曼
陀
羅
宏
善
鈔
に
つい
て
桜
井
達
定
一 、序
口 西 山 上 人 の 上 足、 浄 音 上 人 を 流 祖 と す る 西 山 西 谷 流 は観
智 上 人 に よ つ て関
東 の 地 に弘
伝 せ ら れ 行 観 上 人 の 鵜 の 木 に お け る 私 記 卅 五 巻 の 述 作 に よ り 一 流 ヒ し て 大 成 を み 、 観 教 、 観 導 の両
上 人 達 の時
代
を へ て 次 の 道 覚 上 人 の 頃 か ら 吾 妻 の 談 義 所 を 中 心 と し て 愈 々隆
盛 を 極 め る に 至 つ た が そ こ に 育 つ た 幾 多 の 人 師 達 が 恐 ら く は お 互 に最
も 大 き な ネ ラ イ と し て い た で あ ろ う 失 地 回 復 即 ち西
山 西 谷 流 抑 々 の 発祥
の 地 と も い う べ き京
都 に お け る 西 山 西 谷 流 再 興 の 夢 も 相厳
上 人 の 京都
常
楽 寺、 明秀
上 人 の紀
州 総 持 寺開
創
、 更 に は 尾 州 曼 陀 羅寺
の 開 山 乗 運 上 人 の 上 足 召 運 上 人、 そ の 法弟
栄 運 上 人 、 同 じ く 妙 諌 上 人 、 そ の 資賢
立 上 人 、 同 じ く 融 舜 上 人 等、吾
妻
の 能 化 ク ラ ス の 人師
達 の 相 次 ぐ 東 山 禅 林 寺 へ の 入 山 を み る に 及 ん で漸
や く 実 現 し 始 め た が そ の確
保
せ る 拠 点 、 地 盤 を 一 段 と強
く固
め 、 且 、 拡 大 す る た め に 専 ら 京 都 に あ つ て そ の 生 涯 を か け厳
護
法城
、 開 闡 法門
の 道 に 挺 身 せ ら れ た第
一 人者
で あ つ た と 思 わ れ る 舜 叔 宏 善 上 人 の 業 績 は 各 方面
に わ た つ て ま こ と に輝
か し い も の が あ る 。 昭 和 四 十年
十 一 月 廿 八 日 に 開 催 さ れ た西
山 学 会 の第
四 回 研 究 大 会 に於
て ” 実 隆 公 記 ど 禅 林 寺 ” と題
す る 池 田 円 曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て西 山
学 報 暁 師 の 発
表
は 三 条 西実
隆
公 が 交 渉 を も つ た宗
門 と し て 浄 土 、 禅 、 日 薄 宗等
の 名 が 公 記 に散
見 す る が 頻 出 す る の は 本 山 義 を 主 と し た 西 山義
で 四 十 五 ヵ 寺僧
侶 九 十 二 人 を 数 え る 事 が 出来
る 。 し か し 、 西 谷 に つ い て は 実隆
公 は 享 禄 二年
七 十 七 才 の 頃 ま で そ の 名 さ え 知 ら ず禅
林
寺
の 如 き も 当時
、 本 山義
の 影 響 下 に あ り 、宏
善
上 人 が 大永
七年
遣 迎 院 の 僧 祐 全師
、 寿鏡
師 等 を介
し て 実隆
公 を往
訪 し た の が最
初 の 出 会 い で あ る が 、 爾 来 、両
者 の 交 渉 が は じ ま り 享 禄 二 年 十 二 月 四 日 に は 九 品 十 一 門 の 事 に つ い て 法 談 を 交 さ れ て い る と い つ た 要 旨 の も の で あ つ た が こ の 史実
の如
き も 宏善
上 人 の業
績
を 裏 づ け る も の で あ ろ う 。 わ け て も そ の著
、 曼 陀羅
宏善
鈔 が 現存
し て 今 日 を 生 き る 法孫
達 に も 西 山 曼 陀 羅 事相
教 旨 に 関 す る 宏 善 上 人 の 造 詣 の 深 さ と 共 に そ の 頃 の 京都
乃 至 そ の も 一 つ 前 の 吾妻
時 代 に お け る 曼 陀 羅 註 記 の 研鑽
や 流伝
の状
況 を も 伺 い 知 り 得 ら れ る の は ま こ と に有
難
く も 亦 貴 重 な も の が あ る 。 以 下 、 こ の 宏善
鈔
に つ い て の 覚書
的 私 見 を 順 を 追 い つ つ 書 き 綴 つ て み た い 。 二 、著
者
の経
歴
と述
作
由
来
宏 善 上 人 の 経 歴 に つ い て は 不 詳 な 点 が す く な く な い 。 そ の 生 国 が ど こ で あ つ た か と い う 事 か ら し て 不 明 の よ う で あ る 。 然 し 常楽
寺 略 譜 に よ る と 或 る 一 代 の 弟 子 と し て 入 寺 、後
、禅
林
寺
融 舜 上 人 の 法 脈 を 受 け其
の 膝 下 に 刻 苦 勉 励 さ れ た よ う で あ り 、 円戒
は相
厳ー
顕順
ー 珠 侃 − 宏 善 と 次第
す る 所謂
室 町 相 承 で あ り 、吾
妻相
承 は 召 運妙 諌 − 融 舜 ー 宏 善 と な つ て い る か ら こ れ 等 を
勘
案 す る 時、 宏善
上 人 の 出 家 入門
の 師 匠 は 顕 融 珠 侃 上 人若
し く は常
楽 寺 々 域 の 慈 光 院 隠居
に し て禅
林
寺第
卅 二 世 の 天 承祐
音
上 人 あ た り で は な か つ た か と 推 測 さ れ る の で あ る 。 歴 住 地 は師
跡 で あ る 常 楽寺
の第
十 一 世 と し て 歴 代 名 (第
十 世 は 顕 空 登 順 上 人 ) を 有 し 、 又 、 法 脈 の 師 融 舜 上 人 の後
を 追 つ て 一 宮 の常
念 寺第
三 世 と し て 歴 代 名 ( 常 念 寺 の 開 山 召 運−
二 世 融 舜1
三世
宏善
四 世
真
鏡 ) を 列 ね ら れ てい る 。 更 に
禅
林
寺
史 に よ れ ば 宏 善 上 人 は そ の 第 卅 四 世 と し て “ 在 住 廿 余 年 寺 門 の復
興 上 人 に 負 う 処 、 甚 だ 大 き く 、兼
ね て 粟 生光
明寺
を 看 し 永 正 十 四年
の 秋 、 此 処 に 曼 陀 羅 を講
ず る や 門 徒 席 を 競 う と い う 。 禅 林 在 住 の 日 、後
柏
原帝
の 請 に 応 じ て参
内
説
法 す 。 帝 叡 感 あ り て 紫 の 僧伽
香 衣 を 賜 う 。 今 に 伝 え て 宝 庫 に あ り 。 上 人 又 、 寺 観 の 修 繕 に努
め 宮 殿 の 壁画
及 び 衾障
子 の絵
は 当 時 の名
工 、狩
野 家 三 氏 の手
を 分 つ て画
く所
、 又 、 天 文 十 一年
