日本の金型企業における 「 情幸B J
I n f o ma t i o na sak e yf a c t o ri nd i ea ndmo l dc o mp a ny
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士後期課程
田 中 美 和
目 次
序
l章 金型企業 における 「情報」 の位置付 け 2章 金型企業 における 「総合的な情報力」
3
章 企業DNA
と企業文化の違いについて まとめ序
筆者 は、 日本 において金型産業 に関す る研究が 本格 的 にス ター トしたの は、 1990年代 に入 って か らの ことである と判断 している。 これ まで この 分野の研 究の、歴史の浅 さ1と、金型使用用途の 複雑性2とい った理 由な どか ら、 日本 における金 型産業研究 は断片的にならざるをえなか った。従 来の主要 な研究主題 としては、 自動車産業 におけ るプ レス金型研究、プラスチ ック金型産業 と家電 産業 との企業 間関係 の研究 な どがあげ られる。筆 者 は金型が部品お よび製品の出来 ばえを左右する 重要 なサポーテ ィング ・インダス トリーである と い うことにかねてか ら興味 をもってお り、 この業 界 についてよ り知 りたい と思 うようになった。そ のため、 まず金型産業 を理解す るには金型企業 を 訪問す ることである と気付 き、特徴 ある金型企業 (オ ンリー ・ワンの技術 を保有 していた り、異業 種交流 を積極 的 に実施 していた りす る企業 な ど) への聞 き取 り調査 な らびに工場見学 を行 った。そ の結果、今後 も国内で生 き残 ってい く可能性のあ る金型企業 の条件 として、1つのキー ワー ドに辿 り着いた。それは、金型企業 における 「情報」の 果たす役割の重要性 についてであった。
よって本稿では、先ず、 日本の金型企業 におけ る 「情報」 について、その役割が何 であ り、 さら に 「情報」 をどの ように位置付 けるべ きか を中心 に論ず る。そ して筆者 によって位置付 け られたこ の 「情報」 をもとに、金型企業が今後 も国内で生 き残 ってい くために必要 となるであろう 「総合的 な情報力」 について、2章 にてその定義付 け を行 う。 さ らに3章 にて、「総合 的 な情報力」 の 中で 筆者が新 た に用 いた 「企業
DNA
」 とい う表現 に ついて、企業文化 との比較 によ りその違い を明確 にす る。1
章 金型企業における 「情報」
の位置付 けまず、金型企業 に とって情報の果 たす役割 は何 かについて まとめる。 これ まで、金型企業 を取 り 上げる際 に用 い られて きた情報 は、製品 を作 り出 すための情報 (設計 ・製造現場 における情報機器 に関す ること)が主体であった。例 えば、西野浩 介は、金型 メーカーの情報化の必要性 について述 べてお り、ここでの情報化 とは 「情報技術 を取 り 入れた製造工程への転換 を進めるこ とに よって、
これ まで よ り少 数 の熟 練 技 能 者 と
3
次 元cAD ( co mpu t e rAi d e dDe s i g n)/ CAM ( Co mpu t e rAi d e d
1 本論文の最後に添付 した研究者別金型研究比較表<表‑1>を参照のこと
2 金型は工法 ・素材、成形方法、最終製品、大 きさなど区分の仕方が幅広い。例えば工法 ・素材による区分では、プ レス用 金型か らガラス ・ゴム用金型 まで8種類の金型がある財団法人素形材セ ンター 『我が国素形材産業の直面す る課題 と将来展 望j財団法人機械振興協会経済研究所発行、2002年3月、参照O<表‑2>は、金型産業の複雑性の一部を分か りやす く表現
しているO これはプレス金型に関 しての細分化パ ター ンについてである
126 研 究年報 第 7号
Ma nu f a c t u r i n g)
