(原 著)
学生の 自己評価 による成人看護実習の達成度
‑ 3 週後 ・5 週後 の 自己評価結果の分析一
太 田にわ 池田敏子 大井伸子 景 山甚郷 金尾直美 小林 有 林 優子
要 約
この研究 目的は,実習 目標 の達成度 に対す る学生の 自己評価 を明 らか にす るこ とであ る。調査対象 は 短大の看護学科
3
年生7 4
名 であ る。調査 は 自記式の調査票に よ り成人看護実 習の3
週後 と終 了時の5
週 後 に行 った。 この 自己評価 は実 習 目標11項 目につ いて5
件法 で行 った。 その結果,患者理解,患者指導,自己の内面の気づ きな ど目標 は
, 3
週後 よ り5
週 間の実習に よって よ り評価 が高 くなった。最 も自己評 価が低 いのは社会資源 の活用の理解 であった。悪性の患者 を受 け持 った学生 の方 は良性 の患者の受 け持 ち学生 よ り, 人間 としての態度や死生観 な どに関 して5
週後有意 に高値 であった。今後の課題 は, 限 ら れた実習期 間内で,学生個 々の経験 をどの ように共有 させ るかや 患者の福祉 につ いて理解 を深め るこ と である。キー ワー ド :実 習 目標, 自己評価,成人看護実 習,看護学生,実 習期 間
目 的
自己評価 は 自分 を客観 的に見つめ評価 す るこ と であ る。 これの教育‑ の活用 につ いて,安 岡1)は, 学ぶ側 に学習へ の主体性 を持 たせ,学習‑ の動機 づ け とい う効果 も期待 で きる と述べ てい る。看護 教育 において も, 自己評価 は技術実習や病棟実習 に取 り入れ られ,教育方法 に関す る報告 も見 られ る2・3・4). しか し,成人看護実 習 (内科系)目標 の達 成度の 自己評価 を実 習期 間 との関連 で検討 した研 究 は見 られない。著者 らは内科 的治療 を受 け る患 者の看護実習において,実 習期 間の長 さに よって 実習 目標達成 の程度が異 なるのではないか と考 え
た 。
現在,本学 におけ るこの実習は,一つ の実習場 所 で,原則的には一人 を受 け持 ち とす る
5
週間の 実習 を行 っている。本研究 では実 習開始3
週後 と 実習終 了時である5週後 の実 習 目標 に対す る学生 の 自己評価か ら, 目標達成度 を明 らかにす るこ と を目的 とした。 また, 同時に受 け持 ち患者の属性岡山大学医療技術短期大学部看護学科
との関連 につ いて も検討 したい と考 えた。
研 究 方 法 1.対象
本短期大学看護学科 の
3
年生 で成人看護実習A
(内科 的治療 を受 け る患者の看護) の実習生7 4
名 とした。 この実 習 目的は 「内科 的治療 を受 け る患 者が,家族や周囲の協力の もとに疾病,、検査,治 療 に伴 う障害や 日常生活の規制 を受 け入れ,社会 生活へ の適応がで きるように, また,死の転機 をとる場合 には,最期 まで, その人 らしい生活が送 れ るよ う援助 で きる能力 を養 う」 であ る。 この 目 標 として11の項 目をあげてい る。学生 は
4
月か ら1 2
月の期 間に4
班 に分 かれ5
週 間の実習 を行 って いるo
lつ の班 の学生 は3
グループに分 かれ,大 学病院の3
つ の内科 のいずれか1
ヵ所 での実 習 を す るこ とになってい る。 なお, この実習期 間に, 各 グループでのカンファレンス と3
グループの学 生2 0
名が合 同でカンファレンス を行 う機会 をもっ‑ 1 4 7‑
で関心が深 い もの を自主的に選 んだテーマに して お り,例 えば, 腎臓病, 白血病,肝臓病 患者の看 護 な ど比較 的入院患者数 が 多い疾患 に関連す るも のが 多い。
2.
