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2018 年度研究会優秀賞受賞論文紹介

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(1)

●授賞理由 本論文は,同一クラスタに属するデータ点の制約 (must-link 制約)を加えたクラスタリング問題を扱って いる.提案手法では,近傍法によりデータを 2 値ベクト ル化し,形式概念解析を用いて階層構造を獲得する.こ こで,must-link 制約は対象となるデータ点の 2 値ベク トルの論理和をとることで自然に実現される.計算機実 験により,must-link 制約がない条件で従来手法より質 の高い階層構造が獲得できていることと,提案手法は must-link制約によって与えられる教師情報を利用して クラスタリングの質を向上できることが示された. ●アブストラクト 階層クラスタリングは,樹形図と呼ばれる木構造に よってデータのクラスタを表現する手法であり,獲得し た木構造は関係推論や他の機械学習のタスクにおけるさ らなる分析に使用することができる.樹形図において, ノードは各クラスタ,葉は各データ点に対応しており, 樹形図からクラスタの包含関係を解釈できる.そのため, 多変量データに対し広く使用され,長年にわたり研究さ れている手法である.しかし,従来の階層クラスタリン グ手法では,あるデータ点が複数クラスタに属すると いった,クラスタの重複を許すことができない.これは, クラスタとクラスタの境界付近にあるデータ点をどちら か一方のクラスタのみに併合するというアルゴリズムに 基づいているためである.本論文では,この問題を解決 するために,重複するクラスタを表現できる階層クラス タリングを実現する. さらに,本論文では,指定したデータ点の組が同じク ラスタに属するように制約する must-link 制約を導入す る.must-link 制約は,制約付きクラスタリングを実現 するもので,分析者のもつ事前知識である部分的な教師 情報を must-link 制約として利用することで,クラスタ リングの精度を向上させることができる. 提案手法は二つの段階からなり,第 1 段階ではまず入 力の連続値データを近傍法に基づいて 2 値化する.そし て,獲得した 2 値データに対して,must-link 制約を課 されたデータ点の組に対応する 2 値ベクトルの組に,そ れらの論理和を代入する.must-link 制約を 2 値ベクト ルの論理和によって実現することで,must-link 制約を 取り込んだ 2 値データに変換する.第 2 段階では,形式 概念解析を 2 値データに適用することで,クラスタの階 層構造を獲得する.形式概念解析は,代数的アプローチ によって重複するクラスタを発見し,2 値データがもつ 階層的構造を抽出することができる手法である. 実 験 に お い て, 獲 得 し た 樹 形 図 の ノ ー ド 数 で あ るクラスタ数と,各クラスタの純度の平均値を表す Dendrogram purityと い う 性 能 評 価 指 標 を 用 い た. Dendrogram purityは,階層クラスタリングの質を評 価する標準的な指標で,高い値は階層構造の質が高いこ とを示す.実験では,既存手法のウォード法と,同程度 のクラスタ数のときの提案手法の Dendrogram purity を測定した.特に,真のクラスタのサイズに偏りがあ る人工データに対する実験では,ウォード法より高い Dendrogram purityをもつ階層構造を獲得できることを 示した.提案手法によって,より柔軟な階層クラスタリ ングが可能になったと考えられる. 人工知能基本問題研究会:SIG-FPAI-B803-10  2019 年 3 月 14 日

近傍法と形式概念解析を用いた制約付き

クラスタリング

米田 友花,杉山 麿人,鷲尾  隆

著 者 紹 介

米田 友花(正会員) 2017年大阪大学工学部電子情報工学科卒業.2019 年同大学院工学研究科電気電子情報工学専攻修士課 程修了.2019 年よりパナソニック株式会社に入社. 杉山 麿人(正会員) 2006年京都大学工学部情報学科卒業.2012 年同大 学院情報学研究科知能情報学専攻博士課程修了,博 士(情報学).独マックスプランク研究所研究員, フンボルト財団ポスドクフェロー,大阪大学助教を 経て,2017 年から国立情報学研究所准教授.2014 ~ 19 年 JST さきがけ研究者.機械学習,データマ イニングの研究に従事. 鷲尾  隆(正会員)は,前掲(Vol. 34, No. 5, p. 624)参照.

(2)

●授賞理由 本論文は,近年,重要性が増している公平性を考慮し た機械学習の問題を扱っている.具体的には,学習済み の決定木に対して,後から公平性に関する制約が与えら れたときに,制約を満たすよう決定木のラベルを編集す る問題を整数計画問題で定式化した.従来の貪欲法に比 べ,公平性に関する制約下で最適な解が得られることを 保証しており,計算機実験によりその有用性を示してい る.今後,決定木の内部ノードの編集を許した手法の開 発など発展が期待され,優秀賞に値する優れた研究であ る. ●アブストラクト 深層学習に代表される機械学習技術の発展により,機 械学習アルゴリズムにより学習された予測モデルが,医 療や司法,教育などといった実社会における意思決定に 活用されつつある.その一方で,予測モデルの解釈可能 性や公平性などといった問題が注目を集めている.特に, 性別や人種などのある特定のグループ間で,予測結果に 差別があってはならないという公平性は,機械学習技術 の実応用において避けられない重要な課題であり,近年, 盛んに研究が行われている. 公平性を実現するための方法としては,各グルー プ間で予測結果の分布が均等となることを保証する Demographic Parityなどといった公平性の評価指標に 基づき,公平性に関する制約を学習問題に組み込むこと で,公平な予測モデルを学習する手法が主流である.し かし,公平性を担保する対象に関する情報が,学習を行 う前に,かつすべてのデータに対して与えられるとは限 らない.そこで,本論文では,学習済みの決定木を,公 平性の制約を満たすように適応的に編集する方法につい て研究を行った. 決定木は,予測ルールの集合を木構造で表現した予測 モデルであり,予測結果の判断基準が人間に理解しやす いことから,解釈可能性に優れた予測モデルとして知ら れている.著者らは,決定木の葉ノードに対応する予測 ラベルを変更することで,与えられたデータセット上で, 公平性制約を満たしつつ予測精度の低下を最小化する問 題を考察し,この問題に対して整数計画法に基づく定式 化を提案した.CPLEX などに代表される整数計画ソル バの発展を背景とし,近年,機械学習問題に対する整数 計画法を用いた解法がいくつか提案されている.このよ うな解法は,専用のアルゴリズムを設計せずとも大域最 適解が得られるだけでなく,追加の制約にも柔軟に対応 できることから,公平性などの予測精度以外の制約を扱 える統一的なツールとして注目され始めている.本論文 で提案された定式化を既存のソルバで解くことで,誰で も簡単に公平な決定木を得ることができる. COMPASなどの実データセットを用いた実験により, 先行研究の貪欲法に基づく手法との比較を行った.その 結果,提案手法により,編集前の決定木の予測精度を維 持しつつ,より少ない編集操作で公平な決定木に編集で きることを確認した.特に,適応的な編集では解の近似 率が保証されない貪欲法に対して,提案手法により,公 平性制約を満たしつつ予測精度が 25%以上高い決定木 が得られた. 人工知能基本問題研究会:SIG-FPAI-B802-02  2019 年 1 月 29 日

整数計画法に基づく学習済み決定木の公平性を

考慮した編集法

金森 憲太朗,有村 博紀

「2018 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

金森 憲太朗(学生会員) 2018年北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科 卒業.同年より同大学院情報科学研究科修士課程に 在籍,現在に至る.機械学習やデータマイニングの 研究に従事.機械学習における解釈可能性や公平性 に興味をもつ. 有村 博紀(正会員) 1988年九州大学理学部物理学科卒業.1990 年同大 学院総合理工学研究科修士課程修了.同年,九州工 業大学助手,助教授などを経て,1996 年九州大学 助教授,2004 年から北海道大学大学院情報科学研 究科教授,現在に至る.1999 ~ 2002 年さきがけ研 究 21 研究員.2007 ~ 11 年 GCOE プログラム拠点 リーダー.博士(理学).現在,データマイニング, 情報検索,アルゴリズムの研究に従事.

