1 .はじめに 奈良教育大学の学生は、どのような本を読み、どの ような本が思い出の本として心に残っているのであろ うか。本報告では学生に「心に残った思い出の本」と 題した発表を指示し、データを集めた。 過去、読書に関する調査は、毎日新聞社の『読書世 論調査』等にみられるようなアンケートの数値による 分析が一般的である。しかし、本報告では書誌学的に、 発表された本の主題別傾向を把握し、次に分類別の書 誌データを詳細に分析することで、書誌の内容や時代 を検証する。その上で、学生の理由を加味しながら、 奈良教育大学生の心に残った思い出の本の傾向を考察 することを目的とする。 2 .方法 2 . 1 .調査対象 2008(平成20)年度及び2009(平成21)年度後期に 「読書と豊かな人間性」を受講した本学の学生(院生 を含む)436名を対象とした。この科目は学校図書館 司書教諭講習規程により、司書教諭の資格を得るため の科目の一つであり、また、本学においては「教科又 は教職に関する科目」の一つとして単位が取得でき る。受講できるのは 2 回生以降であり、年齢は概ね19 歳から20歳代前半である。 2 . 2 .調査手続 毎回の講義の中で10名から15名ほどの学生に、 1 人 1 分間程度「心に残った思い出の本」と題した発表を 行うよう指示した。自分の人生において影響を受けた
―日本十進分類法(NDC)に基づいて―
渡辺良枝 (奈良教育大学非常勤講師) 松川利広 (奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻)A bibliographic consideration about “The book of the memory” by students of Nara University of Education
―Based on Nippon Decimal Classification―
Yoshie WATANABE
(Part-time teacher,Nara University of Education) Toshihiro MATSUKAWA
(School of Professional Development in Education,Nara University of Education)
要旨:本報告では学生の「心に残った思い出の本」に関する書誌情報を分析し、学生の読書傾向を考察する。分析方 法は、まず初めに学生が発表した本を日本十進分類法(NDC)にしたがい分類した。その結果、 9 類文学(一般書) が最も好まれ、続く 2 番目はE絵本、 3 番目は 9 類文学(児童書)であることが明らかになった。さらに、それぞれ の類を検証すると、 1 類では人生訓.教訓、 2 類では伝記、 3 類では教育、 4 類から 8 類では学生の専攻や部活動及 び趣味に関する本が紹介された。 9 類文学(一般書)は人気作家やヤングアダルト分野の読みやすい作品が好まれて おり、 9 類文学(児童書)は不朽の名作といわれるものから、近年に刊行されたベストセラーまで幅広く読まれてい た。また、教師と児童生徒のふれ合いを描いた物語に感銘を受ける傾向がみられた。一方、E絵本はロングセラー絵 本が複数の学生に支持されており、自分と親しい他者との思い出を重ねながら紹介する傾向にあることが考察された。 キーワード:読書 Reading 大学生 University Students 本 Books
本や忘れられない本を他の学生の前で発表し紹介す る。その際には、該当する本1)を持参しOHC(実物 投映機)で投映するよう指示した。発表後に、1 . 所属、 2 . 学籍番号、 3 . 氏名、 4 . 本の題名、 5 . 分類番号、 6 . 著者、 7 . 出版社、 8 . 出版年(初版)、 9 . 心に残 った理由、おすすめ理由などを記入したA 4 サイズの 用紙 1 枚を提出させた。 2 . 3 .分析方法 まず、学生が発表した心に残った思い出の本のデー タを日本十進分類法(NDC)に即して分類し、主題 別に、円グラフで表す。日本十進分類法(NDC)は 現在、日本の多くの公共図書館や学校図書館が使用す る図書の分類方法である。その際、児童書と絵本は日 本十進分類法(NDC)の別置法に従った。また、児 童書と一般書を分類する際には国立国会図書館の「資 料収集方針書(2009)」2)1 .4 .6 児童書の 1 .4 .6 .1 適用範囲を参考にした。 