調査方法調査期 間は1992年4月〜12月で, 自己評価 を行 う時点は
, 5
週間の内科実習の半 ば を過 ぎた3
週 後 と実習終 了時 とした。 自記式の評価票 で, 自己 評価 の評価項 目につ いては,実習 目標 の11項 目を 用 いた。 自己評価 の基 準 は, 5
「大 変 よ くで き る」, 4
「よ くで きる」, 3
「で きる」, 2
「少 しで きる」, 1
「で きない」の5
件法 とした。 3
週後 と5
週後の 自己評価票‑ の記入は, 同 じ評価用紙 に 記入す るこ ととした。 なお,全項 目につ いて 自己 評価 に対す る理 由 を記述 させ た。なお,結果 の分析 には統計 ソフ ト
HALBAU
を 用 い,平均値 の比較 には t検定 を用 いた。結 果
学生の受 け持 ち患者の特性 であ る性別,年齢, 悪性か良性か,疾病分類 な どは表
1
及び表2
に示 す とお りであ る。1 . 3
週後 と5
週後の 自己評価 とその比較 図1
に示す ように, 3
週後の実習 目標 に対す る 学生の 自己評価 は 目標7
の 「社会 資源 の活用の理 解」が平均値1.9と最 も低 か った。続 いて, 目標5 の 「予後不良患者や家族 のニー ズの充足」2. 2
, 目 標4の 「自己管理がで きる援助」 2.4と低か った。他 は平均値 が
2. 5
以上 で,特 に 目標8
の「患者や家 族‑ の思 いや り」, 目標9
の「人 としての尊厳 を重 ん じる」 はいずれ も3
週後 に3. 6
以上 と高か った。次に
, 5
週後 に再度 同 じEl標 に対す る自己評価 を行 った結果 を3
過後 と比較す る と, いずれの 目 標 も5
週後 の平均値 の方が有意に高い値 であった。5
週後 の各 目標 に対す る平均値 をみ る と, 3
週後 で平均値1. 9
と最低 であった 目標7
の「社会 資源の 活用の理解」は2. 5
台に留 まる結果 であった。 この 評価 を高 くした学生 の理 由には, 医療 費のカンフ ァレンス をしたこ と,特定疾 患や障害手帳 を知 っ たこ と等が あった。他 は全 て 自己評価3.0を越 え,項 目 人数 (%) 生別 男 28 (35.1) 女 48 (64.9)
性性悪良
皮四割 性性急慢
皮性計
歳以下 15 (20.3)
‑59歳 19 (25.7)
〜69歳 26 (35.1) 歳以上 14 (18.9)
表2 受 け持 ち患者の疾病分類 (n‑74) 疾 病 分 類 人数 (%) 呼 吸 器 系
循 環 器 系
血 液 ・造 血 器 系
消 化 器 系
内 分 泌 系
代 謝 系
脳 ・ 神 経 系
勝 原 病
腎 ・ 泌 尿 器 系
そ の 他
2130711584244724436112219380233051121
中で も目標
8, 9
の 「患者や家族‑ の思 いや り」,「人 としての尊厳 を重 ん じる」は評価4.1と高か っ た。
また,表
3
に示す ように, 5
週後の評価 か ら3
週後の評価 を引いた得 点の差か らどれだけ伸 びた か をみ る と,最 も大 きい ものは 目標4
の 「自己管 理 が で きる援助」 と目標5
の 「予後不 良患者や家 族 のニー ズの充足」 で,伸 びの平均値 は0. 7 8
であ った。次 に 目標3
の 「患者や家族 が現実 を受容 で きる援助」 は0. 7 3
であった。 なお,最 も伸 びが少 なか ったのは 目標9
「人 としての尊厳 を重 ん じる」の0.41であった。
個 々の学生 で
3. 0