(3)

●授賞理由 本論文は,グラフ構造からノードの分散表現を獲得す るネットワーク埋込みに対する新たな手法を提案するも のである.グラフ畳込みネットワークを用いた既存手法 がノードの近傍情報しか考慮していないという問題点を 指摘するとともに,ネットワーク分析分野で用いられる グラフの大域構造を反映したノード中心性に着目し,近 傍情報とグラフ全体構造の双方を同時に考慮する分散表 現獲得手法を構築している.また提案手法を用い,複数 の実データを対象としたネットワークの半教師あり分類 タスクにおいて,既存手法を上回る精度を達成している. 本論文は,モデルの提案や実験を通じ,研究としての一 定の完成度が認められることに加え,ノード埋込み手法 において大域的な情報を利用するという新たな視点を提 案したこと,利用情報を多様化することで今後のさらな る発展が期待できること,半教師あり分類タスク以外へ の応用という観点から類似研究に対する影響力が大きい ことから,授賞にふさわしいと考える. ●アブストラクト 近年,SNS の普及や,生物学における生体ネットワー クの重要性の認識の高まりとともに,グラフ構造をもっ たデータの解析が注目を集めている.グラフ構造とは, 「ノード」とノード間を結ぶ「エッジ」から構成されるデー タ構造である.本研究で対象とするノードの半教師あり 分類問題は,グラフ,ノードの特徴量,少数のノードの ラベルが与えられ,残りのノードのラベルを推定するこ とが目的である.現実の問題例としては,SNS上でのユー ザの関心の予測,タンパク質の相互作用ネットワークの おける各タンパク質の機能予測,Web ページのトピック 予測などがあげられる. 近年,グラフ構造に対して畳込み演算を定義すること により,グラフ構造データをニューラルネットワークの 入力として直接用いるグラフ畳込みネットワークという 手法が提案され,ノード分類タスクにおいて高い精度を 示している.この手法は,エンドツーエンド学習により 柔軟な特徴抽出を可能にしているが,ノードの近傍情報 しか考慮していないという問題がある. そこで本研究では,従来のグラフ畳込みネットワーク の学習に加えて,グラフの構造特徴を用いる手法を提案 する.ここで構造特徴とは,グラフ構造からノードごと に導出される指標のことであり,媒介中心性,近接中心 性,PageRank などがあげられる.ノードのラベル推定 タスクの学習と,構造特徴を保持する学習を同時に行う ことで,近傍情報とグラフ全体の構造の両方を考慮した 学習が可能になる.複数のデータセットを用いた実験を 行い,ノードの半教師あり分類問題において,提案手法 は従来のグラフ畳込みネットワークと比べて高い精度を 得ることを示した.特に教師ラベルが少ない場合におい て,提案手法は従来手法を大きく上回る精度が出ること を確認した. 現実のタスクでは,ノードラベルの収集には多くのコ ストを必要とする.例えば,数十万人規模の SNS デー タを用いてユーザの関心を予測したい場合,全体の 1% を教師データとして用いる場合でも,数千人分のラベル 情報を人手で収集,付与する必要がある.提案手法は, 教師ラベルが少ない場合でも高い精度で予測可能である ため,ラベル収集のコストを削減することができる. 今後の課題として,用いる構造特徴の最適な選択法に ついて検討することがあげられる.また,リンク予測や グラフ分類などの他のタスクへの適用を検討する予定で ある.

著 者 紹 介

立花 誠人(正会員) 2017年東京工業大学工学部情報工学科卒業.2019 年同大学院情報理工学院情報工学系修士課程修了. 修士(工学). 村田 剛志(正会員) 1990年東京大学理学部情報科学科卒業.1992 年同 大学院理学系研究科修士課程修了.東京工業大学工 学部助手,群馬大学工学部助手,同講師,国立情報 学研究所助教授,科学技術振興事業団さきがけ研究 21研究員(兼任)を経て,2005 年より東京工業大 学大学院情報理工学研究科助教授(現在は同大学情 報理工学院情報工学系准教授).博士(工学).ネッ トワーク科学に関する研究に従事. 知識ベースシステム研究会:SIG-KBS-B802-04  2018 年 11 月 23 日

構造特徴とグラフ畳み込みを用いた

ネットワークの半教師あり学習

立花 誠人,村田 剛志

(4)

●授賞理由 本研究は,雑談対話を通して,ユーザが興味をもつト ピックを推定する研究である.特に,雑談対話の特徴で ある,ユーザは必ずしも興味のある話題だけを話してい るわけではないという点に着目し,雑談対話に現れない トピックについても同時に興味度の推定を行っている. この問題設定は独創的であり,かつ雑談中のユーザの飽 きを抑制する効果が期待できる点で実用性も高い.継続 性の高い雑談対話システムを実現するうえで重要な技術 であることに鑑み,研究会優秀賞に推薦する. ●アブストラクト 本論文ではユーザの興味に基づく雑談対話システムの パーソナライズを目的とし,24 種類のトピック(映画, ファッション,健康など)に対するユーザの興味の度合 いを推定する手法を提案している.雑談対話システムは 興味推定を行うことで,ユーザにとって興味のないト ピックを避け,興味があるトピックについて対話するこ とが可能になり,ユーザのエンゲージメント・満足度の 向上が期待できる. 本研究で対象としたタスクでは,対話中に出現したト ピックだけではなく,それ以外のトピックに関しても同 時に推定を行う.これは,たとえユーザが興味をもつト ピックであっても,延々と同じトピックについて話せば ユーザは対話に興味を失う危険性があるためである.対 話中に直接出てきていないトピックに対しても興味の有 無を推定することで,ユーザが興味を失う前に話を次の トピックに展開させることが可能となる. 提案手法は雑談対話中の 1 話者による発話集合を入力 とし,その話者の興味を推定するニューラルネットワー クベースの手法である.具体的には,まず各発話は単語 系列エンコーダと単語 attention により発話ベクトルに 変換される.得られた発話ベクトル集合は本研究で新た に提案したトピック別発話 attention によりトピック別 に特徴抽出が行われる.このトピック別発話 attention は,すべての発話が各トピックの興味度の推定に平等に 貢献するわけではないという考え方に基づいている.例 えば,「私は毎朝ジョギングをしています」という発話 からはスポーツや健康といったトピックに対する興味推 定には有用であると考えられるが,ゲームや映画に対す る興味推定に有用ではない可能性が高い.このように特 徴抽出の際,トピックと発話内容の関係を考慮させるこ とで,推定性能の向上を目指した. また,本論文では興味推定のためのニューラルネット ワークモデルと同時に,このネットワークを適切に学習 するための事前学習手法も提案した.これは,発話のト ピックを効率良く推定できるようにするため,単語系列 エンコーダに対し,文のトピック分類を行う学習をネッ トワーク全体の学習の前に実施するものである. 評価実験の結果,提案手法は複数のベースライン手法 と比較し,興味推定性能が高いことを確認した.また, 事前学習を行う場合と行わない場合を比較した結果,事 前学習を行わない場合,トピック別発話 attention のパ ラメータが適切に学習できず,推定性能も低下した.す なわち,高い興味推定性能を実現するためには,本研究 で提案した事前学習とトピック別発話 attention を同時 に適用することが重要であることを確認した.

