日本市場 におけ る外 資系企業 の
チ ャネル政 策 に関す る一考 察
A Study on the Channel Policy of
Foreign Affiliate Firm in Japan
目 次 は じめ に 1.現 代 の マ ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 形 態 2.マ ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャ ネ ル の 構 築 ・管 理 3.日 本 リー バ の チ ャ ネ ル 政 策 4,P&Gの チ ャ ネ ル 政 策 お わ りに(結 論 に代 え て) は じめ に 従 来 、 わ が 国 の 消 費 財 メー カー の チ ャ ネ ル 政 策 と して 、 代 理 店 ・特 約 店 を保 有 し、 そ の代 理 店 ・ 特 約 店 を管 理 し なが ら、 自社 の マ ー ケ テ ィ ン グ 目 標 の 達 成 を 目指 し て きた とこ ろ が 多 い。 さ らに 、 強 力 なマ ー ケ テ ィ ン グ ・チ ャネ ル政 策 を押 し進 め 、 計 画 的 販 売 の 達 成 を 目指 す 消 費 財 メー カー は代 理 店 ・特 約 店 以 上 の メー カー に とっ て操 作 性 の 高 い 販 社 制 度 を採 用 す る企 業群 もあ っ た。 この よ う な 販 売 経 路 の形 態 を メー カー をチ ャネ ル ・キ ャプ テ ン とす る"流 通 系 列 化"と 呼 ん で き た。 しか し、 現 在 、 この よ うな従 来 の チ ャ ネ ル 政 策 の 方 向 転 換 が な さ れ よ う と して い る。 そ の 主 な要 因 と して 、 次 の よ うな もの が あ げ られ る。ω ① 大 規 模 小 売 商 とメ ー カー との 直 取 引 の 進 展 ② 小 売 業 のEOSに よ る発 注 の増 加 ③ 小 売 業 のPOS導 入 と その 活用 の 活 発 化 ④ 大 手 卸 売 商 に よ る 中 小 卸 売 商 の グル ー プ化 ・ 系 列 化 の 進 渉 ⑤ デ ィ ス カ ウ ン ト ・ス トア の 成 長 な どで あ る。 つ ま り、 これ ま で の メー カ ー の チ ャ ネ ル 政 策 が 石 黒 光 久 Mitsuhisa Ishiguro 市 場 占拠率 拡 大 を 目指 した販 売 店 増 強 政 策 に比 重 が偏 り、 チ ャ ネ ル組 織 の 肥 大 化 や 硬 直 性 とい う 問 題 を帰 結 させ た とい う反 省 の も とに 、 既 存 チ ャ ネ ル構 成 貝 の再 選 別 に よ る チ ャ ネ ル 組 織 の 軽 量 化 が 意 図 さ れ て い る とい う こ とで あ る。(2) この よ うな傾 向 は、 メー カー の マ ー ケ テ ィン グ ・ス タ ッ フ に 対 す る ア ンケ ー ト調 査 の 結 果 に もあ らわ れ て い る 。(3) そ れ は、 量 販 店 の交 渉 力 の 増 大 、小 売 店 頭 管理 の 厳 格 な実 施 、 新 規 チ ャ ネ ル 開 拓 、 積 極 的 な売 れ 筋 商 品 の 情 報 収 集 な どが チ ャネ ル 政 策 上 の 問 題 点 だ とい う こ とで あ る。 こ の よ う な こ とは 、 メー カー の 計 画 的 販 売 が 従 来 の チ ャネ ル政 策 で は 達 成 で き な くな っ た とい う こ とで あ る。 したが って 、 チ ャ ネ ル 政 策 と して 、 特 約 店 、 代 理 店 制 を採 用 して い る メー カー は 、 特 約 店 、代 理 店 で あ る卸 売 業 の販 売 力 が 相 対 的 に 低 下 して 、 い わ ゆ る小 売 店 へ の"押 し込 み"販 売 が 困難 に な っ て きて い る の で あ る。ω そ の 意 味 で 、 新 規 チ ャ ネ ル の 積 極 的 開 拓 と小 売 店 頭 管 理 の重 要 性 が 増 大 して きて い る と い え るの で あ る。 一 方、 チ ャ ネ ル 政 策 と して 、 販 社 制 度 を採 用 し て い る メー カー は 、 販 社 の統 合 化 、 各 販 杜 に よ る エ リア ・マ ー ケ テ ィ ン グ の推 進 、 小 売 業 態 別 の 専 門 販 社 の 設 立 、 販社 内組 織 の 活 性 化 ・機 能 別 分 割 な ど を実 施 し、 チ ャ ネ ル を取 り巻 く環 境 の 変化 に 対 応 しよ う と して い る。㈲ 以 上 の よ う な 国 内 市 場 にお け る流 通 環 境 の 変 化 や 国 内 メー カ ー の チ ャネ ル 政 策 の 変 更 ・転 換 が 進
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長 野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 1991 ∩ ) 不 明 そ の 他 チ ャ ネ ル 政 策 担 当 部 署 の 確 立 卸 ・ 小 売 商 と の 取 引 条 件 の 再 検 討 小 売 店 の 店 頭 管 理 売 れ 茄 情 報 の 収 集 チ ャ ネ ル 評 価 体 系 の 確 立 系 列 店 の 活 性 化 特 約 店 へ の コ ン ト ロ ー ル カ の 増 大 新 規 チ ャ ネ ル 開 拓 特 約 店 の 再 編 成 量 販 店 の 交 渉 力 増 大 (出所)流通政策研究所 『情報化の進展に伴うチャネル ・コントロール新原理に関する 研究調査報告書』平成1年3月、11頁。図表2-1よL)作成。 図 1 チャネル政策上の問題点 (メーカーのマーケテイング・スタッフへのアンケー ト結果)
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渉 してい る中で、 日本市場 でマー ケテイング活動 を成功 させつつ ある外資系の消費財 メー カーが ど の ようなチャネル政策 を採用 しているか を考察 し、 その特徴 と成功の要 因、及び今後の方向性 につい て検討 を加 え ることを本稿 の 目的 とす る。本稿 で は、 日本 リーバ とP&G