以上 の大 きな伸 び を示 した項 削 こつ いてみ る と, 目標3
「検査 ・治療へ の適切 な援助」, 目標7
「社会 資源 の活用 の理解」, 目標l
l「自分 の死生観 を持つ」 の3
項 目な どであった。この学生 の理 由記述 は受 け持 ち患者のカンファレ ンスや学習会 での成果 であ る としていた。反対 に,
実 普冒
標 1現在の身体 的状態お よび予測 され る状態 を理解 し, それに対応 した援助ができる I I
l l
t
l l l
2 検査 .治療 お よび処 置の 目的 .理 由お助がで きるよび留意点 を理解 し,適切 な援助 .介
l 1 l l l l l I
3 患者お よび家族が疾病 .治療 .生活の規制 をどの ように理解 し, どの よ うに受 け止めてい るか を明 らかに し,現実的に受容 で きるような援助が で きる ll
】 l l l l l
4 患者お よび家族が疾病 .治療 .生活の各 自の生活にあわせ た 自己管理技術 が持 て るように援助 で きるコン トロール方法 を現実的に理解 し, ll lI
l I
Al5予後不良患者お よび家族の心理社会的状態 を理解 し, そのニー ズが充足で きるよう援助 で きる Il ll
l l I 1
6 患者お よび家族 に必要 な医療チー ムの役割が理解 で き,協力 .連携の必要性がわか る ll ll
l l l I
7 患者お よび家族 に必要 な社会 資源 の活用につ いて理解 で きる Il ll Il l
8 患者お よび家族の気持 ちを思 いや ることがで きる Il l
l l l
I
l
9 厳 を重ん じる態度が とれ るいかなる場ノ釧 こおいて も人 としての尊 lI ll ll
l l
10予後不良患者に接 してお こる自分 の情動反応に気づ くこ とが で きる ll tI lI
l l
ll 生 と死 について考 えを深め, 自分 の死生観 を持つ ことがで きる ll l llI l l llll l l
l I
1 2 3 4 5
く自己評価点)
*** P<0.
001* 評価 基準
1:で きない 2:少 しで きる 3:で きる 4:よ くで きる 5:大変 よ くで きる 図1 3週後・5週後 による実習 目標 と自己評価
‑ 1 4 9‑
り, 目標8, 9, 10の3項 目を除 く項 目で数 名 見 られた。 目標
1
において,評価4
か ら評価1
と最 も評価 を下 げた学生 に関 してみ る と,「裾 別が 出来 やす い患者 であ るのに効果的 な体位 交換 が出来 な か った」 と記 してい る。 その他 の項 目で も評価 を 下 げた学生の理 由については,実際の実 習での失 敗 あ るいは カンフ ァレンスや ビデ オに よる学 習 を 通 して 「で きない」 こ とを反省 を してい る記述が あった。患者の年齢 につ いて, 60歳 以上(40名), 60歳 未 棉 (34名) の
2
群 に分 けて平均値 の比較 を行 った が有意 な差 は認め られ なか った。受 け持 ち患者 の病気 が悪性 か 良性 かに よる自己 評価 の比較 を行 った結果 は表
4
に示 した。悪性疾 患の患者 を受 け持 った学生 (32名) と良性疾 患の 患者 を受 け持 った学生(42名 )でt
検 定 を行 い, 3
週 後 の平均 評価点 に両群 で有意差 が なか った 目標 につ いて5週後 の結果 を比較 した (図2)。 この9表3 5週後の評価か ら3週後の評価 を引いた値 (∩‑74)
\
平均値 (標準偏差) ‑35‑2週後の評価‑ 1 ‑ 30
