平 成
27年
度 兵 庫 教 育 大 学 大 学 院 学 位 論 文推 論 か ら見 た色 彩語 にお け る命名 と連想 の研 究
教 育 内 容 ・ 方 法 開 発 専 攻 文 化 表 現 系 教 育 コ ー ス 言 語 系 教 育 分 野(国
語 )M14170G
中 尾 通 孝次
序 章 は じめ に… ・ … ・ … … … … ・・ … … … … ・・・ … ・ … 1 第1節 研究の 目的 と方法 第
2節
色彩語の重層性 第3節
論文の構成 第1章
推 論 を支 え るメ タ ファー とアナ ロジー・ … … … … ・・・ … … ・ 5 第1節 推論 とは何か 第
2節
認識論 としてのメタファー 第3節
メタファーに基づ く推論 第4節
アナロジー とは何か 第5節
本研究で用いる推論 第2章
古 典 に お け る色 彩 語 に つ い て… … ・ … ・ … … 。・・・ … ・・・14 第1節 色彩語の歴史的分析における先行研究 第
2節
色彩語の歴史的変遷 第3節
色彩語 に関する時代別分析 第4節
古典における色彩語の考察 第3章
色 彩 語 に 関 す る児童 の 推 論 (そ の1)―
デー タ編… … ・・・ … ・ … 27 第
1節
目的 と手順 第2節
得 られたデータの概要 第3節
黒・ 白 第4節
赤・青・ 黄 第4章
色 彩 語 に 関 す る児童 の 推 論 (そ の2)‐
分析 編… … … 0・ … ・ … 36 第
1節
全体的な分析 と考察 第2節
黒・ 白 第3節
赤・青・ 黄 第4節
色彩語に関する児童の推論に関する考察 終 章 結 語・ … … ・ … ・ … … … … ・ … … … ・ … … ・
047
参 考 文 献・ … ・ … … ・・ … ・ … ・ … … ・ … … … ・・ … … ・・48 資料編 資料
1
古典色彩語の時代別出現語・ 0・・・・・・・ 。・ 000-1-資料
2
質問紙の内容000・
・・・・・・・・・・・・ 。・・・・ -8-資料3
児童の色彩語の連想に関する推論詳細データ・・ 。・・・ 0-9-資料
4
児童の色彩語の連想に関す る放射状カテゴリー詳細図・ 0・
-24-凡 例
1.例
文 の番号 は,各
章 ごとにふ りなお した。2.表
お よび図の番号は,論
文 を通 して通番 とした。序 章 は じ め に 本 研 究 で の 対 象 とな る色 彩 語 は
,言
語 学 分 野 か らみ た 「意 味 」 や 工 学 分 野 か らみ た 「波 長 」 な どに つ い て 重 層 性 を示 す も の で あ る。 一 方,方
法 論 的 に 今 回 そ の 分 析 に用 い よ うと して い る推 論 に つ い て は,心
理 学 的 な 言 語 学 分 野,す
な わ ち認 知 言 語 学 分 野 で も新 しい領 域 で あ る。 重 層 性 を示 す 色 彩 語 に つ い て 推 論 を用 い て 考 察 す る こ とが,本
研 究 の 意 義 で あ る。 そ こ で ,序 章 で は研 究 の方 向性 を 示 す た め に ,第1節
で 研 究 の 目的 と方 法 を 明 らか に し, 第2節
で これ ま で の研 究 を踏 ま え た 色 彩 語 の 重 層 性,第
3節
で 言 語 間 の 多 様 性 と普 遍 性 に つ い て 概 観 し,第
4節
で 本 論 文 の構 成 を整 理 す る。 第1節
研 究 の 目 的 と 方 法 本 論 文 の 目的 は,認
知 科 学 で い う推 論 とい う観 点 か ら,
日本 語 に お け る色 彩 語 の 多様 性 を分 析 す る こ と に あ る。 この 目的 は 大 き く2つ
の 下 位 目標 か らな る。 第1は
,歴
史 的 な 変 遷 の 中 で 色 彩 語 が どの よ うに命 名 され 分 化 した か とい う点 に 関 す る分 析 で あ り,第
2は
, 現 代 に お け る小 学 校 児 童 の 連 想 の 中 で 色 の イ メー ジ が どの よ うに 連 鎖 す る か とい う点 に 関 す る分 析 で あ る 。 こ の2つ
の 目標 の うち, 1つ
目は 時 間 軸 とい う大 き な 流 れ の 中 で 色 彩 語 の推 移 を提 え る 研 究 で あ り, 2つ
目は 個 人 の 共 時 的 な 思 考 の 中 で 発 想 の 広 が りを捉 え る研 究 で あ る が,両
者 と も,「推 論 」 とい う心 理 作 用 を キ ー ワー ドと して 色 彩 語 の 多 様 性 を分 析 す る も の で あ る 。 本 論 文 の研 究 は,
日本 語 の 視 覚 語 の 中 で も色 彩 語 を考 察 の 対 象 と し,推
論 の観 点 か ら分 析 を行 うと こ ろ に特 徴 が あ る。 推 論 とは 心 理 学 の 概 念 で あ り,こ
の 推 論 を 用 い て 歴 史 的 な 色 彩 語 の命 名 の方 法 と現 代 の 色 彩 語 に お け る連 想 の2つ
に つ い て 分 析 を行 う。 本研究の領域 図1
本 研 究 の 領 域1つ
め の 歴 史 的 な命 名 の方 法 に つ い て は,古
典 の色 彩 語 を研 究 対 象 と した 先 行 文 献 か ら 色 彩 語 を抽 出 し,推
論 を 用 い て 古 典 に お け る色 彩 語 の 成 り立 ち に つ い て 分 析 す る。2つ
め の現 代 の 色 彩 語 に お け る連 想 は,児
童 を対 象 に色 彩 語 に 関 す る連 想 の ア ンケ ー ト調 査 を行 い,そ
こで 生 じ た 多 義 性 につ い て 推 論 を用 い て 分 析 す る。第
2節
色 彩 語 の 重 層 性 第2節
で は,こ
れ ま で の研 究 を踏 ま えて 色 彩 語 の重層 性 につ い て概 観 す る。 まず は,研
究史 的 な観 点 か ら色 彩 語 の歴 史 をふ り返 っ て お きた い。 従 来 の 色 彩 語 の研 究 につ いての ア プ ロー チ は2つ
あ っ た。 言語 学 的 な ア プ ロー チ と工 学 的 なア プ ロー チ で あ る。 第1に
言語 学 的 な ア プ ロー チ と して は,色
彩 語 とい うもの は歴 史 的 な資 料 を も とに音 韻 や漢 字 か ら語源 を調 べ る とい う形 で,史
的 な意 味論 的,語
彙 論 的研 究 が そ れ ぞ れ の言語 に よつ て 進 め られ て き た。 例 え ば,色
彩 語 が 色 彩 を表 わす もの で あ るか光 を表 わす もので あ るか 論 じた り,抽
象 的 な色 彩 語 と具 体 的 な色 彩 語 を整 理 し語源 を明確 に した り,黒
・ 白・ 赤・ 青 を取 り出 して研 究 す る もの で あ る。 それ らの研 究 を進 展 させ,沖
森(2010)『
色彩 語 の 史 的研 究』 は,色
彩 語 を系統 的 かつ網 羅 的 に論 究 し,色
彩 語 の派 生 を考 え 「基本形 」 「展 開 形」 として,具
体 的 な語 と色 を関連 させ て 明確 に してい る。 同様 に,物
の 彩 を表 わ す 「色 」 とい う漢 字 は,男
女 の情 愛 の様 子 を表 わす 象形 文字 と され て お り,視
覚 的 な色 の みで は な く人 間 の認 知 が 多 く含 まれ て い る。 語 源 か ら考 えて も色 彩 語 の重 層 性 につ いて認 識 が され てい る に もか か わ らず,重
層 性 の メカ ニ ズ ム は解 明 され て い な い 。 第2に
,工
学 的 な ア プ ロー チ で は,色
彩 は一 定 の感 覚 を さす 。「マ ンセ ル 表 色 系i」 で は , 牡丹 色 を(3PR 5ノ
14)な
ど色 相,明
度,彩
度 の数 値 で あ らわす。 古 典 にお け る色彩 に つ い て は,残
され て い る材 料 の資 料 を基 に,草
木 染 な どの方 法 で 再 現 が進 み マ ンセル表 色 系 で 示 され る よ うに な っ て きた。 吉 岡 幸雄(2002)『
日本 の色 を染 め る』 は,
ミカ ン科 の 落葉 高 木 で あ る黄 薬 の樹 皮 か ら黄 薬 色 を再 現 す るな ど,古
