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共同利用研究報告 平成6年度~平成9年度

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共同利用研究報告 平成6年度∼平成9年度

著者

東北大学遺伝生態研究センター

発行年

1998-03

(2)

共同利用研究報告

平成6年度∼平成9年度

全国共同利用施設

東北大学遺伝生態研究センター

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共同利用研究報告

平成6年度

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目   次 ◎ ワークショップ 1.遺伝生態の諸問題 ◎ 共同利用研究 1.植物の形質発現と適応機構の分子遺伝的解析 河野 昭一、寺内 良平、平塚 明、菅  洋、石粟 義雄 2.高等植物における浸透圧ストレス耐性機構の解析と耐性遺伝子の導入-・--- 8 高畑 義人、亀谷 寿昭 3.青色光受容体様フォトリア-ゼの接合菌類における遺伝子単離とその解析--一・--日日11 安井  明、大瀧 保、官等  厚 4.接合菌類の環境応答としての接合反応の解析 大瀧 保、官署 厚,吉田 元信 5.混植されたオーチャードグラスとホワイトクローバーの群落構造に及ぼす 近紫外光の影響 寺井 謙次、、熊谷 忠 6.根の水分屈性発現機構とその生態的意義 石原  邦、平沢  正、高橋 秀幸、菅  洋 7.土壌細菌の挿入因子の検索と単離 南洋 究、大坪 栄一、服部 勉 8.インゲン根腐病菌における形態分化機構の染色体DNA構造による解析・---・-I-・-25 百町 満朗、服部  勉 9.地圏環境の微生物が塩濃度変化に脂質修飾で適応した際の脂質膜物性の変化---27 大木 和夫、服部  勉,小林 俊秀 10.トランスジェニック植物を用いたキメラ植物の作成と遺伝子発現-・--一・・・-一・--・-・30 平田  豊、亀谷 寿昭、菅野  明 ll.臨界環境下における植物一微生物の生態系に関する研究 本田 雄一、柴田  均、内藤 陽子、熊谷  忠

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遺伝生態の諸問題

東北大学遺伝生態研究センター・服部 勉 1.はじめに 当センターは発足にあたって生態系における種の生活の研究に遺伝子的視点 を導入し、生物が複雑な環境変化に対応する際どのような遺伝子情報が重要となる か、また個体によって、これらの遺伝子情報にどのような相違が存在するかを、実 験的手法をもって解明することを目指した。実験的手法をもって解明を目指すの は、 (1)生物の生態形成に及ぼす生態因子の影響とそのメカニズムの解析、 (2)さ まざまの環境ストレス下で個体が示す反応の差異の遺伝的解析、 (3)遺伝子を組み 替えた生物の生態系における行動の解析、 (4)生物体とそれを直接とりまく環境と の間の交互作用の化学的、微生物学的解析などであった。その後、 (5)臨界環境に おける生物の動態の解析が新たに加った。 これらの、研究課題はセンター名の遺伝生態という学際領域の新しい学問分野の目 指す研究内容をある程度包含するものと判断した。当センターはまた、全国共同利 用施設として、上記学問分野のカバーする領域について研究課題の公募を行い、共 同利用研究を実施するとともに、毎年同様この新しい学問分野の内容を探化し開発 するために、 2-3 件のワーク・ショップを行いその数はこれまでに19件の多きに逮 した。その具体的研究テーマを羅列すれば、遺伝生態という新しい学問分野の内容 はほぼ確立されたと思われるが、今回ここに遺伝生態の諸問題と題してワーク・シ ョップをおこなったのはその学問分野のイメージアップをさらにはっきりさせると ともに、今後の発展を期待する意味があったのである。 2.研究経過 13名の話題提供者により、主として3つの分野すなわち、植物、植物一微生 物、微生物の系から次の話題提供がなされた。 (1)ワークショップ開会の挨拶に代えて 菅 洋

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一1-今回のワークショップ開催の意義、主旨等について2-3の例などを、混えながら述べ た。 (2)植物の形質発現と集団分化-その進化生態学的意義 河野昭一 植物の形質発現と環境の相互作用系の解析についてタネツケバナの加塑的発現形質 のにもみられる集団分化、ススメノカタビラ集団の局所的分化を例にとって解析し た結果を述べ、それらを踏まえてその進化生態的意義に言及した。 (3)環境適応への発育制御 佐野芳雄 採水に適応する浮イネの節間伸長の系を用いた実験で、生態生理学と遺伝学ののユ ニークな結合について、浮イネ性の遺伝的解剖、介在分裂組織に及ぼす遺伝子dw-3 の効果、栄養生長期の発育、生育相変換制御などの具体的接近を通して論旨を展開 した。 (4)植物の遺伝生態学:宇宙実験からのアプローチ 高橋秀幸 宇宙植物学という全く新しい研究領域における遺伝生態的立場を、根の水分屈性、 ウリ科植物におけるペグ形成の2つの具体的実験系を使っての研究から話題提供し た。前者の話題では、水分屈性と重力屈性、水分勾配と根の屈曲、水分屈性発現」 の仕組、水分屈性は自然界で機能するか、水分屈性と宇宙実験が取り上げられ、後 者の話題では、ペグ細胞と重力感受細胞の発達、ペグ形成にいけるオーキシンの役 割、ペグ形成機構のモデル、ペグ形成と宇宙実験が取り上げられた。最後に植物の 遺伝生態学と宇宙実験について見解が述べられた。 (5)光形態形成研究の最近の進展 松井南 アラビドプシスの光形態形成反応における、突然変異系統を使った実験について、 最近の進展を主として話題提供者の実験結果を踏まえて述べた。話題は、光形態形 成とは、光レセプターは3つある、になたのもやし(hy変異)、光シグナル伝達の変異 (my,blu)、暗所でひなたの形態形成が」おこる変異(det,cop)、 GTP結合タンパク質の 光シグナルへの関与、植物ホルモンと光形態形成の関係に及んだ。 (6)高等植物の葉緑体DNAの構造と系統解析 菅野明 話題提供は、先ず葉緑体DNAとは何かを示した後、葉緑体DNAを用いた系統解析に ついて行われ、次いで近縁植物間に見られる葉緑体DNAの構造変異について具体的 に、イネ属植物葉緑体DNAの制限酵素切断パターンの解析、イネ属植物葉緑体DNA -21

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のクローニングとその構造比較、イネ属植物葉緑体DNAに見られた欠失変異につい て言及した。 (7)マイコクローム系からみた稲ゴマ菓枯れ病菌の生態型 熊谷忠・木原淳一 自然生態系に存在する菌類の胞子形成にかかわる光形態形成反応を、イネの-病原 菌で追跡した興味ある話題が提供された。話題は先ずいわゆるマイコクローム系に ょる胞子形成の光調節反応について解説した後、マイコクローム系からみたごま葉 枯れ病菌の生態型について実験結果に基づいて述べ将来展望を示したo (8)真核微生物における環境応答反応の遺伝学的解析 大滝保 ヒゲカビを実験系に用いた環境応答反応の遺伝学的解析について述べたが、先ずな ぜヒゲカビを用いるのかについて言及し、次いで光屈性と遺伝生態、光屈性の遺伝 学的解析について、詳細赦密な実験結果に基づいて話題を提供した。その後これら の結果を踏まえての考察が述べられた。 (9)高等菌類の系統進化:形態と分子から探る 杉山純多・西田洋己 高等菌類の系統進化についていくつかの具体的例証を引いて論述した。先ず、高等 菌類の系統論の諸説について紹介した。その後、 Taph血a属菌類の特徴と生活環、不 完全酵母Saitoella complicataの特性などの具体例を示した.更に、子のう菌類の真主 要系統群、 "古い生子のう菌類"の発見とTaph血a,Saitoella両属菌の系統学的位置、 Mixia。smundaeの正体を探る:子のう菌類から担子菌類-帰属変更などの題名で論述 した。 (10) Cryptococcps neoformanSの形態、超微形態、遺伝生態 竹尾漠治、西村和子、富 治誠 医学的に重要で有性生殖能を示し、通常酵母型をとるがカどの二形性転換を示す C.ne。fbrmasについて、酵母細胞のきょう膜と細胞膜超微形態、有性生殖と血清型、 形態、核相と交配、定常期の細胞の性質、細胞周期の面から話題提供した。 (ll) gyrB遺伝子塩基配列を用いた細菌の検出と分子系統分類 山本敏、原山重明 細菌の同定と系統分類について、核酸配列を基に細菌の同定し系統分類する方法の 最近の進歩を、ハイブリダイゼ-シヨン法による細菌の同定、 16SrDNAを用いた細 菌の系統分類、特定の遺伝子を用いた菌の同定、検出、 RAPD法(Randomly amplified polymorphicDNAflngerPrinting)による菌の同定などに整理して説明したoさらに、特