著 者 紹 介

稲葉 通将(正会員) 2012年名古屋大学大学院情報科学研究科博士後期課 程修了.同年,広島市立大学大学院情報科学研究科 助教.2019 年電気通信大学人工知能先端研究セン ター准教授,現在に至る.博士(情報科学).対話 システム,対話処理に関する研究に従事.電子情報 通信学会,情報処理学会,言語処理学会,ACL 各会員. 高橋 健一(正会員) 1977年名古屋工業大学情報工学科卒業.1979 年同 大学院工学研究科修士課程修了.同年,名古屋工業 大学工学部助手.同大学講師,助教授を経て,1994 年広島市立大学情報科学部教授,現在に至る.工学 博士.主に機械学習,パターン情報処理の研究に従 事.電子情報通信学会,IEEE 各会員. 言語・音声理解と対話処理研究会:SIG-SLUD-B802-39  2018 年 11 月 21 日

雑談対話からのユーザの興味推定

稲葉 通将,高橋 健一

「2018 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

(5)

●授賞理由 システムが人間と自然に対話を行えるためには,シス テムのキャラクタが一貫していること,その対話の場に ふさわしいキャラクタとなっていることが重要である. このことは,以前から経験的に認識されてはいるもの の,研究は十分に進んでいなかった.特に従来のキャラ クタ研究は発話内容に注目するものがほんとんどであっ たが,本研究は発話・相づち・フィラーの量,交替潜時 の長さという「対話の振舞い」に着目した研究である点 で独創性が高い.この点は同日の平井靖史教授によるベ ルクソン哲学に関する招待講演にて図らずも指摘された 「内容バイアス」の問題とも関連しており,本研究の重 要性は,経験において内容よりも時間構造が重要である という同教授の洞察も支持するところである.本発表は, 著者らが以前に提案したキャラクタ表現モデルの妥当性 を,異なるキャラクタ設定(対話場面設定)で収集され た対話コーパスを用いて検証したものである.お見合い・ 就職面接など,異なる場面で異なるキャラクタが用いら れていることがモデルから実証され,モデルにより推定 されたキャラクタはそれぞれの場面で実際に期待される ものであることが確認された.このように研究の独創性・ 重要性・有用性の観点から,本発表は授賞に値すると判 断した. ●アブストラクト 近年,音声対話システムの研究開発が盛んに行われて いる.音声対話システムが実用化される際には,さまざ まなタスクが与えられる.タスクごとに適したキャラク タ(性格)を音声対話システムが表現することで,対話 の自然さなどが向上することが期待される.例えば,旅 行ガイドには外向的,カウンセラーには丁寧なキャラク タが適していると考えられる.先行研究では,システム 発話文に対するキャラクタに応じた言葉遣いの適用や文 末表現の調整などテキストベースのキャラクタ表現方法 が提案されてきた.一方,音声対話においては,音声特 有の対話の振舞いも考慮する必要がある. 本研究では,音声特有の対話の振舞いを用いたキャラ クタ表現モデルを提案した.対話の振舞いとして,発話 量,相づち,フィラー,交替潜時の 4 種類に着目した.フィ ラーとは,「あのー」,「えっと」などの場つなぎ的な発 話であり,交替潜時とは発話者が交替する際の沈黙時間 である.キャラクタには,心理学で広く用いられている 性格 5 因子尺度(Big Five)から外向性,情緒不安定性 を採用し,実社会での利用を考慮して丁寧さを独自に追 加した.まず,被験者実験により,振舞いとキャラクタ の関係性について調査した.振舞いを手動で制御した対 話に対して,キャラクタの印象評定をしてもらった.こ の結果を用いて,3 特性の組合せによるキャラクタを上 記の 4 種類の音声特有の振舞いにより表現するモデルを 学習した. 次に本研究では,提案モデルが表現するキャラクタの 妥当性について,対話コーパスを用いて検証した.複数 の対話タスクを扱うアンドロイド ERICA の対話コーパ スにおいて,キャラクタ表現モデルを逆向きに適用する ことで,対話の振舞いからキャラクタを推定した.推定 されたキャラクタ分布は,各タスクの役割ごとに異なる 傾向が見られ,それぞれ妥当であることが示された.ま た,同じタスクの同じ役割に対しても,人物によってキャ ラクタの分布が異なることもわかった. 今 後 は, キ ャ ラ ク タ 表 現 モ デ ル を ア ン ド ロ イ ド ERICAの音声対話システム上に実装し,キャラクタ表 現が対話の自然さや満足度などに与える影響について調 査する. 言語・音声理解と対話処理研究会:SIG-SLUD-B803-08  2019 年 3 月 8 日

対話のふるまいに基づくキャラクタ表現の

対話コーパスにおける分析

山本 賢太,井上 昂治,中村  静,高梨 克也,河原 達也

(6)

著 者 紹 介

山本 賢太(学生会員) 2017年京都大学工学部情報学科卒業.現在,同大学 院情報学研究科修士課程在学中.音声対話システム に関する研究に従事. 井上 昂治(正会員) 2015年京都大学大学院情報学研究科修士課程修了. 同年,日本学術振興会特別研究員(DC1).2018 年 同大学院博士後期課程研究指導認定退学.現在,京 都大学大学院助教.博士(情報学).音声対話シス テム,マルチモーダル信号処理に関する研究に従事. 中村  静(正会員) 2012年早稲田大学大学院国際情報通信研究科博士後 期課程修了.博士(国際情報通信学).日本学術振 興会特別研究員(DC1),大阪大学大学院言語文化 研究科助教などを経て,現在,京都大学大学院情報 学研究科研究員.音声科学的観点から音声コミュニ ケーションに関する研究に従事. 高梨 克也(正会員) 2000年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程 単位取得退学.博士(情報学).独立行政法人情報 通信研究機構専攻研究員,京都大学学術情報メディ アセンター特定助教,科学技術振興機構さきがけ専 従研究者などを経て,現在,京都大学大学院情報学 研究科研究員.主著に,「多人数インタラクション の分析手法」(オーム社,2009),「基礎から分かる 会話コミュニケーションの分析法」(ナカニシヤ出版,2016). 河原 達也(正会員) 京都大学大学院情報学研究科教授.音声情報処理, 特に音声認識および対話システムに関する研究に 従事.主著に,「音声認識システム」,「音声対話シ ステム」(いずれもオーム社 2001,2006).IEEE Fellow.情報処理学会,日本音響学会,電子情報通 信学会,言語処理学会各会員.日本学術会議連携会 員.

