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厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)

分担研究報告書

若年成人未婚女性乳がん患者を対象とした妊孕性温存に関する心理カウンセリングの効果研究

研究分担者 小泉智恵 獨協医科大学医学部研究員

本研究の目的は、若年成人未婚女性乳がん患者を対象として、メンタルヘルスの改善と妊孕性温 存の意思決定に関する心理カウンセリングを開発し、それによる介入を行い、精神的健康、精神的 回復力、意思決定葛藤に対して改善効果があるか否かを検討することである。本臨床試験は、心理 エン パワメント カウンセリ ングチーム による立ち 直りと意思 決定(Recovery and Shared- decision-making by Psychological Empowerment Counseling Team)臨床試験名RESPECTと命名し た。

本臨床研究への参加施設12施設において、各施設の倫理委員会の承認を2020年度内に得た。な お、10施設は既に臨床試験開始しており、新たに2施設で試験実施の準備を行なった。また、滋賀 医科大学医学部附属病院の介入担当心理士の RESPECT カウンセリング研修を主にオンラインで実 施した。

2020年度に試験に参加した患者は37人で、有害事象の発生報告は現時点で皆無であり、RESPECT 試験の安全な実施状況が確認できた。現段階で、RESPECT 試験に参加した患者は77 人となった。

2021 年度も本臨床試験を引き続き遂行していく予定であり、新たに三重大学医学部附属病院の介 入心理士の研修を行い、三重大学医学部附属病院で本臨床試験を開始する予定である。

研究分担者:

津川浩一郎(聖マリアンナ医科大学乳腺・内分泌外科学)

山内英子(聖路加国際大学研究センター乳腺外科)

杉本公平(獨協医科大学医学部)

川井清考(亀田総合病院不妊生殖科)

福間英祐(亀田総合病院乳腺科)

古井辰郎(岐阜大学大学院医学系研究科産婦人科学分野)

二村学(岐阜大学大学院医学系研究科腫瘍外科(乳腺外科)) 高井泰(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科学)

松本広志(埼玉県立がんセンター乳腺外科)

大野真司(がん研有明病院乳腺センター乳腺外科)

木村文則(滋賀医科大学産婦人科)

杉下陽堂(聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科)

池田智明(三重大学大学院医学系研究科)

(2)

研究協力者:

片岡明美(がん研有明病院乳腺センター乳腺外科)

阿部朋未(がん研有明病院乳腺センター乳腺外科)

固武利奈(聖路加国際病院ブレストセンター)

山谷佳子(聖マリアンナ医科大学産婦人科学、臨床心理士)

奈良和子(亀田総合病院臨床心理室、臨床心理士;がん・生殖医療専門心理士)

宮川智子(亀田総合病院臨床心理室、臨床心理士;がん・生殖医療専門心理士)

伊藤由夏(岐阜大学大学院医学系研究科産婦人科学、臨床心理士;がん・生殖医療専門心理士)

塚野佳世子(横浜労災病院心療内科、臨床心理士;がん・生殖医療専門心理士)

福栄みか(横浜みなと赤十字病院臨床心理室、臨床心理士)

小林清香(埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック、臨床心理士)

上野桂子(大分県不妊専門相談センター、臨床心理士;がん・生殖医療専門心理士)

星山千晶(カウンセリングルームふらっと、臨床心理士;がん・生殖医療専門心理士)

小川朋子(三重大学大学院医学系研究科)

前沢忠志(三重大学医学部附属病院)

長谷川碧(三重大学医学部附属病院)

A.研究目的

若年成人未婚女性乳がん患者を対象として、メ ンタルヘルスの改善と妊孕性温存の意思決定に関 する心理カウンセリング(RESPECT 心理カウンセ リング)を開発し、それによる介入を行い、精神的 健康、精神的回復力、意思決定葛藤に対して改善 効果があるか否かを検討する。

B.研究方法

対象:本試験の対象者は、以下の基準をすべて 満たす患者とする。

(1)選択基準

① 参加時点で遠隔転移を認めない、初発・

初期の乳がんである

② 20歳以上39歳以下の女性である

③ これまで配偶者がいない

④ 試験実施施設または実施協力施設の乳腺 科外来、産婦人科(生殖科)外来のうち少なくとも 1か所を受診している

⑤ 同意取得日を0日目と数えて、がん治療 開始まで4日以上ある

(2)除外基準

以下のいずれかに抵触する患者は本試験に組 み入れないこととする

① 文書同意が得られない(インフォームド・

コンセントが得られない)

② 自記式調査(アンケート)を実施するこ とが困難である(身体的不調が著しい、統合失調 症などの重症精神障害、中程度以上の書字・読字 障害や精神発達遅滞がある)

