1. 緒
言
生涯スポーツの振興を図る上で重要な拠点 となるスポーツ施設は、平成10年度の文部省 の報告によると、全国で25万8,000カ所である。 設置者別に見ると、小学校から大学までの学 校体育施設が約16万600カ所、公共スポーツ施 設が約6万5,500カ所、職場・民間スポーツ施 設が約3万1,900カ所となっている(1998)。 近年、国民のスポーツに対するニーズの高ま りを受けて、公共スポーツ施設は増加する傾 向にあるが、その運営形態やプログラム及び サービス内容は住民のニーズに対して、充分 に応えているとは言えない状況にある。一方、 バブル崩壊後、低迷する民間フィットネスク ラブをはじめとする民間スポーツ施設におい ても、会員数は安定していると言われている ものの、閉鎖する施設の増加、オープンする 施設の減少、存続する施設の低料金化等、業民間スポーツ施設における潜在利用者の特性に関する研究
松
永 敬
子*
A Study on the Characteristics of Potential Users
in the Commercial Sports Club Market
Keiko Matsunaga
*まつなが けいこ 文教大学人間科学部人間科学科
The puropose of this study is to clarify the characteristics of potential users of the commercial sports club market in nagoya city. This study compared potential users of the commercial sports club market with continuous users in the public sports facilities. The questionnarie contained demographic, 6 user form items, 20 motivation items, 15 satisfaction items and 53 socio-phchological benefits items. A questionnarie survey was conducted from a sample of 1,791 members.
As results, potential users of the commercial sports club market were 30.9% , and continuous users in the public sports facilities were 69.1%. Potential users of the commercial sports club market had five socio-phchological benefits factors. Five factors were obtained which reflected Mental and physical stress release, Apporove self position-existence, Company bonding, Keeping health, and Self-improvement. Especially, potential users of the commercial sports club market were associated with Self-improvement factor, whereas continuous users in the public sports facilities were associated with Company bonding. One of the notable features of potential users of the commercial sports club market are their great power self-improvement, and what seems to be lacking is company bonding.