(7)

●授賞理由 本論文は,動的システムを対象としたモデリング学習 環境における支援機能の影響を分析した研究成果につい て報告している.定性的語彙を用いたモデル作成と定性 シミュレーションを可能とする動的システムのモデリン グ環境 Evans を開発し,学習者の誤りに対する直接的 支援である「構造説明(モデルの誤り箇所を指摘)」と, 間接的支援である「振舞い説明(モデルの振舞いのおか しさを指摘)」という二つの支援機能を実装したうえで, それぞれの支援を受けた学習者の活動および学習効果を 比較する実験を計画・実施している.その結果,構造説 明はモデルの完成を促進するものの,理解度向上に寄与 するか否かはその使い方に依存すること,振舞い説明は モデルの熟考を促進し,モデルの完成が理解度向上につ ながることが明らかになった.また,本システムによる 学習効果は一定期間経過後も強く維持されており,概念 的理解に貢献したことも示唆された.本研究は,ITS に おける代表的フィードバック手法である直接的・間接的 支援を比較する実験を綿密に計画し,さまざまな角度か ら結果を分析・検証することで両者の特徴を明らかにし ており,これらの支援手法を活用・評価する際の有用な 知見を提供する.また,従来このような取組みは数少な く,新規性も高い.サンプル数はやや少ないものの,分 析手法の技術的信頼性は高い.以上より,新規性,有効性, 信頼性に優れた将来性の高い論文であると判断し,本論 文を研究会優秀賞に推挙する. ●アブストラクト 本論文は,モデリング学習環境における支援タイプの 違いが,学習者の学習活動および学習効果に与える影響 について,実験を通して検証したものである.モデリン グ学習環境とは,対象のモデルを自ら組み立てる活動を 通して,対象を構成する要素やそれらの関係を理解する ことを目的とした学習支援システムである.例えば,水 の流出入があるタンク内の水量を考える場合,時間あた りの流入量および流出量の大小に応じて,水量は増加す る・減少する・一定量を保つ(平衡状態),のいずれか となる.このとき,系のパラメータ(流入量,流出量な ど)やそれらの関係(大小,比例,積分など)が「部品」 として与えられ,学習者はこれらを組み合わせてモデル を作成し,シミュレーションによってその妥当性を検証 することができる(通常,GUI によるモデル編集および シミュレーション表示のインタフェースが提供される). このような活動を通して,単なる問題演習を行う場合と 比べ,学習者はより深く体系的な科学の理解を得ること が期待される. しかし,自らモデルを作成し検証することは,構成 要素やそれらの関係に関する一定の理解が必要であるた め,学習者にとって難しい課題である.そこで,従来, モデルの作成をガイドする機能や,誤り箇所の同定を支 援する機能などが開発されてきたものの,それぞれの支 援が学習者にどのような影響を与えるかは必ずしも明ら かにされてこなかった. そこで,本研究では,さまざまな自然現象や人工物の 時間的振舞いのモデリングおよびシミュレーションを可 能とする汎用モデリング環境 Evans を開発したうえで, 学習者の誤りに対する直接的支援である「構造説明(モ デルの誤り箇所を指摘)」と,間接的支援である「振舞 い説明(モデルの振舞いのおかしさを指摘)」という 2 種類の支援機能を実装し,それぞれの支援を受けた学習 者の活動および学習効果を比較する実験を行った.その 結果,構造説明はモデルの完成を強く促進するものの, 理解度向上に寄与するか否かはその使い方に依存するこ と(適切に用いて理解を深める学習者がいる一方,濫用 して理解を伴わずにモデルの完成を目指す学習者が一定 数存在する),振舞い説明はモデルの熟考を促進し,モ デルの完成が理解度向上につながることが明らかになっ た.また,本システムによる学習効果は一定期間経過後 も強く維持され,単なる記憶を超えた概念形成に貢献し たことも示唆された.本研究は,学習支援システム研究 における代表的な支援手法である直接的・間接的支援を 比較する実験を計画・実施し,さまざまな角度から結果 を分析・検証することで,モデリング学習環境における 両支援の特徴を事実上初めて比較・検証したものであり, 先進的学習科学と工学研究会:SIG-ALST-B801-06  2018 年 7 月 14 日

モデリング学習環境における支援タイプの

違いが学習者の振舞いおよび学習効果に

与える影響の検証

堀口 知也,益田 哲宏,東本 崇仁,平嶋  宗

(8)

これらの支援手法を活用・評価する際の有用な知見を提 供するものと期待される.

著 者 紹 介

堀口 知也(正会員) 1987年早稲田大学理工学部電気工学科卒業.1989 年同大学院理工学研究科博士前期課程修了.1997 年 大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了.同年, 神戸商船大学講師.同助教授,神戸大学海事科学部 助教授,同准教授を経て,2010 年より神戸大学大学 院海事科学研究科教授.知識工学の教育応用に関す る研究に従事.工学博士. 益田 哲宏(正会員) 2016年神戸大学海事科学部卒業.2018 年同大学院 海事科学研究科博士前期課程修了.同年,株式会社 キーエンスソフトウェア入社.FA 機器をはじめと した産業用機器のアプリケーション開発に従事. 東本 崇仁(正会員) 九州工業大学情報工学部知能情報工学科卒業.同大 学院情報工学研究科博士前期課程修了.広島大学大 学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程退学.博 士(工学,広島大学).早稲田大学人間科学学術院助 手,東京理科大学工学部助教を経て,2015 年より東 京工芸大学工学部コンピュータ応用学科助教,2018 年より同准教授,現在に至る.知的学習支援システ ム,プログラミング教育の研究に従事.電子情報通信学会,教育システ ム情報学会などの会員. 平嶋  宗(正会員) 1986年大阪大学工学部応用物理学科卒業.1991 同 大学院工学研究科博士課程修了.同年,大阪大学産 業科学研究所助手.同講師,九州工業大学情報工学 部助教授を経て,2004 年より広島大学大学院工学研 究科教授.学習工学に関する研究に従事.工学博士.

(9)

●授賞理由 本論文では,評価者特性を考慮した項目反応理論と 教師ありトピックモデルを統合することで,論述式試験 における受験者のライティング能力を高精度に推定でき る新たな数理モデルを提案している.また,提案モデル のベイズ推定法を提案するとともに,さまざまな数値実 験によって提案モデルの有効性を評価している.論述式 試験の採点プロセスにおいて,評価者の特性差や少数性 を要因とする受験者の能力測定精度低下が問題になる中 で,本論文は,評価者が与える評点データに加えて,受 験者が執筆した回答文も能力推定に利用することで,こ の問題の解決を試みており,新規性の高い研究と評価で きる.また,評価実験では,提案モデルが,既存手法と 比べて能力推定精度を大幅に改善できるとともに,自動 採点モデルとしての利用も可能であることを示してお り,信頼性・有用性にも優れていると判断できる.また, 本研究のアプローチは,項目反応理論の応用範囲を飛躍 的に広められる独創的な方法論であると評価でき,学術 的・社会的にも高いインパクトが期待できる.以上より, 新規性,有効性,独創性,信頼性に優れた将来性の高い 論文であると判断し,本論文を研究会優秀賞に推挙する. ●アブストラクト 近年,さまざまな教育・評価場面において,論理的思 考力や問題解決力などの高次の能力を測定するニーズが 高まっており,これを実現する手法の一つとして論述式 試験が注目されている.他方で,論述式試験の問題とし て,スコアリングの精度が評価者の特性(甘さ,厳しさ, など)に依存することが指摘されてきた.この問題を解 決する手法の一つとして,評価者特性を考慮してスコア リングを行うことができる項目反応モデル(潜在変数モ デルの一種)が近年多数提案され,その有効性が示され ている.しかし,これらのモデルを用いても,個々の回 答文を採点する評価者数が減少すると,スコアリングの 精度が低下する問題が残る. 本論文では,この問題を解決するために,評価者が与 える評点データだけでなく,受験者が執筆した回答文の 内容もスコアリングに利用できる新たなモデルを提案す る.提案モデルは,評価者特性を考慮した項目反応モデ ルとトピックモデルの一つである潜在ディリクレ配分法 を統合したモデルとして定式化する.具体的には,潜在 ディリクレ配分法を用いて個々の回答文のトピック分布 を推定し,そのトピック分布を項目反応モデルのスコア 推定値に反映させる.提案モデルは,回答文当たりの評 価者数減少に伴うスコアリング精度の低下を緩和できる だけでなく,未採点回答文のスコアを回答文情報のみか ら予測する自動採点機としても利用できる. また,本論文では,提案モデルの有効性を評価するた めに,実データ(四つの論述式課題に対する受験者 34 名の回答文データと,それらを 10 名の評価者が採点し た評点データ)を用いた実験を行った.実験の結果,提 案モデルを利用することで,従来モデルにおいて評価者 1名を追加する場合と同程度の精度改善が可能であるこ とが示された.また,提案モデルの自動採点機としての 利用においては,評価者 3 名による平均点と同程度の精 度が得られた. 先進的学習科学と工学研究会:SIG-ALST-B803-19  2019 年 3 月 8 日

レイティングデータとテキスト情報を用いて

受験者の能力を推定する項目反応トピック

モデルの提案

宇都 雅輝

著 者 紹 介

宇都 雅輝(正会員) 2013年電気通信大学大学院情報システム学研究科博 士後期課程修了.博士(工学).長岡技術科学大学 特任助教を経て,2015 年 10 月に電気通信大学大学 院情報システム学研究科助教に着任.2016 年 4 月 に同大学院情報理工学研究科助教に異動し,現在に 至る.e テスティング,人工知能,ベイズ統計,統 計的自然言語処理などの研究に従事.

