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〈研究ノート〉不等価交換の法則について : 搾取の実現条件の歴史的性格

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100 〈研究ノート〉

不等価交換の法則について

一搾取の実現条件の歴史的性格一

中 鳥 太

工 問題の所在

 国際価値論研究の中心テーマである資本主義世界市場における価値法則のmodification についての理解は,(1)国際的な不等価交換の法則的把握の次元と法則自体の性格・機能を どのように考えるべきかという所謂後半体系を総合しうる上向の問題として,②擬制的複 雑労働化の過程に関して労働強度と労働生産性の区別を前提とする国民的労働倍数化の内 的論理と結びつく,競争論的次元での国際価値面面の意味及びその形成のメカニズムの問 題として再吟味されなければならない。  以前に発表した論稿で既に世界資本主義構成体における同質的労働と異質的労働力の連 節化の基本的構造を説明したが,特に前記の問題(2)に拘る不等価交換の理論的契機の把握 が不十分である以上,問題(1)における不等価交換の基本的規定をヨリ歴史的・具体的に条 件づける国家の機能再評価を媒介として,いわば競争論としての不等価交換を,所得の国 際的再配分の,従って搾取の実現条件の主要な形態である広義の国際価値の形成条件の検 討を通じて再論するのが小論の意図である。 」 国際的不等価交換法則の理論的性格とその歴史的位置づけ  価値法則のモディフィケーショソという機能的概念が国際的不等価交換の理論的根拠と され,後半体系の理論的性格を規定する方法論上の基底として,その直接的上向或は具体 的上向に対応する価値論次元,或は競争論次元でマルクスの所謂外国貿易の二面性を媒介 にしながら,国際的不等価交換の理論化を試みた旧来の諸視点は,直接的上向はいわずも がな競争論的把握においても資本論体系の純粋原理としての価値法則自体とそのモディフ ィヶーショソ形態を方法論的に異質の次元として峻別していない。価値法則は最高度の商

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品経済社会の内部編成の原理なのであって,その発展契機或は歴史的性格は一切,理論と しては抽象されている。勿論,ブルジョア国家という範例はそこでは全く問題にならな い。市民社会の総括者としてのブルジョア国家の方法的範疇としての出現は,歴史的強力 としてそれ自体経済的・社会的種差性の方法論への導入であり,国家に媒介された資本が 必然的に歴史的範躊としての世界市場に行動する法則的形態規定が価値法則のモディフィ ケーションである。それはこの意味で具体的・歴史的な,多様な国民的生産力水準を有す る国民経済より構成されている複合的な資本主義世界市場という歴史的「生活環境」に最 終的には規定されている,歴史的法則である。更に前半体系の原理は,それ自体の内部に 発展法則の契機をもたない完結的な円環運動であるのに対して,後半体系の理論的基底で ある価値法則のモディフィケーション過程は,国家が資本の内在的制限を止揚するために 資本の有機的構成を高度化し,剰余価値率の引上げをはかって外国貿易を通して不等価交 換を強制する経済・社会発展法則であり,狭義にはブルジョア国家を通して国民経済の資 本蓄積とそれを保証する再生産構造を直接規定する具体的な蓄積法則でもある。このこ とは,第一に資本主義世界市場における商品交換の法則が,実体としては世界資本主義社 会構成体(体制と言ってもよい)のいわば下部構造である資本主義国際分業を規定する構 造的法則であることを意味する。この構造的法則とは従って「発展」法則であるが,この 発展の内容はsocial dynamicsの意味であり,決して経済的発展に聖断化されるものでは ない。しかし,第二の特徴づけとして,旧来不等樋交換規定に強く打出されている国際分 業利益(相互利益)の可能性・必然性の否定的とりあつかいに対しては,価値法則のモデ ィフィケーショソ規定には当然比較生産費理論がその有機的部分として明確に入ってお り,従ってこの意味からも「経済的発展」法則としての理論的性格を持っているといわな ければならない。  これらの特徴をもつ歴史的・発展法則は価値法則のように資本の円環的な反復運動では なく,資本の国家を媒介にした発展傾向の法則性を抽出する範躊である。それは価値法則 が世界資本主義社会構成体の各段階に照応した貫徹形態としていわば相対的に独立した傾 向性を持つに至ったことを意味する。故に不等価交換の法則(或は国際価値の法則)とし て独立的範疇に総括することが出来よう。この不等価交換の法則は,別冊で説明した資本 主義世界経済における不等価交換の発生論的構造と機能論的構造を理論的に規定している 歴史的・発展法則である。  旧来の論争において殆んど見すごされている重要な理論的性格が不等価交換の法則に内

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在する。すなわち,19世紀の自由競争段階までをカバーする不等価交換の発生論的構造に おいては,不等価交換の法則は,一般的tlこは資本主義的自由競争と世界生産力の発展を法 則的・傾向的に出漁,刺戟する資本主義的蓄積機能を,その本源的蓄積とは質的に異る行 程として有し,効果としては「中心」諸国core一資本主義国際分業体制として「秩序」づ けられる世界的:再生産構造(価値補顛バランス及び素材変換バランスの国民経済的不均等    1) 性をもつ)と世界的資本蓄積構造の主体一を形成した。この場合,「中心」形成に対する 不等価交換の法則は,植民地に対する収奪的な貿易(経済外的強制による重商主義)の形 をとって機能したのではなく,主として英国及び欧州諸国と米国の間の工農業の垂直分業 形式を通じての不等価交換の不均等発展の構造として機能したと考えねばならない。比較 生産費次元では相互輸出バイアスー輸入代替一新しい国内比較生産費構造,すなわち,新 しい労働生産性の部門比率の形成という一連の北大西洋分業圏の発展として把握すること ができよう。例えば米国と欧州(特に英国)との上記国際分業による比較優位構成の変化       2) と国際分業利益が両国に与えた発展効果はLeticheによって実証されている。また,ウ        3) オラースティンの総括によれば,世界経済の発展(循環性の停滞より脱出する為の)契機 として三つのメカニズムー技術的変化,世界家計のプロレタリア化及び新直接生産者の世 界経済への合体(連節)一があげられるが,特に技術的革新が生産の新しいダイナミック な部門を創出し,不等価交換に入りこむ商品リストと中心VS.周辺という経済過程の地理 的・空間的配置を,垂直分業に基く不等価交換の世界的構造の質的枠組の中で不断に変化       4) せしめ,世界システムの地政治学的な再編成の状況を創りだしたのである。彼によれば, 本来の世界システムでは単一の政治システムが欠落し,個人・個別経済単位(資本とい ってもよい)が中期的な見通しに立って利潤動機で行動するような広汎な職種に基く機能 的分業が,地域それぞれに固有の社会的労働の組織と世界システム内に生じる格差を温存 し,正当化する国民文化とイデオロギー装置としての国家の形成によって可能となる「広 汎な分業体制を含む世界システム」=資本主義「世界経済」として,16世紀以来,中核諸 国と辺境(半辺境も含む)を含めて成立する。彼は経済的範疇として,より広い構造的な 社会システムとしての資本主義「世界経済」をreal systemとして把え,政治的強力と 1)木下悦ご「国際経済の理論」1979年,42−43頁参照。 2) J. Letiche, Balance of payments and economic growth, 1959, p, 184, pp. 239−240. 3) 1. Wallerstein, The future of the world−economy, Processes of the World−system  1980, pp. 168−173. 4) 1, Wallerstein, The modern world−system il, 1974, pp. 348−351.