典 的 な 資料 を参 考 に色 彩 を再 現 して い る。 工学 的 な ア プ ロー チ と して,さ
ま ざま な色 の再 現や 数 値 を用 い た識 別 につ いて の研 究 が進 んで い るが,そ
の よ うな色 の名 前 で あ る色彩 語 が どの様 な意 味 を含 有 して用 い られ て い るか は 明確 に な って い ない。 現 在 で は,以
上 に あ げ た言 語 学 的 ア プ ロー チや 工 学 的 アプ ロー チ の研 究 を も とに,社
会 文化 学,心
理 学 分 野 で の研 究 が進 み,民
族 や 国 家,時
代,社
会 な どの文 化 にお い て違 い が あ る こ とが注 目 され て い る。 言 語 の認 識 につ い て は,言
語 は文 化 に よ つて認 識 が異 な る とい う立 場 を とる言 語相対性 論 が あ る。 文化 に よつて 虹 の色 の数 が4色 , 6色 , 7色
と違 い が あ る こ とや,太
陽 の色 に つ い て 自0赤
・ 黄 と違 い が あ る こ とが有名 で あ る。 具体 的 な色 に関 して も,例
え ば 「紫 」 は,
日本 語 の 「紫 」 で は冠位 十 二 階 の最 上 位 と して取 り扱 われ る よ うに 「高 貴」 な色 と し て用 い られ て い るが,英
語 の 「紫 」(violet)で
は 「猥 褻 」 とい う意 味 で も取 り上 げ られ て い る。「黄 色 」 につ い て も,
日本 では 「貧 し さ」 を表 わす こ とも あ るが,中
国 で は 「尊 さ」 を表 わ す こ ともあ る。 も ち ろん,「紫 」や 「黄 」 と表 わ して い て も,そ
れ らを さす 色 相や 明 度,彩
度 に は差 が あ るが,色
彩語 を抽 象 的 な言 葉 と して 取 り上 げて い る点 で は,文
化 に よ つて 違 い が あ る こ とを示 して い る。これ に対 して
,1969年
にバ ー リン (B.Be」in)と
ケイ(RKay)は ,色
彩 語 は文化 が違 つて い て も普遍 性 が あ る こ とを主 張 した。 抽 出 した色彩 語 か ら,色
相,明
度 な どの違 い か ら色 彩 語 の示 す 範 囲 は文 化 に よって 異 な るが そ の 中心 とな る語 と色 は 同 じで あ る こ と,色
彩 語 の 増 加 の変遷 が 自・ 黒 か ら赤
,黄
・ 緑,そ
して青,茶
な ど と一 定 の順 序 が 同 じで あ る こ とが 示 され た。白・ 黒 → 赤 → 黄・ 緑 → 青 → 茶 → 紫・ ツヒ・ 橙・ 灰 回
2
バ ー リン (B.Ber:in)と ケ イ (P.Kay)によ る 色 彩 語 の 増 加 順 序 認 知 メ タ フ ァ ー 理 論 で は,瀬
戸 賢 一(1995)は ,メ
タ フ ァー の 種 類 を大 き く2つ
に分 類 した 。1つ
目は,感
じる こ とで 生 じる 「感 性 的 メ タ フ ァーii」 で あ る。体 の 内 部 の 感 覚 や 体 の外 部 か らの 刺 激 を 受 け た 時 の感 覚 か ら生 じる メ タ フ ァ ー と して い る。2つ
目は,案
じる こ とで 生 じる 「悟 性 的 メ タ フ ァー 面」 で あ る。 一般 的 に認 識 され る こ とや 個 人 で しか認 識 され な い こ と も含 む が,考
え る 先 に生 じる メ タ フ ァー で あ る。 さ らに瀬 戸 は,そ
の 感 性 的 メ タ フ ァー の 中 で,色
彩 に 関 す る メ タ フ ァー を視 覚 の メ タ フ ァー に位 置 づ け た。 感 性 的 メ タ フ ァ ー の 中 で,五
感 を使 っ た 外 部 か らの 感 覚 か ら生 じ る メ タ フ ァー「五 感 の メ タ フ ァー 」 に分 類 して い る。 さ らに,五
感 を 細 分 化 した 「視 覚,聴
覚,味
覚,触
覚,嗅
覚 」 の 中 の 「視 覚 の メ タ フ ァー 」 と して 分 類 した 。(図3)
臭 党 の メ "ァ ー 特定文■メタファー 回3
瀬 戸 (1995)によ る メ タ フ ァー の 分 類 視 覚 の メ タ フ ァー は,空
間 と光 の メ タ フ ァー に分 類 され,光
の メ タ フ ァー の 中 に,明
暗 の メ タ フ ァー と並 ぶ 色 彩 の メ タ フ ァー と して位 置づ け,「 明確 」「明晰 」 な どを視 覚 的 に と らえ る表 現 と して分 析 した。例 え ば,「音 楽 に 関 して 詳 しい 」 こ とを「音 楽 に明 る い」,「人 生 の見 通 が もて た 」 こ とを 「人 生 に一 筋 の光 が見 え た 」 と表 わす こ とで あ る。 しか し,あ
くまで メ タ フ ァー の 素材 と して位 置 づ け られ てお り,色
彩 語 の具 体例 は少 な く,視
覚 の メ タフ ァこ は共感 覚 的 な言 葉 が あ る こ とや,構
造 にま で 至 る悟 性 的 メタ フ ァー の こ とにつ い て は明確 に され て い ない。 そ もそ も,言
語 を用 いて 情 報 (名 前 や 様 子・ 行 動・ 時 間・ 感 情 な ど)の
共 有 を行 つ てい る とい うこ とは,視
覚 だ け に と どま らず 五感 を駆 使 しな が ら感 性 にまで 至 る傾 向 が あ る。 そ こで 以 上 の先 行 研 究 を踏 ま え,本
研 究 で は,色
彩 語 は視 覚語 に 位 置す る言 葉 で あ りなが ら,共 感 覚 性 を含 み感 性や 物 事 の構 造 に 関 わ る言葉 と して と らえ,推論 を用 い て分 析 す る。 こ こでの本 研 究 に お け る研 究 対 象 を 巨視 的 に と らえ る と次 の図
4
の よ うに な る。 五 感 の 言 葉 国4
本 研 究 の 領 域 こ こ で 描 か れ た 対 象 全 体 が 将 来 の研 究 す る領 域 で あ る が,本
論 文 に お い て は 最 も右 上 の 色 彩 語 を 直 接 研 究 対 象 とす る もの で あ る。第
3節
論 文 の構 成
以 上,こ
の 章 で は 本 研 究 の 目的 と対 象,範
囲,ア
プ ロ ー チ 方 法,色
彩 語 の 重 層 性 を整 理 した 。 本 論 文 の 構 成 は 次 の 通 りで あ る。 ま ず,第
1章
に お い て 分 析 に用 い る尺 度 と して の 推 論 を 整 理 す る 。 第2章
で は,古
典 の 色 彩 語 を研 究 対 象 と した 先 行 文 献 か ら色 彩 語 を抽 出 し,歴
史 的 な 変 遷 の 中 で の 色 彩 語 の命 名 に つ い て 考 察 す る。 第3章
で は,現
代 の 色 彩 語 に お け る 小 学 校 児 童 の 連 想 に 関す る ア ン ケ ー トを 実 施 した 結 果 を整 理 し,さ
らに,第
4章
で そ の 分 析 と考 察 を 行 う。 最 後 に,第
5章
で,歴
史 的 な 変 遷 の 中 で 色 彩 語 が どの 様 に分 化 し た か と い う点 と現 代 に お け る小 学 校 児 童 の 連 想 の 中 で 色 の イ メ ー ジ が どの 様 に 連 鎖 す るか とい う点 の2点
を 総 括 し,結
論 を 述 べ る。iマ
ンセ ル 表 色 系:1915年
にア メ リカ の画 家 マ ンセ ル に よ り提 唱 され た もの で あ る。「 3PR 5/14」
の 牡 丹 色 で は,色
相(R:赤
,Y:黄 ,G:緑 ,B:青 ,P:紫
をそ れ ぞれ 10 等分 した指標),明
度 (明 る さ),彩
度 (あ ざや か さ)の
数 値 で あ らわす。茶 色 は「5YR3.5/4」
とな る。 五感 性 的 メ タフ ァー:瀬
戸 賢一(1995)に
よ って示 され た 「感 じるメ タ フ ァー 」 と して身 体 的 な 知 覚 に基 づ い た 直感 的 な メ タ フ ァー.五
感 を通 して得 られ た体 内 の敏 感 な神 経網 で 感 じた こ とで生 じる メ タ フ ァー の こ とで あ る。 大 き く2つ
に分 類 され, 1つ
日は,五
