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"Trew Lunet"--Ywain and Gawainの一解釈

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"Trew Lunet"‑‑Ywain and Gawainの一解釈

著者 秋篠 憲一

雑誌名 同志社大学英語英文学研究

号 74

ページ 1‑28

発行年 2002‑03

権利 同志社大学人文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004261

(2)

“Trew Lunet” ––Ywain and Gawain の一解釈

秋 篠 憲 一

I

 Ywain and Gawain は作者不詳の14世紀前半に書かれた作品である。英国 の北部方言で書かれ,詩形は二行連句で4032行からなるロマンスである。現 存する唯一の写本は,MS. Cotton Galba E. IXの中に収められている。この作 品の source としては,およそ6800行からなるフランスの詩人 Chrétien de Troyes のYvain (Le Chevalier au Lion) が考えられる。なおドイツでは,Yvain のあとしばらくして,同じく Yvain をsource として,およそ8200行に及ぶ IweinがHartmann von Aue によって書かれた。Ywain and Gawain は,円卓の 騎士 Ywain の愛と冒険の物語である。不思議な泉の冒険に挑んだ Ywain は,

泉の守護者である Salados the Red を殺し,彼の妻である Alundyne と結婚す る。だが,結婚後すぐに,一年以内に戻ってくるという約束を妻と交わし,

武勲と名声を求めて旅立つ。遍歴の騎士としての日々を過ごすうちに,不幸 にも,妻への誓いも忘れてしまい,妻の愛も領地も失ってしまう。主人公は 絶望のあまり狂乱状態に陥り,森の中で獣にひとしい生活を送る。そのあと,

ある婦人の助けで病が癒え,放浪の旅の途中でライオンの命を救ってやり,

The Knight with the Lion としてさまざまな冒険を重ね,ついに念願の妻との 和解を果たす。

 この作品では,主人公の結婚と和解には,Alundyne の侍女であるLunetが 深く関わりを持つ。作品のエピローグで,作者は Lunet を“trew Lunet”と呼 び,彼女を讚える。このロマンスは source と比べるとおよそ三分の二の長さ

(3)

である。両作品の比較研究の場合,イギリスの詩人がフランスのロマンスを どのように短くしていったかが大きな関心事になる。だが,そればかりでは なく,イギリスの作者の重要な書き加えにも注意を向けなければならない。

拙論では,Yvain と Iwein の両作品と比較しながら,“trew Lunet”と呼ばれる Lunet に焦点を当て,Ywain and Gawain における Lunet の characterization,プ ロットの展開における彼女の役割・機能,彼女と作品のテーマとの関係につ いて論じ,作品解釈の一つの試みとしたい。

II

 不思議な泉の冒険に挑戦した従兄弟である Colgrevance の恥ずべき敗北の 敵討ちのために,その泉へ向かった Ywain は,泉の守護者に瀕死の傷を負わ せ,その騎士が城の中へ逃げ込むのを追跡するのであるが,まんまと落とし 格子の罠にはまり,敵の城内で絶体絶命の窮地に立たされる。もうこれまで かと思われた時に一人の女性が主人公を助ける。その人物こそ Lunet である。

わが主君を殺した騎士をなぜ彼女は助けるのか。しかも,それだけではなく,

彼女は女主人 Alundyne と Ywain の結婚の仲介役まで積極的に引き受けるの である。わが夫を殺されたばかりの女主人と,その夫を殺した張本人である 騎士をどのようなやり方で夫婦のきずなで結ばせようとするのか。Lunet の 二つの行為は彼女の主人公と女主人に対する信義・忠誠心と,彼女の人物描 写を考える上で極めて重要である。

 それでは,なぜ Lunet が Ywain の命を救いたいと思ったのか考えたい。罠 の中で身動きがとれない主人公のところへ彼女が現れ,その理由について次 のように説明する。

‘I aw the honore and servyse:

I was in message at the king (Bifore this time whils I was ying) And was noght than savesé

(4)

Als a damysel aght to be.

Fro the tyme that I was lyght, In cowrt was none so hend knyght, That unto me than walde take hede, Bot thou allane, God do the mede!

Gret honore thou did to me,

And that sal I now quite the.’ (720-30)1

主人の使いとして Arthur 王の宮廷に行った時に,礼儀もわきまえない未熟な 彼女に対して,円卓騎士団の中で Ywain だけが敬意を払ってくれた,しかも その行為に恩義を感じると述べる。名声ときめく Arthur の宮廷へ派遣され,

名だたる騎士達から無視され,彼女はよほど恥ずかしい思いをしたのであろ う。Ywain の温かい心,情け深さを心から嬉しく思い,そのことをずっと忘 れなかったのであろう。ここには,主人公の人柄と同時に Lunet の一度受け た恩は忘れないという律義な性格が描かれている。しかし Ywain は恩人であ ると同時に主君を殺した敵でもある。その人物を助けるのは命がけである。

“I sal do that the es lefe––/ If al it turn me to mischefe”(789-90) と述べる彼女の言 葉には勇気が示されている。そして,“If thou will my kownsail leve, / Thou sal find na man the to greve”(735-36) と言って,Ywain の身を守るために指輪を 貸し与える。指輪の宝石を素手で握っている限り誰にも姿を見られないとい う不思議な力を持つ指輪である。Lunet による Ywain 救出の場面は Yvain,

Iwein とも内容的にはほぼ同じであるが,このあと,彼女の “my kownsail” と

いう言葉が示すように,彼女は Ywain と Alundyne にさまざまな助言を与え る。彼女の主人公と女主人に対する “trowth and luf”(35) は二人を “joy and blis”(4024) へと導いて行くのである。

 泉の冒険に挑んだ騎士によって夫を殺された Alundyne は,悲しみのどん 底に突き落とされる。この悲しみに打ちひしがれる絶世の美女である未亡人 に主人公はたちまち恋をしてしまう。Lunet によって危ういところを救われ

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た Ywain であるが,おもいがけず,恋の深傷を負ってしまう。そして,この 未亡人を妻として迎えたいと決意する。それでは Lunet は,どのようにして 主人公の切なる願いをかなえてやるのであろうか。彼女の性格の新たな面が 現れる。

 自らが殺した城主の奥方をなんとか妻にしたいとYwainが心に決めた直後 に,Lunet が彼の様子を見に戻ってくる。

Sho sayd, ‘How hasto[w] farn this day, Sen that I went fro the oway?’

Sone sho saw him pale and wan, Sho wist wele what him ayled than.

Sho said, ‘I wote thi hert es set, And sertes I ne sal noght it let, Bot I sal help the fra presowne And bring the to thi warisowne.’

