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根室管内の水産教育 (I)

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(1)Title. 根室管内の水産教育 (I). Author(s). 瑞木, 博; 高嶋, 幸男. Citation. 僻地教育研究, 49: 71-95. Issue Date. 1995-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1510. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである. Hokkaido University of Education.

(2) 1995.3. N仏49. 根室管内の水産教育(Ⅰ) 囁木 博● 高嶋 幸男 FisheriesEducationintheSchooIsofNemuroDistrict,Hokkaido(Ⅰ) HiroshiZUIKI,YukioTAKASHIMA. が行われたのか,を報告してもらうことである(本. はじめに. 号掲載)。第二に,現在根室管内の学校で行われてい. 日本の漁業は,一部栽培漁業があったにしろ長い. る水産教育について,アンケート等によってその現. こと「とる漁業」つまり略奪型の漁業であった。沿. 況をつかむことである。こうした点を踏まえ,水魔. 岸から沖合そして遠滞へと“発展”した日本の漁業. 教育(の課題)について若干の考察をしてみたいと. は,1960年代から70年代(昭和30,40年代)に「と. 思う(次号掲載)。. る漁業」がもっとも盛んとなった時代であった1)。し かし,日本の漁業が世界の大洋へ広がれば広がるほ. Ⅰ.瑞木博氏の水産教育実践. ど他国の沿岸国との摩擦を生じ,ついに1977年米ソ. (注記)瑞木氏は,新任して間もなく野付中学校. 両国が200カイリ漁業専管水域を実施するに及び世 界の海洋秩序は200カイリ時代となる。そこに至るま. に赴任し,以後「水産科(水産教育)」の担当者とな. で,日本においても,1963年沿岸漁業等振興法,1971 年海洋水魔資源開発促進法,1974年沿岸漁業整備開. る。最初の野付中学校の10年間(1961年4月−1970 年3月),歯舞中学校の10年間(1970年4月−1980年. 発法を制定し,沿岸漁業振興を図ってきたが,1983. 3月),そして教頭となった薫別(小)中学校の4年間. (19糾年4月−1983年3月)ほ,氏の水産教育夷践. 年200カイリ時代の漁業情勢の変化にともない沿岸 漁業整備開発法を改正し,いっそう沿岸漁業重視の. の中核をなし,水産教育の理念や目標,カリキュラ. 栽培漁業,増養殖漁業に向かわせた2)き)。. ム開発,教材開発,授業実践およぴクラブ活動等の. 以上のような敗戦後の日本の水産業(漁業)の状況. 指導,水産関係の実習や体験学習の指導,栽培漁業. は,北海道の根室管内の漁業とて例外ではありえな. 技術や飼育観察施設等の維持管理など,水産教育の. い。そうした状況の下で,根室管内は良質な漁場を. 多岐にわたる推進者であった。さらに氏の実践は青. ひかえ,根室市や管内の海岸線部の集落は,その多. 年運動や漁協など地域社会との結びついた活動でも. くが漁業を中心に発達したところである。そうした. あった。こうした水産教育の“全面的な展開”とも. 地域の特性を背景に,「水産教育」が学校教育のカリ. 思える氏の実践は,1960年代以降の根室管内の水産. キュラムとしてまた生徒のクラブ活動として位置づ. 教育を代表するものであったといえよう。それゆえ. けられ推進されてきた学校が生まれた。. に,根室管内の水産教育がどのようなものであった. 本稿の目的は,根室管内で行われてきた「水魔教. かを知る手掛かりとして,氏の実践を通して見てみ. 育」の実態と現状について概観することにある。す. たいと思う。以下,氏自ら語っていただくこととす. なわち,第一に,代表的実践家である瑞木博氏に,. る。. 自らの実践を通して根室管内の水産教育において何 ●羅臼町立穂別小中学校. −71−.

(3) 相木 博・高嶋 幸男 缶を主力に,漁期を中心に操業していた。このエビ. 1.野付中学校く1961(昭和36)年4月∼1970(昭. 漁が最も安定しているといわれていた理由は,「仕込. 和45)年3月〉. み制度」であった。「仕込み制度とは,大企業や工場. (1)地域と結びついた水産教育実践. 本校における職業教育(職業・家庭科教育)の実. 主が,零細小規模の漁師に,操業資金や越冬用生活. 践は,新制中学校発足以来の伝統をもち,高い評価. 物資を高額な催をつけて貸し付け,次年の漁獲物を. を待てきたことは周知の事実である。本稿は,. 低価格で納入きせる仕組み」である。本道でも古く. 1960(昭和35)年度から1969(昭和44)年度までの. からのしきたりとして存在し,漁業発達史の中では,. 10年を一つの区切りとして,職業教育一遇択教科「職. 漁民からの搾取手段・方法であったといわれている。. 業」(商・工・農・水産・家庭科及び選択校における. エビ等の生産物漁獲物の価格値段は,工場側の一方. 必須教科,野付中学校の場合は水産・商業・家庭科. 的な指定価格・独占価格で決められていた。また,. を選択する。),主に「水産科」に関する実践につい. 母姉たちは工場の操業期間勤め,有力な現金収入を. て概要を述べる。. 得ていた。したがって,漁獲物の冷凍施設もなく,. 1960(昭和35)年度より,実践された職業教育は,. 販路もせまく漁家の生活は苦しかったと思う。漁獲. ○個性に応じた職業教育を主幹に,・能力,適性,進. 物の販路輸送手段も小さく,ために漁業協同組合と. 路に応じた学習指導を通じ,・学習意欲の向上と規. しての信用度も低〈,部落内の二・三の商店活動,. 律ある生活行動,生活指導,生徒指導を含め,○職. 仲買業活動も小さい低いものであった。. 業人としての誇りと地域産業の推進開拓者としての. このような状況の中で,中学校教育は高校進学を. 意欲を培い,地域産業の認識をさらに深めさせ,協. する生徒も少な〈,女子の卒業生の大半は外に就職. 力・勤労精神の海養をねらいとした。. していった。男子生徒も漁業家業に従事するにして. 全校活動・職業教育(水・商・家)・クラブ活動の. も,将来に確たるものがもてないことが多く,学校. 三分野を有機的に関連きせ,内容領域も関連をもた. 生括もすさんだ者が多かったのも事実であった。た. せるように構成し実践がすすめられた。水産の教育. だ,生徒達は,荒っぼいが,いったん納得し,理解. 実践は,尾岱沼地域の産業構造・生塵過程をふまえ. して行動を始めると見事な〈らい一生懸命にとりく. て,地域父母からの学校教育への要求度合や事実,. み,成果を上げる気風をもっており校風ともなって. 職業人として成長するための過程・形成度合を把握. いた。. このような状況の中での実践であり,爽践目標も. して,学校教育の中で,基本的な生産経験・技能習 得・経験をさせ,地域の間者解決の学習をめざした. 職業指導を主幹にすえ,規律ある生活行動,職業人. ものであった。これらの実践は試行錯誤の連続であ. としての誇り…等を掲げて取り組んだ。. り,他に実践校もなく,ましてや共同学習の例もな. 教育課程は,職業の選択科目として水魔,家庭,. い,まったくの手探りの状態であった。. 男女共学の商業を採択した。. 当時,尾岱沼地域は漁業生産が低迷し,村当局の 財政状態は最悪の状態であり,村全体・地域全体の. 高校進学予定者 英語・数学. 経済活動は停滞していた。地域部落の電灯も半分し. 2・3年生. かついておらず,生活圏である標津町との交通は夏. 家事家業就職 職業(水産商業家庭). のみで冬期間・春の雪融け期は完全に陸の孤島とな 水 産. っていた。収入源である漁業生産も極めて小規模で. 商 業. 家 庭. 2. あり,サケ刺し網,推定置網,サケ定置網,アサリ. 男. 貝漁,コマイ漁,エビのけた引き網などが主力であ. 3. 珠算. った。後から北洋サケマス漁に出漁する組合員がで 女 2 3. た。そして,最も安定?した漁業はホッカイシマエ. 漁家家計簿. 被服・編物. ビのけた引き漁であった。新組合月や中学校卒業者 はこの漁に従事すると,最低食えるといわれていた。. ○全校活動 一 水産活動・農業活動. しかし,エビ漁は漁獲したエビは全部エビの缶詰工. ○クラブ活動一 水産活動. 場に搬入されていた。缶詰工場は二工場あり,エビ. ○水産の場合は,大別して,水産一般(特に浅海 ー72−.