西
三 条 右 大 臣 公条
公、 記 す所
の禅
林寺
縁 起 一 軸 、 今 、 文庫
に あ り 。 退 隠 の後
、 弘 治 三 年 七 月 廿 三 日寂
。 寿 八 十 三 。 自 撰 あ り 、聚
集 鈔 と 名 く 一 一 目 卅 二頁
と伝
え 、 粟 生 光 明 寺 の第
卅 七 世 明 空 沢 了 上 人 が も の さ れ た 跋 文 に は “西
山
光
明 寺 第 十 九 世舜
叔 宏 善 上 人鈔
全
部 + 巻 。禅
林 寺鐸
上 人 の法
嗣 な り . 禅 林 退 院律
当 山矢
住
、 後 柏 原驫
五御
案
正
+ 四 年 八 月 廿 三 日粟
生光
明 寺 に 於 て 始 行 翌年
永 正 十 五 年 九 月 八 日結
願
な り 。 宏 善 年 四 十 四 、 五 の 間 造 る 所 な り 。本
寺
仏光
寺 什物
に 宏善
上 人 自 筆 の 本 あ り 云 々 二 と あ る 。 も と よ り禅
林
寺
史 に し て も 沢 了 上 人 の 跋 文 に し て も そ の 内容
に多
少、首
を か し げ た い よ う な 節 が な い よ う で も な い の で あ つ て 跋文
に は 宏善
上 人 が 粟 生 光 明 寺 の 第 十 九 世 で あ る と 伝 え て い る が光
明
寺 沿 革 誌 ( 卅−
卅 二 頁 ) に よ れ ば宏
善 上 人 は第
十 八 世 で あ り そ れ も 正 当 の住
持 と 言 う よ り も 寧 ろ 東 山 か ら移
住
し て 看 護 を 事 と せ ら れ た そ の労
を 追賞
し て 世 代 に 加 え ら れ た も の の よ う で あ り 、 そ の 年代
も東
本 山 在 住 廿余
年
後
の 天 文 十 五 、 六年
の 頃 と 考 証 さ れ て い る が如
き や 禅 林寺
史 に も 永 正 十 四 年 の 秋 に ほ 禅 林 寺 住 職 で 光 明 寺 の兼
務
者
で も あ つ た よ う に 記 さ れ て い る け れ ど も 禅 林 寺 の第
卅 三 世 一 冲 融 舜 上 人 が 一 宮常
念寺
や 尾 道 の 寳 土 寺 を 歴住
し て 禅林
寺
に 晋 ま れ た 年代
は と も 角、 そ の 示 寂 が 大 永 三年
十 一 月 十 八 日 で あ つ た と す る な ら ば そ の 跡 を 承 け ら れ た宏
善
上 人 が第
卅 四 世 と し て禅
林寺
に 住 せ ら れ る よ う に な つ た の は 当 然 そ れ 以後
で あ り 、 仮 り に大
永 三 年 と し て も永
正 十 四年
は そ れ に 先 立 つ 六 年 前 に 相 当 す る か ら 実際
に は未
だ禅
林 寺 の 住 職 で も な か つ た事
に な る が 如 き が即
ち そ れ で あ る 。 し か し 、 た と え未
だ 正 住 職 で は な か つ た と し て も 永 正 十 四 年 頃 の 宏 善 上 人 が 禅 林曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て
西
山
学
報 寺 を き り ま わ す 実 力
者
的 存 在 で あ り 光 明 寺 に つ い て も そ う で あ つ た か ら だ ろ う と で も み る な ら ば こ の種
の 不 審 は さ し て 問 題 と す る 程 の事
で は な い と 言 え る の で は な か ろ う か 。 宏 善 鈔 が 、 永 正 十 四 、 五 の 両 年 に か け て 、 当 時 、 四 十 四 、 五 才 だ つ た (若
し 、 宏 善 上 人 が 弘 治 三 年 七 月 廿 三 日 、 八 十 三 才 で 示 寂 さ れ た と す る 禅 林寺
史
の説
に よ る な ら ば そ の 誕 生 は 文 明 七 年 と な り 、 永 正 十 四 、 十 五 年 に は 四 十 三 、 四 才 と 一 年 若 く な る が こ れ 亦 、 さ し て 問 題 と す る程
の 事 と も 思 え な い 。 ) 宏 善 上 人 が 光 明寺
に 於 て も の さ れ た も の で あ る ヒ い う 事 に さ え 、 異 論 が な い な ら ば そ れ こ そ何
よ り の 成果
で あ ろ う 。 蓋 し 永 正 十 四 、 五 年頃
は 応 仁文
明 の 戦 災 に よ る 傷 跡 も 生 々 し く第
十 五 世乗
運 空 摂 上 人 遷 化 後 、第
十 六世
舜
空 秀 旭 上 人 が 晋 住 さ れ る ま で の聞
に す く な か ら ず 続 い た 無 住 時 代 に 相 当 す る よ う で あ る か ら 当時
の実
力 者 的存
在 だ つ た 宏善
上 人 の や み が た き 愛 山 護 法 の情
熱
が 光 明 寺 看護
の 任 に 卒 先 せ ず に は お ら れ な か つ た も の と 言 う べ く 、宏
善 鈔 亦 、令
法 久 住 の 悲 願 か ら 大 い に 曼陀
羅 事 相 の 祖 風 を 宣 揚 す べ く も の さ れ た 労 作 で は な か つ た ろ う か と推
察
す る 次 第 で あ る 。 し か し 、 禅 林 寺 に い う ”兼
ね て 粟 生 光 明 寺 を 看 し永
正 十 四 年 の 秋 此 処 に 曼 陀 羅 を講
ず る や門
徒
席
を 競 う 二 と の 文 句 か ら み て 、 宏善
鈔 が後
進 学 徒 を前
に し て の 講 録 と し て筆
を と ら れ た の が 抑 々 の 述作
由来
で あ つ た ろ う 事 も伺
わ れ る の で あ る 。 尚 、 こ の 宏善
鈔
の 述作
よ り 十 五 年 後 の天
文
の 初 め 、 当 時 は 正 し く禅
林
寺
の 第 卅 四世
と な つ て お ら れ た 宏善
上 人 が 自 ら 発 起 人 の筆
頭 と な つ て 、 同 じ 融舜
上 人 門 下 の 兄 弟 子格
の舜
空 秀 旭 上 人 を 特 請 し て 粟 生 光 明寺
に於
て 註 記 の 講 演 が開
か れ て い る史
実
(光
明 寺 沿革
誌
廿 九 頁 参 照 ) の 如 き は 宏善
上 人 の 倦 む 事 な き 曼 陀 羅 研鑚
ぶ り を 物 語 る も の で あ ろ う 。 研鑚
は 造詣
を 深 め、 造 詣 は 更 に 研 鑚 へ と 上 人 を か り 立 て ら れ た 姿 が 拝 ま れ る の で あ る 。 而 し て 、 宏善