He said, ‘Sertes, damysele, Out of this place wil I noght stele;

Bot I wil wende by dayes lyght, That men may of me have sight, Opinly on ilka syde,

Worth of me what so bityde, Manly wil I hethin wende.’

Than answerd the mayden hende,

‘Sir, thow sal wend with honowre For thou sal have ful gude socowre.

Bot sir, thou sal be here, sertayne, A while unto I cum ogayne.’

Sho [wist] al trewly his entent

(6)

And tharfore es sho wightly went Unto the lady faire and bright––

For unto hir right wele sho myght Say whatsom hyr willes es, For sho was al hir maystres

Her keper and hir cownsaylere. (911-39)

彼女は Ywain の変化に直ちに気づく。実は,彼女が主人公のもとを離れる時 に,彼から,窓からでもよいから奥方の姿を見たいと頼まれていたのである。

彼女は,彼が “pale and wan”(典型的な恋の症状) になった原因が女主人にあ ることを素早く見抜く。こそこそ逃げるようなかたちではなく正々堂々と城 から出ていきたいという彼の言葉の裏にある,この城から出て行きたくない という真意を読み取る。鋭い観察力,機敏な判断力が伺える。しかも “thow sal wend with honowre / For thou sal have ful gude socowre” には,あからさまに 相手に内容を伝えるのではなく,恋の病にかかった相手の気持ちを慮りなが ら,間接的に自分の思いを表現する,言葉使いの巧みさも彼女が合わせ持っ ていることを明らかにしている。

 ついでながら,Yvain では,Lunette がいかがでしたかと尋ねると,Yvain は “I’ve delighted in everything I’ve seen,/ I am pleased and will always be pleased”(1558-59)2と答える。一方,彼女はややぶっきらぼうに,“I see quite well / What those words are meant to mean. I’m neither so simple or dull / That I can’t understand such talk.”(1562-64) と応じ,主人公の心の中まで立ち入ろう とはしない。そして彼を彼女の部屋へ案内する。そのあと彼の言ったことを もう一度じっくり考える。また Hartmann の Iwein では,Iwein が “I have found happiness today / And have hopes it will continue”(1755-56)3 と Lunete に返答す る。そして語り手は,“Before he had spoken one word/ The clever girl realized / That he was referring to her lady, / As she made clear to him later”(1757-59) と彼女 の明敏さに言及する。

(7)

 Ywain の女主人への恋を察知した Lunet は,彼の恋を成就させるためにさっ そく行動に移る。Harttmann では,“she had every intention / of seeing him become lord of the land”(1786-87) と,奥方のところへ行く Lunete の目的がはっきり 語られる。ここで忘れてはならないのは,Lunet が Alundyne とどのような関 係にあるかということである。Lunet は女主人にとって “hir maystres, her keper and hir cownsaylere” なのである。Lunet はこの関係を,Ywain のために,ま た女主人のために存分に活用するのである。

 それでは,Lunet は,どのように Alundyne を Ywain との結婚へと誘導し ていくのであろうか。そこでは彼女の持っている能力が十二分に発揮される。

彼女にとって,夫を殺されたばかりの女主人を説得するためには,どのよう に話を切り出すかが重要な問題となる。彼女は説得工作を次のように開始す る。

‘Madame,’ sho sayd, ‘I have mervayle That ye sorow thus ever on ane:

For Goddes luf lat be yowre mane!

Ye sold think over alkyn thyng:

Of the kinges Arthur cumyng!’ (940-44)

はじめに,女主人ともあろうものが悲しみに沈んでいることに驚きを表し,

城主亡き後の女主人の責務に言及し,もうすぐ泉へやって来る Arthur 王の手 からどのように領地を守るべきかを考えるのが肝要であると訴える。さらに,

この国には Arthur 王と彼の騎士達に勇敢に立ち向かう人間など誰もいないと 付け加える。Alundyne は,侍女の忠告が核心をついたものであることを理解 するが,それゆえにまた感情的になり,彼女に出て行けと命じる。その荒々 しい言葉に対して,女というものは,とかく,まともなことを言う人間を非 難するものだと応じ,一般論をもちだしながら,自分の助言に聞く耳持たぬ 女主人をちくりと皮肉る。

 そして,いったん奥方のもとを離れて,彼女に冷静にものごとが判断でき

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る時間を与えたあと,再び戻ってきて,今度は語気鋭く “ye er a barn”(975) と奥方を叱りつけ,いつまでもめそめそ泣いているのは恥ずかしいことであ る。いったいあなたは,ご主人が死んだことで,“The flowre of chevalry”(981) もこの世から姿を消してしまったとお考えかと詰問する。あたかも母親が厳 しく娘を叱りつけるような口調である。ここでは “grete shame”(978) と “grete gentri”(980) という対照的な言葉が使われ,侍女は女主人に “gentri” の大切さ を訴える。また亡き城主に代わる騎士がいることをほのめかし,Ywain の存 在をアピールする下準備も忘れない。そしていよいよ,二人の騎士が闘った 場合,勝者と敗者ではどちらが優れた騎士と言えるかと Alundyne に問い掛 ける。奥方はやむなく勝者であると答える。待ってましたとばかりに,それ では殺された城主よりも勝った騎士のほうが強く,優れた騎士ではないかと 攻勢をかける。亡き夫への侮辱的な言葉に立腹した Alundyne は侍女に退出 を命じる。沈着冷静な Lunet は女主人に一晩考える時間を与える。

 Lunet の思惑通り,翌朝,女主人のところへ行くと,あるじは昨晩の侍女 に対する非礼を詫び,例の騎士について是非とも話を聞かせて欲しいともち かける。その騎士が,Uryene 王の息子の Ywain であると告げられると,た だちに彼を自分のところへ連れてくるように Lunet に命じる。実際は,Ywain は城内にいるのであるが,そこは機転のきく Lunet,小姓を遣わして至急彼 をこの城へ連れてまいりますと嘘をつく。このように Lunet は必要とあらば 嘘をつくのであるが,あくまでも善意から出た虚言である。

 さらに,ここで有頂天になって我を忘れてしまう Lunet ではない。さっそ く次の手を打つ。Ywain と Alundyne の結婚には当然のこととして家臣たち の同意が必要である。そこで,女主人に,臣下の者たちを招集し,彼らのな かで誰が Arthur 王からこの国を守ってくれるかを聞いてみるように促す。家 来たちのなかで,身を賭してまでこの国を,そして不思議な泉を守護しよう とするものなどいやしないことを Lunet は知っており,結果として Ywain が 家臣たちの賛同のうちに新しい主君になれることを確信しているのである。