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●授賞理由 単語のベクトル表現は単語間の関係を数値化し計算 できることから注目が集まっている.一方でベクトル表 現の獲得には,単語の関係性を求めるためのコーパスが 必要であり,数十万から数百万語彙のテキストデータを コーパスとして用意しベクトル表現を学習することが従 来行われてきたが,学習の計算コストが大きかった.そ れに対し,本研究では,レシピから抽出した単語をテ ンプレートにより並べ作成した比較的小規模(語彙数 7 411)のコーパスを用意し,Word2Vec を用いてベクト ル表現を獲得している.求めたベクトル表現により,レ シピ間の関係がベクトル空間上に配置され,またベクト ル演算により直接的にキーワードが含まれない場合や, ユーザの調理履歴を参考にレシピの推薦ができたことを 示している.本手法は,ベクトル表現獲得について短文 作成による小さなコーパスに大きな可能性があることを 挑戦的に示したものであり,推薦に値すると判断された. ●アブストラクト ユーザ投稿型レシピサイトには,数百万を超えるレ シピが掲載されている.各レシピサイトでは,人気のあ るレシピの提示,キーワード検索などさまざまな方法で ユーザが求めるレシピにたどり着ける仕掛けを用意して いる.このキーワード検索では,料理名やカテゴリー, 材料などをキーワードとして入力し,マッチングしたレ シピから人気度順などに基づきユーザに提示する.この 問題点として,キーワードの完全一致で検索すると類似 した料理であっても漏れてしまう可能性が高くなり,逆 に曖昧な検索を許すと適合する数が大きくなりかねな い.このように,通常のキーワード検索ではユーザの嗜 好を反映した検索を実現することは難しい. そこで,本研究では柔軟なレシピ推薦を可能とするた め,レシピおよびレビューに含まれる単語(以下,レシ ピ単語)のベクトル表現に着目した.単語のベクトル表 現とは,膨大な文章の中の単語の共起関係の推定モデル を学習し,その中間表現をベクトルとして扱うものであ る.このため,「King」-「Man」+「Woman」=「Queen」 のような単語間での演算が可能となる.代表的な手法で ある Word2Vec では,一般に,数十万から数百万の語彙 数をもつ比較的大規模なテキストデータを学習コーパス として使用して学習を行う.このコーパスに含まれる語 彙数が多く,また文例が多いほど単語間のさまざまな関 係が反映されたベクトル空間を学習できる.しかしなが ら,特定の分野に関して利用するためには,むだな単語 が多く含まれたベクトル空間になると考えられる. 本研究では,以下の手順でレシピ単語の分散表現を作 成することにより,レシピの推薦に適したベクトル表現 の構築を行った.まず,レシピサイトから 1 397 カテゴ リーの人気レシピ上位 3 件から重複を除いた 3 070 レシ ピを対象とし,各レシピの材料情報,カテゴリー情報, レビューに含まれる特徴情報を取得した.次にこれらの データに対して,材料情報,カテゴリー情報,特徴情報 を表すテンプレートに基づいて,各レシピに対し 150 文 を生成して学習コーパスを作成した.このコーパスには 約 7 000 語彙があり,Word2Vec を用いて 30 次元のベ クトル空間を作成した. 作成したレシピ単語のベクトル空間を二次元で可視化 したところ材料やカテゴリー情報を反映したクラスタが 目視により確認できた.次に,材料単語,カテゴリー単語, 特徴単語による類似検索を行い,従来のキーワード検索 と類似した検索が確認できた.また,「ヘルシー志向」+ 「コロッケ」といった検索に対して,キーワードが含ま れるレシピ以外に「おからコロッケ」も検索できた.こ れによりレシピに含まれる単語の関係性を踏まえた柔軟 な検索が可能になったと考えられる.さらにユーザが「ヘ ルシー志向」のレシピの調理が続いている場合は,この 履歴に嗜好が含まれていると仮定して推薦できることも 示した. AI チャレンジ研究会:SIG-Challenge-053-04  2019 年 3 月 24 日

単語のベクトル表現を用いたレシピ推薦システム

矢野 達也,林  豊洋,大橋  健

「2018 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

大橋  健(正会員) 1991年長岡技術科学大学大学院工学研究科修士課 程電気電子システム工学専攻修了.同年,九州工業 大学情報工学部助手,同助教授などを経て 2018 年 より九州工業大学情報科学センター教授.博士(情 報工学).主に自律型サービスロボットの画像処理 や学習に関する研究に従事.情報処理学会,電子情 報通信学会,日本ロボット学会,IEEE 各会員.(特 非)ロボカップ日本委員会理事,一般社団法人ロボカップジュニア・ジャ パン代表理事.

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●授賞理由 本論文は,ブランドのポジショニングに関して調べた ものである.ブランドマップの作成実験を行うことで, ブランドのイメージを求めている.そこにおいて非常に 興味深いことは,ロゴを並べてグループ化することと, 軸に対して「ことば」をふっていることである.さらに, 実験のあとに,例えば,なぜこの配置になったのか,な ぜ 2 軸にそのことばを配置したのかなどのインタビュー をしている.インタビューにより,配置の過程がわかり, さらに,ことばの変化もわかる.この実験により,同じ ブランドどうしでも軸となることばの設定次第ではそれ らのポジションが大きく異なることが明らかにされた. 本論文の結果により,ことばの推移などによる思考の変 化がわかった.その意味で,ことば工学的にも人工知能 的にも意義があり,論文賞に値すると考える. ●アブストラクト 業界を問わず,あらゆるブランドには何かしらの印象 が結び付いている.特に apparel やファッション関連の ブランドにおいては,「可愛い系」,「カッコイイ系」,「高 級志向」などのさまざまな言葉でその印象が表現される ことが多い.ブランドイメージは顧客によって捉えられ るものであり,企業がブランドのイメージや知覚品質, ロイヤリティといったいわゆる Brand Equity を重要視 することはそう珍しくない.本研究では,企業がブラン ドポジショニング戦略を策定する際の支援ツール「ブラ ンドマップ」の構築につなげるための検討を行うことを 目的としている. 具体的には,実際にブランドマップを実装した際のイ メージになぞらえた実験を実施している.ブランドマッ プの作成実験として,被験者らに手を動かしてもらい, あらかじめ用意された複数のブランドロゴの配置と,そ れらを分類する軸(ブランドのイメージを表す言葉)の 設定をしていただいた.ただしこのとき,価格に関する 言葉(値段が高いなど)を除くよう制限を設けた.さら にマップの作成後,(1)なぜそのようなロゴの配置になっ たのか,(2)なぜ 2 軸にその言葉を設定したかの二点を 各被験者グループにインタビューした.その結果,軸に 設定されたブランドの印象を表す言葉の表現が,被験者 らの思考の過程で変化していることが明らかになった. 本質的には同じ事柄を示しているが,その状態を表す言 葉に変化が訪れている様子が実験では確認されている. さらに,同じブランドのロゴであっても軸となる言葉の 設定次第ではそれらのポジションが大きく異なることが 明らかにされた.また,被験者らの当該ブランド製品の 使用経験の有無も,軸の設定に影響を与えたのではない かと推察された.実際にブランドマップツールを構築す る際には,同じ意味の事柄を示そうとしても人によって 言葉の表現が異なることを念頭に置かなければならな い.本研究においては実験を通して,表現したい意味合 いは同じでも,それが「汎用性」なのか「機能性」なのか, 言葉としての表現が異なるという結果が確認された.そ のため,実際にブランドマップを意思決定支援ツールと して構築する際には,ユーザが望むブランドの評価軸(言 葉)にどれだけ対応できるかが重要であると考察した. 著者らは,ブランドのポジショニングにおいてそれらを 分類する軸(基準)が重要であると推測している.加えて, ブランドのポジショニングに信憑性のあるツールを構築 しなければならない.今後は,軸となり得る数多くの言 葉の中からどのようにして軸を設定していくのか,ツー ル構築に向けてさらなる検討を重ねていく. ことば工学研究会:SIG-LSE-B803-08  2018 年 12 月 15 日