オペ レー タの組合わせ による金型 作 りが可能 になる。 また、金型 メーカー として も 若年者の採用が よ り容易 に行 われるようになるの ではないだろ うか」 3とされている。 また田口直 樹 は、金型産業 における情報技術 と企業競争力 に ついて述べてお り、その中で 「日本の金型産業 は 過去の技術的蓄積の もとに各企業独 自のノウハ ウ をこれ らの情報機器 (CAD/ CAM, NC
工作機械 な どの こと) に結合 させ ることによ り、すなわち製 造工程 を一つの システム として構築す ることによ って高 い競争力 を保持 して きた とい える」 4とま とめている。筆者 は金型企業 にとっての情報 とは、こうした 情報技術 や情報機器 に焦点 をあてることが必要で あ り、これ らの視点か らの分析が当然のことであ ると考 えていた。 しか し実際 に金型企業へ足 を運 ぶ ようになったことで、今後 も生 き残 りをはかる 金型企業 にとって、情報 の位置付 けが、設計や製 造 などの専 門分野 に特化 した もの とは限 らないの ではないか と考 えるようになった。 なぜ なら生 き 残 りをはかる金型企業 は、企業内的な情報のみ を 重要視す るのではな く、市場お よび顧客が何 を求 めているか といった企業外的な情報 に も目を向け る必要があるか らである。例 えば、企業外的な情 報 に目を向けることで得 られる成果 は、顧客の機 密情報や、設計 ・開発段 階か らの参入 (いわゆる デザ イン ・イン5)な どが あげ られ る。企業外 的 な情報 を重要視す ることで、不安定 な受注形態 を 少 しで も安定 させ る 1つの手段 と して、情報 を位 置付 けることも可能である。金型企業 に とって、
組織 の中に、情報がいかに重要であるか を認識 さ せ ることもまた必要である。組織 としての情報 の 操作 ・統制能力の有無が、金型企業 にとってはそ れが付加価値へ と転換す るか らである。 さらに付 け加 える と、情報の操作 ・統制能力 とは、情報 を 極力 閉鎖すれば よい とい っているわけで もない。
日本 において これ までの金型企業 は情報の閉鎖性 に優れていた ともいえ、 また情報の発信能力 に欠
けていた ともいえるだろう。 これは、金型 とい う 産業特徴 ともい うことがで きる。なぜ な ら通常金 型 とは、顧客の新製品開発 あるいは製品のモデル チェンジ ・サ イクルにあわせて金型企業‑発注 さ れるものである。そのため顧客側の製品に関する 最新情報が金型企業 に流れるため、金型企業が顧 客情報の機密 を保持で きているか否かが、受注 を 繰 り返 し行 え るため の 1つ の条件 と もな って く る。情報の発信能力に欠けているとは、顧客の機 密 を保持 で きる金型企業への繰 り返 し行 われる発 注 によ り、金型企業側 か ら情報発信す る必要があ まりなか ったのでは と分析 で きることを意味 して いる。
ドイツのマ イス ター制度 に詳 しい清水敏 允 は
「今 日のマ イス ターは、 自主管理作業集 団の開発 者であ り、.情報の仲介者お よび調整者で なければ な らないが、依然 と して専 門技 能者 で もあ る」 6
と述べ ている。金型企業 にとっての情報 とは、企 業内的な情報、企業外的な情報、これ らを結 びつ ける組織的な情報 も含めて捉 え位置付 けていかな ければ、 これか らの生 き残 り企業 としての条件提 示の意味 をな さない。
清水の言葉 を一部引用する と、情報の仲介者お よび調整者 としての役割 を果たす ことので きる人 材 を育成 し、その ノウハ ウ (仲介者お よび調整者 としてのノウハ ウのこと) を遺伝子 の ように企業 内にて機能 させ ることがで きる組織が、 これか ら の金型企業 に求め られる条件 といえる。 よって金 型企業 における情報 とは、そこに存在す る もの と 捉 えるだけでな く、企業 としての遺伝子 に成 るた めの道具 と位置付 けることとする。
2章 金型企業における 「総合的な情報力」
