3学科か ら成 り、編 入 (医学科5人定員、看護学科10人定員)を 加え た計270人が入学時MMPIの 対象 とな った。
MMPIを 実施 した1998年か ら2005年までの入 学生 は2,161人で、未受検 の10人を除 く2,151人が 本論文の対象者である。 うち退学者が47人含 まれ
*富 山大学保健管理 セ ンター杉谷支所 **富 山大学医学部
表 1受 検者構成
(人)年齢群
18歳 1 9 歳 20‑22歳 23歳 以上
計医学科 男 性
女性 看護 学科 男 性 女性 薬科 学科 男 性 女性
103 55 9 386 299 2 1 2
( 2 )
( 6 ) ( 9 ) ( 2 )
190 77
6 65 162 103
( 2 ) ( 1 )
( 8 ) ( 1 )
1 5 2 ( 3 53
4 5 3 ( 1 4 4 ( 5 27 ( 4
5 1 9 ( 8 ) 212
20 ( 1 ) 538 ( 8 ) 514 ( 22 ) 348 ( 3 )
7 3 1 ( 8 )
558 ( 9 )
862 ( 30 )
)
) )
74 ( 1 27
1 34 ( 1
9 6 ( 1
計 1064 ( 19 ) 603 ( 12 ) 333 ( 13 ) 151 ( 3 ) 2 1 5 1 ( 4 7 )
( ) 表 2
内 は、退学者 内数
検査結果 の フ ィー ドバ ック状況
(人)年齢群
1 8 歳 1 9 歳 20¨ ‑22膚モ 23歳以上
計医学科 男 性
女性 看護 学科 男 性 女性 薬科 学科 男 性 女性
3 3 ( 1 ) 22
5 2 1 ( 2 ) 15
13 5
1 2 ( 1 ) 3 1
85 ( 1 ) 61
2 126 ( 3 )
75 ( 4 ) 72 ( 1 )
146 ( 1 )
128 ( 3 )
147 ( 5 ) 16
13 2 98 43 51
23 21
11 8 5
計 223(2)96(3) 6 8 ( 3 ) 34 ( 1 ) 421 (9)
( )内 は退学者内数
る。
入学 までの期間によ り、対象者 を18歳 (現役)、
19歳 (一浪)、20‑22歳 (高卒後 2‑4年 )、23歳 以上 (高卒後5年以上)、の 4群 に分類 し、所属、
性別 の構成 を表 1に示 した。 また、検査結果 は希 望者421人に面接で フィー ドバ ックされたが、 そ の構成 は表 2の とお りであ った。 いずれ も ( ) 内は退学者内数 である。
2、 検査の方法等
検査 は入学式終了後、会場を移 した後、直ちに 一斉に施行 された。教示は心理学を担当する教員 が担当 し保健管理セ ンターの職員が補助を勤めた。
MMPIの 質問票 は新 日本版研究会編 タイプ Bを 使用 し、回答用紙 は、前半 4年 間はⅢ型 (電子計
算機用)、後半 4年 間 はⅡ型 を使用 した。時間 は 教示 を含めてあ らか じめ 1時 間40分を当てたが、
回答 し終わ った者か ら用紙 を提出 して退室す るこ ととし、時間内に終了 しない者 はその後 も引 き続 き全て終了す るまで回答す ることを求 め られた。
また、用紙提出時には職員が回答 に含 まれ る疑問 回答 (どち らで もない)数 を確認 し10個未満 に収 まるよ う求めた。 なお、教示内容 には、希望者 に 対す る結果 フィー ドバ ックについての説明が含め
られた。
3、 解析方法
全 データについて、臨床尺度のK得 点修正後 T
≧70を有所見 とし、各尺度 と退学 について検定 し
た。 また、MMPIの 臨床尺度 が有所見 とな った
個数 によ って、① 2個 以上 を 「 高 2点 群」、② l 個 を 「 高 1点 群」、③ O個 を 「 高 0点 群」 と して
3臨 床群 に分類 し、退学者 と非退学者の学科、性 別、年齢、臨床群 な らびに結果のァィー ドバ ック 有無 を独立変数 と して多重 ロジステ ィック回帰分 析を行 った。 同様 に、退学時期を、① l年 未満、
② l年 超〜 4年 未満、③ 4年 以上、の 3群 に分類 し、MMPIと の関連を解析 した。
Ⅲ 結 果
1、 MMPl各 臨床尺度の有所見 と退学
退学 と臨床尺度有所見 の有無 につ いて χ 2検 定 を行 った結果を表 3に 示す。10個の臨床尺度 の う