を中心 として考察 をすす め る。 1.現代 の マ ーケ テ イング ・チ ャネル の 形態 (1)チ ャネルの3形態 消費財流通 においては、一般 的に次の3つの形 態のチャネルが存在す る。(6) 第1の タイプの ものは、生産者 と小売商、卸売 商 との間に資本的、人的、取引的な関係 において、 直接的かつ固定的な関連 はな く、市場 を媒介 とし て間接的にのみ結合 してい るものであ る。第2の タイプの ものは、生産者が流通過程 まで内部組織 化 している場合 であ り、一部 の消費財、生産財の 流通においてみ られ るものであ る。第3の タイプ は、生産者 と流通業者はそれぞれ独立 した法人 と して存在 し、社会的分 業 を形成 してい るものの、 生産者 と流通業者は資本的、人的、取引的関係 に おいて有機 的関連性 をもち1
つの グループ を形成 しているものであ る。 以上 の3
つの タイプの うち、寡 占的製造企業 (メ - か-)がチャネル を構築 ・管理す る場合 に、 よ り効果的に管理 ・運営が容易 に行 える第2、第 3 の タイプのチ ャネル形態 を採用す るのであ る。 こ の タイプのチ ャネル形態が メー カー をチャネル ・ キャプテン とす る垂 直的流通 (マー ケテイング) システムであ る。 この垂直的流通 システムは、 たんに生産者、卸石 黒光久 日本市場 におけ る外資系企業 の チ ャネル政策 に関す る一考察 55 売商、小売商 らが互 いに協調 しあいなが ら
、 1
つ 思決定者が システム全体の企画立案 と管理 を行 う の組織集団 を構築す るだけでな く、各構成月の活 状態 を目指す ものである。(7) 動が最連 な もの とな り、組織成果 も最高の もの と 上述のような目的 をもつ、垂直的流通 システム なるように、計画的に組織構築 され るものである。 と伝統的な流通経路の差異 を比較す ると、次の表 そ して、組織行動の効率化のため、 ご く少数の意 の ようになる。 表1 垂直的流通システムと伝統的流通経路の差異構
造
特
徴
タ
イ
プ
伝統的な流通経路 垂直的流通 システム 構 成 月 孤立的で自立的な構成員が互いに交渉 互 いに関連 をもつ構成員が、流通機能 を通 じて関係 を結んでいるo の最適化 を実現 しようと目指 して関係を結んでいる○ 経 済 性 実 現 各構成貝は経済性 を実現す るとは限 ら 各構成員は経済性 を実現す るように計 ない 画づ け られている 組 織 の 安 定 性 忠誠度の低 い構成月の集合 であって、 厳密に資格が吟味 され、 しか も忠誠度 安定性 は劣 る 性は高いも高い構成員の集合 となっていて安定 意 思 決 定 者 の 数 多 くの構成員の中か ら多数の戟略立案 多 くの構成員の中か ら少数の戦略立案 者が現われて意思決定す るo 者が選ばれて、意思決定す る 意 思 決 定 者 の 行 動 各々の戦略立案者が 自社 の位置す る段 その戦略立案者が、あらゆ る段階に関 階について意思決定す る す る決定 を行 う 意 思 決 定 の 方 法 総合的判断によって行 う 科学的な意思決定方法 を採用す るo 意思決定者の志向性 情緒的に、伝統的流通の仕方 を擁護 し マーケテイング理念などを達成 しよう (出所)江尻弘 :流通論』中央経済社、昭和54年。193頁、第6 ・2表より さらに、 この ような垂直的流通 システム を分類 す ると、次の3つの形態に分類で きる。(8) 第1の形態は、法人的 ・垂直的流通 システム (企 業 システム)であ り、 これは単一の所有の もとに 生産 と流通の連続段階 を結合 しているものであ る。 第2の形態は、管理的 ・垂直的流通 システムであ り、 これは共同所有 を通 してではな く、そのシス テム内の当事者の一方の規模 と勢力 を通 して、生 産 と流通の連続段階の調整 を図 るものである。第 3の形態は、契約的 ・流通 システムであ り、 これ は、個 々の企業が単独 で行 うよ りも、多 くの経済 性や販売 インパ ク ト、 または、その一方 を獲得す るために、契約に基づ いて、構成員間のマーケテ イング ・プ ログラム を統合す る生産お よび流通の 異なった独立 した企業か ら成 っているものである。 これ ら3
の形態の うち、第1
の形態が垂直的統 合 であ り、第2、第3の形態が "流通系列化''と いわれ るものである。 そ して、わが国では消費財 メー カーがチャネル ・キャプテンの場合、卸売商、 小売商 を特約店 ・代理店 とす る形態 と販社 を設立 す る形態の2
つが代表的な流通系列化 といえる。 さらに、 メー カーが組織す る販社 は、卸機関 とし ての販社 と小売機関 としての販社の2つがあるが、 本稿 では、 とくに、卸売機関 を販社 とした場合 と 卸売商 を特約店 ・代理店 とした場合について検討 を進め る。 上述 したように、現在、卸売商 を特約店 ・代理 店 としたメー カー主導のチャネル形態は行 き詰 ま りをみせ てお り、一方、販社型のチャネル形態に おいて も、販社の販売力強化、統合化が問題 とな っている。 この 日本 でい うところの卸売機関 を販 社 とした場合の、その販社 の特徴 としては、次の ような ものがある。(9) (丑メー カーの系列販売体制に組み込 まれた卸売56 長 野大学 紀要 第13巻 第2 ・3号合併号 1991 商である。 ②通常
、 1
つのテ リトリーに 1社存在 し、一手 販売権が付与されている。 ③ その代 わ り、競合 メー カーの商品を取扱 うこ とは許 されず、当該 メー カーの商品だけを卸 売す ることが求め られている。 ① 当該 メー カーか ら各種の援助 を受けることが できる反面、その メー カーの政策に協力 し、 忠実にそれ を実行す ることが要請 されている。 ⑤ それ らの性格のため、いわば メー カーの支店 ・営業所 を別法人化 した ものに近似 している。 ⑥販社 とメー カー との間に、資本的関係、人的 関係が存在す る場合 もあ り、それのない場合 もあ り、 この点では不定である。 以上のような一般的特徴 をもつ販社が従来、 メ ー カーの計画的販売のために大 きな貢献 をして き た といえる。(