前章 にて金型企業の情報の位置付 けについて述 べた。本章では、 日本の金型企業が競争力 を維持 す るため に何 をすべ きか について、「総合的 な情 報力」 とい うキーワー ドを用い、この言葉の定義
3西野浩介 「需要環境の変化 と情報化で変貌す る金型産業
」
『型技術』第13巻、第1号、1998年、35‑39ペー ジ 4日ヨロ直樹 『日本金型産業の独立性の基盤』金沢大学経済学部研究叢書、2001年3月129ページ5 日本では、エ ン ドユーザーの新商品開発 ・設計の一定の段 階で、金型 メーカー も成形業者 もその技術的要請 を協議す ると い う関係 (デザ イン .イ ン)が行わゴ1て きたOそ うす ることで、新商品設計 に量産のための技術 的配慮が最初か ら生か され、
全体 として新商品の開発か ら市場 出荷 までの リー ドタイムが短縮 されて きたのであ る。斉藤栄司 「金型産業の国際比較研 究 一日 ・韓 ・台、プラスチ ック金型 メー カーの聞 き取 り調査 を中心に
‑ 」
『経営経済』、大阪経済大学 中小企業 ・経済研 究所 編第31号、1996年5月、47ペー ジ6高等専 門学校の教育 と研究、第2巻3号、1997年13ペー ジ
付 けを試み る。
金型企業 における総合的な情報力 とは、 自社 に 適 した企業規模 の原理 「おお よその範囲 を従業員 規模20‑99人程度 と し、経営者が企業規模 (ど の程度 の規模 が 自社 に適 してい るか) について、
明確 な判断基準 を掲 げていることである。判断基 準 としては、経営者が社内管理 (例 えば部下 に指 示 した内容 は きちん と実行 されているか、仕事内 容や仕事量の把握 に加 え、その是正処置お よび予 防処置 を即座 に指示で きるかなどの内容)や、利 益率 (例 えば好不景気両方の時期 に関係 な く、低 価格競争 な どの無理 な経営 を始める必要が ない程 度 の利益 を確保 してい くには どうす れば よいか)
を考慮 した うえで、余裕 を持 ちなが ら経営 を行 え る人数であることが重要である。 よって、経営者 としての経験年数が たつほ ど、社内管理の手法 を 経営者が 自身の ノウハ ウとして身に付 けてい くこ とにな り、その数 (従業員数の こと) 自体 は変化 して も問題 はない」 を掲 げる経営者 は、 さらにそ の企業規模 を利用 し、企業内 ・外 におけるさまざ まな情報 を操作 ・統制す ることを目指す。 この操 作 ・統制すべ き情報の中身は、利益側面 ・技術側 面 ・営業側面 についてであ り、 これ らの側面の ど れか 1つが欠けて も情報 を操作 ・統制 しているこ とにはな らない。 さらにこれ らを個 々の企業 に即 したや り方 (経営者が中心 とな りすすめてい くこ とを意味す る)で、伝達お よび循環 させ ていかな ければな らない。その際 に欠かせ ない役割 を果 た す ものが、情報 として位置付 け られる。そ してこ の遺伝子の ような働 きを示す情報が、利益側面 を 考慮する経営 ・技術側面 を考慮す る経営 ・営業側
面 を考慮する経営 に伝達作用 を促 し、 この流れ全 体が、経験 を重ねることで よりスムーズな循環作 用 として企業 に即 した形で根付 き、 さらに次の過 程 と して進 化 を遂 げ て い くこ とまで を 「企 業 DNA」 と呼ぶ。 また ここで用いた情報の中身は、
企業内で扱 われる経営者 ・設計部門 ・製造部 門間 で往来 される情報 と、企業外 (主 に取引先) との や りと りで 同様 に往 来す る情報が あ る。 よって
「総合的な情報力」 は次の ようになる。
企業内で扱 われる経営者 ・設計部 門 ・製造部 門 間で往来 される情報 と、企業外 とのや りとりで同 様 に往来する情報 を もとに、 これ らの情報が遺伝 子的役割 を果た し、利益側面 を考慮す る経営 ・技 術側面 を考慮す る経営 ・営業側面 を考慮す る経営 に伝達や循環作用が促 される。そ してこの情報 を 中心 として機能 (遺伝子的な役割) している流れ 全体が、総合的な情報力である。