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の関係を,多数の政治システムを含み「経済的損失を政治体が絶えず吸収しながら,経済 的利得は『私人』に分配されるような仕組みを基礎とし」更に「経済的要因がいかなる 政治体にも完全には支配しきれないほど広い範囲にわたって作用している」ので「資本家 は自由に術策をめぐらすことのできる構造的基礎を与えられ」,「たえまなく発展すること        5) が可能になる」という脈絡で把えている。ここで我々が確認しておくことは,価値法則の 世界市場における貫徹形態を制度的に反映する資本主義国際分業の発展が,分極的な政治 権力=歴史的には西欧国家の対立・抗争過程及びイデオロギー的秩序化の中で,構造的な 社会システムとしてはじめて保証されえたし,現に保証されているという事実である。故 に価値法則の世界的貫徹の過程は国家の政治的対立の過程,歴史的には所謂自由貿易帝国 主義に収敏する非公式の世界帝国の形成過程と昏々符合するといえるが,このことはG       6) アリの見事なパラダイムによって証明されている。実際にこのリカード的国際分業パラダ        7) イムは19世紀中ばに現実として最も純粋化して機能していた。  これはマグドブがリカードウの比較生産費的国際分業の不可欠の前提として強調する点        8) でもある。マグドブによれば,イギリスとポルトガルの比較優位の起源は経済よりむしろ 政治……即ちイギリス海軍力の優越性と,ポルトガルがイギリス海軍の保護なしには海外 帝国を保持…しえなかったことにそのルーツを有していた。具体的には「1703年のメスエン に終わる四つの一連の通商条約において,イギリスは『理想的な』国際分業一客観的で独 立した経済法則の効能の最良の事例として今日までたたえられている一を確立し強化する 諸条件を押しつけたのである。」総括的に言って,価値法則の世界的貫徹形式;不等価交 5) lbid., pp 348−351. 6)専ら労働生産性水準の差のみに拘るような「中心」内部の歴史的世界市場はG.アリの英・  独・米主要三ケ国の英自由貿易帝国主義を典型国とするパラダイムの援用により画くことができ  る。英の国家類型は1囎→1W→S+であり独はN+→N3→ε+,米はN+→NS→N一で表され後  二者の対照的国家型がaunicentric informal empireとしてのPax Britannicaを補完する  機能を果す。即ち,英の中心産業たる鉄鋼業に対して独の棉工業,米の農業(殻物)部門が全体  としては夫々の比較利益を得るような補完的国際分業網を形成して英国の世界秩序を一種の均衡  の中で安定化させる。彼は国家の国際的行動の型を四つの対極(N.一敵対的民族主義としての  植民地主義,N一一非敵対的な民族主義としての非公式な帝国として表れる国際主義,3+一敵対  的国家主義としての帝国主義,S一・一一非敵対的国家主義としての公式の帝国)を持ち直角に交叉  する二つのベクトルと四つの孤で表現する。G. Arrighi, The geometry of imperialism lg78  pp.49−73, The articulation参照。 7) lbid,, p. 67. 8)H.マグドフ,大阪経済法科大学経済研究所訳「帝国主義」1981年,158−162頁。

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換法則は,典型的にはレーニン的帝国主義への部分的逸脱傾向を内在せる非公式の世界帝 国としてのPax Britannicaの枠内ではじめて機能しえたのであったと言えよう。  資本にとってその生活環境としてマルクスにより示された世界市場への必然的展開或は レーニンの所謂外国貿易の三つの必然的契機に示される資本によるその国民的枠組の突破 は.復数的な国家に支持された資本がその本来的・内在的な制限一資本の有機的構成の拡 大に伴う平均・限界利潤率の傾向的低落一を時間的・空間的に止揚しようとする世界的自 由競争に表徴され,典型的には19世紀のイギリス基軸型国際分業に収敏する多様な中心一 周辺パターンをもつ国際分業の段階,中心内部の諸国相互の分業総利得配分をめぐる激烈 な闘争・対立の不均等発展過程を経過し,終局的には質的な生産力の格差(逆に云えば中 心内部での国民的生産性水準の相対的均等化傾向)を総体として植民地的周辺地域に対し て有するに至ったいわば多極的中心の形成された段階を意味した。  ここで以上の概観から抽出できる質的な論点は,発生論的な不等価交換の構造と機能論 的構造においては,国家(政治)の資本と労働の各審級に対する連節化の形態に質的差違       9) が存することである。プーランツァスによれば,資本主義生産様式によって支配される社 会構成体にはいくつかの異った生産様式の共存以外に,私的資本主義,独占資本主義,国 家独占資本主義等の,資本主義生産様式の「純粋な」いくつかの諸形態の共存を見出すこ とがでぎるのであって,資本主義社会構成体の諸段階は,この「純粋な」生産様式の一形 態の,他の諸形態に対する支配に関連づけられ,そしてこのことは資本主義生産様式とそ れ以外の生産様式のある種の具体的結合を必ず伴っているから,このような意味で資本主 義の二段階を厳密に規定できる。  自由競争段階における中心と周辺の連節構造は中心国の基軸産業部門にこの連節化過程 を部分的に内面化することを通じて中心国の資本主義生産様式を純粋化し,夫を私的資本 主義の「純粋」形態としてその資本の生産力のヴェールをまとって現成した国民的な労働 の生産力のレベルを圧倒的に上昇せしめ何よりも国民的生産性の範躊を成立せしめ,国際 価値範疇iを創出した。それはあく迄,商品の国際交換,国際分業の一つの世界的な型に添 うものであって,この理論的重層構造は,その構造の世界的な連節化の特質一単数の典型 国を基軸とする.植民地外囲を伴った非公式の世界帝国秩序の「中心」内部ではじめて規 定されえたのである。かかる中心内部の限定的世界市場化は典型国とその他の中心内部と 9)N.プーランッァス・田口・山岸訳「資本主義国家の構造1」1978年193−194頁参照。