上 人 の 曼陀
羅
に 関 す る研
鑚 や 造 詣 は そ の 師 匠 に し て観
経厭
欣 鈔 の 著者
で あ る 融 舜 上 人 並 び に 兄 弟 子 格 だ つ た 舜 空秀
旭 上 人 あ た り の 御 指南
や 切 瑳 琢 磨 が 直接
的 に は 大 き か つ た ろ う 事 も 推 察 さ れ る の で あ る が 宏 善鈔
の 中 に そ の名
を は つ き り と 参 考図
書 と し て あ げ ら れ て い る 事 か ら み て 顕 忠 上 人 の御
述作
( 十 二 巻 鈔 即 ち 顕 忠 鈔 ) を 研 鑚 さ れ た 事 は 疑 い の 余 地 が な い し 、 同 じ 法 系 で あ つ て み れ ば 仮令
、 そ の名
は 語 ら れ て い な く と も 吾 妻 関 係 の 先徳
達 の 御 述 作 、特
に曼
陀 羅 関係
の権
威
書
で あ る明
秀
上 人 の 註記
明 秀鈔
や 融 栄 上 人 の 十 二 門 口訣
あ た り は 必 ず や 韋 編 三絶
せ ら れ た の で は な か ろ う か 。十
二 門 口訣
の著
者
融 栄 上 人 が 宏善
上 人 の師
匠 、 融舜
上 人 の先
代 と し て 尾 道 宝 土寺
に 住 せ ら れ て い た 因 縁 に 想到
す る な ら ば仮
令
面
授
の機
会
は な か つ た と し て も 、 融舜
上 人 を 通 し て 融 栄 上 人 に学
ぶ 点 が す く な く な か つ た ろ う し 、 明 秀 上 人 に し て も面
授
は な か つ た ろ う が顕
忠 上 人 の 十 二巻
鈔
が 殆 ん ど 一 字 一 句 と 申 し て よ い程
に 註 記 明秀
鈔 と 酷似
( こ れ に つ い て は後
日 、 別 に 一文
を 草 し た い ) し て い る 事 か ら す れ ば 明秀
上 人 の 影 響 も 亦 、 大 き か つ た ろ う と 信 ず る も の で あ る 。面
授
で な い 点 で は禅
林寺
の第
廿 八世
召 運 上 人 が寛
正 四 年 の 示寂
で あ る か ら 宏善
上 人 の 誕 生 を文
明 七年
と し て そ の 十 ご 年 前 に 当 る し 、 第 廿 九世
に し て 愚 要 鈔 三巻
の 最初
の 書 写 人 で あ る 栄 運 上 人 は 文 明 四 年 で あ る か ら こ れ 亦 、宏
善
上 人 の 誕 生 よ り 三 年 前 に遷
化
さ れ て い る し 、第
卅世
の 妙 諫 上 人 に し て も 仏陀
寺
過 去帳
に よ る と 大体
、 延 徳 三年
二月
廿 九 日 の 遷化
の よ う で あ る か ら宏
善
上 人 の 十 七 才 の 頃 、第
卅 一世
の 賢 立 上 人 は 長享
二年
七月
十 三 日 の 遷化
ど し て宏
善 上 人 の 十 四 才 頃 と な る か ら曼
陀 羅 の奥
旨
を 直 授 さ れ た と は 思 わ れ な い け れ ど も、 京 都 の 地 に お け る西
谷 復興
の 気 運 を 盛 り 上 げ ら れ た こ れ 等 の 人 師 達 に 若 し 、 註 記 明秀
鈔
や 十 二門
口訣
の よ う な 曼 陀羅
関
係 の 指南
書 が あ つ た と す れ ば こ れ 亦 、 再 読 三 読 せ ら れ た で あ ろ う 事 も 当 然 考 え ら れ る 。 果 し て し か り と す れ ば 宏 善 鈔 は 正 に こ れ 等 、吾
妻
法 系 の先
徳達
の 冥 加 の も と に 生 る べ く し て 生 れ た 御 述作
だ つ た と も言
え そ う で あ る 。 曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て西 山 学 報 三 、
問
答
形
式
と多
義
の紹
介
宏
善
鈔 が 註記
の 御 文 を 順 を 追 つ て要
所 々 々 毎 に 取 上 げ 主 と し て 自 問 自 答 の形
式 を も つ て そ の義
趣 を 解 明 せ ら れ て い る 点 は 余他
の 多 く の 註 記指
南
書
と 共 通 す る体
裁 で あ る が そ の義
趣 の 解 明 に 当 つ て 取 上 げ た御
文
の如
何 に よ つ て は御
義 、 相伝
の 一 義 、 座 敷 に て い わ ぬ 義、肝
要
甚 深 の 義 、制
義 (精
義 ) 、 面 の 一義
、 当 り た る義
と い う 風 に 歴代
相
伝 の 秘 訣 、 西 山 西 谷 流 の統
一 的 見 解 と も い う べ き も の か ら 、 或 義 、 一 義 、 或 は 云 う 、分
明 な ら ぬ義
、 浅 近 脈 な き義
と い つ た所
謂 、 他 門 他 流 の見
解
、 そ れ に 古 来 の聞
書 の 義 、 古義
と 今 義 と い つ た 自 他 ど ち ら と も と れ そ う な 説 、 並 び に 歴 代 相伝
の 秘 訣、 西 山西
谷 流 の 統 一的
見
解
と も い う べ き も の を 更 に 細 か く掘
下 げ 詳説
せ ら れ た 宏 善 上 人独
自 の 証 得 と も い う べ き “ 私 二 云 ウ ” と こ と わ ら れ て い る 見 解等
、種
々 重 々 の 義 を 並説
紹 介 せ ら れ て い る 処 に こ の 書 の 特 色 な り価
値
な り を 見出
す 事 が出
来
る で あ ろ う 。む 即 ち 今 、 こ れ を
物
語 る 実例
を 取 上 げ て み る に “御
義
二 云 ハ ク 、 又 、 必 ズ シ モ銘
文
ノ 段 ト絵
相 ノ 段 ト ヲ合
セ テ 意 得 ズ ト モ苦
シ カ ラ ズ 。 銘 文 ノ 段 ト絵
相
ノ 段 ト 相 違 ス ル コ ト 是 レ 多 シ 。 又 、銘
文 ノ 時 ハ 今 生 ヲ智
エ ト シ リ後
生 ヲ 慈 悲 ト シ ル 。 又 、 絵 ノ 時 ハ 今 生 ヲ 慈 悲 ト 知 り後
生 ヲ 智 エ ト 知 ル 。絵
ハ 生 身 見 仏 ナ レ バ 向 フ 当体
ガ 即 チ 慈 悲 来 迎 ノ姿
ナ リ 。 此 ノ 如 ク カ ハ ル 。 是 レ等
口 訣 ナ リ ト 云 々ー
巻 丁一 と あ る の は 禁 父 縁 の 銘文
三 段 、 絵 相 四 段 な る 事 に つ い てむ の
文
で あ る が こ れ は 明 に 御 義 を 紹介
せ る も の で あ り 、“ 口 訣 ナ リ ” と も い わ れ て い る の と も 照 し
