﹃
往
生
拾
因
﹄
に
記
さ
れ
る
五
逆
に
つ
い
て
の
一
考
察
難
波
教
行
は じ め に ﹃ 仏 説 無 量 寿 経 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 大 経 ﹄ と 称 す ︶ に 説 か れ る 第 十 八 願 と そ の 成 就 文 に あ る ﹁ 唯 除 五 逆 謗 正 法 ﹂ と い う 経 言 を 親 鸞 ︵ 一 一 七 三 — 一 二 六 二 ︶ が ど の よ う に 聞 思 し た の か を 、 特 に ﹃ 顕 浄 土 真 実 教 行 証 文 類 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 教 行 信 証 ﹄ と 称 す ︶ ﹁ 顕 浄 土 真 実 信 文 類 三 ﹂ ︵ 以 下 、﹁ 信 巻 ﹂ と 称 す ︶ 後 半 の 展 開 に 基 づ い て 考 察 す る こ と が 著 者 の 近 年 の 研 究 課 題 で あ る 。 小 論 で は 、 親 鸞 が ﹁ 信 巻 ﹂ の 最 巻 末 に 示 し て い る 五 逆 に つ い て の 記 ︶1 ︵ 述 ︵ 以 下 、﹁ 五 逆 の 文 ﹂ と 称 す ︶2 ︵ ︶ に 託 し た 自 覚 内 容 を 正 確 に 読 む た め の 前 段 階 と し て 、 そ の 文 が 基 づ い て い る 永 観 ︵ 一 〇 三 三 — 一 一 一 一 ︶ の ﹃ 往 生 拾 因 ﹄﹁ 第 二 因 ﹂ に 記 さ れ て い る 五 逆 に つ い て 考 察 を 試 み た い ︵ た だ し 、 親 鸞 は 永 観 の 名 も ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 著 名 も 示 し て い な い ︶ 。 ま ず 第 一 節 で 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 特 徴 を 考 察 す る 。 後 述 す る よ う に 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 に つ い て の 文 は 、 意 図 的 に 幾 つ か の 経 論 か ら 構 成 さ れ た こ と に よ り 、 仏 教 通 説 の 五 逆 と は 異 な る 内 容 を 有 し て い る 。 そ の た め 、 永 観 が ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 五 逆 の 内 容 を 記 す に あ た っ て 、 ど の 経 論 に 基 づ い て い る の か を 順 を 追 っ て 確 か め(難波) 28 て い く こ と と す る 。 た だ し 、 そ の 文 の 構 造 は や や 複 雑 で あ る の で 、 考 察 は 煩 瑣 に な る こ と を 免 れ な い 。 し た が っ て 、 読 み や す さ を 考 慮 し て 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ が 基 づ く 経 論 を 引 用 す る 際 、 特 に 注 目 す べ き 箇 所 に 傍 線 を 附 し 、 適 宜 改 行 し た 。 ま た 資 料 と し て 、﹁ 五 逆 の 文 ﹂ と ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 文 、 そ し て ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ が 基 づ く 慧 沼 等 の 文 、 さ ら に そ れ ら の 典 拠 と な る 文 を 図 表 化 し た も の を 小 論 の 後 に 附 し た 。 次 に 第 二 節 で は 、 永 観 の 五 逆 の 了 解 を 、 永 観 が 念 仏 を 修 し 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ を 執 筆 し た 背 景 と 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 文 脈 か ら 考 察 し た い 。 そ し て 、 こ れ ら の 考 察 を 通 し て 、 最 後 に ﹁ 信 巻 ﹂ 巻 末 の ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ に 言 及 す る こ と で 結 論 に 代 え た い 。 第 一 節 ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 特 徴 第 一 項 第 一 の 特 徴 永 観 は ﹃ 往 生 拾 因 ﹄﹁ 第 二 因 ﹂ に お い て 、 五 逆 ト 者 若 シ 依 ラ ハ 淄 州 ニ 五 逆 ニ 有 リ 二 ︶3 ︵ と 述 べ て 、 自 身 の 示 す 五 逆 が 淄 州 大 師 慧 沼 ︵ 六 四 八 — 七 一 四 ︶ に 依 っ て い る も の で あ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 し か し 実 際 に は 、 慧 沼 の 著 作 で あ る ﹃ 金 光 明 最 勝 王 経 疏 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 最 勝 王 経 疏 ﹄ と 称 す ︶ を 直 接 の 典 拠 と し て い る と こ ろ は 、﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ の 一 部 に 過 ぎ ず 、 そ の 他 の 大 部 分 の 記 述 は 永 観 自 身 が 別 の 経 論 を 組 み 合 わ せ て 案 出 し た 五 逆 で あ る 。 つ ま り 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 と は 、 部 分 的 に 慧 沼 に 依 っ て い る が 、 永 観 の 独 自 の 取 捨 選 択 に よ っ て 構 成 さ れ て い る と い う こ と で あ る 。 そ し て 、 そ れ を 親 鸞 が ほ ぼ 全 文 そ の ま ま ﹁ 信 巻 ﹂ に 記 し た と い う こ と は 、 仏 教 通 説 で 言 わ れ る 五 逆 で は な く 、 こ の 永 観 の 案 出 し た 特 徴 的 な 五 逆 に つ い て の 文 に 基 づ か な け れ ば 、﹁ 信 巻 ﹂ に お い
て 自 身 の 自 覚 内 容 を 託 す こ と が で き な か っ た と い う こ と を 物 語 っ て い る 。 そ う で あ る か ら 、 永 観 の 記 し た 五 逆 の 特 徴 を 考 察 す る こ と は 、﹁ 五 逆 の 文 ﹂ の 意 義 の 一 端 を 考 え る こ と に も 繫 が る と 思 わ れ る の で あ る 。 さ て 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 最 大 の 特 徴 は 、 そ れ が 二 種 挙 げ ら れ て い る こ と で は な い だ ろ う か 。 永 観 が 五 逆 を 二 種 挙 げ る 根 拠 は 、 永 観 自 身 が 述 べ て い る よ う に 、 慧 沼 に あ る 。 そ し て そ の 二 つ と は 、﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と ﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ で あ る 。 慧 沼 は 、﹃ 最 勝 王 経 疏 ﹄ の 第 三 巻 ・ 末 に お い て 、 依 遮 尼 乾 子 経 等 有 大 乗 五 逆 経 ① 悪 心 出 仏 身 血 ② 謗 正 法 破 和 合 僧 ③ 殺 阿 羅 漢 ④ ⑤ 殺 害 父 母 賛 曰 。 是 之 五 逆 三 乗 通 説 。 総 大 乗 不 共 逆 中 当 第 四 逆 ︶4 ︵ 。 ︵ 番 号 ① ∼ ⑤ 引 用 者 ︶ と 述 べ 、﹁ 五 逆 三 乗 通 説 ﹂ と ﹁ 大 乗 五 逆 ﹂ を 示 し て い る 。 慧 沼 に 依 れ ば 、﹁ 五 逆 三 乗 通 説 ﹂ ︵﹁ 通 説 ﹂ の 語 が 示 す よ う に 、 こ れ は 仏 教 ︿ 一 乗 か ら 三 乗 ﹀ の 五 逆 で あ る ︶ は 、﹃ 大 遮 尼 乾 子 所 説 経 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ と 称 す ︶ 等 に 説 か れ る ﹁ 大 乗 五 逆 ﹂ の 第 四 逆 に 位 置 付 け ら れ る 。 そ し て 、 こ の 慧 沼 の 五 逆 理 解 は 、﹁ 依 遮 尼 乾 子 経 ﹂ と あ る よ う に 、﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ 第 四 巻 の 次 の 箇 所 に 依 っ て い る 。 王 言 。 大 師 。 何 者 根 本 罪 。 答 言 。 大 王 有 五 種 罪 。 名 為 根 本 。 何 等 為 五 。 一 者 破 壊 塔 寺 焚 焼 経 像 。 或 取 仏 物 法 物 僧 物 。 若 教 人 作 見 作 助 喜 。 是 名 第 一 根 本 重 罪 。 若 謗 声 聞 辟 支 仏 法 及 大 乗 法 。 毀 呰 留 難 隠 覆 蔵 。 是 名 第 二 根 本 重 罪 。 若 有 沙 門 信 心 出 家 。 剃 除 鬚 髪 身 著 染 衣 。 或 有 持 戒 或 不 持 戒 。 繫 閉 獄 枷 鎖 打 縛 。 策 役 駆 使 責 諸 発 調 。 或 脱 袈 裟 令 還 俗 。 或 断 其 命 。 是 名 第 三 根 本 重 罪 。 於 五 逆 罪 若 作 一 業 。 是 名 第 四 根 本 重 罪 。
