更生管の変形拘束外水圧バックリング式における隙間 k
0の感度分析
大阪市立大学客員教授・Buried Pipe Research Center 東田 淳 中央復建コンサルタンツ 井上裕司・阿南工業高等専門学校 吉村 洋 大阪市建設局下水道河川部 水窪俊博
まえがき 著者らは, 更生管の設計法に関する一連の研究を通して, 地盤が液状化する場合を除き 1), 更生管が 曲げ耐力を有する既設管に外側への変形を拘束された状態で外水圧によって内側にバックリングする破壊形態
(変形拘束外水圧バックリング)が更生管にとって最も危険であると結論し, 下水道内挿用FRPM管規格2)(シール
ド覆工用)に示された変形拘束外水圧バックリング式 (JSWAS 基準式)を改良した JSWAS 修正式(表-1)による設 計法を提案した3)。
JSWAS 基準式
は, 内挿用 FRPM 管と充填モルタル の間に生じる隙間 の量k0を変数とし て含み, 岩盤中の 立坑またはトンネ ルに内張りされた
鋼管の変形拘束外水圧バックリングを扱った研究 4)5)に基づいて k0=0.4×10-3・R (m)を採用している。ここに R はFRPM管の管厚中心半径である。そのため, これまではJSWAS修正式でもこのk0の値を準用してきた。とこ ろが, 充填モルタルを用いない反転・形成工法によって施工される更生管の場合, k0は更生管と既設管の隙間で あり, 主として更生材の硬化時と更生管供用時の温度差による熱収縮によって生じると推定されるため, JSWAS 基準式に示されたk0の値をJSWAS修正式にそのまま適用するのは問題であることに気づいた。そこで, 反転・
形成工法で施工される更生管のk0の範囲を推定し, JSWAS修正式による管厚計算を行って更生管の変形拘束外 水圧バックリングに対するk0の感度分析を行った。
更生管と既設管の隙間 k0の求め方 k0=R-R’ (R, R’はそれぞれ硬化時, 供用時の円形更生管の管厚中心半径) は, 温度変化に伴って生じる更生材の収縮ひずみ=T (は線膨張率, Tは硬化時と供用時の温度差)と更生 管の収縮ひずみ=2k0 / 2R=k0 / Rを等値して得られる次式: k0=・R=T・Rによって求めた。なお, 更生 材の硬化開始から冷却終了までの間は, 拡径圧力が加えられて更生管は既設管に押し付けられているので隙間 は生じないが, 冷却を終了して拡径圧力をゼロにした時点で硬化開始時と冷却終了時の温度差による隙間が生 じ, その後, 冷却終了時と供用時の温度差によって生じる隙間がこれに足しこまれて, k0に至ると推定した。
反転・形成工法で更生材の主材料として用いられる樹脂には, 熱硬化性樹脂(主として不飽和ポリエステル, ガ ラス繊維の有無あり)と熱可塑系樹脂(硬質塩化ビニル)の 2 通りがある。文献 6)に示された更生材主材料の線膨 張率の範囲を図-1に示す。各更生工法で用いられている更生材ののデータが入手できなかったので, k0の算定 にはこの図に示したの範囲を用いた。ガラス繊維のは不飽和ポリエステル樹脂・ガラス繊維有りの更生材の に近いと推定される。図-2 に各更生工法が採用している冷却開始温度の範囲 7)を示す。この冷却開始温度を更 生材の硬化温度Tとみなし,下水道管の供用温度を最低温度に近い15℃に採れば, T=T-15 (℃)が得られる。
このTと図-1のから, =Tの範囲が図-3に示すように求まるので, これからk0=・Rの範囲を決めた。
管厚計算の方法と結果 計算に用いた更生管の外径はD=600 mm, 弾性係数Epは曲げ弾性係数Eb, ならびに圧 キーワード: 更生管, 設計法, 変形拘束外水圧バックリング, 更生管と既設管の隙間の影響
連絡先: 東田 淳, 橿原市鳥屋町24-7エスペランサ森川II202号, Buried Pipe Research Center, FAX: 0744-35-5007 表-1 JSWAS修正式 (弾性係数Ep=曲げ弾性係数Eb=圧縮弾性係数Ecの場合) (N/Ep*+k0/R)・[1+12(R/t)2N/Ep*]3/2 =3.47(R/t)(F-N)/Ep*・[1-0.45 (R/t)(F-N)/Ep*]
pcr=N(t/R)/[1+0.35(R/t)(F-N)/Ep*]
ここに,pcr:管の座屈圧力(MPa), R:管厚中心半径(m), t:管厚(m),
N:管に発生する直応力(MPa), F:管の圧縮強度(MPa),
Ep* (=Ep/(1-p2)),:平面ひずみ条件における管の弾性係数(MPa),
Ep・p:管の弾性係数(MPa)とポアソン比, k0 :既設管と更生管の隙間(m)
(N/Ep*+k0/R)・[1+12(R/t)2N/Ep*]3/2 =3.47(R/t)(F-N)/Ep*・[1-0.45 (R/t)(F-N)/Ep*]
pcr=N(t/R)/[1+0.35(R/t)(F-N)/Ep*]
ここに,pcr:管の座屈圧力(MPa), R:管厚中心半径(m), t:管厚(m),
N:管に発生する直応力(MPa), F:管の圧縮強度(MPa),
Ep* (=Ep/(1-p2)),:平面ひずみ条件における管の弾性係数(MPa),