感 を 通 した 外 部感 覚 の メ タ フ ァー で あ り,2つ
目は,内
部 の感 じた こ とに よっ て 生 じる内部 感 覚 の メ タ フ ァー で あ る。 外 部感 覚 の メ タ フ ァー には,五
感 の領 域 に分類 で き る表 現 と,五
感 の領 域 を また い だ 表 現 が あ るた め に,さ
らに,五
感 の メ タ フ ァー と共感 覚 メ タ フ ァー に 分類 され て い る。 ili悟性 的 メ ダ フ ァー:瀬
戸 賢一(1995)に
よ っ て示 され た メ タ フ ァー分類 の1つ
。 感 性 的 メ タ フ ァー と対 に な る 「案 じるメ タ フ ァー 」 と され る。 感 性 的 メ タフ ァー は,直
感 的 な メ タ フ ァー と され て い るが,一
方,「案 じるメ タ フ ァー 」で あ る悟 性 的 メ タ フ ァー は,考
え る こ とで 生 じるメ タ フ ァー の こ とで あ る。「会 社 の歯 車 」の よ うな,社
会 と個 人 の構 造 を考 え た よ うな メ タ フ ァー の こ とで あ る。第
1章
推 論 を 支 え る メ タ フ ァ ー と ァ ナ ロ ジ ー 第1章
で は,本
論 文 に お い て 分 析 の 主 た る尺度 とな る推論 につ い て整 理 す る。 この推 論 は,意
識 され て い な い が 日常 で よ くつ か われ てい る。例 え ば,新
しい物 事 と出 合 っ た 時,新
しい ものが 生 み 出 され た 時,表
現 の仕 方 に適切 な表 現 が 見 つ か っ た 時 な どで あ る。 そ こで,第
1節
で は,推
論 につ いて概 観 す る。 先行研 究 を整 理 し,従
来 の推 論 に 関 す る確 定 だ け で は な く,認
知 言 語 学 分 野 で のパ ラダイ ムで用 い られ る推 論 を合 わせ て全体 像 を 明 らか にす る。 第2節
で は,推
論 の 中 で も認 識 論 と して の メ タ フ ァー を整 理 し,第
3 節 で は,メ
タ フ ァ ー に基 づ く推 論 につ いて 具 体例 を示 す。 第4節
で は,メ
タ フ ァー と隣接 概 念 に あ る推 論 の 中 の ア ナ ロ ジー につ い て整 理 し,第
5節
で,本
研 究 にお け る推 論 を どの よ うに と らえ て い る のか を明確 にす る。 第1節
推 論 と は 何 か 第1節
で は,推
論 につ い て先 行 研 究 を整 理 し,認
知 言 語 学 分 野 に お け る推論 につ いて推 論 とは何 か とい う こ とを概 観 す る。 推 論 とは,問
題 解 決,理
解,概
念 形 成 な どにな らぶ 思 考 の1つ
と され て い る。 思考 の研 究 は,ア
リス トテ レス以 降 形 式 論 理 学 を中心 に,ル
ネ サ ンス以 降 は哲 学 的 な洞 察 も加 わ りp窪
がすすゅられてきた。科学的に研究されるようになったのは
,ボ
ィンのヴュルツブル
ク 学 派 の キ ュ ペ ル (0。kulpe)ゃ
ゼ ル ツ (0.Selz)を 中 心 と した 内観 法 に よ る思 考 研 究 か らで あ る。20世
紀 前 半 の ア メ リカ を 中 心 と して 盛 ん に な っ た行 動 主 義 心 理 学 の ヴェル トアイ マ ー(Mo Wertheimer)や
ケ ー ラー(W.kohler)ら
に よ る に よ る洞 察
,同
時 期 の ス イ ス の ビア ジ ェ(J.Piaget)に
よ る シ ェ マ(schema)(認
知 科 学 で の ス キ ー マ)の
研 究 が す す め られ た 。 こ の推 論 は,市
川(1996)に
よ る と,大
き く2つ
に わ け られ る。1つ
日は,演
繹 的 推 論(deduction inference)で
あ る。 高 橋・ 服 部(1996)は
,演
繹 的 推 論 を,推
論 の 正 しい方 法 が あ り,そ
の 方 法 に従 つ て さ えす れ ば,必
ず 正 しい 答 え に到 達 す る とす る推 論 と して い る。 ア リス トテ レス の三 段 論 法 に代 表 され る もの で,一
般 性 の 高 い 知 識 や 事 実 か ら個 別 の 結 論 を導 く こ とが で き る。 しか し,研
究 が 進 む に つ れ,個
別 の 知 識 に よ リエ ラ ー や バ イ ア ス が 生 じる こ とが 明 らか に な っ た。2つ
日は,帰
納 的 推 論(inductiOn inference)で
あ る。楠 見(1996)は
,帰
納 的 推 論 を , 個 々 の 事 例 に基 づ い て 一 般 知 識 を 導 く推 論 で あ り,そ
の プ ロセ ス は,事
例 を獲 得 し、仮 説 を 形 成 し,検
証 す る こ とで あ る と して い る。 さ らに,帰
納 的推 論 は 批 判 的 思 考 を支 え る と して お り,情
報 の 収 集 と推 論,そ
の 確 か ら し さの評 価,一
貫 し た 解 釈 の構 成 に お い て重 要 な 役 割 を 果 た して い る と して い る。 そ の よ うな研 究 の 過 程 で 進 め られ た 推 論,論
理 学 の 推 論 とは,正
しい と想 定 され る既 知 の 知 識 を利 用 して 新 しい 知 識 を 導 く手 続 き と して,常
に 正 しい とは 限 らな い が,
日常 的 に よ く使 わ れ て い る も の と して い る。 この よ うに既 知 の もの か ら別 の もの を導 く推 論 は,語
彙 レベ ル に 関 して も,
日常 的 に 多 く用 い られ て い る 。1つ
は 新 しい 物 事 へ の命 名 で, 2つ
目は物 事 を 喩 え る こ とで あ る。1つ
目の命名 に 関 しては,新
しい物事 を知 った とき,生
み出 した ときには言語 において も次の よ うな3つ
の 場合 が考 え られ る。新 しい事物 を知 った ときには,①
別 の言 語 を用 い て表現す るこ と,②
別 の国 の言葉 を自国の該 当す る言葉 に置き換 えるこ と,③
言葉 を組 み 5合 わ せ て新 しい 言 葉 を つ く る こ とで あ る。 別 の 言 語 を用 い て 表 現 す る際 に は
,意
味 に 関 す る推 論 は少 な い が,表
記 や 音 声 に 関 して は 推 論 が 行 わ れ る。(1)a.volleyball→
バ レー ボ ー ル (別の 言 語 を用 い て 表 現 す る こ と) (別 の 国 の 言 葉 を該 当す る語 に 置 き換 え る) → 水 泳 → 野 球 (言 葉 を組 み 合 わ せ て 新 しい 言 葉 を つ く る こ と )(la)の
よ うに別 の 言 語 を用 い て 表 現 す る例 と して は,「v011eyball」 が あ る。日本 で は, 「バ レー ボ ー ル 」 と表 記 され,そ
の 際 に,既
有 の 音 声 と表 記 か ら一 番 適 当 な も の を用 い て お り,そ
こ に は 音 に 関 す る推 論 が 用 い られ て い る と考 え られ る。他 に も,「tennis」 と「テ ニ ス 」,「rugby」 と 「 ラ グ ビー 」 な どが あ る。 そ の 他 に も,「coffee」 と 「 コ ー ヒー ・ ヵ フエ」,「Cup」 と 「 コ ップ・ カ ップ 」,「handkerchief」 と 「ハ ン カ チ・ ハ ン ケ チ 」,「gum」 と 「ガ ム ・ ゴム 」 な どが あ るが
,伝
わ つ た 経 緯 か ら別 の表 記 が あ て られ る場 合 が あ る。 例 えば ,「cOffee」 の 語 源 は
,ア
ラ ビア 語 で 酒 類 を表 わ して い た 「gahwah」 だ と され て い る が,
英 語 で は 「coffee」
,オ
ラ ン ダ で は 「koffie」,フ
ラ ン ス 語 で は 「cafe」 と され,西
洋 の 各 国 で も 聞 こ え た よ うに 表 記 され,そ
の 後,
日本 に伝 わ っ た 経 緯 の 違 い か ら表 記 に揺 れ が あ つ た り,別
