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巻頭言「今後の倫理委員会への期待」

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Academic year: 2021

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543 人 工 知 能  33 巻 5 号(2018 年 9 月) 2014年 9 月から約 4 年にわたり倫理委員会の委員長を務めさせていただいた.2018 年 6 月から,後任の武田英明 委員長,江間有沙副委員長に引き継ぐこととなった.退任にあたって,倫理委員会のこれまでと今後の期待を述べたい. この 4 年間には多くのことがあった.2014 年 12 月に第 1 回の委員会が開かれた.それから,年に数回,委員会を 開催し,さまざまな議論を重ねてきた.全国大会では三度の公開セッションを行った.2017 年の 2 月には,人工知能 研究者が参考にすべき倫理指針を公開した.こうした活動を支えていただいた倫理委員会のメンバである,西田豊明氏, 堀 浩一氏,武田英明氏,長谷敏司氏,塩野 誠氏,服部宏充氏,長倉克枝氏,江間有沙氏の諸氏には大変お世話になっ た.また,栗原 聡氏,山川 宏氏には,編集委員長の立場から何度も参加いただいた.当時の会長であった松原 仁氏 がこの倫理委員会の活動を立ち上げ,山田誠二前会長には活動を見守っていただいた.改めて関係者に感謝したい. この 4 年間に人工知能を取り巻く状況も大きな変化があった.2014 年はまだ世間的にも AI ブームが始まりつつあっ た頃であったが,2015 年,2016 年とそれが大きな波になった.倫理についての話題も多かった.内閣府では 2016 年から「人工知能と人間社会に関する懇談会」が開かれ,その後,総務省での議論,再び内閣府での議論につながっ ている.また,国際的にも米国 Beneficial AI や世界経済フォーラムなど,さまざまなところで議論が行われた.こう した議論を通じて人工知能の研究者として筆者が感じたのは,i)人工知能の定義はいつも曖昧であること,ii)人工 知能の透明性や説明可能性など,一般の人もわかりやすい議論すべき内容はかなり練られてきているが,その技術的 な背景については疑問点も多いこと,iii)米国や中国は(本気では)議論に参加していないこと,である.要するに, 国としての産業上(あるいは安全保障上)の競争という文脈のなかで,議論が行われているという構図がある. この 4 年間で技術も大きく進展した.筆者が注目するディープラーニングに関して,少し現状と可能性を述べてみ たい.本誌で深層学習の「連載解説」を企画したのが 2013 年から 2014 年のことであったが,画像認識の精度が大き く向上し,人間の精度を上回り始めたのが 2015 年,その後,医療画像や顔認証では米国や中国を中心に一気に実用 化が進んだ.AlphaGo が開発され,2016 年には李世ドル九段を破り,2017 年には柯 潔九段を破った. ディープラーニングに注目すべき理由は,「深い関数」を使えるようになったという一点にある.簡単な関数を組 み合わせて表現力の高い「深い関数」をつくり,そのパラメータをデータから推定する.従来の機械学習は SVM で もナイーブベイズでも「浅い」関数であった.しかし,深い関数のほうが圧倒的に表現力が高い.我々の身体も,社 会組織も,言葉も音楽もすべて,要素を組み合わせてかたまりにし,それをまた組み合わせるという構造をしている. このことと,簡単な関数を組み合わせて表現力の高い関数をつくるというのは本質的には同じである.「深い」という ことが大きな含意をもつから,Hinton や Bengio,LeCun らは「ディープラーニング」と名付けているわけである. 深い関数を使えるようになったことは,「トランジスタで信号を増幅できるようになった」,「ハイパーテキストでリン クを張れるようになった」と同じレベルの,単純だが非常に大きな変化をもたらす技術であろうと思う. 筆者の見立てでは,ディープラーニングは第二ステージに入りつつある.画像認識の精度向上と急速な実用化と いうのが第一のステージだとすると,第二ステージは,教師なしでの空間や行動の内部表現の獲得である.これがで きるようになると,深層強化学習の実用性が急激に上がり,ロボットや産業機械の技術に大きなインパクトがある. そのような研究が一昨年頃からチラホラと表れていたが,最近提案された,DeepMind 社による Generative Query Network(GQN)はそのなかでも一線を画するものかもしれない.こうした研究の先に,当然のことながら,身体性, 記号,知識表現,推論,オントロジー,社会,マルチエージェントなどの研究との融合がある.だからこそ,筆者は, ディープラーニングの研究と,従来からの AI 技術の融合が新しい地平を切り開くのだと思っている.ぜひ国内の人 工知能研究者が,こうした場面で長年の知識や深い洞察を生かして活躍してもらえればと思う. 大きな技術的な進展がこの先も予想されるわけであるが,こうした技術の進展のなかで,社会との関係を考えてい くことはますます重要になる.技術が社会に大きな可能性を提示すると同時に,さまざまな議論も巻き起こす.この 議論は,技術,倫理,法律,世論,産業,国際的な関係,さまざまな文脈が重層的に積み重なっている.倫理委員会 の役割もこれからますます重要になるであろう.武田英明委員長,江間有沙副委員長を中心とする倫理委員会が,こ うした役割を担い,大きなチャレンジをしていくことを大変楽しみにしている.

巻頭言

今後の倫理委員会への期待

松尾  豊

(東京大学)

参照

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