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寡 占メー カーの垂直的流通 システム わが国の代表的寡 占業種 に分類 され るメーカー の垂直的流通 システムは、"流通系列化"されてお り、卸売商 まで系列化 している場合 と、小売商 ま で系列化 している場合がある。 これを、 自動車、医薬品、家電品などの市場集 中度 が高 く、市場の競争状態が、寡 占である業種 を例 に とってみ ると以下のようになっている。(10) まず、 自動車のチャネルにおいては、千数百の ディー ラー (販売店)が存在 しているが、それ ら は全て、 メー カーの系列店 として、車種別の専売 店制 を採 り、販売地域について も、都道府県別の テ リトリー制が敷かれている。 つ ぎに、医薬品のチャネルにおいては、 メー カ ーが、いわゆ る重点卸政策 を採用 して系列の確保 に努めている。重点卸政策 とは、地域 ごとに有力 な卸売商 を選定 し、 これに資本参加、役員派遣 を 行 いつつ差別価格 または差別 リベー トを伴 う販売 を行 い、 自社製品を主体的に取 り扱わせ るように す る政策である。 さらに、家電品のチャネルにおいては、 メー カ ーによる系列化政策の進展が著 しく、 とくに、卸 売段階の整備 ・系列化が進んでお り、そのほ とん ど全てがメー カーの販売会社、 もし くは専属卸 と なってお り、 メーカー 自身が 自社の営業部 門によ って、 自ら卸売機能 を営んでいるものは少 ない。 また、家電製 品の小売機 構 は、系列 小売店 (
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0
%)、量販専 門店、及びスーパー等の大型小売店(30 %)、その他 (農協 ・生協等の形態のチャネルでは 10%)と大 きく3つの タイプの小売店か ら構成 さ れている。 この家電製品は、 とくに、消費者の消費志向の 変化や流行等に左右 されやすい、 とともに消費者 の購買場所が一般小売店か ら百貨店等 まで、かな り広範囲にわたって分散 しているため、 メーカー の販社 も、それぞれの小売業態に分化 され るよう になっている。 た とえば、ある家電 メー カーのチ ャネル形態は次のような ものである。(ll) 図2 家電メーカーのチャネル (販社型)形態の例石 黒光久 日本市場における外資系企業のチャネル政策に関する一考察 57 図3 マ-ケティング・チャネルの構築過程 2. マ ーケ テ イ ン グ ・チ ャネル の構 築 ・管理 ケティング ・チャネル を構築 (チャネル設計、及 (1)チャネルの構築 びチャネル構成員の選釈) をす る場合 につ いて、 メー カーがチ ャネル ・キャプテンとな り、マ- その過程 をま とめ たのが図3と表 2である。 いずれにせ よ、チャネル構築 とは、企業 (メ-表2 マーケテイング ・チャネル構築手順 (1)関連要 因の評価 ① 製品 (参市場 ③消費者習慣 ①利用可由 なチ ャネル G)資金状況 ⑥ ノー- ウ ⑦ 市場地位 ⑧提供 で きるサー ビス (2)チ ャネルか らの需要の明記 (∋制約条件 (参変数 ③協働 (3)競争者のチ ャネルの評価 (∋使 われ る理 由 ②諸 問題 (4)他 の代替案 の評価 (5)実現可能 なマー ケテイング .チャネル案 (丑問題 とのつ き合せ ②制約条件 とのつ き合せ ③評価 (6)ベ ス トな代替案 の明記 (∋結果の予測 (出所)片岡一郎監訳 『現代のマ-ケティング1』丸善、 昭利49年。306頁、表12-1より か -)の 目的に応 じて、 いか なる構造のチャネル を作 るか とい う方針 を決め、 それ を設計 し、チャ ネル構成月 を選 び、最終的に、 その企業の製 品を その顧客 に到達 させ る仕組み を築 きあげ るこ とで あ る。 この ようなチ ャネルの構築過程 をよ り詳細 に、 チャネルの設計 とチャネル構成員の選定の2つに 分 けて まとめ ることもで きる。 まず、チャネル設 計 においては、次の ような過程 を経 るもの と考 え られ る。(12) (ヨチ ャネルの設立 を通 して達成 しようとす る特 定 のチャネル 目標が設定 され る。 (参チ ャネル 目標が設定 されたのち、 それ を達成 す るのに適 したチャネル構造の代替案 を作成 し、決定 してい くことが必要 になって くる。 ③ チ ャネル構造の代替案が決定 され ると、 それ らを評価す る。 ⑥ チ ャネル構造の代替案の評価後、最善 であ る と考 え られ る特定のチ ャネル構造が選定 され る。 次に、チ ャネル構成員の選択過程 は、 ①選択基準の設定 (参構成員 としての候補者の探索 ③構成月 としての候補者 との交渉 ④構成員の決定 とな る。(13) この よ うな過程 を経て、チャネル ・キャプ テン はチ ャネルを新規 に構築 してい くのである。
58 長野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 1991
(
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チ ャネルの管理 チ ャネル管理 の核心 は、 メー カー に対 して、売 買関係 を もって対峠す る販売業者 (卸売商 ・小売 商)の行 動準則枠 に メー カー のマー ケテ イング 目 的に沿 うよ うな一定 の "行動準則''を組み込 む こ とであ るo Lたが って、 メー カーの視 点か らみ る と、本来、個別企業 間の売買関係 を単独企業の事 業部 と本社 との関係 の よ うにす るこ とがチ ャネル 管理 の 目標 であ る ともいえ る。 このチ ャネル管理 も、チ ャネルの構築 と同様 に、2
つ の水準 に分 けて考 えるこ とが で きる。(14) っ ま り、戟略 的 レベ ルの管理 と戦術 的 レベ ルの管理 であ る。 この2