合
せ て 御 義 と は 歴代
相
承 の 見 解 を さ し た も の と み る べ き が 順 当 で あ ろ う 。こ “ 三 毒 煩
悩
ノ 五根
六 根 ナ ル ヲ何
ゾ門
ノ外
二 置 ク ヤ 。 答 フ 御義
二 云 フ 。 三 毒 煩 悩 ノ 五 根 六 根 ト ナ ル 時 ハ 是 ノ 五 大 ノ衆
、 皆 門 ノ内
二居
ス ベ シ 。 然 ル ニ今
、 門 ノ 外 二 有 ル ハ 即 チ是
レ 衆 譬 ノ 法 門 ト 心 得 レ バ 是 ノ 五 根 六 根 ノ 煩 悩 ノ機
ガ 即 チ 浄 土 往 生 ノ 機 ト ナ ル 処 ヲ 以 テ 門 ノ
外
二 置 ク ナ リ 。 是 ノ 時 、 五 人 ナ ガ ラ 鉾 ヲ 持 ツ ハ 悪 相 ヲ 表 ハ ス 。 サ テ 衆 譬 ノ 機 ト ナ ル 時 ハ 五 人 ノ 持 ツ 鉾 ト 云 フ ハ利
剣 即 是 弥 陀 名号
ノ 念 仏 三昧
証
得 ノ 機 ト ナ ル 事 ヲ 顕 ハ ス ナ リ 。 ”U
巻 一 と あ る禁
父 縁 第 二 重 絵相
に 関 す る 文 。 “ 竹 六 本 ハ 定散
ノ機
ト ハ 竹 ハ 大 地 ヨ リ 養 ヲ 続 ケ テ 菓 ヲ 生 ズ ル事
ナ シ 。 無 明 ノ 大 地 二 居 シ テ 仏 果 ノ菓
ヲ 知 ラ ザ ルむ む 定 散 ノ 機 二 譬 フ ル ナ リ 。 六
本
ハ 衆 生 ノ 六 根 六境
二譬
フ ル ナ リ ト 云 々 。 是 モ 御 義 二 云 フ 根 ヨ リ 根 ヲ ツ ギ 中 ウ ツ ロ 、飾
ア リ ナ ド イ ヘ ル竹
二限
ラ ズ 葦 ナ ド モ 同 ジ 事 ナ リ 。 是 レ 竹 ハ草
ニ モ 行 キ 木 ニ モ ナ ビ ク 要 ア ル ナ リ 。 コ レ ニ ツ イ テ用
事
ア リ ト 云 々 。故
ニ タ ト フ ル ト 云 フ 義 ア リ ト ナ リ 。 是 レ分
明 二 聞 カ ズ 。 ” 誓 巻 一 ヒ あ る 禁 父縁
第
四 重 絵 相 の 竹 に 関 す る 文 。 “ 上 ヨ リ シ テ 禁 父 ハ銘
文 ヲ 三 段 ニ オ リ テ 次 二絵
ヲ 四 段 ニ オ ル 。 禁母
ハ ニ 段 二 段 ニ オ ル 。 今、厭
苦
ハ文
] 段 、絵
一 段 ヅ ツ オ ル ナ ワ 。 イ カ ン 。答 フ 。
今
ハ 正 宗 ノ段
ナ レ バ 正宗
ニ ッ イ テ 定 散善
ノ ア ル 事 ヲ 顕 ハ ス ト シ テ ニ 段 ニ オ ル ト 云 フ 。御
義
二 云 フ 是 レ等
ハ 聖 教 御 書 二 無 キ事
ナ レ バ 何 ト ナ リ ト モ 当 座 会 ス ベ シ 。苦
シ カ ズ ト 。 古 来 ノ 聞 書 ニ モ 義 ヲ 出 サ レ タ ル事
多 シ ト 云 々 。 ”n
巻
一 と あ る 序分
の 六 縁 七 段 の銘
文
絵 相 に関
す る 文等
も亦
、 何 れ も し か り で あ ろ う 。 次 に “ 五 行 ノ観
経
発
起 ノ 因 縁 ヲ 云 ヘ バ随
順
調 達 悪 友 之 教 ト テ山
中
ノ 仙 人 ヲ 殺 ス ヨ リ ノ 因 縁 ニ ヨ ツ テ 是 ヲ教
ヘ テ 禁 父 禁 母 ヲ 発 シ テ 此 ノ 経 ノ機
ト ナ ル 。 今 ノ 中 将 ノ 局 ハ何
ヲ 発 起 ノ 因縁
ト ハ シ タ ル ゾ ト 云 フ ニ流
布 ノ縁
起
ニ ハ 継 母 ノ ザ ン 言 ニ ヨ ル ト 云 フ 事 ナ リ 。 サ レ ド モ真
実
ノ 発 起 ノ 因 縁 ハ 此 ノ 曼 陀 羅 二 遇 フ 処 ハ称
讃
浄 土 経 ナ リ 。 コ ノ経
ヲ ヨ クく
拝 見 ア ル ニ 題号
ヨ リ シ テ娑
婆 ノ 外 ノ 浄 土 ヲ讃
ズ ル ナ レ バ 但受
諸
楽
ノ 浄 土 微妙
ノ快
楽 ノ ヤ ウ ヲ ト キ娑
婆 ハ 五 濁曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て
西 山 学
報
増
多 ニ シ テ 衆 生 ノ 世界
ト顕
ハ シ 捨 テ テ執
持
名
号 ノ 一 行 ヲ 以 テ 得 生 シ コ レ三
二世
ノ 諸 仏 モ讃
嘆 シ 十方
ノ如
来
モ厭
離 シ 浄 土 往 生 ヲ欣
求 シ テ ア ラ ハ ル ル 処 ノ 曼陀
羅 ナ レ バ 称讃
浄 土 経 ガ 今 、曼
陀
羅発
起 ノ ス ル 処 ノ 中将
ノ 局 ノ 根 元 ト ハむ む む ナ リ タ ル 事 ナ リ ト 意 得 ル ガ
今
ノ 相 伝 ノ 一義
ナ リ ト 云 フ 。 ”11
巻 三 と あ る下
縁
の 縁 起 段 に関
す る文
か ら し て 相 伝 の 一 義 な る も の も 亦 、 西山
西
谷 流 の 統 一 的見
解 と い わ る べ き も の で あ る事
が伺
わ れ る 。 次 に “ 之 二 付 イ テ 智 慧 ノ 見 、 慈悲
ノ 見 ノ ニ ツ ア リ 。 智 慧 ノ 見 ヨ リ ハ 娑婆
浄
土 、娑
婆 ニ ナ ル ナ リ 。是
レ 浄 土 ト イ ヘ ド モ 三 業 門 ノ智
慧 二 留 マ ル ナ レ バ 機 ノ 感 見 二 随 フ 事 ナ リ 。 サ テ 、 今 ノ 慈 悲 ノ見
ヨ リ ハ 娑婆
浄
土 ト モ ニ浄
土 ノ 一 二 極 マ ル 。 是 レ 即 チ 三 心 発得
ノ 前 ニ ハ 娑婆
法 界 ヲ 悪 ク他
力 ヲ 教 フ ル衆
譬
ノ法
門 二 極 ム ル 事 ナ リ 。 此 ノ 時 ハ 森 羅 万 像 悉 ク 他 力 ト ナ シ 十 方 一 切 ノ 衆 生 ハ 諸 根 具 足 ノ 男 子 ナ リ 衆 譬 往 生 ノ 無 生 ト ナ ツ テ 女 人 ナ ガ ラ 女 人 二非
ズ 凡 夫 ナ ガ ラ 凡む む む む む む 夫 ニ ア ラ ズ 人
中
ノ 上 々 人 、 最 勝 人 ト 云 ハ ル ノ 法 ニ テ ア ル 事 ナ リ 云 々 。 是等
ノ 義 ハ 座敷
ニ テ ハ 沙 汰 ナ シ 。 十 二 巻む む む む む む 疏 コ ノ
意
ナ リ 。 ”1
ー 巻 十 と あ る よ り し て 座 敷 に て い わ ぬ 義 も 亦 、 歴代
相
承 の 見 解 で あ る 事 が 伺 わ れ よ う 。「 二 、 著
者
の経
歴 と 述 作 由来
」 の 條 下 で 言 及 し て お い た 顕 忠 上 人 の 影 響 力 と い う 事 も “ 十 二 巻 疏 コ ノ 意 ナ リ ” と そ の 御 述作
名 を 明 に さ れ て い る事
に よ つ て よ く 偲 ば れ る 事 も 此 処 で 重 ね て強
調
し て お き た い 。次
に “ サ テ 今 証信