ことばから導くブランドポジション

 ─ブランドの印象を表す言葉とその捉え方の変化を探る

古宮 望美,中村  潤

著 者 紹 介

古宮 望美(正会員) 1994年 5 月 1 日生まれ.技術経営学修士(専門職). 2017年芝浦工業大学工学部通信工学科卒業.2019 年同専門職大学院工学マネジメント研究科修了.研 究分野は認知科学,ブランドマネジメント,カジノ (統合型リゾート)など. 中村  潤(正会員) 中央大学国際経営学部教授.博士(工学).専門は 技術経営論と知能情報.創造活動を支援する研究や 気づきのメカニズムの可視化とその応用研究に関心 がある.実業において,パナソニック製品開発を主 に請け負うパーソル AVC テクノロジー株式会社の 取締役を務めている.

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●授賞理由 本論文は少林寺拳法における逆突きについてその熟練 度を評価するモデルを提案している.モデルの提案にあ たって,動作に関する客観的データと実験協力者から得 られた主観的報告を的確に相互参照しており,熟練度を 測る指標を導き出す過程に独自性が認められる.身体技 能の熟練度を評価する手法について新たな知見をもたら しており,有用性も高い.ゆえに優秀賞に値する. ●アブストラクト 近年,武道必須化の中,少林寺拳法も学校教育に取り 入れられている.武道のような身体を使うスポーツでは, 初心者は型を覚えることから始まり,その後に,その型 の意味を考え,精神面の修養へと昇華されていく.しか し,限られた時間の中で初心者に型を習得させることは, 十分な指導者のリソースのない状況では困難である.教 育の現場では効率的な型の習得が求められている.本研 究では,少林寺拳法で最も基本的な技の一つである逆突 きを題材として,熟練度評価モデルの構築を目指した. まず,事前調査として熟練者 7 名に対して少林寺拳 法において重要とされる評価指標を調査するために,熟 練者が未経験者への指導時に重要視している身体部位な どについて自由記述式のアンケートを実施し,肩・腰の 回旋速度,足の引寄せ距離などの評価指標をタグ付けに よって抽出した.その後,未経験者群と経験者群,熟練 者群の三つのグループを対象に逆突きの計測実験を行っ た.計測実験では,参加者の身体につけた慣性センサと モーションキャプチャのデータを計測し,事前調査で得 られた評価指標を用いて分析を行った.その結果,すべ ての評価指標において未経験者群と経験者群・熟練者群 の間で有意な差を確認した.また,一部の指標において は,経験者群と熟練者群の間でも有意な差を確認した. この結果から,経験者が熟練者になるうえで注意を払う べき指標を推定した. 次に,実験により未経験者群と経験者群・熟練者群の 間で有意な差がみられた指標を用いて熟練度評価モデル を提案した.提案した評価モデルは,経験者群の各評価 指標についてのデータが正規分布となることを仮定して 経験者群の平均値に近いほど高い点数を,遠いほど低い 点数を算出するようにした. さらに,この熟練度評価モデルが正しく参加者の熟 練度を評価できるかを検証するために,6 名の熟練度の 異なる参加者について熟練者の主観評価との比較実験を 行った.結果として,構築した評価モデルは参加者の熟 練度が上がるにつれて高い点数を付けることができた. また,熟練者の主観評価との二乗平均平方根誤差 RMSE を算出した結果,熟練者三人中二人の評価との誤差が 0.9であり,大きな誤差でも 2.1 であった.スピアマン の順位相関係数も,各熟練者との間で 0.7 以上の強い相 関が見られた.このことから,提案の評価モデルが熟練 者の主観評価に近い評価を行っていることを確認した. この結果から,本研究で用いた熟練度評価モデルの提案 手法の有効性が示され,このモデルを用いることで,プ レーヤの習熟度を数値的に可視化できる可能性が示唆さ れた. 身体知研究会:SIG-SKL-027-07  2019 年 3 月 18 日

少林寺拳法における逆突きの熟練度評価モデル

の構築

鈴木 和樹,伊藤 毅志

「2018 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

著 者 紹 介

鈴木 和樹(正会員) 2019年電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ ネットワーク工学専攻を修了.同年,株式会社内田 洋行に勤務.少林寺拳法弐段. 伊藤 毅志(正会員) 1994年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程 修了.同年,電気通信大学電気通信学部助手.2010 年同大学院情報理工学研究科助教.2018 年より同 准教授.電気通信大学エンターテイメントと認知科 学研究ステーション代表.同大学人工知能先端研究 センター兼任.ゲームを題材とする情報学,認知科 学的研究に従事.共著に「先を読む頭脳」(新潮社, 2006),「ゲーム情報学概論」(コロナ社,2018)ほか.博士(工学).

