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産学連携の仲介組織:TLOの技術移転戦略に関する一考察

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Academic year: 2021

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(1)0611D1300 産学連携の仲介組織:TLO の技術移転戦略に関する一考察 〇曹 勇. 井口泰孝. (東北大学 工学研究科 技術社会システム専攻) 1. はじめに 1998 年に制定された大学等技術移転促進法(TLO 法)の実施を機に、技術革新と新事業創造を誘発す るツールの一つとして TLO(Technology Licensing Organization)が大学を中心に立ち上げられ、これまで 個々の教官レベルで行われてきた大学から産業界への技術移転に新しいチャンネルが誕生した。2004 年 3 月現在、36 の承認 TLO と 5 つの認定 TLO が存在し、大学等から生み出された研究成果の特許化、ラ イセンシングの業務を遂行している。しかし、着実に制度整備が進められた日本ではあるが、TLO の現 場において技術移転活動が日々どのように行われているのか、これらの組織は如何なる問題を抱えてい るのか、現在の枠組みの中で与えられた機能を充分に発揮することができるのか等、産学連携推進施策 の有効性を確認する上でチェックすべき事項が数多く残っている。本稿の目的は、TLO の技術移転戦略 に注目し、現地調査の結果に基づきその現状と課題を検証することである。. 2. 承認TLOの現状 設置形態としては、2004 年 3 月現在、株式会社 17 機関、有限会社 3 機関、財団法人 9 機関、学校法 人 7 機関が存在する。組織形態としては、学内組織である内部型 7 機関と学外組織の外部型 29 機関に分 類される。外部型においては一つの大学を対象とする単一型 9 機関と複数の大学を対象とする広域型 21 機関にさらに分類することができる。内部型はすべて私立大学に所属する TLO であり、学校法人が設置 者となっている。外部単一型はすべて国立大学を対象とするものであるが、TLO 承認申請の際、株式会 社・有限会社を設立したケース(7 機関)と既存の財団法人が TLO の設置者となったケース(2 機関) がある。広域型 TLO は、当該地域のコアとなる大学を中心に、国・公・私立大学をカバーするが、東北 テクノアーチのように高専も対象とするケースもある。2000 年以降、広域型の承認が増加している。地 域的には、大学の集積が進んでいる関東地方に 18 の TLO が集まっているが、その反面、北海道、東北、 四国地方にはそれぞれ TLO が 1 機関存在するのみである。 図1 承認TLO数の推移 35. 内部型. 外部単一型. 50. 外部広域型. 40. 21. 25. 17. 20. 13. 15. 5 0. 7 3 4 3. 4. 2000.3. 2001.3. 5. 8. 9. 5. 6. 6. 2002.3. 2003.3. 2004.3. 7. 億円. 14 海外出願件数 国内出願件数 ロイヤリティ収入 実施許諾件数. 45. 30. 10. 図2 承認TLO全体の実績推移. 百件. 40. 35 30 25. 12 10 8. 20. 6. 15. 4. 10. 2. 5 0. 0 2001.9. 2002.3. 2002.9. 2003.3. 2003.9 2003.12. 出所:経済産業省産学連携推進課 2004 年 3 月資料に基づき筆者が作成. 3 承認TLOの実績 1998 年に 4 つの承認 TLO からスタートしたが、TLO 数の推移と伴に、図2が示すように、特許出願 数は国内・国外ともに伸びを示しており、ロイヤリティ等収入(オプション契約を含む)も増加の一途 をたどっている。これは、大学の研究者に帰属する研究成果の権利化を、その業務に特化した組織を介 して行うという一つの慣習が定着しつつあることの表れである。また知的財産立国の旗印の下、知的財 産の保護が「知的創造サイクル」の1つの柱として国家戦略の中に盛り込まれるようになったことから、 TLO の社会的認知度も高まってきた。 産学連携学会第2回大会講演予稿集(2004). −53−.

