聴覚障害幼児の社会的誘発性の評価法に関する予備的検討(III) : 分析時間の選定について
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(2) . 平成 9 年 2月 February,1997. 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第47巻 第2号 i i i l Journa lo fHokka i doUn i fEduca t t t v er s on (Sec onIC) Vo yo .47 .2 ,No. 聴覚障害幼児の社会的誘発性の評価法に関する予備的検討 (m) -分析時間の選定について-. 三. 工. 浦. 哲. は じめに 1 )2 )は聴 覚 障害幼 児 を 対象 と した コミ ュ ニケ ー シ ョ ンの指 導 にお いて 子 どもの参加 三 浦 (1996 ; 1997) ,. 態度や情緒的状態を示す 「社会的誘発性(Soc i IValence)」 を 重 視 し, そ の 評 価 方 法 につ い て 予 備 的 検 討 a を行っている‐ その結果, 「話し合い」 における話題との関連性の有無が不明な表出を評価項目に加えるこ と, 自発的表出と応答的表出の相手が他児の場合とその他 (主に教師) の場合に分けること, 主たる話者の 交代に対する追視の可否をつけ加えることなど, 幾つかの改善点が指摘されている. また教師による発話や 指導が特定の被験児に集中する場面が観察されたため, 分析資料の収集手続きについて検討すべきだとして いる‐ さらに聴覚障害幼児の 「話し合い」 活動における社会的誘発性の客観的な評価のために, 必要かつ最 短の分析資料 (VTR記録) の長さが不明であることも今後解決すべき課題として提示されている‐ できる 限り速やかに分析を終了することは, 指導の方針や方法を検討する上で有意義であるため, 分析資料はでき る限り短いことが望ましい‐ しかし一方で, 分析資料が短すぎると, 社会的誘発性の実態を的確に把握でき ない可能性が考えられるため, 必要かつ最短の分析資料を決定する必要があると思われる. 例えば分析の開 始時点から5分, 1 0分, 1 5分など, 異なる分析対象時間ごとに結果を整理し, 評価項目の出現頻度が大き く変化しなくなる分析資料の長さを見いだすことができれば, 必要かつ最短の分析資料を決定することが可 能だと思われる. )に従っ て改変した評価法を用い 各時間帯ごとの分析結果から 2 以上の点から, 本研究では三浦 (1 997) , , 必要かつ最短の分析資料の長さについて検討を加えることとした‐. 韮. 方. 法. ( 1 ) 被験児 被験児はA聾学校の幼稚部5クラスに在籍する先天性の聴覚障害幼児20名のうち, 先天性の両感音性難 聴であり,聴覚障害以外に重複する障害のない1 5名である.被験児の内訳は3歳児クラス在籍幼児5名 (以 下 「3歳児」 とする, 3 歳 10 カ月 ~ 4 歳 9 カ月), 4歳児クラス在籍幼児5名 (以下 「4歳児」 とする, 5歳1カ月~5歳9カ月), 5歳児クラス在籍幼児5名 (以下 「5歳児」 とする, 5歳1 0カ月~6歳5カ 月) である‐ 良聴耳の平均聴力レベルは準重度 (56~70dBHL) が1名, 最重度 (9ldBHL以上) が1 4 名である‐ 聴能言語に関する指導の開始年齢は, 1歳未満が4名, 1歳から2歳未満が7名, 2歳から3歳 未満が4名である‐. { 2 ) 分析資料の収集手続き )の場面に参加している被験児と担任教師をVTR 3 「話し合い」 活動 (北海道札幌聾学校幼稚部, 199 3) 録画した‐ 通常, 担任教師を中心に半円形に被験児が着席しているた め, 広角 レンズを装着した2台の 151.
