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東京都の韓国語教育をめぐる状況 要望書提出後の変化

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大学での「多言語活動」授業の取り組み

―複数の言語にふれることで得られたこと― 平山 絹恵・村田 幹雄 1. はじめに 2020 年の教育改革で、小学校で英語が正式な教科として導入されることになり、外 国語学習イコール英語というイメージはますます強くなることが懸念される。幼いうちか ら英語をスタートさせたいという親の声もあり1、英語教育の低年齢化も進むと予想され る。また、中・高等学校、大学ではもちろん、社会人でも英語の学習は継続され、その 市場も年々拡大している2。 ところが、英語学習が過熱する中、英語に対する苦手意識を持つ人は一定数みられ る。GMO リサーチ株式会社の「英語に関する意識調査」3によれば、未成年・成人とも に 6 割超が英語に対し苦手意識を持っているという調査結果が出ている。 Morita(2019)は、自身も含めて、日本人の多くが人前で英語で話すときに間違いを 恐れて緊張をする傾向があることと、大学に入学してくる学生た ちの多くが入学時点で すでに海外(新しい体験)に対する素朴な好奇心を失い、外国語、特に英語に対する 興味を失うか、嫌悪感を抱いていることを指摘している。そしてこのような精神的な障壁 を克服する最も効果的な方法の一つが、どんな発言も肯定的に受容され、心理的に非 常に安心かつ安全な多言語環境を体験することであると述べている。Morita(2019)は、 言語交流研究所の「多言語活動」4を自身で体験することを通して、言語は平等であり、 英語は特別な言葉ではないということが自然に学べ、また英語に対する苦手意識が解 消されることを体感した。その経験から、グローバル化するこれからの世界で日本人が 1 「 子 ど も の 英 語 教 育 に 関 す る 意 識 調 査 」 ( 日 本 マ ー ケ テ ィ ン グリ サ ー チ 機 構 2018 ) で は 、 約 半 数 (N=300)が 0~4 歳までに英語教育をスタートさせると回答。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000033417.html (閲覧日:2019 年 10 月 27 日) 2 「語学ビジネス市場に関する調査」(矢野経済研究所 2019) https://www.yano.co.jp/press -release/show/press_id/2240 (閲覧日:2019 年 10 月 27 日) 3 「英語に関する意識調査」( GMO リサーチ株式会社、2017 ) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002228.000000136.html (閲覧日:2019 年 10 月 27 日) 4 一般財 団法人 言語交流 研究 所ヒッ ポファミリーク ラブ が行っ ている活動。複 数の言語(こと ば)を同 時に自然に獲得していく活動として行っている。 https://www.lexhippo.gr.jp/what/ (閲覧日:2019 年 10 月 27 日) 『複言語・多言語教育研究』 日本外国語教育推進機構会誌 No.7 (2019) pp.151-164

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生き抜く力を身につけるには、「多言語体験」を通じて「どんな国の、どんなことばを話 す人にも、開かれた心と深い共感をもって向き合える」若者を育てる必要があると考え た。また、世界に一つの標準英語があるのではなく、多くの異なる英語が存在するとい うことや(Gibson 2016)、社会や組織が多様性のパラダイムに変換する中、人権教育に おいても世界の多言語化を考慮しなければならないとも述べている。そして 2014 年か ら自身の大学での講義の中に言語交流研究所の実践する「多言語活動」を取り入れた 5。その後、2019 年に「多言語コミュニケーション」と名前を変え、正規の授業として実施 されるに至った(Morita 2019)。 本稿は、大学で授業として複数の言語を同時に学ぶ「多言語活動」6を導入した実例 を報告する。まず、言語交流研究所とその多言語活動の概要を述べ、実際に大学で行 った授業の具体的な取り組みを紹介する。その後、授業終了後に学生が提出したレポ ートをもとに学生の反応や成果など、得られた効果を報告する。英語だけの学習ではな い外国語学習のあり方の一提案となればと考える。 2. 言語交流研究所の「多言語活動」 2.1 言語交流研究所の概要と「多言語活動」 言語交流研究所 ヒッポファミリークラブ(本部:東京都)」(以下、LEX/Hippo とする) は、「“ことばと人間”を研究テーマに、多言語の自然習得及び多国間交流の実践を通 して、言語と人間の科学的探究を進め、国際間の理解と人類の共生に寄与することを 目的とする」を活動理念に持ち、主に「多言語の自然習得(獲得)活動」「国際交流活動」 「研究・開発活動」の 3 つの活動を柱とした「ヒッポファミリークラブ(会員制)」の運営を 行っている一般財団法人である。 LEX/Hippo の「多言語活動」では、7 つの言語7を中心に、物語や歌のオリジナル多 言語音源を使い、様々な言語が日常的に聞こえてくる環境をつくっている 。言語の数 は現在 21 言語8まで増えている。基本的な活動は 2 つある。1 つは、言語音に慣れ親 5 以降、2015 年、2016 年、2018 年と授業内容、構成を変更しながら継続して試みられた。 6 「多言語コミュニケーション」として 2019 年に開催したものと同義。以降「多言語活動」とする。 7 スペイン語、韓国語、英語、日本語、フランス語、中国語、ドイツ語の 7 言語。 8 上記 7 言語の他、イタリア語、ロシア語、タイ語、マレーシア語、ポルトガ ル語、インドネシア語、広 東語、アラビア語、ヒンディー語、台湾語、トルコ語、スウェーデン語、スワヒリ語、ベトナム語。