つ の レベ ル を分 け る基準 は、戦術 的 レベ ルの チ ャネル管理が短期 的 な視 点か らの業 初期のチャネル設立 チャネル :設計 :過程I I ■ ー1--TIIL-1- --チャネル :選択 :過程 チャネル ;再編 :修正 戦略レベルにおける チャネル管理 初期のチャネル設立 戦術レベルにおける チャネル管理 チャネル修正に 関する意思決定 戦略的チャネル 監 査 チャネル再設計、 チャネル再選択に 関する意思決定 チ ャ ネ ル 目標 の 設 定 、 チ ャ ネ ル 戦 略 の 策 定 パフォーマンス標準の設定と 課業の配分 構成員に対する統制 ・管理 : ●パワー行使とリーダーシッ プの発揮 ●動機づけ、コミュニケーシ ョン ●コンフリクト管理 戦 術 的 チ ャ ネ ル 監 査 (出所)陶山計介 ・高橋秀雄編著 『マーケテイング ・チャネルー管理と成果-』 中央経済社、平成2年。85頁、図5-1CEL) 図 4 チャネル管理過程石黒光久 日本市場におけ る外資系企業のチャネル政三和こ関す る一考察 59 務遂行 的で、 日常的 な管理 であ り、戦略 レベ ルの 管理が長期 的視点か らの管理 であるとい うよ うに、 その管理 の視 点の長短 である。 この うち、戦術 レベ ルのチャネル管理過程 は次 の ようにな るであろ う。 (訂チャネル 目標 の設定、及びその達成 に必要 な チャネル戦略の策定。 ② チャネル 目標達成、 チャネル戦略遂行上必要 なチャネル課業、成果標準の設定がチャネル 全体 及 び構成員 になされ るo (卦チ ャネル課業 を各構成月が効果的に遂行す る ように、製造業者 (チャネル ・リー ダー)が パ ワー行使、 リー ダー シップの発揮、各構成 月 に対す る動機づ け、 コ ミュニケー シ ョン活 動 を展開す る。 ④構成眉間 (チ ャネル ・リー ダー と参加者の間) に衝突 (コンフ リク ト)が発生 した場合 には、 コンフ リク ト管理戟略 を実行 し、解消 を図 る。 ⑤特定 の期 間の後、 当該期 間中のチ ャネル課業 の遂行度、 どれ くらいの水準のチ ャネル成果 が達成 され たかにつ いて、チャネル及 び各構 成異 に対 して戦術 的チャネル監査 を実施す る. この よ うな戦術 レベ ルのチャネル管理 と戦略 レ ベ ルのチャネル管理 の関係 は図 4の ようになろ う。 現在 のわが国の メー カー主導のチャネルにおい ては、 この戦略 レベ ルのチャネル管理 が大 きな問 題 となってい るのであ る。つ ま り、既存のチャネ ル形態では、十分 なメー カーの計画的販売、利益 の回収がで きない とい う状況にな り、 チャネルの 再構築、再編成への方向に向か った変革が行 われ 始め た といえよ う。 3. 日本 リーバのチ ャネル政策 日本市場 で成功 してい る外資系企業 であ り、 さ らに、消 費財 を取 り扱 っている企業の代表例 とし て、 まず、 日本 リー バ の チ ャネル政 策 を概 観 す る。(15) (1)沿革 日本 リーバ はオ ランダ、英国に本拠 を置 く世 界 最大の トイレタ リー製品の メー カーであ るユニ リ ーバの 日本法 人であ る。 ユニ リーバ は売上高 で欧州第5位、世 界 で も26 位 にランクされ る超 巨大企業 であ る。1930年 に英 国の リーバ一 ・ブラザー ズ とオランダのマー ガ リ ン ・ユニーが合併 して誕生 した。 ユニ 1)-バ の事業 内容 は、食品、洗剤 な どの 日 用 品 を中心 とす る消費者関連製品が主体 で、生産 規模、製 品の多様性、販売網のいずれ をみて も世 界最大 を誇 っている。 さらに、比率 は低 いが、 自 社 製品-の原料供給 も兼ねて工業用特殊化学 品 も 手掛 けている。 このユニ リーバが豊年製油 と組 んで豊年 リーバ が発足 したのが昭和39年 であ る。 その後、昭和49 年 に豊年 リーバは 日本 リーバ ・インダス トリー ズ に社名変更 した。現在の株 式はユニ リバーが80% 以上保有 してお り、ユニ リーバの事実上の 日本法 人 となってい る。 (2)チャネル政策の変遷 (∋初期 のチ ャネル政策 i)基本的市場戦略 本社 のユニ リ-バの基本方針、経営戦略 として、 と くに、非食品分 野におけ る 日本 での商 品開発 と 市場導入は次の ような コンセプ トに基づ いていた。 ○ 日本 の消費者ニー ズに適合 した商品 を発売す る。 ○ そのニー ズに適合 した高品質 な商品 を開発 し、 導入す る。 とい う2点であった。 この こ とは、商品の品質 さ え良ければ、 あ とは、 その高品質 の商品の存在 と 効用 を消費者 に訴求す るだけで、 当然、売上が伸 長す るであろ うとい う考 え方に基づ いてい る。ユ ニ リーバの国際的な経験や長年 の歴史 をもつ技術 力 を最大 限に活用 して、品質的に、優位性 のある 商 品 を提供す るとい うこ とで、あ る程度、 日本市 場 に も浸透 で きるはずだ と判断 したのであ る。 したが って、マー ケティング戦略、 とくにプ ロ モー シ ョン戦略 においてはプル戦略 を基本的 な手 段 として活用 したのである。具体 的には、 ④試供 品 (サ ンプル)の大量配布 (抄マス ・メデ ィア を使用 した大量広告 桓)一部 の地域 での限定販売か ら次第に全 国的 な 販売 に移行 す るテス ト ・マーケテイングの多 用 な どを行 ったのであ る。
60 長野大学紀要 第13巻第2・3号合併号 1991 図5 トイレタリー業界におけるチャネルの 2類型 ④の手段は高品質の商品をまず、直接、消費者 に使用 して もらうこ とによ り、 その品質や効用 を 理解 して もらい、指名買いを、期待 した ものであ る。⑨ の手段は、商品知名度 を高め るとともに、 商品に対す る親近観や信頼観 を得 ようとした もの である。荏)の手段は、一部地域-の集中的マーケ テイングカの投入によ り、その効果 を高め、その 評判 を次の販売地域 での有利な宣伝材料に しよう とす る意図があった。その反面、国内メー カーの 強力な販売網に食い込むためには、大量の投資を 限 られた地域に集中 して、実績 をあげるとい うこ とが必要で もあったのである。 ii)チャネル政策 上述のような基本的市場戦略によって 日本市場 -の参入 を図ろ うとした 日本 1)-バのチャネル政 策について概観す る。 国内の トイレタ リー業界において、 メー カーが 採用す るチャネル形態は大 きく
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類型に集約分類 す ることがで きる。 それは図5
のように示す こと がで きる。A
型のチャネル形態 を採用す るメー カーは、チ ャネルの卸段階 まで組織化 し、 自社のマーケティ ング戦略の徹底 を図 ることを目指 している。確か に、 メーカーのマーケティング戦略や経営の基本 方針の浸透 は図れるが、その一方で、販社設立や 維持のための投資、 フルラインの商品開発 と販売 が必要になる。B