(4) No.49. 根室管内の水産教育(Ⅰ). 増養殖を中心)・水産実習・実技(操船機関,増. 業はその機会をのがすと次の年まで待たなければな. 養殖技術). らないということも宿命的なものであった。. 1995.3. 全校活動の中心は,野付漁業協同組合が実施して. ○商業の場合は,珠算,簿記の初歩,漁業家計簿。. いたチカの人工採卵・ふ化事業への参加である。こ. ○家庭の場合は,被服一般,編物一般。 いずれも年間70∼105時間。. の事業の拡大によって野付湾におけるチカ資源を増 加させ,漁獲高を上げようというものであった。短 時間の採卵作業によって,ふ化効率を高めることが. 晴天や実験実習が季節的に集中する場合は,女子 は被服が中心となった。. でき,親魚の確保,鮮度保持,迅速な採卵作業を必. 水魔の学習も,増養殖分野では,その学習対象・. 要とした。参加することによって多少の報酬が見込. 教材は,地域からまた漁業協同組合の授業計画の浅. められて,これが全校生徒の活動資金にもなってき. 海増養殖授業計画の中から選定した。000ができ ないか? 000をやってみたら? 000の資料. たという伝統的行事でもあった。現在でも継続され ているものであった。卵の学習を深め,採卵時間の. がほしい,という要望を取り入れてのスタートであ. 決定・ふ化観察・ふ化盆のけい留管理作業は水産科. った。また,地域産業の理解を深めることを目的と. の時間,課外実習で受け持った。実験や試験の結果. した全校活動は「水産」活動と収益を目的とした農. は親魚搬入や採卵時の作業を左右する重要な辛かが. 業活動を取り入れた。. りとなっていった。受精卵のついたふ化盆は,近隣. 水産クラブは,全校生徒の中からの希望選択で希. の町村や漁業協同組合に分配きれて資源回復と維持. 望者で桐成した。主に,水産科の学習,実習の補充. に役立ってきたし,ふ化盆の有価配布は事業の推進. 継続や,実験実習に興味のある暑が参加した。女子. に大いに貢献した。 また,全校活動の中で異色なものはエビ缶詰工場. などは特に実験記録や観察記録,調査集計や統計処. へのエビの皮むき作業であった。エビ漁の開始期間. 理を担当することが多かった。. 約2週間位放課後全校生徒が3時間位をめどに参加. 水産科の学習で,地元や漁業協同組合等の要望の. した。これもエビの鮮度を保ち製品の品質向上と,. 中から選択したものは, 1.野付湾におけるアサクサノリの養殖試験. 短時間処理が絶対に必要なため,そして大勢の労働. 2.野付湾におけるカキ貝の垂下養殖試験. 力を得られるという企業側の面があった。しかし,. 3.野付湾におけるワカメの養殖試験. 唯一の現金収入を得る地域の人々,特に生徒達の母. 4.ホタテ貝の人工採酋試験. 姉たちが連続しての深夜作業によって,疲労が深め. 5.アサリ貝資源の増殖事業. られていくことの補完という意味,多少の賃金が得. 6.チカの増殖事業・増殖技術試験. られるという面もあった。地域産業にふれるという. 7.ホッカインマエビの人工ふ化試験. 面から伝統的な活動であった。現在はエビ資源衰退. 8.サケの燻製製法の開発試験. と冷?東技術の向上導入,販路拡大による価格高騰に. 9.チカの燻製製法の開発試験. より工場は裏過してしまっている。 また,全校活動の農業は,ナメコ・シイタケ栽培. ○ ナメコ・シイタケの栽培研究開発 ○ ナメコ缶詰の製造. を実施し,ナメコ2−3000本,シイタケ3500本とほ. ○/J、型船舶の操縦,機関実習 等であった。. だ木をもち,地域のキノコ栽培の先導的事業を実施. これらの実践をすすめるにあたって,校内には専. した。当時不漁が続いても一時的に他の方法によっ. 門的知識や技術をもった者がなく,担当した者とし. て,生活を維持する漁家経営が指導されていた(大. てまったくの素人,手探りの状態であった。人の話. 半の漁家では馬を飼養した)。町より原木の払い下げ. を聞き,事業報告書,水産試験報告,参考書,専門. を受けて実施した。ナメコの缶詰は相当の収益を出. 書を買い集めての学習であった。また,試験研究機. した暗もあったが,予定通りの結果がでず残念であ. 関への訪問も多く実行し指導を受けた。座学での知. った。また,水産科の実習ではじめたサケの一本燻 (採卵後の親魚)は評判もよ〈,高い値段ですべて. 識はそれなりに得ていったが,実技は経験と実績が なければ要点が指導できず,これには相当の時間が. 引き取られ次年度の予約が多くきた。採卵彼のチカ. 必要であった。特に,浅海増養殖の実験や実習,事. の親魚や′トさな魚体は煉製にすると,びっくりする −73−.

(5) 相木 博・高嶋 幸男 野付方式”と称されて,特に,漁業関係者・指導機. 位の値段で道央の業者に引き取られた。. 関から全国的に注目された。. 年々卒業生が地元に残り,漁協組の青年部活動も 次第に活発になった。この育成や活動の指導も重要. 実践が続くにしたがって,生徒達の荒っばい気風. な仕事の一つとなってきた。水産科の学習をした者. も行動もおさまりはじめた。十年を一つの区切りと. が大半残り参加した。青年部活動・青年運動ほ,現. して,1964(昭和39)年農林省水産長官表彰,1967(昭. 状打破・生活向上・団結であり,特に,若年漁業就. 和42)年北海道青少年科学奨励賞,セーラーファン. ド賞などを受け,またNHK全国放送番組「あすは. 労者の漁業技術技能の習得向上が急務であった。漁 業学園が創設され,冬期間の各種講習会・青年部主. 君たちのもの−われは海の子−」(全国放送30分も. 催の芸能大会・各種研究発表会の参加など次第に活. の)はサトウハテロウ氏が本校の生徒達の活動に詩. 発になった。忘れられないのは,エビ漁の工場納入. をつけてくれて大評判となった。また,秋田県八郎. 価格交渉等にみられ旧弊打破と改進推進を掲げて成. 潟にチカの卵を移送しチカ資源が増加したことに対. 功した。これらのことは,仕込み制度になれた階層. して,チカの増殖試験のお礼として秋田県知事から. から相当に危険視されたこともあった。(工場撤退の. 県内視察の招待も受けた。また,北海道漁村青少年. 一因ともいわれたがエビ漁による収入は飛躍的に伸. 婦人グループ研究発表大会や他支流事業に多数招待. び続けた。). されたりもした。. 次第に青年部活動や漁業学園活動にも理解が深ま. 水産科で学習した生徒達の中にも,進学させたい. った。部員の自信も高まり,団体活動の行動力もつ. 能力気力をもつ者も出はじめ,小樽水産高校増殖科. いてきた。漁業学園の三年目に仝月が全国一周の修. (のちに栽培漁業科となる)等に進学する者は漁業. 学旅行・漁業視察をしようという計画もできた。費. 後継者として漁業組合長と共に推薦し,水産高校側. 用は雇用主と漁協組からの助成金・特恵寄付金でま. の特段の配慮を受けて合格入学した。組合も奨学資. かない,金具80余名が新調の背広姿で参加すること. 金制度を発足させてくれ経済的に支援してくれた。. ができた。また,北海道漁村青少年婦人グループ研. また,高校進学ではなく,北海道立漁業研修所に入. 究発表大会では,野付湾におけるチカの増殖試験と. 所し,漁業後継者としての技術技能(卒業期首日研. して研究実践発表を行い第1席道代表となり,全国. 修,無線レーダーの国家資格受験・合格)を習得す. 大会では,最高賞になるなど思い出の中では忘れる. るものも年々増加した。漁師には学問は不要との風. ことができない。地域からの要望や期待されたアサ. 聞も旧弊もなくなった。. リ貝・カキ貝・アサクサノリ・ワカメ・ホタテ貝採. 教育実践は時勢の推移のはげしさを反映し,より. 酋・チカの増殖試験・企業化試験・浅海増殖事業等. 高い理念・理想のもとに一つの波長をもってくりか. は,野付湾における栽培漁業の分野で十分に開拓者. えされる。絶えることのない教育実践の中に,これ. また先導試行試験としての役割を立派に果たしたと. らのことが生き生きと脈打っており,また,現在地. 思っている。これらのことを支えてくれたのが,野. 域・各方面の第一線で見事な活躍をしている卒業生. 付漁業協同組合組合長政和田雅勝氏・戸田信竜氏・. 諸君の姿に接するときに,教育のすばらしさ,実践. 和田雅美氏・宮越充専務理事をはじめとする組合幹. のきびしさ,地域のあたたかさを感じると共に,大. 部の方々・地域の有識者の方々であった。当時の道. きな誇りを感じている。. 内沿岸中学校では本当にめずらしいといわれた“お やしお・わかしお”の2隻の実習船の新造・購入,. (2)野付中学校の実践をふり返って. 水産研究実験室の新築・燻製実習室の新築など,計. 1958(昭和33)年4月,新採用教月として別海村. 画意図的なものはすべて実現した。水産科の学習や. 立野付小学校に赴任した。村財政事情も極端に悪く,. 活動は目に見えない,小さな支援や励ましが本当に. 尾岱沼地域は漁も少なく漁家経営も経済活動も疲弊. 重要である。生徒達の活動・青年活動を支えてくれ. していた時代であった。地区内には無電化の所が多. たのは,一昔しい時こそ,子どもたちに/若い者に. い地域でもあった。特に生活圏である標津町との交. 託す.′−といってくれた地域の人々でもあった。. 通事情が悪く,春・冬期は完全に陸の孤島となる寒. これらのことは,野付漁業協同組合・同青年部・. 村僻地であった。. 野付中学校・地域が連携した実践活動“産学協同の. 1961(昭和36)年4月,隣の野付中学校に異動し ー74−.