Ep・p:管の弾性係数(MPa)とポアソン比, k0 :既設管と更生管の隙間(m)
土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)
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縮弾性係数 Ecと等しいと仮定して 6000 MPa とし, ポアソン比p
は 0.3を与えた。さらに圧縮強度Fと曲げ強度bは等しいものと 仮定し, 熱硬化性樹脂・ガラス繊維無しの場合と熱可塑性樹脂の場 合はF=50 MPa, 熱硬化性樹脂・ガラス繊維有りの場合はF=120 MPaをそれぞれ与えた。k0は, 前者では2~6×10-3・R (m), 後者で
は0~1×10-3・R (m)の範囲でそれぞれ3通りに変化させた。前者
では, これまで用いてきた k0=0.4×10-3・R (m)のケースも比較の ために計算した。そして, 座屈圧力 pcrとして, 地下水位が地表面 にあると仮定した場合の管底における外水圧w(H+D)×Fs (H: 管 頂の土被り高, Fs: 安全率=3)を与え, Hを0.5~7 mの範囲で8通り に変えた時の管厚tをJSWAS修正式(表-1)によって求めた。
図-4(F=50 MPa)と図-5(F=120 MPa)にt~H関係を示す。両図 から以下のことが分かる。
・ k0による管厚の変動幅は図-4の方が図-5よりも大きい。よっ て, 熱硬化性樹脂(ガラス繊維無し)と熱可塑性樹脂を用いる更 生工法では管厚決定の際, k0をより適切に設定する必要がある。
・ 内挿用 FRPM 管(JSWAS K-16, シールド覆工用)で採用されて いる隙間k0=0.4×10-3・R (m)によって決まる管厚は, 図-4に示 した熱硬化性樹脂(ガラス繊維無し)と熱可塑性樹脂を用いる更 生工法の場合は設計として危険側であるのに対して, 図-5 に 示した熱硬化性樹脂(ガラス繊維有り)を用いる更生工法の場合 はほぼ妥当である。
・ k0=0.4×10-3・R (m)によって決まる管厚は図-4と図-5でそれ ほど差が無い。したがって文献3)で指摘したように変形拘束外 水圧バックリングに対する圧縮強度Fの影響は大きくない。
・ 今回は扱わなかったが, 充填モルタルを用いる複合管の表面材 の変形拘束外水圧バックリングの検討 8)においては, 表面材と 充填モルタル両者の熱収縮を考慮してk0を決定すべきである。
参考文献 1) 東田他(2014): 液状化時の更生管の設計に関する考察, 第49回地盤工学研究発表会 (投稿中). 2) 日本下水道協会(2004): 下水 道内挿用強化プラスチック複合管 JSWAS K-16. 3) 井上他(2005): 更
生下水道管(二層構造管)のバックリング挙動と設計法, 第 50 回地盤工学シンポジウム, pp.271-278. 4) Amstutz, E.
(1950): Das Einbeulen von Schacht- und Stollenpanzerungen, Schweizerische Bauzeitung, pp.102-105. 5) Hutter, A und Sulser, A. (1947): Beitrag zur Theorie und Konstruktion gepanzerter Druckschächte, Wasser- und Energiewirtschaft, pp.144-151. 6) 日 本下水道管路管理業協会(2007): 管路更生の施工に関する Q&A, pp.63-64. 7) 日本管路更生工法品質確保協会(2009):
管路更生工法施工管理マニュアル. 8) 老朽化した埋設カルバートの復旧に関する研究委員会(2013): 既設および更生 した管きょの力学挙動と設計に関する技術資料(案), pp.237-240, 地盤工学会.
0 5 10
(x 10-5/℃) 図-1 線膨張率
の範囲熱硬化性樹脂・ガラス繊維無し
ガラス繊維
熱可塑性樹脂
0 50 100 150
T (℃)
図-2 冷却開始温度Tの範囲 熱硬化性樹脂・ガラス繊維無し
熱可塑性樹脂 熱硬化性樹脂・
ガラス繊維有り
0 5 10
(x 10-3)
図-3 収縮ひずみの範囲 熱硬化性樹脂・ガラス繊維無し
熱可塑性樹脂
熱硬化性樹脂・ガラス繊維有り
0 1 2 3 4 5 6 7
0 1 2 3 4 5 6 7
t (mm)
H (m) k0 (×10-3・R)
0 0.4 1
図-5 熱硬化性樹脂・ガラス繊維有りの 場合のt~H関係(F=120 MPa)= 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 1 2 3 4 5 6 7
t (mm)
H (m)
図-4 熱硬化性樹脂・ガラス繊維無しと 熱可塑性樹脂の場合のt~H関係 (
F=50 MPa) k0 (×10-3・R)
0.4 2
4 6
= 土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)
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