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 その間,Lunet は主人公を入浴させ,彼のために立派な衣装を用意する。い よいよ奥方と主人公を会わせる日になると,Lunet は Ywain に嘘をつく。す なわち,彼女が主人公を城内に匿っていることが Alundyne にばれてしまっ たと言うのである。Hartmann では,奥方のもとから Iwein のところへ行く Lunete について,“She decided in her playfulness / To act as if/ She had been sent / To him with bad news”(2217-20) と語られる。Yvain でも同じように嘘をつく のであるが,その理由についてははっきり語られない。なぜLunetはわざわ ざ嘘をつくのか。Iwein にあるように,冗談半分でふざけてやったことなの か。Ywain and Gawain の語り手はその理由についてはっきり述べていない。

だが Lunet には彼女なりに計算があるのではないか。なにせ才知にめぐまれ た女性であるから。何と言っても,Ywain は女主人の夫を殺した人間である。

Ywain を有頂天にさせて,笑みをたたえながら奥方の前へ連れていくよりも 不安,恐れを彼に抱かせながら,彼の恋した女性に会わせるほうが,彼に遜っ た態度をとらせ,彼女の感情を害する危険性が少ないと考えたのではあるま いか。

 Chrétien では,Love について冗舌とも言える詳細な記述があり,“a rapid- paced story of love and gallant adventures”4 である Ywain and Gawain との違いを みせているが,この嘘をつく場面でも,Lunette は,Yvain が奥方の “prisoner”

であると言って,ユーモアたっぷりに “prisoner” に愛の “prisoner” という意 味をもたせる。たとえば,彼女は “She wants you to be her prisoner, / She wishes to have your body / For herself, not even your heart / To be free”((1922-25) と巧み に主人公がおかれた状況を表現する。おまけに語り手も,“She was right, calling it a prison: / Whoever’s in love is in jail”(1941-42) と述べ,彼女の比喩の 見事さを褒め称える。

 美しき未亡人の前で恐れおののく Ywain に対して,“Pray to hir of hir mercy–

/ And for thi sake right so sal I––/ That sho forgif the in this stede / Of Salados the Rouse ded, / That was hir lord that thou has slayne”(1143-47) と助言を与え,ま

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ず,奥方の Ywain への怨念を取り除こうとする。主人公は愛する女性の前に 跪き,心から許しを乞い,それが叶えられる。そして “For thi luf ever I am redy / Lely forto lif or dy”(1167-68) と決意のほどを述べ,Arthur 王と円卓騎士 団からこの国を守ることを誓う。Ywain はすべての人々の歓呼の中でこの国 のあるじとなり,不思議な泉の守護者になるのである。

 このように,鋭い観察眼,すばやく的確な判断力,勇敢さ,人の心理を読 む洞察力,冷静沈着さ,話術の巧みさ,目的達成のためには嘘をもつくした たかさ――しかし,それはあくまでも善意によるものであるが,そして策略 家的才能によって,Lunet は見事に “maystres, keper, and cownsaylere” (腹心 の友,保護者,助言者) の役割を果し,5 女主人とその国を守り,恩人であ

るYwain の命を守り,彼の恋を成就させ,二人に対する “trowth and luf” を

実証してみせたのである。

III

 YwainとAlundyne の結婚のあと,Arthur 王と彼の騎士達が泉へやって来 る。円卓騎士団を代表して Kay が泉の冒険に挑戦する。泉の守護者と一騎打 ちをするが,敢え無く敗北を喫してしまう。勝者である騎士が実は Ywain で あることを知ってArthur 王たちは大いに喜び,Ywain の城に八日間滞在し,

丁重なもてなしを受ける。やがて,Arthur 王と騎士達は Ywain に別れを告げ るのであるが,Gawain がYwainに対して,妻のもとを離れて自分と一緒に 武者修行の旅に出るよう促す。Gawainは,“Sir, if thou ly at hame / Wonderly men wil the blame; / That knyght es nothing to set by, / That leves al his chevalry / And ligges bekand in his bed / When he haves a lady wed.”(1455-60) と述べ,妻へ の愛に溺れ,騎士としての武勇を疎かにしてはだめであると諭す。尊敬して やまないGawainの説得に応じ,主人公は妻に許可を求める。Alundyne は一 年間という条件付きで同意する。そして,“If ye com noght by that day, / My luf sal ye lose for ay”(1509-10) と念を押す。さらに夫の身の安全を守ってく

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れる不思議な力を持つ指輪を与える。武術試合を求めて主人公は遍歴するが,

数々の武勲をたて名声を欲しいままにする。やがて Arthur 王のもとへ帰って くるのであるが,妻との約束の一年は過ぎ去ってしまう。ある日,Ywain は 妻との約束を違えてしまったことに気づき愕然とする。そこへ妻から遣わさ れた一人の乙女が主人公のところへやって来る。いったいこの使者は Ywain に何を伝えに来たのか。どのように主人公を非難するのか。Ywain にとって 屈辱的とも言える彼女の言葉は,作品における Lunet の役割,そして作品の テーマを考察する上で重要な意味を持つ。また,Hartmann の Iwein では,

Lunete が使者として派遣される。詩人が使者の役を,一人の乙女ではなく Lunete に与えたことにより,Lunete の人物描写にどのような影響をおよぼし ているのか。これらの点について論じてみたい。

 使者の乙女は,Arthur 王,Gawain,そして他の円卓の騎士達の前で,Ywain を次のように痛烈に罵倒する。

‘He es ateyned for trayture, A fals and lither losenjoure!

. . . . Al was treson and trechery, And that he sal ful dere haby!

It es ful mekyl ogains the right To cal so fals a man a knight;

. . . . Sertainly so fals a fode

Was never cumen of kynges blode, That so sone forgat his wyfe That lofed him better than hyr life.’