(3) . 三. 浦. 哲. VTRカメラを使用した‐ VTR録画は 「話し合い」 活動が始まる数分前から終了数分後まで行ったが, 分析 対象としたのは 「話し合い」 活動の開始数分後からの30分間である. なお担任教師には, 特定の被験児に 発話や指導が集中しないように依頼した‐ ( 3 ) 分析方法の変更 2 )に従い 以下の項目について変更を加え, 表1に示す行動カテ ゴリーを新たに設定 した. 三浦 (1 997) , ① 「話し合い」 における話題との関連性の有無の判断が困難な表出を, 「不明の表出」 として行動カテ ゴ リ ー に加 え る.. ②自発的表出について, 表出の相手が他児である場合とその他の場合 (教師に対する表出, もしくは表出 の相手が不明である場合) に分類する‐ ③応答的表出について, 応答の相手が他児の場合と教師の場合に分類する‐ ④話者交代に対する追視の可否を分析項目に加える‐. { 4 ) 分析手続き 収集したVTR資料を10秒ごとに停止させ, 表1に示す行動カテ ゴリー (注視時間と追視の可否を除く) 0秒間に観察された同一行動カテ ゴリーの出現頻度については問わないこと の有無を判断した. その際, 1 とした. また自発的表出と応答的表出, 無関係表出, 不明な表出については, 表出形態による下位項目 (自 発的表出の質問, 発話, 発声, 非音声. 応答的表出と無関係表出の発話, 発声, 非音声‐ 不明の表出の発声 と非音声) の中で, 10秒間に表出形態の異なる表出が複数観察された場合には, 最も水準の高い項目のみ チ ェ ッ ク した.. 話題に関連する主たる話者に対する注視時間については, 0~4点の5段階評定とし, 概ね10秒間注視 していた場合を4点, 約5秒間注視していた場合を2点, ほとんど注視していなかった場合を0点とし, 4 点と2点の中間的な場合を3点, 2点と0点の中間的な場合を1点とした‐ なお, 分析対象児自身が主たる 話者の場合と, 主たる話者が不在もしくは特定できない場合は分析から除外した. 0秒間に主たる話者が交代した場合だけを分析の対 主たる話者の交代に対する追視の可否につ いては, 1 象とした. そして, 追視の可否により, 以下の3段階に分類した. ①最初の話者への注視ができ, 話者交代 の直後に次の話者を追視できた場合 (以下, 「追視可」 とする)‐ ②最初の話者に対する注視はできたが, 話者が交代しても最初の話者への注視が継続されていた場合 (以下, 「注視固定」 とする). ③最初の話者 0秒間に話者交代が複数回観察され, を注視していなかった場合 (以下, 「注視不可」 とする). なお, 1 追視のレベルが異なる場合には, 最もレベルの高い行動だけをチェックした. 00%として表示 なお, 注視時間と追視の可否を除く評価項目の出現頻度については, 全ての時間間隔を1 0分間の分析時間中の時間間隔は180コマと した (1コマ10秒間の時間間隔が1分間に6コマあるため, 3 00%とし なる)‐ また注視時間については, 分析対象とされた時間間隔 (コマ数) の全てが4点の場合を1 0%として表示し て表した‐ さらに追視の可否は, 主たる話者の交代が観察された時間間隔 (コマ数) を10 た‐. ( ) 分析時間に関する手続き 5. 上記の手続きで実施された分析の結果から, 各評価項目の出現度数 (注視時間と追視の可否は出現頻度) 5分間, 20分間, 25分間, 0分間, 1 を5分 ごとに分けて算出 した. また分析開始時点 からの5分間, 1 30分間の6つの時間帯につ いて, それぞれ出現頻度を求めた.. { ) 評定者内信頼性の測定手続き 6 被験児15名のVTR資料を1名ずつ 分析し, 全員の分析が終了した時点で, 最初に分析 した被験児1名の VTR資料10分間を再度分析し, 最初の分析結果との一致率を算出した. 152.
(4) . 聴覚障害幼児の社会的誘発性の評価法 (m). 表1 社会的誘発性行動カテ ゴリー 内. カ テ ゴリ ー. 容. 自発的表出 <他児>. 話題に関連する他児への自発的表出 (表出形態により, 質問, 発話, 発声, 非音声に分類). <その他>. 話題に関連する教師への(もしくは対象不明の)自発的表出 (表 出形態により, 質問, 発話, 発声, 非音声に分類). 応答的表出 <他児>. 話題に関連する他児の表出(質問,要求, 指示, 提案, 勧誘等) に対する応答的表出 (表出形態により, 発話, 発声, 非音声に 分類).. <教師>. 話題に関連する教師の表出(質問,要求, 指示, 提案, 勧誘等) に対する応答的表出 (表出形態により, 発話, 発声, 非音声に 分類)‐. 無関係表出. 話題とは無関係な表出 (表出形態により, 発話, 発声, 非音声. に分類) 不明の表出. 話題との関連性の有無が不明な表出 (表出形態により, 発声と. 非音声に分類) 注視時間. 話題に関連する主たる話者を注視していた時間 (5段階評定). 追視の可否 (追視可). 主たる話者の交代に対する追視が可能‐. (注視固定). 主たる話者の一人に注視が固定し, 新たな話者を追視しない‐ 主たる話者への注視が不十分.. (注視不可) 喜び. 喜 びや 好 意 を 表 す表 出.. 歌. 歌や 鼻 歌.. 微笑 ・ 笑 い. 微笑 や 笑 い‐. 無反応. 話題に関連する質問, 指示, 要求に対する無反応‐. 退屈. 話題や活動への退屈を表す表出 (活動の変化や中断の要求, た め息やあくび等). 席を離れる. 話題とは無関係に席を離れる‐. 嫌悪・拒否. 話題や活動, 教材, 指導者等に対する嫌悪や拒否, または欲求. 不満やいらだちを表す表出. 泣く. 泣く, ま た は泣 き 声 で の発 声 ・発 話. 153.