の 意 味 を も た せ た りす る こ とが あ る。_(1り
_2事
うに 別 の 甲?言
葉 蕉該当 す ● 話 に置 き換 え る こ│に
開 して ぃ ,[SWimtting」 であ る 。 も とも と 日本 に あ っ た 水 泳 と意 味 が 似 て い る こ とか ら 「水 泳 」 と表 記 され
,そ
の 際 に,意
味 を考 え て 置 き換 え る推 論 が用 い られ て い る と考 え られ る。他 に も,「book」 と「本 」,「
bus(元
はomnibus:乗
合 馬 車)」 を 「バ ス 」,「radio」 を 「 ラ ジ オ 」,「 spoon」 を 「 さ じ」, 「car」 を 「車 」,「bell」 を 「鈴 」 な どが あ る。
(lc)の
よ うに 言 葉 を組 み 合 わせ て新 しい 言 葉 が つ く られ て い る もの と して は,例
え ば, 「baseball」 と「野 球 」で あ る。語源 は正 岡 子 規 に よ る こ とが 有 名 で あ るが,「 野 で 行 う球 技 」 とい うこ と と 自分 の 名 前 「の ぼ る」 か らき て い る と され て い る。 他 に も 「ecOnomics」 が あ る。 日本 語 で は,理
財,経
済 (経国 済 民・ 経 世 済 民)と
され て お り,既
有 の 日本 語 を 用 い て 新 し くつ く られ た もの で あ る。「glasses」 と 「眼 鏡 」 も 同 様 で あ る。 こ の よ うに,推
論 は 無 意 識 的 に使 わ れ て い る。新 しい物 事 を 生 み 出 した と き に は,「ガ ウ ス (発見者 名 ガ ウ ス を磁 束 密 度 の 単位)」 の よ うに発 見 した 人 の名 前 と置 き換 え た り,「 マ ウス (パ ソ コ ン の 周 辺 機 器 を 鼠)」 の よ うに そ の 物 事 に似 た名 前 を用 い た り と推 論 が 行 わ れ て い る とい え る。 言 語 に 関 す る 推 論 の2つ
日は,メ
タ フ ァ ー が あ げ られ る。 メ タ フ ァー (■etaphor)と
は 広 義 で は比 喩 全 般 の こ とで,字
義 的 で な い こ と を表 す こ とで あ る。 比 喩 とは,何
か を喩 え る と い うこ とで あ る が,分
類 の 仕 方 に は 様 々 あ る よ うで あ る。 例 え ば,直
喩 と暗 喩 な ど と して 分 類 して い る。 オ ノマ トペ(OnomatOpoeia)を
比 喩 の1つ
と して,音
喩 (擬 音 語),声
喩 (擬 声 語),態
喩 (擬 態 語)と
す る場 合 も あ る。 元 来,隠
喩 や 暗 喩 と呼 ばれ る メ タ フ ァー は,古
代 ギ リシ ャ や 古 代 ロー マ の 時 代 か ら,修
辞 法 (レ トリ ッ ク)の
1つ
と して研 究 され て き た が,そ
れ ら は 文 学 や 修 辞 学,哲
学 と して の研 究 が 主 で あ っ た 。 修 辞 学 は,医
学 と並 ん で 身 に着 け る べ き 教 養 と して 重 視 され て き た。 しか し,そ
の 後,異
な る言 語 を調 べ歴 史 的 な つ な が りを 考 え る比 較 言 語 学,一
般 性 を もつ 期 待 され るべ き正 しい 言 語 を基 準 と して bo sw■mm■ngc. baseball
研 究 の 対 象 とす る構 造 言 語 学
,生
成 文 法 な ど に お い て,字
義 通 りで は な い メ タ フ ァー の 成 り立 ち は研 究 の 対 象 とな りに く く,言
葉 の 綾 や 変 則 的 な 表 現 と され て き た 。_従
来 の メ タ フ ァー に つ い て の 研 究 は,比
喩 は2つ
の 物 事 の 間 に お け る類 似 性 に 基 づ く とされ て き た 。そ の よ うな研 究 に は ,代 替 説
(substitutiOn宙
ew),比較 説(comparison宙
ew), 相 互 作 用 説(interaction view)な
どが あ る。 次 の 例 文 を も とに整 理 して い く。(2)a。
彼 は 鬼 だ b。 彼 は 怒 る と怖 い c。 彼 は顔 が 赤 い d。 彼 は 仕 事 が 早 い e。 彼 は ま る で 鬼 の よ うだ 代 替 説(substitution view)で
は,字
義 通 りの 表 現 の 代 わ りに メ タ フ ァー を用 い て 字 義 通 りの 指 示 対 象 と等 しい 意 味 を 表 わ す もの と して と ら え て い る。 代 替 説 は 怒 る と怖 い 彼 の 様 子(2b)を (2a)の
よ うに 鬼 に 言 い 換 え た もの と して と らえ る。 しか し,(2a)の
鬼 は (2c) の よ うに顔 が 赤 い容 姿 と も と ら え られ,複
数 の 候 補 が あ げ られ る と い うこ とは,単
純 に 代 替 と して と らえ る こ とが で き な い。 さ らに,も
とも と字 義 通 りの表 現 が 見 当た らな い 「パ ソコ ン のマ ウス」や 「ス トロー 」 の よ うな もの もあ り代 替説 で は説 明 が つ か な い。 比 較 説(comparisOn view)で
は,メ
タフ ァー を2つ
の事物 を比 べ,そ
の 間 に生 じる類 似 性 を 強 調 す る もの と して,「 ま るで ∼ の よ うだ。」 とい う明喩・ 直 喩 を省 略 した もの と して と らえ てい る。(2a)が (2e)と
同様 の表 現 とい うこ とに な る。比 較 して 共 通 点 を強調 して い る こ とは,代
替説 と同様 に(2b)の
怖 い様 子 や(2c)の
顔 の赤 さに関 して は,共
通 点 が 見つ け られ る。しか し,(2d)の仕 事 が早 い様 子 の よ うに共 通 点 が見 つ けに くい もの が あ る。 戦 で の 「鬼神 の如 き働 き」 とい うこ とか ら,仕
事 で の働 き に使 われ た とい うこ とが考 え ら れ る が,現
在 の仕 事 にお い て は 共 通 点 を見 つ け る こ とが難 しい。 相 互 作用 説(interaction view)で
は,喩
え る側 と喩 え られ る側 が相 互 作 用 す る こ とに よ り意 味 が 拡 張 され る と と らえ る。 メ タ フ ァー に よっ て生 じた新 た な意 味 に 目を 向 けてい る説 で あ る。「彼 」の怒 つた 時 の様 子 と「鬼 」 とい う印象 か ら「怖 さ」に意 味 を拡 張 した こ と,「彼 」の仕 事 ぶ りと「鬼 」の 強 さか ら「凄 ま じさ」の よ うに意 味 を拡 張 され て い る こ と につ い て は説 明 で き る。 しか し,こ
の 際,「鬼 」につ い て は今 後 も意 味 の拡 張 が な され る場 合 が あ るが ,「 彼 」 に関 して意 味 は拡 張 しな い と考 え られ る。 さ らに,「 赤 い」 とい うこ と につ い て は,意
味 の拡 張 とい うよ りも共 通 点 で意 味 は拡 張 し「赤 い 」 以 外 の言 葉 に変 化 し ない と考 え られ る。この よ うに
,代
替 説(substitution vieT),比
較 説(comparisOn view),相
互 作用 説(interaction view)で
は,一
部 の説 明 が つ け られ るが全 体 の説 明 がつ き に く く,メ
タ フ ァー を用 い る際 の動 機 の1つ
や 方 向性 を示 す もの とな って い るに過 ぎな い。 字 義 通 り用 い る と誤 用 とな っ て しま うこ とが あ るが,発
信 され た言 語 の意 味や ヒ トの 心 的状 況,文
化,コ ミュ ニ ケー シ ョンでの文脈 な どか ら充分 理解 で き るメ タフ ァー は
,心
理 学,認
知 言 語 学 と と も に研 究 が は じめ られ,そ
れ ほ ど古 い もの で は な い。以 上 第
1節