3 .結果 3 . 1 .分類 436名 の 学 生 が 発 表 し た 本 を 日 本 十 進 分 類 法 (NDC)による 1 次区分で分類すると次の結果にな った。 最も多かったのは 9 類文学(一般書)で35%(152 名)、 2 番目にE絵本26%(115名)、 3 番目は 9 類文 学(児童書)17%(75名)であった。 3 類社会科学と 7 類芸術は 6 %(社会科学28名・芸術24名)、 2 類歴 史が 3 %(11名)、1 類哲学と 4 類自然科学が 2 %(哲 学10名・自然科学 8 名)、 8 類言語が 1 %( 6 名)で あった。 0 類総記と 5 類技術及び 6 類産業はパーセン テージにすると 0 %であるが、それぞれ 0 類総記 1 名、 5 類技術 2 名、 6 類産業 1 名であった。その他 1 %( 3 名)は自主制作の絵本や合格体験記等を紹介し ていた。以下、類別に詳しい内容を分析する。 3 . 2 . 1 類哲学と 2 類歴史について 1 類はNDC159人生訓.教訓の本が主に紹介された。 紹介された本は様々なものであったが、刊行以来70年 以上読み継がれている、吉野源三郎の『君たちはどう 生きるか』新潮社1937(NDC159)や、リチャード・ カールソン『小さいことにくよくよするな!』サンマ ーク出版1998(NDC159)等であった。学生は高校生 のときに進路に迷ったり、落ち込んだりしたときにこ れらの本を読んだと言う。これらの本を読むことで物 事を広い視野で見ることができるようになったという 発表であった。 一 方、 2 類 は11名 の 学 生 が 発 表 し、 そ の う ち NDC289伝記の本を紹介する学生が 7 名であった。例 えば、大平光代『だから、あなたも生きぬいて』講談 社2000(NDC289)を紹介した学生は「読み終わった とき、多くの勇気をもらえる。」「前向きになれる本。」 と述べていた。他にはテレビでも紹介され話題になっ た宮本延春『オール 1 の落ちこぼれ、教師になる』角 川書店2006(NDC289)、義家弘介『不良少年の夢』 光文社2003(NDC289)等のいじめ、落ちこぼれ、元 不良少年といった問題に関わる教師の自伝を紹介し 「自分の持っている教師像に似ていると思った。」「教 師を目指す人は読んだほうがいい。」と述べていた。 学生は、1 類では人生訓.教訓、2 類では伝記を好み、 前向きになれ、自分の生き方を示してくれる本を思い 出の本として紹介する傾向にあった。 3 . 3 . 3 類社会科学について 3 類社会科学は、28名の学生が紹介した。そのうち 複数の学生が支持した上位の本は、池田香代子再話 C・ダグラス・ラミス対訳『世界がもし100人の村だ ったら』マガジンハウス2001(NDC304) 3 名で、学 生はこの本を読んで考えが変わったと言う。 2 位は早 坂隆『世界の日本人ジョーク集』中央公論新社2006 (NDC361) 2 名、水谷修『夜回り先生』サンクチュ アリ・パブリッシング2004(NDC367)2 名であった。 3 類社会科学ではNDC370教育に関係する本を紹 介する傾向がある。例えば、先述の水谷修や原田隆史 『本気の教育でなければ子どもは変わらない』旺文社 2003(NDC370)等のカリスマ教師とよばれる教師の 教育方針や理念に感銘を受ける傾向にあり、特に原田 は本校出身であるということで、学生に支持されてい た。また、金森俊朗の『いのちの教科書:学校と家庭 で育てたい生きる基礎力』角川書店2003(NDC370) や、深谷圭助『立命館小学校メソッド:「子どもが自 ら学びはじめる!」最新・最強の学習法』宝島社2006 (NDC379)が紹介され、学生は「授業方法について 衝撃を受けた本。」と述べていた。教育関係の本を紹 介した学生は、教育実習などで必然に迫られて読んだ 本が役に立った、自分の実体験とも重なっていて心に