(難波) 30 謗 無 一 切 善 悪 業 報 。 長 夜 常 行 十 不 善 業 。 不 畏 後 世 。 自 作 教 人 堅 住 不 捨 。 是 名 第 五 根 本 重 罪 。 大 王 当 知 。 若 犯 如 是 根 本 重 罪 而 不 自 悔 。 決 定 焼 滅 一 切 善 根 。 趣 大 地 獄 受 無 間 苦 ︶5 ︵ 。 慧 沼 と 永 観 に よ っ て ﹁ 大 乗 五 逆 ﹂ と 言 わ れ る 箇 所 は 、 そ の 典 拠 で は ﹁ 五 逆 ﹂ ︵ ま た は 五 逆 を 示 す 五 無 間 ︶ と い う 語 が 用 い ら れ て お ら ず 、﹁ 根 本 重 罪 ﹂ と 言 わ れ る も の で あ っ た 。 そ し て 、 そ の ﹁ 根 本 重 罪 ﹂ の 一 つ が ﹁ 五 逆 ﹂ な の で あ る ︵ 五 逆 は 第 四 根 本 重 罪 に 位 置 付 け ら れ て い る ︶ 。 た だ し 、 慧 沼 は 恣 意 的 に ﹁ 根 本 重 罪 ﹂ を ﹁ 大 乗 五 逆 ﹂ に 言 い 換 え て い る の で は な い 。 そ の よ う に 了 解 し た の は 、 慧 沼 の 師 で あ る 慈 恩 大 師 基 ︵ 六 三 二 — 六 八 二 ︶ で あ る 。 基 は 、﹁ 業 障 ﹂ の 内 実 を 示 す な か で 、 先 に 引 用 し た ﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ の 文 に 依 っ て 、 そ も そ も は 五 種 の ﹁ 根 本 重 罪 ﹂ で あ っ た も の を 、 ﹃ 妙 法 華 経 玄 賛 ﹄ 第 三 巻 ・ 末 に お い て 、 業 障 者 依 遮 尼 乾 子 経 有 五 種 逆 。 一 破 塔 壊 寺 焚 焼 経 像 。 竊 盗 及 用 三 宝 財 物 。 二 謗 三 乗 法 言 非 聖 法 。 障 礙 留 難 隠 弊 覆 蔵 。 三 於 一 切 出 家 人 所 。 若 有 戒 無 戒 持 戒 破 戒 打 罵 訶 責 。 説 其 過 失 禁 閉 牢 獄 。 或 脱 袈 裟 令 還 俗 。 責 役 駈 使 債 其 発 調 断 其 命 根 故 。 大 集 経 言 説 一 破 戒 比 丘 過 失 。 過 出 万 億 仏 身 血 。 四 殺 父 害 母 殺 阿 羅 漢 出 仏 身 血 破 和 合 僧 。 五 起 大 邪 見 謗 無 因 果 。 長 夜 常 行 十 不 善 業 。 此 之 五 種 唯 於 大 乗 名 五 逆 業 障 ︶6 ︵ 。 と ﹁ 大 乗 に 於 て 五 逆 0 0 業 障 と 名 づ く ﹂ と 述 べ て い る 。 こ の よ う に ﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ に 示 さ れ る 通 説 の 五 逆 を 、 二 重 傍 線 部 箇 所 の よ う に 具 体 的 な 行 為 の 内 容 に 置 き 換 え る こ と で 、 基 は ﹁ 根 本 重 罪 ﹂ を ﹁ 五 逆 業 障 ﹂ と し て 自 然 な 形 で 示
し て い る ︵ も し 置 き 換 え て い な け れ ば 、 五 逆 業 障 の な か に 五 逆 が 位 置 付 け ら れ る こ と に な り 、 非 常 に 不 自 然 に な る ︶ 。 そ し て 慧 沼 は 、﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ の 経 説 と 、 師 で あ る 基 の こ の 説 示 に 基 づ い て 、﹃ 最 勝 王 経 疏 ﹄ 第 三 巻 ・ 末 に 、 次 の よ う に ﹁ 大 乗 経 所 説 五 逆 ﹂ を 示 す の で あ る 。 経 無 知 謗 正 法 不 孝 父 母 作 如 是 衆 罪 我 今 悉 懺 悔 。 賛 曰 。 第 十 一 懺 由 五 逆 所 造 悪 業 。 依 大 乗 経 所 説 五 逆 。 非 三 乗 通 説 。 言 五 逆 者 。 準 遮 尼 乾 子 経 。 一 不 得 破 塔 壊 寺 焚 焼 経 像 及 用 盗 三 宝 財 物 。 二 謗 三 乗 法 言 非 聖 教 。 障 礙 留 難 隠 覆 蔵 。 三 於 一 切 出 家 人 所 若 有 戒 無 戒 持 戒 破 戒 打 罵 訶 嘖 。 説 過 禁 閉 還 俗 駆 使 責 調 断 命 。 四 不 得 殺 父 害 母 出 仏 身 血 破 和 合 僧 殺 阿 羅 漢 。 五 不 得 謗 無 因 果 長 夜 常 行 十 不 善 業 。 今 此 謗 法 即 第 二 逆 。 不 孝 父 母 即 第 四 逆 ︶7 ︵ 。 こ れ を 承 け て 永 観 は 、 さ ら に 右 記 二 重 線 部 の ﹁ 通 説 ﹂ と い う 二 文 字 を 取 り 除 き 、 一 ニ 者 三 乗 ノ 五 逆 ︶8 ︵ と 述 べ る の で あ る 。 す な わ ち 永 観 は 、 慧 沼 の こ の ﹁ 三 乗 通 説 に は 非 ず ﹂ に 代 表 さ れ る 教 示 に 基 づ き 、﹁ 三 乗 の 0 0 0 五 逆 ﹂ の 意 味 を 、﹁ 仏 教 通 説 の 0 0 0 0 0 五 逆 ﹂ ︵ 一 乗 か ら 三 乗 ま で ︶ か ら ﹁ 小 乗 の 0 0 0 五 逆 ﹂ ︵ 三 乗 の み ︶ へ と 変 え 、﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ と 対 応 す る 形 で 示 し た の で あ る ︶9 ︵ 。 以 上 の よ う な 背 景 が あ っ て 、 永 観 は こ の 二 種 の 五 逆 の 関 係 を 対 等 な も の と 看 做 し 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 示 す こ と と な っ た 。 こ れ が ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 第 一 の 特 徴 で あ る 。
(難波) 32 第 二 項 第 二 の 特 徴 次 に 注 目 し た い の は 、 永 観 の 挙 げ る ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ が 特 徴 的 な 点 で あ る 。 永 観 は 慧 沼 の ﹃ 最 勝 王 経 疏 ﹄ に 依 っ て い る の で 、 そ こ に 記 さ れ て い る ﹁ 三 乗 通 説 の 五 逆 ﹂ の 内 容 ︵﹁ 経 ① 悪 心 出 仏 身 血 ② 謗 正 法 破 和 合 僧 ③ 殺 阿 羅 漢 ④ ⑤ 殺 害 父 母 ﹂︶ は 当 然 知 っ て い る 。 ま た 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に お い て ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ の 後 に 記 さ れ る ﹁ ︵ 三 乗 の ︶ 五 無 間 の 同 類 の 業 ︶10 ︵ ﹂ の 根 拠 と な る ﹃ 阿 毘 達 磨 舎 論 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 舎 論 ﹄ と 称 す ︶ 第 十 七 巻 に も 、 五 逆 の 内 容 は 、 言 無 間 業 者 。 謂 五 無 間 業 。 其 五 者 何 。 一 者 害 母 。 二 者 害 父 。 三 者 害 阿 羅 漢 。 四 者 破 和 合 僧 。 五 者 悪 心 出 仏 身 血 ︶11 ︵ 。 と 説 か れ て い る 。 こ の よ う に 、 仏 教 通 説 の 五 逆 は 五 つ の 行 為 と し て 説 示 さ れ 、 そ の 行 為 が 起 こ っ て く る 根 拠 に は 言 及 さ れ な い 。 し か し 永 観 は 、﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ を 述 べ る 際 、 そ れ ら の 説 示 に 基 づ く の で は な く 、﹃ 大 乗 大 集 地 蔵 十 輪 経 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 十 輪 経 ﹄ と 称 す ︶ 第 三 巻 の 次 の 経 説 に 基 づ い て 五 逆 を 示 し て い る の で あ る 。 有 五 無 間 大 罪 悪 業 。 何 等 為 五 。 一 者 故 思 殺 父 。 二 者 故 思 殺 母 。 三 者 故 思 殺 阿 羅 漢 。 四 者 倒 見 破 声 聞 僧 。 五 者 悪 心 出 仏 身 血 。 如 是 五 種 。 名 為 無 間 大 罪 悪 業 。 若 人 於 五 無 間 中 。 隨 造 一 種 不 合 出 家 及 受 具 戒 ︶12 ︵ 。 こ の 経 説 は 、﹁ 五 無 間 大 罪 悪 業 ﹂ と い う 、 も し 一 つ で も 悪 業 を 造 っ た 者 は 出 家 受 戒 を 許 さ れ ず 、 ま た そ れ を 破 っ て 受 戒 さ せ た 師 は 罪 を 犯 し た こ と に な る こ と を 明 か す と い う 文 脈 で 説 か れ て い る ︶13 ︵ 。﹃ 十 輪 経 ﹄ に 説 か れ る 五 逆 の 特 徴 は 、 五 逆 の す べ て の 行 為 の 前 に 、﹁ 故 思 ﹂﹁ 倒 見 ﹂﹁ 悪 心 ﹂ と い う 言 葉 の い ず れ か が 附 さ れ 、 行 為 と と も に 、 そ の 行 為 に 至 る 根 拠 が 示 さ れ て い る 点 で あ る 。 ほ か の 経 論 に 示 さ れ る 五 逆 が 行 為 だ け に 言 及 す る こ と に 鑑 み れ ば 、 こ れ は 特 徴 的
で あ る と 言 わ な け れ ば な ら な い 。 こ の 箇 所 を 永 観 は 意 図 的 に 選 び 、﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と し て 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 一 ニ 者 三 乗 ノ 五 逆 謂 ク 一 ニ 者 故 思 ヲ 以 殺 シ 父 ヲ 二 ニ 者 故 思 シ テ 殺 シ 母 ヲ 三 ニ 者 故 思 シ テ 殺 ス 羅 漢 ヲ 四 ニ 者 倒 見 ヲ 以 破 ス 和 合 僧 ヲ 五 ニ 者 悪 心 ヲ 以 出 ス 仏 身 ヨ リ 血 ヲ ︶14 ︵ そ し て 永 観 は 、 そ れ が ﹁ 逆 ﹂ と な る 理 由 を 、 以 テ 背 キ 恩 田 ニ 違 フ 福 田 ニ 故 ニ 名 テ 之 ヲ 為 ス 逆 ト ︶15 ︵ と 述 べ 、﹁ 恩 田 に 背 き 福 田 に 違 ふ ﹂ と い う 点 で 押 さ え て い る 。 こ の ﹁ 恩 田 ﹂ と は 父 母 の こ と で 、﹁ 福 田 ﹂ と は 仏 ・ 和 合 僧 を 意 味 す る ︶16 ︵ 。 こ の 文 言 は 永 観 自 身 の 言 葉 で 記 し た も の で あ る が 、 お そ ら く 次 の ﹃ 舎 論 ﹄ の 教 説 に 依 り な が ら 、 逆 が ﹁ 逆 ﹂ と 言 わ れ る 所 以 を 示 し た も の で あ ろ う 。﹃ 舎 論 ﹄ 第 十 八 巻 に は 、 謂 害 父 母 是 棄 恩 田 。 如 何 有 恩 。 身 生 本 故 。 如 何 棄 彼 。 謂 捨 彼 恩 。 徳 田 謂 余 阿 羅 漢 等 。 具 諸 勝 徳 及 能 生 故 。 壊 徳 所 依 故 成 逆 罪 ︶17 ︵ 。 と 述 べ ら れ て い る 。 こ こ で 、 父 母 を 害 す る こ と が 逆 と な る 理 由 に つ い て は 、﹁ 身 生 本 故 ﹂ ︵ 身 を 生 ず る の 本 な る が 故 な ︶18 ︵ り ︶ と 言 わ れ 、 余 の 阿 羅 漢 等 を 害 す る こ と が 逆 と な る 理 由 に つ い て は 、﹁ 具 諸 勝 徳 及 能 生 故 ﹂ ︵ 諸 の 勝 徳 を 具 し 、 及 び 能 く ︹ 他 の 勝 徳 を ︺ 生 ず る が 故 な り ︶19 ︵ ︶ と 教 示 さ れ て い る 。 こ の こ と か ら 、﹁ 恩 田 に 背 き 、 福 田 に 違 ふ ﹂ と い う こ と は 、 自 己 存 在 そ の も の に 背 き 、 違 う こ と と 言 え る の で は な い だ ろ う か 。 以 上 の 点 か ら ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 第 二 の 特 徴 と し て 、 五 逆 が 単 な る 行 為 と し て 示 さ れ る の で は な く 、 行 為 の も と で あ る 自 己 存 在 の 思 い に 基 づ い て 起 こ る 事 柄 と し て 示 さ れ て い る 点 が 挙 げ ら れ る だ ろ う 。 第 三 項 第 三 の 特 徴 最 後 に 注 目 し た い の は 、﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ と ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ の 存 在 で あ る 。 永 観 は ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と ﹁ 大 乗 の