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しむため、日常の生活の中で、多言語で録音されたネイティブの話すオーディオマテリ アルを複数箇所に配置し、実際に多言語が聞こえる環境をつくることである。もう一つ は、家族や仲間と多言語に親しむための、定期的に開催される活動の場に参加するこ とだ。そこでは日本語も含め様々な言語に慣れ親しむための活動を行っている。 2.2 LEX/Hippo の「多言語活動」のコンセプト LEX/Hippo の「多言語活動」が、従来の外国語教室と大きく異なるところは、その言 語観である。団体の創設者の榊原(1985)は、人間なら、誰もが 3,4 歳にもなれば、こ とばを話せるようになるという事実があるのに、英語教育では話せるようになる人が少な いのはなぜかということに問題意識を持った。そして、ヨーロッパやアフリカなど、日常 的に複数のことばを使って生活している地域で育った子どもたちが何の苦も無くことば を話せるようになっていく事実に目を向けたのだ。そして、従来の外国語教育のような 「教える」という方法ではなく、 誰もがいくつのことばでも自然に習得できるような「言語 場」をつくり、そこで実践していくプログラムとして LEX/Hippo を設立した。 複数の言語を習得することについては、Flynn(2013)が、多言語を使用することは 人間にとって自然であり、一人が習得できる ことばの数に限りはないということや、複数 の言語を知ることはポジティブな結果をもたらす ことなどを、「ことばとことばが持つ力に ついての12の原理」としてまとめている(榊原 2013)。また、酒井(2018)は、脳科学の 観点から、人間の脳は多言語が獲得できるようにデザインされており、これはバイリ ンガ ルの存在や多言語地域で第二言語の習得が容易である事実からも示されると述べて いる。これらのことからも、人間にはもともと何語であれ、しかもいくつでも話せる能力を 持っていると言える。さらに、Morita(2019)は、大学生、大人の英語・外国語に対する 精神的な壁を克服する策としては、間違いや自分の考えを表現することを恐れず、楽し いリラックスした心理的に安心できる条件が必要であるとも述べている。つまり、人間の ことばの能力を引き出す環境をどのように作っていくのかということが言語を学ぶ上で重 要であるということだ。 LEX/Hippo の多言語活動のプログラムは、そのプログラムの一部をアレンジし、国際 化への一助として、幼稚園・小・中学校から依頼を受けた国際理解授業や外国語活動 などでも実施している。2013 年には全国の 72 校で国際理解授業等を実施した9。今回 9 2014 年度言語交流研究所年次報告書より。