深く残った等の理由を述べていた。 3 . 4 . 4 類自然科学から 8 類言語について 4 類から 8 類の本を紹介した学生は、主に自分の専 攻や部活動及び趣味と関連する本を発表する傾向にあ る。 3 . 4 . 1 . 4 類自然科学について 4 類自然科学に関しては理科教育専修、数学教育専 修、物質科学専修といった理系の学生が、サイモン・ シン『フェルマーの最終定理』新潮社2000(NDC412)、 ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー『数の悪魔: 算数・数学が楽しくなる12夜』晶文社1998(NDC410)、 柳田理科雄『空想科学読本 2 』宝島社1997(NDC404) 等を紹介している。『空想科学読本 2 』を紹介した学 生は「小学校のときからずっと読んでいて、自分の理 科(物理)好きの原点になった本。」という。この本 は2009(平成21)年の「第55回学校読書調査」3)でも 中学 1 年生の男子が 5 月 1 カ月間に読んだ本の第 7 位 に入っており、刊行以来長期に渡って人気のある本で ある。 その他、ウォーレン・D・トーマス ダニエル・コ ーフマン『イルカの会議:動物びっくり面白小百科』 春秋社1991(NDC480)、北園大園『毒のいきもの』 彩図社2007(NDC468)といった、動物の不思議を軽 妙な筆致で解説した本が紹介された。 また、宇宙や天文に関する本として、中川人司 『宇宙授業』サンクチュアリ・パブリッシング2006 (NDC440)や、児童書に分類されるが、国司真監修 『夏の星座をみつけよう』金の星社1994(NDC443) 等が紹介された。学生は「小さい頃この本を見ながら 星座を見ていたので懐かしい。」と述べていた。 4 類自然科学は、数学、物理、理科、動物、宇宙と いった分野から、それぞれにこだわりのある本が紹介 された。 3 . 4 . 2 . 7 類芸術について 7 類芸術では、探す・見つける本であるマーティン・ ハンフォード『ウォーリーをさがせ!』フレーベル館 1987(NDC726)のシリーズを 3 名の学生が紹介して おり人気が高かった。それ以外では、 7 類についても それぞれの専攻や趣味に関する本が紹介されているの が特徴的である。 音楽教育専修の学生は、アン・エドワーズ『マリア・ カラスという生きかた』音楽之友社2003(NDC762) や、上原恵美(他)『びわ湖ホール オペラをつくる』 新評論2007(NDC766)等を紹介した。 一方、NDC780スポーツ.体育の本も好まれており、 保健体育専修の学生が主であるが、他専修の学生でも 部活動や自分の趣味と関連して思い出に残る本となっ ている。例えばサッカー関連では、中村俊輔『察知 力』幻冬舎2008(NDC783)や、一志治夫『足に魂こ めました カズが語った「三浦知良」』文芸春秋1993 (NDC783)等が紹介された。学生は「小学校のとき に読書感想文を書くために読んだが、これを読んでサ ッカー選手になりたいと思った。」という。また、野 球関係ではアレックス・ラミレス『ラミ流』中央公論 新社2009(NDC783)、野村克也『野村ノート』小学 館2005(NDC783)、金本知憲『覚悟のすすめ』角川 書店2008(NDC783)、津田晃代『最後のストライク: 津田恒美と生きた 2 年 3 カ月』勁文社1995(NDC783)、 児玉光雄『イチローに学ぶ勝利する人の習慣術』河出 書房新社2009(NDC783)が紹介され、自分の好きな スポーツ選手の生き方を読み「自分の人生を考えるう えでとても参考になった。」と述べていた。 3 . 4 . 3 . 8 類言語について 8 類言語の本は、英語・国際理解専修や国語教育専 修の学生が主に紹介していたところに特徴がある。 英語・国際理解専修の学生は「自分が最も使いやす く内容が充実している最良の本である。」と述べ、Z 会の単語帳を紹介した。 国語教育専修の学生は『大漢和辞典』大修館書店 (NDC813)を紹介している。「子どもの頃から不可 思議な文字が並んだ『大漢和辞典』を眺めるのが好き だったが、高価であるためになかなか買ってもらえず、 高校生のとき図書館の廃棄本となった辞典を司書の先 生から譲り受けた。」という話を語っていた。 以上のように、4 類から 8 類の本を紹介した学生は、 自分の中で何かしらの感銘を受けた本が、今の自分の 専攻や生き方に影響を与えているとする、思い入れの 強い本が多かった。 3 . 5 . 9 類文学ついて 9 類文学は、一般書が152名、児童書が75名、絵本 を115名の学生が紹介している。それぞれに分けて考 察すると以下のようになる。 3 . 5 . 1 . 9 類文学(一般書)について 9 類文学(一般書)は152名の学生が紹介したが、 2 名以上から支持された作家を示すと次のようにな る。紙面の都合上 3 名以下の作家は名前のみ記載した。