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●授賞理由 本研究は,児童虐待に関わる各種相談記録データをト ピックモデルによって分類し,さらに,抽出されたトピッ クをベイジアンネットワークで解析することで,虐待再 発の要因を抽出したものである.児童虐待はクリティカ ルな問題である一方,職員の数にも限りがあるため,極 めて効率的な運用が求められる.ここで,本研究で得られ た知見に基づき,初期のリスク評価を行うことは,この 効率的な運用に大きく寄与する.また,そもそも一人の 職員が担当できるケースには限りがあることから,これ まで一般的な知見を得ることが困難であった,再発要因 を見つけ出せたこと自体の功績も大きい.この成果はま さしく「社会における AI」を取り扱う本研究会の事例 としてふさわしく,また,社会的意義も大きい優れた成 果といえる.以上より,本研究を「研究会優秀賞」とする. ●アブストラクト 平成 29 年度における児童虐待の通告受理件数は 133 788件であり [厚生労働省 18],児童虐待防止法が施 行された平成 12 年度の 17 725 件に比べて約 7.5 倍の増 加となった.ここには反復する虐待事例の再発も含まれ, 対応業務に関する著しい負担が生じている.現状を鑑み れば,相談援助などの専門性を獲得することが困難な状 況が推察される.過去の事例(データ)から導かれる効 果的な対応方略や事例の予後予測が可能となれば,再発 防止ならびに業務負担の軽減を期待することができる. 本研究では,データ解析プラットフォームを今後の虐 待対応現場に活用するため [Takaoka 18],その導入前の 探索的解析を実施した.具体的には,虐待事例の特徴パ ターンの把握と再発リスクに関する構造的特徴を,自治 体の児童相談所データベースをもとに,確率的潜在意味 分析(probabilistic Latent Semantic Analysis:pLSA) [Hoffman 99]とベイジアンネットワーク [Motomura 03]によって検討した.データは,協力の得られた児童 相談所が利用するデータベースから取得した.解析に必 要な項目をフローに沿って抽出し,5 889 件のデータか ら再現可能な形式による事前処理を行い,適格基準に 合った 3 308 件のデータを最終解析データとした. pLSAを用いた解析の結果,児童虐待事例のパターン は四つのクラスタに分割された.具体的には,「低リス クかつ複数回の再発が認められるパターン(14.4%が 該当)」,「重篤な虐待事例(18.0%が該当)」,「安否確 認が困難な事例(16.1%が該当)」,「低─中度虐待事例 (51.5%)」の分類結果が得られた.pLSA によるクラス タ情報を含めたベイジアンネットワークによる解析で は,重篤な虐待事例クラスタへの該当が再発と関連する ことが示された.ベイジアンネットワークによる確率推 論では,再発する場合は,再発しない場合と比べて,一 時保護の実施が約 1.5 倍,受付区分が再通告である確率 が約 2.3 倍,保護者年齢が 34 歳以上である確率が 0.8 倍, 保護日数が 0 ~ 15 日間である確率が約 2.6 倍,重篤な 虐待事例クラスタに該当する確率が約 2.0 倍であると推 定された.これらの結果が示すように,ベイジアンネッ トワークにより虐待対応を行う児童相談所の再発リスク に関する構造的特徴が見いだせたといえる. 虐待相談事例に対して,重点的にケアすべき特徴を把 握できれば,データに即した効果的かつ効率的な対応に つながる.こうした目的のため今後も継続的な研究・開 発を進めていく.

◇ 参 考 文 献 ◇

[Hoffman 99] Hoffman, T.: Probabilistic latent semantic analysis,

Proc. 15th Conf. on Uncertainty in Artificial Intelligence,

Morgan Kaufmann Publishers Inc.(1999)

[厚生労働省 18] 厚生労働省:児童相談所における児童虐待相談 の対応件数, https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/ 0000173365_00001.html(2018/10/26)

[Motomura 03] Motomura, Y.: Bayesian network software bayonet, J. Society of Instrument and Control Engineers, pp. 693-694(2003)

[Takaoka 18] Takaoka, K., Yamazaki, K. and Sakurai, E., et al.: Development of an integrated AI platform and an ecosystem for daily life, business and social problems, Advances in

Artificial Intelligence, Software and Systems Engineering,

Springer International Publishing(2018)

社会における AI 研究会:SIG-SAI-033-05  2018 年 11 月 22 日

子ども虐待における AI 実装:

pLSA とベイジアンネットワークを用いた

再発事例の検討

髙岡 昂太,坂本 次郎,北條 大樹,橋本 笑穂,北村 光司,櫻井 瑛一,西田 佳史,

本村 陽一

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著 者 紹 介

髙岡 昂太(正会員) 東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士 課程修了(2011 年 3 月).臨床心理士・司法面接士. 現在,産業技術総合研究所人工知能研究センター確 率モデリング研究チーム研究員として,モバイルア プリによるデータ収集と確率モデリング・機械学習 によるデータ解析技術を活用し,虐待や性暴力,い じめなどの社会課題解決(SDGs)に応用するプロ ジェクトに従事.NPO 法人 Child First Lab.代表理事.

坂本 次郎(正会員) 専修大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修 了(2016 年 3 月),同研究科博士後期課程中途退 学(2018 年 3 月 ). 調 理 師・ 臨 床 心 理 士. 現 在, 産業技術総合研究所確率モデリング研究チーム テクニカルスタッフとしてベイズ統計モデリングを 中心とする統計解析・機械学習業務に従事.データ 解析技術を活用し,子どもの福祉への貢献を目指す. 北條 大樹(学生会員) 専修大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了 (2018 年 3 月).東京大学大学院教育学研究科博士 後期課程在学(2018 年 4 月~).現在,同研究科博 士後期課程学生として心理統計学,ベイズ統計学に 関する研究に従事.また,産業技術総合研究所確率 モデリング研究チームテクニカルスタッフとしてベ イズ統計モデリングによるデータ解析技術を子ども の福祉現場へと応用. 橋本 笑穂(正会員) 奈良女子大学大学院人間文化研究科物理科学専攻修 士課程修了(2006 年 3 月).保育士・凖認定ファ ンドレイザー.現在,産業技術総合研究所確率モデ リング研究チームに所属.児童福祉分野でテクノロ ジーを活用することで,子どもや支援者に貢献する ことを目指す. 本村 陽一(正会員) 電気通信大学大学院電子情報学専攻修了,博士(工 学).1993 年電子技術総合研究所入所以来確率モデ ルの基礎と応用に従事.現在,産業技術総合研究所 人工知能研究センター首席研究員,確率モデリング 研究チーム長,東京工業大学特定教授,神戸大学客 員教授,統計数理研究所客員教授,産業技術総合研 究所人工知能技術コンソーシアム会長,行動計量学 会理事. 北村 光司(正会員) 東京理科大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士 課程修了(2008 年 3 月).現在,産業技術総合研 究所人工知能研究センターデジタルヒューマン研究 チーム主任研究員.子どもの傷害予防,高齢者の介 護支援・介護予防の研究などに従事.人工知能技術 の社会実装に関するプロジェクトなどに従事.子ど もの傷害予防活動を行う NPO 法人 Safe Kids Japan 理事. 櫻井 瑛一(正会員) 東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 修士課程修了(2011 年 3 月).同年 4 月産業技術総 合研究所入所サービス工学研究センターに所属後, 2015年 5 月からは人工知能研究センターに所属. 現在,同センター確率モデリング研究チーム研究員 として,ベイジアンネットワークなどの確率モデリ ングを使用したデータ解析とその産業応用に従事. 西田 佳史(正会員) 1998年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了. 1998年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所入 所.2001 年独立行政法人産業技術総合研究所デジ タルヒューマン研究ラボ研究員.2015 年産業技術総 合研究所人工知能研究センター首席研究員などを経 て,2019 年東京工業大学工学院機械系教授.生活行 動の計測・モデリング技術,生活安全・社会参加技 術などに従事.情報処理学会論文賞,日本人間工学会大島賞などを受賞.