界の成熟化現象が進んでいる。総理府の調査 (1997)によると民間スポーツ施設への入会 希望者は若干増加傾向にあるという報告もあ るが、現実的には民間スポーツ施設が新市場 を開拓するためには、莫大な費用と時間が必 要となり困難を極める。そこで、H.I.Ansoff (1965)が示したサービスと市場と戦略との 関係を参考に、将来、民間スポーツ施設を利 用する可能性の高い潜在利用者に注目し、そ の利用者の特性を把握した上で、適切な経営 戦略を行うことが新規の会員獲得の有効な手 がかりになるものと考えられる。そこで、本 研究では、民間スポーツ施設の潜在利用者を 発見するための手がかりとして、わが国のス ポーツ・運動参加者の半数は、公共スポーツ 施設又は民間スポーツ施設において活動を行っ ているとの笹川スポーツ財団の報告(1996) をもとに、まず現在のスポーツ・運動参加者 に注目した。特に本調査を実施した名古屋市 は、政令指定都市の中でも公共スポーツ施設 が充実しているといわれている反面、民間ス ポーツ施設の参入が難しい地域であるといわ れている。通産省の調べによると三大都市の 人口全体に対する民間フィットネスクラブの 会員数は、大阪がトップで4.8%、次いで東 京が3.6%、そして名古屋は2.5%と最も低い 数値になっている。つまり、民間スポーツ施 設の潜在利用者が公共スポーツ施設に潜んで いる可能性が高い地域ともいえるのである。 そこで、本研究は、現在の名古屋市の公共 スポーツ施設利用者の民間スポーツ施設併用 状況と今後の利用希望をもとに、民間スポー ツ施設の潜在的利用希望者を抽出し、 その 「潜在的民間利用希望者」とそのまま公共ス ポーツ施設を継続的に利用したいという「公 共継続利用希望者」のグループの比較分析を 行った。その結果をもとに、潜在的民間利用 希望者の特性を明らかにしていくことで、民 間スポーツ施設が新規の会員を獲得するため の効果的な経営戦略の方向性を打ち出すため の基礎的資料を収集することを目的とする。
2. 研究方法
調査施設の概要 名古屋市は885,800世帯、総人口2,166,960人 (1999年9月1日現在)、総面積326.35の政令指 定都市である。図1に示したように、名古屋市 内には全16の区に対して、11区内12カ所の公共 スポーツ施設(トレーニングを所有する施設) がある。その中で、民間に業務委託をしている 1施設以外の11施設は、すべて、財団法人名古 屋市スポーツ振興事業団が運営を行っている。 施設の利用は中学生以上で、各施設を共通利用 できる定期券・回数券を発行している。施設利 用料金は施設によって若干異なるものの基本的 に、定期券は1カ月間有効で、大人2,000円・ 中学生800円。回数券は5回券で、大人1,000円、 中学生400円となっている。利用時間は、平日 が10:00∼20:30、日祝日が10:00∼18:00 までである。参考までに、調査を実施した1996 年8月のトレーニング室利用者の状況は、11施 設で303,147人であった。各施設の規模には差 があるものの、最も規模が大きい瑞穂運動場で、 トレーニング室の広さは427、トレーニング器 具は46種類139点となっている。また、最も小 さい志段味スポーツランドで、トレーニング室 の広さは200、トレーニング器具は25種類87点 となっている。 データの収集 本研究は、名古屋市内にある公共スポーツ施 設(トレーニング室)11施設のすべてに2∼3 名の調査員を配置し、留置法(手渡し)及び一 部面接法による質問紙調査を実施した。調査期 間は、1996年8月3日(土)∼8月9日(金) までの1週間で、11施設とも同一期間において 一斉に調査を実施した。有効標本は、1,791で あった。各施設の有効標本数は図1に示した通 りである。調査内容は、民間スポーツ施設併用 状況及び今後の利用希望、属性、利用形態、利 用目的、利用満足度、身体活動のベネフィット 等についてである。 分析の枠組み 本研究では、民間スポーツ施設の潜在利用者 の特性を明らかにするために、名古屋市公共スポーツ施設利用者の中から、18歳未満の利用者 と民間スポーツ施設の併用利用者を削除した。 