型のチャネル形態 を採用す ると、 卸売段階の系列化のための投資は販社型 よ りも少 くて済むが、 メーカーのマーケティング戟略の浸 透が弱 まる傾 向がある。 ユニ リーバ としては、 日本進出当初は 日本の メ ー カーである豊年製油 との合弁会社 であったとい うこともあ り、B型の既存の卸売商 を活用 して商 品を流通 させ るとい う方法 を採用 した。 同社 としては、高品質の商品を提供 し、 その商 品の存在 と効用 を消費者-直接的に訴求すれば、 当然、消費者の指名買いに結びつ き、小売店 も品 揃 えせ ざるを得 な くな り、小売店か らの発注に対 応す るために卸売商 もメー カーの配荷 を強 く求め るであろうとい う予測があったのである。 次に、 日本 リーバの卸売商 ・小売商政策 をみ る と、 日本の流通構造、チャネルの特性 を研究 した 政策 を採用 しているO これは、ユニ リーバが 日本 市場に参入 した当初、豊年製油のチャネル を使 っ て食品を販売 していた経験に基づ くものである。 そ して、 トイレタ リー製品の発売時にその経験 を 活用 したのである。 トイレタ リ‥製品は小売価格が低 く、流通業者 の利益率 も高 くないので、 とくに、新規参入の メ ー カー としては、競合他社 との差別化 されたチャ ネル政策が必要 となる。そこで、同社 は、卸売商 や小売商の利益率 を確保す るとい う方法 を採用 し た。具体的には販売量、市場 シェアの拡大 を目指 すために、値引 き、特売 など小売店頭 での値崩れ を黙認す るとい うことをせず、商品の品質、 イメ ー ジを大切 に して、乱売や過度の値 引 きを黙認 し なか ったのである。小売店頭 での "お とり商品'' として 自社製品が利用 され ることを回避す るよう に努めたのである。 そのため、少数代理店制 を貫 き、全国130店の代石黒光久 日本 市場 にお け る外 資系企業 の チ ャネル政 策 に関す る一考 察 理的に絞 り込んだ卸売商の選定 を行 うと同時に、 卸売商のマー ジン率 を
1
3-1
4%
の水準に保つ よう な リベー ト、販促 費の支 出を行 ったのである。 こ の ように して卸売商の支持 を得 られ るように努力 す るとともに、 日本市場での取引には欠かせ ない、 「人間関係 (人的つ なが り)」を重視 し、セールス マ ンの対卸売商、対小売商対応 もきめ細か く行 い、 小売商に対 して も情報提供、労力提供 などを行 っ たのである。 さらに、 1
つの製品が ヒッ ト商品 と なると、同 じブラン ドで、他 の関連商品を追加 し てい く、いわゆ る "傘 ブラン ド方式" を採用 し、 流通業者の新 たな販売促進活動 を軽減す るといっ た方法 も採用 したのである。 iii)チャネル政策の問題点 上述のような堅実 なチャネル政策によって、卸 売商 ・小売商 とも大 きな衝突 (コンフ リク ト) を 発生 させず経過 して きた 日本 リーバ も トイレタ リ ー製品市場 において、 さらに大 きな成長 を遂げ る ため、 よ り強力な卸 ・小売商の協力 を得 て、売上 拡大 を目指す ようになった。 それは、 シャンプーや リンス製品市場 は飽和状 態にあ り、新 たなブラン ドを市場に投 入す るか、 消費者の多頻度化 を促進 しなければ市場規模が拡 大 しない とい うこ とがあるため、他社製品 との品 質上 の差別化 を強調す るか、小売店頭 での 自社 ブ ラン ド製品の積極的 な販売促進活動 を実施 しない か ぎ り、市場 シェアの大幅 な拡大 を望めな くなっ て きたのである。 さらに、 トイレタ リー業界では、洗剤 を製品ラ インに持 っていないメー カーは、流通上の主導権 を確保 で きない。 そこで、卸売商 ・小売商の支持 を得 るために、 トイレタ リー分野の主力商品であ る洗剤 を発売 し、 自社の主要ブラン ドに育て、流 通業者である卸売商や小売商に も利益 を配分 で き るこ とを目指す必要がでて きたのである。 この ようなこ とは、競合他社製品 と明確 な差別 化がで きる トイレタ リーの新製品の開発 と、その 市場導入 を是非 とも必要 としたのである。 そのた めに も、卸売商 ・小売商のよ り一層の協力が必要 となったのである。 ②現在のチャネル政策 i)新製品の販売戦略 日本 リーバが売上高の飛躍的拡大 を目指 して発 61 売 した新製品の販売戦略 をみ ると、従来の販売戟 略 と基本的には変化 していない。 しか し、それ を よ り強力に推進 しようとす る意図がみ うけ られ る。 その基本戦略は、次の ような i)のであるo O製品差別化、 とくに、 目新 しい新機能 を付加 し、品質 ・効用の優位性 を明確にす る。 ○広告 ・宣伝 に大量の資金 を投入す る。 とくに、 テレビ ・コマー シャル、消費者へのサ ンプル の大量配布 など。 ○テス ト・マーケテイング、つ ま り、最初の発 売地域 を限定 し、その限定地域へ集 中的にマ ーケティング努力 を注入 し、実績 をあげ、そ の実績 をその後の発売地域 でのプ ロモー ショ ンに活用す る。 この ような三本柱がや は り基本 となっている。 具体的な卸売商 ・小売商に対す るチャネル政策 は従来 どお り、小売店頭価格の維持による卸売商 ・小売商のマー ジン率の一定額の保障 をす るとい うものであるが、従来以上に価格維持に力 を入れ てい る。 この価格維持のための方策 としては、 ○小売店頭価格 を維持 しない量販店への製品供 給制限実施の伝達 ○絞 り込んだ販売拠点-の限定数量販売 ○小売店頭価格維持遵守の場合の卸売商へのバ ック ・マー ジンの支給 ○販売数量による小売店のランクづけ とランク に基づ いた大量の リベー トの支給 な どである。 この ような "ア メとムチ''の方策で 小売店頭価格の維持に努力 したのである。 ii)問題点 日本 リーバは上述のよ うに小売店頭価格維持に 力 を注いだが、卸売商の在庫過 多 と、計画 どお り の販売数量 を達成 できないため、地域に よっては、 小売店頭 での値崩れがみ られ るようになった。 こ の ようなことが全国的に拡大すれば、 日本 リーバ のチ ャネル政策、 さらにはマー ケティング戦略そ の ものが崩壊す る危険にさらされ る可能性が高い。 (3)チャネル政策の特徴 ①卸売商政策 量販店 との取引条件は、 日本 リーバ と量販店 と の直接交渉で行 うため、卸売商 としては、仕入原 価 よ りも安 い価格 で量販店に納 品す る場合が発生6