(5) . . 三. m. 結. 浦. 哲. 果. ( 1 ) 評定者内信頼性 2回の評定結果が一致した割合は, 自発的表出が96 .7%, 応答的表出が96 .7%であり, 高い信頼性が示 された. 一方, 注視時間については58 .3%であり, 一致率は相対的に低かっ た‐ しかし評定の結果を詳細 に分析したところ, 2回の評定結果が一致しなかった25コマ中, 2 4コマは評定結果の差が1点であった‐ そ して 10 分 間の 総 計 は1 回 目 が 80 ‐8 %, 2 回目が 77 ‐2 % で あり, そ の差 は3 .6 %で あ っ た‐ な お 微 笑 ・. 笑いと退屈はそれぞれ1コマずつ観察され, 2回の評定結果はいずれも一致した‐ { 2 ) 5分ごとの比較 本評価法では多くの行動カテゴリーが評価項目とされているが, ここでは10% (1 8コマ) 以上の出現頻 度が得られた行動のみ分析の対象とした‐ また全てのデータを分析したところ, 年齢による差は認められな かったため, 以下では各項目の特徴を最もよく 示すと思われる被験児群の結果だけを示すこととした まず ‐ 図1は4歳児の自発的表出の出現度数 (コマ数) を表したものであり, 個人差が極めて大きいことが特徴で ある. また多くの被験児は時間帯により出現度数が変動しており, 全ての時間帯で一定の出現度数を示した 被験児はわずかであった. 図2は, 同じく4歳児の応答的表出の出現度数である. 自発的表出と同様, 時間帯により大きな変動が認 められた. 図3の主たる話者に対する注視時間も同様の傾向であった. 図4は5歳児の微笑・笑い, 図5は4歳児の退屈の出現度数である‐ 微笑・笑いにつ いては, 少数の時間 帯に集中して観察されており, 5分間に全く出現しない時間帯も認められた. 一方退屈につ いては, 出現度 数が少なかったためか, 他の行動カテ ゴリーとは異なる傾向が示され, 極端に出現度数の多い時間帯は認め られな か っ た.. 3 ( ) 分析時間別の出現頻度 図6は4歳児の自発的表出の出現頻度を, 5~30分間の6種類の分析時間ごとに示 したものである. ま た図7は応答的表出, 図8は主たる話者に対する注視時間についての結果である. これらの図から, 被験児 や分析項目によっては, 分析時間が20分もしくは25分をすぎると出現頻度が定常化し, 分析時間の短縮が 可能な例も認められたが, 分析時間が長くなっ ても出現度数の変動が持続していたり, 出現頻度が増加もし くは減少し続ける例も観察された.. 出 現 度 数. . ズ ′ / ′/ \ ・ ・ ・ ・ ・ ‐ ・ 本~′. \ \ ′ / ′ ′ ‐ 、 - ー メ 、 ー ‐ ・柔ごてメ ‐. ′ . ・ 、 , . ・ 、. la 度 数. . .\て - ー. /. ーla 5ハ. ‐15 la^. -2 15- 2. . a~5. 分析対象時間(分) 図1. 154. 4歳児の自発的表出の出現度数. \ゞ / \. / . ‐5 a^. . \\. . 5~1 1 1. /、\. . IB~15. 15~28. 分析対象時同(分) 図2. ノ. . 4歳児の応答的表出の出現度数.