③ 同意取得日を0 日目と数えて、3 日以内 にがん治療が開始する予定である

研究方法:研究デザインはランダム化比較試験 で、被験者は介入群か統制群に無作為に割り当て られる。介入群はがん治療開始前に2回シリーズ の妊孕性温存に特化した心理カウンセリングに参 加するが、統制群はなんら介入を受けない。ただ し、統制群で心理カウンセリングを希望する場合 はウェイティングリストコントロールとし、2 回 目アンケート記入後に介入群と同じ心理カウンセ リングを受けることができる(以下、統制群を待 機群と呼ぶ)。

(3)

全ての被験者は、2 回または 3 回の自記式アン ケートに回答、提出する。1回目アンケートは同意 取得時で割り付け前(心理カウンセリングによる 介入前)に実施する。2回目アンケートは1回目ア ンケート回答日を0日目と数えて4日目以降30日 以内かつがん治療開始前までに実施する。なお、

介入群は 2回目の心理カウンセリング直後に実施 する。

もし、待機群で心理カウンセリングを希望する 場合は、同意取得日から60日以内にお申し出いた だく。任意参加である。心理カウンセリングの実 施日は、2 回目アンケート記入後かつがん治療開 始後となる。もし待機群で心理カウンセリングを 受けた場合は3回目アンケートを実施する(図1 プロトコール図)。

介入内容:厚生労働科学研究費補助金がん対策 推進総合研究事業「小児・AYA世代がん患者のサバ イバーシップ向上を志向した妊孕性温存に関する

心理支援体制の均てん化に向けた臨床研究」にお いて開発したRESPECTカウンセリングを介入資材 として用いた。RESPECTカウンセリングとは、妊孕 性温存の意思決定における心理専門家による心理 カウンセリングの6要素(Lawson, 2015)、意思決 定支援の方略(中山, 2014)を考慮し、ブリーフ サイコセラピー、ソリューションフォーカスドア プローチを土台に2回完結の対面式のカウンセリ ングであり、詳細マニュアルも提出されている。R

ESPECT心理カウンセリングを実施できる心理士の

トレーニングをおこなった。心理士が心理士役、

患者役となってロールプレイを10回実施し、11回 目のロールプレイを録画した。録画をベテラン心 理士2名が評定した結果、高い信頼性を得た。

調査項目:自記式アンケートによって、精神的 健康、精神的回復力、妊孕性温存の意思決定葛藤 を測定する。精神的健康は、PTSD症状(IES-R-J)、 不安と抑うつ症状(HADS)、つらさと支障の寒暖計

(DT)の3側面からそれぞれ測定する。精神的回 復力は、Mini Mental Adjustment to Cancer Sca le(Mini-MAC; Watson, Greer, Koizumi, Suzuk i, and Akechi, 2018)、QOL尺度(EQ-5D-5L)を 用いる。妊孕性温存の意思決定葛藤は、Decisiona l Conflict Scale 日本語版、Decisional Regres

sion Scale 日本語版、共有意思決定尺度(小泉)

を用いた。そのほか、がんと生殖・妊娠についての 知識、既往歴・現在症、属性についての項目を設け た。

本試験は、心理エンパワメントカウンセリング チームによる立ち直りと意思決定(Recovery and Shared-decision-making by Psychological Emp owerment Counseling Team)臨床試験名RESPECT と命名した。

なお、聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会の承 認(第 3200 号)を得て、UMIN-CTR に試験登録し

(UMIN000034218)、多施設合同RCTを開始した。

C.研究結果

(4)

RESPECT試験は 2018年10月から聖マリアンナ 医科大学病院で開始し、聖マリアンナ医科大学附 属ブレストアンドイメージングセンター、岐阜大 学附属病院、聖路加国際病院、亀田総合病院、埼玉 医科大学総合医療センター、埼玉県立がんセンタ ー、獨協医科大学埼玉医療センター、がん研有明 病院においても開始しているが、院内の複数診療 科との連携、心理士派遣の手続き、担当スタッフ の業務多忙などで準備に時間を要したり、実施に 困難を伴ったりする施設もみられる。

2020年度は、滋賀医科大学医学部附属病院の介 入担当心理士のRESPECTカウンセリング研修を実 施した。新型コロナウイルス感染拡大のため、ロ ールプレイ合計11回のうち10回はオンラインで 実施し、最後の1回は感染予防対策を整えて対面 で実施し録画した。なお、本研究でオンラインに よるロールプレイをするのは初めての試みであっ た。会話としては概ね良好にできたが、エッグボ ールを用いて認知的再構成をする場面や、患者と 心理士が共同して資材に書き込む場面などではオ ンライン研修での限界があった。そのほか、2020 年度は三重大学医学部附属病院で倫理委員会の承 認がおりた。2021年度に介入担当心理士の研修を 実施する予定であるが、新型コロナウイルス感染 拡大のためオンラインを用いて実施する可能性が 高い。

該当症例は外来診療予約から該当基準に合致す る症例を事前にピックアップし、診察時に担当医 が試験の紹介を行って試験にリクルートし、参加 同意が得られれば試験に参加する、という流れで ある。2020年3月までにすでに 40症例が参加し た。2020年度は37症例が参加した。その内訳は、