週後の評価 の値1 2 3NA
目標1 0.70 (0.88) 1
0
3 23 37 910
目標2 0.58 (0.77)
0
1 3 29 34 70 0
目標3 0.73 (0.89)
0 0
3 30 28 10 3 0目標4 0.78 (0.82)
0 0
2 27 32 ll 20
目標5 0.78 (0.77)
00
1 26 30 ll 1 5目標6 0.59 (0.82)
0
1 3 29 31 7 1 2目標7 0.68 (0.92)
0 0
2 33 24 5 5 5目標8 0.52 (0.59)
0 0 0
39 31 40 0
目標9 0.41 (0.54)
0 0 0
45 27 20 0
目標10 0.63 (0.76)
00 0
36 22 9 1 6目標11 0.66 (0.85)
0 0
2 35 26 8 30
表4 受け持 ち患者の良性 ・悪性別 に よる自己評価 (∩‑74)
目 標
過 M (良性SD) 3週後 M (悪性SD) M (良性SD) 5週 後 M (悪性SD) 目標1 3.02 (0.74) 2.94 (0.79) 3.50 (0.85) 3.94 (0.70) E]標2 2.88 (0.73) 2.88 (0.78) 3.43 (0.76) 3.50 (0.75) 目標3 2.67 (0.99) 2.50 (0.94) 3ー17 (0̲95) 3.53 (0.90) 目標4 2.21(0.77) 2.56 (0.70) 2.98 (0.91) 3.38 (0.93) 目標5 2.13 (0.95) 2.19 (0.95) 2.78(1.14) 3ー09 (0.95) 目標6 2.90 (0.94) 3.16 (0.87) 3.51 (0.80) 3.69 (0.81) 目標7 2.05 (0.88) 1.65 (0.74) 2.53 (0.94) 2.52(1.22) 目標8 3.57 (0.93) 3.59 (0.96) 3.95 (0.90) 4.31 (0.92) 目標9 3.62 (0.84) 3.78 (0.74) 3.93 (0.77) 4.34 (0.64) 目標10 2.42(1.14) 2.97 (0.98) 2.92(1.15) 3.66(1.08) 目標11 2.48(1.07) 2.94 (0.86) 3.12 (1.03) 3ー63 (0.96)一
1 2 3 4
〈自己評価点)
*
P<0.05〇 良性
⊥
患性(∩‑42) (n‑32)
図2 受け持 ち患者の良性 ・悪性別 に よる5週後 の 自己評価 項 目の 目標 で
5
週後に有意な差 を認めたのは, 目標
1
「状態に対応 した援助」, 目標9
「人 としての 尊厳 を重ん じる」, 目標1
1「自分 の死生観 を持つ」などで
, 3
項 目いずれ も悪性疾患患者 を受け持 っ た学生の平均値が高 くなった。また, 3週後すでに有意差が認め られた 目標4
「自己管理 で きる援助」, 目標10「自分 の情動反応 に気づ く」の2項 目につ いて も,悪性疾患 を受け 持 った学生の方が評価が高 く, 目標
1 0
は5
週後 にも有意な差が認め られた。
一方, 目標7の 「社会資源の活用」 は,両群 と も目標の中で最低値 で,悪性疾患患者受け持 ちの
学生 は平均値
1
.7
,良性疾患患者受け持 ちの学生 は 平均値2. 0
であった。また,5
週後 の平均値 も同様 に全項 日中最低値 で,両群 ともほぼ同 じ2. 5
の評価 で差 を認めなか ったOこの 目標7は,特 に患者の社会的状況が影響 を 及ぼ しているのではないか と考 え,患者の年齢 を 細区分 し
