Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
マイクロCT による下顎第二乳臼歯歯冠の三次元観察
Author(s)
猪狩, 安豊; 上松, 博子; 坂, 英樹; 岡野, 繁; 井出,
吉信; 阿部, 伸一
Journal
歯科学報, 112(2): 162-162
URL
http://hdl.handle.net/10130/2745
Right
目的:舌は咀嚼,嚥下など口腔の機能に対応し複雑 に形態を変え,周囲組織と協調してその役割を果た している。舌はこの状況に応じた外形変化のため, 舌内部において走行方向の異なる筋線維束が一部交 錯している。この筋線維束の交錯は機能的には重要 な構造であるが,舌の成長過程における形成時期に ついては報告がなく不明である。また,舌の機能を 考察する際には,舌内部における神経の筋内分布を 明らかにする必要がある。舌内部での筋線維束交錯 部位には,機能時強い機械的ストレスが生じている と考えられるが,筋線維束の交錯している部位と交 錯していない部位における神経の分布状態の違いを 観察したものはない。そこで今回舌の機能を考察す るために重要な,舌内部の成長過程における筋線維 束の形成過程の観察と運動神経の筋内分布について 経時的な観察を行った。 方法:観察試料は ICR 系マウスの胎児(胎生12, 14,16,18日)を用いた。摘出した頭部を固定し, 通法に従いパラフィン包埋を行った。続いて,ミク ロトームにて矢状断方向で厚さ5μm の連続切片を 作製した。これに対し,H-E 染色による形態観察お よび神経線維を選択的に染色する抗 S100抗体を用 いた免疫組織化学的染色を行った。観察部位は内舌 筋,オトガイ舌筋,内舌筋とオトガイ舌筋との交錯 部とした。 成績および考察:胎生12日では,内舌筋とオトガイ 舌筋が観察されたが,両者の筋線維束に交錯は認め られなかった。しかし,胎生14日,16日では筋線維 束が交錯し始め,胎生18日では筋線維束の交錯が観 察された。また抗 S100抗体陽染色部位は,胎生12 日では観察されなかったが,胎生14日,16日と陽染 色部位が観察され,その量も増加していった。しか し,交錯部位と交錯しない部位で違いはなかった。 さらに胎生18日では,筋線維束が交錯しない部位に 多くの抗 S100抗体陽染色部位が観察され,筋線維 束の交錯部位の陽染色部位は胎生16日より減少して いた。今回の結果より,出生直前の胎生18日齢で出 生後の授乳に対応するため,筋線維束の交錯という 形態が成獣の形態に近づき,さらに筋線維束交錯部 位の機能時の機械的ストレスを避けるため,交錯部 位の神経分布が減少した可能性が考えられた。 目的:歯冠修復処置を行うに際し,露髄することな く適切な窩洞を形成することが求められる。特に, 乳歯は歯質が菲薄で髄室角が尖鋭であることから, 髄室の形態的特徴を正確に把握し,歯冠外形と髄室 との詳細な位置関係を立体的にイメージできること が重要である。乳歯の歯冠および髄室の形態に関し ては,これまでも報告がなされているが,歯の一断 面における観察,脱灰連続切片による観察など試料 に対して破壊的な方法による検索が主であった。し かし,これらの方法では正確に立体像を構築・把握 することが困難である。 そこで今回は,下顎第二乳臼歯を対象として非破 壊的に立体構築像を得ることができるマイクロ CT を用いて髄室の形態的特徴ならびに歯冠外形と髄室 との位置的関係を三次元的に明らかにすることを目 的として種々の方向から観察を行った。 方法:試料としてインド人小児乾燥頭蓋骨より抜去 した肉眼的にカリエスが認められない下顎第二乳臼 歯(乳歯列期;10本,混合歯列期;10本)の歯冠部 を対象としてマイクロ CT 像を撮影した。なお,乳 歯列期はABCDEが咬合面上に,混合歯列期は1 BCDE6が咬合面上に達した歯列とした。得られ た水平断二次元スライスデータを重ね合わせること により三次元立体構築像を取得した。立体構築像に おいて髄室に着色すると共に,エナメル質と象牙質 に透明度を与え,歯冠外形と髄室との位置関係を 種々の方向から観察した。また,髄室のみを抽出し 形態観察を行った。さらに,乳歯列期と混合歯列期 における特徴を客観的に評価するために歯冠外形に 対する髄室の体積率を計測した。 成績および考察:下顎第二乳臼歯の髄室と歯冠外形 との観察において,乳歯列期,混合歯列期共に歯冠 外形に対して髄室は近心側にシフトしていた。髄室 角の大きさは,乳歯列期・混合歯列期共に近心頬側 髄室角が5髄室角中で最も大きかった。髄室角の高 さは,乳歯列期では近心頬側髄室角と近心舌側髄室 角がほぼ同等で5髄室角中で最も高かった。一方, 混合歯列期では,髄室の形態が乳歯列期と比較する と,頬舌的に狭窄しているのが観察された。歯冠外 形に対する髄室の体積率は,乳歯列期が混合歯列期 より大きかった。 以上の所見から,下顎第二乳臼歯の窩洞形成に際 しては,特に乳歯列期の近心側の露髄に注意が必要 であることが示唆された。