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-3-走の遺伝子を用いる例として、 gyrB遺伝子配列を用いた細菌の検出、同定及び系統 分類について説明した。 (12)土壌細菌の挿入因子 南沢究 この話題では、ダイズ根粒菌超反復配列保有株、超反復配列保有株におけるRSアル ファ・ RSベターの分布、超反復配列保有株におえるゲノム再編成の要因とメカニズ ムに関する考察、環境試料からの挿入配列などの可遺伝因子の検索の意義と戦略、 「遺伝生態」をどうとらえるかの項目に分けて、議論が進められた。 (13)ゲノムDNAから見た土壌細菌の群集構造 服部勉 土壌細菌の生活が実際どうなっているのかについては、種の分類からその動態まで ほとんどいまだ把撞されていないのが実態である。その現状に鑑み、本論では培養 困難な細菌の生物相互作用及び物質循環への寄与は無視可能であるとの基本仮設を 立てて、次に示すような観点から論旨を進めた。すなわち、フェノ・タイプとゲノ ・タイプ、細菌群集構造研究の新しい手段としてのエコ・コレクション、ゲノム DNAから見る(1)グローバルなDNA特性,同(2)特定遺伝子の構造特性、同(3)ISとプラ スミッドの諸点である。 3.研究結果 遺伝生態という言葉でどのような学問分野がイメージ・アップできるのか、 多様な視点から設定された話題について討論が行われ、上にあげたような具体的実 験結果に基づいた多くの論議は大きな実りをもたらしたと言えるだろう。 4.まとめ 生態系における生物の生活に遺伝的基礎を探究する学問として、遺伝学と生 態学の境界領域の科学として遺伝生態学は、上記二科学分野の他に生理学、微生物 学、土壌学、作物学、育種学、病理学など多くの学問分野と接触を保ちながら発展 すべきものである。今回のワークショップにおいては、植物、植物一微生物、微生 物の三系における多様な研究例について、最新の業績が紹介され論議された。これ らは、今後さらに検討を進めることによって、遺伝生態学の確立のための第一歩と しての役割を果たすものと思われる。

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植物の形質発現と適応機構の分子遺伝的解析 京都大  理  河野昭一 京都大  理  寺内良平 東北大  理  平塚 明 東北大 通生研 菅  洋 東北大 道生研 石栗義雄 1 はじめに 多様な環境の下では植物はその生活環において発現する様々な形質を調節するこ とによって新たな環境への対応を図っている。どのような形質にいかなる強さの可 塑性が見られるかについては種特異性が見られるが、生活環の制御形質に強く可塑 的な調節機構が見られた場合にはその種の集団分化が著しく進み多様な生活型の発 現や広い分布域の確保につながりやすい。種子植物では休眠の獲得あるいは打破に ょる種子の発芽調節は生活環の開始時における制御形質であり、さらに花成制御は 栄養成長から生殖成長への転換として極めて重要な生活環制御形質であるoしたがっ て生活環を制御する形質に見られる種内変異は種の集団分化を引き起こす主要な変 異であり、この変異によって発現する副次的な変異との関係において新たな環境へ の対応の正否が決定されると考えられる。 環境に対する植物の適応にかかわる形質の変異を分子遺伝学的に解析することは 集団分化の機構を探る上で不可欠の課題であるが、どのような種でどのようなマー カーを用いて解析するかが重要である。さらに種の集団分化の初期過程では分断選 択が最も明確に働いた形質は少数であった可能性が高いという前提の上で集団が示 す表現型に現われた変異形質と分子遺伝的な解析結果との対応を検討することが必 要である。 2 研究経過 ( 1 )適応機構について:タネツケバナ(cardamineflexuosa)の生育地の緯度が異 なる集団を用いて種子休眠性の経時的な変化と花芽分化に対する日長と低温に対す る反応を検討し、それらの対応から集団分化の機構を解析した。 ( 2 )分子遺伝的解析:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaEiana)の1 4野生集団を用 いてマイクロサテライト2 9座位についてサイズ多型の解析を行い系統樹の作成を 試みた。 3 研究結果 (1 )発芽特性に見られるタネツケバナの集団分化

与那国(24D N),滑川(36o N),気仙(39o N)の3集団を用いて20/10℃および30/ュo-℃(12/12時間)の温度条件における発芽率の推移を1 2ヵ月にわたって検討したo その結果、与那国集団は高温領域の30β0℃で掛、発芽抑制が見られその抑制は1 2 ヶ月間にわたって継続した。しかし、 20/10℃では採種直後から5ヵ月にわたって 3 0-2 0%の発芽抑制が見られるがその後は9 0%以上の発芽率を示し、比較的 低い温度に依存した発芽を示す種子集団であることが明らかになった。対照的に、 高緯度にある気仙集団はいずれの温度領域においても採種直後から1 2ヵ月後まで 高い発芽率を維持し、発芽が温度に依存していない。一方、滑川集団は20/10℃の条 件において、採種直後から2ヵ月までは種子集団の8 0%が発芽に至らないが3ヵ 月目にいったん8 0%の種子が発芽可能な状態となる。しかし、 5から7ヵ月目ま で再び低い発芽率を示し、 9ヵ月以降は安定した高い発芽能力をもつ集団になる0 30/20℃では採種直後で2 5 %が未発芽であったものが徐々に発芽率を高め5ヵ月以 降は9 0%以上の高い発芽率を示すようになる。このように、発芽に対する種子発 芽の温度依存性に明確な集団分化が見られ、特に低緯度集団での高温による発芽抑 制効果は集団のフェノロジーを考える上で興味深い.

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-5-(2)日長/低温感受性に見られる集団分化

与那国(24o N),丸山(35o N),九十九里(35・5o N),山元(38。 N),気仙(39。

N)普代(40o N)、 6集団を用いて長日および短日条件に対する前繁殖期間を比較 し、これらに対する低温処理の効果を検討した。長日条件下ではどの集団も開花し 開花までの期間は緯度の低下とともに短縮した。低温処理を与えた後に長日に置い た場合さらに開花までの期間が短縮されたが高緯度の集団ほど著しい短縮が見られ た。一方、短日条件のもとでは開花に至った個体が九十九里、丸山、与那国の3集 団は9 0%以上であったが、山元、気仙では各々6 0%および2 5%と著しく低下 し、普代は全ての個体が開花には至らなかった。さらに、開花に要した日数は与那 国の6 2日に対して気仙は1 2 1日を要し、高緯度集団ほど短日条件下で花芽分化 に移行しにくいことが示された。低温処理と短日の組み合わせでは全ての集団で全 個体が開花し開花までの日数も著しく短縮され、特に高緯度集団での開花促進が強 く見られた。これらの結果から、開花が光周期に強く制御されているかどうかに明 確な集団分化が見られ、このことが集団の周年における開花フェノロジーを決定し ていると思われる。 (3)マイクロサテライト多型に基づいたシロイヌナズナの系統解析 ′ 日本全国各地に自生する1 2集団に実験系統株であるws,colを加えた1 4系統を 用いてマイクロサテライト2 9座位について検討した結果、全ての系統が異なる変 異を示し明確な集団間変異が認められた。さらに3系統、 1 0反復を用いて3種の 座位については変異がなく、集団内変異がないことが確認された。これらの結果か ら系統樹を作成した結果(図) 、 wsとcolがoutgroupになり北陸地域の集団が一つ のまとまりを形成することが明らかになった。これらの結果と各集団が示す表現形 質との対応を環境への反応性をも含めて現在検討中である。 4 まとめ タネツケバナを用いた適応機構の発育生理的な検討では、低緯度の集団が種子の 休眠打破における温度依存性が兄い出され発芽が環境によって厳しく制御されてい る。しかし、栄養成長から生殖成長への転換である花芽分化では日長、低温要求性 が低く、個体が一定のサイズに達すると自律的に生殖成長に切り替えることができ る0 -万、高緯度の集団は発芽の温度範囲が広くこの発育段階には制御系が関与し ていない。しかし、発育相の転換には強く日長や低温による制御が関与しており、 この制御系によって冬期の低温や乾燥によるストレスに耐えうる生活環を可能にし ているといえる。 シロイヌナズナの野生集団の系統解析にマイクロサテライトが集団間の変異を検 出する能力が高いマーカーであることがわかり今後の分子遺伝的解析に有効な手段 として期待される。集団の地理的な位置と変異の類似性が対応する集団と新潟や秋 田のようにかなりのズレが見られる集団がある。この種がわが国に搬入され野生集 団として定着する過程が異なっていることによってこのような違いを生み出してい ることも考えられるが今後の詳細な検討を待たなければならない。