2
長野大学紀要 第13巻 第2・3号合併号 1991 す る。 その よ うな場合 には、卸売商の赤字部分 を 補填 し、かつ、一定のマー ジン率が確保 で きるよ うな リベー トが支払 われ る。 したが って、卸売商 としては販売数量の拡大 に全 力 を出せ るように な るのである。 また、 日本 リーバのセール スマ ンが各 自、一定 額の リベー ト枠 を持 ってお り、セールスマ ンの個 人的裁量 で リベー トを重点的に支給す ることも行 ってい る。 ②小売商 (量販店)政策 日本 1)-バのセー ルスマ ンが量販店の店頭 を巡 回 し、棚替 えや販促等の支援 を実施 している。 ま た大量に販売す る中核的な店舗 に対 しては、卸値 を低 く設定 し、 さらに大量に配荷 してい るC 協賛金、 リベー ト、定番料 を量販店か ら要求 さ れた場合、適切 な理 由が ない場合 には、 それほ ど 支 出 しないが、新製 品発売時には まとまった金額 を支出す る。 それに加 えて、売 り出 し、特売時に は 日本 リーバのセー ルスマ ンが種 々の情報や労 力 を提供 してい る。 4. P&Gのチ ャネル政策 日本 リーバ と並 んで 日本市場 で成功 してい る消 費財の外資系企業であるP&G
(プ ロクタ一 ・ア ン ド・ギャンブル ・ファー ・イー ス ト ・イン ク) につ いて も概観す る。(16) (1)沿革1
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7
3
年1
月か ら営業 を開始、1
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77年 にP&G
の 100%出資法人になった。事業 内容 は トイレタ リー 製品の製造 と販売 を主 としている。主力製品の売 上順位 は紙おおっ、生理用ナプキン、洗剤 とい う 順 になってい る。 さらに、1
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年 には- ルスケア 製品 もラインア L・'フに加 えたO 売上高は、 同社の主力製 品であるベ ビー用紙お むつや生理用ナプ キンの市場 シェアの拡大 に よっ て成長 を続けてい る。 また、 日本市場 をアジアにおけ る重要 な戟略市 場 に位置づ け、 そのため 日本法人は大 きな役割 を 担わされてい る。 したが って、 日本国内でほぼ全 製品を製造 し、販売 してい る。(
2
)
チ ャネル政策の変遷 (9初期 のチャネル政策 i)基本的市場戦略P&G
の基本的な企業 目標 が売上高の拡大、市 場 シェアの拡大 とい うこ とにあ ったので、 とにか く低価格販売 によって消費者の支持 を得 ようとし た。 そのための具体 的方策 として、 ○テレビ ・コマー シャルな どの広告、宣伝 な ど プ ロモー シ ョン活動-の大量投 資 ○消費者へ の試供 品 (サ ンプル)の大量、直接 配布 ○地域 を限定 した商 品の集 中的発売 などであ る。 これ らは消費者への直接的訴求 を目 指 した ものである。 この ような方策 は、上述 した 日本 リーバの方策 と非常 に類似 してい る。 ii)チャネル政策P&G
の初期 のチ ャネル形態 は、 トイレタ リー 製品分野で 日本の トップ企業のチャネル形態 に強 い対抗意識 をもった形の もの を採用 した。 日本 リーバのチャネル形態の ところで触 れたよ うに、P&G
も既存卸売商活用型のチャネル形態 を採用 したのであ る。 これはP&G
が米本国で成 功 してい るマー ケティング戦略 であ るプル戦略 を 日本 で も採用 しよ うとし、 そのためにはチャネル 政策 としては、販社 を組織す るよ りも既存卸売商 活用型のチャネルの方が効率 的 であ る と判断 した ためである。 次に、卸売商 ・小売商への対応 であ るが、P&
Gは消費者への直接的な訴求や低価格販売 によっ て、消費者の支持 を得 て、指名買い を期待 したの であ る。 そ うすれば卸 ・小売商 も売れ筋商 品のた めに メー カーに強 く配荷 を望 む と考 えたのである。 その結果、P&G
は卸 ・小売商への働 きかけ を軽 視 したの であ る。 また、販売 してい る製 品の市場露出度 を重視 し、 オープ ン方式のチャネル形態 を採用 し、P&G
製 品の取 り扱 い をす る卸売商には、 で きる限 り配荷 す るとい う方針 をとったのであ る。 そのためP&
Gは1,000社 以上 と推定 され る卸売商 との取 引関 係 を構築 した。 これはいわゆ る一次卸以外 に二次 卸 な どとも直接的な取引関係 を構築 したこ とにな る。石 黒光久 日本市場 におけ る外 資系企業 のチ ャネル政策 に関す る一 考察 iii)チャネル政策の問題点
P&G
の初期のチャネル政策 は結果的には失敗 に終 わった といえる。 その基本的原因は製品の低 価格販売 と広告宣伝が当初期待 したほ どの効果 を あげなか ったか らであ る。 まず、低価格販売が効果 をあげ られなか った要 因 としては次の ような ものがあげ られ る。OP&G
の製品が安売 りの対象 となることを消 費者が知覚 し、P&G
の製品が正価の時には 購買せず、特売等の時にだけ購買す るように なった。 ○低価格販売に もかかわらず、販売量がそれに 比例 して伸 びなか ったので、卸売商 ・小売商 が十分 なマー ジンを確保 で きない とい う状況 にな り、取 り扱いに不熱心になった。 また、広告宣伝 の効果が期待 したほ ど有効 でな か った要因 としては次の ような ものがあげ られ る。OP&G
が多様 した比較広告や説得広告 を日本 の消費者が好 まなかった。 〇 日本市場 におけ るメー カー間の競争の特色 と して、製品機能が発売時には差別化 されてい て も、す ぐにその機能 を模倣 した製品が製造 販売 され、初期 の差別的優位性が失われやす かった。 ○公正競争規約 などの業界の規約が存在 し、 と くにサ ンプル製品1
個 当た りの内容量の制 限 や無料景品の規制 などがあ り、P&G
が得意 とす る消費者-の直接的訴求の手段 の効力が 制限された。 以上の ような低価格販売や広告宣伝等の効果の 当初の予測に反す る結果は卸売商 ・小売商の反発 を買い、P&G
離れ を促進 した。 また、P&G
