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肺癌手術後数年を経て発症した慢性壊死性肺アスペルギルス症の2例 利用統計を見る

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肺癌手術後数年を経て発症 した慢性壊死性肺アスペルギルス症の2例

山梨 大学 医学部循 環器 呼吸器 内科1)、

社会保険山梨病院内科2)

渡 邉 一 孝1)2)菱 山 千 祐1)石 原 裕1)2)久 木 山 清 貴1) 要 旨:肺 癌手術 後数年 を経 て発症 した慢性 壊死性肺 アスペル ギル ス症(CNPA)の2例 を経 験 した。症例1は80歳 台 男性 、糖尿 病 あ り。肺扁平 上皮癌 で左肺 上葉切 除(pT2NOMO) を受 けた約10年 後 に呼吸 困難 が出現 し、術側残 存肺 に浸潤 影がみ られ た。抗 生剤治療 は 奏功 せず 、CT上 胸 膜 の肥 厚 と空洞 を伴 う浸潤影 がみ られ 、画像 所 見 と血清 学的所 見 よ り CNPAと 診断 した。症 例2は60歳 台男性 、糖尿 病 あ り。 肺腺 癌 で右 肺 中下葉切 除術 (pT2NlMO)を 受 けた5年 後 に乾性 咳漱 、CRPの 陽性化 と残存肺 に空洞 を伴 う浸潤影 の 出現 がみ られ た。画像所 見 と血 清学的所 見 か らCNPAと 診断 した。両症例 とも術後 に定期 的 に撮 られ た診断 前のCTに はCNPAの 初期 像 と思 われ る共通 した所 見一 胸膜 の肥厚 、多 発小 の う胞 の出現 と破壊拡 大 、小の う胞 壁 の肥厚 とその周 囲の浸潤 影 の出現一 が認 め られ た。 また 、胸 部手術 はCNPA発 症 の危険 因子 であ るためCNPAを 肺癌 術後 の晩期合 併症 と して再認識 す る必要 があ る と考 え られ た。 キ ー ワー ド:肺 癌 、術 後 合 併 症 、 慢 性 壊 死性 肺 ア ス ペ ル ギ ル ス 症 、 画 像 所 見 は じめ に 肺癌 手術後 の経過観 察 では再発 の早期 発 見 に注意 が向 け られ るが、手術 に伴 う 解 剖学 的変化 に起 因す る易感 染性 を背景 と した 日和見感 染症 の併発 に も注意 が必 要 で ある。事 実、胸 部術後 がCNPA発 症 の リスクで あ るこ とは深在性真 菌症 の診 断 ・治療 ガイ ドライ ン リ に明記 され てお り、また、CNPAは 肺 癌手術 後の患側 肺 に頻 度 が高か った こ とが報告 され てい る 2) 。 CNPAは 、新 たに登場 した抗 真菌剤 を 使用 して も治療 に長 期 間を要 し、そ の予 後は必 ず しも良好 では ない3)4)。 早期 の 診断 が望 まれ る所以 で あるが、診 断の き っか けに な る早期 のCNPAの 画像 所 見 は知 られ て いない。今 回我 々は肺癌 手術 後 数年 を経 て発症 したCNPAを2例 経 験 したが 、術後 に定期 的 に撮 られ ていた CTに 典 型的 な所 見を呈す る前 の所 見 を 認 めた。 この所 見は両症 例 に共 通す る こ とか らCNPAの 初 期の画像 所 見 と考 え られ たた め報告す る。 症 例 症 例1は80歳 台 の 男 性 。1999年7 月 に左 肺S4の 扁 平 上 皮 癌 で 左 肺 上 葉 切 除 術 を 施 行(pT2NOMO)、 以 後 経 過 観 察 され て い た 。2009年1月 に 酸 素 飽 和 度 の 低 下 お よび 呼 吸 困難 が 出 現 し、 左 肺 野 に 浸 潤 影 が み られ た 。 肺 炎 と して抗 生 剤 に て 治 療 した が 改 善 しな か っ た 。40歳 代 か ら糖 尿 病 が あ り内 服 治 療 して い た。 検 査 所 見(表1)で は 白 血 球44001μ 1と 正 常 、 アル ブ ミ ン2.491dlと 低 下 、 CRP5.65mgldlと 上 昇 、HbAlc6.6%と 上 昇 して い た。 喀 疲 で は 一 般 菌 、抗 酸 菌 と も に 有 意 な 菌 は 培 養 され な か っ た 。