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-6-.!30197m山)t!SOJUTtEJOS8tZ巴9賀PaN!StHOJJp山30tutStIO3 眉m月月割αⅦ叫旬刊げsgtI乱。rpt!JhJ099110!tatt払oILqd N.叫!J ・912tTd2日dSaq)JOB)tuぎ!JtZtIS百01JpatUrU)StJ03 割月利月叫寄りsauat!fpT!JhJOa巴tU!taua的OIJ(qd t'叫に

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高等植物における浸透圧ストレス耐性機構の解析と耐性遺伝子の導入

岩手大・農 高畑義人、東北大・遣生研 亀谷寿昭 1.はじめに 植物は常に様々な環境ストレスにさらされ、各植物種はそれらストレスに耐えて生 長しているo これら環境ストレスのうち、乾燥や高塩濃度のような浸透圧ストレスは 植物の生長に影響を与える大きな要因の一つである。これら浸透圧ストレス耐性の機 構を解析し、さらに耐性遺伝子を導入したトランスジェニック植物を作成すること は、耐性遺伝子の発現の解明や浸透圧耐性植物の作出等基礎および応用面での利用価 値が高い。本研究は、ナタネを用い人為突然変異による耐塩性植物Q)J作出ならびに乾 燥耐性は関与していると考えられている耐性遺伝子を導入したトランスジェニック植 物の作出を行い、耐性機構の解明を試みるものである。 2.研究経過

ナタネ(BTaSSicanapus) Topasの小胞子を単離後、 1aNLN-13培地に懸濁し、突然変

異源として紫外線ランプを用いて紫外線照射した後、得られた肱を0・7%NaClを添加し た再生培地に継代し、耐塩性個体の選抜をinvitroで行った。耐性を示した個体(Mo世 代)については耐塩性が遺伝するかどうかを明らかにするため、自殖種子あるいは正常 なTopasとの交配種子を採り、 M.世代の耐塩性について調査したo また、種子の耐乾燥性に関与していることが推察されているLEA(late embⅣogensis aboundant)遺伝子を導入した形質転換植物を作成するため、カリフラワーモザイクウ イルス(CaMV)の35SプロモーターにナタネのLEA遺伝子Lea76をつないだキメラ遺伝 子を構築し、アグロバクチリウムを用いたリーフデスク法によりタバコに遺伝子導入 を行った。 3.研究結果 (1)紫外線照射処理した小胞子から形成した不定腫5219肱を0・7% NaCl下で選抜したと ころ、 65肱が植物体に再生し耐塩性を示した。一方、 1.0%NaCl下での選抜では、 2910 肱を供試したが、すべて枯死した。耐塩性を示した65個体のうち最終的に順化できた

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-8-ものは11個体であった。これらのうち5個体は半数体で6個体は2倍体であったため、 2 倍体については自殖種子を半数体については自殖種子およびTopasとの戻し交雑種子 を採種した。順化したM。個体の耐塩性を1.5% NaClを含むMS培地における葉片培養法 で検定したところ、 SR4個体だけが89%の割合で緑色カルスを形成し耐塩性を保持し ていることが明らかとなった(Tablel)。また、次世代の検定は種子の多く採種できた 個体については、 1.5%NaCl下での種子発芽能力を調査することで行った。その結果、 対照として用いたTopasに比較して高い発芽率を示したものが数系統見られたが、幼 植物体まで生育できたものはほとんどなかった。一方、 M。世代で耐塩性を示したSR4 は半数体だったため5粒の自殖種子と12粒のTopasとの交雑種子しか採種できなかっ た。そのためMl世代での耐塩性の検定をM。世代と同様に菓片培養法で行った。その結 果、 1.3%および1.5% NaCl下でMl個体は90%以上の薬片が緑色カルスを形成し、また Topasとの交雑個体の耐性はSR4のM.系統とTopasとの中間の反応を示した(Table 2)。 以上の結果からSR4の耐塩性は遺伝的な形質であることが推察された。 (2) CaMV35SプロモーターにLea76遺伝子を連結したTiプラスミドを構築し、アグロバ クチリウムLBA4404を用いてタバコに導入した。導入後、 100mg八のカナマイシンで選 抜したところ、現在不定芽がいくらか再生してきているC再生した不定芽がまだ小さ いため遺伝子が導入されているかどうか確認できていないが、今後PCR法、ノーザン 法等を用いてLEA遺伝子の導入の確認および形質転換体での遺伝子発現を訴査してい きたいC 4.まとめ 植物の浸透圧ストレス耐性機構の解析にはストレス耐性能を持つ突然変異体の作出 が不可欠である。半数性不定肱が効率的に誘導できるナタネの花粉培養系を用いて、 hvtroにおける突然変異処理、耐塩性の選抜を行ったところ1.2%の効率で耐性種物が 得られた。そのうち1個体は耐塩性が次世代まで保持していることが見出された。今 後、この突然変異体を用いて、生化学的・分子生物学的に耐塩性の機構を解明してい きたい。一方、耐乾性については、種子の乾燥耐性に関与していることが推測されて いるLEA遺伝子に着目し、遺伝子導入を行っており、現在タバコで植物再生までこぎ つけた。これらが形質転換体であることの確認ができしだい、実際に乾燥耐性を持つ かどうか調査していきたい。

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-9-Table 1. Effect ofNaCl on callus formation from leaf disk ofmutamt plants selected byO.7% NaCl and B. napus cv. Topas.

Lines O% NaCl 1.5% NaCl

No.ofleaf Green callus No.ofleaf Green cullus

diskplated fわrmation (%)  disk plated formation (%)

S O12a mmmmⅣ……S 良 Is 良 Is 良 IT。。 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 27 7 0 0 0 0 0 0 0 0 7 7   0 3      3 0 0 ′0 0 0 3 nV O 3 0 0 0 0 9 0 0ノ 0ノ 0 0 0ノ 0 0 1 1    1       1 1    1 1 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 27 7 0 0 0 0 0 0 0 0 7 3 8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0ノ 00

Table 2. Effect of NaCl treatment on callus formation of MI plant of salt

resistantmutant SR4, Fl of SR4 x B. L7aPuS CV. Topas and B. napus cv. Topas.

Concentration Line No. ofleaf Green callus

ofNaCl (%)       diskplated formation (%)

0 Ml ofSR4 SR4 ⅩTopas Topas 1.3        Ml ofSR4 SR4Ⅹ Topas Topas 1.5        Ml ofSR4 SR4Ⅹ Topas Topas 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 3 3 3 3 3 3 3 3 7 0   0 3 0 0 0 ′b 0 0 O 3 0 0 0 0 0ノ 2   0ノ 1 1 1 1

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青色光受容体様フォトリア-ゼの接合菌類における遺伝子単離とその解析 東北大・加齢研 安井 明, 東北大・遭生研 大瀧 保,言寄 厚 1.はじめに 青色光受容体は高等植物から糸状菌にまで分布していて種々の青色光反 応に必要な光エネルギーを捕獲すると考えられている。この光受容体の一つの 遺伝子が高等植物より単離され、その黄白質は紫外線によりDNAに生じるどリ ミジン二量体を光のエネルギーで修復するDNA光回復酵素とアミノ酸配列の相