化 前 コ ノ ニ 序 三 序 ヲ コ コ ニ テ顕
ハ ス 故 ハ如
何
。 答 フ 。 是 ガ唯
肝要
ナ リ 。今
ハ 第 二 段 ノ 銘文
ハ 発 起 序 ノ 重 ナ リ 。 此 ノ 発 起 ノ内
ニ シ テ 証 信 化前
等
ノ 事 ヲ 顕 ハ サ ル ル 故 ハ 先 ズ コ ノ 経 ノ 発 起 ノ 根 元 ト 云 フ ハ 今 、 此 ノ 韋提
ノ 禁 母 二極
マ ル 事 ナ リ 。 然 レ バ 証 信 ト 云 フ モ 化前
ト 云 フ モ 正宗
十 六観
ノ説
ト 云 フ モ 乃 至釈
尊 出 世 シ テ 一 代 八 万 ノ 教 ヲ 説 キ 玉 フ モ 一 切 善 悪 ノ 万 機 ノ 出 離 ヲ 成 ズ ル ト 云 フ モ 此 ノ禁
母 へ 来 ル事
ナ リ 。 然 レ バ 一 切 万 法 悉 ク今
ノ 禁 母発 起 二
極
マ リ タ ル事
ナ レ バ 今 、 発 起 段 ノ内
ニ シ テ 倶 進 諫 事 ヲ説
キ 出 シ テ 証 信発
起 皆 、 コ コ ニ極
マ ツ テ コ ノ 発 起 ノ む む む内
ヨ リ開
キ 出 シ テ 証 信 ト モ化
前 ト モ 立 テ 顕 ハ ス 事 ゾ ト 意 得 サ ス ベ キ為
ナ リ 。 コ レ 甚 ダ 肝要
甚
深
ノ 義勢
ナ リ 。 倶 ノ字
ヲ 証 信 ト 名 ク ル 事 、 後 日 ノ 談 ニ テ モ ナ サ ル 。 二一
巻
一 と あ る 禁 母縁
第 二 重 の 銘 文 の 倶 進 諌 事 の 四 字 に 関 す る 文 か む む む む む ら し て 肝要
甚 深 の 義 な る も の も 亦 、 歴代
相
承 の 証 得 で あ り 且 又 、宏
善
上 人 の 師 匠 な る 人 師 ( 融 舜 上 人 と み る べ き か ) が 、特
に 力 を 入 れ て 講 説 さ れ た ら し い事
も “倶
ノ字
ヲ 証 信 ト 名 ク ル 事 、後
日 ノ 談 ニ テ モ ナ サ ル ニ と 結 ば れ て い る あ む む む む む む む む た り の 叙 述 か ら し て伺
わ れ る の で あ つ て 、 か う い う点
は前
の 座 敷 に て は い わ ぬ 義 に つ い て も同
じ よ う に 言 え る か ど 思 う 。 つ い で な が ら中
央
初 重 日観
の 業 障 識 知 の台
上 で 楽 を 奏 す る 十 菩 薩 の 中 の 一 人 が 使 つ て い る 笙 に つ い て 〃 可 有 渡物
。 先 ズ 是 ハ 古 来 ヨ リ持
チ ワ ヅ ラ フ ル事
ナ リ 。 宝 楼 ノ ワ タ シ 物 ト 云 ヒ テ 何 ト モ 会 シ カ ネ ル 事 ナ リ 。是
タ ケ レ 相 伝 口 伝 ナ リ 。 笙 ニ ハ タ ケ多
ク ナ ラ ブ ニ 中 二 穴 ナ ク音
モ 通 ゼ ヌ作
ア ル ナ リ 。 是 レ 大 イ ニ 別物
ナ リ 。 サ レ ド モ其
タ ケ ノ 作 ナ ケ レ バ余
ノ 竹 ノ 穴 ヨ リ モ音
二 通 ゼ ザ ル ナ リ 。 別 ノ物
ニ テ 居 テ 而 モ ス ベ テ ノ 竹 へ 是 ガ渡
リ テ 音 ヲ 通 ズ ル 事 ナ リ 。 是 ガ コ ノ 宝 楼 ノ 意 ナ リ 。 ソ ノ故
ハ 第 七 ノ花
座
ヲ 取 ツ テ 宝 楼中
ニ オ リ ア ラ ハ ス ナ リ 。 是 レ大
イ ニ 別 ノ物
ナ ル ヲ 取 リ テ 宝 楼 ノ 中 ニ オ ク ナ リ 。 笙 ト 云 フ ハ コ ノ 花 座 ヲ 先 六観
へ 互 シ テ 初 メ 日観
ヨ リ 悉 ク 先 六観
ノ依
報
ト 云 フ モ 願 カ 所 成 ノ妙
花
ヲ 説 キ 明 ス 倶 時 正 覚 ノ念
仏 三 昧 ノ法
門
二極
ム ル 事 ナ リ ト 云 々 是 レ極
秘
ニ シ テ常
ノ聞
キ 抄物
ニ ハ ナ キ 事 り む む ナ リ 能 々 意 得 ベ シ ト 云 々 。 ”H
巻 五 と あ る 文 は “相
伝 口伝
ナ リ ” と い う 文 句 に 比 重 を お け ば相
伝
の 一 義 の 例 証 と む も 受 取 れ る が “ 是 レ 極 秘 ニ シ テ常
ノ 聞 キ 抄物
ニ ハ ナ キ 事 ナ リ 。 ” と あ る 文面
あ た り か ら は 肝要
甚
深 の 義 ・ 座 敷 に り り り り む む て は い わ ぬ 義 等 の例
証 と も み ら れ 得 る よ う で も あ る 。何
れ に せ よ 歴代
相 承 の 秘 訣西
山西
谷流
の 統 一 的見
解 に 変 り は あ る ま い 。次
に 左縁
水
観
の 松 の 木 に つ い て 曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て西 山
学
報 む む “ 制 義 二 云 フ 。 コ コ ヲ 昔 、 殊 ノ 外 、 問
答
シ タ ル事
ナ リ 。水
二 付 イ テ∠
二 重 ハ 水 ノ 上 デ モ聞
コ ユ ベ シ 。 然 ル ヲ 松 ノ木
三 本 ヲ 以 テ コ ノ 水 観 ノ 念 仏智
恵 ノ 極 マ リ ヲ ア ラ ハ ス ト 云 フ 事 、更
二聞
エ ザ ル事
ナ リ ト大
ナ ル 問 答関
東 ニ テ ア リ シ 。 是 ハ真
仮 ヲ分
チ テ 三種
ノ 荘 厳 ノ 方 ヲ バ 下 ノ 宝 地 観 ニ テ顕
ハ ス ト 雖 、 サ レ ド モ コ ノ 水 観 ト 云 フ ハ真
仮 一 同 ト 説 イ テ水
観 ヲ バ 知 ラ セ タ ル 事 ナ リ 。 然 レ バ 水 ト 云 フ 物 ハ 其 ノ 躰 ナ キ モ ノ ナ リ 。 ソ ノ水
ノ躰
ヲ ア ラ ハ ス ニ 松 ノ 木 ヲ 以 テ 顕 ハ ス 。 コ ノ 松 ノ 木 ト ハ 水観
二説
キ 入 レ ツ ル 三種
ノ 荘 厳 ノ 躰 ヲ コ コ ニ 先 ズ 少 シ 先 へ 立 テ ア ラ ハ ス ト キ松
木 三本
ヲ 織 リ テ 三種
ノ 荘 厳 ヲ 説 キ 入 レ テ真
仮 一 同 シ 悲智
具
足 ス ル 処 ノ 水 ト 顕 ハ ス ナ リ 。 然 レ バ 此 ノ如
ク真
仮 一 同 シ テ 悲智
具 足 ス ル ト キ 念 仏 ト ハ 極 ム ル 事 ナ レ バ コ ノ水
観
二 松 ノ 木 ヲ 三本
織
ル ト キ念
仏智
恵 ノ 極 マ リ ト ハ 成 リ タ ル 事 ナ リ 。故
二結
ス ル 筆 モ 念 仏 二 付 イ テ 三本
ア リ ト 成 ズ ル ナ リ 。 サ テ 必 ズ松
ノ 木 ヲ 以 テ 三種
ノ 荘厳
ヲ顕
ハ サ ル ル 心 ハ ト イ ヘ バ 三 種 ノ中
ニ ハ 宝 樹 ヲ 以 テ初
ト ス 。 然 レ バ松