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表1症 例1の 検 査 所 見(200911) 血液 喀摂検査

識 蕪螺聖 霊

蕪 灘

画 像 所 見(図1、 図2)で は左 肺 で 容 積 減 少 、 胸 膜 肥 厚 、 肺 野 の 網 状 ∼ 浸 潤 陰 影 を 認 め た 。 画 像 所 見 と抗 生 剤 の 効 果 の な い こ と よ りア スペ ル ギル ス症 を 疑 っ た 。 β一Dグ ル カ ン2.8pg!mlと 正 常 、ア ス ペ ル ギ ル ス 抗 原 は 陰 性 で あ っ た が 、 ア ス ペ ル ギ ル ス 抗 体(CF法)32倍 と陽 性 、 ア スペ ル ギ ル ス抗 体(オ ク タ ロニ ー 法)陽 性 で あ っ た こ とか らCNPAと 診 断 した 。 ボ リコ ナ ゾー ル を初 日600mgノ 日、2日 目以 降300mgノ 日の 内 服 で 治 療 開 始 した が 、 発 疹 が 出 現 した た め イ トラ コナ ゾ ー ル200mg1日 内 服 に 変 更 した 。 しか し、 病 状 は徐 々 に 進 行 した た め2010年10月 か ら リポ ソー マ ル ア ン ホ テ リシ ンB(2.5 mglkglを 使 用 中 で あ る。 過 去 の 画 像 所 見 を 見 直 して み る と 、 2002年(術 後3年)のCTで は左 前 胸 部 の 胸 膜 直 下 に わ ず か に ス リガ ラ ス 影 が 出 現 して お り、 翌2003年 に は 同 部 位 を 中 心 と して 小 の う胞 の 出 現 と胸 膜 の 肥 厚 が 見 られ た 。2007年 で は 、胸 膜 は さ らに 肥 厚 し、 小 の う胞 は 破 壊 拡 大 し壁 は肥 厚 、 の う胞 周 囲 に浸 潤 影 の 出 現 が み られ た 。 診 断 直 前 の2008年 で は 、 胸 膜 は さ ら に 肥 厚 し、 浸 潤 陰 影 の 中 に 空 洞 が 出 現 し、 CNPAの 典 型 像 と な っ た 。治 療 中 の2010 年 に は 空 洞 内 部 に 菌 球 が 生 じ、 エ ア ー ク レセ ン トサ イ ンが 認 め られ た 。 200813200914201014 図1症 例1;胸 部 単 純X線 2002 (ope後3年) 2003 2007 図2症 例1;胸 部CT 症 例2は60歳 台 の 男 性 。2004年5月 に 肺 腺 癌 で 右 肺 中 下 葉 切 除 術 を 施 行 (pT2NIMO)、 以 後 経 過 観 察 され て い た 。 3年 後 よ り残 存 肺 に 胸 膜 の 肥 厚 とそ の 近 傍 の 多 発 小 の う胞 が 出現 した が 、 術 後 の 変 化 と考 え られ て い た。2009年12月(術 後5年 目)に 乾 性 咳 啄 やCRPの 陽 性 化 が み られ 、 翌 年1月 に は 、肺 内 の 所 見 は 進 行 し浸 潤 影 とな っ た。40歳 代 か ら糖 尿 病 が あ り、 内 服 治 療 され て い た 。 検 査 所 見(表2)で は 白 血 球63001μ1 と正 常 値 、Alb3.191d1と 軽 度 低 下 して お り、CRP5.6mgldlと 上 昇 、HbAlc6.5% と上 昇 して い た 。喀 疲 で は 有 意 な 一 般 菌 、 抗 酸 菌 は 培 養 され な か っ た 。

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表2症 例2検 査 所 見(2009112) 血液 喀療検査  ゆこ るヨ  ノゆ 謬6;1?こ 騨 、隻:こ