で は ,推 論 の 先 行 研 究 と比 喩 の これ ま で の 考 え方 に つ い て整 理 した。そ こで, 次 節 で は,近
年 研 究 され た 推 論 を 用 い た 認 識 論 と して の 比 喩 に つ い て 整 理 す る。 第2節
認 識 論 と し て の メ タ フ ァ ー 第2節
で は,メ タ フ ァー に つ い て ,近 年 研 究 が進 ん で い る認 知 メ タ フ ァー 理 論(cognitiveMETAPHOR theory)を
整 理 し,本
研 究 に お け る メ タ フ ァー の 定 義 を 明 らか に す る。 認 知 メ タ フ ァ ー 理 論 で は,思
考 の 方 向性 に よ り,メ
タ フ ァー を 直 喩 (シ ミ リ:simile),
隠 喩(メ タ フ ァー:metaphor),換
喩(メ トニ ミー:metonymy),提
喩 (シ ネ ク ドキ:synecdoche)な どに分 類 す る。 ま た
,ア
ナ ロ ジ ー (類推:ANALOGY)に
つ い て は,属
性 や 関係 性 な どに共 通 点 が 見 られ る な ど比 喩 と 同 じ よ うな 思 考 が 用 い られ て い る場 合 が あ る。 そ こで,例
示 を も とに類 推 も含 め て 比 喩 の 概 念 を整 理 す る。(3)a.彼
は ま る で パ ソ コ ン だ b。 彼 は パ ソ コ ン だc.パ
ソ コ ン を 使 つ て 調 べ るd.パ
ソ コ ン で メ ー ル を 送 る e。 デ ス ク トップ,フ
ォル ダ,フ
ァイル(3a)で
は,「彼 」の仕 事 ぶ りの正 確 さや 処 理 の速 さ,知
識 量 の豊 富 さな どの「彼 」と「パ ソ コン」 とい う異 な る領 域 に あ る共 通 点 に注 目 して 「パ ソコ ン」 と して表 して い る。「ま る でパ ソコンだ」 とす る こ とで 「彼 」 自体 はパ ソ コンで は な い こ とが 明示 され て お り転 義 が な い。 これ が直 喩 (シ ミ リ:simile)で
あ る。直 喩 とは,「ま るで ∼ の よ う」 と喩 え た こ と を は っき りと明示 して い る比 喩 で あ る。 (2e)「 彼 は ま るで 鬼 の よ うだJも
同様 で あ る。 こ の比 喩 は,情
報 発 信 者 自身 が意識 的 に喩 え と して用 い る こ とが 多 い。 同様 に,情
報 受 信 者 も比 喩 で あ る こ とを意 識 的 に受 け て い る こ とが多 い。「ま るで ∼ の よ う」を使 うこ とで,歴
史 的 に転 義 が あ るか ど うか は別 と して,喩
え に使 用 した言 葉 に は転 義 が な い。(3b)で
は,比
喩 で あ る こ とが 明示 され て い ない た め に,文
章 上 の意 味 で は彼 が パ ソ コ ン にな って い る。字義 通 りに受 け取 る と誤 用 とな って しま う。しか し,「彼 」と「パ ソ コ ン」 異 な る領 域 の共 通 点 で あ る,正
確 さ,処
理 の速 さ,知
識 量 の豊 富 さ,あ
るい は冷 静 さ,人
間 味 の無 さな どを示 して い る比 喩 で あ る。 (2a)「 彼 は 鬼 だ」 も同様 に,「鬼 」に 「怒 る と怖 い 」,「顔 が 赤 い」,「仕 事 が早 い」な どの転 義 がみ られ る。これ が 隠 喩(メ タ フ ァー:皿etaphori) で あ り,「 ま るで ∼ の よ う」を用 い ない比 喩 で あ る。無 意 識 の うち に使 用 され る こ とや 理 解 され る こ とが あ る よ うで あ る。 代 替 説,比
較 説,相
互 作 用 説 を説 明 した 際 の, (2a)(2b)(2c)(2d)が 隠 喩 に あた り,「ま るで ∼ の よ う」を使 わ な い こ とで,言
葉 に転 義 が生 じる。 この よ うに,異
な る領 域 に あ る2つ
の物 事 の共 通 点 に注 目 し 「ま るで ∼ だ」 の よ うな言 葉 が用 い られ 転 義 が な い比 喩 を直 喩, 2つ
の物 事 の共 通 点 に注 目 し 「ま るで∼ だ 」 を用 い ず 転 義 が生 じた 比 喩 を隠喩 とす る。 転 義 が あ るか ない か は異 な るが,直
喩 と隠 喩 は思 考 の 方 向性 が似 て い るが,思
考 の方 向性 につ い て は次 の節 で説 明す る。(3c)で
は,パ
ソ コン を使 って い る こ とに は間違 いが ない。 しか し,実
際 はパ ソコ ンの 中に あ るイ ンター ネ ッ ト検 索 ソフ トかパ ソ コ ンの外 にあ るイ ンター ネ ッ トを,パ
ソコンに 言 い 換 え て転義 が か か って ぃ る。 少 しず れ が生 じて い ることにな るが,こ
れ はパ ソコ ン と い う意 味 で は同 じ領 域 で あ る。 直喩 と隠喩 は異 な る領域 間の類似性 を も とに言い換 え られ た比 喩 で あ る と定 義 づ けた の で これ に は 当てはま らない。 これ を,換
喩 (メ トニ ミー :metOnymy)と
す る。 野村(2013)は
,「メ トニ ミー は主 要 な比 喩 の1つ
で あ り,単
一 領 域 内 での 要 素 の 隣接性 に基 づ いて喩 ぇ られ て い る」 と してぃ る。瀬戸(2005)は
日本 語 の換 喩 を次 の5つ
の隣接 関 係 にわ け,①
全 体 と部 分,②
容器 と中身,③
製 作者 と産 物,④
原 因 と 結果,⑤
場 所 と機 関 と して い る。 これ らの定 義 に照 ら し合 わせ る と,(3c)「
パ ソ コン を使 つて調 べ る」 は 中 身 ・ 部分 で あ るイ ンター ネ ッ トソフ トを容器・ 全 体 のパ ソコンと して転 :・ ■義 し、 い る。 ま た は,ィ
ンターネ ッ ト全 体 の一部 と してのパ ソコンが,ィ
ン ター ネ ッ ト全│■
● を毒 わ して ぃ る。 類 似 性 とい うもの は な い が隣接 関係 にあ る。11=:(31)Fパ
ソコ ン で メニル を送 る」の メール には,送
付 す る文 書 とい う意 味 が あ る。本 来 は,手
紙・ 電 子 メ ー ル ともにmailで
あ る。 しか し,最
近 で は,メ
ー 々 とぃ ぅと通信機器 に│よ
ぅ 送 付 文 書 を さす 。 下位 概 念 を上位 概 念 で表 す よ うに な った 例 で あ り,提
喩 (シネ ク ド :ニキ:synecdoche)で
あ る。 佐 藤(1992)は
,換
喩 との違 い を明確 に示 して お り,換
喩 の全体 と部分の中でも
,類
と種の関係
,包
含関係 にあたるものを提喩 としている。手紙も電子
メール もそれだけで存在 しているが
,現
在の 日本において
,そ
れ らを含めた上位概念であ
る メ ー ル が 下位 概 念 電 子 メ ー ル を意 味 す る こ とが あ る。 これ と比 較 す る と,換
喩 の 例 で 示 した(3c)の
パ ソ コ ン だ けで は検 索 す る こ とが で きず,ィ
ン タ ー ネ ッ トを 使 うこ とで一 部 の 端 末 と して 検 索 す る こ とが で き る。 逆 に,上
位 概 念 を 下位 概 念 で 示 す 場 合 も あ るが次 節 で 取 り扱 う。 (3e)「 デ ス ク トッ プ,フ
ォ ル ダ,フ
ァィ ル 」 は,本
来,実
際 に 存 在 す る も の を示 して い る。 しか し,こ
の 関 係 性 全 体 が,パ
ソ コ ン の 世 界 で の 関係 性 と結 び つ き,パ
ソ コ ン の画 面 の 最 初 の 状 態 をデ ス ク トップ,デ
ー タ の 中規 模 な もの を フォル ダ,小
規 模 な もの を フ ァィ ル と して い る。 こ の よ うに,1っ
ひ とつ で は な く機 能 全 体 と して 写 し取 られ た もの をアナ ロ ジー (類 推:ANALOGY)と
して ぃ る。 以 上 の,5つ
の 概 念 を整 理 す る と次 の表1の
よ うに な る。 表1本
稿 に お け る 比 喩 と そ の 隣 接 概 念 の 表 記 本 稿 で の 寿 壼 メ タ フ ァ ー (螂喩 全 般:METAPHOR)