同性が高いことが示された(Abmad and Cashmore 1993 Nature 366:162-166)。この

関連は、これらの蛋白質の機能の分子機構、分子進化などの面から大変興味深 いものであるので、糸状菌や他の生物種での光回復酵素遺伝子の分布、及び光 受容体の分子進化について解析をした。 2.研究経過 これまでに我々は進化上遠く離れた、大腸菌、酵母、藍藻、放線菌、高 度好塩菌、アカバンカビ、などから光回復酵素遺伝子を単離しそのアミノ酸配 列を決定した。これらの間で見つけた30%以上の相同性から接合菌の酵素遺伝 子の単離を試みた。さらに光回復酵素遺伝子の生物界での分布を更に詳しく知 り、青色光受容体との進化的関係を明らかにする為に、高等動物の光回復酵素 遺伝子の単離、酵素の精製と光受容体の同定を行った。また、これまでに発表 された光回復酵素遺伝子の進化系統樹を作成し高等植物の青色光受容体の進化 的位置を求めた。 3.研究結果 接合菌からcDNAを作成し、数種類の微生物型光回復酵素遺伝子の相同 性を用いて遺伝子増幅(PCR)を行ったが、相同遺伝子を単離することが出来な かった。そこで相同性ではなく、酵素活性を指標にする方法を開発し、酵素活 性の知られている高等動物の光回復遺伝子の単離をまず試みた。高等動物の cDNAライブラリーを光回復酵素遺伝子が欠損した大腸菌で発現させて、その 大腸菌を紫外線照射した後に可視光を当て生存した細胞からcDNAを単離した。 この新しい方法により、魚類のキンギョ、メダカ、昆虫のショウジョバエから 光回復酵素遺伝子を単離した。これらは多細胞生物から始めて単離された光回 復酵素遺伝子であるが、特徴的で驚くべきこと、酵母やアカバンカビを含む微 生物由来の遺伝子と10%程度のアミノ酸配列の相同性しか持たないことであっ た。とりわけ顕著なことは、微生物型酵素の光受容体であるFAD結合やDNA結 合に重要なカルポキシ末端が全く異なっていることであった。これら高等動物 酵素間のアミノ酸配列の相同性を用いて酵素活性の存在が知られている有袋哨 乳動物ラットカンガルーより相同遺伝子む単離し、この遺伝子を大腸菌で高発 現させ、酵素を精製して、光受容体を同定した。それは微生物型と同じFADで あった。さらに我々は、古細菌に属するメタン菌の発表されていた光回復酵素 の一部アミノ酸配列に高等動物型光回復酵素と良く似た配列を見つけたので、 それを頼りに全遺伝子を単離したところ、この古細菌が高等動物型の光回復酵 素を持っていることが明かとなった。このように光回復酵素の遺伝子はユニー クな進化をしており、その機能的意味、進化における意義について解析中であ る。

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-ll-4.まとめ 図1に示すのは、これまでに決定された光回復酵素遺伝子から決定した 酵素のアミノ酸配列を比較して、その相同性から作成した進化系統樹であるo ここには、高等植物アラビドプシスの青色光受容体も含めてある。この図で明 らかなように、この青色光受容体の遺伝子は植物で比較的最近になって光回復 酵素遺伝子から生まれたことが推測されるoこのことは、接合菌類での青色光 受容体は必ずしも光回復酵素遺伝子から派生したとは限らないことを意味する この結果を踏まえて、今後の研究を展開していく予定であるo ラ・yト カ ンガルー 群母 丁カパンカビ 国L Neighborjoining法で作成した種々の生物由来の光回復酵素遺伝子及びアラ ビドプシスの青色光受容体遺伝子mY4)の進化系統樹. I

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113-接合菌類の環境応答としての接合反応の解析

東北大.遺生研 大瀧 保 東北大.遺生研 宮崎 厚 近畿大.農総研 吉田元信 1.はじめに 細胞間吉忍識は生体系の種々の発生過程において重要な役割を演じている。接合菌類 に属するヒゲカどの接合反応においても、性フェロモンとしてのトリスポリン酸だけで なく、特にその後期の反応においては、細胞間認識が発生過程を進める上で重要なチェ ック機構となっていることが、これまでの我々の研究で示唆されている。この機構こそ が、共通の性フェロモンを有する接合菌類ケカビ類の属間交姓を防ぐ機構になっている と思われる。しかしながら、この細胞間認識の機構は未だ解明されておらず、本研究で はこれを明かにすることを目的とする。 2.研究過程 接合菌類ヒゲカビ(Phycomyces b/akes/eeanus)の野生株と突然変異株を用いて種々 の組合せで接合を行った結果、接合過程のうち特に接合枝の接着の時期(S2期)およ び前配偶子嚢の接着の時期(S。期)に細胞間認識が最も重要な役割を演じていること を明かにした。すなわち、トリスポリン酸はS2までの極く初期の反応に関与し、それ 以降の反応は細胞間認識によって制御される。またシキロへキシミドがS 2期で接合反 応を停止させることを兄いだし、この事実から次に、 S2期における膜分画を種々の界 面活性剤で処理し、これらの発生段階で新たに出現するタンパク質をSDS-PAG E、 銀染色により積出することを試みた。 3.研究結果 野生株のS2期を用い、種々の界面活性剤による膜分画における抽出効率を調べた ところ、 1%デオキシコール酸(最終濃度0.5%)による抽出が効果的であ.?'た。デオ キシコール酸可溶分画、不溶分画をSDS-PAGEにより解析し、野生株の接合型で S2期特異的な分子量ca・40X1 03 (p40)と分子量ca・70X1 03 (p70)を検 出した。 p40、 p7 0ともにデオキシコール酸不溶分画に存在し、これらのタンパク質 は、 SDS-PAGEサンプルバッファーに懸濁後、 95oC、 5分間の熟処矧こよりは じめて可溶化され得る。一方、デオキシコール酸可溶分画、不溶分画をウエスタンブロ ッテインク後、種々のレクチン溶液と反応したところ、接合型のデオキシコール酸不溶 分画において、分子量66X1 03-90 Xr03にかけてConAとの反応性の低下が観 察された。 4.まとめ 今回検出したP4 0、 P7 0はS2期において新たに合成されたタンパク質であるか をアイソトープの取り込み実験等により確認し、その局在性を明かにする。また接合型

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-13-のデオキシコール酸不溶分画において、分子量66xl 03-90x 1 03におけるCon

Aとの反応性の低下は新規の糖分解酵素の誘導を示唆する。この点を明かにすることは ヒゲカどの細胞間認識の機構解析のためには不欠である。さらに、リン酸化等の修飾に よる特定タンバク質の活性化機構の存在も考慮し、研究を進めていく予定でいる。

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-14-混植されたオーチャードグラスとホワイトクローバーの 群落構造に及ぼす近紫外光の影響 秋田大・教育 寺井謙次    東北大・遺生研 熊谷 忠 1.はじめに 最近、自然の植物群落や作物一雑草関係において、近紫外光に対する植物の感受 性の違いが、種内・種間関係にどのような影響をもたらすかが関心を集めている。 本研究では、草地の実験群落を用いて、個々の構成種の感受性の差異と、成長量 に対する種間相互の影響について検討した。 2.研究経過 昨年の実験では、近紫外光放射量の増加がイネ科(オーチャードグラス)よりもマメ科(ホワ イトクローバー)の重量生長に顕著な阻害効果を示すことから、種間関係において、群落が 高密度であるほど、イネ科草がマメ科草に対してしだいに抑圧的に作用してくる可 能性を指摘してきた。しかし、群落生長を追跡する過程で、阻害効果の大きさが季 節によって異なる、いわゆる光回復効果の存在をうかがわせる現象がみられた。今 年度は、播種期を3段階、照射方法として自然光、 Low UV Enhancement(290nm以下 吸収・除去) 、 High UV Enhancemenの3処理を設けることによって、現象をさらに 整理することを試みた。 3.研究結果 各播種期の実験個体群について、昨年度と同様に、 ramet数、生草量、乾物草量 および根粒数(マメ科草)などを調査した。第1図に、置換えシリーズに基づき処 理間で比較した種間関係を、また、第2図には2草種間の相対的な密度比の変化に ともなう照射処理の影響を示した。概要は以下の通りである。 1 )近紫外光による重量生長阻害は明かにマメ科草において大きく、近紫外光の 照射量の大きい処理区ほどマメ科草の現存量は相対的に低くなり(曲線が下に 凸の関係) 、種間関係においてイネ科草が優占的になった(第1図) 0 2) 1 )の傾向はどの播種期の実験群落においても認められ、可視光量の季節変 化との対応関係は明確ではなかった(第1図) 0

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-15-3)近紫外光照射によって、マメ科草の個体重の生長量は著しく低くなったoし かし、成長量の低下が、マメ科草とイネ科草の相対的な密度比の変化とどのよ うに関係しているかということについては明確な結果が得られなかった(第2 図) 。下繁華であるマメ科草に対しては、近紫外光の影響に加えて、イネ科草 の被陰による受光量の減少が、密度比の違いによって変化するなど、これらが 複合して作用していることによるだろう。 4)昨年と同様、根粒着生数に対する阻害はみられず、また、地下部の生長量も 地上部のそれに対応していた。 4.まとめ 近紫外光照射が、群落の種類組成の質的・量的変化に影響を及ぼすことは明かで ある。しかし、群落構造変化の細部において、必ずしも再現性のある結果が得られ たとはいえない。これには、自然光(太陽光)が季節によって強さを変化させてい るにもかかわらず、同じ強さの近紫外光を補光せざるをえなかったこと、さらに、 気温や培地の水分など、季節推移の気象条件の変動によって生ずる種間の相互関係 の質的変化が考慮されていないことなどがその理由と考えられる。 可視光、紫外光とも人工的にシミュレーションできる装置での実験が待たれるo

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-16-Contro一

3     2     1

0.   0.   0 (∼.Lug)1竜一豊AJq

Lou UV Enhancement HIL8h UV Enhancement

0.5     1  0    ′ 0.5     1  0     0.5     1

P「oportion of Whit.e clover

第1回  オ-チャ- ド ク、ラ_ス(OG)とホワイ ト クロ-Jヾ- (WC)の置‡負えシt}-ズここおらナる近紫夕t一

光.E],q鼻寸の景壬響. 囲中の日イ寸乙ま播種日を示す

. OEPとまOCを. ーEr7乙まWCを表す.