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      10) の貿易の拡大によっても歴史的に論証されよう。門門的証券投資は政治的性格をそれ自体 はもたないりカードウの世界的なnatural course of tradeを補充する「非公式手段」に すぎなかった。更に労働に関しては中心における労鋤力商品の価値という客観的範疇と小 商晶生産或は半自然経済としての農村共同体的経営下での「家族的経営family economy」 一利潤最大化と貨幣所得を目的としない費用/効用計算を阻止する家族的関係の構造をも つが故に計測不可能だから最大化もできないような,伝統的な社会・文化的に規定された       11) 家族的家計の需要を満足させるような経済範疇一の不分割の「全労働所得」を比較できな いという点から,中心(国家)の周辺(労働)に対する連節化は収奪(不等価交換を通じ ての搾取ではなく)三原蓄過程にとどまり,従ってこの段階の厳密な不等価交換は中心内 部の諸国家相互間の各局面に応じた限定された形式をとり,全体としては中心を周辺植民 地の限界化によって,その資本の国民的生産力(故に労働の国民的生産性)と労働力の価 値(価格)を周辺より質的に世界的構造として分離せしめる機能を果したのである。従っ てこの場合,中心の内側の各国の労働(労働力価値)と資本(労働生産性)の種差性は, 中心「諸国家」の国民的生産力の水準の傾向的平準化を不等価交換従って不均等発展の諸 局面を通じて規定したのである。  次に第二の理論的問題として価値法則のモディフィケーションの内容に拘る不等価交換 の法則自体の検討にかかろう。価値法則のモディフィケーショソの定義的命題としてマル   12) クスは,国内経済の同種商品生産部門内のその社会的価値=市場価値の形成規定要因とし ての部門労働の平均強度,更にそれを各部門より構成される国民経済全体に類推して国民 的な平均強度の存在を指摘し,世界市場においてはこの公準が本来欠落しているが故に国 民的労働強度のStufenleiterにしたがって各国民的労働が国内における複雑労働一単純労 働の還元的な倍数関係に類推されることをもって価値法則のモディフィケーションの第一 の形態となし,更に第二の形態として労働強度にとどまらず,各国の国民的な労働生産性 の差違に関しても第一の形態が妥当すると言うのである。かかる労働の強度差即ちそれに 所以する価値生産物量の相違は世界市場では,世界労働或は普遍的労働の平均単位によっ て客観的に計量され,倍数関係として単純・平均・不熟練労働に還元されて,国際価値の 10) ]M,B. Brewn, After imperialismユ970, p,63. 11) P. Kriedte, H. Medick, J. Schlumbohm, translated by B. S¢hempp, lndustrialization  before industrialization 1981, p. 41. 12) K. Marx, Das Kapital, 1 band, Marx−Engels Werke 23 Dietz 1962, S. 584.

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等量として等置(交換)されることになる。基本的には二つの課題にわけ’うる。すなわ ち,(a)価値法則のモディフィケーションのメカニズムを説く場合の労働生産性と労働強度 の内的関係,(b)国内の部門労働(市場価値)と国民的労働(国際市場価値)の内的関係と いう問題である。 (a)この問題に関しては周知のように単位時間当りの価値生産の大きさに関係のあるもの は労鋤生産性ではなくて労働強度である。故に一国内で単純・平均・不熱練労働と複雑・高 級・熟練労働の倍数的還元の問題も理論的には,労働強度に関係する問題である。即ち, 同一時間内に単純労働よりもヨリ多くの価値を生産しうるから質的に高級な労働なのであ る限り高級労働には平均労働よりはるかに多い広義での養成コストが投入され,対象化さ れているし,叉,名和統一が言うように国民経済の労働市場・労働構成の中で本来的に少 数・部分的な比重しか占めえないものである。名和の言う本来的複雑労働が極めて比重の 小さな昏昏であることは,逆に言えばそれが資本主義生産様式の性格によって規定される 歴史的・人為的範疇ではないこと,換言すれば対極的な普通の労働である単純平均労働の 労働強度の上昇(下降というよりも)の限界は一定段階では,むしろ生理的なものであっ て,労働対象と労働手段の一定の連節化形式によって,規定されるその労働生産性(労働 の生産力)の範疇こそ歴史的なものであるとみなければならず,マルクスも資本主義の発 展に伴って不熟練・単純労働への中間層の広汎な急速な分解,その絶対的窮乏化の方向性 を示唆しているのである。ところでこの労働生産性は本来価値生産に無関係な公準である わけであるから,本来的労働強度差を前提とする労働の倍数化関係は,国際的に通常のケ ースではないと考えて一応考慮の外におくとして,何故労働生産性の差が労働強度の差に 転化することができるのであろうか。いいかえれば,モディフィケーションの第二のケー スが歴史的,理論的に通常だとして,それが何故第一のケースに類推されうる不等価交 換=価値量での不等量交換に変りうるのであるか。労働生産性改善が,労働節約を通して 同一時間内の投入労働量を縮減させることによるという説明は技術的な,それに止まる。 普通この転化のメカニズムの説明としては,国内経済の同種生産部門において特定企業・ 資本による個別価値が,主として労働手段における技術革新の採用等の要因による当該 企業の労働生産性上昇を通じて,一時的に当該部門の平均的生産水準に照応して形成され た部門市場価値(市場生産価格)より小さくなり,その結果として当該企業はその差額を いわば特別剰余価値として一時的に取得することになり,この企業の労働は「強められた 労働」として同一時間にヨリ多くの価値を生み出す,強度の大きな労働になるというの

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である。  従来この「強められた労働」という論理は殆んど,その儘の形で国際交換におけ’る擬制 的複雑労働化の論理に適用されている。しかし,労働生産性の上昇は理論的には価値量に 全く関係しない筈である。故に労働強度も同時に増大したという仮定を前提とすれぽ,両 者を混同することになり,労働生産性増大の再臨を労働強度増大の問題にひそかに技術的 次元ですり替えることになる。問題の核心は特別剰余価値(超過利潤)搾取の一時性自体 にあるのではなく,その論拠である擬制的複雑労働化が労働強度ではなく,生産性の範疇 だけによって説明されるべきことにある。この視点の基礎として労働強度の大きな「高級 労働」の再生産にはその労働力価値の絶対的上昇が機構的に不可欠でありその養成過程は 時間的にも相当の長期を必要とするからこの場合に妥当しないこと,逆に労働生産性の上 昇は必づしも労働の価格として現象する労働力価値の絶対的上昇(しかもその大部分を占 める平均労働の担い手としての)を不可欠とはしないし,むしろマルクスの指摘する如く 労働力の価値はそこに入りこむ生活資料の単位当り価値低下傾向により,叉資本家の最大 限利潤動機により下向に圧迫される傾向が,理論的には存在している点が改めて指摘され なければならない。  従って擬制的複雑労働化による労働生産性の上昇を言う場合にこの過程が絶対的剰余価 値生産と相対的剰余価値生産に拘る,搾取の直:接的条件には関係なく,剃余意値移転によ る剰余価値率の上昇にのみ反映され,それに照応する使用価値量の増大を専ら象徴する, 専ら労働熟練度と生産条件の改善に拘わるような範疇であると考えなければならない。  強められた労働に関して,「ヨリ高い生産力をもつ労働が,ヨリ高い価値を創造するた めには……同一種の商品のヨリ劣った生産力をもつ労働によってつくりだされた余分の価 値が,市場価値形成の機構を通じて,平均化される。空虚を充たす人間労働がそこにある

. . ・ . 13)

のである(傍点一筆老)。」と説明する向坂の「平均価値の機構」は通説的であるが示唆的 内容をもつ。即ち,同一商品生産部門で形成された超過利潤は,明らかに不利な企業部門 (市場価値以上の個別的価値部分)からの価値移転によって構成されていると考えなけれ ばならない。  労働強度と釘はなして労働生産性差を考えて,一定時間での等しい剰余価値生産という 条件を,資本の有機的構成の大きな差(但し賃金部分は価値的に均等=均等な剰余価値率, か不変資本の大きさに逆比例する=不等な剰余価値率)と結合した部門内,特別剰余価値 13)向坂逸郎「マルクス経済学の基本問題」昭和37年,283−284頁参照Q