直墜
(シミリ :similめ
二 上Fジ
ー (類推:ANALOGY)
以 上 の よ うに,第
2節
で は,認
知 メ タ フ ァ ー 理 論 に よ る直 喩 (シ ミ リ:simile),隠
喩 (メ タ フ ァー:metaphOr),換
喩 (メ トニ ミー:metonytty),提
喩 (シ ネ ク ドキ:synecdoche)
と,さ
ら に,思
考 状 況 が 似 て い る ア ナ ロ ジ ー (類推:ANALOGY)に
つ い て 概 念 を整 理 した。そ こ で
,第
3節
に お いて,推
論 と メ タ フ ァー,ア
ナ ロ ジ ー の 関 係 を 明 か に し,そ
の 後,本
稿 で 色 彩 語 の 転 義 を 分析 す る た め の 推 論 を確 定 して い く。 第3節
メ タ フ ァ ー に 基 づ く推 論 第3節
で は,メ
タ ファー に属 す る直 喩 と隠 喩,換
喩,提
喩 に お い て どの よ うに推 論 が用 い られ て い るか を整 理す る。1
直 喩(simile)と
隠喩(metaphor)に
基 づ く推論(3a)の
「彼 は ま るでパ ソ コ ンだ 」,(3b)の
「彼 はパ ソ コン だ 」 では,①
比 喩 と して の 明示 で あ る 「ま る で ∼の よ うだ 」 が あ るか,②
転 義 が あ るか の2点
につ い て の違 い が あ る もの の,「
彼 」 と 「パ ソ コ ン」異 な る もの に あ る共 通 点 で あ り,正
確 さ,処
理 の速 さ,知
識 量 の 豊 富 さ,あ る い は冷 静 さ,人 間 味 の無 さな どを示 して い る比 喩 で あ る こ とは述 べ た。 同様 な例 と して,次
のよ うな例 が あ る。(4)a。
ま る で ガ ラス の よ うな壊 れ や す い心 だ,b.パ
ソ コ ンのマ ウス,ス
トローc.金
切 り声,猫
な で 声d.腐
卵 臭,ア
ー モ ン ド臭 e。 ま ろ や か な味,ま
ろや か な人f.鮫
肌 ガ ラ ス の 心(4a)の
「ま る で ガ ラス の よ うな 壊 れ や す い心 だ」は 直 喩 で あ り,「ガ ラ ス の 心 」 は 隠 喩 に あ た る。 これ は,図
5の
よ うに,ガ
ラ ス と心 の 壊 れ や す さや も ろ さに共 通 点 が あ る と考 え られ る。 図5
直 喩 と隠 喩 の 思 考 の 方 向 性 こ こ で 重 要 な こ と は,ガ
ラ ス と心 が 全 く別 の領 域 間 に あ る とい い うこ とで あ る。 全 く別 の領 域 間 に共 通 点 が あ る こ とで 推 論 が 働 き直 喩 や 隠 喩 とな っ て い る。 同様 な 思 考 と して,(4b)の
形 の 共 通 点 を もつ パ ソ コ ン の マ ウス (パ ソ コ ン の マ ウ ス と鼠),ス
トロー (藁 と飲 み 物 を 飲 む とき に 用 い るス トロー),(4c)の
音 の 共 通 点 を もつ 金 切 り声,猫
な で 声,(4d)
の 臭 い の 共 通 点 と し て腐 卵 臭 (卵の 腐 っ た 臭 い と硫 黄 の 臭 い),ア
ー モ ン ド臭 (シ ア ン化 合 物 とア ー モ ン ドの 実),(4e)の
「ま ろや か 」 で は,角
の な い様 子 が 共 通 点 で 昔 か ら,「球 状 や 筒 状 の 形 」や 「 し つ こ く な い 味 」 と して 用 い られ,「温 和 な 人 柄 」 な ど も示 す よ うに な っ て い る。(4f)の
触 感 の共 通 点 で は (人 の肌 とサ メ の肌)な
どが あ る。以 前 例 示 した,(2a)
の 「彼 は 鬼 だ 」(2b)「
彼 は 怒 る と怖 い 」,(2c)の
「彼 は顔 が 赤 い 」,(2d)の
「彼 は 仕 事 が 早 い 」,(2e)の
「彼 はま る で 鬼 の よ うだ 」 これ と 同 じ思 考 が働 い て い る。 視 覚 の み で は な 10 壊 れ や す さ 。も ろ さく
,五
感 や 状 況,感
情 な ど をす べ て 動 員 して 推 論 が 行 われ て い る こ とが わ か る。 別 の領 域 間 の 共 通 点 に 注 目 して 働 く思 考 を直 喩 や 隠 喩 の推 論 とす る。2
換 喩(metOnymy)に
基 づ く推 論(3c)の
「パ ソ コ ン を使 つて調 べ る」 で は,パ
ソ コ ン の 中 に あ る検 索 ソ フ ト,ま
た は, パ ソ コ ン の外 に あ る イ ン ター ネ ッ トを用 い て 検 索 して お り,こ
の よ うに 隣 接 領 域 間 で の ず れ が あ る こ と を 換 喩 と した 。 同様 の 例 と して,次
の よ うな 例 が 挙 げ られ る。(5)a。
赤 シ ャ ツ 〔夏 目漱石 『 坊 ち ゃ ん』 よ り〕 (全 体 と部 分)b.チ
ョコ レー トを贈 る (容 器 と中身)c.ス
トラデ ィバ リ(StFadiVari)を
使 う (製 作者 と産 物)d.チ
ンす る (原 因 と結果)e.市
役 所 へ 行 く (場所 と機 関)(5a)で
は,本
来 は 坊 ち ゃ ん に登 場 す る教 頭 が,い
つ も身 に 着 け て い る ネ ル の 赤 シ ャ ツ とい う隣接 領 域 に ず ら され て い る (図 6)。 図6
換 喩 の 思 考 の 方 向 性 こ の 際,教
頭 と赤 い ネ ル シ ャ ツ に は 共 通 点 が な い 。 い つ も の 教 頭 の様 子 か ら部 分 の赤 シ ャ ツ に ず ら され て お り教 頭 全 体 か ら着 て い る もの とい う部 分,す
な わ ち 「全 体 と部 分 」 の 違 い が あ る。「 白バ イ が 来 る」「(小学1年
生 を 意 味 して )ラ ン ドセ ル が歩 い て い る」な ど も, この 全 体 と部 分 の 構 造 に な っ て い る。(5b)の
「チ ョ コ レー トを贈 る」で は,送
つ た の は箱 に入 れ た チ ョ コ レー トで チ ョコ レー トだ け を贈 つ た わ け で は な く 「容 器 と 中身 」 の 関係 に あ る。 容 器 の 部 分 を 短 縮 した と も考 え られ る が,チ
ョ コ レー トだ け を贈 る こ と とは認 識 さ れ ず,推
論 を用 い て 認 識 され て い る。(5c)の
「ス トラデ ィバ リ(Stradivari)を
使 う」 で は,バ
イ オ リ ン の 製 作 者 の名 前 が用 い られ て お り「製 作 者 と産 物 」 に な っ て い る。(5d)の
「チ ンす る」 は,電
子 レ ン ジ に入 れ て もの を 温 め た 時 に最 後 に 「チ ンJと
い う音 が 鳴 つ て い た こ とか ら「原 因 と結 果 」の 関係 で 結 果 を表 現 して い る。「お 手 洗 い に行 く」の お 手 洗 い も 同様 の構 造 と な っ て い る。(5e)の
「市 役 所 へ 行 く」は場 所 で あ る市役 所 とそ の 中 に あ る 機 関 で 行 う 目的 こ と が 変 わ つ て い る。「市 役 所 に 問 い 合 わせ る」は 市 役 所 に 電 話 を して役 場 の 担 当者 に質 問 を す る こ とで あ り構 造 的 に「場 所 と機 関 」の 関係 に な っ て い る。「花 園へ 行 く」「甲 子 園 に行 く」 も同様 で,機
関 で は な い が そ の 目的 で あ る 全 国 大 会 と場 所 が 変 わ っ て い る。「大 阪 へ 行 く」 も,大
阪 全 体 を 示 す わ け で は な く,「USJ」 や 「難 波 」 な どの ど こか に 行 つ て い る こ と を 示 して い る。 ま た ,「 赤 シ ャ ツ 」「チ ョ コ レー ト」「ス トラデ ィバ リ」「チ ン」「花 園 」だ け で は,別
の 意 味 に な っ て しま う とい うこ とで あ る。 この よ うに,隣
接 して い る領 域 に あ り共 通 点 が な い もの へ 移 行 す る 思 考 を換 喩 の 推 論 と と らえ る。3