(6) N(149. 根室管内の水産教育(Ⅰ). た。中学校長の強いトレード要請によって行われた。. のために水産科の生徒8名が上京して,生放送と同. 多分に野球やバレーボール等の指導での馬力を見込. 様のリハーサルが早朝より夜半まで続き,非常に疲. まれてのことであったと思われる。当時の野付中学. れ緊張した時間はものすごい思いを全月にいだかせ. 校の生徒達は,元気が棲めてよく,その余りの話題. た。その代わりに全月で4日間の東京見物を提供さ. も多かった。異動してすぐに受け持った3年生は,. れた。初めての都内観光・築地の魚市場の大きさ,. 特に,元気がよかった。学校全体が活気があふれて. 市場内で偶然に見つけた野付漁協組の名入りの魚箱. いた。この頃,高校進学は高校側の定員も少なく,. に,驚きと感激の声を上げたりした。都内在住の先. 野付・標津中学校圏は相当の激戦であり,進学組に. 輩や知人が生徒達を激励してくれたり,生徒達から. は,校内でも相当以上の時間と特訓が続けられてい. 故郷と人のつながりを学んだことは思い出の中で,. た。進学しない者・できない者の生活指導や学習指. 大きなものであった。. 導は当面する重大な課題であった。この中での発想. 試験や実験増養殖の推進にあたって,食も悩まさ. が職業の選択であった。大半の中学校が1−3年生. れたものは湾内のエビモ・アマモの抜けた漂流物で. までが英語・数学を学校採択としていたのが実態で. あった。これが季節的に抜け漂流し施設にからみつ. あった。したがって校内では進学組と職業科組が対. いてしまった。“お前たちはゴモの養殖をしているん. 立したことが多〈,結果は職業科組がなにかにつけ. か?”と笑われることも毎々であった。事業の推進. て話題を提供していた。職業の男女は元気よく,こ. を止めることもあり,実習船のスクリューにからみ. れらの者に“何かを与え,何かに集中させ,その過. 航行を妨害し,時間と体力,気力をとってしまうこ. 程や結果に自覚と誇りをもたせたい”という意図が,. とが再三であった。湾内の航行はモの構えていない. この教科実践に多く秘められ,命題となっていた。. 水路(みおすじ・潮切りと地元では呼ぶ)が網目の. だから実践をすすめるにあたっては,水産の学習は,. ようになっており,風向きや潮位によって選んでい. 000の要望もあるし,000の期待もあるし,0. くのが腕の見せどころとなっていた。2隻の実習船. 00がほめていたぞ! お前たちにしかできないの. で,確実に覚えるのに3−5年かかった。. だから! など生徒の自尊心をかきたて,立場を高. いづれも実習実技の指導は,指導者の力量に左右. 揚するという手段方法ですすめた。試験や実験浅海. される。浅海とはいえ危険度も高く,神経をすり減. 増養殖事業は校外実習や洋上作業が多く,父母や他. らした。波が高い中や帰港する父兄を横目に見て,. 人の目につきやすく,格好が悪いという生徒の声に. 出港したり漁師顔負けの意地を生徒と共に通したこ. そろいの派手な色の作業衣・白の実習帽・救命胴衣. ともあった。幸いに,校舎が地域の一番高台にあり,. など無理をして全員分用意して,意気揚々と洋上実. 実習船の動きは確実にとらえられており,携帯無線. 習や訓練を行った。実習船のおやしお・わかしおに. 機はいつでも通じた。晴天無風の時は口実をつくり,. は船尾に校章を染めた船旗をつけて湾内を航行し,. 実習船が凍流したり,目的地点を大きくそれたりし. しだいに格好がついた。洋上や船上では“約束事は. て,時間延長し時々小首をもらったこともなつかし. 必ず守る・必ず守らせた。”そのため,次第に実習準. い1コマである。. 備や作業の段取りは,周りの者,大人が感心する位. 増養殖試験や事業協力も順調にすすみ,それなり. 見事にやりとげるようになった。洋上実習や海洋訓. の評価が得られたが,専門知識や技術修得は浅く,. 練は,時によっては命にかかわる危険がともなう。. 耳学問だけではすまなくなった。北海道教育委員会. したがって指示の復唱・大きな返事の徹底は理屈抜. 教眉長期研修制度に研修生として推薦された。. きで強制して習慣化を図ったりした。海の上での機. 1969(昭和44)年度に1年間の研修に入った。東京水. 関修理や船外機の修理分解など大人顔負けの技量を. 産大学の予定であったが,当時学生運動の最も過激. 身につけはじめた。年々報道関係者の来校取材が多. な頃であり,学枚封鎖が続けられており,研修その. くなり,新聞やTV等に紹介されるようになると,. ものができない状態であった。紹介きれて北海道大. 生徒達の自覚と自信は日常の生活行動にも良い影響. 学水産学部研究科かん水落座の教室に入れてもらっ. を与えた。次第に彼らは学校の顔として成長した。. たが,やはり学生運動の汲はここにも及び,封鎖行. 生徒達の活動や実践は,NHKTVの全国放送番. 為があり,生活そのものが不安定であった。ようや. 組「明E=ま君たちのもの∼われは海の子∼」の収鏡. く北海道水産試験場(函館水産試験場増殖部)に席 −75−. 1995.3.