また、今後の民間スポーツ施設の利用希望者を 「潜在的民間利用希望者」、以後「潜在民間利用 者」とし、逆に民間スポーツ施設の利用希望が 全くなく、公共スポーツ施設の継続利用を希望 する者を「公共継続利用希望者」、以後「公共 継続利用者」と設定した。その結果、表1に示 したように、現在、名古屋市の公共スポーツ施 設を利用している中に、潜在民間利用者は全体 の30.9%を占めることが明らかになった。この 数値は経営上一考するに値するものといえる。 本研究は、30.9%の潜在民間利用者と69.1%の 公共継続利用者を比較分析しながら、潜在民間 利用者の特性を明らかにしていく。また、11施 設の中で、最も潜在民間利用者の割合が高かっ た施設は、建物が古く規模も小さい施設で、周 りに民間スポーツ施設も存在するという環境の スポーツトレーニングセンターで45.8%。逆に 最も潜在民間利用者の割合が低かった施設は名 古屋市の公共スポーツ施設の中で、最も規模が 大きい瑞穂運動場で、同区には民間施設が1件 もないという環境で23.1%という数値であった。 表1 民間スポーツ施設利用希望による分類 (n=1093) 潜在的民間利用希望者 30.9% 公共継続利用希望者 69.1 計 100.0 施 設 名 有効標本数 ①瑞穂運動場 155 ②露橋スポーツセンター 143 ③枇杷島スポーツセンター 171 ④稲永スポーツセンター 200 ⑤天白スポーツセンター 230 ⑥緑スポーツセンター 198 ⑦北スポーツセンター 154 ⑧中村スポーツセンター 161 ⑨志段味スポーツランド 152 ⑩南陽プール 111 ⑪スポーツトレーニングセンター 116 計 1,791 図1 名古屋市内の調査施設及び有効標本数 表2 民間スポーツ施設の潜在的利用希望者と 公共継続利用希望者の属性 調査項目 潜在的民間 公共継続 利用希望者 利用希望者 (n=365) (n=728) 性 別 男性 62.2% 65.9 女性 37.8 34.1 χ2=1.41,n.s 100.0 100.0 婚 姻 既婚 43.3% 57.6 χ2=19.32, 未婚 56.7 42.4 d.f.=1, P<.01 00.0 100.0 年齢階層 29歳以下 45.9% 38.0% 30∼39歳 23.5 15.6 χ2=44.3, 40∼49歳 20.5 21.7 d.f.=4, P<.01 50∼59歳 7.7 12.6 60歳以上 2.4 12.1 100.0 100.0 平均年齢 33.1歳 37.9歳 t=−5.78*** ***p<.001
3. 結果及び考察
民間スポーツ施設の潜在的利用希望者と 公共継続利用希望者の属性 表2は、潜在民間利用者と公共継続利用者 の属性について明らかにしたものである。調 査期間が夏休みということもあり、全体的に 主婦層の回答が少なかったという影響を受け てか、両グループとも男性の割合が60%以上 という高い結果が出た。婚姻では、潜在民間 利用者には未婚者が56.7%と多く、平均年齢 も潜在民間利用者の方が33.1歳で、公共継続 利用者よりも、約5歳若いという開きがある ことが明らかになった。年齢階層別にみると、 潜在民間利用者では、20歳代が45.9%を占め るのに対して、公共継続利用者では38.0%で、 逆に40歳以降が約46%を占めている点が大き な特性であるが、潜在民間利用者の方も、中 高年層が約30%占めている点にも今後注目し ていかねばならない点である。 民間スポーツ施設の潜在的利用希望者と 公共継続利用希望者の利用形態 表3は、両者の利用形態を比較したものであ る。まず、利用頻度を見ると、潜在民間利用者 では週に1∼3回が過半数を占めている。公共 継続利用者は、週に4回以上施設を利用してい る人が約2割いることが大きな特徴である。次 に施設の主な利用時間帯を見ると、最も多いの は、両者とも平日午後であるが、潜在民間利用 者では、次いで、平日夜、休日午後となり、利 用はほとんど1人という結果が出た。また、交 通手段は、名古屋市内にも関わらず約6割が自 動車で、施設までの平均時間は約17分であった。 これは、車社会である名古屋市特有の数値であ り、民間スポーツ施設の戦略として、自動車を 使わなくてもよい立地条件の良い施設、あるい は駐車場の確保が必須条件となる。余暇のため に使える金額は、約3万円で潜在民間利用者の 方が若干多いという数値が出た。 