7 位(紹介した学生の人数・・・ 3 名) 伊坂幸太郎、片山恭一、川口晴、貴志祐介、三浦しを ん、森絵都、山田悠介、吉本ばなな、オグ・マンディ ーノ、ディヴ・ペルザー 17位(紹介した学生の人数・・・ 2 名) 小川洋子、乙一、劇団ひとり、佐藤多佳子、宗田理、 太宰治、辻仁成、辻村深月、水野敬也、宮部みゆき、 村上龍、重松清、おーなり由子、乙武洋匡 9 類文学(一般書)で 8 名の学生が紹介した作家は 東野圭吾であった。人前で発表するという条件がある ため、心に残った思い出の本を持ってくるように指示 しても、他の学生が紹介していない本を発表する傾向 がある。それにも関わらず東野圭吾の人気は高かっ た。東野は『秘密』文藝春秋1998(NDC913)で、日 本推理作家協会賞を受賞し『容疑者Xの献身』文藝春 秋2005(NDC913)では直木賞を受賞している。作品 の多くが映画化及びドラマ化されており、社会派推理 小説から理系ミステリー、ユーモア小説と呼ばれる多 彩な作風の人気作家である。学生は中高校生のとき に、この作家の本と出会い「この本を読んでから、読 書が好きになった。」「初めてまじめに読んだ本。」「初 めて退屈しない本に出会った。」「読んだあとの余韻も 楽しめる。」「小説でこれまでに一番感動した。」等の 意見を述べていた。これまでの読書に対して抱いてい た、面白くない、堅い本ばかりというイメージを払拭 してくれた本であり、心に残る本となったようだ。 また、次に 5 名の学生に支持され 2 位となったのが 市川拓司であった。市川は『いま、会いにゆきます』 小学館2003(NDC913)に代表されるように、本と映 画がメディアミックスされた作品が成功した作家であ る。市川の作品は『世界中が雨だったら』新潮社2005 (NDC913)のようにホラーやサスペンス色の濃いも のもあるが、主に愛と死をテーマにファンタジー的要 素を含ませた切ない恋愛小説が多い。学生は「映画を 観て本を読んだ。」「高校の受験勉強の最中にいっきに 読んでしまうくらい夢中になった。」という。 その他、 4 名の学生から支持された作家は、江國香 織、ダン・ブラウン、星新一、石田衣良であった。江 國香織は「試験の文章問題で読み好きになった。」、ダ ン・ブラウンは「科学技術が非常にリアルに描かれて いて感動した。」、星新一は「初めてショートショート という分野の面白さを知った。」という紹介であった。 また、石田衣良の『 5 年 3 組リョウタ組』角川書店 2008(NDC913)を紹介した学生は「現実的な学校の 問題を含んでいるが、前向きに取り組むリョウタ先生 が良いと思う。」「やっぱり先生になりたいと思える本 だ。」と述べていた。 総合的に 9 類文学(一般書)は映画化・テレビ化さ れ話題になった本、ベストセラーになった本、人気作 家の推理小説やヤングアダルト分野の読みやすい作品 が好まれる傾向にある。面白くないと思っていた本の 面白さが初めて分かったという学生が多く、話題性の あるこれらの本は、読書に対する固定観念を覆し、学 生にとっては読書の幅を広げる効果があるようだ。 一方、記録.手記.ルポルタージュとして分類され る本であるが、葉田甲太『僕たちは世界を変えること ができない。』パレード:星雲社2008(NDC916)を紹 介した学生は「ある大学生が「150万円でカンボジア に小学校が建つ」というポスターをみて、チャリティ ーイベントを開き、 9 カ月後に開校式を迎えるまでの 物語。感銘を受け実際にカンボジアに行き、多くのこ とを考えさせられた。自分の生き方の 1 つの指標にな った本。」と発表した。小説とは違ったルポルタージ ュの面白さを語り、カンボジアに行ったという話は、 他の学生の興味を引いていた。 3 . 5 . 2 . 9 類文学(児童書)について 児童書は多様な本が紹介された。その中でも複数の 学生に支持された本のタイトルを示すと次のようにな る。なお、紙面の都合上 3 名以上の学生が支持した本 を記載した。