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の形成局面では,価格との乖離を通じて価値移転が発生するがこれはその部門の投入総労 働が社会的価値であること,即ち,価値実現過程で,その社会的性格=社会的浪費部分の 欠除ということを端的に示唆しうるであろう。  この場合,この商品生産部門の市場価値を形成する商品大量に投入された労働が,社会 的に必要な平均的簡単労働であると同時に,劣等生産条件(資本の有機的構成の低い)企 業で創出された,同量の価値も,それが優良企業の特別剰余価値として市場で社会的に実 現される限り,社会的浪費ではない。  優良企業の平均的簡単労働は,擬i制的に複雑化し,質的に高級な労働となるが,それは 本来的な複雑労働ではなく,つまり労働強度の増大ではなく,同種商品部門の経過的な個 別的労働生産性の上昇を意味するにすぎない。換言すれば,特定企業の個別的労働生産性 の上昇とは,その個別的賃金水準が構造的に上の生産性の上昇に比例しえないか,著しく 抑制されるケースである。即ち,労働強度拡大への転化は当該国の賃金財生産部門の労働 生産性が構造的に上昇した場合に総資本の階級的な力がこの状況を政策的に利用できる要 因(政治的強力,社会的イデオロギー装置或は労働者階級自体のアジア的特殊性)が存在 する場合に限定される。  故に同種部門の擬制的な複雑労働化の場合,それが擬制という論拠は,労働支出を担う 主体の再生産費用が労働強度にではなく労働生産性の上昇に比例しないことに求められよ う。  この場合当該企業が特別剰余価値を取得する局面では同種部門内各企業利潤率は相互に 異なり且つ部門問の利潤率も差違を保っているわけだが,この特別剰余価値=超過利潤が 消える局面ではこの同種部門内の部門利潤率は均等化し,もし中間局面を無視すれば一般 的利潤率の水準に平準化しているわけだから,この意味では部門相互間にも国民経済の再 生産をその平均利潤率で保証するような資源配分が完了し,E.マソデルのいうように一 種の価値の移転が行なわれたことになる。即ち,この場合,国民経済の部門間と部門内を 通じて,剰余価値率と労働強度を一定として,支配的な平均労働生産性によって条件づけ られた社会的必要労働時間による国民経済の市場価値規定を考えれば,特定企業による超       ユ4) 過利潤の獲得は有効な社会的需要に照応した剰余価値の配分替え=価値移転を意味する。 14)E.Mandel, der sptttkapitalismus,1972, ss.91−94.邦訳・飯田・的場訳「後期資本主義1」  106−110頁。マンデルは基本的には国際価値での等価交換の下での実際上の価値移転5異った労  働量の交換という理解に立つ。同書H邦訳,166−168頁参照。

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 さらに付随的問題点としては資本論でマルクスが言及しているように,イギリス人と中 国人の紡績労働を労働生産力の異る労働として比較した場合,同一時間内に両者のつくり 出す価値生産物は等価であるとしても,生産物価値の中に対象化される資本価値の移行部 分は,生産性のはるかに高いイギリス人労働者の生産物総量において極めて大きくなって       15) くる事情がある。しかし労働生産性変化による価値量不変ということは山本二三丸の指摘    16) する如く,あくまで生きた労働によって創り出される価値自体に拘ることであって,既に 対象化されている価値の移行ということとは質的に異る問題の範躊であるといえよう。従 って一般的には,不変資本部分に当る価値構成部分の価値生産物への付加(移行)とは無 関係であり,時間的な要素を入れて考えても,労働生産性の発展(増大)によって増大し た使用価値の単位当りの生産物に対象化される不変資本部分は逓減すると考えられる。労 働力単位当りの固定不変資本の装備度を示す係数である,所謂資本容量の増加率及び労働 対象容量を示す物思容量の増加率が労働生産性の増加率よりも下まわるとすれば,一これ は少くとも成熟した資本主義経済の安定局面を支配する傾向であるが一既存の不変資本価 値の使用価値単位当りへの移行は逓減するであろう。資本の有機的構成の増大は,対象化 された労働部分を生きた労働部分に対して拡大するが,この場合総資本は搾取率を多様な 手段によって引上げ,主として労働生産性の引上げによって一しかも厳密には直接的搾取 というよりは,その実現条件の変動によってそれを達成する。従って,生産力の現段階で は「工業生産の資本容量の低落は……少くとも優越的な性格をもっている」し,成熟した 帝国主義圏では「相対的に高い成長テンポの条件の下で,工業生産の資本容量が低落する か,まれは安定をしめすことが典型的である」し,「技術の進歩は,労働の資本装備度の 増大がより緩漫な場合でも,生きた労働の生産性の増大を可能にするような方向をとって  17) きた」のである。 (b)以上述べた国内部門間特別剰余価値形成の論拠を世界市場に適用する場合,国内労働 と世界労働(より具体的にはその控除部分としての国民的労働)の質的な差という問題が 提起される。即ち,国内労働はあくまで特定の使用価値生産に拘る具体的労働としての側 面に限定され,構造的には労働力価値を労働生産性と逆比例的に乖離させ,剰余価値率を 15)マルクス・林直道旧訳「資本論第一巻フランス語版」67−68頁。 16) 山本二三丸「現代資本主義の経済法則」1972年,42頁,同「労働賃金」1965年,200:頁,註23,  参照。 17) ッァゴロフ・キーPフ共編,宇高訳「資本論と現代資本主義の諸問題」1969年,64−76頁参照。