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-17-0.8

V・C(Pure stands) V・C(Mixture O・75) U・C(Mixture 0.5) U.C(Mixture 0.25)

信山

-'=1-'!':- : I--i-''・:?:I,i;;I:i-;;:i・{-Ti:I::'.--I::'駕:I:'宝'::i

-I-㌔

第2図 密度上ヒとWCのイ固イ本重の関係ここ及乙ます 近紫タト光_B貿身寸の景壬響 く7月播種区) . 国中の0. 25, 0. 5, 0. 75及びPu r e乙ま, (OG+WC)を1. 0としたときのWCの上ヒ率を 売声Ei L

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ー18-根の水分屈性発現機構と その生態的意義

東京農工大・農 石原 邦・平沢 正 東北大・遭生研 高橋 秀幸・菅 洋 1.はじめに 根が水分屈性を示すことは古くから指摘されていたか,最近になっ てその存在が実験的に証明された。根の水分屈性発現機構を解明し.いろいろな水 環境に適応して生活する植物の根系の形成を水分屈性の視点から検討し明らかにす ることは,作物栽培における合理的な水管理法を確立することに対してだけでなく, 未来の地球外環境における植物栽培の基礎としても重要であると考える。本研究は 水分屈性がおこる時の根の周囲の水環境および水環境か根の伸長部の水分状態や細 胞壁の性質に及ぼす影響を明らかにし,水分屈性の生態学的意義を検討したもので ある。 2.研究経過 重力屈性を欠くエンドウ突然変異株ageotropumを用い, 25oCの恒 温室でつぎのような実験系で実験を行った。すなわち.たて12C恥 横20cm,育 さ 25 cm アクリル製の箱の底に,所定の空気湿度を保つため KCl あるいは K2CO3 飽和溶液を置き,箱の上方片隅に湿ったチーズクロスで包んだ10Ⅹ 10Ⅹ3cmの ウレタンブロックを固定した。 25oCの暗所に 2- 3 日置き,根長が20 - 35 mm となった幼植物を虫ピンでウレタンブロックに固定した。 まず,ウレタンブロックからの距離と根の伸長方向および空気湿度との関係を明 らかにし,ついで,このような根の周囲の湿度環境が高湿度側(ウレタンブロック に面した側)と低湿度側にある根の組織の水分状態にどのような影響を及ぼしてい るかを検討した。さらに.水分屈性は低湿度側にある根の伸長部の伸長速度が高湿 度側にある根の伸長部に比べて大きいことによっておこるので, (1)式の生長方程 式に基づいて生長に関与するパラメータを測定し,低湿度側と高湿度側とで生長速 度の異なる要因を検討した。 G = 1/V・(dV/dt) = N (Vp - Y)    (1) (G:生長速度, †:細胞の休横, t:時間, m:細胞壁の伸展係数, Vp:膨圧, Y:降伏圧) 3.研究結果 箱の中の空気湿度はウレタンブロックから離れるにしたがって急 激に減少し,距離が大きくなるとゆるやかに減少した。根の周囲の空気温度は伸長 乱 根端部ともに,根の表面に近づくほど高くなったが.ウレタンブロックに面し

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-19-第1表 高温度側に屈曲しつつある根の伸長郎‡と成熟部‡の組織の水ポテンシャル(Vw) , 浸透ポテンシャル(Vos).膨圧(Vp)の比較 伸 長 部         成 熟 部    Vw(b) - Wv(a) Vw(a)  Vos qTp Vy(b)  Vos Vp (NPa)  (MPa) (那)a) (MPa) (MPa) (HPa) (MPa) 高湿度側  -0. 65  -1. 13  0. 48  -0. 25  -0. 77  0. 52   0. 39 (0.02)‡‡ (0.05) (0.03) (0.03) (0.04) (0.02) (0.03) 低湿度側  -0. 66  -1. 12  0. 46  -0. 27  -0. 81 0. 54   0. 38 (0.03) (0.07) (0.08) (0.04) (0.02) (0.04) (0.02) iI申長都:根端より1 -8mTn,成熟部:根端より8- 15mm. ‡‡ ( )内は標準偏差(第2, 3表も同じ). た側と反対側の温度差は根がウレタンブロックに近い時には大きく,離れるにした がって小さくなった。水分屈性が明らかに認められるのは,根の両面の空気温度差 が約 0.5・%以上ある時で,それ以下になると水分屈性が認められなくなった。 発根した幼植物を実扱系の空気湿度勾配の大きい条件におき.根端が高湿度側に 向かいつつある時に根端より1 - 8皿皿の成熟部を一部含む伸長部を切り出し.高 湿度側と低湿度側とにたてに二分割し,それぞれの部位の水分状態を測定したとこ ろ,高湿度側と低湿度側の伸長組織の水ポテンシャルには相違がなく,また,浸透 ポテンシャルや膨圧にも違いは認められなかった(第1表)。このことから水分屈 性は伸長組織の水分状態の相違によっておこるものではないことになる。このこと は伸長部にラノリンを塗り,高湿度側と低湿度側にある伸長部の水分捜失速度の相 違をなくしても水分屈性がおこることからも明らかであった。なお,伸長の完了し た成熟部においても,高湿反側と低湿度側の水ポテンシャル,浸透ポテンシャル, 膨圧には相違か認められなかった。 伸長組織を切り出し,伸長組織への水の供給を断つと.伸長組織の細胞壁のゆる みによって伸長組織の膨圧は急激に降伏圧まで低下する。このようにして求めた降 伏圧には,高湿度側と低湿度側とで相違はなく.第2蓑 根の伸長郭の膨圧(Vp)と降伏 圧(Y)の比較 したがって,生長に有効な膨圧 (Vp - Y)に も相違はなかった(第2表)。伸長組織の可塑 Vp Y (Vp- Y) (MPa) (MPa) (MPa) 的伸展性は.低湿度側の根の組織は高湿度側の 高湿度側 根の組織に比較して明らかに大きかった(第3 低湿度側 義)。しかし,垂直方向に伸長している根の同 -20-0.73  0. 56  0. 17 (0.02) (0.05) (0.03) 0.70  0.56  0. 14 (0.02) (0.04) (0.02)

