椙山女学園大学
行列変数の解析関数について
著者
吉本 明宣
雑誌名
椙山女学園大学 現代マネジメント学部紀要 「社
会とマネジメント」
巻
9
号
1
ページ
57-70
発行年
2011
URL
http://id.nii.ac.jp/1454/00002122/
「社会とマネジメントJ9(1) [2011-11J : 57ー70
行列変数の解析関数について
吉本明宣
AkinoriYoshimotoAbstract
The purpos巴ofthis paper is to state about the analytic functions of a matrix
variable which has not been studied enough, and仕Yto apply that to mathematical
fields exc巴:ptlinear algebra that has b巴enstill applied much. To realize them, we
extended some facts which were well known in complex良mctiontheory of a complex variabl巴tothe case of analytic functions of a matrix variable. Unfortunately we couldn't describe社leirapplications, but仕leimportance is the fact白紙nonabelian extensions of the basic field are obtained by division points of the algebraic variety d巴fiedby algebraic equations of a matrix variable. キーワード:口行列変数の解析関数 口擬正則関数
はじめに
口右解析的 口一致の定理 口右テーラー展開 口断面 口リゾルベント ロエアロ関数 口スペクトラム 行列値関数の歴史は比較的古く, [1]においてすでに現在知られている多くのこと がまとめられている。また, [2,][3]において,行列値関数の基礎的な事や応用がまと められている。しかしながら,この方面での基本的な教科書はなく,専門的な研究も 必ずしも十分進んでいるとは言えない状況である。また,従来の研究では,行列値関 数は線形代数の側からのアプローチにより研究がなされており,応用も線型方程式の 解法などに使われている。そうした状況を踏まえ, この論文においては,行列値関数 を純粋に複素関数論的な立場から捉え,行列値関数を複素解析的な関数の拡張として 考察する。ただし,ここでは議論を易しくするため2X2行列のみを対象とする。通 常の複素関数論では,微分可能という概念と解析的という概念が同値になるが,行列 変 数 (2x 2行列以上)の関数では,解析的(厳密には,右解析的)と言う概念が,微 分可能という概念より狭く,より重要になる。 具体的には,複素関数論で成り立つ美しい定理の類似を考え,できるだけ制限を付 けないで成り立つ事実を考察する。第 1節では 現在知られている2X2行列に関す.吉本明宣行列変数の解析関数について 58 る基本的な事実をまとめる。第 2節では,微分可能という概念が,複素関数から行列 変数の関数へとどのように拡張されるのかを考察する。第 3節では,解析的という概 念が,複素関数からエアロ関数(行列変数の解析関数)へと拡張される事を考察して いく。
1
1
2
x
2
行列に関する基本的な事実
ベ
2
M
(
C
)
に対し そのノルムを│
同
¥
=
恥
2
¥
J
によって定義する。このノルムはベクトル空間M
2(([:)のノルムになっている事がわ かる。 すなわち,│
凶
1
¥
=
¥
α
1
1
,
¥
同
(aE,
)
C
│
同
+
E
1
¥
:
:
;
¥IA
¥I+
¥IB
,¥I|同
\~O,(I\
A
卜
O<=>
A=
0)
が成り立っている。このことから, 2点A
,
B (
εM
2(C))の距離d(A
,
B)
をd(A
,B)
= ¥IA-B
¥I で定義すれば,M
2(C)は距離空間となる。 また, ([:2の元x=
t(X1,
X2)に対して,¥
f
l
¥
=
(
¥
イ
+
¥X2¥2)2 によって定義するとき,次の補題が成り立つ。 補題1.1
任意のA,
BE
M
2(([:),