Til Ywayne sais sho thus: ‘Thou es Traytur untrew and trowthles,

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And also an unkind cumlyng:

Deliver me my lady ring!’ (1601-28)

彼女の主人公に対する誹謗の中では,“trayture”“treson”“treachery”“fals” など,

いかに Ywain が “trowth” に欠けた人間であるかを示す単語が何回も使われ る。極め付きは,乙女が Ywain に面と向かって “traytur untrew and trowthles”

と非難する箇所である。しかもこのように“fals” な人間は騎士と呼ぶに値し ないと述べ,いかに “trowth” が騎士にとって肝要なものであるかが明らかに される。M.E.D. を調べると “trowth” にはさまざまな意味があるが,この作 品との関連では,1 (a) fidelity to one’s country, kin, friends, etc, loyalty, genuine friendship, faithfulness (b) fidelity or constancy in love, sincerity in love (c) marital fidelity; 2 (a) a promise, a commitment, a pledge; 3 (a) honor, integrity, adherence to one’s plighted word, knightly honor, adherence to the chivalric ideal が挙げられ よう。特にこの場面では,Ywain は,妻との約束を破り,fidelity in love と marital fidelity に背反する行為をし,knightly honor を汚してしまったのであ る。乙女から騎士として失格であると言われても弁解の余地がないのである。

Sir Gawain and the Green Knight では,旅の途中で立ち寄った城のあるじとの

約束を破ったがために,GawainはArthur 王たちの前で,恥ずかしさで顔を 赤らめながら,おのが犯した罪の告白をしなければならないのである。その Gawain が持っている盾には “trowth” を象徴する pentangle が描かれている。

Ywain and Gawain の語り手はプロローグで,“With worde men makes it trew and stabil, / Bot in thaire faith es noght bot fabil; / With the mowth men makes it hale, / Bot trew trowth es nane in the tale”(37-40) と述べるが,まさにここで指 摘されている同じ過ちを Ywain は犯してしまうのである。妻の夫への愛の象 徴である指輪は,乙女によって,Ywain の指から抜き取られる。

 ちなみにChrétienでは使者の乙女の非難は主人公の fidelity in love に向け られるが,さらに彼女は,Yvain と女主人の結婚の仲介役を果した Lunette ま で槍玉に挙げる。英仏の両作品では,Ywain (Yvain) の妻への裏切りが明ら

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かになった時に,二人の結婚のために尽力した Lunet (Lunette) が主人公に対 してどのような気持ちを抱いたのかは,この時点ではいっさい明らかにされ ない。

 それでは,Iwein の中で,使者役を与えられた Lunete は,献身的な奉仕を した恩人 Iwein にどのようなことを言うのであろうか。彼女は,Iwein を咎 めつつも,おのが複雑な思いを語る。

“Now I will always regret That I ever got involved And kept you from being killed, For I alone am responsible,

Except that I acted out of faithfulness.

. . . . . . . you take faithfulness lightly.

Thus there is all the more reason For you to be displeasing to all men Who love faithfulness and honor And who understand

That without faithfulness

An honorable man will come to nothing.

Now I announce to these lords

That they regard you from this moment on As a faithless man

(When you proved faithless, then I too Was guilty of both breaking my word And of faithfulness). (3147-86)

Lunete は何回も faithfulness (triuwe) という語を使って,名誉を重んじる,立 派な騎士にとっていかに信義が重要であるかを説く。そして信義を軽んじる

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Iwein の命を救ったことを後悔する。しかも彼に対する誠意からそのような 行動に出たのであるから,彼女の悔しい気持ちも理解できる。また Iwein が 妻を裏切ったことによって,Lunete までも裏切り者の汚名をきせられてしま うのである。また Lunete は,はじめて彼に会った時には,彼がこのような信 頼を裏切るような人間には見えなかったと言い,自分が Iwein という人間を 見誤ったことへの無念を表す。Lunete の語調は,Ywain and Gawain や Yvain の使者の乙女のように痛烈なものではない。恩人に忠義を尽くしたが裏切ら れてしまった彼女は,怒りというよりもやり場のない悲しみを抱きながら,

Iwein の指から奥方から贈られた指輪を抜き取ったのではないだろうか。

Hartmann は,使者役を Lunete に振り当てることにより,平板ではなく,よ り立体的で深みのある Lunete 像をつくりあげたと言える。6 また Lunete の

Iweinへの言葉では,fidelity in love だけでなく騎士として人間としての

“triuwe” の重要さが強調され,イギリスの作者との共通点を見せている。

IV

 自らの“foly”(1647)によって妻の愛と領地を失った Ywain は,狂気に陥り,

Arthur 王の宮廷を去り,森の中で裸同然の姿で獣のごとき生活を送る。やが て,幸運にも,ある婦人の持つ不思議な塗り薬によって狂気を癒され,また その恩返しに,その婦人を苦しめる邪悪な伯爵から彼女を救い,放浪の旅に 出る。旅の途中で,ドラゴンと闘うライオンを助ける。そして命の恩人であ る Ywain に忠義を尽くすライオンとともに,運命のいたずらか,再び例の不 思議な泉にやって来る。泉を見たとたんにすべてのことが思い出され,悲し みのあまり主人公は卒倒する。その時,鞘から抜けた剣によって首に傷を負 い出血する。それを見たライオンは,Ywain が死んだものと思い,自らもそ の同じ剣で命を絶とうとする。その瞬間 Ywain が起き上がったために,ライ オンは自殺を思い止まる。獣までもこのように忠義な行動をすることを目の 当たりに見せつけられ,主人公は妻を裏切った自分をますます恥じる。

(15)

Hartmann では,主人公はライオンの行為を “triuwe” の模範であると解釈す る。狂気に襲われた時と同じような状況におかれた Ywain であるが,ここで 自分に忠義を尽くしてくれた Lunet に再会することになる。英仏の両作品で は,妻に対する背信行為をしたあと Ywain (Yvain)がLunet (Lunette) とはじ めて会うのがこの泉の場面である。それでは,久しぶりに再会した Lunet は Ywain に何を語りかけるのか。彼女は彼にどのような感情を抱いているのか。

Lunet の “trowth” という観点からこの場面について考察したい。

 この場面で興味深いのは,はじめのうち二人がお互いに相手が誰であるか 分からずに言葉を交わすところである。泉の近くの礼拝堂に閉じこめられて いる女性が,嘆き悲しむ男の声を聞いて,その理由を尋ねる。その男 (Ywain) は,自分はこの世で最も惨めな人間であると言い,さらに次のように語る。

‘I was a man now am I nane.

Whilom I was a nobil knyght And a man of mekyl myght;

I had knyghtes of my menye And of reches grete plente;

I had a ful fayre seignory––

And al I lost for my foly.

Mi maste sorow, als sal thou here, I lost a lady that was me dere.’ (2116-24)

この引用箇所は source にはないイギリスの作者独自の書き加えであり,それ だけに注目しなければならない。G. K. Hamilton はこの箇所について次のよ うに論じる。

. . . Ywain thinks himself a true man, knight, friend, lord and husband until circumstances prove he never really knew what those relationships mean.