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じ部位を測定しても,可塑的伸展性には 相違がなかった。したがって.水分屈性 における根の屈曲は低湿度側にある伸長 組織の伸展係数が高湿度側の伸長組織よ り大きくなることによっておこることが わかった。 4.まとめ 根の水分屈性は低湿度側に ある伸長組織は高湿度側にある伸長組織 に比較して,膨凪 降伏圧には違いがな 第3表 鰍こ2分割した根伸長部の可塑的仲展性 (PE)‡‡の比較 測定部位     pE (〃m) 屈曲しつつあ 高湿度側(l)  7.4 (3.5) a書‡ ある根    低湿度側(2) 15.2 (8.0) b 重力方向に伸   (1)  14.2 (3.7) a 長している根   (2)  13.1 (3.8) a ‡根端より1 - 7mmの伸長部の組織を0.5mm min 'の速度で10 gの荷重がかかるまで引っ張 り, 10 gの荷重を最初にかけた時の伸びた長さ と2回目にかけた時に伸びた長さの差.測定中 水分の規矢を防ぐため,湿ったろ紙をはり空気 湿度を高くした容器に組織を置いた. いが.細胞壁の伸展係数が大きいことに ‡‡異なるアルファベット間には5%の水準で有意 差かある. よって伸長速度が大きくなって根が高湿 度側に屈曲することによっておこる。さらに,低湿度側にある伸長組織は高湿度側 にある伸長組織に比べて伸長速度が大きいので,吸水速度も大きいことになるが. 両組織の間に水ポテンシャルの違いがないことから,低湿度側の伸長組級は高湿度 側の伸長組織に比べて水の透過性が大きいことによって吸水速度が大きくなってい るものと考えられる。水分屈性は温度が根端で感知され 伸長組織の細胞壁の伸展 性と組織の水の透過性が影響を受けておこることになる。 空気中における水分屈性は根端の両側の相対温度差が 0.5 %程度あればおこる。 この温度差は 0.6 - 0.7NPa程度の水ポテンシャル差に相当する。土壌水分が減 少した時には土壌の水透過係数は著しく減少する。したがって,土壌水分か減少し てくると,根の近傍では大きな土壌の水ポテンシャル勾配が生じ さらに,密に根 か分布している土壌と根の分布の少ない土壌との間に大きな土壌の水ポテンシャル 勾配ができることになる。実際の土壌における水分屈性の存在と水分屈性のおこる 条件については今後の検討にまたねばならないが,以上の結果に基づいて考えると, 根の水分屈性は,土壌に生育する植物においてもおこり,根系の広がり.とくに土 壌水分の多く残っている土壌の下層への根系の広がりを促進し,重力屈性とともに 根系の形成に関与している可能性が考えられる。水分屈性には種間差,品種間差が 認められているので,水分屈性の程度の違いが乾燥耐性の種闇盈 品種間差の要因 となっていることもおおいにありうると考えられる。 21

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土壌糸田菌の挿入医l子のオ灸紫とこ単離

茨城大・農学都 南滞 究     東京大・分子細胞生物研  大坪 栄一 東北大学・漣生研 服部 勉 1.はじめに 近年、挿入因子やトランスポゾンなどの転移性因子が種々の生物に分布している ことが明らかになってきた。最も詳しく報告されているのは腸内細菌やトウモロコ シなどであるが、生態的・生理的な背景との関係に着目している研究は少ない。ダ イズ根粒菌(BzTadyrhl'zoblum JapoDl'cum)では挿入因子と類似した構造的特徴を持 つ反復配列RSα/RS βを異常に多く(ゲノム当り120-200コピー)持つ超反復 配列保有株が特定の圃場から多数分離され、単生状態における増殖速度が通常株よ り低下していることが明らかにされてきた。これは、反復配列RSα/RSβがゲ ノム上で多数転移し,ゲノムの再編成や増殖に関わる遺伝子の破壊を起こしたため ではないかと推定している。また、服部らは草地や水田から単離した土壌細菌エコ コレクションを用いて、増殖速度とゲノムサイズには負の相関があることを発見し 、挿入因子などの転移性因子の関与が考えられた。そこで、ダイズ根粒菌超反復配 列保有株にはRSα/RS β以外の反復配列が存在しているか調べ、超反復配列保 有株の遺伝的な解析に資すると共に、服部らのエココレクション代表株からの挿入 因子等の分析・単離を試み、転移性因子との関わりがあるか否か検討した。 2.研究経過 ダイズ根粒菌通常株と超反復配列保有株から調製した染色体DNAを変性・再生 させS lヌクレアーゼで処理することにより挿入園子やその他の反復配列を二本鎖 DNAとして分離できる Ohtsubo らによって開発されたHeteroduplex (HD)法に よって、逆方向繰返し配列として存在している挿入因子の検索を行った。 服部らが草地・水田土壌より単離され、コロニー形成曲線・世代時間・ GC含量 ・ゲノムサイズを調べられたエココレクションの代表株(グループⅠ、 Ⅱ、 Ⅲ、 Ⅳ 、 Ⅴ)を対象として、同様な挿入因子の検索を行った。

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-22-3.研究結果 ①本法の検出感度を検討するために、逆方向IS50ペアーを持つTn5が染色体中 に1個挿入されたBzladyThl'zobl'um elhaDl'1'USDA83変異株とその親株USDA83のHe teroduplex分析を行った。 Tn5挿入変異株でのみ1.5 kbのIS50のバンドが観察さ れたので、本法は染色体上に存在する一組の逆方向反復配列でも検出が可能である ことが判明した。 ②ダイズ根粒菌のHeteroduplex(HD)分析の結果をTable 1.に示す。通常株では ほとんど何も観察されないのに対して、超反復配列保有株では多数のHDバンドが認 められた。新潟タイプの超反復配列保有株(NC/NK株)において最も強いシグナルを 与える1.2 kbのHDバンドは、 RSαをプローブとしたハイブリダイゼーションより RSα配列そのものであることが明らかとなった。感光時間を長くすると、 2倍の 大きさの2.4 kbの位置にもわずかにRSαとハイブリダイゼーションを起こすDN A断片が認められた。また、 1.4 kbと2.0 kbのHDバンドが全ての超反復配列保有株 に認められたが、 1.4kbのHDバンドはハイブリダイゼ-ションによりRSβ配列 であることが判明した。以上の結果はダイズ根粒菌超反復配列保有株において、 R Sα・RSβがFig. 1のように近接して逆方向状態に存在していることを示して おり、ダイズ根粒菌超反復配列保有株では、大規模なゲノム再編成が起こっている ことが考えられた。 ③エココレクションのHD分析の結果をTable 2に示す。生育の速いクループⅠの 4枚およびグループⅡの1株HDバンドが認められた。 HDバンドを切りだしてプロー ブとしてサザシハイブリ行ったところ、最もゲノムサイズが小さく生育の速いグル ープⅠのⅠ-101,ト121株において多数のハイブリダイゼ-ションバンドが現われ た。従って、 HD法で調べた範囲では、ゲノムサイズが大きい細菌ゲノムに多数の皮 復配列や挿入因子が存在しているという予想は支持されなかった。 4.まとめ 染色体DNAを変性・再生後、 S lヌクレア-ゼで処理するheteroduplex(HD)分 析によって、ダイズ根粒菌超反復配列保有株において大規模なゲノム甲編成が起こ っていることが推定された。また、草地土壌細菌エココレクションにおいてゲノム サイズ・増殖速度と反復配列・挿入因子に明確な関係は兄いだされなかった。

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-23-Table 1. lIcLrodupLcx(llt)) analysis and sir.C Or mjor Ill) bands

on Lhc gcnome or soybean bardyrhil・ObLa

主悪評r。r.机onIH) sir/.c in major HD bands (kb)21

]てSa lくSβ   unknown NC4a 且:鵬a uC41a N(コa # NC32a # 66 2N. 00 22 44 りん∩ム 一一一++ T7 'r9 Tl2 rr2 # T15# 'r22# L 1 1+++ 2.0,  2.7 2.0,  2.7 2.0, 2.6 USl)∧1 10 USl)〈122 USl)∧1 23 USl)∧31 USl)∧76 U Sl)人83 U St)∧94 l r+1 1 1 1 # iE_ 2 0 2 7 2

1) l'rcr'LXS NC, NK, T indicaLc isolaLcs rron Naka・/・awa,

"#aR:a椴h訊':oEac聖霊Sds:SIS:≡S・皇甘・L S。 IaLcs.

usE)^31, USE)^76, USl)∧83 and USL)194 arc classlricd as

/i e/hanI'L', YhiLc Lhc oLhcr as D. Jhpo〝L'cIJm

2) lID or ]‡Sα and RSβ Was vcriricd by hybridiz・aLion.