XE ([:2に対し,次の不等式が成り立つ。 (1) I¥AxI¥::; I¥A
I¥I¥x
¥l (2)1
¥
A
E
1
¥
:
:
;
¥IA
¥I例
I
a
ll角21""I
x
1 1‘
I~Xl +α:2X2 1 証明 (1)A
=
1
-11 - UI
,x
=
1
"
"
'
1
とすれは,Ax=
I
-
'
"
"
'
" - Z " Z1
となる。シュワルツ の不等式を用いながら,「社会とマネジメントJ9 (1)畿
│
凶
1=
1
(
1
角的α
+
2X212+
1
叩 l叩2
n
2
話1
(
向1
2
+州市
1
+
(
1
α
2
12
+
1
川
I
x
2
1
~(I向1
2
+
l
a
2
1
2
+
1
α
l
+
1
川
I
(
X
lI
2
+
I
x
2
1
2
)
2
=
I
I
A
I
I
I
I
X
I
I
したがって, (1)を証明できた。 (2)B
の列ベクトlレをb
1,
b
2とすれば,
A
B
=
(Ab
1,
Ab
2)となる。(1)を用いると,I
I
A
B
W
=t
I
I
A
;
b
11壬玄|同121~112
=
1
同
1
2
1
同
1
2
したがって ,(2)を証明できた。 補題1.1の系A
のスペクトラムσ(A)に対して,s
u
p
r
(
A
)
1
~
I
I
A
I
I
(q.e.d) 証明 補題1.1の (1)とスペクトラムの定義より,SUplσ(A~~IIAII が成り立つ。
(q.e.d) 点、列(An)促 NがA
。に収束するとは, l民
I
I
A
"
-
.
4
0
ト
o
となることとする。このことをl
i
m
A
"
=.
4
0
で表す。また,M
2(C)の元を項とする級数L
;
A
"
に対し,その部分和 nニ1品
=
L
;
A
"
匁 二1 の作る点列(
S
k
h
E
N
がSに収束するとき,L
;
A
"
はSに収束するといい,S
=
l
i
m
S
.
k→∞“ で表す。-吉本明宣行列変数の解析関数について 60
2
I
擬正則関数
ここからは,後の議論のために,値としてM
2(lC)の元を取る関数を考察する。 メ入T, Z f-7A(z) を複素数体C
からM
2(lC)への関数とする。 A(z)が z=zoで連続であるとは,Zoに収 束する任意の点列 {zn}促 Nに対して,ある M2(lC)の点 A(zo)が存在して,l
i
m
A(zn) = A(zo) Zn→z。 となることをいう。 また ,A令)が z=zoで正則であるとは,z勾0に収束する任意の点列{ヤz
ゐzn}n て (2.1)l
i
m
A(ろ)-A(zo) Zn→Zo Zn-ZO が存在することをいう。極限値(2.1)をA
'
(zo)と表すことにする。 行列値関数 A(z)は複素数値関数と同様な性質を持つことは容易に想像でき, よく知られてもいるので,証明なしで以下の定理を引用する。 また 定理2
.
1
(Cauchyの積分定理) 正則関数 A(z)の定義領域 D 内のジヨルダン閉曲線 。の内部がすべてD
の点からなるならば, fA(z)ゐ
=0,(0は2次の零行列) Qまた ,A(O)(z) =A(z), 1以上の整数に対して ,z=zoにおける
h
回微分をA
φ
¥zo) とすると,次の定理が成り立つ。 定理2
.
2
定理2.1と同様の仮定の下でに (2.2)A
ゆ)(zo)=
土
[-A
位
τ
dz,(
k
=
0
,1
,2
,...)2
π
i;(z-zo) 領域D
内において,高々極を例外とすればD
内で正則な関数 A(z)を有理型関数 であるという。複素数値関数と同様に,有理型関数 A(z)は次のようなローラン展開 をもっ事が証明できる。 定理2
.
3
領域 D:0
云高<ド-
z
o
l
くR
2-::;,∞で A(z)は正則であるとすれば,Dにおい て,「社会とマネジメントJ9(1)命 (2.3) A(z)
=
L
Ak(z-ZO)k と一意的に展開できる。また ,Akは次のように表示できる。 i A(z) 先 = 一 一 │ 一一ーで-:-;-dz, (kは整数) 2πi ド-;ol~r (Z -Zo)k+l ただし,rはRlくr<R2なる任意の正数である。 A(z)のローラン展開 (2劫において,適当な整数nが存在して,r
,
A
"
*
0
lAk=
O,
(
k
< n) となるが nが負の整数であるとき,A
(z)はn位の極をもっという。また,A
_
l
を z=z。における留数とよぶ。 後に使用するために,次の補題を考える。 補 題2
.