In his madness he loses his name and his power of speech. After the healing he still lacks an identity in his society. . . . His humanity is integrally

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interwoven with the love and lordship he has betrayed. He can no longer call himself Ywain.7

確かに Ywain にとって騎士であること,領土と愛する妻を持っていることが identity の重要な部分であったにちがいない。従って自らの “foly” によって その両方を失った彼は,自分のことを Ywain と呼ぶことができないのかもし れない。だが,ここでは Ywain と名乗らないだけではなく “I was a man now am I nane” と言っているのである。今の自分は人間ではないと言っているの である。Ywain は自分に忠義を尽くすライオンと,妻を裏切ったおのれの恥 ずべき姿を見,自分は人間ではない,獣以下の存在であると考えているので はないか。まさに “trowth” は騎士いや人間にとって identity そのものであり,

その “trowth” に欠ける Ywain は人間としては失格なのである。

 悲しみのうちにおのれの真情を吐露する男に対して,囚われの身の女性は 自分こそあなたより哀れむべき存在であると述べ,礼拝堂に閉じこめられて いる理由,自分のおかれている状況について次のように説明する。自分は

“tresown” (2133)の罪で閉じこめられており,このままでは明日火刑に処せら れる。ただ Gawain と Ywain なら自分のことを助けてくれるであろうと。こ こで見落としてならないことは,その女性 (Lunet) が誰のせいで自分が裏切 りの罪を負わされているかを口にしないことである。もし Ywain に対して恨 みの感情を持っていたら,彼の信義に悖る行為について当然言及したであろ う。しかも自分の訴えを聞いているのが Ywain であるとは知らないのである。

参考までに,Iwein では,Iwein が,どの Iwein があなたを助けてくれるので すかと尋ねると,彼女は,その騎士のせいでわたしはここに閉じこめられて いる,人間をよく知るためには時間が必要なんですねと答える。Iwein に対 する恨み・憎悪というよりも,人間をどこまで信用してよいのかという戸惑 いと失望感が漂う。ここではじめて,Ywain は,礼拝堂に閉じこめられてい るのが Lunet であることを知る。彼は更に詳しく事情を説明するように彼女 を促す。彼女は,奥方がことのほか自分を愛し,自分の助言に耳を傾けたが

(17)

ゆえに家令がそれを嫉み,兄弟二人とともに自分に裏切りの罪を着せたので あると述べる。

 ここで,Yvain について少し触れてみたい。Lunette は,Yvain が約束通り に帰ってこなかった時の奥方の様子について,“She grew angry with me, / Thinking she’d been betrayed / By following my advice”(3664-66) と語る。奥方 が,裏切られたことへの怒りを,助言を与えた Lunette に向けたことをあか らさまにする。そして日ごろ Lunette に対して嫉妬を抱いていた家令が,そ の機に乗じて奥方と侍女を不仲にし,ついには Lunette に背信行為の罪を負 わせたと述べる。彼女の窮境には奥方も間接的ながら関係していることを示 す。あくまでも奥方をかばうのであれば,今回の自分の処刑には家令とその 兄弟達だけが関与していると言うこともできるであろうが,そのようなこと はしない。なお Iwein では,奥方の Lunete への怒りについては述べられず,

三兄弟が奥方を説得して,侍女がどのようなことになろうとも一切介入させ ないようにしたと語られる。英仏独の三作品の中で,イギリスのロマンスだ けが Lunet と奥方の信頼関係の揺らぎについて特に詳しく言及していない。

またYwainが決闘裁判で家令と彼の兄弟たちを破り,火刑から Lunet を救い 出した時も,“he made the saghtelyng / Bitwene hyr and the riche lady”(2644-45) と述べられるだけで,侍女と女主人がその時どのような気持ちでいたか語ら れない。ただはっきりしているのは Lunet の奥方に対する “trowth”,すなわ ち忠義•忠誠に揺らぎはなく,確固たるものであるということである。一方,

Chrétien では,奥方は侍女に許しを乞い,ふたりとも喜びに満ちあふれたと 描かれる。そして Hartmann では,二人に関して “She regained her lady’s favor / For having innocently / Suffered trial and distress. / Her lady made this up to her until the day she died”(5447-50) と語られ,侍女が火刑に処せられるのを許し た奥方の強い後悔の念が浮き彫りにされる。

 Ywain and Gawain では,Lunet は,自分を罪に陥れたのはすべて家令とそ の兄弟であることを強調し,女主人を裏切り,Lunet の誠意にも答えてくれ

(18)

なかった主人公を咎めるようなことはない。Yvain において,自分を救い出 してくれる騎士の名前を言うときに,“Yvain is the reason I’ll be wrongly / Brought to martyrdom and death”(3627-28) と述べる Lunette と大いに異なる。

またLunetは奥方にとって不利になり,不名誉なことは一切口にしない。ま してや Ywain の妻への背信行為については,なんら触れることもない。

 不思議な泉での Ywain と Lunet の再会の場面は,仏独の両作品と同じよう に,行数の点で作品のちょうど中央部に位置し,構造・内容の上でも重要な 機能を果している。その証拠に詩人独自の重要な書き加えもある。Ywain の 礼拝堂に閉じこめられた女性 (Lunet) へのおのが真情の吐露は,罪の告白と 解釈することもでき,8 Ywain という騎士,人間の赤裸々な姿が描かれる。ま たこれほど重要な場面であるならば,source の削除・改変も念入りに行われ たにちがいない。Ywain and Gawain の詩人は,Hartmann の Lunete のように 主人公への複雑な心境を Lunet に語らせることもできたであろう。また Chrétien の Lunette のように,自分の苦境にいかに主人公と奥方が関係して いるかについて触れさせることもできたであろう。しかし,詩人はそのよう なことをせず,Lunet には家令たちの悪らつな行為だけを語らせるのである。

明日には死ぬかもしれない状況にあって,Lunet にはあくまで Ywain と Alundyne への “trowth” を貫かせたのである。ここでは,あくまでも “trowth”

を守り抜く Lunet と,妻と Lunet の信頼に背き,命の恩人である Lunet を窮 地に陥れた,“trowth” を蔑ろにした Ywain とが対照的に描かれている。

 Lunet を救えるのは Gawain か Ywain のどちらかである。しかし,Gawain は,ある騎士によって拉致された Arthur 王の王妃救出のため,Lunet を助け ることができない。そこで Ywain は,“Als I am trew knyght, / I sal be redy forto fyght / Tomorn with tham al three, / Leman, for the luf of the”(2189-92) と言 い,決闘裁判において家令たちと闘うことを誓う。A. V. Schmidt と N. Jacobs は,この Ywain のLunet への誓い・約束を次のように解釈する。