さらに 「企業DNA」 とは、 この総合 的 な情報 力 に経験 (ある程度の年数あるいは回数) を重ね ることで、 よ りスムーズな伝達 ・循環作用 として 企業 に根付 き、 さらに次の過程 として進化 を遂 げ てい くその循環作用 まで を指す。
以下 に、「総合的 な情報力」 の土台構造 につい て、 これ まで解説 して きた一連の流れを図式化 し た。その後、総合的な情報力 をイメージとして捉 えるために、情報の内容 を、経営者 ・設計部 門 ・ 製造部 門ごとに 「総合的情報力の基本構造」 とし て まとめた。 この総合的情報力の基本構造の中で 述べ てい る各情報力 の ブ レイ クダウンにつ いて は、本論文では取 り上げていない。
128 研究年報 第7号
「総合 的 な情 報 力」 の土 台構 造
企
業 D N Aの構築
総 合 的情 報 力 の基 本 構 造
*こ こで は2つ の柱 と して 、金型 企 業 内 にお け る情報 力 と金 型企 業 と取 引先企 業 にお け る情 報 力 と した。
後 者 につ い て は 、取 引先 だ けで な く社 会全 般 を含 む こ と もあ りえ る。 しか し、本論 文 にお い て は取 引 先 に限定 す る こ と と した
130 研究年報 第7号
3章 企業 DNAと企業文化の違いについて
2章 の 「総合的 な情報力」 の説明の 中で、企業 DNAについて次の ようにまとめた。企業DNAは、
遺伝子の ような働 きを示す情報が、利益側面 を考 慮す る経営 ・技術側面 を考慮す る経営 ・営業側面 を考慮す る経営 に伝達作用 を促 し、 この流れ全体 が、経験 を重ねることで よ りスムーズな循環作用 として企業 に即 した形で根付 き、 さらに次 の過程 として進化 を遂 げてい くことまでの ことをい う。
この表現 は、筆者が金型企業 を研究テーマ として 取 り上 げ る こ とに よ り新 し く出て きた ものであ る。一見、企業文化 と勘違い される可能性がある ため、 ここで は企業DNAと企業文化 の違 い を明 確 に してお きたい。
では、そ もそ も企業文化 とは、何 を指 してそ う 呼ぶのだろう。い くつかの企業文化 に関連す る文 献 に目を通 した中で、例 えば福原義春 は 「わた し が考 える企業文化 とは、企業の歴史 を通 じて組織 内に培養 され、蓄積 されている知的 ・感性的資産 の こ とで あ る」 7とま とめ てい る。 また河 野豊 弘 ・stewartR.Cleggは 「われわれは企業文化 を、
組織の構成員 に共有 されている価値観、意思決定 のパ ター ンや 目に見 える行動パ ター ンか らなる も の と定義す る。 中心的概念 は変化 に挑戦す る意欲 である。企業文化 は 目に見 える ものではない。 し か し企業文化 は、企業の公式 システムと業績 との 中間にた しか に存在す る変数 なのであ る」 8とし ている。 さらに彼 らは、企業文化 には3つのパ タ ー ンがある とし、その第1を、共通の価値観、第 2を、意思決定 のパ ター ン、第3を実行 が早 いか 否かなどの実行 の仕方 としている。
まず、企業文化 と企業DNAの決定的な違 いは、
その主体 が企業文化 において は人であ るの に対 し、企業DNAで は情報 となる点 であ る。筆者 は 前章 の最後 で、企業DNAは、総合 的 な情報力 に 経験 (ある程度の年数あるいは回数) を重ねるこ とで、 よ りスムーズな伝達 ・循環作用 として企業 に根付 き、 さらに次 の過程 として進化 を遂 げてい くその循環作用 まで を指す こと、 と述べ た。企業 内 ・外 を問わずそ こにある情報 とい うものをもと
に、 これ らの情報が遺伝子的役割 を果 た し、利益 側面 を考慮す る経営 ・技術側面 を考慮す る経営 ・ 営業側面 を考慮す る経営 に伝達や循環作用が促 さ れ、総合的な情報力 となってい く。企業DNAは、