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の大学での「多言語活動」のプログラムも、日頃の活動と国際理解授業などの経験を 元 にしている。 2.3 LEX/Hippo の「多言語活動」の大学での取り組み 大学での取り組みとしては、これまでも清水(2014)が国際武道大学で、英語の授業 内において、LEX/Hippo の多言語音源を使用した、「多言語音声アプローチ」導入を 行っている。英語に苦手意識を持つ学生が多い中、毎回の授業の最初に、音声を聞い て何語であるかを当てる多言語クイズを実施した。 その結果、実用面、意識面、聴覚面 などで自分自身にとってプラス評価を得たという考察がなされている。 また、Morita(2019)が、2014~2018 年にかけて「多言語活動」を実施している。そ の内容は、次のとおりである。多言語の実践活動の他、ホームステイや留学など国際交 流における言語習得の体験談を聞くことや、オンライン会議システムを使用し海外の学 生や他大学の教授、LEX/Hippo のスタッフなどがオンラインで参加し交流する試みや、 学生同士のグルー プワー クなどである 。参 加した 学 生は、最初は戸惑いもあ ったが、 「外国語に対する見方が変わった」「この授業で、海外の人と話す必要があるとわかっ た」という前向きなコメントが多数見られている。 次に、Morita(2019)の実施したこれらの授業を元にした、今回の「多言語活動」の 授業内容について述べていく。 3. 「多言語活動」の実施内容について 3.1 授業概要 今回実施した「多言語活動」の授業は、「多言語コミュニケーション」という名称の科 目として、尚絅学院大学(宮城県名取市)の人文社会学類の学科の 1 年生の選択授業 として位置づけられている。授業は、1 コマ 90 分で、全 15 回実施された。期間は 2019 年4 月~7 月である。履修した学生は同学科の 25 名と中国からの留学生 1 名の計 26 名で、毎回の授業には平均23 名ほどの学生が出席した1 0。 1 0 本講 義に おいては、 授業 内 で経験 した ことを 発 表すること や、アン ケートや レポー トの提 出な どの 機会を多く持った。また、授業中は実 践活動や発表を含め録画し、アンケートとレポートは回収した。 受講した学生の協力に感謝する。

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また、授業に期待される成果と目標は学生に提示したシラバスにおいて次のように表 記した。 「国際化に伴い、コミュニケーション能力や多様性が求められている現在、まずは 英語!でも自信がないという方も多いのではないでしょうか。 本授業では、複数の言語を同時に学ぶという「多言語活動」の実践を体験します。 本来、人間は環境さえあれば「ことば」を話せるようになっていきます。それは自分 が母語を意識せず自然に話せるようになっていったことを振り返れば自明のことでし ょう。 この講義を通して、知らない言語に出会う体験と、その場に参加した学生同士の コミュニケーション実践を通して、「ことば」とは何か?「多様性」とは何かを学んでい きます。 そして、世界には英語以外にもたくさんの言語があること、英語一つでも話す人の 個性があることを実感し、外国語に対して「苦手意識」をなくすこと、また自らチャレ ンジする意欲が芽生えることを期待します。 また、資料は内容により都度配布します。授業内容は進捗や理解度により変更す ることがあります。(尚絅学院大学 大学・大学院シラバス検索 2019 年度より抜粋1 1)」 成績評価の配分は、毎回のミニテストを50%、授業への参画を 25%、レポート提出を 25%とした。なおミニテストは出欠を兼ねており、全 15 回のうち 10 回以上出席した者を 評価の対象とした。 毎回の講義の講師は、大学に近い仙台市の LEX/Hippo の活動主催者を非常勤講 師としてたて、近隣地域の他の活動主催者数名と LEX/Hippo 会員が同時に複数名参 加し、授業を進めていった。授業に参加した大人は 5-6 名である。また、大人だけでは なく、LEX/Hippo 会員の学生や幼稚園児、小学生が 1-2 名、一緒に参加するよう工夫 を凝らした。 3.2 授業の具体的な内容について 授業は、「多言語活動」の実践を中軸に、オンラインとオフラインで実践の場をつくり、 1 1 尚絅 学 院大 学 ホーム ペ ージ の大 学・ 大学 院シ ラバス 検索 より 、 2019 年度「 講義 名: 多 言語コ ミュ ニケーション」から抜粋。 https://cpmate.shokei.ac.jp/campusweb/slbssbdr.do?value(risyunen)=2019&value(semekikn)= 1&value(kougicd)=2150&value(crclumcd)=SA111 (閲覧日:2020 年 1 月 16 日)