(7) 瑞木 博・高嶋 幸男. をおくことができ,学生運動の動きをみて週何回か. というように体得してくれた。このことは,野付漁. 通学した。. 業学園の全国一周研修旅行のときに,更に飲酒と品 格・格好のいい飲みっぶり,と発展した。. 試験場では人手不足もあり,大変優遇され精一杯 打ち込むことができ,充実した毎日となった。この. いずれのことがらも,今思い出すとあれもこれも. 長期研修期間中に野付漁業共同組合和田組合長より. となる。教職員の宿命としての人事異動によって,. 相当の研究助成費が届けられ感激したり,恐縮した. 地域に転入転出がある。心をとめおいた地が故郷に. りした。地元の協力体制が一層の励みになり,特に,. なる,とよ〈言われる。その意味で,小生にとって. ホッカインマエビ等について期待がもたれた。場内. は正に心の故郷ともなっている。思い出や実践のあ. の指導は特に親切であり,研究事業のすすめ方・漁. とは,すべて良いもの,功成りとげたものしかない. 業者との連携・調査研究の実際について一員として. のかも知れない。この10年間,家庭をもち,みんな. 参加させてもらった。今でも指導を受けており有り. のおかげで多くの表彰や賛辞をもらい,実践活動に. 稚〈思っている。. 本当に理解を示し励ましてくだされた方々に改めて. 青年部活動や青年運動も重要な関心と意欲をもっ. 感謝したい。別海町も大きく発展した。尾岱沼地域. て当たった。特に,娯楽もない当時ましてや漁も細. もすでにむかしの面影がないほどに大きく,本当に. くとなれば,号令だけでは若い者は動かない。‘‘男女. 大きく発展した。一緒に苦労したり,励ましあった. 交際だ,ヤレ!フォークダンス,それ!000だ!”. り,将来を語り合った生徒達も頭に白いものが目だ. という社会教育のありかた・指導体制に疑問をもっ. ってきた。地域の,町政の指導者となって活躍中の. たこと・物語の落ちは“漁村はまずしくて,将来が. 再三家を新築する者,経済産業界におどりでた. なく,漁村の若者は雑で乱暴で,酒飲みで救いよう. 多士済々である。10年余の年月の大河を共に渡. のない,出かせぎで生活を”‥・となることに反発. った者として,この地に住むすべての人々の幸いを. したことも原因の一つかもしれない。まず,金をも. 願いつつ,更なる発展を見守りたい。. うけるためには“何をしたらよいか?どんな技術を. 2.歯舞中学校く1970(昭和45)年4月∼1980(昭. 身につけたらよいのか?漁を多くするために何を工 夫したらよいか。青年部活動に参加しなければ損を. 和55)年3月〉. するぞ!といったわかりやすい活動方針を掲げた。. (1)水産教育実践で何を行ったか4). 1970(昭和45)年4月,根室半島,根室市立歯舞. そのための資金は漁業共同組合の理事者をまきこみ 理解を得ながらすすめた。次第に部員にも恵まれは. 中学校に赴任した。当時,根室半島地域は,歯舞中. じめ,意外と思うほどに活動がよみがえった。漁業. 学校・共和中学校・堵塙瑠(ごようまい)中学校と. 生産のため技術技能の講習会・漁業関係の資格を取. 3校あり,いずれも3学級編成であった。歯舞中学. るための講習会・勉強会も盛んになり,部員からも. 校を除き他の2校は,小中併置校であった。半島地. 希望する内容の講師や講習会も開催できるようにな. 域3中学校統合の気運が数年前より議論されてい. った。できるだけ漁業組合等の会議や講習会などに. た。各校の校舎改新築問題と合わせて,地域の重要. は代表を送り,場慣れをさせるように送り出し,励. な教育問題となっていた。3地区の住民感情からす. ました。年々幹部部月が育ち,見違えるほどの成長. れば,地区内の中学校の移転統′合は大変なことだけ. をみせ,組合長や理事者とよろこんだり,若者は使. に,利害関係もからみ根強い反対論も息づいていた。. う金はムダではなかったと言われることも度々とな. 根室市教育委員会はじめ統合推進派・PTA関係者. った。研修旅行に札幌市に出た折りに,全月に当時. は統合年次を定めて事業をすでに軌道に乗せようと. の金で一万円ずつ渡して,“好きな飲み屋に行け!ど. 活発な運動を展開していた。統合のための具体的条. れだけ何を飲めるかやってみろ!”と放した。相当. 件のすり合わせが行われ,通学バスの確保・3中学. に飲んだ次の日の反省は,金をいかした飲み方の講. 校の財産備品・人事配置等々あり,各地区の要望,. 習会をやろうとなった。帰ってから中標津町よりバ. 地域の要望の中に“地域に立脚した水産教育の実施. ーテンダーを呼び寄せて,実演してもらい,酒の原. 推進”が大きく取り上げられていた。相当以前に,. 価から如何に水商売に変わってい〈のかを実感し. 歯舞中学校で小規模短期間の水産実習が取り上げら. た。結論は,“安い酒は飲むな。よい酒を楽し〈飲む”. れた経緯があったといわれていた。したがって3中 −76−.

(8) N(149. 根室管内の水産教育(Ⅰ). 学校統合の大義名分が,いつの間にか水産教育の推. もって学習してくれた。海岸の生物観察や芙験観. 進ということが定着してしまっていた。. 察・校外実習・海洋訓練等は,担当者としても楽し. ちょうど長期研修が終了する3月未に,函館水試. 1995.3. みな一面であった。幸いに興味と意欲をみせてくれ. に内示が入った。野付湾における000の推進,と. 好評を得,3地区の父兄に伝えられていった。1学. いう課題もあり,人事異動の希望もなく,まったく. 年100名前後の校外実習や観察学習・事業協力はそれ. 気の進まない話であった。多分に当時の根室教育局. なりに威力を発揮した。漁協組のアサクサノリ・ワ. 長武田文春先生(この時,根室市教育長に就任決定. カメ養殖・ナガコンプの養殖試験・アサリ貝資源調. していた)が強引な人事配置を考え,発令されたも. 査・サケの卵のふ化観察・稚魚観察・稚魚放流に参. のと考えられている。ましてや,半島地区3中学校. 加し効果を上げた。真っ白い実習帽・実習衣・救命. 統合の条件など説明されておらず,研修結果も生か. 胴衣の集団はいや応なしに地域の人々の削こつき話. されないものであった。単身赴任して驚いたのは,. 題となった。地域の第一線の漁業者も次第に理解と. 教月住宅は古〈,乳幼児をかかえての生活は無理の. 協力を申し出てくれるようになった。新聞等の報道. ような,住宅が与えられていた。いろいろなことが. 機関にものるようになった。この間,最も精力を注. 重なり,決して意欲を高揚する状態での着任ではな. いだのが旧木造校舎を復活させた水産研究室の設置. かったと今は反省している。. であった。校地外に水産研究室,水族飼育実験室,. 統合作戦が進められ,この年に3中学校が名目統. 実習艇庫を建て替える計画案に根室市教育長武田先. 合となり,一度に教職月数・生徒数・教頭職が3倍. 生,推進協議会,歯舞漁業協同組合理事者が特段の. になった。校名問題,3中学校の財産問題,通学問. 理解と強力な政治力をもって実現してくれた。その. 題,職月の住宅,教科担任,免許状の所持,グラン. 実現は迅速であり、実践意欲をかきたてた。. ド改修等々,統合中学校についてまわる諸閉居がす. 水槽飼育施設は道内でも一・二の施設となり,水. べておきた。選択教科を採択するにしても,3中学. 産高枚からも観察におとづれるようになった。希望. 校の教職員間で論議が続出した。実施までには,そ. 通りのものが次々と入り,学習も実験も観察も水産. の理解と相当の覚悟と時間がかかるものと思われ. 室でできるようになった。また,実習や海岸観察等. た。“まったく何もない!”理解も支持も期待できな. には漁協組のバスが希望する時間帯に運行され,飼. い状態からの出発であった。しかし,名目統合から. 育用の海水運搬トラックも定期的に運行きれた。こ. 実質統合となり校舎も鉄筋コンクリート3階建11学. のことは非常な戦力となった。. 級の中学校として出発し,市内3番目の大規模校と. 海洋訓練(カッター訓練)も男女区分なく実施し. なった。. た。“女は乗せない実習船”とうたわれたように港内. 水産教育の推進について,具体的な作業に入り,. 航行するカッターに漁師たちはぴっくりするやら話. まず歯舞中学校水産教育推進協議会を発足きせた。. 題になったが,大きな理解を示してくれた。校内で. PTA役月・歯舞漁業協同組合理事者・地域の有識. の議論も次第に理解のうえにたったものとなり,大. 者で構成した。事業経費は,大部分が歯舞漁業協同. 変動きやすくなり,武田教育長はじめ,協議会の. 組合が負担し,他に特恵寄付をもって充てた。当時,. 方々・浜川校長ともども胸をなでおろしたことも再. 同漁業協同組合理事者は水産教育に理解と期待を示. 三であった。 ナガコンプの子のうはんの観察や,サケの卵の観. してくれた。“金で解決できるものは心配するな!計 画をはっきり立て,結果をだせ!”というものであ. 察も他のことも順調に軌道に乗り,成果が期待され. った。第1次3か年計画・第2次3か年計画・第3. るまでになった。生徒達にとって選択教科「水産」. 次3か年計画の推進に当たって,この考え方が貫か. の履修は,別のメリットが自覚されるようになった。. れ,実行された。. それは,高校入試の内申書に記入される評価点であ った。選択教科が2教科以上の場合は,履修教科数. 教育課程も実験実習計画,研究主題,運営理念等々 もそれなりにできた。予算の裏付けもでき少しずつ. の平均点で評価されていく。英語のみの学校選択の. 様になってきた。選択教科「水産」は新しい教科で. 場合は,英語の評価で,英語・水産のみの学校選択. もあり,当時唯一の『中学校水産』(開隆愛書店)を. の場合は2教科の平均点で小数以下は繰り上げとな. 1−3年男女が使用した。どの学年もかなり興味を. る。そのために,英語の苦手な者は水産を頑張れば −77−.