(6) . 聴覚障害幼児の社会的誘発性の評価法 (皿). \ ‘ \ \ /メ ブ /、\ ′. 、. /.. . ‐ \′ \. . ′-\‐ /” ” ‘′′. - 、 ′ 、 . 、 , 、 ′ 、 .. . . 5~12. り~5. 18~15. ー29 15ハ. 2 1 3~25. B~5. 25~38. 5~IB. IB~15. 15~28. 22~25. 25~ 鋤. ‐2 8^ 5. 2~38. 分析対象時間(分). 分析対象時間(分) 図4. 4歳児の注視 時間. 図3. . . 5歳児の 微笑・笑 いの出現度数. . ーニ- ′ 〆てミド ミ 、 ≠ザ ;~\ ~ ;r‐ 〆;/ ; ;【 ; B~5. 5~I E 3. 1a~15. ‐2 a 1 15^. 28~25. 25~32. ‐5 B^. a~IB 1. 分析対象時間(分). B~15. 8~29. 分析対象時間(分) 図6. 図5 4歳児の退屈の出 現度数. 4歳児の 自発的表出の出現頻度. . . ′ . - . - . - 頃 ・ - -空き ・ ・ . . - -- F〆: - - ‐ ;. / / ~‐- ~. a~5. ’-′′. - --. 2~18. 8~15. -. -- --. 8~28. ′′′. 8~25. 〆--. 日~38. a~5. 分析対象時間(分) 図7. W. 4歳児の応答的表出の出現 頻度. 考. 8~I G I. G I~15. 2~28. 8~25. 日~32. 分析対象時間(分) 図8. 4歳児の注視時間の割合. 察. 以上の結果から, 被験児によっては20分もしく は25分の段階で分析を中断しても, 30分間分析 した場. 合と類似した結果が得られる例もあるが, 時間帯ごとに評価項目の出現頻度が大きく変動する被験児も認め られた- そのため分析時間を短縮すると的確な実態把握が困難になる可能性が大きく, 分析資料はできる限 り長いことが望ましいと思われた. この点について, 今回資料を収集した5クラスにおいて, 「話し合い」 2 )でも概ね同程度の時間で 97 2~71分間であり, 三浦(19 ) 活動が開始されて から終了するまでの時間 は3 あった. 従って, 今後は25~30分間の資料を分析することが必要かつ妥当ではないかと思われる‐ 次に, 今回5分間 ごとに出現頻度を集計したことにより, 当初は意図していなかっ た結果が得られたので, 1 )2 )で は 出現 頻度 の総計 だ けを 検 討の 対象 と して き その 点 につ い て述 べる. こ れま で 三 浦 (1996 ; 1997) , 155.
(7) . 三. 浦. 哲. ‐ しかしなが ら今回示されたように, 特定の行動カテ ゴリーの出現頻度が比較的一定の被験児と, 時間帯 より大きく変動する被験児が認め られた. そのため今後は出現頻度の総計だけでなく 5~1 0分ごとの , 時的な集計により, 有益な資料が得られる可能性が考えられる‐ 特に同一クラスの被験児同士の比較や , 師の行動との対応関係を検討することにより, 「話し合い」 活動の指導方針や指導方法を考察する上で有 な手がかりが得られる可能性があるため, 今後さらに検討すべき課題だと思われる ‐ 2 ) 一方, 資料収集の方法論上の問題もあげられる. 三浦 (1 997) は通常の 「話し合い」 活動の場面で資料 収集すると, 教師による発話や指導が特定の被験児に集中する場合があり 条件統制の点で問題があるこ , を指摘している. そのため本研究では, 発話や指導が特定の被験児に偏らないように教師に依頼したが , 料収集後の教師との話し合いの結果, そのことが 「話し合い」 活動の自然性に影響を与える可能性が示唆 れた. そのため教師に何らかの留意を求めるのではなく, 通常の場面を記録し 明らかに評価場面として , 問題が推測される場合には分析対象とせず, 新たに記録を取り直す等の対応が望ましいと考え られる .. 辞 稿を終えるに当たり, 本研究にご協力頂きました北海道札幌聾学校幼稚部のお子様達と保護者の皆様に ,. より感謝の意を表します. また貴重なご助言を賜りました田代智司校長と森 政義先生はじめ幼稚部教諭 方々に深謝致します.. 用文献 ) 三浦 哲 (1 99 6) :聴覚障害幼児の社会的誘発性の評価法に関する予備的検討-評価項目とサンプリング間隔の選定について- , 北海道教育大学コミュニケーショ ン障害研究, 3, 1 1一19. ) 三浦 哲 (19 97) :聴覚障害幼児の社会的誘発性の評価法に関する予備的検討 (n) -3~5歳児の 「話し合い」 活動の分析を通 して-, 北海道リハ ビリテーション学会雑誌, 25, 印刷中 . ) 北海道札幌聾学校幼稚部 (19 9 3) :本校幼稚部における話し合い活動の考え方, 話し合い活動の実践的研究, 27‐4 2.. (本学助教授 札幌校).
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