1
l
I
Z
Z2 をM2(C)の任意の元とし,任意の正の整数h
に対して,¥
Z
3 Z4) 行列値関数A
(z)をZ
H
4
(
Z
)
=
(
1
1
1
)
とする。そのとき, A; (Z)=
kAk_1 (Z) (h0
i
証明 Ak(z)とl
Oh
Jは可換であるので,州山刷…
βかz山山)ド日円i
=J i
1
臨
斗均
虫
斗唱 =斗J
(
白
(
C
川
;
U
b
川
;
}
(
イ
わ
(
z
;z1
)
)
l
イ
一
(
Z
乙
ご
z
J
ム
了
乙
二
z
J
んj
4
)
=kAkも
k-l(Z) 補 題2.2l
rZ
Z2I
をM2(C)の任意の元とし,任意の正の整数hに対して,¥
,
z
3 Z4) 行列値関数 kA(z)を-吉本明宣行列変数の解析関数について
Z
H
ル
(
ムγ)
とする。そのとき,出
)
=
1
7
5
4
1
A
(
Z
)
(
:
;
)
J
(
Z
)
証明,可'(Z)ト(収
ω侍Z)か)ド~Jム(Z3ゐJ+Jふ?
加(((よムzτγz叩~)J仏zろゴ
=lえIA(Z{~ ~
J
m
A
(
Z
)
となる。D
をM2(C)内のある領域とし ,X。をD
の内部のある点として, (q. e. d) 九 川 lト llJ U R -Jc
r E Z、 、
I l l 1 ノoz
ん 円 いW
+
九
一 一X
汁川町e
x
r I l H J 、 H H H、一 一
為D
と定義する。D
内の点の集合Dx。をXOに付随したD
の断面とよぶ。そこで,DからM
2(
C
)
への関数f(X)がD
で擬正則であるとは,各X
oに対して ,Dx。上のz
の複素関数い(~引が正別であることをいい そのような D 上の連続関~f(X) ~iD
の擬正則関数であるいうことにする。また,各Dx。上のXOにおけるf(Xo+z
I
)
の 微分係数f'(Xo
)
を(df)
(Xo
)
でも表すことにする。そのとき,直ちに次の命題が成 り立つ。 命題2.1 f(X), g(X)をM2(C)のある領域D
で定義された擬正則関数とするとき, 次の性質が成り立つ。 (1)d
(
f
+
g)(){)=
(
d
f
)
(
)
(
)
+
(
,
必
)
(
)
(
)
(
2
)
α
をM
2(
C
)
の元とすると, d(af
)
(
)
(
)
=
α
(df)
(X) (3) d(危
)
(
)
(
)
=
(df)
()()g()()+
f(X)(命
,
)
(
)
(
)
A
をM
2(
C
)
の元として,C
からM
2(
C
)
への関数 62「社会とマネジメントJ9(1)・ (2.4)
z~ ~(~J
を考える。この級数は,I~>"A" であるとき絶対収束し,
(2.5)前
J
=
(
1
-z-lAf
が成り立つ。したがって, (2.6)R
(
z
,
A
)
=
Z-l (1-Z-lAt
1=
(
z
I
-
At
1 と定義すると ,(2.6)より,1 A
A
m (2.7)R
(
z
,
A
)
=
ー+-;;-+…+で:-:;-+…z z
-
z
山 ,~が I~>I同|において成り立つ。ゆえに ,
R(z
,
A)
はz=
∞で正則で,位 7)はz=
∞に おけるテーラー展開となる。R
(
z
,
A)
をA
のリゾルベントという。 今,関数 X~f(X) は M2(C) 内のある領域 D で定義された擬正則関数であると て し 対 ザ ﹂ ¥ ・ I l l 1 , jh
ゐ 夕 刊 勾 f i l l -¥一 一
五
点 る あ 。 の る 内 すD
九十ル(~~}
}
i
I
とおくと,上の関数を使ってU
ろからM2(C)への関数。
.8)z~
Xo+(~~J同 f(五 +(~~JJ
を構成できる。この関数を (2.9) と定義する。 擬正則関数の定義より,fx
。(
z
)
はz=oで正則なC
からM
2(C)への関数である。 従って,定理2.3より,適当な正の整数R
に対して,fx
タ)はI
z
l
くR
で次のテーラー 展開をもっ。 z~f
x
o
(
z
)
位.10)。
ゐ
(z)=L~Zk このように,MiC)
内のある領域D
で定義された擬正則関数f(X)からD