“True” understanding of his obligation to her is to be a test of Ywain’s moral

(19)

advance, for what he owes her is gratitude, or, as he calls it, ‘luf.’ There is a special significance in this championing, for unlike himself, Lunete [Lunet]

has been unjustly ‘bikalled of tresown’ (2133). In promising to fight for her, Ywain undertakes both to prove her truth and to regain his own.9

この解釈は妥当なものであるが,さらに私見を付け加えたい。作品の冒頭で は,Arthur 王の時代に比べて,今の世の中は “trowth and luf es al bylaft” (35) と,語り手は嘆くが,Ywain はまさに Lunet への “trowth and luf” をこれか ら証してみせようとするのである。それはおのれの名声・武勲のためではな い。“I was a man now am I nane” と嘆いていた Ywain が,“I am trew knyght”

と言うのである。妻への “trowth” を果せなかった彼は,いま Lunet のために,

騎士として “trowth” を果そうとするのである。そして,彼女には,自分の名 前を一切明かさないように頼む。Ywain という名前を捨てて,騎士としての 新たな道を歩んで行こうとするのである。

 Yvain と Iwein においては,Yvain (Iwein) の Lunette (Lunete) 救出の誓いに 対して,Lunette (Lunete) は,自分の命よりも主人公の命の方が大切であるか らと言って,一対三の不利な闘いを強いられる主人公のためを思い,彼の申 し出を辞退する。しかしながら,この辞退は主人公の感情を少々損ねること になる。たとえば,Yvainは,“Now that is very insulting, / My friend! . . . / Perhaps you really don’t wish / Deliverance from death, or else / You look down at the sort of assistance / I've offered to you”(3750-55) と返答する。これに対して,

Ywain and Gawain では,Lunet は,“I prai to grete God al weldand / That thai have noght the hegher hand; / Sen that ye wil my murnyng mend” (2199-201) と言 い,ただ主人公への神の加護を祈るだけである。それでは,なぜこのロマン スの作者は,Lunet に Ywain の申し出を辞退させないのであろうか。その理 由は,“trew knyght” として “luf of the” のために闘うという Ywain の決意・

約束が,騎士として,人間としての Ywain の存在,identity を賭けたもので あると Lunet には思えたからであろう。また詩人としても,そのようなもの

(20)

として描きたかったのであろう。再度 Ywain は,“I sal the hyght / To mend thi murnyng at my myght” (2203-4) と約束する。Gustav Schleich は,Ywain の 二度にわたる救出の約束に関して,二つの誓いの間に,本来なら Lunet によ る申し出の辞退があったが,それが筆写者のミスで欠落したと考える。この lacuna があるという考えに対して,N. T. Harrington は,Ywain の二度目の誓 いはその直前にある Lunet の “ye wil my murnyng mend” に意識的に呼応させ たせりふであると解釈している。10 しかし,ここでは,Lunet への “trowth”

を証したいと言う主人公のなみなみならぬ決意が再度の誓いによって強調さ れていると解釈したほうがよい。従って Lunet にできることは神の恩寵を祈 ることだけである。Lunet の辞退の言葉の削除が見事な効果をあげているの である。

 Lunet の Ywain と Alundyne への “trowth”,そして妻への “trowth” を果せ ず “traytur untrew and trowthles” と指弾され,Lunet への “trowth” に騎士とし ての再生をかける Ywain,“trowth” を主要テーマとして,Ywain と Lunet の 人物描写が巧みになされており,“undoubtedly the product of conscious and careful reshaping, not an artless retelling of the plot”11 と言えよう。 

V

 Ywain はライオンとともに “trew knyght” として冒険を重ね,Lunet をはじ めとして窮地に立たされた女性たちを救い,最後に,ある姉妹の遺産相続を 巡る決闘裁判で Gawain と互角の闘いをするまでになる。慈悲•憐愍の心,謙 譲および己の名誉のためではなく他人の幸福のために身を捧げることの大切 さを学ぶ。J. Finlayson の言うように,“Ywain the lover of ‘reputation’” から

“Ywain the just, good and humble” へと変貌を遂げていくのである。12 ただ主 人公にとって解決すべき難問が待ちかまえている。いかにして妻の愛を取り 戻すかということである。しかしながら,この試練は Ywain 一人では克服で きない。ふたたび Lunet の助けが必要となるのである。それでは,Lunet は

(21)

どのようにして主人公と妻との和解をもたらしたのであろうか。

 主人公は Arthur 王の宮廷を去り,ライオンを連れてふたたび例の泉にやっ て来る。そして泉のそばの石に水を注ぎ猛烈な嵐を起こす。本来なら泉を 守ってくれるはずの Ywain はいない。どのようにしたらよいか Alundyne は 途方に暮れる。奥方は,“Dere Lunet, what es thi rede?” (3866) と,侍女にまた もや助言を求める。Lunet としては,すぐさま Ywain のことを持ち出しても よいのであるが,相手をじらすように,今日にでもあなたに仕える騎士達の どなたかが,この国にお帰りになってあなたのことを守ってくれるかもしれ ませんわねと返答する。ここでは,Lunet が Ywain のことをそれとなくほの めかしているともとれる。テキストでは “by desait than gan sho say” (3873) と なっている。奥方はこの返事に立腹し,そんな騎士はいませんとやりかえす。

だが,しまいには,あなたの助言であれば何でも聞きますからと乞い,まん まと Lunet の仕掛けた罠にはまりこむ。そこで侍女は,獅子を連れた騎士の ことを持ち出し,彼ならきっとあなたのことを助けてくれるであろうと言い,

奥方を自分のペースに引きずり込む。ただし,あなたがその騎士と彼が愛す る婦人とを仲直りさせることを誓わなければならないと述べ,助けてもらう ための条件を示す。実は,Ywain が Lunet を救出した時Alundyne に会い――

この時は,Alundyne は目の前にいる獅子を連れた騎士が夫であることに気づ かない――自分が愛する女性と不仲であることを話していた。奥方はさっそ くその条件を承知し,祈祷書に手を置いて,侍女の言う通りに,その騎士と 婦人との和解のために尽力することを誓う。女主人の Ywain との結婚の時と 同じように,Lunet は仲裁役として知略をめぐらすのである。

 Ywain を探しに出かけた Lunet であるが,神の導きによってか,例の泉の そばで彼に出会え,ことの仔細を告げられた主人公は大いに喜ぶ。さっそく 二人して Alundyne のところへ行く。奥方が“Sir, . . . opon al wise, / I wil me pain in al thing / Forto mak thi saghtelyng / Bitwix the and thi lady bryght” (3972- 75)と言ったところで,Lunet は,“This es my lord sir Ywaine! / Swilk luf God

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bitwix yow send, / That may last to yowre lives end” (3980-82) と述べ,奥方の目 の前にいるのが Ywain であることを明らかにする。もし獅子をつれた騎士 ( 夫) とその騎士が愛する婦人(自分) を和解させなければ偽誓の罪を犯すこと になる。Alundyne は,妻への違約を悔い,慈悲を乞う夫に許しを与え,夫婦 の和解は Lunet の献身的な仲裁の努力によって達成される。Lunet はまたも や Ywain と Alundyne への“ trowth” を実証してみせたのである。

 Ywain and Gawain は次のように幕を閉じるが,このエピローグには,これ まで Lunet を中心に論じてきたことが集約されている。その中でも,特に

“trew Lunet” という言葉が,この作品における Lunet の役割,またこの作品 のテーマを考える上でも重要な意味を持ってくる。

Now has sir Ywain ending made Of al the sorrows that he hade;

Ful lely lufed he ever hys wyfe, And sho him, als hyr owin life.