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体験して学んでいけるようにすすめた。全 15 回の内容は、進捗や学生の理解度に合 わせて、下記の項目を適宜盛り込み工夫して実施した。なお、項目は回により順不同で ある(表1・表 2)。以下、授業内で実施したプログラム内容について説明する。 ①多言語ミニテスト:毎回実施、約 5 分 LEX/Hippo のマテリアル音源を使い、10 言 語で語られる音声(1 言語は約 30 秒)を聞いて、 何語かを当てるミニテストである。正解することが 目標ではなく、様々な言語を聞き慣れ親しむこと を意識し、耳慣れない言語を繰り返し聞くことに よっ て 、 日 常 の 生 活 の 中 で 聴 こえ てく る 外 国 語 のことばが、興味のあることばに変化していくこと を体験できることを狙った。そのため、テストの点 数は評価基準には入れていない。また、言語 音 声の内容やテストの意義などはあえて説明せず に行なった。 ②課題図書の輪読:計 8 回実施、約 15 分 この 授 業 の 課 題 図 書 と して、 こと ば の 自 然 習 得や、多言語の活動について記載されている書 籍 ( 榊 原 2013 ) を 使 用 し た 。 前 週 に 章 を 指 定 し、当日の参加者全体で輪読を行った。輪読を 通 して、外 国 語や こと ばに つい てや 、多言 語 の 自然習得について、また授業で体験している多 言語活動の意味について考えるきっかけを与え る位置づけとした。 ③ 動 画 、 オン ライ ン を利 用 した 講 義 や 体 験 談 : 計 6 回実施、10~20 分 毎回 、オン ライン 会議室 システムで複数の人 が 授 業 に 参 加 した 。他 大 学 の 社 会 言 語 学 の 教 授による 20 分程度の講義も実施した。また、言語についての講演動画を閲覧したり、 表 1 全 15 回のプログラム内容 (筆者作成)

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多言語活動をしている LEX/Hippo 会員や、海外からのインターン生に自身のことばの 体験を話してもらう機会をつくった。 ④ グ ル ー プ ワ ー ク やプ レゼン など の ア クティビティ:毎回、10~30 分 学 生 が 主 体 的 に 授 業 に 関 わ れ る 工 夫として、グループに分 かれたアクティ ビティを行った。輪読や多言語活動、講 義の後に、学生同士で意見交換をした り、プレゼンの準備をグループで行うな ど、自ら話し、他人の意見を聞く機会を 増 や し 、 自 ら 考 え る き っ か け づ く り と し た 。ま た 、様 々 な言 語 に 学 生 が 主 体 的 に興味をもって聞くきっかけになるよう、 それぞれの言語にどんな特徴があるの か を 、 擬 音 や 形 容 詞 、 図 形 な ど を 使 っ て感 覚 的 に 表 し 、 考 え て み る 機 会 を持 った回もあった。 ⑤ことばにまつわる意識調査:全 3 回 授 業 を 通 し て 、 学 生 の こ と ば に 関 す る 意 識 の 変 容 を 見 る た め に 、 同 じ 設 問 のアンケートを計3 回行った。設問内容 は 、 「 ど ん な こ と ば に 興 味 が あ る か 」 、 「外国の人と友達になりたいか」、「街で 困っている外国人を見かけたらどうする か」など、ことばについての意識調査を 主とした。 ⑥ レ ポ ー ト と授 業 ア ン ケ ー ト ( 感 想 ) : 8 回 目 と最 終 日 に 提 出 。 ア ン ケ ー ト は 毎 回。 表 2 進行表の例 (実際のものを筆者が改訂)