の断面.吉本明宣行列変数の解析関数について 64
Dx
。に対応するUx
。上の正則関数f
x
/
s
)
を構成できる。逆に,D
内の l点Xo
に付随 した断面Dx
。に対応するU
x
。で (2.10)のようなテイラー展開をもっ正則関数f
x
o(
z
)
が存在したとする。叫ん
r
)
=
{
X
ED
I
I
I
X
-
X
o
l
l
<
r
}
とおくとき,次の定理が成り立つ。 定理2
.
4
f
x
o
(z)をM
2(1
C
)
内のある領域ある領域D
内の l点Xo
に付随した断面Dx
。に 対応するUx
。上の正則関数とし ,(2.10)のテーラー展開ん。(
z
)
ニ
エ
A
kZ
k
をもっR
に対 して,
u<r<R
なるfをとる。XED
はD(Xo
,
r
)
内にあるとし,C
o=
{
Z
E
I
C
l
l
z
l
=
r
}
と おく。そのとき, (2.11)f
(
X
)
=
去
j
ん。(
z
)
R
(
z
,
X-X
o
)
ゐ
“
,
.
.
Co はD(Xo,
r
)
内のX
において絶対収束し, (2凶f
(
X
)
=
IAk(X
-XS
となる。つまり,f(X)
はf
x
。(
z
)
=
f
(
X
o
+
z
)
のz
にX-Xo
を代入したものになって いる。さらに,この関数はD(Xo
,r
)
内のX
に付随した断面Dx
対 応 す る 叫 上 で 微 分可能な擬正則関数となり,(
d
f
)
(
X
)
=
fkAk(X
-x
o
t
1 証 明 仮 定 よ り ,I
I
X
-
X
o
l
l
<
r
であり,C
o
上で、は,I
z
l
バ
I
X
-
X
o
l
l
で、あるので, (2.7) の下で述べたことから,R(z,
X
-Xo
)
はC
o上で絶対収束する。また,補題 1.1の系 より,s
U
P
I
σ
(X -
X
o
)
l
:
:
:
;
I
医
-
X
o
l
l
であるから,積分 (2.11)は定理の仮定を満たすr
の 取り方に寄らず一定の値をとることがわかる。さらに,C
o上で、はf
x
o
(z)も絶対収束 するので, (2.11)は項別積分可能となり, (2川(
x
-
L
)2
7
7
L
z
k
R
(
z
,
XL)
ゐ
であることに注意すれば,f
(
X
)
=
Z
4
(
X
-
X
o
)
h
であることがわかる。また,補題2.1とfkAk(X
-x
o
t
1がD(Xo
,r
)
内のX
におい て絶対収束することから k~l(
d
f
)
(
X
)
=む
>
A
k
(
X
-x
o
t
1 となる。 (q.e.d)「社会とマネジメントJ9(1)綴 注 意 定理2.4から, (2.11)で定義される
D(X
μ)
上の関数は擬正則関数となるが, 逆は必ずしも正しくない。たとえば, Ax。(z)をDx
。上の定数でない正則関数とする。D
仏 い 酌 点L
中山
}
Z
f
,
W
,
W
f
E
。 に 付 随 し た 叫 い によってD(X
μ)
は埋め尽くされるので,それらの点のD(Xo
,
r
)
内の断面上の正 則関数をAX
,.,W,uf(
Z
)
=
A
x
o
(
Z
)
と定義すると,f(X) =
{
A
x
(
Z
)
I
X
=
X
Z
'
,w,w' ED(Xo
,r
)
}
はD(X
μ)
上の擬正則関数 であるが,積分 (2.11)のように表すことができない。そのことを簡単に述べると次の ようになる。 (2.11)で表される関数は, (2.12)のように右テーラー展開され,D(X
μ)
内の各点X
に付随した断面Dx
で微分可能となる。後の定理3.5で示されるように, (__ (0ωi) ( _ __ (0W i _ / __ ,)fIXo+I~, :II, 1ωε <c, X
l
o
+[ ~
ε
I
D(Xo
,
r
)
I
はω
の正則関数であり,定義からV
lwOJJl
VlwOJ
¥V / }い(~ ~)Jィ(五)となる後の間 5 より f(X) ~iD川吋数と
なるが, これは仮定に反する。 定 理2.4の(2.12)のような展開を持つ関数を右解析的であるといい,そのような展 開を右テーラー展開ということにする。 定理2
.