(9) 囁木 博・高嶋 幸男 評価点(選択教科の内申点)が大幅に上がる。生徒. 科機材しかも気象協会の検定済みの機材であったた. 達ほ次第にこのことを知り,元気づいたし集中でき. めに,理科機材の検定とは何か,資料の公開発表. た。このことは,高校入試等の関係会議でいつも他. は??などと広がった。最終的には文部省・メー. 校からの攻撃の的になったが現行制度上どうにもな. カー・気象庁・観測所等々に及び,結論はイジワル. らないことであり,結果的には実践をすすめる上で. をされ,校内資料ということで発表してよいという. 得をした点でもあった。. 何が何だかわからないことで終わった。しかし,海 霧ということをとってみても定義が末端で統一して. 北海道水産部主管の事業である漁村少年交流事業 には積極的な推薦を受け,連続9年参加した。これ. いないように思え,省庁間の問題の一つを経験した。. は沿岸漁村の中学校で水産学習をしている学校同士. しかし,観測の資料は継続することによって,有効. が交流し,活動内容や成果を学び合うものであった。. なものとなると信じている。ある年は強風によって. 道内各沿岸中学校と交流したし,歯舞地区でも大規. 三杯型風力計が根元からとんで驚いたこともあっ. 模な交流会を幾度とな〈実施した。費用は水産部と. た。新校舎になって校舎の屋根が飛んだことなど合. 漁協組が分担してくれ,各学年の代表者男女7−9. わせて考えても,現地での地道な資料収集の大事さ. 名派遣してもらった。楽しい行事の一つでもあった. がわかり,北国北辺に・海岸地帯に生活するものと. し,活動成果の発表はいつも抜きんでており,地元. して,産業・生活防衛の習慣を小さいときから教育. 開催のときには大いに面目を施した。. することが必要であると,今でも思っている。. 根室半島は半島特有の気象現象(海霧∼ガス・ジ. 実践活動がすすむにつれて,サケ稚魚の飼育放流. リ)があり,特に,ナガコンプの天日乾燥作業を左. も他の実習実験も,継続あるいは新たに加えられる. 右し,コンプ漁そのものを決定的なものにする。洋. ものが出てきた。トーサンボロ沼のアサリ貝の資源. 上はるか彼方より大きな壁となって短時間のうちに. 調査・採卵彼のサケ親魚の高度利用のための加工研. 半島を包み込む。無砂干場(砂浜に砕石をいれ日光. 究等がでた。アサリ貝資源調査は,同沼を活用し資. によって熱を溜め込む。その上にコンプを干して乾. 源増加に大いに役立った。また,高度加工や実習の. 燥させる。浜の砂に直接干すより効率的に高品質の. 対象として,燻製加工が取り入れられることに賛成. コンプとなる。)のために,どうしても海幕や強風を. を得た。早速,煉製加工研究室の設計に入ったが,. 観測する必要があった。日常生活,コンプ漁・漁船. 市教委三浦教育長は本格的なものにしたいという意. 漁業をはじめ地域そのもの,人々の気持までも支配. 向を示した。そこで北大式燻製室を提案した。市費. してしまう。そのために従来のような00地方は晴. 建設の割にすぐ工事に着したが,予定地が飼育研究. れのち雨という天気予報ではタメであった。「半島は. 室の裏手であり,湿地帯であって工事費は大きく増. 海霧:市内は晴天。通じる道にはあきらめこ坂があ. 加した。できあがったものは本格的なものであり,. る。」といわれていた天候は,生徒達に特にコンプ漁. 製品を目的にしても対応できるものであった。工事. の家業手伝いをする者に過大な疲労と過重な作業を. 費が大幅に増加したために,予定した燻材庫や製品. 押しつけていた。干場に干すのか?乾燥室に入れ機. 干場等は中古品でまかなった。この嬢製加工室は後. 械乾燥させるのか?の判断は非常に重大であった。. 日活躍し,サンマの燻製品は全国に知られるように. 単に経験のみでなく,小さな時から天気予報を判断. なった。. できる素地を培っておきたかった。この提案はもろ. 第3次3か年計画を推進するに当たって,施設設. 手を挙げて賛成され,すぐに気象観測機材が購入整. 備についても協力体制についても十分な状態があっ. 備され一寸した観測点になっていった。. た。ただ話題になるのが,教科担当者の後継であっ た。担当者の異動転出がさけられない宿命ならば,. この機材は,すべて検定済みのものであり購入価 格もそれなりに高かった。観測月の訓練も順調にす. 早期に次の担当者を転入させて引き継ぎをしっかり. すんで,♯重な資料が集まりはじめた。設置につい. とし,支障のない体制を組むことも責任者としての. ては根室測候所所見の指導を受けた。数年間の資料. 義務になった。幸い,東京水産大出身の長谷川君を. を公表するときに,学校側の観測機材では信用でき. 採用することができ,二人体制で実践をすすめた。. ず,気象庁の法規にふれる,とのことで差し止めさ. 3年間また転出してからも数年間は彼が実践しやす. れた。このことは以後相当に尾を引いた。学校の理. いように相談したり協議しながら,実践の方向や −78−.

(10) Nα49. 1995.3. 根室管内の水産教育(Ⅰ). 人々のつながり,具体的な技術指導を挽けた。転出. 村の中にあっても著しい発展の可能性を秘め,歯舞. 後,校長も代わり,生徒指導上からも彼は苦労を重. 漁業協同組合等を中心とする漁村協同運動,漁村自. ねたものと思われる。選択教科の維持もできない状. 治が極めて高い効率をもって展開されている地域で. 態の中で学校が荒れはじめ,実験実習・校外実習も. もあった。地域における漁業従事者の階層は一般的. ままならない・校内で精一杯,各実習研究室はその. に大型沖合漁業に従事する階層と沿岸漁業資源に強. 荒廃の波をもろに受けていると語り,励ます言葉も. く依存する階層に大別された。. ない時も出た。荒廃の波は,太平洋ベルト地帯と称. したがって,大別される2つの階層のもつ特性か. され,軒並みに道東沿岸漁村地帯の中学校をまきこ. ら,地域社会や漁村,漁業の近代的発展について横. んだ。生徒指導上の諸問屠が対象療法的になると,. たわる諸問題の解決兼についても異なった観点がも. 実習・実験・観察・校外芙習等は大きく支障を受け. たれていることは予想されよう。このことは国際社. る。第3次3か年計画が推進されて次の年次の計画. 会において,日本の漁業そのものに大きな不安と動. も継続されてきたすべてのものが,中止・停止,廃. 揺をあたえ続けている領海12カイリ,領海200カイ. 止になるのを聞くつらさを味わった。. Ij,あるいは漁業経済専管水域,漁業資源の専有化. 根室半島地域の3中学校の統廃合から,歯舞中学. をめぐる2国間,及び多国間協議などの緊急重大な. 校水産教育推進策1次3か年計画・第2次3か年計. 課題に対処することによって当歯舞地域漁業への影. 画・第3次3か年計画の推進・教育実践にたずさわ. 響のうけとめかたも二極的な性格を有するものであ. ることができ,実践者として幸いであり,関係した. ろう。これらの流動する国際社会,国際政治の影響. 諸先輩上司・同僚・一緒になって学習した生徒たち・. を機敏にうけつつ日々の営みが行われ,それらが特. 地域の多くの方々に感謝したい。多くの方々の中に. 性として形成される地域であったのである。. は,すでに故人となられた方も多く,海の彼方から. それでは,当時,地域社会,漁村漁業が求めよう. 帰港しなかったかつての生徒名もあり,歳月の流れ. としている人間像とはいかなるものであろうか。漁. の恐ろしさも煎ずる日頃でもある。「水産教育は東方. 村社会がもつ特殊性,特異性は観点視点をほんの少. から」と激励してくださった方々,新生歯舞中学校. し異にするだけ,その論点が大きく異なり,非常に. の現状で水産に関する実践がよみがえりつつあるこ. 複雑な要素が滞在し,からみあい,未解決なままの. と,新しい理念理想で,時代をむかえられているこ. ことが多い。これらのことが,漁村社会,人々の意. とに期待をこめて激励したい。. 識までを近代産業への適応融合を遅らせ,近代社会 への道を速く,むずかしく大きな課題を残していた。 従来から漁村社会の人間像を形成し培姜してきた. (2)水産教育の考え方・目標とカリキュラム. 歯舞中学校の水産教育実践はどう進められたの. 素地として考えられるものを大別すると,. か,考え方(とらえ方)や目標,カリキュラム,授. 1.自然環境がもたらすもの. 業実践の内容などを,以下みてみることにする5)。. 2.生産組織等の関係環境がもたらすもの. ① 地域的特性と漁村が求める人間像について. 3.狭義的社会,封鎖的社会等における血縁関係. 本校が校下とする根室半島は,すべてが漁業に従. がもたらすもの. 事関連する典型的な漁村集落で構成される。したが. 4.学校教育をはじめとする教育作用が及ばすも. って,北海道における沿岸漁業,沖合漁業,あるい. の. は漁村を包含する諸問題の進行,未解決的要因が本. などが一般的な条件を整理する項目としてあげられ. 校地域社会の発展的将来に大きな影響を及ぼす。加. よう。加えて歴史的な推移によって,これらが更に. えて周知のごとく北方の島々,歯舞諸島を眼前にし. 複雑化し潜在化していよう。 現象面からみれば,漁村特有の気質性格は次のよ. て,対ソ連との領海問題,安全操業問題,領土返遭 に伴う世論を背景として国際社会,国際政治の微妙. うなものがあげられよう。. なる変化を敏感に受ける接点ともなる特異な地域で. 1.感情的集団意識. もあった。また,当地域は,北海道に残された有望. 2.身分的隷属意識. な太平洋,オホーツク海の両漁場をひかえ,沿岸漁. 3.楽天的投機的性格. 業資源にも恵まれている。蓑退の傾向を示す本道漁. 4.保守的経験重視の傾向等が顕著 −79岬.