RS-alpha (1.2 kb)

RS-beta (1.4 kb)

Table 2

HD formation and its multiplicity on the genome

Ayerage Ayerage formation HD sequence genOme doubling

size (Mb) time (h) strain HD Multlpllcityof Grolu_7.ll 。 M 1-102 l・10S I・108 00 1.41  0.71 Grol叩ⅠⅠ ⅠⅠ・ 1 1Ⅰ-2  0 11・S 2.56   0.71 Group Ill II1-4 ⅠⅠⅠ-ll IIl・lS llI-16 3.40   2.06 Group IV IV・ 9 ⅠⅤ-10 ⅠⅤ・31 1Ⅴ・36 (Group IV叩CCinc) 5.72   9.43 HD : Heteroduplex Niigata Tokachi typelmS typeIIR5 + +   + Fig. 1

DistributioJ) And direction of RSs on HRS genomes by heterodupJex analysis

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124-インゲン根腐病菌における形態分化機構の染色体D NA構造による解析 岐阜大・農     百町 満朗 東北大・漣生研  服部 勉 <はじめに> PL/SarJ'uu菌は胞子の多型が存在することで有名である。すなわち、この菌は大型分生 胞子と小型分生胞子を形成する。一般に大型分生胞子は病原性に関与し、不利な環境下で は大型分生胞子中あるいはその発芽管の先端に厚膜胞子を形成し生存するとされるが、本 菌の小型分生胞子の生態に果たす役割については明きらかでなく、胞子の多型の意義も不

明である。ところで、インゲン根腐病菌(Fusar/-I/m S・0/ah/ f. sp. phaSeO//')は大型分生

胞子のみを産生し(以下、大型株と呼ぶ) 、長期にわたる継代培養のような特殊な場合を 除き小型分生胞子をほとんど塵生しないとされてきたが、これまでの我々の研究結果、本 蘭から実験的に容易に小型分生胞子を出現させ得ることが明らかになった。また、小型分 生胞子のみを産生する株(以下、小型株と呼ぶ)も得られ、さらには小型株から大型分生 胞子を出視させることも可能であった。すなわち大型株と小型株の間の連続性を証明でき た。そこで、本研究では、インゲン根腐病菌の大型株と小型株の連続性を圃場レベルで明 らかにするとともに、分生胞子の形態分化と染色体 DNAの構造がどう関わっているかを明 らかにすることを目的としている。さらに、得られた知見をもとに FL/Car/un菌の胞子多 型の意義を明らかにすることも最終的な研究目的としている。 <研究経過>

①インゲン根腐病菌(PusarI'un so/311i 千. sp. phaseo/I')は小型分生胞子をほとんど産

生しないとされてきたが、これまでの研究結果、実験的に小型を出現させ得ることが明ら かになった。また、小型株から大型分生胞子を出現させることも可能であった。すなわち

大型株と小型株の間の連続性を証明できた。 ②大型株、小型株および混在株から抽出した

DNAを制限酵素で切断後、 A/iemarJ'a a/ternataの rDNAをプローブに用いてRF L P 解析したところ、大型株と小型株の間に多型が検出された。 ③′j\型株は大型株より腐生能 力が高いことも明らかになり、宿主のない生存に不利な環境下では大型株から′ト型株に、 また、宿主であるインゲンに感染することで小型株は再び大型株に変化する可能性が示唆 された。 <研究結集> インゲン根腐病菌の大型株と小型株の形態分化や寄生性▲腐生性の分化と染色体 DNA構造 の関連をより詳細に調べるため PCR を用いた RAPD解析および PCRで増幅した rDNAの 25

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---ITS領域の RFLP解析を行った。大型株には日本の菌株の他にアメリカの菌株、あるいは 分離年度の異なる常株を用いた。また、分離場所や分離年度の違う大型株から変化した小 型株、あるいは大型株から小型株に変化したものをさらに大型株に変化したものも用いた。 その結果、以下の点が明らかになった。 ①プライマーにR C O8、 P14、 P RI ME R l、 R28を用いたP C R-RAP D解析結果、いずれのプライマーを用いても概ね大型 株同士と小型株同士の間にはそれぞれ極めて良く似たバンドパターンが現れ相互に高い類 縁性が認められたが、大型株と小型株の間では顕著な違いがみられた。この関係は同一菌 株の胞子型の変化にともなっても認められ、大型株から変化した小型株は小型株のバンド パターンを、また、小型株から変化した大型株は大型株のバンドパターンを示した。さら には、大型株一小型株一大型株と変化する度に各分生胞子型のバンドバターンに変わるこ とも明らかになった。また、大型株のバターンは、分離場所や分離年度の遠いにより大き く異なることはなかった。 ②プライマーにI T Sl, I T S2. i T S3およびI T S4 を用いてr D NAのI T S領域を増幅し、制限酵素E c o RI, M s pI, B amⅢ, S

al I、およびX b aIで切断L RF L p解析したところ. I T S領域のサイズは大型株

と小型株ともにI T S aが0. 23Kb, I T S bが0. 34K bの計0. 57K bで両

者に差はなかったが、制限酵素による断片長に大型株と小型株で差異が認められた。また、

制限地図の結果、 I T S aには大型株と小型株ともに切断部位がなかったが、 I T S bで は大型株にMs pIによる切断箇所が2箇所、小型株にMs pIとE c o RIによる切断 箇所がそれぞれ-箇所あり、大型株と小型株の間にI T S-R F L Pに違いがあった。こ の違いはP C R-RAP Dの結果と同様、分生胞子型の変化にも現れた。 <まとめ> これまでの結果から、すでに、大型株と小型株から抽出したDNAを制限帝素で切断後、 A/iemar/'a a/iemataの rDNAをプローブに用いてRF L P解析したところ、大型株と小 型株の間に多型が検出されており、 氏 F L Pバンドバターンは大型株間、小型株間でそれ ぞれはぼ一致したが、大型株と小型株の間では異なっていることが明らかになっていた。 今回、 P C 氏-RAP D法とr DNAのI T S領域のP C R-RF LP法の結果も大型株 と小型株が明確に分かれる結果となった。すなわち、分生胞子型の変化にD NAレベルの 変化が密接に関連していることが明らかになった。今後はI T S領域などのDNAの一部 の構造を塩基の配列の面から調べ、大型株と小型株で塩基配列がどのように異なっている かを明らかにするとともに、分生胞子型の変化に関連しながら染色体DNAの一次構造が どのような仕組みで変化し、さらに復元するのかを明らかにする必要がある。

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-26-地圏環境の微生物が塩濃度変化に脂質修飾で適応した際の脂質膜物性の変化

東北大・理 大木和夫 東北大・理 小林俊秀 東北大・過生研 服部 勉 1.はじめに 地球上の生命はその誕生から地球環境と一体のものであり、生物の個体自身が形 成する生体系と多様な生物種が形成する生態系は地球環境の変化とともに進化して きた。 したがって、変動する環境において、個体および細胞の生理活性を低下さ せないようなシステムとして生育環境への適応機構を本質的に内在している. 実 際に、このような適応機構が多細胞生物から単細胞生物まで見出されている。 さ らには、変温生物に限らず、恒温生物の細胞でも温度変化に対する適応現象が観察 されている。 つまり、細胞レベルで環境への適応能力をもつことは、生物の永い 進化の過程で獲得したものと考えられ、これは、ストレスへの応答機構に見られる ように遺伝子による制御と開通した分子レベルので機能として、本来、細胞に備わ っているものと想像される。 ところで、細胞は生体膜で構築され、その基本膜構 造は脂質分子の集合体として形成されていることから、多くの細胞は温度を始めと する環境因子の変化に対して、細胞膜の脂質構成を修飾して適応することが知られ ている。 この修飾適応は細胞膜を構成する脂質膜の物性の環境因子に対する依存 性が分子種により異なることを利用している。 例えば、温度変化により不適当な 状態に変化した物性は温度依存性が異なる分子種に脂質を変換することで修復して いる。 一方、土圏環境の微生物では環境の塩渦度に依存して脂質修飾が惹起され る可能性を示唆しており、土壌細菌の生育環境では温度因子に加えて塩渦度の変化 が重要な因子となっている。 そこで、本塩渦度変化による脂質修飾が脂質物性の 視点からどの様な適応現象になっているかを温度因子と比較しながら、解明するこ とを目的として、研究を実施した。 2.研究経過 一般に、細胞を構築する生体膜については、その流動物性が調べられ機能との関 連が考察されている。 しかし、土壌細菌ではその細胞膜の流動物性ついての知見 が乏しい。 そこで、土壌細菌から総脂質を抽出し、蛍光分子であるDPHを用い