5
f(X)
を(2.11)によって定義されたD(Xo
,
r
)
上の関数とする。断面Dx
。上 のD(Xo
,r
)
内の無限個の点{X
n}
叫 に 対 し て,f(Xn)=O
であるならば,f(X)
はD(X
μ)
上で恒等的にO
である。 証明 断面Dxo
上の無限個の点{Xn}
院 Nに対して ,f(Xn)=O
であるので,複素正 則関数の一致の定理より,f(X)
は断面Dx
。上で恒等的にO
である。また,定理2.4 より,f(X)
は(2.12)のような右テーラー展開を持つので,f(X)
はD(Xo
,r
)
上で恒 等的にOである。 (q.e. d)3
I
エアロ関数
この節において,擬正則関数よりも少し強い概念を導入する。M
2(<
C
)
内のある l 点Xo
に対して, fx。(z)は複素平面C
内の有界領域Do
上の正則関数であるとする。 さらに,M
2(<
C
)
内の領域Dを次のように定義する。D={X
εM
2(<
C
)
ド
(X-X
o
)
εD
o
}
,
-吉本明宣行列変数の解析関数について 66 ここで,
σ
(
X
)
はX
の固有値である。C
。を領域D
。内またはD
。の境界上のジヨル ダン閉曲線で領域D
内の元X
に対して,固有値σ
(
X-X
o)を全て含むものとする。 そのとき,領域D
上の関数f(X)
を次のように定義する。1
r(
3
.
1
)
f
(
X
)
=読ん。(川
(
z
,
X-Xo)dz
Co このように定義された関数f(X)
を領域D
上のエアロ関数と呼ぶことにする。 注 意 (3.1)のエアロ関数f(X)
の定義はf
x
o
(z)の正則性に依存しており ,f
(
X
)
の定 義領域D
もん。(z)の定義領域から決まる。 命題3
.
1
(
3
.
1
)
で定義された領域D
上のエアロ関数f(X)
はD
上の擬正則関数である。 証明 (2.7)およびその下の注意により,
R(z
,
X-X
o
)
は曲線C
o上で絶対収束する。 したがって ,(
3
.
1
)
で定義された関数f(X)
は,正則関数f
x
o
(z)の最大絶対値の原理か ら,領域D
上で定義された関数となる。また,補題2.1より,
R(z
,
X-X
o
)
はX
の 擬正則関数であることがわかるから,D
内の各点X1
に対する断面DX
,
上でf(X)
は 正則である。 (q.e.d) さて,今度は別の方法で、エアロ関数f(X)
の定義領域D
上の関数を定義しよう。D
内 の各点X
1に対して ,(2.8)の上で定義されたU
x上 の 関 数 丘(z)=
r
f
X
1+
r
~
0
1
1
ム ¥¥UZ 11(
z
εUx
,
)
を考える。fx
,
(
z
)
は,命題3
.