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レポートのテーマは、課題図書をメインに多言語やことばの習得について分かったこ とと、授業での多言語活動の体験を通して、自分の考え方、言語の捉え方、聞こえ方、 気持ちの変化についてなどを提示し、学生にあらかじめ伝えた。また、毎授業後、ネット アンケートで感想の提出を求めた。 ⑦多言語実践活動:最終日以外実施、15 分から 20 分くらい LEX/Hippo で普段行なっている、多言語活動のプログラムを 20 分位でできるようア レンジした。基本になる活動は、SA!DA!1 2と呼ばれる、世界の音楽を使って、簡単なゲ ームなどをすることと、多言語音源マテリアルを使い、音源を流しながら、耳で聞いた音 をそのまま口にしてマネする活動の 2 つである。 4. 多言語活動の授業からの気づき 4.1 学生の意識の変容について 全 15 回の「多言語活動」を通して、参加した学生たちの中に、外国語やその教育に ついて、本人の考え方などに変化がみられた。大きく分けると 5 つにまとめられ、以下、 学生のレポートを抜粋する形で紹介する。(下線は筆者による) ①外国語・ことばに対しての考え方の変容 ・いろいろな言語にちょっとずつふれたことで外国語に対するハードルが下がった。 アルバイトで外国人のお客様を接客した時に、相手の言っていることを完璧に理 解することはできなかったが、ジェスチャーを交えて会話を成立させることができた。 (中略)未知の言語に、分からないながらも触れ続けたことで面白いと感じることが できた。(C.A さん) ・私は、話している言語が違うから、意思疎通ができないからという理由で壁を作って いたと気付かされた。自分も相手も、伝えたい気持ちや思っていることは大体一緒 で、そこの違うものがあるとするならば、人種と言語である。ここになにも差も壁も全 くない。ただ生まれた場所が異なったという点のみである。相手の母国語で話して みる、というのは相手に歩み寄る本当の第一歩だと感じる。国際平和、協力、理解、

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ということに興味を持てたし、実際に話してみたいという気持ちが強くなれたことは 本当にこの授業のおかげだと思う。(A.Sさん) ②外国語教育についての考え方の変容 ・多言語の時間は間違えてもとりあえず声に出して喋るだけで褒められて、それが嬉 しくて次はもっと積極的に声に出してみよう、言葉を学ぼうと思ったことが何度もあ った。また褒められたくてさらに頑張る、まるで子供のようだが言葉を学ぶときはと にかく褒めて伸ばす事が大事だと自分自身の体験を通して気付かされた。現在日 本の学校での言語教育は、話すというよりも机に向かってノートや教科書を使って テストでいい点を取る方が重視されている。私自身も学校で英語を話して褒めら れた記憶はない。特に小学生など初めて英語に触れる人たちには褒めて伸ばす 方法で授業をしてあげてほしいと思う。(S.Mさん) ③挑戦しようという気持ちの醸成 ・とりあえず英語が話せれば十分だと思っていたが多言語コミュニケーションの授業 を受けてもっと他の言語にも挑戦してみたいと考えるようになった。私は昔からフ ランスに行ってみたいという夢があるので、フランス語を習得して実際に行って使 ってみたいと思う。(S.Mさん) ・人間としての能力というか質が上がった気がしている。私が一番最初の授業から 最後の授業まででわかった事が明確にある。それは海外に 1 度は絶対に行って みたいという気持ちだ。(O.O さん) ④自分の成長・変化、新しい視点・発見に気づく ・知らない国の知らない言語を音楽のように聴き、どんなシーンなのか、どんな人が 話しているのかなどを想像するのはとても新鮮で不思議なものだった。意味は理 解できなくても、回を重ねるごとに初めは音としてしか聞こえなかった外国語が単 語として少しずつ聞こえてくるようになり不思議な気持ちになった。(K.Jさん) ・電車やバスなど多言語が聞こえている場で、授業で聞いたことがあることばを聞くと、 心の中でいつも盛り上がり、公共機関に乗る時、いつも楽しみにしている。(S.T さ ん) ⑤友達が増え、いろいろな人と交流ができるようになった

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・同じ学年の人でも関わりが無かった人でもこの授業を通して友達になることができ た。(S.Tさん) ・この授業を受けてから、年とか関係なく自分の意見が言えるようになりました。そし て年上ともふつうに関わるようになったので他の先生やバイトの上司などともしっか り話せるようになりました。(S.Oさん) 4.2 意識の変容を生み出した取り組みの工夫 次に、4.1 で見られた学生の意識の変容にどのような取り組みが関わったのか、学生 のレポートから眺めてみる。今回の LEX/Hippo の「多言語活動」で特徴的な点は 3 つ 見られた。 ①多くの言語に触れ、実践を促す環境づくり ・音に合わせて発音したり、体を動かしながら外国語に触れてみたり、今までと違う授 業スタイルが新鮮(A.S さん) ・言葉のわからない赤ちゃんになったような感じで、知らない国の知らない言語を音 楽のように聴き、どんなシーンなのか、どんな人が話しているのかなどを想像する のはとても新鮮で不思議なものだった。(K.Jさん) ②プレッシャーなく実践できる雰囲気づくり ・先生がいないスタイル、という点は授業が新鮮に感じた要因の大きな一つであった に違いない。一人の先生と、複数人の生徒、という形ではなく、壁のようなものを感 じることが無かった印象だ。なによりも、「間違ってはいけない」という雰囲気が無 かったのが大きい。(A.S さん) ・先生と生徒という関係が、この授業では言語を学ぶ同じ生徒のような距離感で学ん だため、何気ない会話も楽しくて話しやすかった。(S.T さん) ③主体的に学生が発言できるようなプログラムの工夫 ・教科書を輪読した感想を自身の体験を交えながらペアやグループで話すことがで きたのは、みんな活発に感想を出してくれて自分にはなかった気付きを発見する ことができて新鮮だった。(C.Aさん)