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 110 彦根論叢 第2!5号 引き上げることは理論的には可能であるとしても.その使用価値的制約により,換言すれ ば国民的労働への転化機構を欠くために,特に一次産品価格の低落による各部門への拡大 効果を欠くために困難化する。世界市場では国内の具体的労働と異り,全使用価値を生産 可能な「特殊な」,単純平均労働(社会的必要労働)に転化することによって先進国は, その国民的労働としての素材変換或は価値補填を,国民的労働(世界労働の有機的部分) という範疇,即ち,各商品の国際価値という範疇によって実現し,結果としてその個別的 な労働力価値を,国民的労働の労働力価値として総体として抑制することが可能になる。  この場合,世界市場の空間性(立地)によって,世界労働が平均的労働生産性を代表す る実体としては存在しないという世界労働(国民的労働)の擬制化の地理的論拠があげら れる。これは直接的生産過程で惹起した要因が本来価値生産とは無関係であるにも拘らず その空間的媒体によって価値搾取実現の条件として構造化したことを意味する。しかし, 擬制的複雑労働化はこれだけでは説明できない。即ち,商品交換に参加する各国民経済の 夫々の内部的な比較生産性(生産費)体系の画す外国貿易可能な枠内で,貿易(輸出)さ れる同種商品の社会的価値すなわち実際の投入量が貿易参加国の数だけあっても(直接 的な搾取の条件),国際競争の需給変動の過程で成立すべきその国際市場価値は一一一しつしか ない世界価値としての一物一価という搾取の実現条件の特殊な形態に象徴されるように, 世界の国々の輸出基軸商品の生産に不可欠な投入量によって国民的労働として規定され, 従ってそれ自体決して浪費ではなく世界的需給均衡の下では夫々の国民的労働生産性のひ らきによって,やはりStufenleiterをなして有機的に同質的平均労働として連結・連続し ている構造が指摘されなければならない。この平均労働の国際的連節化の構造そのものが 国際的搾取の実現の条件を集約して反映する。  この国際的搾取の実現条件のパラダイムを今前節で規定した19世紀のPax Britannica としての自由貿易帝国主義下の英・独・米の相互関係に象徴されるリカード由比総利益の パラダイムと重ね焼きをしてみよう。一国内での擬制的複雑労働化は先進企業の有機的構 成の高度化を出発点としてそれに比例しない賃金という状況(価値移転による形式的な該 企業の相対的剰余価値取得〈実現条件の獲得による〉による剰余価値率の上昇及びその過 渡性)を想定したが,世界市場の特定段階,理論的には基本的な自由競争段階では,前述 の限定されたパラダイムとしては,資本の国民的な有機的構成の差違は当然考えられると しても,国内と或る意味では同様に過渡性をもち,段階を通じては同等化するか,差は縮 小すると考えられよう。歴史的には例えば鋼生産,動力等の指標と技術の国際的移転の速

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        18) さによって示される。従って各国の平均利潤率或は剰余価値率の差に反映される国民的生 産力,即ち国民的労働生産性水準の差違の論拠は,国民所得部分就中,国民的な労働力価 値の国際的連節化形式にこそ求められよう。  英・米両国の連節化を考えれば,19世紀を通じ英は米と大陸諸国に対し,棉製品,石 炭・鉄において比較利益を有し,就中米に対し,農工の素材変換分業を通じて双方の輸出 部門の労働生産性を引上げ相互輸出biasを形成したが,米工業での高い生産性が既に初 期から存在していたにも拘らず,英の賃金がより低く,米と競争可能であったし,他方, 高賃金の三農産品の輸入は単価が引下げられたから容易に英に輸入され続け,両国の収支 に殆んど緊張を与えずに成長を通じて貿易利益を双:方に与えたのである。米の高賃金は, 輸出部門の労働生産性引上げの刺戟となり全体として国内市場を拡大し,貿易利益を増大    19♪       20) せしめた。19世紀50年代に英の全貿易の約・fが米国向けであったから,この関係は基軸的 であるといえる。  三つの特徴が指摘でぎる。一は国内競争より質的に複雑・激烈な競争を媒介する国家の 強力,特に国民的労働生産性;国際価値範躊を創出する為に国内・国外を問わない労働全 般に対する指揮・支配である。二に不等価交換の法則化を可能にした国際価値範疇に表徴 される等価性の国際的擬制化の構造である。三は世界的消費・需要のもつ国際価値への規 定性である。  第一の点に関し,最も強力な外囲が植民地支配によるその農業労働の,農工垂直分業を 通じての低廉な第一次産品収奪による強制的包摂であって,この形式の素材変換的代位は       フレ ムワ ク 世界的分業の枠を創りえた中心国独自のものとしてしか現れないし,自国内では国家 にとり敵対的である工業労働者階級の反抗を形式的等価性により規制できる国家の種差性 がこの労働連節化の最も規定的要因である。歴史的には.19世紀中ばの英国国家とプロレ タリアートとの連節によるその国民的労働生産性の高い種差性は,以上の世界的連節,即 ち,自由貿易帝国主義としての機能及び第二次世界帝国としての強力に論拠を有する。こ れに対して中心を構成する他の国家は全体としては世界システムに自己を適合させ,自由 貿易政策を採る。前節で述べた比較生産費体系が一定の国際分業パラダイムを成立せしめ ていることは・国家強力としては中心国より,はるかに弱いが特定の外囲を,例えば国内 18)A.Gヶソゥヅド,A.LPッキード岡村他訳「国際経済の成長」昭和52年,119頁参照。 19) J. Letiche, Balance of payments and economic growth, 1959, p. 184, p. 274. 20) G, Arrighi, p. 66.

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 !12  彦根論叢 第215号 辺境,或は国内の半近代的二重構造として,即ち,生産様式の重層的証節形式として保持 したことを意味する。本質的な点はこれらの労働連節化が国際分業のリカード的パラダイ ムの内側で一定の価値関係として成立しており,従ってその内側では夫々の労働力価値は 決して独立変数ではなく,逆に独自の資本蓄積の型,即ち,経済成長率の,就中叙上の国 際分業体制=国際的な労働連節化の関数として位置づけられることである。  いわば先進国型のsubsistence sectorは非西欧的社会構成体のそれと異って,独自的 な,即ち,アウタルキー的自律性を持ちながら絶えず国際分業による労働生産性上昇への 刺戟を蒙るであろう。国家強力を媒介にしたこの部門の労働生産性の増大による比較利益 総量の拡大効果が,現代後進国のそれの逆流効果と対照的に規定されるべきである。歴史  ステロタイプ 的原型としては,ドイツのコ・ンカー経営下のカバーラ及び半封建的小農業,米国の南部諸 州の奴隷プランテーションを指摘できる。更に国家強力の対自的機能として現成する英チ ャーチイズム,独の社会主義,米の反奴隷運動に代表された労働者・大衆運動が国民的生        インタ ナショナリズム 産性の増大と均質化に対してもった意味は,直接的な連節化こ国際主義にある。  第二の密話として,本来の国内労働として簡単な平均労働が有している国民的労働生産 性を,特定の種差性をもつ国民的労働によって生産される国際個別価値量の異った大きさ に転化せしめる第二の論拠は,中心内部の諸国の国民的再生産を保証する,前述の比較生 産費的分業に内在する使用価値的・素材的アンバランスを価値的に一国際価値次元でバラ ンスさせるような国際分業が成立していることである。換言すれば,中心内部で,相互の 再生産を保証する国際価値範疇富等価性が形成されたことにほかならない。これは市場価 値としての国際市場価値と社会的価値としての国民的労働による国際個別価値の乖離が国 際分業の中での国際価値に基く等価交換として,価値(国際価値)の相互移転を通して形 成されることであり,しかも先進国が第一の特徴で触れた構造的特徴を利用して自国の輸 出部門にとってのこの乖離を極大化し,反面,相手国に対して,その国民的労働を自国に 整合的に規制することを意味する。  最後に資本主義世界市場においては国民的労働は社会的労働として個別的使用価値の差 を止揚する国民的需要=消費によって擬制的にその等価性を保障されるが,このことは, それらの加重平均としての国際市場価値が絶えず量界的需要・消費によってその供給を規 定的に整合化することを意味する。実体としても19世紀には第一次商品に対する,世界的 需要は,増大し続けて,垂直分業を通じて安定的交換比率の基底である国際市場価値形成