歪;P:::ll 詰コ 、1:ll: 訟1蟹 離 鷺 ∴ 麗: 乙 綴 部 瓢1、Slgm哩 Glu15mg/dl 塘聾 一鍛薗 正常鯛■ ● 杭酸6 整濠 縮性 塘餐 陰惟 画 像 所 見(図3、 図4)で は 右 側 の 残 存 肺 に胸 膜 肥 厚 と空 洞 形 成 を 伴 う浸 潤 陰 影 を認 め た 。 当 初 、細 菌 性 肺 炎 を疑 い 、 抗 生 剤 に て 治 療 した が 改 善 しな か っ た 。 真 菌 関 連 の 血 液 検 査 で β一Dグ ル カ ン10 pg!mlと 正 常 、 ア スペ ル ギル ス 抗 原 は 陰 性 で あ っ た が 、ア スペ ル ギル ス 抗 体(CF 法)は8倍 と陽 性 、 ア ス ペ ル ギ ル ス抗 体 (オ ク タ ロニ ー 法)は 陽 性 で あ った 。 こ れ らの 所 見 と画 像 所 見 お よび 臨床 経 過 よ りCNPAと 診 断 した。VRCZ初 日600 mg1日 、2日 目以 降300mg1日 の 内 服 で 治 療 を 開 始 した と こ ろ 、症 状 は軽 快 しCRP も1mgldl台 ま で 低 下 して き た が 、 胸 部 レン トゲ ン所 見 に 著 しい 変 化 は認 め られ て い な い。 CT画 像 を見直 してみ る と2007年(術 後3年)で は胸膜 の肥厚 、胸膜近傍 の 多 発小 の う胞 とそ の周 囲 に浸潤影が み られ る。2009年 では多発 小の う胞 の範 囲の拡 大、浸潤 影 の悪化 と小空洞 陰影の 出現が み られ る。2010年 の診断時 には胸膜 は さ らに肥厚 し浸潤 影 は範 囲 を広 げ、空洞 の 拡 大 を認 めた。 r 2007/72010/2 図3症 例2;胸 部 単 純X線 2007/62009!42010/1 0pe後3年 図4症 例2;胸 部CT 考 察 肺 ア ス ペ ル ギ ロー マ や ア ス ペ ル ギ ル ス 症 の 病 歴 、 肺 嚢 胞 、 陳 旧性 肺 結 核 、気 管 支 拡 張 症 、肺 線 維 症 、COPDと 並 ん で 「胸 部 術 後 」がCNPAの リス ク で あ る こ とは 深 在 性 真 菌 症 の 診 断 ・治 療 ガ イ ドラ イ ン 1)に 明 記 され て い る とお りで あ る が 、 現 場 で の 認 識 は 必 ず し も十 分 で は な い よ うに 思 わ れ る。 松 浦 らの肺 癌 と肺 ア ス ペ ル ギ ル ス症 が 合 併 した19例 の 検 討2)(図5)で は 同 時 発 症 は2例 、 ア ス ペ ル ギ ル ス症 先 行 は4 例 に 対 して肺 癌 先 行 が13例 で あ り、 こ の13例 の うち 手 術 後 発 症 は11例 、さ ら に そ の うち術 側 の 残 存 肺 に 発 症 した の が 10例 で あ っ た 。 つ ま り、 肺 癌 手 術 後 の CNPA発 症 は 肺 癌 とCNPAの 合 併例 の 中 で は稀 な こ とで は な く、 ま た 、 術 側 に 頻 度 が 高 い こ とは 手 術 に よ る解 剖 学 的 変 化 がCNPA発 症 に 関 与 して い る こ とを 示 唆 す る も の と考 え られ た 。