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5. まとめ、今後の課題 英語だけではない外国語学習のあり方の一つとして、大学の授業で実施した「外国 語活動」を通して、学生のレポートから見られた意識の変化は、①外国語・ことばに対し ての考え方の変容、②外国語教育についての考え方の変容、③挑戦しようという気持 ちの醸成、④自分の成長・変化、新しい視点・発見に気づく、⑤友達が増え、いろいろ な人と交流ができるようになった、の5 つであった。 多言語活動では、文法や単語の解説などの学習は行わなかったため、覚えることが なく、遊びの要素があることに対して「時間の無駄」というような抵抗感が学生もあったよ うだ。しかし、15 回の授業を通して多言語活動を重ねる中で、学生自身が自然と様々 な言語を比較し想像力を働かせ、何を言っているかを考えるようになり、知らない言語 に対して無関心ではなくなっていった。毎回のミニテストと多言語音源を真似する活動 では、各自がどのようにわかっていったのかを記入する学生も多く見られた。また、こと ばに関心が向けられるようになると、自然と人にも関心を向けるようになった。活動内の ゲームなどの遊びを通して、人とのコミュニケーションをとることの本 質的な楽しさを見 つけたという感想や、積極的に学内の他の学生とコミュニケーションをとるようになった という記述も見られた。 こ れ ら の 学 生 の 意 識 の 変 容 の 一つとして、授業内で 3 回にわた り 行 っ た ア ン ケ ー ト の 一 部 を 紹 介 する。「街で困っている外国の人を 見 か け た ら ど う し ま す か ? 」 と い う 質 問 に 対 し て 、 「 見 ない ふ り 」 と 答 えた学生が減り、「思い切って声を か け る 」 と 答 え た 学 生 が 徐 々 に 増 えていった(図1)。 こ れ は 、 他 者 に 興 味 を 持 つ よ う になったことの表れであり、Morita (2019)が述べているこれからのグ ロ ー バ ル 社 会 に お い て 必 要 と な る、国やことばの違いに限らずどんな人にも開かれた心で向き合えるようになることへの 第一歩とも考えられ、ひいては人権教育につながる一成果ともいえるのではないかと考 図 1 学生アンケートの結果(筆者作成) ※「進んで声をかける」と「気にならない」の回答は、 いずれの回でも見られなかった。