(難波) 34 五 逆 ﹂ を 示 す だ け で は な く 、 三 乗 の 五 逆 の 後 に ﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ を ﹃ 舎 論 ﹄ に 基 づ い て 示 し 、 大 乗 の 五 逆 の 後 に は 、 十 悪 に 言 及 し て 、 前 の 四 つ を 四 重 禁 で あ る と 述 べ た う え で 、 そ の 四 重 禁 が ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ に な る 場 合 を ﹃ 十 輪 経 ﹄ に 基 づ い て 示 し て い る 。 前 者 に 関 し て は 、﹃ 舎 論 ﹄ 第 十 八 巻 に 、 唯 無 間 罪 定 生 地 獄 。 諸 無 間 同 類 亦 定 生 彼 。 有 余 師 説 。 非 無 間 生 。 同 類 者 何 。 頌 曰 。 汚 母 無 学 尼 殺 住 定 菩 及 有 学 聖 者 奪 和 合 僧 縁 破 エ 壊 窣 波 是 無 間 同 類 論 曰 。 如 是 五 種 隨 其 次 第 是 五 無 間 同 類 業 體 。 謂 有 於 母 阿 羅 漢 尼 行 極 汚 染 謂 非 梵 行 。 或 有 殺 エ 害 住 定 菩 。 或 殺 学 聖 者 。 或 奪 僧 合 縁 。 或 破 窣 波 。 是 五 逆 同 類 。 ︶20 ︵ と 言 わ れ る ﹁ 五 逆 同 類 ﹂ の 罪 を 、 永 観 は 通 説 の 五 逆 の 一 々 に 当 て は め 、﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ を 提 示 し て い る 。 後 者 に 関 し て は 、﹃ 十 輪 経 ﹄ 原 文 で は 、﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ が 基 づ い て い た 箇 所 ︵﹃ 十 輪 経 ﹄ の 経 言 ︶ の す ぐ 後 に 、 五 逆 罪 を 犯 し た 者 の ほ か に 、 犯 し た 者 は 受 戒 出 家 が 許 さ れ な い と さ れ る ︶21 ︵ ﹁ 四 種 近 五 無 間 大 罪 悪 業 根 本 之 罪 ︶22 ︵ ﹂ ︵ 四 種 の 五 無 間 の 大 罪 悪 業 に 近 き 根 本 罪 ︶23 ︵ ︶ を 説 示 す る 箇 所 で あ っ た 。 永 観 は 、 十 悪 の 前 四 項 目 で あ る ﹁ 殺 ・ 盗 ・ 婬 ・ 妄 語 ﹂ を ﹁ 四 重 禁 ﹂ と し た う え で 、﹃ 十 輪 経 ﹄ に 説 か れ る 四 種 の 根 本 罪 が ﹁ 近 ︵ 五 ︶ 無 間 の 業 ﹂ と な る 場 合 を 示 す 文 と し て 次 の よ う に 述 べ て い る 。 次 ニ 十 悪 ト 者 身 三 口 四 意 三 如 常 十 カ 中 ニ 前 ノ 四 ヲ 名 ク 四 重 禁 ト 謂 ク 殺 盗 婬 妄 語 也
若 シ 依 ラ ハ 十 輪 経 ニ 於 テ 此 ノ 四 重 中 ニ 説 ク 近 無 間 ノ 業 ヲ 故 ニ 彼 ノ 経 ニ 云 一 ニ ハ 起 シ テ 不 善 ノ 心 ヲ 殺 害 ス 独 覚 ヲ 是 レ 殺 生 二 ニ ハ 婬 ス 羅 漢 尼 ヲ 是 レ 欲 邪 行 ナ リ 三 ニ ハ 侵 損 ス 所 ノ 施 ス 三 宝 ニ 財 物 ヲ 是 レ 不 與 取 ナ リ 四 ニ ハ 倒 見 ヲ 以 破 ス 和 合 僧 衆 ヲ 是 レ 虚 誑 語 ナ リ 略 鈔 ︶24 ︵ こ れ に よ っ て ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ で は 、﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ の 内 実 を 提 示 し た 後 、 十 悪 の な か で も 五 逆 に 近 い 罪 を 挙 げ る と い う 展 開 に な っ て い る 。 こ の よ う に 永 観 は 、﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂、 三 乗 の ﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂、 ﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂、 ﹁ 十 悪 ﹂ の な か の ﹁ 四 重 禁 ﹂ が ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と な る 場 合 を 挙 げ る の で あ る 。 つ ま り 永 観 は 、 慧 沼 に 依 っ て 二 種 の 五 逆 が あ る と 言 い な が ら 、 そ れ だ け に と ど ま ら ず 、 多 く の ﹁ 逆 ﹂ の 在 り 方 を 示 し て い る の で あ る 。 こ れ が 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 第 三 の 特 徴 で あ る 。 以 上 、 典 拠 を 確 か め る な か で 浮 か び 上 が っ て き た ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 特 徴 を 三 点 示 し て き た 。 纏 め る と 以 下 の と お り で あ る 。 第 一 の 特 徴 ⋮ ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と ﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ を 対 等 な も の と し て 、 五 逆 を 二 種 示 し て い る 点 第 二 の 特 徴 ⋮ 五 逆 を 単 に 行 為 と し て 示 す の で は な く 、 行 為 の 根 拠 で あ る 自 己 存 在 の 思 い に 関 わ る 事 柄 と し て 示 し て い る 点 第 三 の 特 徴 ⋮ ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と ﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ を 示 す に と ど ま ら ず 、﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ 及 び ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ ︵﹁ 十 悪 ﹂ の な か の 前 四 つ で あ る ﹁ 四 重 禁 ﹂ が ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と な る 場 合 ︶ を 示 し て 多 く の ﹁ 逆 ﹂ の 在 り 方 を 示 し て い る 点
(難波) 36 第 二 節 永 観 の 五 逆 の 了 解 第 一 項 永 観 の 無 常 観 と 危 機 意 識 前 節 に お い て 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 特 徴 を 、 そ の 典 拠 を 確 か め な が ら 考 察 し て き た 。 本 節 で は 、 永 観 が 五 逆 を ど の よ う に 了 解 し て い た の か を 、 永 観 が 念 仏 を 修 し 、 そ の 念 仏 が 往 生 の 因 と な る こ と を 示 し た ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ を 著 す に 至 っ た 背 景 と 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 内 容 と を 踏 ま え て 考 察 し た い 。 永 観 は 三 論 宗 の 僧 で あ っ た ︶25 ︵ 。 三 論 教 学 を 中 心 に 学 ぶ な か 、 永 承 五 年 ︵ 一 〇 五 〇 ︶ 、 永 観 の 年 齢 で 言 え ば 十 八 歳 以 後 は 学 問 研 究 の 合 間 に 念 仏 を 行 う よ う に な り 、 そ の 回 数 は 毎 日 一 万 遍 に 及 ん だ と 言 わ れ る 。 こ の よ う に 、 永 観 が 三 論 教 学 と 同 時 に 念 仏 を 修 す る よ う に な っ た の は 、 無 常 観 と 危 機 意 識 か ら で あ る と 考 え ら れ る 。 第 一 の 無 常 観 に つ い て は 、 末 法 の 到 来 を 深 刻 に 意 識 し た こ と と 、 師 深 観 ︵ 一 〇 〇 〇 — 一 〇 五 〇 ︶ と 養 父 元 命 ︵ 九 七 〇 — 一 〇 五 一 ︶ の 入 滅 が 影 響 し て い る 。 当 時 、 す な わ ち 末 法 到 来 第 一 年 と し て 考 え ら れ て い た 永 承 七 年 ︵ 一 〇 五 二 ︶ を 数 年 後 に 控 え た 永 承 年 間 ︵ 一 〇 四 六 — 一 〇 五 二 ︶ は 、 た と え ば 永 承 元 年 ︵ 一 〇 四 六 ︶ の 興 福 寺 焼 失 、 永 承 七 年 ︵ 一 〇 五 二 ︶ の 長 谷 寺 の 焼 失 、 永 承 六 年 か ら 七 年 ︵ 一 〇 五 一 — 一 〇 五 二 ︶ の 疫 病 の 流 行 な ど が あ り 、 末 法 到 来 は 広 く 現 実 の も の と し て 受 け 入 れ ら れ て い た 。 ま た 深 観 は 、 永 観 が 念 仏 を 始 め た 年 で あ る 永 承 五 年 に 死 去 し 、 元 命 も 翌 年 に 没 し て い る 。 ま た そ の 後 、 永 観 が 三 十 歳 を 過 ぎ た 頃 か ら 、 持 病 の 風 ふ う 痒 よ う = 風 ふ う 阿 あ ︵ 高 血 圧 神 経 痛 ︶ に 冒 さ れ た こ と も 無 常 を 観 じ た 一 因 と 見 受 け ら れ る 。 こ の 病 気 が 引 き 金 と な り 、 永 観 は 光 明 寺 に 七 、 八 年 の 間 蟄 居 す る 。 永 観 の 無 常 観 は 、 ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ 全 体 に 流 れ る も の で あ る が 、 特 に そ の 序 に 、