(11) 瑞木 博・高嶋 幸男. 域社会そのものの問題解決への学習(基本的な生産,. ここで問題とする人間像は,その形成,培養の背 景として地域的制約がある中で,いかに培われるの. 基礎的な技能,生産経験の蓄積)を組み立てること. だろうか。学校教育が理想とする人間像の育成にど. は生徒の意識発達から考えても決して高度のもので. のような相関関係が成り立つのだろうかということ. はない。“いかに地域社会の問題を発掘し,整理統合. である。学校教育が求める理想的人間像と地域的特. し,原因追求のための方法手段を合理化し,教育実. 性,漁村地域社会特有の要素,条件に培かわされて. 践に結びつけていくか”“どのような教育課程でいか. いくであろう人間像との間に,どのような隔たりが. なる素材で学習を効率的に組み立てるべきか”この. あるのか,学校教育の中で掲げる人間像は,地域社. ような発想のもとに,1970(昭和45)年度より選択. 会の中で虚像化していないかという反省と,社会改. 教科「水産」を通じての実践が試みられた。. 造を将来にわたって,学校教育,教育活動作用,実. ③ 地域との協力体制一物質的援助− すでにみてきたとおり,水産教育の推進のために. 践の限界の中で,理想像を存在させ,求め得ること ができるかどうかも論点の一つになろう。. は,地域との協力体制とりわけ人的,物的援肋が不 可欠である。その経過の一端を示すと,次のとおり. 教育実践の場で現象面でとりあげられる漁村特有. である。. の性格は,. 粗雑粗暴 − たくましい 一 体力的要求 無気力 ー 従順素朴 一 性格的要求. がり,歯舞中学校水産教育推進協議会の発足をみ,. おちつきがない − 迅速. 施設設備充実計画(第1次3か年計画,第2次3か. 地域との協力体制は要請の強さと共に順次できあ. 一 行動的要求. 年計画)が立案され,大きな推進母体となった。さ. だらしがない 一 守礼遵法 一 道徳的要求. などという一つのパターンが指摘されるであろう。. らに実験実習海域が10か所が,歯舞漁業協同組合共. このような現象的な人間像は,過密過疎という社会. 同漁業権海区内に認められた。続いて,1971(昭和. 現象や生産形態の急激な変化によって大きく変える. 46)年度,根室支庁管内振興奨励事業によって,水. ことが予想される。したがって,学校教育,教育実. 産生物飼育実験水槽施設40万円(補助率1/2),. 践の場で理想とする人間像の第一は“近代漁村近代. 1972(昭和47)年度北海道漁村青少年実習漁場が認. 漁業の完成へのにない手”となるべきことがあげら. められ,協力体制の基盤ができあがった。1972(昭和. れよう。これを柱に. 47)年10月に懸案事項の一つ,水産特別教室が別棟55. ○科学的合理的な生産性をめぎした処理能力. 坪2教室(生物飼育実験室,講義兼実習室,研究管. ○民主社会のしくみに適応できる社会的能力. 理室,機関室)の移転補修が完了した。これによっ. ○組織的,自治的能力の高い資質をもつ. て水槽施設の整備,運転が行われ,実験観察,生産. ○新しい価値観を有する道徳性を身につける. 教材の展開,対象生物の飼育研究が具体的になされ. ○情緒ゆたかな幅広い適応性を身につける. るようになった。歯舞中学校水産教育推進策1次,. などが,要求されていくものと考えたのである。. 第2次3か年計画及び第3次3か年計画による施設. ② 水産教育の考え方. 設備,機材の導入が着々,計画的に行われた。この. われわれの展開する教育実践は常に変化する社会. 過程の中で,機材・機械の運用管理,効果的な学習. の向上改善の方向から実践の理念その形態,構想を. 展開,水産生物の飼育技術等はくりかえされて,実. 発想しなければならない。教育実践の接点は地域社. 験実習,観察実習の分野に大きな学習効果をみせた。. 会であり,現実社会の向上改善にいかに自主的に活. ⑥ 教育課程(カリキュラム)と内容 では,水産科の授業はどう組み立てられたのか。. 動していくかということに活動目標が求められる。. 以下,順次みてみることにする。. したがって,学校教育がもつ役割を地域の現実的諸 問題に対する先導的試行の中に求め,その役割の必. (i)選択教科「水産」の学習指導法の基本的方針. 然性を地域社会が求める学校教育への要求度合,そ. 1.学習内容は漁業一般,初歩的なものであるが,. の事芙・背景などを実践活動の中に,明確に示さな. 地域及び学校の実態,実践経過から主として増養. ければならない。このことは“地域社会の中で子ど. 殖に関するもの,栽培漁業に関する分野を中核と. もをどう育てていくか’’という基本的命題が提起さ. する。. れよう。この基本的命題は教育実践の接点となる地. 2.学習過程において,生物学的研究や創意工夫を −80−.

(12) N(149. 根室管内の水産教育(Ⅰ). 1995、3. 更に深める科学的態度を培う。. 養う。. 3.新しい分野を開拓していける旺盛な研究心と実. 内容 食品製造と日常の食生活. 践力を培い合わせて地域社会の発展を将来的に考. 原料(種類と特性,貯蔵法). 察する意欲的態度を養う。. 食品衛生(食中毒,衛生検査). 4.未知なことに実験実習を通した研究方法で,将. 調味と加工(製品と種類). 来も実践を継続していくようにつとめる。. 製品と流通. 5.漁村生活研究について. 5.芙践活動を通じて団体規律や行動安全作業の基. 目標 漁村生活の実態を正しくつかみ,問題点を. 本的操作資質を身につける。 6.将来の漁家経営,生産管理,漁村経済などの向. 調査し,積極的に向上するための方法と努. 上を計画的に行うために漁業協同組合のしくみや. 力,意欲,態度を養う。 内容 漁業生産について 漁村の歴史について. 漁家簿記のしくみなどの学習を深める。. 家庭労働について 調査研究のすすめかた. (ii)目標と内容. 1.栽培漁業について. 漁業法規. 目標 栽培漁業に関する基礎的な技術を習得さ. 資料のまとめかた. 漁業協同組合のあらまし. せ,生産方法や経営を改善する工夫態度を. (iii)水産科における分野別学年別配当時間(週2 時間年間35週)(1975,76年度). 養う。. 8 6. 漁獲物の処理(鮮度保持,流通と輸送) 漁業調整(調整の目的と方法,漁業協同組 合と漁場管理). 3.水族環境調査について 目標 水族の生活する環境に関心を高めさせ,生 物と環境を相関関係によって考察する態度 を初歩的な調査方法や知識を体得する。. 内容・水温測定と採水・PH測定・海そう, 貝類の観察・光と透明度・潮と潮流 ・プランクトン ・塩分・栄養と群落 ・寄生と共生. 4.加工技術について 目標 食品製造,加工に関する基礎技術と技能を 習得きせ,食品を衛生的に取り扱う態度を −81−. 6. 漁(生態的特性と漁法,海況と漁況). 8. 8. 定). 6. 4. 漁業生産(系群,年齢組織と成長,資源推. 2. 6. 漁場(成立の条件,造成,障害). 6. 8. 活用工夫する態度を養う。. 1. 2. 海洋訓練. 3. 漁村生活研究. 年. 2. め,職業生活に必要な能力を養う。. 1. 加工一般. 内容 漁業の現状と将来. 2. と技術を習得させ水産業に関する関心を高 漁業生鹿のしくみと漁業資源を合理的に. 1. 漁業一般. 年. 目標 漁業生産や食品製造に関する基礎的な知識. 2. 栽培漁業. l. 2.漁業一般について. 年6286. 水族環境調査. 2. 増殖,養殖,栽培漁業の経営. 1. 分 野. 種苗生産(産卵の生態,採苗,種苗の育成). 1. 内容 栽培漁業の特性.