そこ (総合的な情報力)か ら企業 に根付 き進化 を 遂げてい くまでの循環作用 それ 自体 を指すが、企 業文化では、例 えば継続的な企業文化 の活性化 を 求めた り、組織内における人の存在や役割 に焦点 をあてるため、 目的あるいは目標 を必要 とす るの で は な い か と理 解 した 。 河 野 豊 弘 ・stewart R.Cleggの引用 か ら取 り上 げた、共通 の価値観 や 意思決定のパ ター ンなどがそれに値す る。
1つ 目の違 いが主体 の位置付 けにあ り、 2つ 目 として、 目的 ・目標設定の存在有無であると、
段階においては考 え られる。後者 について、
正は分 か りやす く次 の ように説明 している。
梅「 現滞企
業文化 とは、本質的に、理念やめ ざす価値 の実現 を思考す ることを通 して形成 される」。
さらに企業DNAに関 してい うな らば、筆者が 金型 とい う産業 に限定 して研 究 を進めるようにな ったことで新 たに導 き出 した考 えである。 よって 企業文化の ように、あ らゆる業界 についての普遍 性 を論 じてい る (あ るいは論 じようと している)
もの とは全 く別の もとである と考 えなければな ら ない。企業DNAの考 えは、現段 階 において金型 産業 に限定 された ものであ り、他 の産業 に同様 に あてはまるかあるいはあてはめる必要があるのか については今後の課題 となるだろ う。
まとめ
これまで、 日本 における金型産業 に関する研究 は1990年代 にな り、盛 んになって きた といえる。
それ以前 における金型産業 は、研究テーマ として の必要性がなかったわけではないが、先 にも述べ たように金型 の使用用途の複雑性 による理由が大 きく、 さらに もう1点加 える と、それ までの研究 者があま り製造の現場‑足 を運ぶ ことが なかった か らではないだろうか。 またそれ以上 に研究 とい う視点か ら見 た場合、金型がマ イナーである所以 は、「技術」 について経営学者 だけでな く多 くの 社会科学者が アパ シー (意欲 に乏 しく無感動であ
7梅滞正、上野征洋編 F企業文化論 を学ぶ人のために』世界思想社、1995年5月、5ペ ー ジ
8河野豊弘・StewartR.Clegg
r
経営戦略 と企業文化 一企業文化の活性化‑
」 白桃書房、1999年 10月、iペー ジ 9梅滞正、上野征洋編、前掲書、viペ ー ジること) を感 じていた側面があ った と思 われ る。
現場の実地調査 を研 究の核 として きた筆者の実感 として、 この状況は現在 もほ とん ど変化 していな い といえる。
しか し、金型産業 に限 っていえることであるが、
筆者が これ まで述べ て きた 「情報」 をキーワー ド として金型企業 を捉 えるこ とによ り、「技術」 に ついてアパ シーを感 じて きた経営学者や多 くの社 会科学者が現場の実地調査 に踏み込 める きっかけ
となれば幸 いである。
本論 文 は、 日本 にお け る金型 産業 の研 究 を、
「情報」 とい う視点 か ら分析す るこ とで、金型企 業の競争力 を探 ってい く新 たなアプローチ手法 を 提示 して きた。また本研究の今後の課題 としては、
金型企業 における総合的な情報力の部 門別のブ レ イクダウンを行 うこと、 さらに金型産業 における 競争力 について、生 き残 り企業 としての条件分析
を行 うことにある。
132 研究年報 第7号
<表‑1 研 究者別 の金型研 究比 較 >
研究著名 論文 タイ トル 掲載論文 年号 論文ポイン ト
池田正孝 日本 にお け る 経 済 学 論1991 わが国の大手金型 メーカーは、最近 (1991年 自動車 開発支 集 、 第32年5月 当時)の円高期前後 より、欧米の 自動車 メ‑
援 型 産 業 巻、第3号 カーか らのプ レス金型の注文量 を拡げ総売上 (1)‑ プ レ 高に占める海外取引高はいずれ も∽%を超 え