,49
歳以下,5 0‑59
歳,60‑69
歳,7 0
歳 以上の4群 に分 けてt
検定 を行 った結果,図3に 示す ように4 9
歳以下,6 0‑69
歳,7 0
歳以上の場合 に, 3
週後 よ り5
週後が有意に高い 自己評価 となり
,5 0‑59
歳のみは有意を差が認め られなかった。‑ 1 5 1‑
(一(l(歳(50607へ受け持ち患者の年齢)
) 一 )
)
)
3 4 5
〈自己評価点)
*
P<0.05**
P<0.01***
P<0.001図3 受 け持 ち患者年齢 と目標7(社会資源の理解)の 自己評価
考 察
1.実習期 間の長 さに よる目標達成度
平均値か らみ る と, 3週後 に 「で きる」 とい う 段 階の 自己評価 は,思 いや りや 人間の尊厳 を守 る とい うよ うな態度 に関す る
2
項 目のみであ ったが, 5週後 には, 患者 の 「社会 資源 の活用 の理解 」 を 除 く全項 目を 「で きる」 と評価 してい る。 この よ うに,学生 自身が 「で きる」 と評価 で きるこ とは 次の学習‑ の動機づ け にな り, 3
週 間の実 習 でな く5週 間の実習に意義が あ る と考 え る。実習3週 後 よ り5
週後 に,全項 目にお いて 自己評価 が高 く な るこ とはあ る程 度予想 で きるこ とであ るの で, 平均値や伸 びの値 の大 きさに注 目し検 討す る必要 があ る。伸 びの値 が大 きか った 目標
4
の 「自己管理 が で きる援助」や 目標5
の 「予後不 良患者のニー ズの 充足」 は他 の 目標 に比べ る と, 3週 間以後 の2週 間の実習におけ る学 びが大 きい と言 え る。 この よ うな患者指導や 患者理解 に関す る 目標 は実 習期 間 が5
週 間あった こ とで評価 が よ り高 まった と考 える。
実習期 間が あ ま り影響 しない と思 われ る ものは, 伸 びが少 なか った 目標8の 「患者 ・家族‑ の思 い や り」や 目標
9
の 「人の尊厳 を重 ん じる」 な どであ る。 これ らは3週 後 ・5週後 どち らも最 も評価 を高 くしてお り,項 目の 内容 か ら考 えて, 学生 自 身の看護 の態度 であ り,短期 間に それほ ど変化す る もの では ない と思 われ る。 なお, 目標7の 「社 会 資源 につ いて活用 の理解 」 は
, 3
週後, 5
週後 ともに 自己評価 が最 も低 く, 自己評価3の 「で き る」 にな らない項 目であ ったが, これにつ いては 後 に受 け持 った患者 の特性 との関連 で考察す る。一 万
, 3
週後 よ り5
週 後 に低 く自己評価 した学 生 の理 由記録 を検 討す る と,実 習 を通 しての失敗 や学 習が深 まるこ とに よって評価 を厳 し くした こ とが分 か った。 この こ とは実 際の関 わ りが長 い こ とでケアの機会 が増 え, 自己評価 す る学生 自身の 基準が 高 くなった こ とに よる と考 え る。つ ま り, 患者 の理解や 患者指導が で きた り, 自 分 の 内面 に気づ くこ とが で きる と学生 自身が思 う よ うにな るまでには, あ る程 度長 い受 け持 ち期 間 と指 導が必要 と考 え る。 また, 患者 を取 り巻 く社 会 に関す るこ とや 人間 としての態度 は,教 育方法 を考慮す るこ とで さらに 自己評価 を高め るこ とが で きる と考 え る。
2.