のマー ケティング戦略があま りに プル戦略 を重視 し、卸売商 ・小売商 を軽視 したた め、卸売商 ・小売商が当初に予想 したようなP&
Gのマー ケテイング手段が効果 を発揮 しない とな ると、卸売商 ・小売商に高圧的で、 日本市場の特 殊性 (取引慣行) を理解 しない外資系企業 とい う 悪いイメー ジが広 ま り、P&G
の製品販売に熱心 な卸売商 ・小売商が減少 したのである。 さらに、P&G
の卸売商 ・小売商へ支 出す る リ ベー トが不明瞭 で基準が明確 でない とい うこ とも 卸売商 ・小売商のP&G
匪れ を促進 した と考 え ら 63 れ る。 いずれにせ よ、P&G
が売上高、市場 シェアの 拡大 を狙 ったマーケテ ィング戦略、及びチャネル 政策は成功 しなか ったのであるO その結果、P&
Gは 日本市場進 出後、1
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数年間業績不振に陥 り、 利益 を計上 で きなか ったのである。 (卦現在のチャネル政策P&G
としては、 日本市場進出以来の1
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数年間 の業績不振の経験 を生か した新 たな戦略 ・方針 を 打 ち出 した。 その基本方針は、 ○売上高の拡大 ○製品開発戦略の重視 ○販売促進活動の徹底 ○小売店頭価格維持の徹底 ○チャネル政策の変更 である。 この うち、チャネル政策については、従来、小 売店頭 での露出度 を重視 し、商品の配荷率 の向上 を最大の基本政策 としていた。一方でプロモー シ ョンのプル戦略に力 を入れ、アメ リカ的な消費者 -の直接的訴求に力点 を置 き、卸売商 ・小売商に 対 しては高圧的で軽視す る姿勢がみ られた。 しか し、 日本市場へ進 出後の業績不振の経験か ら、 日 本市場 での流通業者、 とくに卸売商の重要性 を認 識 し、販売力のある卸売商 との協力的な提携 とい う方針 を採用す るようになったのである。P&G
は従来、1,
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店以上の卸売商 と取引 して いるといわれていたが、現在 ではその1,
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店以上 の卸売商の中か ら、 とくに重要 な中核 となる卸売 商 を約1
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社 ほ ど選定 し、それ ら中核卸売商 との関 係 を強固な もの としたのである。 これをP&G
は "戦略的同盟" と呼んでいる。 この中核卸売商 を選定 した基準 ・方法は次のよ うな点 を考慮 して実施 された。 それは、OP&G
が販売エ リアを確定 し、 そのエ リア内 で売上 目標 を達成 できそ うな、いわゆ る中核 卸売商 を全国に展開す る。 ○流通経路の合理化、あるいはP&G
のマーケ ティング戦略 を確実に理解 し、 それを実行可 能 な卸売商 を選別す る。 ○中核卸の協力 を得 るために、中核卸に対 して は リベー トや販促 費の優先的支 出等 を実施す る。64 長野大学紀要 第 13巻 第2・3号合併号 1991 ○量販店 な どの小売商側 か らの卸売商選別の動 きに連動 し、量販店等が選別 した卸売商 を中 核卸 とす る。 などであ る。 また、 中核卸以外の卸売商に対 しては、早急に 取引 を中止す るのではな く、取引条件 などで差 を つけ、次第に取 引量 を減少 させ る、あるいは支援 しない とい う方策 を採用 した。 いずれにせ よ、取引 ・連携す る卸売商の数 を絞 り込んだ こ とに よ り
、P&G
としては、 I)ベ- ト 販促費な どを集 中的に、かつ効率的に支 出で きる ようにな り、 それ を中核卸売商-振 り向けたので ある。 さらに、売れ筋商品の計画生産量 を達成 で きな い場合 は、 それ を逆 に卸売商へ の配荷制限 とい う 形で、卸売商の コン トロール手段 としたのである。P&G
の小売商対策の対象は主に量販店 であ る。 これ ら量販店 とは価格 、販促 費、納入量 などの取 引条件 を直接、量販店本部 と交渉す る とともに、P&G
のセー ルスマ ンが量販店の店頭 を巡 回 し、 販促 ツー ルや販促 プ ログラムの企画、提供 を行 っ ている。 しか し、 日常的な量販店の店頭管理 は卸 売商に任せ ているこ とが 多い。 いずれにせ よ、P&G
は外資系 メー カーである とい うイメー ジを前面に出す こ とに を極 力回避 し、 国内メー カーの量販店対策に準 ず る政策 を採用 し ている。(
3
)
チャネル政策の特徴 現在のP&G
のチャネル政策 は中核卸 を中心 と した売上高、市場 シェアの拡大 を第1
の 目標 とし ている。 チャネル形態 としては、既存卸売商活用型のチ ャネルである。 この ようなチャネル形態において、 中核卸 との "戦略的同盟''を強固に し、中核卸の 販売力 を活用 しなが ら販売量の拡大に重点 を置 き、 販促 費、販促 ツール、販促 プ ログラムの提供 を実 施 してい る。 さらに、′J、売商の うちで も量販店に対 しては、 国内メー カー と同様 に量販店での取 り扱い シェア の拡大 を狙 って、店頭管理 の実施 を目指 してい る。 この よ うなP&G