ス金型産業‑ ーの欧米金型メー カーに対比 しての価格競争力、品質競争力、生産性競争力は隔絶 した レベルであ り、米国 ビッグス リーを始め欧州の大半の 自動車 メーカーに至 るまでわが国金型る水準 となっている○これ ら大手金型 メーカメーカー‑の取引 き依存度はこれ以上 に高 まることはあるにせ よ、低下す ることはあ りえないと思われる○
中川洋一郎 日本 にお ける 経 済 学 論1992 アメリカの ミシガ ン大学の研究チームが来 日 自動車 開発 支 集 、 第33年7月 し、 自動車ボディ用金型では 「御三家」 と呼 援 型 産 業 巻、第3号 ばれる金型 メーカーをは じめ、関連のメーカ (3)‑ ア メ ‑をヒアリング調査 し報告書 としてまとめた リカ人研 究者 内容の、 日本語版である0 日本の金型 メーカ が み たプ レス ‑ とアメリカの金型 メーカーの相違点が明 ら 金型産業‑ かにされている01988年の報告書o
さ くら総合 モデルチ エ ン 産業 レポ‑ 1992 組立 メーカーがモデルチェンジ周期の長期化 研究所 ジ周期 の長期 ト、No.4 年 12以外に も商品数削減や部品共通化の動 きもみ 化 と金型製造 月 せることで、多品種少量生産の見直 し機運が
業界の対応 高 まっているo よってこれ らの動 きが重なると金型産業は大 きな打撃 を受けると結論づけられている○
斉藤栄司 日本 の金型 産 経営経済.、 1994 金型産業 を国内再編 と周際展開の両面 におい 莱‑ プ ラスチ 第30号 年
1
0て 日本の量産産業のあ り方 を決める1つの重 ツク金型産業 月 要なファクター ととらえている○ しか し、 こ と家電産業 と の金型産業 についての経済学的、経営学的な の企業 間関係 研究の蓄積 はなぜか少ない○そこで本稿 は、の研 究 のため この産業 と家電産業 との 日本的な企業間関係
に‑ て現在 における金型生産の技術体特徴 をプラスチ ック型を中心に概説 しているoにアプローチするためのいわば 「序章」 とし 浅井敬一郎 金型産業 にお 経済科学、 1995 ヒアリング調査か ら、必ず しも一般化 はで き け る企業競争 第43巻 、第 年6月 ないものの、他社 と比較 した競争上の優位点
松岡憲司 戦略的産業政 経営経済、 1996 機振法が金型などのいわゆる基盤産業の育成 策 と中小企業 第31号 年5月の上で重要 な役割 を果 た した とまとめてい
‑ 金型産業 を る○ この政策は決 して中小企業 を育てること
中心に‑ が 目的ではなかった○ 自動車に代表されるよ要であったか ら産業政策の対象 となつ̲情報交換が な されているo この政策 を通 じある○ しか しさまざまな目標 を設定するときに、政策担当者 と業界 リーダーの間で密接なて、組立メーカー と基盤産業の間に情報の流れが生 まれ、情報の対称性が進んだと考えられる○うな組立型産業を育てるために基盤産業が必たので 斉藤栄司 金型産業 の国 経営経済、 1996 1993年か ら1995年にかけて、アジアにおける 際比較研 究 第31号 年5月工業先進国である日本 .韓国 .台湾において 日 .韓 .台、 金型産業の実態調査を進めてきたo聞き取 り プ ラスチ ック 調査 を中心にした各国の比較分析 を行ってい
金型 メー カーの聞 き取 り調
査を中心に‑ る○
重本直利 金型産業 にお 経営経済、 1996 他の産業 と異なる金型産業の技術的特徴は、
ける 「デザ イ 第31号 年5月 1.企業規模に比べて設備投資額が大 きい、2. ン .イ ン」 と 金型製品の額の大 きさと相手方の特定、 3.
企業 間関係 技能 .技術水準の維持 .確保、4.生産方法 と 知的 な ものの 直結 した製品性格、 5.金型 メーカー間競
価値 と 「もうひ とつの二重
構造」 の考察 争の厳 しさ、であるo
藤本寿良 金型産業 にお 経営経済、 1996 エ ン ドユーザーと金型メーカーとの取引関係 け る 取 引 関 第31号 年5月 の特徴 を6つの項 目に分けて述べている01. 係 :その長期 単品 .受注生産 2.取引の長期性 3.