受 け持 ち患者 の特性 に よる 自己評価 の ちが い 受 け持 ち患者 の疾 患が悪性 か 良性 か に3週後 で は差 が見 られず, 5
週後 に有意 な差 が見 られ た3
つの 目標 について以下 に検討す る。
まず, 目標
1
の 「予測 され る状態に対応 した援 助」は,受け持 ち患者が悪性の場合, 3
週間では 予測出来 なかったことが5
週間 と長 くなったこ と で患者の状態の変化 を深 く理解 で き援助 につ なが るようになった といえる。一方,良性の患者の受 け持 ちでは身体症状の変化が緩やかで予測が困難 なため,援助 まで結びつかなか った と考 える。他の
2
つである目標9
「人 としての尊厳 を重ん じる」, 目標1 1
「自分 の死生観 を持つ」な どの人間 の理解 に関 して も,悪性疾患の患者 を受け持つ こ とと, 5
週間 とい う期 間があることによって評価 が高 くなるもの と考 える。 しか し,最近の学生は 臨死患者の看護経験 が減少傾 向に あ る とい う報 告5・6)や,学生が実習の 自己評価 で低 い評価 をす る ものに死生観があ るとい う報告7)もあ るよ うに, 重症の患者 を受け持つ経験 も減少傾 向にあ り, こ れ らの理解がで きに くくなっていると考 える。今 後, その ような患者 を受け持つ とい う機会が少 な い学生に どの ように追体験 をさせ るかが課題 であ る。今 回,黒沢明監督の映画 「生 きる」の ビデオ 学習の機会 を得 たことか ら学生は評価 を高 くして いた り,友達の受け持 ちの患者の死か ら考 えさせ られたこ とで評価 を高 くしていたが, この ような 学生の学習動機 と機会 をうま く捉 えて指導す る必 要がある。以上のことか ら,予測 され る状態‑の看護援助 や人間 としての態度,死生観 についての理解 を深 め るには, ある程度長 い期 間,悪性疾患の患者 を 受け持つ ことが有効 であると考 える。
なお, 目標
4
の 「自己管理ができる援助」や 目 標1 0
の 「自分 の情動反応に気づ く」は3
週後に有 意な差が認め られてお り,期 間が短 くて も悪性疾 患の患者 を受け持つ方がその評価が早 く高 くなる ことを示 していると考 える。受け持 ち患者の疾患に影響 を受けない ものにつ いてみ ると, 目標2の 「検査 ・治療への適切 な援 助」の看護技術的なことで, 3週後, 5週後 とも 両者の間に差がほ とん ど見 られない。学生 は どん な疾患の患者 を受け持つかに関わ らず,検査や治 療 に関す る援助に余 り関与 してないことが考 えら
れ る。なお,弓場 ら8)は,技術 に関す る項 目の 自己 評価が他 の項 目よ り低 いことを報告 している。 目 標2はこれに類似す る項 目であるが,特 に今 回は 他 の項 目よ り低 いことはなか った。 また,同様 に 疾患が悪性か否かでの差が見 られない 目標
7
「社 会資源の活用の理解」につ いて も,高度医療機関 での実習で理解す る機会が学生 に とっては少 ない ことが伺 える。次に,実習 目標7の 「社会資源の活用の理解」
において
,5 0
歳か ら5 9
歳の年齢の患者 を受け持 っ た学生の評価のみ有意差 を認めていないが, 3
週 後 にすでに 自己評価が高いことに よると思われ る。この
3
週後が高い要 因には医療費等につ いてカン ファレンス した実習 グループであるのではないか と考 え,実習 グループ間で比較 をお こなってみた がその違 いは認め られなかった。 そこで,学生個 別 に3
週後の理由記述 をみ ると,社会的地位 での 役割が期待 され るこの年代 の患者か ら社会復帰の 話 を聴 くことによって学べ たケー スが,記述数 は 少 ないが見 られた。しか しなが ら,「社会資源の活 用の理解」の評価 は,前述の ように,学生個別の 学習機会や関心の程度によって大 き く異なると考 える。荒川 ら2)は社会 資源やサ ポー トシステムの 学生の 自己評価が低 いことにつ いて,体験 を通 し て 自分 の ものに してい く機会が少 ないことに よる ものであろうと指摘 している。今後,医療 ・福祉 を含む社会 資源 について, カンファレンスなどの 学習の場 を活用 して個々のケー スにつ いて学び を 深め る機会 を作 ることが必要 であるといえる。看護 は患者 を総合 的に捉 え, そ して健康 問題 に アプ ローチす る必要があ り,今 回の ような慢性期 の患者の看護 はある程度の長い期 間 を通 して実習 を行 うことによ り,患者のニー ズや病気への対応 につ いての理解 が深 まる と考 え る
。Kr i c hba um