ハ 七 重 宝 樹 ヲ 顕 ハ ス 事 ナ レ バ 是 ヲ 以 テ 顕 ハ サ ル ル ナ リ 。 是 レ 板 東 ニ テ モ ロ伝
相
伝 ニ シ テ 云 ヒ ナ セ ル 事 ナ リ 。 此 ノ如
ク 極 ラ ズ シ テ ハ不
審 尽 キ ザ ル ナ リ 。 ”11
巻 二 と あ る よ り し て む む 制義
な る も の も 亦 、 歴 代 相 承 の 見 解 と い え る で あ ろ う 。尚
又 、 こ の制
義 に つ い て は所
謂
、 曼 陀 羅 相 承 の 口 訣 の 一 で あ る 捨 大 悲捨
本 願 と い う 事 の わ け が ら に 関 し てむ “ 来 迎 不
依
機、 捨 大 悲 捨 本 願来
ト 云 フ 。 然 レ バ 何 ト 捨 ツ ル ヤ 。答
フ 。 之 二 付 イ テ種
々 重 々 ノ義
有 リ 。 或義
二 云 フ弥
陀
如
来 ノ 三 悪 火 坑 ノ 機 ノ 前 二 来 ル 時 ハ 我 ガ 本願
ヲ 立 テ タ ル 故 二来
ル ト モ 又 、 慈 悲 ヲ オ コ シ テ 来 ル ト モ 云 フ ニ 非 ズ 。 唯 無分
別
智 ノ 位 ニ シ テ来
ル ヲ 以 テ 本 願 大 悲 ヲ捨
ツ ト 云 フ 事 ナ リ 。 又 、 十 劫 ノ昔
、 大 悲 ヲ 以 テ 四 十 八 願 ヲ 発シ テ 十 方 衆 生 ノ 上 二 本 願 大 悲 ヲ 捨 テ テ 置 キ 在 シ タ ル ナ リ 。
故
二 今 、 立 摂 即 行 ス ル ナ リ ト 云 々 。 又 、 一義
ニ ハ 十 八 ノ 願 ニ シ テ 至 心 信 楽 ハ本
願
、 乃 至 十 念 ハ 大 悲、是
ヲ 捨 テ テ 三 業 亡 然 ノ 前 二 無 分 別 智 ノ唯
慈 悲来
迎 ナ リ ト 。 又 、 十む つ 七 ヲ 大 悲 ト シ 十 八 ヲ 本
願
ト シ テ 是 ヲ 捨 テ テ 来 ル ト 云 フ 。 今 、制
義
二 云 フ 。 是 レ 等 ハ 皆 正 義 二非
ズ 皆作
リ 出 シ テ 云フ 事 ナ レ バ 此 ノ 分 ヲ 心
得
テ ハ皆
、 随機
ノ 因縁
ナ リ 。真
実 ノ 処 ハ 唯 仏与
仏
ノ 境界
ナ レ バ 最 モ知
ル 人有
ル ベ カ ラ ズ 。 ゆ む む ロ サ レ ド モ面
ノ 一義
ヲ 心 得 レ バ教
ヲ離
レ 機 ヲ 離 ル ル ト 云 フ 処 ヲ 意 得 ベ キ ナ リ 。 教 ヲ離
ル ル ト 云 フ ハ 観 経 ノ 教 ナ リ 。 観 経 ノ 教 ト 云 フ ハ 以 無 縁 慈摂
諸
衆
生 ノ 慈 悲 ヲ 顕 ハ ス ナ レ バ ナ リ 。 是 ヲ 大 悲 ヲ 捨 ツ ル ト 云 フ 。是
( 大 悲 ) ニ ヨ ラ ヌ ナ リ 。 機 ヲ 離 ル ト 云 フ ハ本
願
ヲ 捨 ツ ル ナ リ 。 本 願 ト 云 フ ハ 一 々 誓 願 為 衆 生 ナ レ バ 本 願 ト 云 フ ハ 機 二 付 ク ナ リ 。 然 ラ バ 今 モ 機 ニ ヨ ラ ズ 来 迎 ス ト 云 フ 。 サ テ 此 ノ 如 ク 本願
大 悲 ヲ 捨 テ 教 ヲ 離 レ 機 ヲ離
レ テ ハ何
タ ル 機 ノ 前 へ 来 ル ベ キ ヤ 。 コ コ ガ 唯 仏 与 仏 ノ境
界
ト ハ 云 フ事
ナ リ 。 是 ガ 捨 テ タ ガ 捨 テ タ ニ ナ ラ ヌ 理 ガ ア ル ベ キ カ ト見
ヘ タ リ 。 是 レ 知 人 ア ラ バ 問 フ ベ シ 。 此 ノ如
ク 云 フ ハ 何 レ モ 正 義 ニ テ ハ ア ル ベ カ ラ ズ 真 実 ノ 処 ハ ロ 訣相
承 ス ベ シ 。智
者 稀 ナ ル ベ シ 。 ”む り む
11
巻 一 と あ る 事 か ら し て面
の 一義
な る も の も 亦 そ の部
類 に 属 し よ う 。 と 同 時 に 或義
と か 一 義 と か い わ れ る も の 、む む そ し て も つ と 細 か に 云 え ば
面
の 一義
す ら も 一 應 正 義 で は あ る よ う だ が し か し 正 義 中 の 正 義 と は い え な い も の の よ う で も あ る 。 仮 名 書 や発
音
面
か ら は 同 じ で も そ れ を 漢 字 に書
い た 場合
制 義 、 精義
、 正 義 と 三 通 り に な つ て い る 事 が単
に 当 て字
的 な 違 い丈
で な い と す れ ば 制 義 と は 西山
西
谷 流 の 統 一 的 制定
義、 精 義 と は そ の統
制 義 を 一 層 細 か く 精 選 し た 義 、 正 義 と は そ の精
選 義 の中
で も 最 も 正 し い義
と で も 含 み を も た せ て 味 う の も 宏 善鈔
を 繙 く 者 に と つ て 意 義 深 い の で は な か ろ う か 。 次 に 右縁
の 禁 父 縁 の第
二 銘 文 の 條 下 に 男 子 を 智 恵 、 女 子 を 慈 悲 と 配 す る 事 に つ い て “ 答 フ 。 地 体 ノ御
義 ヲ 云 フ時
ハ 慈 悲 智 恵 ト 云 フ ガ天
地 陰陽
ノ 体 ナ リ 。男
ハ天
ナ リ 陽 ナ リ 慈 悲 ナ リ 。 女 ハ 地 ナ リ陰
ナ リ 智 恵 ナ リ 。 是 ガ常
途
ノ 定 メ ナ レ ド モ今
ハ 常 途 ノ 定 メ ニ異
シ テ 心 得 ル ガ 浄 土 ノ 法 門 ノ 顕 シ ヤ ウ ナ レ バ 女 人 ヲ 慈 悲 ト知
り 男 子 ヲ 智恵
ト知
ル ナ リ 。 女 人 ハ 体 ヲ 作 ル方
ヨ リ シ テ 慈 悲 ト 知 リ 男 子 ハ 名 ノ 位 ナ レ バ智
恵 ト 知 ラ ル ル ナ む む リ 。 是 ノ義
、 当 リ タ ル義
ナ リ 。 或 ハ 云 フ 、 男 ハ 貪 ヲ官
ド ル故
二 父 王 ヲ 貪 ト ス 。貪
ノ 色 ハ 是 レ臼
ナ リ 。 是 レ白
ハ 諸 色 ヲ顕
ハ ス分
別 ノ 智 恵 ノ方
ナ リ 。 女 人 ハ イ ヅ レ モ嗔
恚 ノ 心 ヲ持
ツ 。嗔
恚 ハ 火 ノ モ ユ ル方
ナ レ バ 慈 悲 ト知
ル ト 云 フ 曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て
西
山 学
報
ゆ り り ほ む む む り む む む ナ リ 。 是 レ 分
明
ナ ラ ヌ義
ナ リ 。 ””
巻 一 と あ る よ り す れ ば “ 当 り た る義
” と い う も の も亦
面
の 一義
の類
で あ ろ うむ む ロ が “ 或 は い う κ と あ る “
分
明 な ら ぬ義
” と は他
義
で あ る と も と れ る し 、他
義 で は な く 所 謂 制 義 に属
す る も の で は あ る が し か し宏