公共スポーツ施設の利用目的からみる潜 在的民間利用希望者の特性 表4は、公共スポーツ施設の利用目的から みる潜在民間利用者と公共継続利用者の比較 である。表の数値は、「5.非常にそう思う」 から「1.全くそう思わない」までの5段階評 定尺度を間隔尺度とし、この数値をそのまま 得点化して平均値を算出し、t検定を行った ものである。潜在民間利用者のグループと公 表3 民間スポーツ施設の潜在的民間希望利用 者と公共継続利用希望者の利用形態 調査項目 潜在的民間 公共継続 利用希望者 利用希望者 (n=365) (n=728) 利用頻度 年に数回 2.5% 2.4 月に1回 7.0 4.7 月に2.3回 10.1 6.6 週に1回 24.9 22.4 χ2 =21.05, 週に2.3回 26.2 23.2 d.f.=6, P<.01 週に3回 19.2 21.1 週に4回以上 10.1 19.6 100.0 100.0 利用時間帯 平日午前 18.4% 26.1 (複数回答可) 平日午後 31.0 34.3 平日夜 25.8 21.0 休日午前 15.1 16.5 休日午後 24.1 17.6 利用者 ひとり 65.8% 55.5 家族 9.6 15.4 チーム・グループ 0.3 1.7 χ2 =14.8, 友人・知人 23.5 26.7 d.f.=4, P<.01 その他 0.8 0.7 100.0 100.0 交通手段 徒歩 6.4% 6.8 自転車 23.1 28.7 バイク 3.1 3.7 χ2 =7.82,n.s 自動車 59.3 56.0 地下鉄・バス 7.5 4.5 その他 0.6 0.3 100.0 100.0 自宅からの時間 16.7分 14.4分 t=−2.81** 余暇の為に使える金額 (月) 29,928円 27,727円 t=− .63 **p<.01共継続利用者のグループとの間に、有意な差 が見られたのは4項目で、特に、「2.安いか ら」(t=2.60)「8. シェイプアップのため」 (t=3.98)の2項目は、潜在民間利用者の方 が数値が高く、「9.家族・友人の勧誘」(t= -4.23)「11. 医師に勧められて」(t=-3.47) の2項目については、公共継続利用者の方が 高い数値であった。つまり、民間スポーツ施 設の利用を希望している潜在民間利用者では、 シェイプアップを目的としている人が非常に 多く、安い料金設定で、シェイプアップ等の 美容に関するプログラムを充実させれば、会 員を多く獲得できるものと考えらる。また、 民間スポーツ施設の利用を希望していない公 共継続利用者の利用目的は、第三者に勧めら れて施設を利用している人が多く、何らかの 個人の目的や目標達成のために施設を利用し ている人の方が、民間スポーツ施設へ移行す る可能性が高いことが裏付けられた。つまり、 現在エグザスが積極的に導入している「バイ オメトリクス」など、ある一定期間にスタッ フが付き、安全かつ確実にダイエット・プロ グラムを実施するという商品は、民間ならで はのプログラムであり、今後さらに有効な戦 略となるものと考えられる。 公共スポーツ施設の利用満足度からみる 潜在的利用希望者の特性 表5は、 公共スポーツ施設の利用満足度 からみる潜在民間利用者と公共継続利用者の 比較を示したものである。表の数値は、「5. 非常に満足しているから」から「1.非常に不 満である」までの5段階評定尺度を間隔尺度 とし、この数値をそのまま得点化して平均値 を算出し、t検定を行ったものである。この 表から、潜在民間利用者のグループと公共継 続利用者のグループとの間では、施設の利用 料金以外はすべて潜在民間利用者の方が数値 が低いという結果が出た。当然のことながら、 民間への移行を希望をしてるだけあり、満足 表4 公共スポーツ施設の利用目的からみる潜在的民間利用希望者の特性 潜在的民間 公共継続 利用希望者 利用希望者 t値(d.f.) 平均値 平均値 1.近いから 4.08 4.15 −0.93 1078 2.安いから 4.58 4.44 2.60 1062** 3.精神の修養・訓練のため 3.08 3.25 −2.08 1049* 4.健康増進のため 4.33 4.33 −0.07 1076 5.