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-27-て、その蛍光異方性から脂質膜の流動物性の測定を行った。 脂質膜の流動物性は 脂質構成、とくに、脂肪酸組成と相関があることが知られているので、その分析を ガスー液体クロマトグラフイ-であわせて実施した。 一方、湖沼などに生育する原生動物のテトラヒメナについて、生育温度にたいす る脂質膜の相転移物性を測定し、変動する環境下に生育する生物の適応現象の指標 とする実験を行った。 【脂質膜の流動物性の測定法】 1)脂質溶液の溶媒を窒素気流および減圧により留去する 2)HEPES緩衝液(50mM HEPES, pH 7・ 3)を1m1加え、 50℃で2分間超音波処理して、脂質膜(リポソーム)を調製する 3)脂質・分子に対して、 200分の1程度のDPHを加えて、蛍光分光光度計(Am

inc。 Bo…an Series 2 with auto polarizer)により、 10℃から50℃の範囲で、

励起波長359nm、蛍光波長426nmでDPHの蛍光異方性を測定する 3.研究結果   0・25 0.2 ± L? 0.15 鉦 # 芯 011 0.05 0 5   15   25   35   45   55 図1.総抽出脂質で調製した脂質膜のDPHの蛍光異方性の温度変化 温度(℃) DNB対照と0. 4% NaCl培養の土壌細菌の総抽出脂質から脂質膜(リポ ソーム)を超音波処理により調製したとき、前者では均一な分散液となったが、後 者は凝集塊が生じていたo そのため、 0・ 4% NaClから抽出した脂質で調 製した脂質膜では、蛍光測定において凝集塊による散乱の影響が強く表れていた。 脂質膜に導入されたDPH分子の蛍光偏光異方性の温度依存性は図に示したとお りであり、散乱光の影響のため、確定的な結論は述べ難いが、その比較からは、 〇・

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一28-4% NaCl培養細胞において、異方性の値が大きい傾向があった。 これはそ の脂肪酸組成において飽和脂肪酸が相対的に増加し、不飽和脂肪酸が減少していた 以下の脂肪酸分析結果とよく対応している。 表1.ガス-液体クロマトグラフィーによる脂肪酸の分析結果 【DNB対照】   【0. 4% NaCl】 15. 1 %      19. 6   % 1 2. 5 6 7. 7 0. 9 4 3. 5 土壌細菌は環境の塩浪度変化に対して、脂肪酸構成を変化させており、その変化 は不飽和脂肪酸を減少させ、相対的に飽和脂肪酸を増加させる方向である。 その 結果、細胞膜の硫動物性は低下し、細胞膜が強固になると想像できる。 4.まとめ 今回の実験結果は、土壌細菌はNaC lの添加により脂肪酸不飽和化酵素の発現 または活性が抑制されると解釈するのが最も妥当である。 細胞膜の流動物性との 関連をDPHの蛍光偏光異方性で測定したところ、その流動性を減少させる方向の 変化となっていた。 このような脂肪酸構成の変化は、細胞が環境温度の変化に対 して適応する機構では、環境湿度の上昇時に見られる変化に対応しており、これは 細胞が塩渦度の増加に伴う浸透圧の上昇に抵抗する適応変化をしていると理解でき るち。 参考として、原生動物のテトラヒメナにおける温度適応を抽出脂質の示差走査熱量 測定で調べたところ、生育温度に対応して脂肪酸不飽和化酵素が発現し、その結果 脂質膜の相転移温度が生育温度に対応してシフトしていた 一方、土壌細菌は、脂質類似の成分としたホパノイドをもつことが知られており、 ホパノイドの含量が塩浪度に依存して適応変化するかの検討を次に行う計画である。

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-29-恥ランス汐皿ニッタ植物を周態もた帝メラ植物の俸底と遺優子発現

東京農工大・一般教育部 平田 豊、東北大・遺生研 亀谷 寿昭 東北大・遺生研 菅野 明 1. はじめに 接木やキメラ植物における細胞・組織間相互作用を明らかにするために、一部 に材料には予め指標遺伝子としてGtJSやカナマイシン抵抗性遺伝子を導入した西洋 ナタネを一方の親に用い、アブラナ属のいくつかの組み合わせでキメラ植物を作 成し、その生理的、遺伝的相互作用を研究した。この研究は、植物細胞や組織間 での遺伝子転移が存在するかどうかという、生物学上の重要命題を解明すること を主な目的にしながら、植物細胞の相互作用を生理的側面や、形態形成おける相 互作用を含めてとらえ、かつ、育種や園芸にも応用することをめざすものであ る。 2.研究経過 キメラ植物は主として東京農工大学一般教育部で平田らが作成、維持し、必 要に応じて、遺伝生態研究センター生育させ、分析に供した。 キメラ植物の形態、細胞・組織観察、種子世代の変異はキメラに用いた両親植 物の有する異なる諸形質をできるだけ克明に調べた。キメラの細胞層構成を明ら かにするためには、形態形質だけでなく、酸性フオスフアタ-ゼアイソザイムの パターン、 pcR法によって増幅されたDNAフラグメントパターン、また、細胞の内 層構造を調べるためには、 GUS遺伝子の発現がきわめて有効であった。 遺伝子の分析は基本的に東北大遺伝生態研究センターの菅野明と亀谷寿昭が担 当し、数度のデータ検討会を行った。 3.研究結果 キメラの細胞・組織構成の同定 本研究で主に取り扱ったB. napusとB.Oleraceaとのキメラの基本構造は、こ れまですでに行ってきたB. OleraceaとB. campestrisとの間で作成し、分析 してきた結果とほぼ同一とみなされた。従来の成果をもとに種々の分析結果によ り総合して、 3層構造論に基づいて同定した結果、対照植物の両親-の復帰型 wWw(LZ-LH-LZI) , RRR以外に周縁型キメラとしてWⅣR. WRR, WRW, RWWが得 られた。これに、混合型、不完全周縁型キメラが得られた。しかし、厳密な組織 観察からは、こうした大まかに同定した周縁型キメラでも、実際にはかなり複雑

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-30-な細胞組織構成をしており、さらに明確な指標形質(遺伝子)が不可欠であるこ とが分かった。とくに西洋ナタネは、 AACCとキャベツのゲノムを含むため、キャ ベツの性質も合わせ持っていて、厳密な同定には困難が伴う場合があった。とは いえ、複数の指標形質を総合的に調べることにより、キメラ層構造の同定は昨年 に比べ格段に厳密になった。 GUS発現による組織の同定は、特に細胞レヴェルまで とはいかないが、ある程度の細胞塊まで同定できる利点があり、有効であった。 地金配_ pcR法によるDNA分子多型の分析結果はキメラ諸組織における細胞層構成を明ら かにする上で有効であった。すなわち、周縁型においては、づんしたけいのパタ ーンから見ても、ほぼ同様の結果が得られ、少ない頻度で、両親にない多型バン ドが見られた。さらに、花弁はアイソザイム分析の結果と同様にLll帽の関与がほ とんどないが、この場合にも、両親にはないバンドの多型が認められた。こ.うし た結果は、キメラ植物の細胞組織間で、生理的な相互作用だけでなく、遺伝的相 互作用の存在する可能性を示唆している。 キメラ植物からのブロトブラスと及び花粉培養に由来する細分化個体の変異 これら細分化個体中に、高頻度でアルビノ及び斑入り個体が得られた。これは 単純に培養過程で生じる突然変異とは考えられないので、何らかの相互作用の結 果と考えられる。しかも、多くのアルビノ個体のシュートは相葉で、アントシア ニンを強く発現し、一定の培養期間後枯死した。これら形態観察によっても、一 種の変異であると推定され、今後検討すべき興味ある現象と考えられる。 キメラに由来する種子世代の変異 種間キメラ植物は一般に不稔性が強い。しかし、戻し交雑や隣家受粉によって 種子の得られろことがあるoそれらキメラに由来する種子世代について∴調べた ところ、若干の変異が他の組み合わせの種間キメラ後代の場合と同様詑められ た。現在、解析中である。いずれにしても、キメラ植物の細胞・組織間において も、生殖細胞を介しても何らかの遺伝的相互作用、変の生じていることが強く示 唆された。 4.まとめ 以上のようにこの2年間にわたる多くのキメラ植物を用いた研究から、ダー ウィンやウインンクラーらが推定したように、キメラ植物や接木植物で生じてい る相互作用は単純ではなく、遺伝的な変異も含んで視野にとらえる必要のあるこ とが分かってきた。そして、キメラ研究が、植物での初期の形態形成の素材とさ れたように、より厳密な指標を用いることにより、今後の発生研究にさらに有効

Table 1. Effect ofNaCl on callus formation from leaf disk ofmutamt plants selected byO.7% NaCl and B. napus cv. Topas
Table 1. lIcLrodupLcx(llt)) analysis and sir.C Or mjor Ill) bands on Lhc gcnome or soybean bardyrhil・ObLa
Table 2 1nsertJon sequences (lS) hornoLogous to ISB14A from a.Japonicum HRS iso一ate NK5 IS Origin DNAhomology Length TIR CoJnmCntS ( % )   (bp)● (bp) ISB14A a. )'aponicum IS6120 M. smegma由 ISR皿3  R. met,.LotJ' IST2 T. /eTT・OaruanS IS256   S. awe比ゞ ノ 564946

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