児童書で 5 名の学生が紹介した本は、サン=テグジ ュペリ『星の王子さま』(NDC953)であった。『星の 王子さま』は内藤濯が翻訳し1953(昭和28)年に岩波 書店から刊行された。学生が紹介したものは岩波書店 の2000(平成12)年オリジナル版や2005(平成17)年 以降に翻訳出版権が消失した後に、内藤以外の訳者に よって出版された新訳版である。2000(平成12)年は サン=テグジュペリ生誕100周年にあたり『星の王子 さま』ブームが起こった。当時、小学校高学年から中 学生であった学生は、親や友人から薦められて読んで いる。学生は「今回の発表で改めて読み直してみると、 初めて読んだときには分からなかったことが、分かる ようになった気がする。」「同じものを読んでも当時感 じた気持ちと、今感じる気持ちが違う。」と述べ、物 語の奥深さというものが分かった本として心に残って いるようだ。 また、児童書 2 位となり 4 名の学生に支持されたの が『十五少年漂流記』(NDC953)であった。フラン スのジュール・ベルヌが1888(明治21)年に発表した 冒険小説であり、日本でも複数の出版社から出版され、 版を重ねるロングセラーである。学生は「漂流した少 年たちが自分たちで生きていこうとするところが興味 深い。」「小学校の時に担任の先生が毎日少しずつ読み 聞かせてくれた。」と述べ、数ある冒険小説の中でも 特に印象に残る本となっている。 次に児童書であるが一般書としても所蔵され、とも に若い女性教師が登場する、灰谷健次郎『兎の眼』理 論社1974(NDC913)と壺井栄『二十四の瞳』光文社 1952(NDC913)は 3 名の学生に支持され、児童書 3 位となった。『兎の眼』を紹介した学生は「小学生の ときに読んで感動した。」「教師に興味をもつきっかけ になった。」と述べている。『二十四の瞳』が刊行され、 『兎の眼』そして 9 類の一般書であるが前述の石田衣 良『 5 年 3 組リョウタ組』まで50年以上の歳月が流れ ているが、時代は変わっても教師が登場する物語は印 象に残る本となっているようだ。 総合的に児童書は刊行年の古い不朽の名作といわれ るものから、学生が小学校高学年の頃に刊行されベス トセラーになった、あさのあつこ『バッテリー』教育 劇画1996(NDC913)やJ.K.ローリング『ハリー・ポ ッター』シリーズ静山社1999(NDC933)のような長 編シリーズ本まで幅広く読まれている。また『兎の眼』 や『二十四の瞳』のように教師と児童生徒のふれ合い を描いた物語を好む傾向が考察された。 3 . 5 . 3 .E絵本について 絵本は115名の学生が紹介し、その中で 3 名以上の 学生に支持された絵本を挙げると次のようになる。 4 名の学生に支持され 1 位となった絵本は、中川 李枝子作 山脇百合子絵『ぐりとぐら』福音館書店 1967、林明子『こんとあき』福音館書店1989、おお ともやすおみ・さちこ4)『ノンタン』シリーズ偕成社 1976、いわむらかずお『14ひき』シリーズ童心社1983 であった。これらの絵本は20年から40年前に刊行され、 現在でも人気のあるロングセラーである。また 3 名の 学生が紹介した、たじまゆきひこ『じごくのそうべえ』 童心社1978は「保育園で読み聞かせをしてもらったと き、言葉の意味が分からずとも雰囲気だけで楽しくな れた本。」と言う。 絵本を紹介した学生は「小さいとき、ドキドキしな がらよく読んだ。」「小さいときにこの本でよく読み聞 かせをしてもらった。」「誕生日に両親からプレゼント してもらった本。」「教育実習で子どもたちに自分が読 み聞かせを行った本。」という紹介であり、小さいこ ろ好きだった絵本の物語とそれを読んでくれた人、ま た自分が読み聞かせをした子どもたちとの思い出とと もに心に残っているようだ。 4 .おわりに 今回は、奈良教育大学生の心に残った思い出の本の 一端を報告した。今の学生がどのような本を読み、ど のような本が心に残っているのかという書誌情報、並 びに読書傾向の考察である。この結果を一つの示唆と して学生の実態を把握し、今後は「読書と豊かな人間 性」の授業構築のための基礎資料として活用していき たい。 【註】 1 )該当する本とは、当時読んだ現物や、現物が紛失 した場合は図書館で借りた本、再購入した本等で ある。 李 :作 上野紀子:絵 え
2 )国立国会図書館 資料収集方針書(2009) http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/housin2009.pdf 3 )毎日新聞社『読書世論調査2010年版』毎日新聞東 京本社広告局2010. 3 p.100 4 )現在は、キヨノサチコと記載される。おおともさ ちことは同一人物。 【参考文献】 ・もりきよし原編 日本図書館協会分類委員会改訂編 集『日本十進分類法 新訂 9 版 本表編』日本図書 館協会1995.8