ストレス解消のため 3.72 3.67 0.68 1055 6.技術向上のため 2.93 2.95 −0.24 1042 7.減量のため 3.67 3.49 2.03 1057* 8.シェイプアップのため 3.64 3.32 3.98 1052*** 9.運動が好きだから 3.85 3.70 2.17 1058* 10.医師に勧められて 1.66 1.91 −3.47 1055*** 11.体力向上のため 4.24 4.21 0.45 1055 12.ファッションを楽しむため 2.05 2.09 −0.52 1044 13.他の人との交流を深めるため 2.49 2.58 −1.08 1057 14.指導者に魅力を感じるため 2.33 2.45 −1.56 1060 15.家族・友人の勧誘 2.05 2.38 −4.23 1049*** 16.日常のリズムを変えるため 3.13 3.06 0.82 1052 17.開館している時間が合うから 2.92 2.87 0.58 1055 18.試合に勝つためや記録向上のため 2.17 2.17 −0.05 1057 19.達成感を得るため 3.04 3.04 −0.07 1054 20.優越感を得るため 2.25 2.38 −1.86 1049* *p<.05 **p<.01 ***p<.001 「5.非常にそう思う」から「1.全くそう思わない」までの5段階評定尺度を間隔尺度と し、この数値をそのまま得点化し平均値を算出した。
度は全体的に低い結果となったわけであるが、 特に有意な差が見られたのは「 2. 施設の設 備」(t=-3.16)「4. 指導者の教え方」(t= -4.70)「8. 施設の閉館時間」(t=-4.67)「 9. 施設の音響設備」(t=-4.18)の4項目であっ た。特にこの4項目の不満が原因となって、 民間スポーツ施設の利用を希望していると考 えることができる。よって、民間スポーツ施 設がこのような潜在民間利用者を開拓してい く場合、まず、この4つの項目について充実 させ、会員獲得に取り組むことが効果的であ ると考えられる。特に、民間の特色として強 調していかなければならないのが、閉館時間 の延長である。潜在民間利用者の中で最も不 満に思っているのが、この閉館時間であり、 民間スポーツ施設の潜在利用者の大きな特徴 は、低料金で充実した施設、設備、プログラ ムを設置することはもちろん、優秀なスタッ フ・指導者を配置すること、そして閉館時間 を延長することが会員獲得の条件となること が明らかになった。静岡市内の民間フィット ネスクラブでは、深夜3時までの営業をスター トし、夜9:00以降の利用者の多さが評判と なっている。また、ナイト会員制度などを導 入し、夜間利用のみの会員に対しては会費を 割引くという形を導入する必要がある。現在、 ライフスタイルが刻々と変化していく中で、 公共スポーツ施設では対応できない部分を、 民間スポーツ施設が臨機応変に対応していく ことを期待されているのである。 身体活動のベネフィット因子からみる潜 在的民間利用希望者の特性 表6は、身体活動の53のベネフィット項目 を、主因子法により因子分析し、バリマック ス回転を行った結果である。固有値が1以上 の明らかに解釈できる因子として5因子を抽 出し、第1因子「心身解放因子」、第2因子 「地位確信因子」、第3因子「交流因子」、第 4因子「健康維持因子」、第5因子「自己向 上因子」と命名した。全5因子による累積寄 与率は50.2%で、抽出された5因子の信頼性 係数クロンバックのα値を用いて安定性を検 証した。その結果、 全5因子において、0.7 以上のα値があり、本研究で得た因子解が、 全体として比較的安定した構造になっている ことが示唆された。 第1因子「心身解放因子」は、寄与率が 表5 公共スポーツ施設の利用満足度からみる潜在的民間利用希望者の特性 潜在的民間 公共継続 利用希望者 利用希望者 t値(d.f.) 平均値 平均値 1.施設までの距離 3.91 3.97 − .83 1084 2.施設の設備 3.83 4.00 −3.16 1083** 3.施設の利用者人数(混雑度) 3.36 3.50 −2.52 1066* 4.指導者の教え方 3.40 3.65 −4.70 1075*** 5.