澄 シ 心 ヲ 於 小 水 ノ 魚 ニ キ 露 命 ノ 日 日 ニ 減 コ ト ヲ 係 テ 念 ヲ 於 処 ノ 羊 ニ 悲 ム 無 常 ノ 之 歩 歩 ニ 近 ク コ ト ヲ 況 ヤ 乎 世 間 ハ 春 来 ノ 夢 栄 華 何 ソ 実 ナ ラ ン 人 身 ハ 水 上 ノ 漚 ア ワ 浮 生 誰 レ カ 留 ラ ン 陰 カ ク レ シ 山 海 ニ 僊 モ 未 タ 免 レ 無 常 ノ 之 悲 ヲ 籠 リ シ 石 室 ニ 人 モ 終 ニ 遭 ヘ リ 別 離 ノ 之 キ ニ 実 ニ 一 生 ハ 仮 ノ 棲 カ 豈 ニ 期 ン ヤ 永 代 ヲ 乎 而 ル ニ 今 倩 ツ ラ 思 フ ニ 受 ケ 何 ノ 病 ヲ 招 ン ヤ 何 ノ 死 ヲ 哉 重 病 ト 悪 死 ト 一 何 ン ソ 痛 ン ヤ 哉 雪 山 不 死 ノ 薬 モ 験 ヲ 失 シ 耆 婆 医 王 ノ 方 モ 術 尽 キ ヌ 無 常 ノ 暴 風 ハ 不 ス 論 セ 神 僊 ヲ モ 奪 精 ノ 猛 鬼 ハ 不 択 ハ 貴 賤 ヲ 生 死 必 然 ナ リ 誰 ノ 人 カ 得 ン 免 コ ト ヲ ︶26 ︵ と 述 べ ら れ る と こ ろ に あ ら わ れ て い る だ ろ う 。 第 二 の 危 機 意 識 に つ い て は 、 無 常 観 の 理 由 に 挙 げ た 末 法 到 来 の 意 識 、 及 び 前 述 の 深 観 と 元 命 の 死 も 無 関 係 で は な い と 思 わ れ る が 、 当 時 の 仏 教 界 へ の 痛 烈 な 批 判 が そ の 根 底 を な し て い る と 考 え ら れ る 。 こ れ に つ い て は 、 特 に ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 跋 文 に 、 真 言 止 観 ノ 之 行 ハ 道 幽 ニ シ テ 易 ク 迷 ヒ 三 論 法 相 ノ 之 教 ハ 理 奥 シ テ 難 シ 悟 リ 不 ン ハ 勇 猛 精 進 ニ 者 何 ソ 修 セ ン 之 ヲ 不 聡 明 利 智 ニ 者 誰 カ 学 ン 之 ヲ 朝 家 カ 簡 定 シ テ 賜 ヒ 其 ノ 賞 ヲ 学 徒 競 望 シ テ 増 ス 其 ノ 欲 ヲ 暗 シ テ 三 密 ノ 行 ニ 忝 ク 登 リ 偏 照 ノ 之 位 ニ 飾 テ 毀 戒 ノ 質 ヲ 誤 テ 居 ス 持 律 ノ 之 職 シ キ ニ 実 ニ 世 間 ノ 之 仮 名 ハ 智 者 ノ 所 ナ リ 厭 フ 也 ︶27 ︵ と 記 さ れ る と こ ろ に 端 的 に あ ら わ れ て い る と 言 え よ う 。 永 観 は 真 言 止 観 の 行 は 迷 い 易 く 、 三 論 法 相 の 教 理 は 悟 り 難 く 、﹁ 勇 猛 精 進 ﹂﹁ 聡 明 利 智 ﹂ の 者 で な け れ ば そ れ を 修 し 、 学 び 得 な い と 言 う 。 し か し 現 実 に は 、 僧 侶 た ち が 、 皇 室 や 公 家 か ら の 褒 賞 を 賜 う こ と を 競 い 求 め 、 冥 利 の 虜 と な り 、 内 実 は 伴 わ な い に も 拘 わ ら ず 外 見 を 飾 り 、 高 位 高 官 に 頓 着 し て い る と 永 観 は 批 判 す る 。 そ し て 、 そ の よ う な 姿 は 世 間 の 仮 名 に 迷 わ さ れ た も の で あ り 、 智 者 の 厭 う と こ ろ で あ る と 喝 破 す る の で あ る 。 先 の 無 常 観 と こ の よ う な 危 機 意 識 に よ っ て 、 永 観 は 念 仏 を 修 す る 者 と な り 、 ま た そ れ が 序 と 跋 文 に あ ら わ れ て い る こ と か ら 、 こ の 無 常 観 と 危 機 意 識 は ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ を 貫 く も の と 言 え よ う 。 永 観 は ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ 劈 頭 に 、 そ の 題 号 と 号 を 、 往 生 拾 因 念 仏 宗 永 観 集 ︶28 ︵
(難波) 38 と 記 し 、﹁ 三 論 宗 永 観 ﹂ で は な く ﹁ 念 仏 宗 永 観 ﹂ と 名 告 っ て い る 。 こ れ に は 、 他 宗 に 対 し て 念 仏 宗 を 開 く と い う 意 識 が 、 と り た て て あ る わ け で は な か っ た と 先 学 に 指 摘 さ れ て い る が ︶29 ︵ 、 そ れ で も そ こ に は 念 仏 を 宗 と す る と い う 永 観 の 自 覚 が 窺 わ れ る 。 そ し て 永 観 が 念 仏 と 述 べ る と き 、 そ れ が 称 名 念 仏 で あ る こ と が ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 序 の 次 の 文 に 示 さ れ て い る 。 依 テ 道 綽 ノ 之 遺 誡 ニ 火 急 ニ 称 名 シ 順 シ テ 懐 感 ノ 旧 儀 ニ 励 声 ニ 念 仏 シ 有 ル 時 ハ 五 体 ヲ 投 テ 地 ニ 称 念 シ 有 時 ハ 合 掌 ヲ 当 テ ヽ 額 ニ 専 念 セ ヨ 凡 ソ 厥 レ 一 切 ノ 時 処 ニ 一 心 ニ 称 念 ス ヘ シ 依 テ 於 小 縁 ニ 不 レ 退 セ 大 事 ヲ 難 ク シ テ 値 ヒ 一 ヒ 遇 ヘ リ 豈 ニ 惜 ン ヤ 身 命 ヲ 念 仏 ノ 一 行 ヲ 開 シ テ 為 ス 十 因 ト ︶30 ︵ こ れ ら の こ と か ら 永 観 は 、 無 常 と 危 機 を 突 破 す る 行 と し て 称 名 念 仏 を 掲 げ る の で あ り 、 そ の 念 仏 が 往 生 の 因 に な る 理 由 を 十 因 に 開 く の で あ る 。 第 二 項 念 仏 に よ る 滅 罪 さ て 、 永 観 が 五 逆 に 言 及 す る の は 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の ﹁ 第 二 因 ﹂ に お い て で あ る 。 永 観 は そ の 冒 頭 に 、 第 二 一 心 ニ 称 念 上 レ ハ 阿 弥 陀 仏 ノ 衆 罪 消 滅 ス ル カ 故 ニ 必 ス 得 往 生 ヲ ︶31 ︵ と 述 べ 、﹁ 一 心 ﹂ に 阿 弥 陀 仏 を 称 念 す れ ば 衆 罪 が 消 滅 す る の で あ る か ら 、 必 ず 往 生 を 得 る こ と を 示 し て い る 。 そ し て そ の 教 証 と し て 永 観 は 、 観 経 ニ 云 ク 但 タ 聞 ス ラ 仏 名 二 菩 ノ 名 ヲ 除 ク 無 量 劫 生 死 ノ 之 罪 ヲ 何 ニ 況 ヤ 憶 念 ヲ ヤ 又 説 テ 下 品 ヲ 云 ク 或 ハ 有 テ 衆 生 毀 犯 セ ン 五 戒 八 戒 及 ヒ 具 足 戒 ヲ 如 ノ 是 ノ 愚 人 偸 ミ 僧 物 ヲ 盗 現 前 ノ 僧 物 ヲ 不 浄 説 法 シ 乃 至 作 リ 五 逆 十 悪 ヲ 臨 テ 命 終 ノ 時 ニ 遇 テ 善 知 識 称 カ 仏 名 ヲ 故 ニ 於 念 念 ノ 中 ニ 除 キ 八 十 億 劫 ノ 生 死 ノ 之 罪 ヲ 命 終 ノ 之 後 即 得 往 生 ヲ 略 鈔 ︶32 ︵ と ﹃ 仏 説 観 無 量 寿 経 ﹄ ︵ 以 下 、﹃ 観 経 ﹄ と 称 す ︶ 流 通 分 の 文 と 、﹃ 観 経 ﹄ 下 品 の 文 を 略 鈔 し た 文 を 引 い て い る 。 そ し て
永 観 は 、 こ こ で 言 わ れ る ﹁ 僧 物 ﹂ と ﹁ 現 前 僧 物 ﹂ と に つ い て 釈 し た 後 に 、 五 逆 に つ い て 詳 細 に 述 べ 、 十 悪 に も 言 い 及 ぶ の で あ る 。 そ の 内 容 は 前 節 で 確 認 し た と お り で あ る が 、 永 観 は そ の 後 、 設 ヒ 有 ト モ 此 レ 等 ノ 重 罪 悪 業 至 シ テ 心 ヲ 信 楽 シ 称 念 ス レ ハ 南 無 阿 弥 陀 仏 南 無 阿 弥 陀 仏 ト 於 テ 念 念 ノ 中 ニ 皆 得 消 滅 ス ル コ ト ヲ 何 ニ 况 ヤ 余 罪 ヲ ヤ ● ︶33 ︵ と た と え こ れ ら の 重 罪 が あ っ て も 、 称 名 念 仏 に よ っ て 五 逆 ・ 十 悪 の 罪 が 消 滅 す る と 言 う 。 そ し て 、 五 逆 ・ 十 悪 と 呼 ば れ る 大 罪 が 消 滅 す る の で あ る か ら 、 そ れ よ り 軽 い 余 罪 が 消 滅 す る の は 当 然 で あ る と 言 う 。 つ ま り 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 文 脈 で 、 五 逆 の み な ら ず 、 十 悪 に つ い て も 述 べ る の は 、 称 名 念 仏 に よ っ て 全 て の 罪 が 消 滅 す る こ と を 強 調 す る た め で あ る 。 言 い 換 え る な ら ば 、 永 観 に お い て 五 逆 、 あ る い は 十 悪 と は 、 念 仏 に よ っ て 消 滅 さ せ る こ と が で き る 罪 な の で あ る 。 ま た 永 観 は 、 自 身 の 滅 罪 観 を 、 如 キ ハ 彼 ノ 大 荘 厳 仏 滅 後 ノ 四 悪 比 丘 ノ 十 万 億 歳 四 念 処 観 ヲ 動 修 精 進 ス ル コ ト 如 シ 救 フ カ 頭 燃 ヲ 而 レ ト モ 小 乗 ノ 行 無 カ 滅 罪 故 ニ 還 マ タ 堕 ス 無 間 ニ 由 テ 此 ニ 応 ニ 信 ス 大 乗 滅 罪 ノ 之 方 法 弥 陀 ノ 一 念 ノ 之 功 徳 ヲ ● ︶34︵ と 述 べ 、 小 乗 の 行 で は 罪 を 滅 す る こ と が で き ず 、 地 獄 に 堕 す こ と に 対 し て 、 称 名 念 仏 は ﹁ 大 乗 滅 罪 の 方 法 ﹂ で あ る と 示 し て い る 。 こ れ は 詰 ま る と こ ろ 、 罪 を 消 滅 し な け れ ば 往 生 を 得 る こ と は で き な い と い う 往 生 観 で あ り 、 滅 罪 が 永 観 に と っ て 極 め て 重 要 な 要 素 で あ っ た こ と が 窺 わ れ る 。 と こ ろ で 、 永 観 は 念 仏 を 称 名 念 仏 と す る も の の 、 た だ 単 に そ れ を ﹁ 南 無 阿 弥 陀 仏 ﹂ と 声 に 出 す 行 で あ る と 考 え て い た わ け で は な い 。 こ の こ と は 永 観 が 、 往 生 の 十 因 の 全 て に お い て ﹁ 一 心 0 0 称 念 阿 弥 陀 仏 ⋮ ⋮ 故 必 得 往 生 ﹂ と 述 べ 、 ﹁ 称 念 阿 弥 陀 仏 ﹂ の 前 に ﹁ 一 心 ﹂ を 附 し て い る こ と か ら も 窺 わ れ よ う 。 つ ま り 、 称 名 念 仏 は ﹁ 一 心 ﹂ に 行 わ れ な け れ ば な ら な い こ と が 示 さ れ て い る の で あ る 。 そ し て こ の ﹁ 一 心 ﹂ は 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の な か で は 三 昧 を 意 味 す る 。 こ れ に つ い て は ﹁ 第 八 因 ﹂ を 中 心 に 、﹁ 第 七 因 ﹂ か ら ﹁ 第 九 因 ﹂ に 渡 っ て 論 じ ら れ て い る 。 今 そ れ ら の 内 容 を 詳 細 に 検 討 す