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えた。 次に、学生の意識変容が起こる場の特徴として、①多くの言語に触れ、実践を促す 環境づくり、②プレッシャーなく実践できる場づくり、③主体的に学生が発言できるよう なプログラムの工夫の 3 つを提示した。 今 回 、 授 業 に 子 供 を 参 加 さ せ た 。 こ れ は 学 生 を 中 心 に 年 上 と 年 下 の 世 代 を 揃 え る こ と で 、世 代 の 多 様 性 を 生 み 出 す 狙 い と 、も う 一 方 で 、授業を受ける学 生の緊張をほぐす狙いもあった。また、こちらから参加した大人たちは、指導者という立 場ではなく、ことばの活動を一緒に楽しむ仲間として参加することを意識した。指導者 1 名につき、学生 4~5 名ほどで 1 つのグループを作り、教科書を一緒に読み、考えるな ど、同じ立ち位置で話していく中で、発表を聞いてくれる仲間の一人として受け入れら れたと考えられる。これについては、授業内またはグループで安心して発言できるよう になったということが学生のレポートからも確認された。指導者の立つ位置が重要な役 目を果たしたことが伺える。 以上より、「多言語活動」という授業の結果として、学生は、「ことば」は面白いと感じ るようになり、外国語で話してみようという気持ちの変化という効果を感じており、授業の 目標だった、「外国語に対して「苦手意識」をなくし、多様な文化や言語に対する関心と 興味を持つ」というところは、ある程度達成したかと考える。 LEX/Hippo では小学校の国際理解授業や外国語活動を実施しているが、大学生に 対して行った本授業では、小学生年代では自身の変化について表現できないようなこ とも、大人である大学生たちはことばで表現できるため、他者への寛容な態度、ことば への興味という部分がより顕著に具体的なことばで表現されたと考える。その点でも、多 言語活動を実践していくにあたり、大人に対して行うことの意義は大きいと考える。 多言語活動を子供から大人までが体験することで、言語の習得だけによらず、 言語 や文化の多様性に対する寛容な態度を涵養するための学びの機会として広がることを 期待したい。 今後の課題としてあげられるのは、人材の育成と確保である。今回の授業の場合、 LEX/Hippo の研究員と子供を含めた会員が、学生たちと一緒になり、多言語を一緒に 学ぶ仲間として参加し、授業の雰囲気を作った。このような場を作る「多世代の多言語 活動の経験者」をどのように育成し、人材をどのように確保していくのかは、重要な課題 であると考える。

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多言語活動は言語を学ぶための共通の学びではあるが、このような「ことばについて の学び」がまだ外国語教育として十分認知されていない。教育 の場での実践を繰返し ながら、成果を報告しつつ具体的な教育プログラムの構築に向けて、今後も継続して 研究していきたい。 (一般財団法人 言語交流研究所) 参 考 文 献 酒井邦嘉(2018)「脳から見た第二言語習得―自然な言語習得法への試論―」『第二言語 としての日本語の習得研究』第21 号, pp.136-148. 榊原陽(1985, 増補版 1989)『ことばを歌え!こどもたち』筑摩書房. 榊原陽(2013)『ことばはボクらの音楽だ!』明治書院(榊原陽( 1985, 増補版 1989)『こと

ばを歌え!こどもたち』の米国翻訳本 Language Is Our Music : The Natural Way to

Multilingualism (2013, Language Research Foundation)刊行に伴い、原著を再編集

したもの) 清水れい子(2014)「英語教育における多言語音声アプローチ導入による学生の変容につ いて」 『国武大紀要』第 30 号, pp.117-122. A k i h i k o M o r i t a ( 2 0 1 9 ) H u m a n R i g h t s e d u c a t i o n a t t h e D i g i t a l / G l o b a l A g e . H u m a n R i g h t s E d u c a t i o n i n A s i a - P a c i f i c , Vo l . 9 . R o b e r t G i b s o n ( 2 0 1 6 ) “ Yo u n e e d t o g o b a c k t o s c h o o l t o r e l e a r n E n g l i s h , ” B B C C a p i t a l , 1 6 t h D e c e m b e r 2 0 1 6 . h t t p s : / / w w w. b b c . c o m / w o r k l i f e / a r t i c l e / 2 0 1 6 1 2 1 5 y o u n e e d t o g o b a c k -t o - s c h o o l - -t o - r e l e a r n - e n g l i s h ( 閲 覧 日 : 2 0 1 9 年 1 0 月 3 0 日 ) S u z a n n e F l y n n ( 2013)「 私 の 研 究『 多 言 語 ・ 言 語 獲 得 』か ら 」『 こ と ば は ボ ク ら の 音 楽 だ ! ( 榊 原 陽, 2 0 1 3 , 明 治 書 院 )』 pp.5-24.

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Multilingual activities at universities:

On the effects obtained through the instruction of multiple languages HIRAYAMA Kinue, MURATA Mikio

In Japan, there is a hesitation to use English amongst certain parts of the population. This hesitation is caused by the fear of making mistakes while speaking in public, and it tends to create further tension when speaking in English. In order to overcome these feelings of inadequacy, we conducted "multilingual activities" in university classes with the goal of learnin g multiple languages simultaneously. These multilingual activities do not follow the traditional learning methods that are based on the grasp of grammar, reading comprehension, and writing, but rather a listening method that focuses on listening and speaking. Participation is spontaneous rather than passive, with a focus on playing and group conversation.

参照

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