スポーツセンター全体の雰囲気 3.73 3.85 −2.52 1078* 6.更衣室・ロッカールームの美しさ 3.53 3.63 −1.74 1078 7.施設の開館時間 3.37 3.51 −1.74 1078 8.施設の閉館時間 2.97 3.31 −4.67 1077*** 9.施設の音響設備 3.19 3.42 −4.18 1071*** 10.施設の利用料金 4.19 4.18 .16 1071 11.施設の場所・立地条件 3.92 3.96 − .67 1072 12.施設の利用システム 3.70 3.78 −1.37 1069 13.利用料金に見合う指導内容 3.58 3.64 −1.12 1064 14.施設の駐車場 3.27 3.34 − .86 1062 15.スポーツ施設全体について 3.82 3.93 −2.30 1077* *p<.05 **p<.01 ***p<.001 「5.非常に満足しているから」から「1.非常に不満である」までの5段階評定尺度 を間隔尺度とし、この数値をそのまま得点化し平均値を算出した。
35.0%と他の4因子に比べて高い値を示す重 要因子であることが示唆された。 これは、 身体面以上にストレス解消などこころの休 養の手段として身体活動を求めていること が分かる。第2因子の「地位確認」 では、 Douglas(1992)が述べた「肉体的なコントロー ルは、 社会的なコントロールの一つの表現 である。」という考えを裏付ける因子が抽出 された。 第3因子は「交流」で、唯一、身 体活動そのものではなく、それを取り巻く 人々の影響を意味する因子が得られた。第 4因子は「健康維持」本来の目的が達成さ れているものといえる。 そして、 第5因子 は「自己向上」では、周りから承認される 表6 身体活動のベネフィット因子からみる潜在的民間利用希望者の特性 潜在的民間 公共継続 利用希望者 利用希望者 t値 平均値 平均値 F1 心身解放因子(固有値:18.56 寄与率:35.0 累積寄与率:35.0 α値: .94) .050 − .020 1.07 ストレスから解放される。 .74 心の休養になる .73 欲求不満が減少する .65 緊張やプレッシャーから解放される .64 不安が軽減する .63 憂鬱な気分が軽くなる .62 身体の休養になる .62 開放感をもたらす .61 生活に楽しさをもたらす .61 落ち着きを取り戻せる .61 仕事や日常生活の活力を養える .60 日常生活の拘束から解放される .59 日々の生活に変化がつく .54 充実時間が過ごせる .52 集中力が得られる .51 気分が明るくなる .50 F2 地位確信因子(固有値:3.52 寄与率: 6.6 累積寄与率:41.6 α値: .87) − .078 − .016 0.95 社会的な地位が向上する(昇格・昇進など) .80 力や威厳をもった地位につける .75 自分の地位を保てる .71 他人に自分の能力を見せることができる .68 競争心が得られる .60 過去を振り返ることができる .52 F3 交流因子(固有値:2.16 寄与率: 4.1 累積寄与率:45.7 α値: .88) − .114 .015 −2.11* 仲間と心が触れ合える .66 いろいろな人と接することができる .66 友人と一緒にいることができる .63 人々と同じ興味がもてる .62 他人と同じことをするのが楽しい .51 話題ができる .51 F4 健康維持因子(固有値:1.38 寄与率: 2.6 累積寄与率:48.3 α値: .75) .049 .024 0.45 体力がつく .65 身体が健康になる .64 体重のコントロールができる .54 心肺機能が向上する .54 自分の体調がチェックできる .53 老化が防止できる .51 F5 自己向上因子(固有値:1.02 寄与率: 1.9 累積寄与率:50.2 α値: .81) .119 − .030 2.41* 筋力が向上する .63 何かに挑戦できる .63 運動の技能や技術が向上する .63 わくわくする .51 *p<.05