1
よりUX
,
上の正則関数だから,そのテーラー 展開を用いて積分 (2.11)によって定義される関数をgx
,
(X)とする。ただし,その定 義領域は領域D
に含まれるようにとるものとする。定理2.4によれば, (2.10)なる f(z)のフーリエ展開に対して,gx
,
(X)
は (2.12)のような右解析的な関数として表わ される。仮にD
内の異なる 2点X1
,X
Zに対してgX
,(X)
,g
x
2(X)
の定義領域Dl
,Dz
が共通部分を持つならば,定理2.5によって,それらは等しい関数となる。同様にし て,D1uDz
の外にある領域D
内の点X
3に対して,gx
可(X)
を考えることによって関 数 を 延 長 す る こ と が で き る 。 領 域D
は 有 界 で あ っ た の で,D
内 の 有 限 個 の 点XvXz
,…
,X
nによるD
上の関数g(X)
が定義できる。ここで,D
上の関数g(X)
は 点X1
,X
Z,'" ,X
nの取り方によらず一意的に決まることに注意する。 命題3
.
2
領域D
上の関数としてf(X)=g(X)
である。 証明g(X)
を定義する点、達X1
,X
Z,…
,X
nの中にf(X)
を定義したX
。が含まれてい るとしても一般性を失わないので,X
oはその中に入っているものとする。f
x
o
(z)か ら積分 (2.11)によって定義される関数をgx
o
(X)
とするとき,g(X)
はgx
o
(X)
の延長 になっているが,他方f(X)
もgx
o
(X)
の延長になっているので,g(X)
の一意性か ら,f(X) =g(X)
である。 (q.e.d) 注 意 命 題 3.2によれば,エアロ関数の定義 (2.14)はX
。に依らないことがわかる。「社会とマネジメントJ9 (1)鯵 ここまでくれば複素正則関数の場合と類似の次の定理が証明できる。 定 理3.1 M2(
<
C
)
内の有界領域D
上の関数f(X)に関して,次の (i),(ii)は同値で ある。 ( i)f(X)はD上のエアロ関数である。 (ii)f(X)はD
内の各点X
。で右解析的である。 証明 ( i )司(ii ) 命 題 3.2より,f(X)は右解析的な関数より構成される関数g(X)に 等しい。D
内の任意の点X
。はg(X)を定義する点達X1'X2'…,
Xnの中に含まれて いると仮定してもかまわないので,f(X)はX
。において右解析的となる。 (ii )=*( i)f(X)に対して,
D内の各点Xi(i=
1,2,…,
n)から (2.11)によって定義で きる関数をfx/X),
(i=1,
2,
…,
n
)
とするとき,それらから構成できる関数は,命題 3.2よりエアロ関数である。 (q.e.d) 定理2.5の一致の定理は次のように一般イじできる。 定 理3
.
2
f(X)を 領 域D
上のエアロ関数とする。D
内のある l点X
。に収束する det(Xn-Xo)坊 を 満 た す 無 限 個 の 点 列{Xn}院Nに対して,f(Xn)ニo
(Xoを含む) であるならば,f(X)はD
上で恒等的にO
である。 証 明 定 理3.1より,f(X)は点Xoにおいて,適当な正数 rに対して,D(Xμ)
の 範囲で右テーラー展開できる。このとき,Xoに収束するd
e
t
(Xn-Xo}t0
を満たす 無限個の点列{XnteNはD(Xμ)
に含まれていると考えてよい。その右テーラー 展開が以下のようであるとする。 f(X)=
'
t
Ak(X -XSf(Xo)
=
0
であることから,Ao=Oである。帰納法の仮定で、Ao= A1=… = An-l=
0
として,
X E D(Xo,
r),
det(X -Xo)刊の範囲で次のような関数を考える。五(か島(日)す
X-Xof そのとき,Z4(X-x
。)
h
=
f
(
X
)
であることとん(Xo)の連続性より,~=ん(五)=!!曳五 (XK)=!!曳f(Xk)(Xk
-xot=
0
したがって,
XεD(Xわけにおいてf(X)=0
となる。f(X),
(X E D(Xo,
r)),
を解析 接続することによって,f(X)はD
上で恒等的にO
となる。 (q.e. d) 定 理3
.