(13) 瑞木 博・高嶋 幸男 (iv)教育課程(カリキュラム) 表1.歯舞中学校の「水産科」教育課程(1年) 小単元 時数. 単 元. 学 習. 内. 生物と環境器 8. 4. 容. 備 器具名. ・海洋・水族・水温・塩分. 具. ・水色・透明度・プランクトン 北方水族. 2. ・北方水族の特長・水産生物の学名和名 栽培漁業 5. 水産生物. 2. 水産植物. 6. そう類観察. 飼育研究 (ノリ・ワカメ・コンプ). 水産動物. 9. 8. ウニ・ヒトデ類. 10. 養殖研究. 4. 田. 漁業一般. 8. ・生活史の利用法・対象種の選定. ・漁業機械・郷土の漁業. 12. 加工一般. ロ. 北方領土. ぴん詰・塩ぞう 3. ・返還運動 漁村生活. 2. 7. ・生活変化・生産稼働 漁業協同組合 女. 家庭経済・衣 家計簿 服・家庭電気 労働着. 子 男 乗船訓練 子. 器具管理 洋上訓練. 3 6− ・家計簿のしくみ. 各月に配分. 8 ・作業着 ・器具の管理 6− ・船舶の安全と危険 8 ・実技(訓練要項による). ー82−. 各月に配分. 考.

(14) N瓜49. 1995.3. 根室管内の水産教育(‡). 喪2.せ■中学校の「水鹿科」教書挑穏(2年) 単 元. 小単元 時数. 学 習 内 容. 6 ・観測器袖について 水温計・比色計. 4. 観測. 6. 北方水族(2). 4. 備. 考. 操作実習. 比重計・透明度板・プランクトンネット ・水色・透明度. ・漁業の対象 水産生物(2). 5. 2. ・環犠と生物・生物の分布の条件 水産植物. 水槽観察. 4. (ノリ・コンプ・フノリ・ワカメ) 水産動物. 6. 4. ・魚類サケ・マス・その他 養殖研究. 7. 施設見学. 8. ・積極的方法について. 田. 漁業一般. 8. ・近代漁法と漁業機械 ・世界の水産業の様子. ・漁業の関連と郷土の発達. 12. 加工一般. 6. ・鮮度・自己消化と腐敗・加工法と食品 ・加工食品の利用 北方領土. 1. 北方資料館の利用. 3. ・列囲の競争と和人渡来・幕政の方針 ・北洋漁場の開拓 生産流通. 5. ・市場のしくみ 漁業協同組合. 3. 家計簿の検討 8 ・漁家簿記の記入. 衣 服. 労働着. ・作業着 保守・管理. 電 気. 器具管理. ・電気量の計算. 女 子. 男. 7. 家庭経済. 実技訓練. 8 ・海洋訓練実施要項による. 子. −83−. 各月に配分. 7.8.9月に集中.

(15) 瑞木 博・高嶋 幸男 表3.歯井中学校の「水産科」軟膏課程(3年). 学. 小単元 時数. 単 元. 習. 内. 容. 備. 考. 4. 沿岸環境の改 6 観察. 実地訓練. ・出現と繁殖期. 善 8. ・北方水族まとめ. 養殖. 7. 10 ・利用法と実際・施設計画と実習. 増殖. 10. 施設管理 生態研究. 実験地 ・季節と増殖対策 蓄養. 6. ・海そうの生態研究. 11. 漁業一般. 施設見学. 8. ・漁業の発達と郷土・日本の漁業・世界の漁業 12. 加工一般. 6. ・自己消化・腐敗・加工法の実際 ロ. 北方領土. 3. ・紛争の原因 漁業法. 3. 5. ・漁業権制度・漁業許可制度・漁業調整 ・協同組合の会議・組合運動の将来 女 子. 家庭経済・調 家計簿検討 8− ・漁家簿記入. 各月に配分. 理・衣服・電 気・被服. 男. 着・器具管理 実技訓練. 子. 7.8.9月に集中. 8∼ 12. 教育推進委貞の全面的な援助を得られる態勢をつ. (Ⅴ)実験実習海域運営計画,海洋訓練実施要領. くるものとする。. くA〉 目的. 〈C〉 利用区分について. 全校生徒の水産科学習をすすめるにあたり,生産 実習,研究観察,海洋訓練のための海域(海区)を. 1.利用区分は次のとおりとする。. 設定し,教育的に管理運営をはかり,海への関心を. 1)生産実習場. 高め,郷土産業への理解を深め,学習結果を郷土の. 2)研究観察区. 発展に寄与することを目的とする。. 3)漕艇乗船訓練区. 2.利用の目的について. 〈B〉運営の基本的方針. ○本実習海区は歯舞漁業協同組合の管理する共同. (生産実習場). 海そう類・魚介類等の浅海増・養殖の基礎的学習. 漁業権に属し,設定運営については,同組合の全 面的指導方針にする。. と技術技能を高め,実験実習を通し,生産活動の中. ○本実習海区における漁業生産者との生産競合を. から生産効果,経済効果をさらに高めるために利用. 生じた場合は,組合の指導により,生産者優先を. 運営をはかる。. 認める。. (研究観察(区)). 研究観察区は次のような利用目的で運営する。. ○実験実習区の管理運営については,地区・水産 −84−.

(16) Nq49. 1995.3. 根室管内の水産教育(Ⅰ). ・主要漁獲物・海そう類の基礎的研究観察. を深めさせる。. ・未利用資源の調査・開発研究. 2.団体行動・訓練を通して,規律・兼任・努力・. ・学術的に★重な対象となるもの. 友情を深めきせる。. ・継続観察を行い得やすい海域. 3.行動(訓練)を通して不壊不屈の精神を培う。. (漕艇・乗船訓練区). (実施方法と参加人員). 漕艇訓練・実習船の操船訓練・機関訓練等の実施. 実施方法 日程・時程別に定める. のための漁船船舶の航行,停泊・定置網その他の漁. 場所. 業権等に支障のない,また岩礁波浪などの危険から. 別に定める(歯舞港周辺). 参加人月 全校生徒,特に身体に支障のあるも. 避難しやすい海域を一定期間利用する。. のを除〈. ※研究課題については次のように設定したが,各指. 学年別・男女差等を考慮して実施差. 導機関の指導助言等によって改めたり,変更した。. を設ける. ○コンプについて. 教科と関連 水産科 海洋訓練の分野. ・菓体の成長と子のう蛙の形成熟度について. 装備. 全月救命具・作業帽・作業服・カッ. ・採苗実験と実習. ター(救命艇1). ・大型港そう標本の研究と作成. 艇指拝 1. ・漁協組の実施する養殖試験について協力する. 艇長. ○ノリについて. 1. 艇首月 2. 艇尾月 2 艇眉. 3. 予備. ○事前訓練. ・春・秋ノリの成長観察と適地調査(自生地). ・野外採苗試験と各種養殖法の研究. ・艇の作法については,別に指導する。. ・冷凍網養殖法の実施. ・漕法については机上にて行う。(予備的学習は机. ・ワカメ養殖の実施. 上にて). ○アサリ貝について. ○訓練評価. ・棲息地区と資源量の調査について. ・評価観点を定めて相互採点をし,自己評価を行. ・耕運及び適地調査について. う。. ・漕艇距触内の時間記録を記録として残す。. ・生態観察と人工採甫試験について ○ウニについて. ・査察委月の設置等も考慮して訓練評価をうけ. ・生態観察について. る。. ・月別成熟度の観察について. ○支援体制について. ・採餌類の調査について. ・伴走用動力船を用意する。(港外). ・監視点をおき監視体制をもつ. ○エビについて. ・生横種別と成長観察(飼育試験). ・連絡は監視点より定時連絡を行う。. ・成熟度判定と観察について. ○漕法について(漕法技能の体系要約). ・漁獲方法の研究と漁獲量の把握について. 1.乗艇及び過艇・敬礼. ○カニ類について. 2.出発時及び接岸時. ・生棲種別と成長観察(飼育試験). 3.直進,停止,せん臥 急停止,急せん回. ・人工ふ化試験のための予備試験について. 4.休憩及び番換え動作. ○魚類(サケマスの場合)について. 5.索留及び上架法. ・受精卵のふ化過程の観察. 6.保守作業. ・淡・海水等の比較試験の実施. (漕法実技については省略). ・親魚よりの採卵及び人工受精作業. ○艇長の報告義務について. (艇長は次の場合に必ず艇指揮者(教翰)に報告. ・麻酔試験及び標識放流. 〈D〉海洋訓練実施要項. しなければならない) 1.乗艇時・退艇時の人員報告. (海洋訓練の目的). 2.航行時の異常について(艇及び器具・人月). 1.海に親しませ,なれさせ,海への知識関心理解 −85−.