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    21) を規定した。  かかる三つの特徴を有する歴史的・理論的パラダイムの中で不等価交換=国際市場価値 での等価交換が傾向として純化され,法則としての形態規定をうけとる。換言すれば国際 市場価値一国際個別価値の範疇は.普遍的・世界労働を擬制できる運動(flow)としての     フレ ムワトク 価値関係の 枠 が成立していることであり,この枠内での労働の物神化が完成している ことである。  この場合世界労働の平均的な労働生産性の公準としての意味はやはり搾取実現の条件に 拘わる範疇とみなければならない。すなわち,商品の国際交換の等価性原則の前提とし て,専ら使用価値の大きさだけに関係する,従って同種部門内比較可能性に限定せられる 労働生産性を異種部門を含めた国民的緬値=国民的労働生産性として価値次元で比較可能 とするためにあらゆる使用価値を生産可能な国民的労働(世界労働の控除部分)という概 念を媒介として国民的価値,すなわち国際個別価値を,世界市場におけるその社会的価値 =実質的膿血投入(生直鋤+対象化された労働)として認定し,岡際市場価値を国際的な 一物一価にそくして貿易参加国夫々の比較生産性体系によって与えられる国民的な商品の 交換比率(変易条件)の枠内で.国際個劉価値の加重平均に収赦するような大きさとし て,又,国際市場価格の収加点として需給均衡点として認定することになる。  勿論国際市場価値は資本主義世界市場で比重の高い擬幽遠複雑労働として市場価値(価 格)決定の商品大量としての供給側からの主導性を有している先進国によって規定され た,特別剰余価値を構造的に獲得可能であるような水準であることは明らかである。この 国際市場価値(価格)での国際交換は必然的に等価交換でなければならない。何故なら労 働強度を一定として交易当事国の国民的労働生産性水準を反映する擬制的複雑労働化(後 進国では国民的労働の比重低下)は国際個別価値の大きさに現れるのであるが,国際的需 給均衡下の社会的価値としての性格(実現された価値)は必然,その均衡的交換比率であ る該商品の国際個別価値の加重平均,国際市場価値に反映するからである。即ち,国際市 場価値とはいわば先進国の主導性による市場の力による商品交易条件の基準を反映するの であって,それは又当事国の労働生産性の比較体系によって当事国の貿易利益取得可能性 の範囲=市場の大きさを中心とする市場条件(需給関係)を反映する。換言すれば,使用 価値的貿易利益が獲得されることを間接的に示唆する交換比率の基準が国際市場価値であ ることを意味する。 21)A.G.ケンウッド他,前掲書,123頁。

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 114 彦根論叢 第215号

 さて国際的不等価交換と外国貿易利益の理論的関係について新たに問題が出される。即 ち,全般的に言って先ずこの両者は両立しうるか否かを確定しておく必要がある。結論を 先どりしていえば,今絶対生産費差による世界市場の歴史的形成期の貿易(主として農工 垂直の分業的収奪形式)はのぞいて,原則的に資本主義生産様式が支配するか主導的な国 民経済相互間の貿易を考えれば,比較生産費差による比較優位にもとつく貿易において は,その比較生産費構造が続行していて,即ち,その表徴として一定価格による貿易ない し片貿易が当事国相互に行われている限り,当該商品の国際価値(=国際市場価値)での 等価交換がおこなわれる。       補註)  この場合,比較優位による単純交易条件はむしろ後発国に有利化するであろう。この場 合の市場価値論的説明の典型として例えばハンガリーのツェルコ,我国での松井清の競争 論的モデルがあげられよう。その特徴はいつれの場合も個別部門の国内商品価値を比較可 能な国際個別価値或は統合価値(unified value)に引き直してその国民的な大ぎさと国民 的統合価値の国際的加重平均としての国際市場価値を比較する接近という点にある。ツエ       22) ルコの場合には,この統合価値の等量が国際的に等価として交換されるならば均等の比較 利益をもたらすと言う。簡単な二国二財モデルを考えよう。先進国Aと後進国Bの夫々に ついてV,W商品生産部門を考え,それらの単位当り労働費用をA国は夫々!2, B国はV =60,W・=48と想定し, A国がVにB国がWに特化する場合, B国W商品価格(労働費 用・購買力価格)が両国の国民的生産性差4.5(V・W生産の比較生産性の平均値)で国 内部門価値48を除した数値!0.66であれば,相互的貿易利益は均等化する。即ち,B国は V商品1単位を価格12で輸入する場合,B国がVを生産しないとすれば労働60単位が解放 されるからこの解放された労働でW1.25単位を増産できる。他方, A国はV商品!単位を 12でB国に輸出することによりB国よりW商品1.125単位(!.125×10.66)を入手(輸入) )しうるからA国にとり(1.125−LO)0.125Wが貿易利益である。 B国ではA国に対し 国際価値での等価量としてW商品1.125単位(12÷10.66)が流出しているから.結局その 比較利益は0.125W(1,250−1.125)となり,使用価値としての貿易利益は均等化する。更 に国民的価値で表現した比較利益は,A国で1.5単位(Q.125x12). B国で6単位(0.125 ×48)となり,後進国B国では,国民的価値ではかってA国より,はるかに大きな比較利 益を得ることになる。 22) L. Zelk6, translated by H. Davidson, lnternational value international prices, 1980  Budapest, pp. 19−24.

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 しかし,この場合,労働強度を等しいとして貿易前の国内の相互輸出部門のVとWの価 値量の国際交換を考えれば,A国のV1単位12に対してB国はW1,125単位54の国内価値 を不等価交換=不等労働量交換していることは銘記されなければならない。単純に言って もB国よりA国へ42の価値が移転していると考えられよう。これが第1の本源的な意味で の不等価交換である。  次に松井モデルでッエルコと異って指摘されているようにA国はその輸出品Vを国内価 値通りの12で輸出することはありえないのであって特にこの場合には両国の国民的生産性 差は大きいわけであるから少くともVの価格を}3.3に近接した価格(60÷4.5)か国際市 場価値である126で販売するであろう。12というVの輸出価格はこの場合,B国W商品価 格との関係において既に特別剰余価値を含んだ価格であると考えられるから,前述した追 加価格部分は,需要供給の関係を通じてA国の世界市場を主導する力によって可能となっ た追加的な特別剰余価値の部分である。これによってこの場合の不等価交換はより大ぎな 価値の一方的移転を含むものとなるであろう。  ツエルコはより現実的接近として多数国の場合の比較利益のより広い定義として,一国 の全生産部門をカバーする国民的生産性水準とその平均水準としての国際的な一般的労働 生産性水準を想定し,他方で個別商品の生産部門の生産性と同商品部門の平均的な国際生 産性の間の乖離度が前二者の差異より大きいような個別生産部門(商品)を比較優位商品 と規定する。図式で言えば,多数国の場合,一国の一定商品の統合価値が同種商品の国際 的な平均価値(各国の同種商品の統合価値の加重平均)より小さければ当該商品が比較利    23) 益を持つ。この場合の同種部門の国民的価値の加重平均は,松井の所謂国際市場価値に相 当する範疇であると言えるから,比較利益を持つ一国は当該商品を当然その国際的平均= 国際市場価値で販売(輸出)して追加的超過利潤を得ることになるのであって,二国二財 の場合と比較して多数国の場合は,貿易当事国の全体的な生産規模が拡大し,各々の労働 生産性の増大をもたらすことにより,更に労働生産性差のより大きな多数商品の交換を通 じての貿易利益の総量とその配分の不均等性も拡大されるから,結局,貿易を刺戟する各 国の比較生産費構造の不均等性及びその基底にある各国の国民的生産性水準,従って部門 相互の個別生産性水準の不均等性も拡大するであろう。ここから必然的に不等価交換の全 般的拡大過程を想定することは不自然ではない。しかし,この過程は自由競争段階では均 23) lbid,, pp. 24−28.