(難波) 40 る こ と は で き な い が 、﹁ 第 七 因 ﹂ か ら ﹁ 第 九 因 ﹂ ま で の 標 章 の 文 に よ っ て 流 れ を 追 っ て み た い 。 第 七 一 心 ニ 称 念 シ 上 レ ハ 阿 弥 陀 仏 ヲ 三 業 相 応 ノ 故 ニ 必 ス 得 往 生 ヲ ● ︶35︵ 第 八 一 心 ニ 称 念 上 レ ハ 阿 弥 陀 仏 ヲ 三 昧 発 得 ノ 故 ニ 必 得 往 生 コ ト ヲ ● ︶36 ︵ 第 九 一 心 ニ 称 念 阿 弥 陀 仏 ヲ 法 身 同 体 ノ 故 ニ 必 ス 得 往 生 ● ︶37︵ こ こ に 各 章 の キ ー ワ ー ド 語 と し て ﹁ 三 業 相 応 ﹂﹁ 三 昧 発 得 ﹂﹁ 法 身 同 体 ﹂ が 示 さ れ て い る 。﹁ 第 七 因 ﹂ に お い て 、 永 観 は ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 念 仏 が 称 名 念 仏 で あ る こ と を 明 ら か に す る の で あ る が 、 そ れ は 称 名 念 仏 だ け が 三 業 ︵ 身 ・ 口 ・ 意 ︶ 相 応 す る か ら で あ る と い う 了 解 に 基 づ い て い る 。 そ し て 永 観 は 、 三 業 相 応 に よ っ て 余 念 が 交 じ ら ず 、 専 念 が 発 起 す る と 言 い 、 ま た 、 専 念 が 発 起 し な け れ ば 何 度 称 名 念 仏 を 行 じ て も 往 生 を 得 な い と 述 べ て い る 。 ﹁ 第 八 因 ﹂ に お い て は 、 一 心 専 念 の 念 仏 は 口 称 三 昧 で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。 こ れ に よ っ て 、 阿 弥 陀 仏 を 称 す る の は 三 昧 を 得 る た め で あ る と い う 永 観 の 了 解 が 窺 わ れ る 。 ま た 永 観 は ﹁ 第 八 因 ﹂ を 閉 じ る に 際 し 、 十 因 之 興 意 在 リ 斯 ノ 因 ニ 不 シ テ 愛 セ 身 命 ヲ 但 惜 メ 三 昧 ヲ 若 シ 愛 セ ハ 宝 地 ヲ 必 ス 生 ス 浄 土 ニ 思 テ 之 ヲ 応 知 ︶38 ︵ と 特 別 に 述 べ て い る よ う に 、 三 昧 発 得 を 十 因 の な か で 中 心 の 因 で あ る と 考 え て い た 。 そ れ で は な ぜ 三 昧 発 得 が 重 要 な の だ ろ う か 。 そ れ が ﹁ 第 九 因 ﹂ の 主 題 で あ り 、 三 昧 発 得 に よ り 自 己 と 阿 弥 陀 仏 は 法 身 の レ ヴ ェ ル で は 同 体 で あ る こ と を 証 悟 す る こ と が で き る か ら で あ る と 示 さ れ て い る 。 ﹁ 第 七 因 ﹂ か ら ﹁ 第 九 因 ﹂ ま で の 内 容 か ら 、 永 観 が 称 名 念 仏 を 勧 め る の は 、 称 名 念 仏 に よ っ て ﹁ 一 心 ﹂ ︵ 専 心 ↓ 三 昧 発 得 ↓ 法 身 同 体 の 証 悟 ︶ を 発 起 す る こ と が で き る か ら で あ る と 考 え る こ と が で き る 。 こ こ に 永 観 は 自 身 の 名 に ﹁ 念 仏 宗 ﹂ を 冠 し な が ら 、 三 論 宗 に 立 脚 し 、 仏 道 実 践 の 方 法 と し て 称 名 念 仏 を 修 し て い た と い う こ と が 了 解 で き る の で あ る 。
し た が っ て 、 永 観 に 依 れ ば 、 五 逆 と 十 悪 の 罪 が 消 滅 す る と い っ て も 、 念 仏 の 力 用 に よ る と い う よ り 、 三 昧 発 得 を 中 心 と し た ﹁ 一 心 ﹂ を 根 拠 と し て 消 滅 す る と い う こ と で あ る 。 永 観 に と っ て こ の ﹁ 一 心 ﹂ と は 、﹁ 故 思 ﹂﹁ 倒 見 ﹂﹁ 悪 心 ﹂ と 相 反 す る 心 で あ っ た に 違 い な い 。 永 観 に と っ て は 、 こ の ﹁ 一 心 ﹂ の 発 起 こ そ が 重 要 で あ っ た た め 、 た と え ﹁ 故 思 ﹂ 等 の 心 を 起 こ し て も 、 後 に 称 名 念 仏 を 行 じ 、 ま た ﹁ 一 心 ﹂ を 発 起 す れ ば 罪 が 消 滅 す る と 考 え て い た と 思 わ れ る 。 こ こ に 、 永 観 が わ ざ わ ざ ﹃ 十 輪 経 ﹄ に 依 っ て ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ を 示 す 理 由 も 窺 わ れ る の で は な か ろ う か 。 こ の こ と に 関 連 し て 、﹁ 第 十 因 ﹂ に 記 さ れ る 、﹃ 大 経 ﹄ に 説 か れ る 第 十 八 願 の 唯 除 の 文 と ﹃ 観 経 ﹄ の 下 品 下 生 の 経 説 と の 矛 盾 に 対 す る 永 観 の 見 解 を 確 か め て お き た い 。 永 観 は 、 釈 ニ 有 リ 十 五 家 互 ニ 為 コ ト ハ 是 非 ヲ 恐 テ 文 ノ 繁 雑 ヲ 略 シ テ 而 不 述 ヘ 今 マ 試 ニ 釈 シ テ 云 彼 ノ 本 願 ノ 中 ニ ハ 除 ク 十 念 ノ 後 造 レ ル 五 逆 ヲ 者 ヲ 由 テ 一 念 ノ 悪 ニ 滅 ル カ 諸 善 ヲ 故 ニ 観 経 ハ 不 爾 故 ニ 不 相 違 セ ● ︶39︵ と ﹃ 釈 浄 土 群 疑 論 ﹄ に 記 さ れ る 十 五 説 に つ い て は 文 が 繁 雑 に な る の を 恐 れ て 論 じ な い と 断 っ た う え で 、 自 身 の 見 解 を 示 し て い る 。 永 観 は 、 本 願 に 五 逆 と 謗 正 法 が 除 か れ る の は 、 十 念 の 後 の 五 逆 で あ る か ら と 述 べ 、 ま た 一 念 の 悪 に よ っ て 諸 善 を 滅 す る と 述 べ て い る 。 こ こ で 五 逆 が ﹁ 一 念 の 悪 ﹂ と 言 い 換 え ら れ て い る こ と に 注 目 し て み て も 、 永 観 は 五 逆 と 言 う と き 、 単 に 行 為 を 指 す の で は な く 、 そ の 行 為 に 至 る 根 拠 と な る 心 を 重 要 視 し て い た こ と が 窺 え る だ ろ う 。 ま た 、 こ の 永 観 の 説 に 基 づ い て 考 え る と 、 三 昧 発 得 を 中 心 と し た ﹁ 一 心 ﹂ が 発 起 し て も 、﹁ 故 思 ﹂ 等 の 心 ︵ す な わ ち ﹁ 一 念 の 悪 ﹂︶ に よ っ て 往 生 す る こ と が で き な く な る こ と と な る 。 こ こ に 、 ど こ ま で も ﹁ 一 心 ﹂ の 保 持 を 重 要 視 し た 永 観 の 往 生 観 が あ ら わ れ て い る 。 以 上 の と お り 、 永 観 に お い て は ﹁ 一 心 ﹂ の 発 起 が 重 要 で あ っ た 。 し た が っ て 、 五 逆 の 内 容 も 行 為 と し て で は な く 、 そ の 行 為 に 至 る 根 拠 と な る ﹁ 一 心 ﹂ と 相 反 す る 心 を 問 題 と し た と 思 わ れ る 。 た だ し 、 永 観 の 述 べ る ﹁ 一 心 ﹂ と は 、
(難波) 42 三 昧 発 得 を 中 心 と す る 心 で あ る か ら 、 そ れ は 自 力 の 心 で あ り 、 称 名 念 仏 は そ の 心 に 到 達 す る た め の 方 法 と い う 位 置 付 け を 超 え る も の で は な い 。 こ こ に ﹁ 念 仏 宗 永 観 ﹂ を 名 告 り 、 無 常 観 と 危 機 意 識 を も ち な が ら も 、 親 鸞 の 仏 道 観 と は そ の 方 向 性 を 真 逆 に す る 永 観 の 仏 道 観 が 明 ら か と な っ た 。 結 論 に 代 え て — ﹁ 信 巻 ﹂ 巻 末 の ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ の 考 察 へ の 展 望 — 小 論 で は 、 第 一 節 に て 永 観 の ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 五 逆 の 特 徴 を 考 察 し た 。 重 複 に は な る が 論 旨 を 明 瞭 に す る た め に 、 こ こ で 改 め て そ の 特 徴 を 示 し て み よ う 。 第 一 の 特 徴 ⋮ ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と ﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ を 対 等 な も の と し て 、 五 逆 を 二 種 示 し て い る 点 第 二 の 特 徴 ⋮ 五 逆 を 単 に 行 為 と し て 示 す の で は な く 、 行 為 の 根 拠 で あ る 自 己 存 在 の 思 い に 関 わ る 事 柄 と し て 示 し て い る 点 第 三 の 特 徴 ⋮ ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ と ﹁ 大 乗 の 五 逆 ﹂ を 示 す に と ど ま ら ず 、﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ 及 び ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ ︵﹁ 十 悪 ﹂ の な か の 前 四 つ で あ る ﹁ 四 重 禁 ﹂ が ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と な る 場 合 ︶ を 示 し て 多 く の ﹁ 逆 ﹂ の 在 り 方 を 示 し て い る 点 資 料 を 参 照 し て も 明 確 な よ う に 、 こ の 特 徴 的 な 永 観 の 取 捨 選 択 に よ る 五 逆 に つ い て の 文 を 、 親 鸞 は ほ ぼ そ の ま ま 用 い て ﹁ 信 巻 ﹂ に 記 し て い る 。 し た が っ て 、 こ れ ら の 特 徴 は 、﹁ 信 巻 ﹂ の 文 脈 に お い て も 非 常 に 重 要 な 要 素 で あ る と 考 え ら れ る 。 た だ し 、 第 三 の 特 徴 の な か で 示 し た 次 の 文 の 網 掛 け 部 分 に つ い て は 、﹁ 信 巻 ﹂ 巻 末 の ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ に お い て 省 か れ て い る 。 次 ニ 十 悪 ト 者 身 三 口 四 意 三 如 常 十 カ 中 ニ 前 ノ 四 ヲ 名 ク 四 重 禁 ト 謂 ク 殺 盗 婬 妄 語 也