That lasted to thaire lives ende, And trew Lunet, the maiden hende, Was honord ever with ald and ying And lifed at hir owin likyng.

Of alkins thing sho has maystri;

Next the lord and the lady, Al honord hir in toure and toun.

Thus the Knyght with the Liown Es turned now to syr Ywayn And has his lordship al ogayn, And so sir Ywain and his wive In joy and blis thai led thaire live (So did Lunet and the liown)

(23)

Until that ded haves dreven tham down.

Of tham na mare have I herd tell Nowther in rumance ne in spell, Bot Jhesu Criste, for his grete grace, In hevyn blis grante us a place To hide in if his wills be:

Amen, Amen, par charité (4009-32)

Ywain の “al the sorrows” は,主として彼が妻への “trowth” を蔑ろにした結 果生じたものである。この苦しい体験を糧にして,“trew knyght” として再生 した彼は,死ぬまで “ful lely” に妻を愛したのであるが,彼と妻との和解を もたらしたのが Lunet であると言っても過言ではない。Chrétien においては,

物語を終えるにあたって,語り手が,Lunette が夫婦の間に “an unbreakable peace” (6811-12) をもたらしたと語り,また Hartmann の Iwein でも,“With her ingenuity she had / Brought the dissension between them / To a happy resolution”

(8151-53) と Lunete の貢献ぶりが強調される。一方,Ywain and Gawain では,

“trew Lunet” というきわめて簡潔・的確な表現で彼女の果した役割について 語られる。この作品のテーマとも関連した極めて効果的な使い方である。す なわち,Lunet の Ywain と Alundyne への “trowth” こそが夫婦を和解へと導 いたのである。また “trew Lunet” は “untrew” であった Ywain を浮き彫りに する。N. J. Lacy は Chrétien de Troyes の作品における主人公以外の登場人物 の役割・機能について,“They function to illustrate the major character, to serve as a model for him, to test him or give him an opportunity to distinguish himself, to announce his errors and spread the news of his success”13 と述べている。Chrétien の作品を source にしたイギリスの Ywain の物語においても,“trew Lunet” の 存在によって,Ywain の人間として,また騎士としての弱点が我々の前に鮮 明に提示される。自分の妻への背信行為によって破局に追い込まれた主人公 が “trew knyght” として再出発するために模範・鑑とすべきが “trew Lunet”

(24)

なのである。作品のプロローグで,Arthur 王は “trew he was in alkyn thing”

(13) と讚えられ,この作品において,“trew” であることがいかに重要なこと

であるかが示される。この作品のテーマは「人間にとって “trowth” とは何か」

なのである。また “trowth” と “luf” が密接につながっていることを作品は描 いている。すなわち,夫婦の愛も “trowth” があってはじめて永続的なものに なり,また Ywain は Lunet への愛ゆえに身を賭して彼女への “trowth” を貫 こうとするのである。そして Lunet こそが “trowth” を体現した人物である と言える。

 Lunet は作品の中では単なる脇役ではない。プロットの展開の上でも重要 な機能を果し,また人物描写の点でも,彼女のさまざまな性格面が描出され,

聴衆 ・読者の関心を引きつける。Ywain と彼の妻に “joy and blis” をもたら した Lunet ではあるが,彼女の多大な貢献に対する報いについては,人々か ら敬われ,なに不足ない,恵まれた生活をしたという漠然とした記述しかな い。しかしながら,Iwein のある写本では,書写者が,Iwein が Lunete に所 領を与え,高貴な公爵に彼女を嫁がせたという詳細な後日談をわざわざ書き 加えている。14 献身的な働きをした Lunete になんとか報いてやりたいとい う聴衆・読者の Lunete への思いを反映したものと言えるであろう。このこ とは,主人公でもない彼女が当時の人々にとっていかに魅力的な存在であっ たかを如実に表している。

 Lunet の尽力によって妻と領地を,そしてなによりも “trowth” を取り戻し たYwain は,“the Knyght with the Liown” から “syr Ywayn” へと再生するので ある。この箇所は作者独自の書き加えである。ライオン――John Stevens は

“Ywain’s lost ‘trouthe’” の象徴と解釈しているが 15――とともに挑んださまざ まな冒険は,Ywain が “trew knyght” であることを実証した。そして Lunet の 主人公への “trowth” のおかげで “syr Ywain” に再生できたのである。死ぬま で “joy and blis” の中で人生を送ったのは Ywain と彼の妻だけではない。Lunet もライオンも “joy and blis” の日々を送ることができたのである。まさに “so

(25)

did Lunet and the liown” という表現には,揺るぎない “trowth” に生きた両者 への作者の称賛の気持ちがこめられている。「“trowth” こそが “joy and blis”

をもたらす」という詩人の声が聞こえてくる。

01 引用は,Maldwyn Mills (ed.), Ywain and Gawain; Sir Percyvell of Gales; The Anturs of Arther “Everyman’s Library” (London: J. M. Dent, 1992) からのものである。()内の数 字は行数を示す。またテキストに関しては,Albert B. Friedman and Norman T.