提 喩(synecdoche)に
基 づ く推 論(3d)に
お け る 「パ ソ コ ン で メー ル を送 る」 の 「メ ー ル 」 に は,本
来 は,手
紙 。電 子 メ ール と も にmailで
あ る が,最
近 で は,メ ー ル とい う と通 信 機 器 に よ る送 付 文 書 を さす,下
位 概 念 を 上 位 概 念 で 表 す よ うに な っ た 提 喩 で あ る と述 べ た 。 そ の 提 喩 の 思 考 に つ い て 次 の 例 を 用 い て 提 示 す る。(6)a.東
京 ドー ム に ミス タ ー が 現 れ た (下位 概 念 → 上 位 概 念)b.サ
ラ ン ラ ップ を使 う (上位 概 念 → 下位 概 念)(6a)で
は,長
嶋 茂 雄 とい う東 京 読 売 ジ ャイ ア ン ツ の歴 史 的 名 選 手 を ミス タ ー とい う上 位 概 念 で 表 現 して い る。 こ の2つ
の 間 に は包 含 関係 が あ る。 こ の よ うな例 は 他 に も,「 ジ ブ リを 見 る」の例 も挙 げ られ る。「ジ ブ リを見 る」は,製
作 会 社 の ジ ブ リの 「 ラ ピ ュ タ 」や 「 も の の け 姫 」,「風 立 ち ぬ 」 な どの 何 か を 見 た こ とを 「ジ ブ リ」 と表 現 して い る。 下 位 概 念 を 上位 概 念 で 表 現 す る提 喩 で あ る。長嶋茂雄
図7
提 喩 の 上 位 概 念 で 表 現 す る 思 考 の 方 向 性(6b)で
は,実
際 に は「サ ラ ン ラ ップ 」の ほ か に も食 品 包 装 用 ラ ップ フ ィル ム は あ るが, そ の 中 の1つ
の 商 品 で あ る 「サ ラ ン ラ ップ 」 とい うこ とで,そ
の ほ か の 商 品 も示 して しま うこ と を表 現 して い る。 上 位 概 念 を 下位 概 念 で 表 現 す る提 喩 で あ る。 食 品 包 装 用 ラ ッ プ フ ィ ル ム サ ラ ン ラ ップ 回8
提 喩 の 下 位 概 念 で 表 現 す る 思 考 の 方 向 性 他 に も ,「 テ レ ビ を見 る J,「 ク ラ シ ック を聴 く」 な ど に も表 れ て い る。「テ レ ビ を見 る」 は,ア
ニ メ番 組 や ドラマ な どを 見 た こ とが テ レ ビ とい う上位 概 念 で 示 して い る。「ク ラシ ッ ク を 聴 く」 は あ らゆ る古 典 的 な 芸 術 が あ る 中 で,ク
ラ シ ック音 楽 を ク ラ シ ッ ク と表 現 して い る。 この よ うに,包
含 関 係 の 中 で 上 位 概 念 と下位 概 念 の 入 れ 替 わ りを提 喩 に 関 わ る推 論 とす る。 第4節
ア ナ ロ ジ ー と は 第4節
で は,前
節 での メ タ フ ァー の 隣接 概 念 に あ るア ナ ロ ジー につ い て整 理 し,推
論 を よ り明確 に して い く。 類 推 とは,あ
る分 野 の構 造 的 な知識 を利 用 し,新
しい物 事 を理解 す る方 法 で あ る。(3e) 「デ ス ク トップ,フ
ォル ダ,フ
ァイル 」 は,実
際 にパ ソ コン用 語 と して用 い られ て い る。 12しか し
,パ
ソ コ ン の 内部 に は フ ォル ダ も フ ァイ ル も な い が,パ
ソ コ ン 自体 の構 造 を 実 際 に 使 つ て い る机 の 状 況 と比 較 す る こ とで 新 しい 物 事 を説 明 的 に使 用 して い る。 仕 事 な どで使 用す るパ ソ コ ン を デ ス ク トップ とす る と,書
類 な ど の デ ー タ を 小 さ く管 理 す る も の と実 際 に あ る フ ァイ ル,小
さい デ ー タ を ま と め て 管 理 す る も の とフ ォ ル ダ に わ け て い る。 こ の よ うな こ とが,飛
行 機 の 説 明 に船 の 説 明 の 概 念 を使 う(captain,port,ship,crewな
ど) こ と,電
気 の 仕 組 み を水 流 の仕 組 み で 理 解 す る こ と (電 流・ 電 圧・ 電 池 と水 流・ 水 圧・ 池) や,テ
レ ビ局 の 構 造 を ラ ジオ 放 送 の構 造 (放 送 局,ス
タ ジ オ な ど)を
表 わ す こ と に も用 い られ て い る。 図9
船 と飛 行 機 の 構 造 に 関 わ る ア ナ ロ ジー の 思 考 色 彩 語 に 関 して も,意
味 的 に 相 対 す る 自 と黒 を用 い て 「 白黒 は っ き りつ け る」 こ とや, そ の 中 間 に あ た る灰 色 を用 い て領 域 の 間 に あ る部 分 を 「 グ レー ゾ ー ン」 な ど とい うこ とが あ る。 ま た,革
命 旗 が 赤 色 で あ る こ とか ら共 産 主 義,社
会 主 義,お
よび の そ の 主 義 者 を さ して 「赤 」 と称 し,「赤 」 ま で は い か な い が,い
く らか 左 翼 的 傾 向 の あ る,共
産 主 義,社
会 主 義 に公 明 す る人 を 「 ピ ン ク」 と表 わ した こ とな どが あ る。 以 上 の よ うな 例 は,部
分 的 な 類 似 性 だ け で は な く構 造 全 体 の 類 似 性 を も とに用 い られ て お り,METAPHOR〔
比 喩 全 般 (メ タ フ ァー)〕 と して で は な く,ANALOGY〔
類 推 (ア ナ ロ ジ ー)〕 と して 分 類 され て い る。 第5節
本 研 究 で 用 い る 推 論 以 上,第
1節
の推 論 の概観 と従 来 の メ タ フ ァー の研 究,第
2節
で の認 識 論 と して の メ タ フ ァー の整 理,第
3節
で メタ フ ァー を用 い る際 には た らい て い る推 論,第
4節
で アナ ロジ ー に関 わ る推 論 を総 括 し,本
研 究 で用 い る主 た る尺 度 と して の推 論 につ い て整 理 した。 本 研 究 で 取 り扱 う色 彩 語 に関 わ る命 名 と連 想 には ,直 喩 と隠 喩 を1つ
と して扱 い ,隠 喩, 換喩,提
喩,さ
らに,ア
ナ ロジー の4つ
思 考 を も とに分 析 して い く。i metaphor:こ
の 場 合 は,メ
タ フ ァー を狭 義 の 比 喩 と して 用 い る。 先 行 研 究 で の メ タ フ ァ ー を 除 き,本
研 究 で は,比
喩 全 体 を メ タ フ ァー と表 記 す る。さ らに ,メ タ フ ァー の 種 類 を, 隠 喩,直
喩,換
喩,提
喩 と表 わ し,ア
ナ ロ ジ ー (類 推:ANALOGV)を
含 め て 推 論 と して 用 い る。 船 長 ・captain 港 ・ port 船 員 ・crew
飛 行 機 の 構 造Captain
Zヨ港・ airport 搭 乗 員・crew
第
2章
古 典 に お け る 色 彩 語 に つ い て 第2章
で は,古
典 にお け る色彩 語 につ い て整 理 し,古
典 にお け る色 彩 語 の命 名 につ い て 推論 を用 い て分 析 し考 察 を加 え る。 論 述 の 手順 と して は,第
1節
で は先 行研 究 に あ る色 彩 語 の歴 史 的分析 を整 理 す る。第 2 節 で は,現
在 再 現 され て い る染 色 技 術 や 古 典 文 学 に 出現 す る色 彩 語 か ら色 彩 語 の成 立 の歴 史的 変 遷 につ い て 概 観 し,第
3節
で は沖森 紅 美(2010)に
示 され た色 彩 語 を分 析 す る。最 後 に,第
4節
で は 古 典 にお け る色 彩 語 につ い て 考 察 す る。 第1節
色 彩 語 の 歴 史 的 分 析 に お け る 先 行 研 究 本 論 文 で 明 らか に しよ うと して い る こ とは,色
彩 語 彙 の歴 史 そ の もの で は な く,色
彩 語 彙 か ら認 識 す る もの につ い て で あ る。 そ こで,
日本 語 の歴 史 的 な色彩 語 に つ い て い ろい ろ な文 献 を も とに整 理 し,そ