若 シ 依 ラ ハ 十 輪 経 ニ 於 テ 此 ノ 四 重 中 ニ 説 ク 近 無 間 ノ 業 ヲ 故 ニ 彼 ノ 経 ニ 云 一 ニ ハ 起 シ テ 不 善 ノ 心 ヲ 殺 害 ス 独 覚 ヲ 是 レ 殺 生 二 ニ ハ 婬 ス 羅 漢 尼 ヲ 是 レ 欲 邪 行 ナ リ 三 ニ ハ 侵 損 ス 所 ノ 施 ス 三 宝 ニ 財 物 ヲ 是 レ 不 與 取 ナ リ 四 ニ ハ 倒 見 ヲ 以 破 ス 和 合 僧 衆 ヲ 是 レ 虚 誑 語 ナ リ 略 鈔 ● ︶40 ︵ ︵ 網 掛 け 部 分 は ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ で 省 か れ て い る 箇 所 ︶ 親 鸞 は 網 掛 け 部 分 を 引 用 し な い こ と に よ っ て 、 こ の 後 の 教 説 を ﹁ 十 悪 ﹂ の 罪 が ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ の 罪 と な る 場 合 を 示 し た 文 と し て で は な く 、 大 乗 の ﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ に 当 た る 位 置 付 け と し て 理 解 で き る よ う に し て い る 。 つ ま り 、 主 題 が 五 逆 か ら ﹁ 十 悪 ﹂、 あ る い は ﹁ 四 重 禁 ﹂ に 移 る の で は な く 、 ま た ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と し て で も な く 、 あ く ま で 五 逆 の 内 実 と し て の 文 言 と し て 示 し て い る の で あ る 。 ま た 省 い た こ と に よ っ て ﹁ 彼 の 経 ﹂ の 指 す も の が 、﹃ 十 輪 経 ﹄ か ら ﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ に 変 わ る 点 も 指 摘 で き る ︶41 ︵ 。 こ の 確 認 を 踏 ま え て 、 永 観 の 五 逆 理 解 で は な く 、﹁ 信 巻 ﹂ 巻 末 の ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ の 特 徴 を 挙 げ る な ら ば 、 第 一 ・ 第 二 の 特 徴 は ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の そ れ と 同 じ で あ り 、 第 三 の 特 徴 は ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と し て 挙 げ ら れ て い た ﹃ 十 輪 経 ﹄ に 基 づ い て い た 箇 所 を ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と し て で は な く 、 大 乗 の ﹁ 五 無 間 の 同 類 の 業 ﹂ に 当 た る 位 置 付 け と し て 挙 げ て 、 多 く の ﹁ 逆 ﹂ の 在 り 方 を 示 し て い る と 言 う べ き で あ ろ う 。 第 二 節 で は 、 ま ず 永 観 が 念 仏 を 修 し 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ を 著 す に 至 っ た 背 景 と し て 、 ま ず 永 観 の 無 常 観 と 危 機 意 識 を 探 り 、 次 に 永 観 の 主 張 す る 念 仏 に よ る 滅 罪 に つ い て 論 じ た 。 考 察 に よ っ て 提 示 し た よ う に 、 永 観 が 称 名 念 仏 に よ っ て 罪 を 滅 す る こ と が で き る と 述 べ る 根 拠 は 、 三 業 が 相 応 す る 称 名 念 仏 に よ っ て ﹁ 一 心 ﹂ を 発 起 す る か ら で あ っ た 。 す な わ ち 永 観 に と っ て 、 五 逆 の 特 徴 の 第 一 に 挙 げ た 行 為 の 根 拠 と な る ﹁ 故 思 ﹂ 等 の 心 を 消 し 、﹁ 一 心 ﹂ を 発 起 す る こ と が 、 な に よ り 重 要 な 課 題 で あ っ た と 言 え る だ ろ う 。 た だ し 、 永 観 の 言 う ﹁ 一 心 ﹂ と は 三 昧 発 得 を 中 心 と す る 心 で あ り 、 念 仏 は そ の 心 に 到 達 す る た め の 方 法 で あ る 。 こ れ ら に よ っ て 、 永 観 は ﹁ 念 仏 宗 永 観 ﹂ を 名 告 り 、 さ ら に 無 常
(難波) 44 観 と 危 機 意 識 を も ち な が ら も 、 親 鸞 と は そ の 方 向 性 を 異 に す る 仏 道 観 を も っ て い た こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ こ に 至 っ て 、﹁ 信 巻 ﹂ 巻 末 の ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ が 、 な ぜ ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 基 づ い て い る の か に つ い て 考 察 す る 展 望 を 述 べ て お き た い 。 こ の 理 由 に つ い て は 、 香 月 院 深 励 が 、 日 本 で 空 也 永 観 は 横 川 ︵ 源 信 ︶ の 前 後 に て 念 仏 を 勧 め た る 師 な り 。 そ の 勧 む る 念 仏 は 善 導 流 で な い 故 に 正 依 に は 非 ざ れ ど も 日 本 で 名 高 き 人 な り 。 其 永 観 が 淄 州 に よ り て 明 し て あ る 故 に 。 是 は 従 ふ べ し と あ る 思 召 で 依 り 給 ふ な り ︶42 ︵ 。 と 述 べ て い る こ と に 代 表 さ れ る よ う に 、 永 観 が 日 本 に お い て 法 然 に 先 立 っ て 念 仏 を 勧 め て い た 仏 者 で あ る か ら と い う 見 解 が あ る 。 し か し な が ら 、 第 二 節 で 考 察 し た よ う に 、 親 鸞 と 永 観 の 仏 道 観 ・ 念 仏 観 は そ の 方 向 性 を 異 に す る し 、 ﹁ は じ め に ﹂ で 指 摘 し た と お り 、 親 鸞 は 敢 え て 典 拠 を 記 し て い な い 。 こ れ ら の こ と に 鑑 み れ ば 、 親 鸞 が ﹁ 五 逆 の 文 ﹂ を ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 基 づ い て 記 す 理 由 は 、 永 観 そ の 人 に 理 由 が あ る の で は な く 、 第 一 節 で 考 察 し た ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 記 さ れ る 特 徴 的 な 五 逆 の 内 容 に こ そ 、 そ の 理 由 が あ る と 考 え る こ と が で き る で あ ろ う 。 し た が っ て 、 今 後 は こ の 特 徴 を 踏 ま え た う え で 、﹁ 五 逆 の 文 ﹂ の 意 義 の 考 察 を 進 め て い き た い 。 ︵ 1 ︶ ﹃ 定 親 全 ﹄ 一 ・ 一 九 一 — 一 九 二 頁 ︹﹃ 聖 典 ﹄ 二 七 七 — 二 七 八 頁 ︺ 参 照 。 ︵ 2 ︶ 本 論 で も 論 じ て い る こ と で あ る が 、 こ の 文 は ﹁ 五 逆 と は 何 か ﹂ と い う こ と を 、 仏 教 の 通 説 に し た が っ て 示 し て い る の で は な く 、 明 ら か に 通 説 の 範 疇 を 超 え る 五 逆 が 記 さ れ て い る 。 こ こ に 、 親 鸞 が こ の 文 を 記 さ な け れ ば な ら な か っ た 理 由 と し て 、 そ の 前 に 引 用 さ れ て い る 曇 鸞 ・ 善 導 の 文 の 助 顕 と し て の 意 義 を 超 え て い る こ と が 示 唆 さ れ て い る と 言 え る だ ろ う 。 こ の 点 か ら 見 れ ば 、 こ の 箇 所 を ﹁ 五 逆 追 釈 0 0 ﹂︵ ﹃ 聖 典 ﹄ 一 〇 〇 〇 頁 傍 点 引 用 者 ︶ と 呼 ぶ こ と は 適 確 と は 言 え な い 。 ま た こ の 文 は 、 永