のチャネル政策 は、基本的に は トイレタ 1)-製品分 野で販社制度 を採用 してい ない トップ ・グループの メー カーのチャネル政策 に類似 してい るといえる。 ただ、国内メー カーが 力 を入れてい るマー ケティング戟略のプ ッシュ戦 略以上 にプル戟略に大量に投資 し (売上高 に 占め る広告宣伝 費の比率が国内 メー カー よ りも高い)、 消費者に直接 的に訴求す るこ とに、 よ り力点 を置 いてい ることが、国内 メー カーの方策 と若干、差 異 をみせ てい る点である。 おわ りに く結 論 に代 えて) 現在 の国内の トイレタ リー製品 メー カー は、本 稿 で上述 した ようなチャネル設計、チャネル構成 員の選定 を行 い、現在のチャネル形態 を構築 して きたのであ る。 そのチ ャネル形態が トイレタ リー 製品市場 の需要変化、小売商、 とくに量販店の台 頭 によ り、チ ャネル政策全体 の H標の達成 が困難 にな り、チ ャネル内で コンフ リク トを生 じさせ て いるといえる。 それは、 と くに、卸売商 を特約店 ・代理店 として、組織 した メー カー に顕著 に現 わ れている。 この特約店、代理店 となった卸売商は、 当該 メ ー カーの製品だけ を排他的 (専属 的)に取 り扱 う わけではな く、競合 メー カーの製 品 も取 り扱 うの であ る。 したが って、特定 メー カーの製品の取 り 扱 いが、その卸売商に とって メ リッ ト (収益性、 成長性等) を減少 させ れば、 当該卸売商 はその メ ー カー製品の取 り扱 いに協 力的でな くなるのであ る。一方で、小売段階におけ る量販店の成長は卸 売商の相対的地位 を低下 させ 、 メー カーの計画的 販売 とい う目標 を達成 で きに くくしてい る。 この ように、特約店 ・代理店制 は販社制 と比較 す ると、不安定 で、チ ャネル内 コンフ リク トを発 生 させやすい といえる。 この ような コンフ リク ト が頻発す るため、 メー カーのチャネル管理 として は、長期的な戦略 レベ ルの管理観点か らチ ャネル の再構成、再構築が求め られてい るのであ る。 し か し、 この形態のチャネルは一方で柔軟性 をもち、 さらに、 メー カーの管理 費用 も販社型 よ り少量で 構築 で きる とい う長所 ももってい る。 また、販社制度 も販社の活性化、統合化 な どの 問題点 を現在 、抱 えている。 外資系の消費財 メー カー の代表 である 日本 リー バ、P&G
も、 日本進 出当初、チ ャネル を構築す石 黒光 久 日本市場における外資系企業のチャネル政策に関する一考察 65 表3 初期のチャネル政策の比較 日 本 リ ー バ P & G 基本的マーケティング戦略 プル戦略 プル戦略 チ ャ ネ ル の 形 態 特約店 .代理店制 (壁) 特約店 .代理店制 (型) 卸 売 商 - の 対 応 重 視 軽視 .高圧的 卸 売 商 の 数 (取 引 数) 少数 (絞 り込む) 多数 (市場露出度重視) 小 売商 (量販店)- の対応
セ
ールスマ ンの店頭巡 回o
販促 費、 セー ルスマ ンの店頭巡 回 (卸売商に 販促企画、販促 ツールの提供 任せ る) る過程 で、国内 メ- カーのチ ャネル政策 を検討 し、 い くつかのチ ャネル形態の代替案 を考慮 したはず であ る。 その中か ら、販社制 でないチャネル形態 を選択 したのであ る。 その場合、チ ャネル政策の前提 としてのマー ケ ティング戦略の基本政策 を消費者-の直接的訴求 を中心 とす るプル戦略に置いたのであ る。 しか し、 日本 リーバ とP&G
では、類似 のチャ ネル形態 を採用 しなが ら、卸売商への対応が異 な ったのであ る。 日本 リーバ とP&G
の初期 のチャ ネル政策 を対比す ると、表3の ようになる。 この 表 をみ ると、チ ャネル管理 問題 では 日本 リーバ とP&G
の差異がでてい る。P&G
はマー ケティン グの基本戦略のプル戦略に大 きな期待 を掛け、小 売店頭価格 の 多少の乱れ よ りも売上高全体 の拡大 を目指 し、製 品の市場露出度 を重視す るあ ま り、 で きるか ぎ リ多 くの卸売商 との取引関係 を構築 し たの であ る。つ ま り、チ ャネル内の コンフ リク ト(
P&G
と卸売商 との衝突) を低減 させ るだけの チャネル全体 の売上高の拡大 を目指 したのであ る。 一 方、 日本 リーバ はマ- ケティング基本戦略 はP&G
同様 にプル戦略 であ りなが ら、同時にチ ャ ネル内の コンフ リク ト (日本 リーバ と卸売商の衝 突) を極力押 さえるよ うな コンフ リク ト管理 (個 々の卸売商のマー ジン率 の保証等) に よって、チ ャネル内 コンフ リク トの低減 に よるチャネル管理 を実施 したのであ る。 両社 のチャネル政策 の相 異の結果 は、P&G
の 業績不振 となって現 われたのであ る。 そのため、P&G
も現在 では 日本 リーバのチャネル政策 に類 似 したチャネル政策 を採用 し、業績 を伸長 させ て いる。 この よ うな数少 ない事例 か らのみ、外資系の消 費財 メー カーのチ ャネル政策の特徴 を断定的に論 ず るこ とはで きないが、 その研 究の端緒 としての 示唆 を含 んでい る といえよう。 それは、 日本市場 で成功 してい る外資系の消 費財 メー カーのチ ぅ転 ル政策 は、 日本 国内メー カーのチャネル政策 に類 似、 または等 しい とい う仮 説 を立て るこ とがで き るとい うこ とであ るO この仮説が今後の よ り詳細 な実証研究に よって補強 されれば、外資系の消費 財 メー カーのチ ャネル政策 も国内 メー カーが現在、 直面 してい る諸問題 を解決す るよ うな政策、方策 を早急に立案 し、実行す るであろ うとい うこ とが 想定 で きるのであ る。 (い し ぐろ みつひさ 講師) (1991.10.4受理) [注] (1) 流通政策研究所 『チャネル政策 と販社の方向性に 関す る研究調査報告書』 (昭和63年3月)、41-43 頁。 (2) 三村優美子 「わが国中小小売業の構造変化 とマー ケテ イング ・チ ャネル政策」(
『東京国際大学論 叢』、商学部 編、第35号、昭和62年3月)、40-41 頁。 (3)流通政策研究所 F情報化の進展に伴 うチャネル・ コン トロール新原理に関する研究調査報告書』 (辛 成1年3月)、9-11頁 (4)住谷宏 「メーカーの特約店政策に関する一考察」
(
F季刊マーケテイング ・ジャーナル』、平成2年12 月)、29-30頁 (5)筆者が平成2年9月∼10月に長野県内メー カー 販社に対する取材 を基礎にした考察である。66 長野大学紀要 第13巻第2・3号合併号 1991 (6) 鶴 田俊正 「寡 占体制 と流通 系列化 一競争 的 インパ ク トを吸収す るメカニズムの分析 -
」(
F専修経 済学 論集1、 第14巻 、第2号、昭和55年)、43-44頁 (7) 江尻 弘 F流通論よ 坤 央経済社 、昭和54年 )、19 2-193頁D(8) PhilpKotler,MarketingManagement;Analysis,
Planning,andConty10l,1976(稲 川和 男他 訳 Fマー ケテ ィン グ ・マ ネ ジ メン ト一機 全分 析 と製 品戦 略