聖マリアンナ医科大学病院 5症例、聖マリアンナ 医科大学附属ブレストアンドイメージングセンタ ー3症例、がん研有明病院19症例、岐阜大学医学 部附属病院2症例、亀田総合病院3症例、埼玉県 立がんセンター3 症例、埼玉医科大学総合医療セ ンター2症例であった。

有害事象の発生報告は現時点で皆無であり、RE

SPECT試験を安全に実施できていた。

D.考察

RESPECT 試験は 2020年度末までに全 12施設が 倫理委員会の承認を得た。2020 年度は 11 施設で 試験を実施し、37症例が参加登録した。有害事象 の発生はなく安全に実施できた。

2021年度以降もRESPECT試験を継続し、症例登 録と試験遂行を加速していく予定である。また、

三重大学医学部附属病院の介入心理士の研修と試 験を開始する予定である。引き続き、がん患者の 妊孕性温存に関する心理支援の効果について検証 を進めていく。

E.結論

若年成人未婚女性を対象とした、メンタルヘル スの改善と妊孕性温存の意思決定に関する心理カ ウンセリングを開発し、それによる介入を行い、

精神的健康、精神的回復力、意思決定葛藤に対し て改善効果があるか否かを検討することを目的と したRESPECT 試験を実施した。2020年度は12施 設すべてが倫理委員会の承認を得た。10施設は既 に臨床試験を実施しており、新たに2施設で実施 準備をおこなった。2020年度は滋賀医科大学医学 部附属病院の介入担当心理士のRESPECTカウンセ リング研修を主にオンラインで実施した。2020年 度に試験に参加した患者は37人で、有害事象の発 生報告は現時点で皆無であり、RESPECT 試験を安 全に実施できていた。これまでにRESPECT 試験に 参加した患者は 77 人となった。2021年度もこの 試験を遂行していく予定であり、三重大学医学部 附属病院の介入心理士の研修と試験を開始する予 定である。

F.健康危険情報 なし。

(5)

G.研究発表 1. 論文発表

Tozawa-Ono A, Kamada M, Teramoto K, Hareya ma H, Kodama S, Kasai T, Iwanari O, Koizumi T, Ozawa N, Suzuki M, Kinoshita K. Effective ness of human papillomavirus vaccination in young Japanese women: a retrospective multi- municipality study. Hum Vaccin Immunother. 2 020 Oct 29:1-5. doi: 10.1080/21645515.2020.1 817715. Online ahead of print. PMID: 3312134 0

小泉 智恵.がん患者と心理士との関わり.日本 がん・生殖医療学会(監修)鈴木直・森重健一郎・

高井泰・古井辰郎(編著)編.新版 がん・生殖医 療-妊孕性温存の診療.東京:医歯薬出版株式会 社;2020.330-8.

杉本 公平,正木 希世,阿部 友嘉,菊地 茉莉,

荻田 和子,岩端 威之,小泉智恵,岡田弘.里親制 度・特別養子縁組制度に関する情報提供の現状 埼玉県里親会でのアンケート調査.日本生殖心理 学会誌.2020;6(1):38-43.

小泉智恵,杉本公平.不妊の受容プロセスと人 格発達:不妊治療開始から終結後までの縦断的研 究.日本生殖心理学会誌.2020;6(2):69-77.

小泉智恵.非配偶者間生殖医療をめぐる秘密と 嘘、真実告知.こころの科学.2020;213(9):34 -40.

小泉智恵,湯村寧,西山博之,岡田弘,杉下陽堂,

山崎一恭, 古城公佑,鈴木由妃,竹島徹平,杉本公 平,鈴木直.若年成人未婚男性がん患者における精 子凍結後の心理社会的状況に関する観察研究.日 本生殖医学会雑誌.2020;65(4):338.

杉本公平,正木希世,岩端威之,大野田晋,小堀 善友,小泉智恵,岡田弘.がん・生殖医療を含む生 殖医療での里親制度・特別養子縁組制度に関する 情報提供.日本生殖医学会雑誌.2020;65(4):3 39.

2. 学会発表

小泉智恵.新しい生殖心理カウンセリングのあ り方.第38回日本受精着床学会総会・学術講演会 グローバリゼーションシンポジウム3 2020年10 月1日.オンライン集会.

小泉智恵,岩端威之,大野田晋,杉本公平,岡田 弘.無精子症夫婦を対象とした心理カウンセリン グ.第154回関東生殖医学会.2020年12月19日.

東京医科大学病院.

小泉智恵.栃木県がん・生殖医療ネットワーク 令和2年度がん相談支援研修会 講演「AYA 世代 のがん患者等の妊孕性温存への相談支援、心理支 援等について」 オンライン開催;2021年2月20 日.

H.知的財産権の出願・登録状況 (予定を含む。)

なし。

参照

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