Harrington (eds.), Ywain and Gawain “EETS 254” (London: Oxford University Press, 1964) Stephen H. A. Shepherd (ed.), Middle English Romances “A Norton Critical Edition”

(New York: W. W. Norton, 1995) も参考にした。

02 引用は Chrétien de Troyes, Yvain: The Knight of the Lion trans. Burton Raffel (New Haven:

Yale University Press, 1987) からのものである。()内の数字は行数を示す。なお仏

語のテキストとしては,Chrétien de Troyes, Le Chevalier au Lion (Yvain) “Classique Français du Moyen Age”, ed. Mario Roques (Paris: Champion, 1971) を参照した。

03 引用は,Hartmann von Aue, Iwein “The Garland Library of Medieval Literature” ed. and trans. Patrick M. McConeghy (New York: Garland Publishing, 1984) からのものである。

()内の数字は行数を示す。

04 Ywain and Gawain, p. xvii.

05 Renate SchuskyYvain と比較しながら,Iwein における Lunete の役割について

“Hartmann hat somit Lunete nicht nur mehrer Funktionen (Vertraute, Beschützerin, zielsichere Vermittlerin, schalkhafte, listige Dienerin) zugedacht, sondern er hat diese Funktionen im Vergleich zu Chrestien wesentlich deutlicher ausgestaltet” と論じている。R. Schusky,

“Lunete-eine ‘kupplerische Dienerin’?” Euphorion 71 (1977), 46.

06 Tony Hunt は,Yvain と比較しながら,Iwein におけるより立体的,人間的な characterization について次のように論じる。

In Chrétien the personal relationship of Yvain and Laudine is depicted in terms of a stylised literary fiction––courtly love. There is little human reality in their relationship:

they speak to each other in literary metaphors. This caused Hartmann real difficulty, since his elaboration of the Iwein-Lûnete relationship alone demonstrates his desire to accommodate the personal relationships in the romance to the ideals of güete and triuwe.

Laudine’s appearances are of such short duration and are so strongly “handlungsbedingt”

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that there were few opportunities to remodel her character and to humanise her.

Tony Hunt, “Beginnings, Middles, and Ends: Some Interpretative Problems in Chrétien’s Yvain and Its Medieval Adaptations,” Leigh A. Arrathoon (ed.), The Craft of Fiction:

Essays in Medieval Poetics (Michigan: Solaris Press, 1984), p. 108.

07 Gayle K. Hamilton, “The Breaking of the Troth in Ywain and Gawain,” Mediaevalia 2 (1976), 130-31.

08 “Ywain confesses to his as yet unknown listener the extent of his sin. . . . The contrition has been genuine; the cofession has been made; now the opportunity to make satisfaction presents itself.” A. V. C. Schmidt and Nicolas Jacobs ( eds.), Medieval English Romances Part Two (London: Hodder and Stoughton, 1980), pp. 18-19.

09 Medieval English Romances, p. 15.

10 Norman T. Harrington, “The Problem of the Lacunae in Ywain and Gawain,” JEGP 69 (1970), 663-64.

11 Dieter Mehl, The Middle English Romances of the Thirteenth and Fourteenth Centuries (London: Routledge & Kegan Paul, 1968), p. 182.

12 John Finlayson, “Ywain and Gawain and the Meaning of Adventures,” Anglia 87 (1969), 333.

13 Norris J. Lacy, The Craft of Chrétien de Troyes: An Essay on Narrative Art “Davis Medieval Texts and Studies” (Leiden: E. J. Brill, 1980), p. 28.

14 ハルトマン・フォン・アウエ『ハルトマン作品集』平尾浩三他訳 (東京: 郁文堂,

1982), p. 408.

15 John Stevens, Medieval Romance: Themes and Approaches (London: Hutchinson University Library, 1973), p. 75.

(27)

Synopsis

“Trew Lunet”: An Interpretation of Ywain and Gawain

Kenichi Akishino

Ywain and Gawain, a medieval English romance, was composed in the Northern dialect in the first half of the fourteenth century. Its only copy is preserved in MS. Cotton Galba E. IX. The anonymous poem consists of 4032 lines in four-stressed couplets and is based on Chrétien de Troyes’s Yvain (Le Chevalier au Lion). This Arthurian romance is not a faithful translation of Yvain. When its interpretation is attempted, attention must be directed to the English poet’s way of adapting his French source. The romance is mainly concerned with Ywain’s marriage, friction, and reconciliation with Alundyne whose husband Ywain slays in his adventure; moreover, in the tale, Lunet, a serving-lady of Alundyne, plays an active and important role in leading Ywain and Alundyne to “joy and blis.” Lunet helps Ywain to gain the hand of Alundyne and reunites him and his wife after their dissension. In the epilogue to the story, the poet expresses admiration for Lunet by calling her “trew Lunet.” He depicts how Lunet is “trew” to Ywain and Alundyne throughout.

My paper will focus on “trew Lunet” and discuss how the character of Lunet is delineated and how her function in the work is related to its main theme. I will also make reference to Lunette in Yvain and Lunete in Iwein, its medieval German adaptation by Hartmann von Aue, to analyze the English poet’s handling of Lunet.

In Ywain and Gawain, the narrator says in regard to Lunet’s relationship with Alundyne that she is “hir mystres, her keper and hir cownsaylere.” She

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acts as Ywain’s confidante, protector, and counselor as well. Lunet delivers the hero from the portcullises in which he is caught when he pursues the fatally-wounded guardian of a marvelous spring, Alundyne’s husband. Ywain, who falls in love with Alundyne, succeeds in marrying her with the advice and maneuver of Lunet. Alundyne, whose husband has been killed by Ywain, is advised and persuaded by Lunet to marry him in order to defend her magic fountain and land against Arthur. Although Ywain loses Alundyne’s love and his lordship because of his unfaithfulness to his wife, Lunet, faithful to the hero and his wife, employs a strategy and brings about an unending peace between them. Thus she acts as mediator between them too. These episodes show that Lunet is not only faithful but also courageous, shrewd, astute, and witty. She is also a brilliant tactician. She is not a heroine in the story;

however, the audience who listens to or reads the narrative is attracted to her and comes to appreciate the significance of her presence in it.

The English poet depicts Lunet as faithful to Ywain and Alundyne throughout. This characterization of Lunet is closely related to the main theme of the poem. The following lines in its prologue announce its main theme:

“Trew he [Arthur] was in alkyn thing” and “trowth and luf es al bylaft.” In the English version, Lunet is “trowth” personified. She functions to illustrate the main character Ywain: Ywain, who is “untrew and trowthles,” is contrasted with “trew Lunet.” In the second half of the story, the moral regeneration of the hero is described. Initially, he acts as the champion of the slandered Lunet.

He risks his life for the love of Lunet and saves her from burning for treason.

He tries to regain his lost “trowth.” In a series of adventures which he undertakes with his faithful lion, he proves that he is a true knight and eventually gains his wife’s love again with the help of “trew Lunet.” Thereafter he loves his wife “ful lely,” and she returns his love. “Trowth” revives their mutual

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love. The closing lines of Ywain and Gawain convey its message to the audience: “It is ‘trowth’ that leads you to ‘joy and blis.’”

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