(17) 瑞木 博・高鳴 幸男 3.実践推進上の配慮や協力が得られるかどうか。. 3.航行時の障害物の発見 4.索留終了の確認. (1)実験実習計画・施設設備の充実と運営維持・ 管理について。予算について。. 5.その他,必要のある場合(詳細文は省略). (2)地域住民・PTA会員の理解と協力体制につ 3.薫別中学校く1980(昭和55)年4月−1984(昭. いて。. 4.関係機関の協力体制について. 和59)年3月〉. 等について検討が加えられた。実践活動の創造と開. (1)薫別中学校着任まで. 発維持ができると校内での共通理解ができ,集成へ. 1980(昭和55)年度より教育課程の中に,選択教. の確信がもてた。. 科「水産」として採択し実践を推進した¢)。 新規の教科を採択するときに,いつも論議になる ことは,教科担当者または担当可能な教月の確保・. (2)教科実践のための基本構想. 教科実践のための基本構想もできあがり第1次3. 学校全体の協力体制・町教育委員会を主とする教育 行政担当者の熱意と理解,強力な支援が得られるか. か年計画が立てられた。実践のための研究主題は「地. どうか,また教科担当者の実践意欲・実践能力が,. 域の特性に立脚した生産に関する郷土教材の展開と. その過程を左右する,という点に視点が集まる。も. 実践はどのように推進したらよいか」と設定した。. ちろん,教科の実践活動がその学校の教育目標達成. 主題にたいする発想は,. のための具現化に大きく寄与できるか,ということ. 1.教育実践の接点は地域社会であること。. が前提になることはいうまでもない。. 2.地域社会の中で,いかに子どもを育てるか。. 幸いにして,標津町教育委員会教育長故柳沢巽氏の. 3.教育実践活動は,地域の現実的な問題に明確に. 強引と思える根室管内教職属人事の異動によって,. 取り組まなければならない。. 薫別中学校教頭として着任した。. 4.基本的基礎的な生産形態・生産技能の活動を意. この時に,故柳沢教育長の言葉によれば,「標津町. 図した学習の蓄積が重要であること。. ほ漁業と酪農業が町の基幹虚業である。特に,漁業・. 5.地域の素材から教材として開発し実践に結びつ. 水産について,小・中・高校が一貫となった教育実. けることは重要であり,注目すべきことである。. 践が絶対に必要と考えている。漁業水産に関する学. この教科実践は,選択教科の目的と共に,地域の. 習を推進してほしい。薫別地域は,漁業生産の低迷. 教育課題・地域の教育力を重視しつつ,推進するも. 減少が続き,また交通路・交通機関の発達整備によ. のである。具体的直観から概念化の過程を通して,. って,街道筋の要所としての機能が失われてしまっ. 児童生徒の認識が成立し充実形成することによっ. た。また,漁業の操業実態から若年人口の流失が続. て,意欲的な学習活動ができる,という点にあった。. き,往時の面影が失われ,人々の気持や子どもたち. さらに,構想の背景をなすものとして,本校校下は. の意識意欲にも影響がある。ついては,小さな学校. 純粋な漁村集落で構成されること,誇りうる本町・. の大きな特色をもつ教育実践ができないか?できる. 地域社会の基幹産業を学ぶ姿勢を保持し,地域社会. かぎり応援する。協力をおしまない!」という意向. の特色ある生産活動を学び地域社会の発展的将来へ. が学校長を通じて伝えられてきた。このような配慮. の要請に対応できる,本校の教育目標・経営の重点. のもとに,準備期間を経て必要な事項について,協. 等の具現化のための一美をになう教科実践を推進し. 議検討し慎重な議論を重ねた。論点は,. たい,ということがあった。. 1.本校の教育目標の達成のための方策として可能. 歯舞中学校の項ですでにのべたように,われわれ. かどうか。. の展開する教育実践は,常に変化する社会の向上改. (1)地域的な生産特性・地域人口の年齢構成及び. 善の方向から教育実践の理念・構想を発想しなけれ. 児童生徒の動静・近隣地域との関連実態。. ばならない。教育実践の接点は地域社会であり,現. 2.教科として成立させる条件は何か。. 実社会の向上改善に,如何に自主的に参加し,活動. (1)地域教材・素材の理論確立・開発すべき分野. していくか?ということに目標が求められる。さら. と教材としての価値の検討・教授方法・実践過. に,地域社会の中で,如何に子どもを育てていくか?. 程・継続性の有無. という基本的な命題は,教育実践の接点となる地域 −86−.

(18) 1995.3. 根室管内の水産教習(Ⅰ). N仏49. 社会そのものの問題を,どのように学習させ,考え. る意欲的な態度を養う。. させ,実践を継続していくか?という方法静に結び. 4.未知なことに実験実習を通して,実際的な研究. つく。地域社会の基本的な生産形態・基本的な生産. 方法で,将来も実践が継続していくように努める。. 技能・生産活動の蓄積などを,学習として組み立て. 5.実践活動を通して,団体行動や団体規律・安全. ることは,生徒の現実的な意識発達,生活経験から. 作業の基本的操作,資質を身につける。. 推してけして難しいものではない。. 6.地域社会の将来や現状の生産管理,漁村の経済 などの向上を計画的におこなうことに注目した. いかに,地域社食の間馬をみつめ,掘り起こし, 整理統合し,原因追求のための方法手段を合理化し. り,漁業協同組合のしくみなどを学習する。. 実践に結びつけていくか。どのような教育課程で, いかなる素材で学習を組み立てるべきか?実践の結. (6)学習分野及び目標. 果が地域社会にどんな影響をもたらすのか?. 1.栽培漁業に関するもの. このような考え方のもとに,教科実践を推進しよ. 2.漁業一般に関するもの. うとしたものであるが,その原点は,地域社会の発. 3.水族環境調査に関するもの. 展的要請に対応でき,地域社会の支援を受け,その. 4.加工技術一般に関するもの. 付託に答えうる方策として可能であると確信し,推. 5.海洋訓練に関するもの. 進したのである。. 6.漁村研究に関するもの(課外学習・活動など). (3)教育課程の編成. (7)分野別学習履修予定時数. 漁業一般. 漁村研究. 1.基本的な生活態度の確立. 2. 活に即して! ということを重点に. 5. あらゆる機会に,あらゆる場所において,実際生. 5. 海洋訓練. (4)選択教科「水産」の運営理念. 0. 加工一般. 3. 小3∼中3まで 年間35単位時間. 年. 栽培漁業. 3. 4.水塵クラブ等の活動. l. 水族環境調査. 2. 3.履修時間 年間35単位時間. 年810551㈹. 分 野. l. 2.履修学年 中3男女 中2男女 中1男女. 年510551㈲. 1.選択教科 水産. (8)教育課程 水産科の重点目標 1年 基本的事項の理解を深めさせる。観察及び. 3.水産漁業生産に対する関心の高揚. 弟. 2.自主・勤勉・協同敬愛・科学心の敬培. 実験実習の仕方を集団の中でなれさせる。 ・水産学習の基礎的事項を選出し,系統的に. 4.職業生活に必要な資質能力を高める という理念を柱に,より具体的な生活経験・学習実. 学習きせる。技能体系をつくり器械の基本. 践を通して,本校の教育目標の具現化に迫る一束と. 的な操作になれさせる。. 2年 基本的事項の理解を深めさせる。実技技能. して,教育的配慮,価値の高い教科の創造をめぎし. の向上をはかる。集団行動になれる。. た実践を推進しようとするものである。. ・器械機材 観測技能操作・応用技能になれ (5)選択教科「水産」の学習指導の基本的な方針. させる。. 1.学習内容は漁業一般など初歩的なものである. 3年 基本的基礎的知識を更に高める。生産数. が,地域及び本校の現状から,主に増・養殖に関. 材・実習技能・応用技能を高める。 ・生産数相 生塵実習等への経験を更に深め. するもの・栽培漁業に関する分野を中核とする。. させる。北方海域,北方領土等への関心を. 2.学習過程において,生物的研究や観察・創意工. 高め,間贋意識と理解をしようとする積極. 夫を更に深める科学的態度を培う。 3.新しい分野を開拓していけるたくましい研究心. 的な態度を培う。. と実践力を培い地域社会の発展を将来的に考察す ー87−.

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