観 の 著 で あ る ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ に 基 づ い た も の で あ る が 、 親 鸞 は 永 観 の 名 も ﹃ 往 生 拾 因 ﹄ と い う 著 作 名 も 示 し て お ら ず 、﹃ 教 行 信 証 ﹄ の 論 述 で は 、 典 拠 が 分 か ら な い よ う に な っ て い る 。 そ の 意 味 で 唐 突 に 、 言 五 逆 ト 者 若 シ 依 ニ 淄 シ 州 シ ウ ニ 五 逆 ニ 有 リ 二 一 者 三 乗 ノ 五 逆 ナ リ ︵ 中 略 ︶ 二 ニ 者 ハ 大 乗 ノ 五 逆 ナ リ ︵﹃ 定 親 全 ﹄ 一 ・ 一 九 一 — 一 九 二 頁 ︹﹃ 聖 典 ﹄ 二 七 七 頁 ︺ 中 略 引 用 者 ︶ と 、 五 逆 に つ い て 述 べ 始 め る 文 で あ る 。 こ の 点 か ら 見 れ ば 、 こ の 文 を ﹁ 永 観 の 0 0 0 文 ﹂、 あ る い は ﹁﹃ 往 生 拾 因 0 0 0 0 ﹄ の 0 文 ﹂ 等 と 呼 称 す る こ と も 親 鸞 の 意 図 に 反 し て い る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 文 中 に 名 が 出 る の は ﹁ 淄 州 ﹂︵ こ れ は 生 ま れ た 場 所 で あ る が 、 淄 州 大 師 慧 沼 を 指 す 言 葉 ︶ で あ る が 、 そ れ は 永 観 の 著 述 に 記 さ れ た も の で あ る し 、 こ の 文 中 の 慧 沼 の 文 は 一 部 分 に 過 ぎ な い 。 し た が っ て 、 こ の 文 を ﹁ 淄 州 の 0 0 0 文 ﹂ 等 と 慧 沼 の 名 に 寄 せ て 呼 称 す る こ と も ま た 不 適 当 で あ ろ う 。 そ こ で 小 論 で は 、 す で に こ の 文 に つ い て 論 じ て い る 安 藤 文 雄 に 倣 い 、﹁ 五 逆 の 文 ﹂ と 称 す る こ と と し た い ︵﹁ ﹃ 教 行 信 証 ﹄ 信 巻 ・ 巻 末 の 五 逆 の 文 に つ い て ﹂ ﹃ 印 度 学 仏 教 学 研 究 ﹄ 三 十 三 ・ 一 参 照 ︶。 ︵ 3 ︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 七 頁 ︵ 4 ︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 三 十 九 ・ 二 四 三 頁 c ︵ 5 ︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 九 ・ 三 三 六 頁 b ︵ 6 ︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 三 十 四 ・ 七 〇 八 c — 七 〇 九 頁 a □ 内 引 用 者 ︵ 7 ︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 三 十 九 ・ 二 三 七 頁 a ︵ 8 ︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 七 頁 ︵ 9 ︶ 香 月 院 深 励 は 、 こ れ に つ い て 永 観 の 間 違 い で あ る と 示 し て い る ︵﹃ 教 行 信 証 講 義 ﹄﹃ 教 行 信 証 講 義 集 成 ﹄ 七 ・ 二 一 一 頁 参 照 ︶。 し か し 筆 者 は 、 永 観 の 意 図 的 な も の で あ る と 考 え た い 。 ︵ 10︶ 既 述 の よ う に 五 無 間 と は 、 五 逆 と 同 意 で あ る 。﹃ 舎 論 ﹄ に は ﹁ 五 無 間 同 類 業 ﹂ を ﹁ 五 逆 同 類 ﹂ と し て 示 し て い る 例 が あ る ︵﹃ 大 正 蔵 ﹄ 二 十 九 ・ 九 四 頁 b ・ 資 料 参 照 ︶。 ︵ 11︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 二 十 九 ・ 九 二 頁 b ︵ 12︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 十 三 ・ 七 三 七 頁 a ︵ 13︶ 受 戒 を 許 さ れ な い の は 、 五 逆 罪 を 造 っ た 者 に 限 る の で は な く 、 永 観 が ﹁ 四 重 の 中 ﹂ の ﹁ 近 無 間 の 業 ﹂ と 示 す 箇 所 に も 説 か れ て い る ︵﹃ 大 正 蔵 ﹄ 十 三 ・ 七 三 七 頁 a — b 参 照 ︶。 ︵ 14︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 七 頁
(難波) 46 ︵ 15︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 七 頁 ︵ 16︶ 香 月 院 深 励 ﹃ 教 行 信 証 講 義 ﹄﹃ 教 行 信 証 講 義 集 成 ﹄ 七 ・ 二 一 一 頁 参 照 。 ︵ 17︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 二 十 九 ・ 九 三 頁 c ︵ 18︶ ﹃ 国 訳 一 切 経 ﹄ 曇 部 ・ 二 十 六 下 ・ 四 一 頁 ︵ 19︶ ﹃ 国 訳 一 切 経 ﹄ 曇 部 ・ 二 十 六 下 ・ 四 一 頁 ︵ 20︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 二 十 九 ・ 九 四 頁 b ︵ 21︶ ﹁ 三 乗 の 五 逆 ﹂ の 内 実 と し て ﹃ 十 輪 経 ﹄ で 引 く 五 逆 と 同 じ く 、 こ の 四 重 禁 を 犯 し た 者 は 、 出 家 受 戒 を 許 さ れ ず 、 ま た も し 受 戒 さ せ た な ら ば 、 そ の 師 も 罪 を 犯 し た こ と に な る と さ れ る 。 ︵ 22︶ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ 十 三 ・ 七 三 七 頁 a ︵ 23︶ ﹃ 新 国 訳 大 蔵 経 ﹄ 諸 経 部 ・ 二 ・ 地 蔵 十 輪 経 ・ 一 八 九 頁 ︵ 24︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 八 頁 ︵ 25︶ ロ バ ー ト ・ F ・ ロ ー ズ は 、 三 善 為 康 の 記 し た ﹃ 拾 遺 往 生 伝 ﹄︵ ﹃ 大 日 本 仏 教 全 書 ﹄ 百 七 ︿ 永 観 に つ い て は 八 五 — 八 七 頁 参 照 ﹀︶ に 依 っ て 、 永 観 の 誕 生 に つ い て は 不 詳 と し た う え で 、 三 論 宗 の 僧 に な っ た 経 緯 に つ い て 、 次 の よ う に 纏 め て い る 。 な お 、 ﹃ 拾 遺 往 生 伝 ﹄ は 永 観 が 没 し た 年 で あ る 一 一 一 一 年 に 成 立 し て い る た め 、 永 観 の 伝 記 と し て 信 頼 性 の 高 い 資 料 で あ る 。 永 観 は 二 才 の と き 岩 清 水 八 幡 宮 別 当 の 元 命 ︵ 九 七 〇 — 一 〇 五 一 ︶ の 養 子 に な り 、 こ の 僧 に 育 て ら れ た 。 十 一 才 の と き 真 言 宗 の 深 観 ︵ 一 〇 〇 〇 — 一 〇 五 〇 ︶ の 弟 子 と な り 、 翌 年 に は 東 大 寺 の 戒 壇 院 で 具 足 戒 を 受 け 、 そ の 後 東 大 寺 の 東 南 院 に 入 り 、 有 慶 ︵ 九 八 三 — 一 〇 七 〇 ︶ の も と で 学 問 に 励 ん だ 。 東 南 院 と い え ば 、 真 言 宗 の 聖 宝 ︵ 八 三 二 — 九 〇 九 ︶ に よ っ て 東 大 寺 に お け る 三 論 と 密 教 の 本 所 と し て 九 〇 五 年 に 設 け ら れ た 場 所 で あ る 。 特 に 東 南 院 は 南 都 に お け る 三 論 研 究 の 中 心 で あ り 、 所 属 の 僧 侶 は 皆 、 文 献 に は ﹁ 三 論 宗 ﹂ と 記 載 さ れ て い る 。 永 観 も 同 様 で あ り 、 そ の た め ﹃ 浄 土 法 門 源 流 章 ﹄ に お い て 凝 然 は 永 観 の 念 仏 を 三 論 系 の 念 仏 と 規 定 し て い る ︵ 大 正 蔵 経 八 四 、 一 九 六 a ︶。 ︵﹁ 永 観 の 念 仏 観 — 法 身 同 体 の 思 想 を 中 心 と し て — ﹂﹃ 大 谷 学 報 ﹄ 八 十 一 ・ 二 ・ 二 頁 ︶ ︵ 26︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 一 頁 ︵ 27︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 九 四 頁 ︵ 28︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 一 頁 ︵ 29︶ 大 谷 旭 雄 は 、﹃ 往 生 拾 因 ﹄ の 巻 末 に 、
南 都 東 大 寺 沙 門 永 観 艸 願 共 結 縁 者 往 生 安 楽 国 ︵﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 九 四 頁 ︶ と 示 さ れ て い る こ と に 注 目 し て 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 表 題 の も と に は ﹁ 念 仏 宗 永 観 集 ﹂ と 記 し な が ら 、 こ こ で は 東 大 寺 沙 門 た る こ と を 明 記 し て い る の で あ る 。 こ の 矛 盾 は 永 観 が 念 仏 宗 と 称 し な が ら も 、 依 然 と し て か れ の 立 場 は 東 大 寺 三 論 の 宗 籍 を 破 棄 し て い な か っ た こ と を 物 語 る も の で あ り 、 換 言 す れ ば 、 永 観 が 東 大 寺 三 論 と 訣 別 し て 新 宗 を 別 開 す る 意 志 が な か っ た こ と を 示 す も の と い わ ね ば な ら な い 。 ︵﹃ 浄 土 仏 教 の 思 想 — 永 観 珍 海 覚 — ﹄ 七 ・ 一 二 五 頁 ︶ こ の 指 摘 は 傾 聴 す べ き で あ る と 思 わ れ る が 、 親 鸞 は ﹃ 尊 号 真 像 銘 文 ﹄ で 法 然 の 真 像 に つ い て 、 比 叡 山 延 暦 寺 宝 幢 院 黒 谷 源 空 聖 人 真 像 ︵﹃ 定 親 全 ﹄ 三 ・ 和 文 ・ 一 〇 六 頁 ︹﹃ 聖 典 ﹄ 五 二 六 頁 ︺︶ と 述 べ て い る し 、﹃ 無 量 寿 経 釈 ﹄﹃ 観 無 量 寿 経 釈 ﹄﹃ 阿 弥 陀 経 釈 ﹄ の 冒 頭 に は 、 天 台 黒 谷 沙 門 源 空 記 ︵﹃ 法 然 全 ﹄ 六 七 頁 ・ 九 七 頁 ・ 一 四 七 頁 ︶ と 記 さ れ て い る 。 こ れ ら を 鑑 み る と 、 巻 末 の 文 言 だ け を も っ て ﹁ 新 宗 を 別 開 す る 意 志 が な か っ た ﹂ と は 言 い 切 れ な い 。 し か し な が ら 、 永 観 の 生 涯 よ り 窺 う に 、 や は り 三 論 宗 に 立 脚 し な が ら 念 仏 を 修 し た と 考 え る 方 が 自 然 で あ ろ う 。 無 論 こ の 議 論 に つ い て は 、﹁ 宗 ﹂ と は 何 か と い う 根 本 的 な 考 察 が 本 来 必 要 で あ る と 思 わ れ る が 、 本 論 で は そ れ が 主 題 で は な い の で 省 略 し た 。 ︵ 30︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 一 頁 ︵ 31︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 七 頁 ︵ 32︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 七 頁 ︵ 33︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 八 頁 ︵ 34︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 八 頁 ︵ 35︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 八 三 頁 ︵ 36︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 八 四 頁 ︵ 37︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 八 七 頁 ︵ 38︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 八 七 頁 ︵ 39︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 九 二 頁