3
(2.11)によってfx/z)か ら 定 義 さ れ た 領 域 D 上のf(X)は, fx。(z)のzに X - X。を代入したものに等しい。 証 明 定 理2.4より,
XがD(Xo,
r)内にあるときは,
f(X)はfxo(z)のz
にX-Xoを-吉本明宣行列変数の解析関数について 代入したものに等しい。また
,
D上のf(X)はD(Xo,
r)上のf(X)の延長であるので, 定 理3.2より,f(X)はfx/z)のz
にX - Xoを代入したものである。 (q.e.d) 次に,f(X)の右テーラー展開における係数の大きさを評価する。 定理3.
4
M2(C)内のある領域D
の各点で右解析的な関数f(X)がD
内の各点X
。で,I
I
X
-
X
o
l
l
くTなる範囲において, f(X)エ
=
Ak(X一xot を 値 大 最 のX
Ij る 斗 j お ヂ ﹂r
ク 向の
約
一
hm
川 川M
M
一 foz
︿ 一 Z A V H H J 川 付 / ! イ l ¥ 4L
/ r t i t i -t ¥ f r J 一 一z
ム 寺 町
、 少 ﹂ 者 一 の と そ ヲ 匂 。 れ る す き 、 弁 ﹂ 開 ) 展 け とM
が成り立つ。 証明 (3.2) タ h 巳 , G 、 、 , , , , 一 Z一
1 /t ‘ 、 一 十 o v一 ' b 品ん 一
z
ld 刈 l ' a -E , wー 一
制
一 一 -RA
と表示できるので,I
I
A
k
l
1
士事
2
J
T
r
M(r)r
k となる。 (q. e. d) 定 理3.4の系M
2(
C
)
全体で定義されるエアロ関数f(X)が有界ならば,f(X)は定数 である。 証明 定 理3.4より,f(X)の右テーラー展開の係数Akは, (3.3)1
1
判
l
g
4
1
1
を満足する。今,仮定より,任意のrに対して,M(け
::;Mとなる定数M
が存在する ので,すべての自然数 kに対して, (3.4)1
1
判
│
豆
予
となる。さらに, (3.4)におけるr
はf
x
o
(z)が正則である限り大きく取れるので, r→ ∞ と す れ ば,Ak=Oである事がわかる。したがって,f(X)は定数である。 (q.e.d) 68「社会とマネジメントJ9(1). 最後に,定理2.4の下の注意の中で用いたエアロ関数の重要な事実を証明する。
f(X)
を領域D
上のエアロ関数とする。f(X)
に対して, 、 . , , ,X
J 1 ' ¥ l i t -J ノ ¥ t i l l -ノω
0
一 叩 wo ω
一 / I l i -t ¥ 一+
一
X
一
/ I l l i -¥一f
一
m J
叩 r u w一 一
x
- w
と定義して, この極限値が春在するとき,d
微分可能であるということにする。その とき次の定理が成り立つ。 定理3.5 エアロ関数f(X)
はd微分可能である。 証明 定理3.1によれば,エアロ関数f(X)
は右解析的であり,さらに補題2.2を用い れば,f(X)
がd
微分可能であることがわかる。(
q
.
e.d)おわりに
この論文で展開した理論の応用として,楕円関数の一般化やそれに対応する楕円曲 線の一般化を構成することが可能である。また,一般化された関数の等分点を基礎体 に添加した体を考えると,非ア」ベル拡大体が構成され,その相互法則を考察するこ とができる。それらは,別の機会で発表する予定である。 参考文献 [1]φ. P.r
aHTMaxep: The Theory~川ðatrices,1,
11,
Che1sea (1959) [2]杉浦光夫:Jor白且標準系と単因子論, 1, II, 岩 波 講 座 基 礎 数 学 (1977) [3] 千葉克裕:行列の関数とジヨルダン標準形 サイエンテイスト社 (1998).吉本明宣行列変数の解析関数について 70 V回目【著者略歴】ー】』】】』】