ら9)は看護実 習におけ る教育 で,実 習の組 み方や 学生 ・指導者 ・教 師の コ ミュニケー シ ョンの重要 性 を指摘 しているが, これ らによって, よ り効果 的な教育が求め られ る。自己評価 につ いては有効性 とともに問題点につ いての示唆 も見 られ10),今後,この有効性 を高め る 検討が必要 であると考 える。
‑ 1 5 3‑
実習 目標 に対す る学生 の2回の 自己評価 の分析 結果 は以下 の とお りであ る。
①
3
週後 よ り5
週後の 自己評価 が全 ての 目標 で 有意 に高 くなっていた。②社 会 資源 の活用 に関す る 目標 のみ が, 「で き る」 とい うレベ ルの 自己評価 に な らなか った。
③特 に
5
週 間の実 習期間 において 自己評価 が高 くなったのは, 患者理解や 患者指導 あ るいは 自己 の内面‑ の気づ きに関す る もので,実習期 間が関 係 しなか ったのは人間 としての態度 に関す る 目標 であった。④受 け持 ち患者の疾 患が悪性 か良性 か で比較 す る と,悪性疾 患の患者 を受 け持 った学生 は,予測 を含め た患者の援助や 人間 としての態度,死生観 な どに関す る自己評価 が
3
週後 よ り5
週 後 に有意 に高 くなった。今後の課題 は, 限 られ た実 習期間 で効 果 をあげ るために,個 々の経験 をどの よ うに共有 させ るか を検討す るこ とや,病 院 だけ でな く地域 に根 ざ し て生 活す る患者 の理解や患者 の社会 資源 な どの福 祉 の理解 を どの よ うに取 り入れ るか であ る。
謝 辞
今 回の調査 に協 力 して くだ さった学生 の皆様 に 感謝致 します。
1)安 岡忠彦 ■自己評価 「自己教育論」 を越 えて.図書文 化, 東京.69‑91,1990.
2)荒川千登世, 内 田宏 美, 豊 田久美子 :学生 の 自己評価 か らみ た実 習におけ る今 後 の課題. 口本看護学教育学 会誌6 :59,1996.
3) 温井 範子,梅 凧 ナいこ, 西村和美,安 井千明, 満 開信 江,松井 弘美, 高村 きよ美 二実 習の 自己評価 に影響 す る要 因 とその考察. 第23回 日本看護学 全集錦 一看護教 育二72‑75,1992.
4) 河合 洋 子, 堀 田法 子 ̀′ト児看 護 学 実 習 評 価 と実 習 直 前 ・直後 におけ る学生 の不安‑ 2週 間実 習 と3週 間実 習の比較‑. 名古屋大学 看護 短期 大学 部 紀 要6 :31‑ 37,1994.
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(Original)
Evaluation of adult nursing practices using self-assessment form - analysis in 3rd and 5th weeks of practice -
Niwa OHTA, Toshiko IKEDA, Nobuko OHI, Jingo KAGEYAMA, NaomiKANAo, Yu KOBAYASHI and Yuko HAYASHI
Abstract
The purpose of this study was to evaluate the adult nursing practices using a self-assessment form.
Seventy-four third-grade nursing students assessed 11 items in the 3rd and 5th weeks of practice.
The scores of all assessment items in the 5th week were significantly higher than these in the 3rd week. The lowest scoreing item at both 3rd and 5th weeks was understanding of the utility of social resources.
The students assigned patients with malignant diseases reported higher scores on 3 assessment items.
These findings suggest that students should share their experiences and learn about social resources during clinical practice.
Key words:
self-assessment, adult nursing practice, nursing student, goal in practice, period of practice
School of Health Sciences, Okayama University