(難波) 48 ︵ 40︶ ﹃ 浄 土 宗 全 書 ﹄ 十 五 ・ 三 七 八 頁 ︵ 41︶ た だ し 、﹃ 教 行 信 証 ﹄ の 展 開 に お い て ﹃ 十 輪 経 ﹄ が ﹃ 遮 尼 乾 子 経 ﹄ に 変 わ っ た こ と に よ る 意 味 の 異 な り は 読 み 取 る こ と が で き な か っ た 。 や は り 主 題 を 、 十 悪 や 近 無 間 の 業 で は な く 、 五 逆 と す る こ と に 焦 点 が あ る 引 用 方 法 な の で あ ろ う か 。 ︵ 42︶ 香 月 院 深 励 ﹃ 教 行 信 証 講 義 ﹄﹃ 教 行 信 証 講 義 集 成 ﹄ 七 ・ 二 一 〇 頁 ︵ ︶ 内 引 用 者 ︻ 凡 例 ︼ 一 、 原 則 と し て 、 常 用 漢 字 に 改 め て 引 用 し た 。 一 、 漢 文 に 附 さ れ て い る 合 字 は 、 適 宜 、 現 行 の 仮 名 に 改 め た ︵﹁ ﹂ ↓ ﹁ シ テ ﹂ な ど ︶。 一 、 参 照 の 便 を 考 え 、﹃ 真 宗 聖 典 ﹄︵ 東 本 願 寺 出 版 部 ︶ に 収 録 さ れ て い る も の は 、 そ の 該 当 頁 を 合 わ せ て 示 し た 。 一 、 出 典 に つ い て は 、 次 の よ う に 略 記 し た 。 ﹃ 定 本 親 鸞 聖 人 全 集 ﹄ ﹃ 定 親 全 ﹄ ﹃ 大 正 新 脩 大 蔵 経 ﹄ ﹃ 大 正 蔵 ﹄ ﹃ 真 宗 聖 典 ﹄︵ 東 本 願 寺 出 版 部 ︶ ﹃ 聖 典 ﹄ ︵ 本 学 任 期 制 助 教 真 宗 学 ︶ ︿ キ ー ワ ー ド ﹀ 永 観 、 五 逆 追 釈 、 唯 除 の 文
資
(難波) 50 資料 ﹁信 巻﹂ 巻末 の﹁ 五逆 の文 ﹂の 典拠 一 覧表 ︵前 半︶ ●﹁ 五逆 の文 ﹂ ︵三 乗の 五逆 ︶ 言五 逆 ト 者若 シ 依 ニ 淄 シ 州 シウ ニ 五 逆 ニ 有 リ 二 一者 三乗 ノ 五逆 ナリ 謂 ク 一者 故 コト サラ ニ 思 テ 殺 ス 父 ヲ 二者 ハ 故 コト サラ ニ 思 テ 殺 ス 母 ヲ 三者 故 ニ 思 テ 殺 ス 羅漢 ヲ 四者 倒見 シテ 破 ス 和合 僧 ヲ 五者 悪心 ヲモ テ 出 ス 仏身 ヨリ 血 ヲ 以 ノ 背 ソム キ 恩田 ニ 違 スル ヲ 福 田 ニ 故 ニ 名 テ 之 ヲ 為 ス 逆 ト 執 スル 此 ノ 逆 ヲ 者 ノハ 身 壊 ヤフ レ 命 終 オエ テ 必 定 シテ 墮 シテ 無間 地獄 ニ 一 大劫 ノ 中 ニ 受 ケム 無間 ノ 苦 ヲ 名 クト 無間 業 ト 又 舎論 ノ 中 ニ 有 リ 五無 間 ノ 同類 ノ 業 彼 ノ 頌 ニ 云 汚 ワ 母無 学尼 ヲ 殺 同 母 類 罪 ノ 殺 ス 住定 菩 殺 同 父 類 罪 及有 学無 学 ヲ 殺 同 羅漢 ヲ 類 奪 ウハ ウ 僧 ノ 和合 縁 ヲ 破 同 僧 類 罪 破壊 スル 卒 都波 ヲ 出 仏 身 血 ●﹃ 往生 拾因 ﹄の 文 次 ニ 五逆 ト 者若 シ 依 ラハ 溜州 ニ 五逆 ニ 有 リ 二 一 ニ 者三 乗 ノ 五逆 謂 ク 一 ニ 者故 思 ヲ以 殺 シ 父 ヲ 二 ニ 者故 思 シテ 殺 シ 母 ヲ 三 ニ 者故 思 シテ 殺 ス 羅漢 ヲ 四 ニ 者倒 見 ヲ以 破 ス 和合 僧 ヲ 五 ニ 者悪 心 ヲ以 出 ス 仏身 ヨリ 血 ヲ 以 テ 背 キ 恩田 ニ 違 フ 福田 ニ 故 ニ 名 テ 之 ヲ 為 ス 逆 ト 犯 スル 此 ノ 逆 ヲ 者 ハ 身壊 命終 シテ 必 定墮 於無 間地 獄 ニ 一 大劫 ノ 中 ニ 受 クル ヲ 無 間 ノ 苦 ヲ 名 ク 無間 業 ト 又 舎論 ノ 中 ニ 有 五無 間 ノ 同類 ノ 業 彼頌 ニ 曰 ク 汚 シ 母 ト 無学 尼 ヲ 殺 同 母 類 罪 殺 シ 住定 ノ 菩 ト 殺 同 父 類 罪 及 ヒ 有学 ノ 聖者 トヲ 殺 同 羅 類 漢 奪 フ 僧 ノ 和合 縁 ヲ 破 同 僧 類 罪 破壊 ス 卒都 婆 ヲ 出 血 仏 同 身 類 ケカ ス
●﹃ 往生 拾因 ﹄の 典拠 有五 無間 大罪 悪業 。 何等 為五 。 一者 故思 殺父 。 二者 故思 殺母 。 殺阿 故思 三者 羅漢 。 四者 倒見 破声 聞僧 。 五者 悪心 出仏 身血 。 如是 五種 。名 為無 間大 罪悪 業。 若人 於五 無間 中。 隨造 一種 不合 出家 及受 具 戒。 ︵ ﹃大 乗大 集地 蔵十 輪経 ﹄三 ﹃大 正蔵 ﹄十 三・ 七三 七頁 a︶ 且止 傍論 応辯 逆縁 。 頌 曰。 棄エ壊 恩徳 田 転 形亦 成逆 母謂 因彼 血 誤 等無 或有 後無 害 血 出仏 打心 学無 論曰 。何 縁害 母等 成無 間非 余。 由棄 恩田 壊 徳田 故。 謂害 父母 是棄 恩田 。 如 何有 恩。 身生 本故 。如 何棄 彼。 謂捨 彼恩 。徳 田謂 余阿 羅漢 等。 具諸 勝 徳及 能生 故。 壊徳 所依 故成 逆罪 。 ︵ ﹃阿 毘達 磨 舎論 ﹄十 八﹃ 大正 蔵﹄ 二十 九・ 九三 頁c ︶ 若有 衆生 殺父 害母 。罵 辱六 親。 作是 罪者 命終 之時 ︵⋮ ⋮中 略・ 阿鼻 地獄 の様 子を 説く ⋮⋮ ︶ 一日 一夜 爾乃 周遍 。阿 鼻地 獄一 日一 夜。 此閻 浮提 五逆 劫。 一大 命尽 是寿 。如 小劫 六〇 歳数 日月 罪人 無慚 無愧 造作 五逆 。五 逆罪 故命 終時 ︵⋮ ⋮中 略・ 阿鼻 地獄 の様 子を 説く ⋮⋮ ︶ ︵ ﹃観 仏三 昧海 経﹄ 五﹃ 大正 蔵﹄ 十五 ・六 六九 頁a ︶ 唯無 間罪 定生 地獄 。 諸 無間 同類 亦定 生彼 。有 余 。 者何 同類 生。 無間 。非 師説 頌曰 。 汚母 無学 尼 殺 住定 菩 及有 学聖 者 奪 和合 僧縁 破エ壊 窣 波 是無 間同 類 論曰 。如 是五 種隨 其次 第是 五無 間同 類業 體。 謂 或有 行。 非梵 染謂 極汚 尼行 羅漢 母阿 有於 殺エ害 住定 菩 。 或 殺学 聖者 。 或 奪僧 合縁 。 或 破窣 波。 是五 逆同 類。 ︵ ﹃阿 毘達 磨 舎論 ﹄十 八﹃ 大正 蔵﹄ 二十 九・ 九四 頁b ︶ 論曰 。言 無間 業者 。謂 五無 間業 。其 五者 何。 一 者害 母。 二者 害父 。三 者害 阿羅 漢。 四者 破和 合僧 。 五者 悪心 出仏 身血 。 ︵ ﹃阿 毘達 磨 舎論 ﹄十 七﹃ 大正 蔵﹄ 二十 九・ 九二 頁b ︶ ※ ﹁ 殺母 罪同 類﹂ 等に 関し ては 、 仏 教通 説の 五逆 に よっ てい るの で特 にこ の箇 所の みに 依っ たと い た。 示し 考に 、参 いが はな けで うわ ●﹃ 往生 拾因 ﹄の 典拠 の典 拠
(難波) 52 資料 ﹁信 巻﹂ 巻末 の﹁ 五逆 の文 ﹂の 典拠 一 覧表 ︵後 半︶ ●﹁ 五逆 の文 ﹂ ︵大 乗の 五逆 ︶ 二 ニ 者 ハ 大乗 ノ 五逆 ナリ 如 シ 遮 シヤ 尼 ニ 乾 ケン 子経 ニ 説 カ 一者 ハ 破壊 シ 塔 タウ ヲ 焚焼 スル 経 蔵 ヲ 及‒以 盗用 スル 三 宝 ノ 財 物 ヲ 二者 謗 ソシ リテ 三 乗 ノ 法 ヲ 言 フテ 非 スト 聖教 ニ 障破 留 ル 難 シ ・ 隠 落 ラク 蔵 スル 三者 ハ 一切 出家 ノ 人若 ハ 戒 ・無 戒 ・破 戒 ノモ ノヲ ・ 打 チヤ ウ 罵 シ 呵 責 シヤ クシ テ 説 キ 過 トカ ヲ 禁 キム 閉 シ 還俗 セシ メ 駈 ク 使債 サイ 調 テウ シ 断命 セシ ムル 四者 殺父 害母 出仏 身血 破和 合僧 殺 阿羅 漢 ナリ 五者 ハ 謗 シテ 無 ク 因果 長夜 ニ 常 ニ 行 スル ナリ ト 十 不善 業 ヲ 上已 彼 ノ 経 ニ 云 一 ニハ 起 シテ 不善 心 ヲ 殺害 スル 独 覚 ヲ 是 レ 殺生 ナリ 二 ニハ 婬 スル 羅漢 ノ 尼 ヲ 是 ヲ 云 フ 邪行 ト 也、 三 ニハ 侵 シム 損 スル 所 施 ノ 三宝 物 ヲ 是 レ 不與 取 ナリ 四 ニハ 倒 見 シテ 破 スル 和合 僧衆 ヲ 是虚 誑語 也出 略 顕浄 土真 実信 文類 三 ︵ ﹃顕 浄土 真実 教行 証文 類— 翻刻 —﹄ 三二 〇 —三 二二 頁 □内 は﹃ 定本 親鸞 聖人 全集 ﹄に 依っ て附 した ︹ ﹃定 親全 ﹄一 ・一 九一 —一 九二 頁・﹃ 聖典 ﹄ 二七 七— 二七 八頁 ︺以 下す べて 改行 引用 者︶ ●﹃ 往生 拾因 ﹄の 文 二 ニ 者大 乗 ノ 五逆 如 シ 遮尼 乾子 経 ニ 説 カ 一 ニ 者破 壊 シ 塔寺 焚焼 シ 経蔵 ヲ 及以 ヒ 盗用 ス 三宝 ノ 財 物 ヲ 二 ニ 者謗 シテ 三乗 ノ 法 ヲ 言 テ 非 ト 聖教 ニ 障破 留難 シ 隠弊 覆 蔵 ス 三 ニ 者於 テ 一切 ノ 出家 ノ 人 ニ 若 ハ 有戒 ニモ アレ 無 戒持 戒破 戒 ニモ アレ 打 罵 シ 訶責 シテ 説 キ 過 ヲ 禁閉 シ 還 ラシ メ 俗 ニ 駈使 債調 断 命 ス 四 ニ 者殺 シ 父 ヲ 害 シ 母 ヲ 出 シ 仏身 ヨリ 血 ヲ 破 シ 和合 僧 ヲ 殺 ス 阿 羅漢 ヲ 五 ニ 者謗 無 シ 因果 ヲ 長夜 常 ニ 行 ス 十不 善業 ヲ 已 上 次 ニ 十悪 ト 者身 三口 四意 三 如 常 十 カ 中 ニ 前 ノ 四 ヲ 名 ク 四重 禁 ト 謂 ク 殺盗 婬妄 語也 若 シ 依 ラハ 十輪 経 ニ 於 テ 此 ノ 四重 ノ 中 ニ 説 ク 近無 間 ノ 業 ヲ 故 ニ 彼 ノ 経 ニ 云 一 ニハ 起 シテ 不善 ノ 心 ヲ 殺害 ス 独覚 ヲ 是 レ 殺生 ナリ 二 ニハ 婬 ス 羅漢 尼 ヲ 是 レ 欲邪 行 ナリ 三 ニハ 侵損 ス 所 ノ 施 ス 三宝 ニ 財物 ヲ 是 レ 不與 取 ナリ 四 ニハ 倒 見 ヲ以 破 ス 和合 僧衆 ヲ 是 レ 虚誑 語 ナリ 略 鈔 ︵ ﹃浄 土宗 全書 ﹄十 五・ 三七 七— 三七 八頁 ︶