ことよりも自己のイメージの強化や能力向 上を試みを求める因子である。このように、 複雑な構造を持つベネフィットの各因子の 因子得点の平均値を潜在民間利用者と公共 継続利用者のグループによって算出し、 t 検定を行った。その結果、 因子得点がプラ スの因子は潜在民間利用者が「心身解放」 「健康維持」「自己向上」といった自分自身 の項目であるのに対し、 公共継続利用者で は、「交流」「健康維持」といった他を巻き 込んだであり、対照的な結果となった。 特 に有意さがみられたのは、第3因子「交流 因子」 と第5因子「自己向上因子」であっ た。潜在民間利用者は自分自身の目標達成 に向けて常に挑戦し、 筋力や運動技能の向 上に力を入れているという「自己向上」 の ベネフィットが得られ、 公共継続利用者で は仲間、 友人などたくさんの人との交流を 深めることを望む「交流」 のベネフィット が得られたのである。 このように、両者は 異なるベネフィットの因子構造を持つこと が明らかになり、このことは属性や利用目 的などを裏付ける妥当な結果であるといえ る。つまり、 民間スポーツ施設では、体力 及び筋力向上、そして健康維持やダイエッ ト及びシェイプアップなど自らの目標を達 成するためのプログラム作りやサービスの 提供をスタッフが支援するというスタイル が期待され、交流という部分においては二 次的なものとなっていることが明らかになっ た。
4. 結
論
本研究では、名古屋市の公共スポーツ施設 利用者の30.9%は、民間スポーツ施設の利用 を希望している潜在民間利用者であることが 明らかになった。これまでの結果より、名古 屋市の潜在民間利用者の特性は (1)独身者が 多い (2)20歳代が中心(中高年にも注目) (3)平日午後から夜にかけてと休日午後の施 設利用 (4)一人で来館し、 週1∼3回利用 (5)主 に自動 車で来 館、立 地条件 ・駐車 場 は重 要ポイ ント(6)余暇 のため の金額 は約 30,000円の6つにまとめられる。また、今後 の民間スポーツ施設の戦略としては、前述の 6つの特性を考慮しながら戦略につながる次 のポイントにも注目する必要がある。(1)安 価な料金設定 (2)シェイプアップ・減量の美 容目的で入会 (3) 施設・設備(音響等)の 充実 (4)指導者の教え方がポイント(5)施設 の閉館時間の延長 (6)交流よりも利用者自身 があらゆる面で向上することにプログラムの 重きを置くという点である。その他にも土・ 日、休日、及び夜間利用などライフスタイル に合わせて各タイプ限定で会費を安く設定し たり、公共スポーツ施設には少ないサウナ・ ジャグジー等の施設を充実する必要もある。 また、今後ますます増加する、中高年者の体 力にあった豊富なプログラムやシニア会員な どの料金設定を実施することが急務となる。 以上のように、民間スポーツ施設側が、そ の潜在民間利用者を獲得するための手がかり としては、施設の設備の充実はもちろん、閉 館時間の延長や指導者の質の向上、シェイプ アップ等の個別プログラムや自己向上のため のプログラムの充実が最重点課題としてあげ られる。しかし、一番の問題は金銭的問題で ある。これだけ低料金化が進んでいるにも関 わらず、公共スポーツ施設と比較した場合、 民間スポーツ施設の方が料金が高くなるのは やむを得ない。そこで重要なことは、公共ス ポーツ施設とは、やはり差があって当然だと 思っていただけるようなサービスをいかに提 供することができるかということなのである。 公共スポーツ施設側では、公共スポーツ施 設はあくまでも、地域住民の健康増進・体力 向上、スポーツを通した人との交流をメイン に考えている。つまり、公共スポーツ施設の 利用が、運動参加へのひとつの動機付けとな ることが第一の目的で、さらに高いレベルで 運動やスポーツを実施したいと考える人には、 民間スポーツ施設への移行を促すことが、あ る意味での公共スポーツ施設の役割であると 考えられる。よって、特に、民間スポーツ施設に入会している市民が少ない名古屋市の場 合、本研究結果からも示唆されたように、今 後民間スポーツ施設は、潜在的民間利用希望 者のニーズを的確に把握し、名古屋市への店 舗出店、新規会員獲得に取り組む必要がある と考えられる。
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