性 と継続性 取引の継続性熟度 6.最終製品における需要の間欠性4.技術的主導性 5.技術成 中川洋一郎 自動車 の大量 経 済 学 論1998 自動車 を組み上げるのに必要な部品数はビス 生産 におけ る 集 、 第
3
8年3月 などの′トさな部品 まで も数 えると3万点にも 部品用金型 の 巻、第3.4 のぼるといわれるoそれ ら部品加工の場面で 償却 問題一 日号合併号 多数の金型や治具が使用 されるoこれ らの金 本 .ヨー ロ ツ 型は精密機械であるためひとつひとつが高価 パ 自動車産業 であ り、モデルの開発に必要な金型の総 コス の国際比較 点を当てている○トは巨額に上るoその負担 を誰が担 うかに焦 田口直樹 日本金型産業 金沢大学経2001 量産型機械工業の主要なサポーティング .イ の独 立性 の基 済学部 年3月 ンダス トリーとして高い国際競争力を発揮す134 研究年報 第7号
工法 ・素材 に よる区分
<表
‑2>
金型 メーカーの細分化 パ ター ン成 形 方 法 に よる区分
プ レ ス 金 型 抜 き型
プラスチック金型
」 曲腰 鍛 造 型
」 馴 型 鋳 造 型
ダイカス ト型
粉 末 冶 金 用 金 型
ガ ラ ス 用 金 型
ゴ ム 用 金 型
(資料)富士総合研究所 『モ ノづ くり革命』 (1998年2月) を もとに作成 ここで はプ レス金型 に関 しての細分化パ ター ンが主体 となってい る。
参考文献
浅井敬一郎 「金型産業 における企業競争力の源泉」
『経済科学』第43巻、第 1号、1995年 池 田正孝 「日本 にお け る 自動 車 開発 支援 型産業
(1)‑ プ レス金型産業 ‑
」
『経済学論集』第 32巻、第3号、1991年梅津正、上野征洋編 『企業文化論 を学ぶ人のため に』世界思想社、1995年
河野豊弘
・st e wa r tR. Cl e gg
『経 営戦略 と企業文 化 一企 業文化 の活性化 ‑』 白桃書房、1999 年斉藤栄司 「日本の金型産業 ‑プラスチ ック金型産 業 と家電産業 との企 業 間関係 の研 究 の ため に
‑ 」
『経営経済』第30号、1994年斉藤栄司 「金型産業の国際比較研究 一 目 ・韓 ・台、
プラスチ ック金型 メーカーの聞 き取 り調査 を 中心 に
一 」
『経営経済』大阪経 済大学 中小企 業 ・経済研究所編、第31号、1996年財 団法人素形材 セ ンター 『我が国素形材産業の直 面す る課題 と将来展望』財団法 人機械振興協 会経済研究所発行、2002年
さ くら総合研究所 「モデルチェ ンジ周期の長期化 と金 型 製 造 業 界 の対 応
」
『産 業 レポ ー ト、No.4』1992年
重本直利 「金型産業 における 「デザ イ ン ・イン
」
と企業 間関係一 知的な ものの価値 と 「もうひ とつの二重構造」 の考察
‑ 」『経営経済』31 号、1996年
田口直樹 『日本金型産業の独立性 の基盤』金沢大 学経済学部研究叢書、2001年
中川洋一郎 「日本 における自動車 開発支援型産業 (3)‑ アメリカ人研究者がみたプ レス金型産 業
‑ 」『経済学論集』第33巻 、第3号、1992 年
中川洋一郎 「自動車の大量生産 における部品用金 型の償却問題一 日本 ・ヨーロ ッパ 自動車産業 の国際比較
」
『経済学論集』第38巻、第3・4 号合併号、1998年西野浩介 「需要環境 の変化 と情報化 で変貌す る金 型産業
」
『型技術』第13巻、第 1号、1998年 富士総合研究所 『モ ノづ くり革命』東洋経済新報社、1998年
藤本寿 良 「金型産業 における取引関係 :その長期 性 と継続性
」
『経営経済』第31号、1996年校 岡憲司 「戟略的産業政策 と中小企業一金型産業 を中心 に