(2) 4. 調査から見たTLOの特徴と問題点 このように組織整備が名実伴に進んでいる日本型 TLO であるが、ミクロレベルで観察するとどのよう な状況が浮かび上がってくるのだろうか。以下では代表的な承認 TLO を対象に筆者が行ったヒアリング 調査結果をもとに、TLO の技術移転戦略について紙面の制限で概要をまとめる。 表 1. 実施許諾件数から見た承認 TLO の実績推移 (上位 10 TLO) 承認 TLO 名. 2001 年 9 月. 2002 年 3 月. 2002 年 9 月. 2003 年 3 月. 2003 年 9 月. 2003 年 12 月. (株)CASTI(東大 TLO)* 22 (15.5%). 45 (15.1%). 88 (25.9%). 111 (27.4%). 151(34.6%). 169(36.5%). (株)東北テクノアーチ*. 44 (69.8%). 58 (70.7%). 70 (70.7%). 94 (74.0%). 107(77.5%). 113(77.9%). (学) 慶應義塾大学 TLO*. 16 (10.5%). 34 (14.7%). 41 (16.3%). 57 (18.0%). 75 (18.7%). 82 (19.2%). (財) 理工学振興会*. 27 (17.8%). 34 (16.0%). 44 (16.5%). 52 (16.8%). 73 (19.1%). 74 (17.8%). (学) 日本大学 TLO. 16 (10.9%). 29 (12.7%). 40 (13.2%). 48 (12.2%). 60 (12.7%). 73 (14.8%). (株)関西 TLO*. 25 (14.5%). 33 (16.0%). 43 (17.6%). 55 (19.3%). 65 (20.8%). 68 (20.2%). 多摩 TLO(株)*. 1 (4.8%). 5 (10.4%). 5 (6.9%). 31 (30.7%). 35 (29.4%). 48 (36.6%). (学) 早稲田大学 TLO. 10 (10.9%). 20 (16.1%). 28 (17.5%). 38 (18.8%). 45 (15.6%). 46 (14.6%). (財)新産業創造研究機構. 8 (21.6%). 14 (22.6%). 21 (26.6%). 31 (32.3%). 37 (33.3%). 43 (35.8%). (財)名古屋産業科学研究所. 4 (6.9%). 11 (14.5%). 22 (20.2%). 29 (21.6%). 35 (22.0%). 38 (22.9%). 全 TLO 合計(平均移転率) 1306 (17.1%) 2043 (17.4%). 2625 (19.6%) 3378 (20.8%) 4088 (22.5%) 4425 (23.5%). 注:1)括弧の値は技術移転比率(=実施許諾件数/特許出願件数). 2)*はヒアリング調査実施した TLO. 出所: 経済産業省・TLO 協議会調べより筆者が作成. CASTI ①大手企業リクルート社と提携し,二人三脚でマーケティング活動の展開,②リクルート社と の「CRミーティング」による技術評価,③民間企業で豊富な経験を持つ若い人材の大胆採用,④技術移 転実績が最も顕著で,特許出願件数と実施許諾件数が共に第1位。 東北テクノアーチ ①第三者組織による技術評価,②技術移転に特化したマーケティング戦略を重視し移 転率が最も高い,③技術移転担当者が積み重ねてきたネットワークの活用,④中小企業への会費低減。 慶應義塾大学TLO ①技術移転とベンチャー支援の合体組織,②スライド方式によるロイヤリティ収入の. 配分で,研究者へのインセンティブを最も重視,③非会員制,④知的資産に関する教育・研究を重視。 理工学振興会 ①技術移転とリエゾン機能の合体組織,②大学発ベンチャーの設立に積極的関与,③研究. の御用聞きとしてのコーディネーターの役割が目立つ,④非会員向けのセミナーの効果が顕著。 北海道TLO ①技術シーズを道内企業中心に販売する地域型組織,②道内経済界から多くの人材支援,③ 技術移転に特化したマーケティング戦略を重視し道内の他組織との連携により移転実績が急成長。 多摩TLO(株) ①企業のニーズから始まるユーザー型組織,②取り扱う発明は製品化できるものに限定, ③特定の大学のためのTLOではない,④個別訪問型マーケティング戦略をより重視。. 5. まとめ TLO 法をはじめ一連の法制度の実施により、政策・実績の両面で日本の産学間の技術移転に極めて大 きなインパクトを与えている。調査から見た日本型 TLO の活動は、①組織形態の多様化、②経営面では, 特許出願費用等の工面で苦労しながらも,自由度とアクティビティの高い TLO は多い、③マーケティン グ活動を戦略的に重視し各 TLO は自分の特色と実情に見合ったアプローチを確立し活動を進めている、 ④比較的老舗の研究型大学を持つ TLO ほど技術移転比率は高い、などの特徴が挙げられる。一方、財務 基盤の不安定、人材不足、TLO 協議会への期待など多くの問題も抱えている。今後の戦略として、リニ ア・モデルからノンリニアモデルへの転換、多様な技術移転形態の展開、技術ライセンスからインキュ ベーション機能まで拡大していくことが極めて重要となる。日本型 TLO が産学間の技術移転に牽引役を 果たせるかどうかは、中小企業・ベンチャー企業や内外の独立資本を視野に入れ、大学発ベンチャーの 創出に必要な経営支援までができるかどうかに関わっていると言ってもいいだろう。 産学連携学会第2回大会講演予稿集(2004). −54−.

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