善 上 人自
身 に と つ て ど う も ムニ
つ領
解 し難
い義
と で も み る べ き か も し れ な い 。 こ れ は前
に引
用 せ る捨
大 悲捨
本 願 に つ い て の文
の中
で “ サ テ此
ノ如
ク本
願
大
悲 ヲ 捨 テ教
ヲ離
レ 機 ヲ離
レ テ ハ 何 タ ル機
ノ前
へ来
ル ベ キ ヤ 。 コ コ ガ 唯仏
与仏
ノ 境 界 ト ハ 云 フ 事 ナ リ 。是
ガ捨
テ タ ガ 捨 テ タ ニ ナ ラ ヌ 理 ガ ア ル ベ キ カ ト 見 ヘ タ リ 。 是 レ 知 人 ア ラ バ 問 フ ベ シ 。 ” と こ と わ らむ む む れ て い る
面
の 一義
と も相
通 ず る も の を覚
ゆ る の で あ る 。 と す れ ば同
じ く 前 の 捨 大 悲捨
本願
に つ い て の文
の 初 め にむ つ む む む む “ 之 二
付
イ テ種
々 重 々 ノ 義 ア リ ” と 申 さ れ て い る そ の種
々 重 々 の義
と は こ れ ま で に 取 上 げ た西
山
西
谷 流 の制
義 の 中 の諸
見解
を ひ つ く る め た も の の 総称
と い う事
に な ろ う か 。 し か し厭
苦
縁第
二絵
相 に異
説
あ る 事 を 語 ら れ たり り “ 厭
苦
縁
第
二 絵 、 此 ノ 絵相
ノ 段 、何
ト モ ム ツ カ シ キ 意 得 ガ タ キ 処 ナ リ 。 其 レ ヲ今
、 心 得 ル ニ 此 ノ 段 ニ ハ 古義
ト む つ 今 義 ト ア リ 。申
二 今義
、 註 表 二合
ス ル カ 。先
ズ当
段
ニ ハ 韋提
三 人 オ リ ア ラ ハ ス ナ リ ト 云 々 。 二 人 ト 云 フ 人 ア レ ドロ む つ つ む モ 三 人 ナ リ ト 云 々 ”
口
巻
一 の文
中 に出
て く る 古義
、 今義
な る も の も亦
こ の 種 々 重 々 の 義 の中
に 当 然含
ま れ て い る と み な す べ き で あ ろ う 。 而 も 宏 善 鈔 全 巻 を 通 じ て み た 場 合、 明 に他
門
他
流 の 義 と み ら る る も の を も 取 上 げ 批 判 さ れ て い る と 受取
れ る 記事
が随
処 に出
て く る よ う で も あ る か ら実
際
は唯
に 自 門 丈 に 留 ま ら ず も つ と 広 く 他門
他
流 の諸
説 を も併
せ総
称 し た も の を種
々 重 々 の義
と い う 言 葉 の 中 に 含 ま せ て 味 う 事 が妥
当 の よ う に 思 え る 。 例 え ば 当 麻 曼陀
羅 と い う 呼称
に つ い て “ 麻 呂 子親
王 ノ 立 玉 ヒ シ 万 法 蔵 院 ナ ル ヲ 当 麻 ト 云 フ所
ヘ ウ ッ シ 立 テ タ ル ナ レ バ 縁 起相
続
シ テ 能 ク 麻 ノ 字 カ ナ フ事
ナ レ バ 別 シ テ 題 セ ラ ル ル ナ リ 。 又 、 麻 ト ハ ア サ ナ レ バ ア サ ハ タ テ ヌ キ ヲ 以 テ成
立 ス ル ナ レ バ 置 ク ナ ド 云 フ 事 モ む ア リ 。 此 レ ナ ホ 皆 、 浅 近 脈 ナ キ 義 ナ リ 。 正 義 ア ル ベ シ 。 二 冂 巻 一 と 示 さ れ て い る が 如 き は 恐 ら く そ の 類 で あ ろ う 。 又 、 六 縁 七 段 の銘
文 絵 相 に 関 し て “ 上 ヨ リ シ テ 禁 父 ハ銘
文 ヲ 三 段 ニ オ リ テ次
二 絵 ヲ 四 段 ニ オ ル 。 禁 母 ハ ニ 段 ニ オ ル 。 今 、 厭苦
ハ文
一 段 、絵
一 段 ヅ ツ オ ル ナ リ 。 イ カ ン 。 答 フ 。 今 ハ 正宗
ノ 段 ナ レ バ 正 宗 ニ ッ イ テ 定 善 、散
善 ノ ニ ア ル事
ヲ 顕 ハ ス ト シ テ ニ段
ニ オ む む つ つ ル ト 云 フ 。御
義
二 云 フ 。 是 レ 等 ハ 聖 教 御書
二無
キ 事 ナ レ バ何
ト ナ リ ト モ 当 座 会 ス ベ シ 。苦
シ カ ラ ズ ト 。 古来
ノ 聞 む 書 ニ モ 義 ヲ出
サ レ タ ル 事 多 シ ト 云 々 。私
二 云 フ 。 禁 父 母 ハ 定 散 ノ 重 ナ レ バ 銘 文 ヲ面
ト ス 。 厭苦
欣
浄
ハ 念 仏 ノ 重 ナ レ バ 一 段 一 段 、 絵 ト 銘 文 ト ヲ マ チー
二 註 ス ル ハ 悲智
具 足 ノ 念 仏 ノ 重 ヲ 顕 ハ シ 、 顕 行 示 観 二 銘文
コ レ ナ キ ハ 唯 慈 悲 来 迎 ノ重
ヲ顕
ハ ス 。 禁 父 銘文
三 段 、 絵 相 四 段 ナ ル ハ 絵相
ハ 教 外 ナ ル 事 ヲ顕
ハ ス カ 。 二 ー 巻 一 と あ る よ り す れ ば 恐 ら く は と も に 古 来 の 聞 書 の 中 の 義 で は あ る が 、 而 も 聖 教 御 書 に は な い 比 較 的 融 通 の き く 相 伝 の御
義 と い う も の が あ つ た事
も知
ら れ る し 、所
謂 、 種 々 重 々 の義
が 派 生 し た 抑 々 の原
因 も こ の よ う な処
に あ つ た の か も し れ な い 。 〃 何 ト ナ リ ト モ 当 座 会 ス ベ シ 。 苦 シ カ ラ ズ ” の言
葉 は ま こ と に 含蓄
豊 な も の が あ る 。 と 同 時 に そ の線
に そ つ て語
り 出 さ れ た の が “私
二 云 フ ” と お こ ヒ わ り さ れ て い る宏
善
上 人 独特
己 証 の御
義
の よ う で あ る が そ れ は あ く ま で も西
山
西 谷 流 の 統 一的
見 解 、 歴 代 相 伝 の 秘 訣 を 一 層 細 か く 掘下
げ 詳説
せ ら れ た も の で も あ る よ う で あ る 。 と も あ れ 、 こ の よ う な種
々 重 々 の義
を 並 説 紹介
せ ら れ て い る と い う事
は 比較
研
究
ど い つ た 面 か ら も 実 に貴
重 な も の が あ り 、 宏 善 鈔 な ら で は の特
色 で あ り 価値
で も あ ろ う 。21
一 曼 陀 羅 宏 善 鈔 に つ い て西
山 学 報
四
、註
記
研
鑽
の実
際
と 口訣
重
視
の傾
向
註 記 が派
祖西
山 上 人 の親
撰
で あ る な ら ば数
多
き 門 弟 達 の 皆 が 皆 と は ゆ か な い ま で も少
な く と も 流 祖 と い わ る る 人 師 級 の内
、誰
か は そ れ を伝