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 116  彦根論叢 第215号 衡化の対極に位置する所謂causative accumulationではないことは明らかである。  例えばッエルコの前述の簡単な二国二財モデルを利用して価値移転を相互に伴うケース を考える。今V商品の国際市場価値を両国の平均値12.5とし,W商品のそれを平均値11.3 と仮定することにより夫々特化商品VWの相互輸出によって,実質投入量と国際市場価値 との差額が輸出国に移転したと考えよう。先進国は国際価値でV1単位を12で後発国のW 約1.1単位と等価で交換した場合,当初の両国の国際価値総額24から実際上の取引価値夫 々12と夫々の価値移転分(流出と流入)及び貿易利益を差し引きずれば,貿易後の先進国 の国際価値総額は25.0に,後発国のそれは25.8に増加する。  この場合は超過利潤部分としての価値移転が相互にあるような,喧々均等な比較利益を 獲得する場合であり,総体的に言って後発国の労働が非常に低く評価されたことICよっ て,後発国にむしろ有利な貿易となるのであって,搾取の実現条件は表面的には完全に隠 蔽されていると言える。 皿 独占段階における不等価交換の構造化一関係の不等価性  既に別稿で述べたように不等価交換の過程は中心一周辺という世界的独占段階における 連節化の中で機能的に構造化する。その内容については再論する必要はないが,ここで問 題にする点は,前節で論証した専ら労働生産性差のみに拘わる,すなわち価値と価格の乖 離行程としての世界的な価値移転の問題が,資本移動を媒体として「独占」という,労働 強度には無関係の労働生産性の集積・集中に拘わる特殊・多様な諸条件の成立によって, 価値生産の国際的条件以外に,諸国における諸所得への価値の分配の国際的条件の下に惹

       24) 25)

起する過程である。マルクスの指摘するように新しく創出された価値は所得の形で,連続 的に更新される再生産過程の結果定着し,比較的独立した性格を取得し,生産の前提に転 化するから,世界市場での競争でも労賃,利子,地代,企業老利得の所与の大きさが調節 的な大ぎさとして計算される。       26)  独占(及びインフレーションを利用するポリシーミックス)による不等価交換の規定 24) ユ・オリセヴイッチ,資本主義世界市場の価格機構,国際関係研究所訳編「世界経済と国際関  係」冬期号,1969年,40頁。 25) マルクス「資本論」邦訳全集版第25巻一(b)1117頁参照。 26)B. A. IIIHnbnKpyTによれば主要資本主義国の工業労働生産性の急激な上昇による単位商品の  価値低下は価格に反映されず,実質賃金の上昇より速かった。CoBpeMHHblll KanHTanH3M;npo−  6neMbi qeH 1972, MocKBa cTp. 11−19.

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は,国際価値での等価交換の制度的掩乱,換言すれば資本主義世界経済における「関係の 不等価性」に表徴されるような「独占」による所得の再配分を意味する。この等価物の補 回なき価値移転の典型的な国際的形態は中心諸国の独占による直接投資に求められる。例 えば,米国の第三世界に対するその利潤率は先進国の夫に対して約2倍の差が存し,しか もこの差には金融的・技術的援助への支払の形をとった米国への所得流入及び第三世界に        27) 対するシェーレに原因する損失所得も含んでいない。シリドクルートによれば,この場合 8−9%の幅をもった利潤率の部分の超過利潤が,対価なく移転した広義の不等価交換の 部分となる。  以下ではソビエトの研究者によって分析されたアフリカのカカオ豆の不等価交換の実例       28) を紹介しつつ検討しよう。この場合の西欧とアフリカ(主としてガーナとナイジェリア) の等価交換を歪曲する不正常な条件は,帝国主義独占によるアフリカの植民地支配及び60 画面以降の新植民地主義の枠の中でアフリカ側に強制的に遺産化された諸特徴一低労働生 産性,低賃金,低い資本の有機的構成などの謝垂心に反映されている。特にアフリカ諸国 の極めて低い国民的生産力の原因としては極めて低い労働生産性とモノカルチュア的輸出 一相互の長期競争によるその価値と価格の不断の乖離,外国独占による民族資源の非数率 的,一面的利用,巨大外国独占の国民経済規制,更に植民地通貨制度の遺制等が指適され よう。こういう社会的・経済的後進性の中で位置づけられる広義の不等価性の関係とは, 商品の国際価値からの世界価格の乖離という等価交換の典型的形式の外にはみ出すような 間接的な方法として世界市場に達成する。  その主要な形態はアフリカ諸国内の外国独占に利用される労働力商品の魎格の価値との 乖離一不払労働部分の国民所得からの流出であり,又独占の国際商品の国際価値部分に入 ることである。第二に剰余価値に転化した不払労働は,世界市場を通じて購買国の国内市 場においてのみ,つまり国際価値の形成には参加しないで輸入国の該商品の国民的価値の 国内的要素としてはじめて回復されるような価値部分となる。この場合,形式的な見地か らの取引契約は等価であるから,アフリカ諸国の前述の不払労働は国際価値に反映しない ことになる。故にこの仮想的等価性は輸入国国内市場で適応的国内価格で実現される。こ 27) B. A. IIIHIIbflKpyT, coBpeMeHHbiva KafiHTanz3M: npo6ileMbl lleH 1972, MocKBa cTp. 308−  311. 28)E・KaMeHoB・3・ManxacfiH, Cy理HocTb H np四vaHE・I Hegl{BuBaaeHTHoro ToBapoo6MeHa  Me)KAY a(ipPHKaHCKHMH H Pa3BHTbMH KanHTa”HCTHgeCKHMH CTPaHaMH, 9KOHOMHgeCKHe npo6−  neMbi A(i}pMKH, MocKBa, 1974, cTp. 123−164.