表 3 臨 床尺度有所見 ⊂スコア≧70)の 有無と退学
臨床尺度
T≧ 70 T<7041/2′ 008 39/1′ 980 44/2′ 065 43/2′ 069 45/2′ 063 41/2′ 054 38/2′ 009 42/2′ 066 46/2′ 110 39/1′ 999
十p<o.o5′ 中tp<o.0113
ち、 Hs、 Pa、 Pt、 Siの 4尺 度が 1%水 準 で、また、 D、 Pd、 Scの 3尺 度が 5%水 準で、
退学者が有意 に有所見割合が多か った。
2、 MMPIの 有所見臨床尺度の多寡 と退学 退学 と有所見臨床尺度の多寡についての解析結 果 を表 4に 示す。退学者 は学科間に差があ り、年 齢間で も18歳に対 して20‑22歳 で有意 に多 く、性 別では女性 よ りも男性 に多 い傾向が認 め られた。
これ らの学科、性、年齢 を調整 しロジステ ィック 回帰分析 を行 った結果、 「高2点群」 (有所見臨床 尺度 の個数 が2個以上)で は 「高0点群」 (有所見 尺度 な し)に 対す るオ ッズ比が2.80倍で有意 に退 学 の確率が高 か った。一方、 「高1点群」 (有所見 臨床尺度 が 1個 )の オ ッズ比 は1.96倍で、他 の 2 群のほぼ中間値 とな っていた。
なお、 フィー ドバ ック面接 について も同時に解 析を行 ったところオ ッズ比 は1.00で 、 フィー ドバ ッ
ク面接の有無 と退学 との関連 はみ られなか った。
更 に、退学時期別 に同様の解析 を行 った。退学 者が最終的に退学 に至 るまでの期間 は、最短 3ヶ 月、最長 6年 である。 これを、① l年以内、② l 年超〜 4年未満、③ 4年以上、の 3期間に分類 し、
有所見臨床尺度個数 との関連を解析 した結果を表
H s
D
H y
P d
M f
P a
P t
S c
M a
S i
6/103 8/171 3/86 4/56 2/88 6/97 9/142
5/85 1/41 8/152
表 4退 学者 の特性 および MMPl有 所見尺度個数等 との関連
項
自由度 オ ッズ比
p 値性 学科
MMPI有 所見尺度個数
19歳/18歳 20‐ 22歳/18歳 23歳 以上/18歳 男性/女 性
医/薬 看/薬
1個/0個 2個以上/0個 あ り/な し
0.018 0.550 0.002 0.200
0.056
0.002 0.000 0.618
0.012 0,108 0.004
0.998 Food back 面 接
(退学暑数) (19) ( 1 4 )
総 計
(14)(47)
1 個/0個 2 個以上/0個
2.23 1.78
41
3.65#
5 . 1 4 ・ ・
2.80・1.96#・年齢、性、学科 を同時 に変数 と して投入 し、 ロジステ ィック回帰分析 を行 った。
キホ
pく0.01、 #pく 0.1
5に 示す。 サ ンプル数が少 な く一貫 した結果 は得 られなかったが、 4年 以上経過 した後に退学に至 っ た群で、「高 2点 群」の 「高 0点 群」に対す るオ ッ ズ比が5.14倍で有意であ った。
3、 MMPl臨 床尺度上位 2尺 度の分布
有所見が複数 となる場合 の上位 2尺 度 について クロス比較を行 った結果、表 6と な った。上位 1 位 は退学 の有無 に関わ らず Dが 最多であるが、非 退学者 で は216人 中63人 (29.2%)で あ るのに比 し、退学者で は13人中6人 と半数近 くを占めてい る。退学者 の上位 1位 で 2番 目に多か った Ptの
表 6 高 得点上位 2個 の有所見尺度クロス比較
両群 における比率 は、退学23.1%、非退学12.5%
であった。
上位 2位 で最多 は、非退学者で Pt、 退学者で Pa、 P tの 2尺 度 であ った。 両群 に共通す る P tの 比率 は、非退学20.8%、退学23.1%と近似 している。一方、退学者で同数最多の Paの 比率 は、退学者が23.1%であるのに対 して非退学者 は
7% で 、大 きく異 なる。
4、 事例 (1 )退 学事例
ア、入学時MMPI:Dと S i の 2 尺 度が有所見
No.l No.2 Hs D Hy Mf Pa 合 計
非退学者 Hs
Hy
Pa
合 計
退学者
Hy
Pa
Sc Ma
合 計