承 し 祖 述 し た史
実
位
は あ つ て も よ さ そ う に 思 え る し 歴代
出
世
の法
孫 達 に も 同 じ 事 が 言 え そ う に も 思 え る 。 し か る に西
山 門下
に お け る流
祖 乃 至 大成
者 達 と い わ る る 人師
達 の時
代
即 ち 所 謂、教
旨発
達 時 代 に お け る註
記
流 伝 の状
況 に は 頗 る分
明 な ら ざ る も の が あ る 。 そ の 反面
、教
旨 普 及 時 代 に 入 つ て 道 覚 上 人 の 頃 か ら 始 ま る 吾妻
法
系 の 人 師 達 の 間 に お け る註
記 の 研 鑽 は頗
る 盛 行 を 極 あ て お り 、 そ れ が 次 第 伝 承 さ れ て今
日 に 及 ん で い る わ け で も あ る 。 従 つ て 道 覚 上 人 以前
に お け る 註 記 の 流 伝 状 況 を 明 に す る 事 と 道覚
上 人 頃 か ら吾
妻 法 系 の 間 に 於 て そ の 研究
が に わ か に 盛 と な つ た わ け が ら を 解 明 す る 事 と は 流 伝史
的 な 観 点 か ら し て も ま こ と に 重要
に し て 意 義 深 き課
題 と い え る で あ ろ う 。 名 こ そ伝
わ れ 、実
際 に 眼福
を 得 る 事 は 所詮
む つ か し か ろ う ヒ 半 ば あ き ら め て い た宏
善
鈔
を図
ら ず も 西 山 短 大 の図
書 館 で 披読
す る 事 が出
来 た 当 初 、 ひ そ か に 期待
し た の も こ の 課 題 に 対 す る 答 で あ つ た 。 し か し 、 そ れ は期
待
外
れ に終
つ た 。 と は い え 、吾
妻
談
義
所 乃 至 失 地京
都
の 回 復 当 初 に お け る註
記
の 研鑽
状
況 や 曼陀
羅 を 講 ず る場
合 、 口 訣 の 重 視 が 古 今 を 一 貫 す る 基 本 的 な 立 場 を な し て い る 事、更
に は 又 、 そ れ が ど の よ う に 遷 り 変 つ て き て い る か 等 を 知 る 上 に於
て 宏善
鈔 に は 注 目 に 値 す る 記 事 が実
に 多 い 。即
ち “ コ ノ 衆 譬 ト 云 フ 事 ヲ能
々 心得
ベ キ ナ リ 。 聖 道 門 ハ 家 ナ シ ト 此 ノ 曼陀
羅
ヨ リ 云 フ事
ナ リ 。 其 ノ 故 ハ自
心 即 仏 、娑
婆
即 浄 土 ト 云 フ ナ レ バ ナ リ 。今
、 浄 土 ニ ハ 弥 陀 如 来依
正 倶 二事
二 成 ズ ル 時 、 浄 土 ヲ バ本
家
ト シ テ 弥陀
ハ娑
婆 ヲ 以 テ我
ガ 本 国 ト シ 在 シ マ ス ナ リ 。其
ノ故
ハ 衆 生 ノ 往 生 ニ ヨ ツ テ 仏 ハ 覚 ヲ成
ズ ル ナ レ バ娑
婆
ガ 衆 生 ノ 本 国 ナ リ 。 浄土 ハ 衆 生 ノ
往
生 ニ ヨ ツ テ成
立 ス ル ナ レ バ浄
土 ガ 衆 生 ノ 本家
ナ リ 。故
二 中央
二 至 ツ テ浄
土 ノ 内 ヲ バ 広 野 ノ如
ク シ テ オ イ テ 吾 ハ舞
台 へ 出 デ テ ア ル ハ 此 ノ 意 ナ リ 。 衆譬
ト 云 フ 事 、 地 体 、 能 クー
心 得 テ オ キ タ キ 事 ナ リ ト 云 々 。 モ ロく
ノ 譬 ト 云 フ 事 ナ ラ バ 諸 譬 ト ナ リ ト モ 置 ク ベ シ 如何
ト 云 フ ニ 、 一 義 二 云 フ 縁 ト ハ 衆 生 ナ リ ト 云 フ 事 ナ リ 衆 生 ヲ 譬 ト ス ト 云 フ意
ナ リ 。 是 レ 何 ニ タ ト フ ル 事 ゾ ト イ ヘ バ仏
体
二 譬 フ ル ナ リ 。 然 ル ニ 身 ハ 覚 ニ シ テ坐
彼花
上見
像
座 巳 ト 説 キ テ娑
婆
ノ 絵 像 木像
ガ真
ノ 花 座 二 坐 シ テ 一 国 土 二 遍 満 彼 国 ス ト 云 フ ハ 何 ノ 用 事 二 形 像 ガ 遍 満 ス ベ キ 。 是 レ 入 一 切 衆 生 心 想 中 ス ル 処 ノ姿
ヲ 形像
ニ カ ケ テ説
キ 顕 ハ シ タ ル事
ナ リ 。然
レ バ 唯 、 法界
森 羅 ノ 当 相 ヲ 以 テ 向 ノ 境 計 デ 衆 譬 ヲ作
ル ヤ ウ ニ ハ有
ル ベ カ ラ ズ 。 我 ガ 一 心 ノ 内 ニ ヨ ク納
メ テ 衆 譬 ト 云 ハ バ ヤ ガ テ 衆 生 ヲ 譬 ヘ ト ス ル事
ゾ ト 心 得 レ バ 云 フ 処 ノ 法 門 ニ モ カ ガ ア リ テ観
経 二 至 ル 事 ナ リ 。 是 レ関
東 能 化 ノ 云 ヘ ル 趣 キ 此 ノ 如 ク ナ リ ヶ ル ト ナ リ 。 是 レ ロ 決 相 伝 ト モ 云 フ ベ キ ナ リ 。 ”冂
巻 一 と 説 示 せ ら れ て い る文
の 如 き は 註記
と い う も の が吾
妻
の 能 化 達 か ら京
都 の 宏 善 上人
達
へ と 次第
に伝
承 さ れ て き た 過 程 を し る 上 に は 頗 る 貴 重 な資
料 た る の み な ら ず吾
妻
法系
に於
て は 衆 譬 と い う も の を 一 心 の 胸中
に よ せ て そ れ が 大 事 ヒ 語 ら れ た事
が伺
わ れ、而
も “ 是 レ 関東
能
化 ノ 云 ヘ ル 趣 、 此 ノ如
ク ナ リ ヶ ル ト ナ リ 。 是 レ ロ伝
相 伝 ト モ イ フ ベ キ ナ リ ” と い わ れ て い る あ た り い か に 口 訣 が 重 視 せ ら れ た か を 物語
つ て い る よ う に 思 え る 。 因 み に 宏 善 鈔 に は 別 に “ 総 ジ テ 万陀
羅 ノ 法 門 ト イ フ ハ 唯 、 森 羅 諸 法 ノ 当相
ノ 上 ニ テ 慈 悲 智 恵 ヲ 沙 汰 シ 或 ハ 衆 譬 来 迎 ヲ 云 フ テ ハ無
益 ナ リ 。 極 マ ル 処 ハ 唯 、 我 ガ 一 心 法 二 極 メ テ 心 得 ル 事 ナ リ 。故
二 今 、 曼陀
羅 ハ 観 道 ノ 法 門 ナ レ バ 唯 、教
相 ノ如
ク 云 ヒ ス テ テ ハ 大 イ ニ 無 用 ナ ル 事 ナ リ 。 故 二 法 門 ヲ 云 フ モ唯
、天
竺 ノ 大 王 ノ 門 ヲ ト 角 、 沙 汰 ス ベ キ事
ニ テ ハ ナ シ 。 唯 一 心 胸 中 ノ 心 内 ヲ 開 ク ベ キ 事 ニ テ ア ル ナ リ 。 コ ノ 一 心 ノ 上 二引
カ ケ テ 心 得 ズ ン バ 曲 ナ キ 事 ナ リ 。 ”口
巻 一 と い う 禁 曼 陀 羅 宏 善 鈔 に 」 つ い て西