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 1!8 彦根論叢第215号

の過程は輸出国であるアフリカにとり実質的な不等価交換であり,その結果はアフリカ諸 国の国民所得の犠牲で輸入国の国民所得の強化(相当する独占利潤増大を通して)をみち びく。外国独占(在アフリカ)によって現実に西欧工業労働者賃金と8−1工倍の差のある アフリカ人労働者低賃金のこのような広義の不等価交換形式としての利用は広く存在して いる。  さてカカオ豆は典型的な熱帯農産品であり総生産の芽がアフリカ諸国で生産される。こ の取引の特殊性格は,独占がアフリカの小商品生産者に亀町価格を規定する点にあるが, その現実的可能性は世界価格の上昇期にその収買価格を引下げることが出来たことにあ る。1950年の国際収買価格(ロンドン)は前年に比べて8%上昇したが,ガーナでの収買 価格は約30%低落したし,57−58年にはこの傾向は強まった。49−50年段階でガーナ輸出 の約60%が小商品生産者より西欧独占体により,このような「収買価格」で買付けられた カカオであり,58年にはその拡大する収買価格差は世界価格の約62%となった。  1960年代の独立後,国家プランテーション及び小生産者共同組合が設立されたが,最も 重要な変化は西欧独占に掌握されていたカカオの収買活動を国家の監督下においたことで ある。ガーナでは1961年に単一のカカオ収買機関が設立され,ナイジェリアではその国内 生産の20%を収曝していた英国輸出協会を含めて原則的にその利権は国有化された。アフ リカ諸国はカカオ生産農民の所得防禦に意をそそぎ,指定価格制導入によってガーナでは 1960年にトン当り£1!2の公定相場がきめられ,年・季節性の事由による損失には安定基 金を設定して保証したが,それは結局,収買価格と輸出価格の差60%を補填するものであ った。近年ますますアフリカ諸国では,この国家による収買への監督が強化されている。 従って先進資本主義国と発展途上国の間の広義の不等価交換の規模と役割は減少している し,将来,減少し続けるであろう。この意味でカカオを他の第一次産品収骨=輸出の最重 要例として指摘できる。しかし,他方で西欧独占のカカオ・プランテーションによる生産 と前述した植民地主義的遺制に関する諸要素と条件が現実に働き続けているから60年代に 入り,アフリカ諸国の土着の就中,国家企業によるその輸出戦略が強化され,ガーナ,ナ イジmリア,カメルーンではカカオの世界輸出の約50%を占める輸出を全面的に,又は著 しく統制している。故に今日ではカカオの国際価格水準設定をめぐる世界市場での外国独 占とアフリカ諸国の闘争の問題に広義の不等価交換の問題は転化している。1970年代に入 って実現された世界価格と国内収買価格とのひらきは途上国に有利化し,例えば,ガーナ, ナイジェリア,ブラジルでは約35%であった。

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 今,!950年代と60年忌を通じてのカカオの世界市場での広義の不等価交換を統計的に概 観すると,50年代には収買価格と外国独占により実現された価格の差は£140(ユトン) であり,広義の不等価交換(アフリカ国内)の存在を示唆する。  次に60年代前半にこの差は£64まで低下したがその原因は世界価格の下落であった。同 時にこの状況は国家による外国独占の駆逐によって説明される。先進資本主義国の国内市 場の卸売価格と世界価格の差は50年代の£50より60年代前半の£114に上り,他方,卸売 価格は£310から£290に下落しているから不等価交換となる。  又狭い意味での不等価交換とみなされるカカオの世界価格と国際価値との乖離は巨大西 欧独占によって60年代以降強化された。  !966−68年にはカカオの暖国価格と世界価格の差として£144という本質的変化が惹起 したことはアフリカ国家による不等価交換制限の可能性の拡大をも証明するものであっ た。しかし一方で追加的な不等価交換一例えば,60−65年の西欧企業によるカカオ運賃の 20%上昇に表徴一が惹起した。しかし,60年代前半に運賃,保険等を控除して約£40まで その差は縮小し,全体としてアフリカ諸国は民族資本の参入範囲を拡大することによって カカオ貿易からの所得の縮少を克服し.その差の部分は国民所得に漸次吸収されっっあっ たと言えよう。  カカオの不等価交換の事例は広義のそれ即ち労働強度を不変として同種部門の労働生 産性に格差が人為的に固定された場合,この状況が外国資本によって利用されるケースで あるから,玉稿で既に規定した世界的同質労働下の異質労働力のケースにおける構造的不 等価交換とは異るし,いわば同種商品生産部門内競争の止揚の場合に労働生産性の高い個 別価値生産企業が価値移転によって取得しうる所得(超過利潤固定化)が外国独占により 構造化されたケースと云えよう。従って外国独占なるいわば独自の要素が排除されれば, 少くとも,その所得部分は消滅するであろう。  しかし,所謂,狭義の不等価交換=一定商品の国際価値からの国際(世界)価格の乖離 すなわちその国際価値での(所得の国際的配分=移転という形を通じての)不等価交換は, 広義の不等価交換が消滅した場合にも中心(独占)と周辺という国際的連節化の構造が存 在する限り存続するのであって,現にカカオの場合も,60年代以降この意味での不等価性 は拡大している。このことは勿論根底において国内労働での不等価交換の拡大を意味する ことは明白であろう。そして,この場合,第三世界の賃金の労働力再生産の最下限迄の切 下げを前提としても,後進国にとっての比較利益の可能性は縮小し続けるであろう。

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 120 彦根論叢第215号

 不正常な条件として帝国主義段階で外国独占(資本輸出を媒介とする商品貿易一直接の 投資収益ではなく一)を前提とする場合,後進国の貿易利益は基本的には狭義での不等価 交換の場合と変らないが,むしろ前述したように広義のその不等価部分は主体的に克服す る可能性を持つ。  勿論.これは可能性に止まるのであって世界的にみれば植民地的遺制と並んで多国籍企 業によるこの広義の不等価交換は第三世界と帝国主義企業との激烈な闘争を惹起する基本 的要因となり続ける。更に総括的に言って前稿で触れたように中心一周辺の世界体制の一 つの主要審級として大独占による企業内世界分業を位置づけるとすれば,後進国の国民経 済の有機的要素に外国独占(子会社等)が組み込まれるわけであるから広義の不等価交換 が形式的平等性の下に構造化していくという局面を重視する必要がある。 IV 結 び  資本主義世界市場に於ける不等価交換法則理解に関し,価値生産の国際的条件(搾取の 直接的条件)=国民的労働の国際的同質化と労働力の異質的不均等化の世界的構造の傾向 把握に基き,各国国民所得への価値分配の国際的諸条件として,専ら労働生産性の変動の みに拘るような価値と価格との乖離=価値の移転過程の中で貿易利益を当事国に保障する ような国際価値での等価交換一幕史的には自由競争的な小「世界市場」秩序のみに照応す る一国内価値での不等価交換パラダイムと独占段階における前述の価値実現の国民的差異 =国際条件の構造化に伴う狭義と広義の不等価交換の過程を抽出することが出来るのであ る。総括すれば,このような不等価交換の発生論的及び機能面的世界構造を考える場合に のみ,国際価値という範疇は不等価交換における国際的価値移転と貿易利益の並存を説明 しうる法則的範疇として白飴できるのである。 補註)長期的には交易条件の後発国への有利化はありえない。19世紀を通じて英国の輸出価格は急  速に低落したが,貿易量の増大と拡大する市場が逓減コストの実現を機械導入によって可能に   した限りで不利益はありえなかったし,更に雇用の輸出への依存度は増大したから,輸出の高   い増加はヨリ重要であったとされるgMB. BrQwn, After imperialism p.69,

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