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我 々の2症 例 は糖 尿病 を合併 してお り、 手術 後 の肺 の解 剖学 的変 化 に加 えて糖 尿 病 に よ る全 身 の 免疫 能 の低 下 がCNPA 発症 に関与 してい た と考 え られ た。 この よ うに胸 部術 後以外 に も リス クの ある症 例 で はCNPAを 含 めた感染 症 の合併 に 注 意 を要 す る と考 え られ た。 図5肺 癌 に合 併 した肺 アスペ ル ギル ス症 の19例 今 回の2症 例 では肺癌 術後 の再発 評価 の 目的 に定期的 にCTを 撮影 して いた た め典 型的 な画像所 見5「s)を呈 してCNPA と診 断 され る前 の時期 のCT所 見 を検 討 す る こ とがで きた。 両症例 とも、診断 の数年 前に は胸 膜 の わず か な肥 厚 と近接 した肺 実質内 に多発 小 の う胞 の 出現 を認 めた が、 この変 化 は 手術 後 の変化 とも考 え られ 、ま た、典型 的 なCNPAの 画 像所 見 とは異 なって い たた め この 時期 にCNPAの 疑 いを持 つ こ とは 困難 であ る と思われ た。 しか し、 本症 例 ではそ の後緩徐 なが ら胸膜 は さ ら に肥厚 し、 また、 の う胞壁 が肥厚 しそ の 周 囲 に浸潤陰 影が 出現 し、の う胞 は互 い に破 壊 融合 して空洞 を形成 し、 典型的 な CNPAの 画像所 見 を呈す るに至 った。 門脇 ら7)は 、非小細胞 肺癌 の術後6年 目にCNPAを 発症 した症 例 を報告 して い る。 この症 例で は術 後3年 に患側 の肺 尖部 にブ ラが形成 され 、4年 目にブ ラ周 囲 に無気肺 が 出現 し患側 肺 は容 積 を減 じ、 6年 目にはブ ラが増 大 し浸潤 陰影 が出現 、 さらにその後 に菌 球が 出現 とい った変化 が進 行 して いった。 彼 らの症例 で はの う 胞 形 成 時 に胸 膜 の肥 厚 も伴 っ てお り、 我 々の症 例 と門脇 らの症例 に共 通す る所 見 、す なわ ち、肺 尖部 にお ける胸 膜 のわ ず かな肥厚 、 多発小 の う胞 の形成 との う 胞壁 の肥 厚 や そ の周 囲 の 浸潤 陰 影!無気 肺 の出現 はCNPAの 初 期 の画像所 見で あ る と判断 して よい と考 え られ た。 図6症 例1;HRCT 図7症 例2;HRCT 今 後 は 、術 後 例 に限 らず この よ うな CT所 見 に着 目すれ ば よ り早期 にCNPA. を診 断で き る可能 性 があ る。 ただ し、 こ の時 期 に血 清学 的検査 で陽性 所見 を呈す

(5)

るか 、喀疾 な どか らアスペル ギル スを証 明で き るかは今後 の検 討課題 で ある。 結 語 肺 癌 手 術 後 数 年 を 経 て 発 症 し た CNPAの2例 を経 験 した。肺 癌 手 術 後 に CNPAが 発 症 し うる こ とを 認 識 し、CT で の わ ず か な 変 化 に 着 目す る こ と に よ り 難 治 性 疾 患3)4)8)で あ るCNPAを 早 期 に 診 断 で き る 可 能 性 が あ る。 2007;45:372-376. 8)藤 内 智,山 崎 泰 宏,松 本 博 之,他. 既 存 肺 疾 患 に 続 発 した肺 ア ス ペ ル ギ ル ス 感 染 症 の 検 討.日 呼 吸 会 誌2004;42: 865-870. 引用 文献 1)深 在 性 真 菌 症 の ガ イ ドライ ン作 成 委 員 会 編 深 在 性 真 菌 症 の 診 断 ・治 療 ガ イ ドライ ン.協 和 企 画,東 京,2007;77-81. 2)松 浦 駿 、 菅 沼 秀 基 、 井 上 裕 介 、 他. 肺 癌 に合 併 した 肺 ア ス ペ ル ギ ル ス症 の 臨 床 的 検 討.日 呼 吸 会 誌2009;47: 455-461. 3)萩 原 理 恵 、関 根 朗 雅 、佐 藤 友 英 、他. ボ リコナ ゾー ル に て 治 療 した 慢 性 壊 死 性 肺 ア スペ ル ギル ス 症45例 の 臨 床 的 検 討. 日呼 吸 会 誌  2008;46:964-869.

4) Nam H-S, Jeon K, Urn S-W, et al.

Clinical characteristics and treatment

outcomes

of

chronic

necrotizing

pulmonary aspergillosis: a review of 43

cases.

Int J Infect Dis 2010; 14:

479-482.

5) Thompson

BH, Stanford W, Galvin

JR,

et

al.

Varied

radiologic

appearances

of

pulmonary

aspergillosis. RadioGraphics 1995; 15:

1273-1284.

6)倉 島 篤 行. 非 侵 襲 性 肺 ア ス ペ ル ギ ロ ー シ ス の病 態.日 医 真 菌 会 誌1997;38: 167-174. 7)門 脇 徹 、 濱 田泰 伸 、 伊 東 亮 治 、 他 . 肺 癌 術 後 肺 に発 症 した 慢 性 壊 死 性 肺 ア ス ペ ル ギ ル ス 症 の1例 .日 呼 吸 会 誌

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