れ らに示 され た 色 彩 語 を分 析 の対 象 とす る。 そ こで まず,分
析 の対 象 とな る色 彩 語 を明確 にす るた めに以 下 の様 な文 献 を用 い て,色
彩 語 の歴 史 につ いて 整 理 す る。 前 田 雨城 (1980)『 もの と人 間 の文 化 史38色
染 と色 彩 』 法 政 大 学 出版 局. 伊 原 昭 (1994)「 朝 日選 書 」『 来_学1こみ る 日杏 η色 』 朝 日新 聞社. 吉 岡 幸雄 (2008)『 日本 人 の愛 した 色』 新 潮 社. 沖 森 紅 美 (2010)『色 彩 語 の史 的研 究』(株
)お
うふ う。 伊 原 昭(20H)『
色 へ の こ とば をの こ した い』 笠 間 書 院 前 に 述 べ た とお り,色
に は重層 的 な意 味 が含 まれ て お り,文
化 学 的 ア プ ロー チ,ェ
学 的 アプ ロ ー チ,言
語 学 的 ア プ ロー チ な どが あ る。 そ こで,文
化 学 的 ア プ ロー チ と して前 田雨 城(1980)を
も とに染 色 と色 彩 の歴 史 につ い て概観 し,言
語 学 的 ア プ ロー チ で あ る伊原 昭(1994,20H)や
沖森 紅 美(2010)の
文 献 と比 較 検 討 しなが ら,色
彩 語 に つ い て整 理 をす る。 あ わせ て,染
色 の歴 史 的 資料 か ら古典 の色 彩 を再 現 して い る吉 岡幸雄(2008)の
文 献 を,染
色 に用 い られ た材 料 をで き る限 り裏 付 け る もの とす る。 前 田 雨城(1980)は
,文
化 学 的,工
学 的 ア プ ロー チ と して,歴
史 的 に どの よ うな色彩 に 関す る 文 化 が生 じて きた か につ い て示 して い る。文 学 的 資料 や 布 な どの染 色 の み で はな く, 世 界 的 な壁 画 や 衣 料 な どの歴 史 的 な 資料 も分析 の対 象 と して あ げ られ て い る。 前 田に よる と,世
界 的 に色 彩 の起源 につ いて は,約
5万
年 前 か ら5万
年 以 上 前 に は,当
時 の 旧人類 の 化 粧 品 や 彩 色 され た とみ られ る もの が 出土 され て い る。 例 え ば,紀
元 前1万
2千
年 の北部 スペ イ ンの アル タ ミラの壁 画,紀
元 前1万
5千
年 の ラス コー の壁 画,紀
元 前2千 6百
年 の エ ジ プ トのス フ ィ ンクス な どで あ る。 日本 にお いて は,正
倉 院 宝 物 や 法 隆 寺献 納 宝物 な ど の物 質 と して の資 料 が残 され て い る。丈 学 的 に は,『古 事 記 』『 日本 書紀 』『 万葉 集 』『 律 令 』 や『 源 氏物 語』『 枕 草子 』な どの平 安 文 学 に つ い て色 彩 語 と して残 され て い る。文 献 に残 る 色 彩 名 と色 相 の記 し方 に は,同
じ人 に よっ て も季 節 に よ り違 い が あ るな ど,非
常 に差 が あ り大 き な揺 れ が あ る。 そ の 中で大 き く2つ
の グル ー プ が存在 す る よ うで あ る。1つ
日は, 中 国 的 な意 義 を もつ か,ま
た は,中
国 に関 連 した色 彩 名 群 で あ る。2つ
目は,
日本 に中国 文 化 が 渡 来 す る以 前 か ら存 在 して い た と思 われ る色 彩 名 群 で あ る。 音 声言 語 につ いては以 14前 か ら 日本 の こ と ば と して 存 在 して い た が
,記
録 す る た め の 文 字 言 語 と して は 中 国 か ら も ち込 ま れ た 漢 字 を 用 い て 使 用 して い た こ とか ら,中
国 文 化 と接 触 す る以 前 の 日本 文 化 の 色 も,中
国 文 化 か ら伝 わ つ た 漢 字 を用 い て 書 く こ と も多 か っ た とい うこ とに な る。 そ こで, 前 田 は 色 彩 語 を 次 の よ うに分 類 を した。 (第一 類 〉 (第二 類) (第二 類 〉 (第四類) (第五 類) 色 相 の ま ま を表 現 した もの。 主観 的 色 相 表 現 に よ る もの。 ① 観 的色 相,ま
た は,観
念 的色 彩 を示 した もの。 ② 抽 象 的 表 示 の た めの もの。 染材 ・ 染 法 を示 した もの。 自然 現 象 や 風 物 の名 称 をそ の ま ま色彩名 と した もの。 中国 的観 念 に よ る もの, ま た は,漢
字 の もつ 中国 的意義 をそ の ま ま で色 彩 名 と して い る もの。 伊 原 昭(1994,2011)は
,言
語 学 的 ア プ ロー チ と して 古 典 か ら色 彩 語 を抽 出 し,部
分 的 に整 理 しな が ら研 究 を進 め,命
名 や 成 法 に つ い て 考 察 して い る。 伊 原(1994)は
,色
彩 語 の使 わ れ 方 を 文 学 作 品 の 中 か ら上 代,平
安,虫
世,近
世 の 大 き く4つ
の 時 代 に分 け,特
徴 を示 して い る。 上代 の 色 【桓 武 天 皇 延 暦13年 (794年
)ま
で 】 上 代 は,自
然 に あ る色 を 自分 た ち の 生 活 に 取 り入 れ る時 代 で あ る。 実 際 に あ る 自然 の植 物 (そ の 葉,花 ,茎 ,幹 ,根 ,実
な ど)や
土 や 鉱 物 を 招 り付 け た り浸 み 込 ませ た り,顔
料 と して 使 つ た り しな が ら色 をつ く りだ した 。 植 物 か らつ く られ た も の の 例 に は,あ
か ね 色 が あ る。 植 物 で あ る茜 の 根 か らつ く られ た 火 の燃 え盛 る よ うな 赤 色 の名 前 で あ る。 この よ うに 上 代 の 色 彩 語 に は 原 料 名 が そ の ま ま 色 の名 前 に使 わ れ て い る こ とが 多 い 。 例 え ば,
ミ カ ン科 の黄 薬 の 内 皮 か らつ くっ た き は だ 色 。 楯 子 の 実 か らつ くっ た く ち な し色 。 団栗 の総 称 で あ る橡 か らつ く っ た つ る ば み 色 。 蘇 芳 (イ ン ド産 マ メ 科)の
木 質 部 か らつ くっ たす お う色 (但 し媒 溶 剤 の 種 類 に よ り4種
類 ほ どの 色 が あ る)。 桑 の 木 皮 や 根 の 皮 か らつ くった く わ ぞ め 。 胡 桃 の 果 皮 や 樹 皮 か らの く るみ ぞ め,柴
(栗 榛 な どの 殻 斗 科 樹 木)の
小 枝 交 じ り の葉 か ら しば ぞ め な どが あ げ られ て い る。 ま た,紅
花 の 頭 状 花 か らつ くっ た 紅 色 (コ ウ シ ョク)に
は,中
国 (呉)の
植 物 の 総 称 を藍 と称 して い た こ とか ら呉 の藍 か ら くれ な い (紅) と呼 ぶ こ と も あ る な ど,中
国 の 文 化 と混 ざ り合 つ た も の も あ る。 ま た,中
国 と の 文 化 の 交 流 か ら文 字 言 語 (漢 字)を
丈 化 に 取 り入 れ た た め に,色
に 関 す る別 の 概 念 も文 化 の 中 に 入 つ て き た 。 陰 陽 五 行 説 に か か わ る青・ 赤・ 黄・ 白0黒
の5色
で あ る。 陰 陽 五 行 説 で は,そ
れ ぞ れ の 色 を次 の よ うに あ らわ して い る。 青 は 春 に な り成 長 す る草 木 の新 緑 の 色,赤
は 燃 え盛 る火 の色,黄
は 大 地 の 光 る よ うな 色,自
は 陰 。西 の意 味 を 表 し夕 暮 れ 時 の は っ き り しな い 物 の 色,そ
して 黒 は,窓
と煙 の 合 字 を使 い 窓 か ら煙 が 出 て ふ す ぶ られ 煤 で 黒 くな る色 で あ る。 しか し,日
本 に も大 和 言 葉 に お い て の 色 や 日本 文 化 で の 価 値 づ け も され て お り食 い違 う 点 も あ る。 例 え ば,中
国 の 五 行 説 で は黄 は 中央 に位 置 し,最
も重 ん じ られ た 色 で あ る。 黄河