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●授賞理由 本研究では,深層学習をガウス過程で構築する手法で ある深層ガウス過程を,一般に裾が厚いといわれる金融 市場データへの適用を目的に,深層 t 過程へと拡張を行っ ている.そして,実証分析の結果,金融時系列において ガウス過程よりも良好な結果が得られている.研究会終 了後の聴講者アンケートにより,推薦率(推薦数/回答 数)が 34%(17/50)と高く,研究としての新規性,応 用性においても優れているため,授賞に値する. ●アブストラクト 深層学習は画像認識や音声認識,自然言語処理など のさまざまな分野において有効性が報告されている一方 で,課題も多く指摘されている.代表的な課題として予 測が点推定であるため,予測の信頼区間がわからない, 学習に大量データが必要というものがあげられている. これらの課題に対処するため,深層学習をベイズ推論 の枠組み,具体的にはガウス過程を用いて表現するアプ ローチ(深層ガウス過程)が提案された.実際に,先行 研究では MNIST や CIFAR10 といった画像データを用 いて,ガウス過程を用いたベイズ推論の枠組みの有効性 を確認している. ところが,画像データではなく金融市場のデータに着 目すると,金融資産の価格変動は一般にガウス分布では 十分に変動を記述できず,特に実際の価格変動の分布の 裾の部分を当てはめることができないことが広く知られ ている.そのため,金融時系列分析ではガウス分布より も裾の厚い分布を使用して分析されることが多く,t 分 布はその代表例である. そこで本研究では,一般に裾が厚いといわれる金融市 場データへの適用を目的に,ガウス過程回帰モデルを拡 張し,t 分布を用いた t 過程回帰モデルの導出を行った. t 過程は,ガウス過程より裾の厚いデータを表現できる ため,ガウス過程の代替として注目を集めている.t 過 程を用いることで,金融市場データに含まれる外れ値に 左右されにくい推定(回帰)が可能になることが期待さ れる.さらに t 過程回帰のカーネル関数に深層ガウス過 程と同様のカーネル関数を用いた深層 t 過程回帰モデル を提案した. 最後に本研究では,実際の金融市場のデータである複 数の株式指数を用いた実証分析を行った.実際にこれら の株式指数はガウス分布には従わないため,より裾の厚 い分布を当てはめる余地がある.このデータを分割しテ ストデータに対する予測力を検証したところ,深層ガウ ス過程に対する深層 t 過程回帰モデルの精度の優位性を 確認した.また深層学習をベイズ推論化することの利点 である,予測時点において不確実性(予測分布の分散) が大きいと,予測誤差も大きくなるという性質も合わせ て確認できた. 金融情報学研究会:SIG-FIN-021-17  2018 年 10 月 20 日

金融時系列のための深層 t 過程回帰モデル

中川  慧,角屋 貴則,内山 祐介

著 者 紹 介

中川  慧(学生会員) 野村アセットマネジメント株式会社資産運用先端技 術研究部クオンツアナリスト.株式,資産配分のク オンツ運用やモデル開発を経験し,現在,AI やビッ グデータを組み合わせた先端的なクオンツ運用戦略 の研究開発に従事.2012 年京都大学経済学部卒業, 2015年筑波大学大学院より経営学修士(MBA)取得. 現在,同大学院ビジネス科学研究科(博士課程)在 学中.金融工学や機械学習の研究を行っている. 角屋 貴則(正会員) 筑波大学大学院システム情報工学研究科にて非線形 物理学の研究を行い,2016 年に修士(工学)を取得. 現在は,株式会社 MAZIN にて機械学習を用いた金 融データの研究開発に従事. 内山 祐介(正会員) 株式会社 MAZIN 研究員.機械工学および非線形物 理学の研究を経て,現在は経済物理学や機械学習 を組み合わせた金融データ解析の研究開発に従事. 2014年筑波大学大学院システム情報工学研究科より 博士(工学)を取得.

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●授賞理由 本論文は,原子力発電施設の廃止措置を対象にした情 報の体系化と可視化について論じている.原子力発電施 設の廃止措置の事例は複数あるが国内では数少なく,か つ廃止措置される施設が同一ではないため扱う情報が施 設ごとに異なり,事例が潤沢なわけではない.つまり, どのように情報を体系化して知識を継承するべきか,全 体像が明らかでない問題を対象にしながら,一方で職員 の退職などで失われていく情報や知識を可能な限り収集 する必要もある.このような問題に対して,本論文では 情報可視化手法の一種であるイーグルサーチを用いて廃 止措置情報の一部を可視化することを試みている.組織 内で保有する情報の体系化と可視化を試みることで不足 部分を認識し,実用化したときの効果を検証している. 研究フェーズとしては今後の進展の待たれる段階である が,困難な社会的課題に取り組み,その実用化によって 多大な貢献が期待できるため,授賞に値する. ●アブストラクト

本研究は,Eagle Search(以下 ES)というアプリ ケーションを利用して,原子力発電所(Nuclear Power Plant:NPP)の廃止措置でも特に解体技術を俯瞰的に 可視化および利用することを目指した研究である.研究 対象である原子力発電所の解体は廃止措置と呼ばれてお り,作業者の被ばく管理,安全管理,汚染の防止,廃棄 物処理などを始めとして多くの業務と制約条件があり, 設備などを維持しながら徐々に解体していくという特徴 がある.現在,使命を終えた炉は廃止措置に移行してい るが,炉系や設備,環境,規模などに応じて多様な工法 や技術が必要である.そのとき,場所,対象,放射線に よる汚染の有無などに対応する最適な解体工法と技術の R&Dも必要である.しかし,日本では完了例が一例で, 世界規模でも 16 例ほどしかない.R&D 以外にも知見の 蓄積と利用などの課題がある.そこで本研究では,一般 的な原子力施設の解体技術と廃止措置の実事例を対象に ESを利用して,まずは既存の情報の可視化と体系化を 行った. ESとは,Web ブラウザ上で動作する情報検索のため のインタラクティブなアプリケーションである.選択項 目のボタンと選択(検索)結果から構成されている.特 徴として選択項目のボタンを押すと同時に検索結果が更 新され,さらに条件を絞り込むときには有効な選択項 目ボタンだけが押下可能になる点がある.それゆえ ES は通常のデータベース検索の And 検索とは異なり,結 果が空集合になることはない.そこで ES を利用し,解 体に関する一般技術に関しては,日本原子力学会が発 行する原子力施設の廃止措置に関する書籍を参考にし, HTML上で俯瞰視および検索できるようにした.実例 については,廃止措置中にある新型転換炉原型炉ふげん (日本原子力研究開発機構)を対象にし,単なる技術的 特徴だけでなく,そこで実施された切断技術から各パラ メータ(切断速度,コスト,切断可能な金属厚)を抽出 した.ES の選択項目のボタンに各パラメータと解体対 象を対応させるなどし,条件の組合せに応じて最適な技 術のみを表示させた. ESは押下ボタンに応じた動的な動作をするため,あ る技術について気中切断は可能でも水中切断は範囲外で あるなど瞬時に把握することができる.一方,パラメー タを増やすと検索が煩雑化することもあり,調整が必要 である.今後は,オントロジーやセマンティクスなど意 味的なつながりを考慮した検索やよりインタラクティブ な方法について取り組みたい. 知識・技術・技能の伝承支援研究会:SIG-KST-035-01  2018 年 11 月 22 日

Eagle Search を利用した廃止措置情報可視化

の取り組み

樽田 泰宜,井口 幸弘,北村 髙一,手塚 将志,香田 有哉

「2018 年度研究会優秀賞受賞論文紹介」

参照

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会 員 工修 福井 高専助教授 環境都市工学 科 会員 工博 金沢大学教授 工学部土木建設工学科 会員Ph .D.金 沢大学教授 工学部土木建設 工学科 会員

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. [email protected]

寒地土木研究所 ○正会員 吉川 泰弘 (Yasuhiro Yoshikawa) 北見工業大学   正会員 渡邊 康玄 (Yasuharu Watanabe) 北見工業大学   正会員 早川 博 

千葉工業大学 大学院 建築都市環境学専攻 学生会員 ○長沼 直人 千葉工業大学 工学部建築都市環境学科 正会員 内海

九州大学工学部  学生会員 ○山下  健一  九州大学大学院   正会員  江崎  哲郎 九州大学大学院  正会員    三谷  泰浩  九州大学大学院 

北海道大学工学部 ○学生員 中村 美紗子 (Misako Nakamura) 北海道大学大学院工学研究院 フェロー 横田 弘 (Hiroshi Yokota) 北海道大学大学院工学研究院 正 員

メトロ開発㈱  フェロー  藤木  育雄 東京地下鉄㈱  正会員  大塚    努 佐藤工業㈱ 正会員 ○守山   亨 早稲田大学理工学術院  正会員