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環境DNA を利用したDaphnia 属の検出と教材化

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(1)

環境 DNA を利用した

Daphnia

属の検出と教材化

Examination of Detection Method of

Daphnia

Using Environmental DNA

佐 田 貴 子

  笠 原   恵

**

SADA Takako

KASAHARA Megumi

 環境 DNA(environmental DNA,eDNA)とは水中・土中などに放出される生息する生物由来の DNA の総称である。環 境 DNA 分析を利用する事で生息域の攪乱を軽減しながら,生息密度の低い希少種や目視しにくい夜行性の生物等の生態 調査が可能となった。この手法をミジンコ(Daphnia 属)に応用するための基礎的研究を行った。  抽出方法の検討のため,サケ DNA を一定量滅菌水に混入し,フィルター濾過と 2 - プロパノール沈殿後のフィルター 濾過での抽出量の比較を行った。結果,1L 程度の採水とその直後のフィルター濾過が良いことが分かった。フィルター の素材とポアサイズが異なる 3 種類のフィルターを検討すると,ポアサイズの異なる 2 種類のグラスフィルター,セルロー ス混合フィルター(MCE フィルター)とも抽出した eDNA 濃度の差は小さかった。経済性を考え,セルロース混合フィ ルターが最適と判断した。ろ紙を Buffer に浸透させ抽出した時と,チューブを 2 重にして Buffer に浸したのち遠心して 抽出液を集めた場合の eDNA 濃度は,浸透させた方が高かった。 

 次に作成したプライマーセット similisND560FR を使用し,1L 瓶で 5 日間 D. similis およびD. pulicaria を飼育した飼育 水からの eDNA の抽出と分析を行ったところ,D. similis 5 匹 /L の密度までは検出可能であった。2.5 匹 /L の密度では プライマーセット eDNA4FR を使用し,2 回連続の PCR をかけると検出可能であった。シーケンスでも目的の領域の配 列が増幅されていることが確認できた。Daphnia 属での環境 DNA 分析は,リアルタイム PCR などの高価な機器を使用せ ずとも高等学校の機器類でおおむね実施可能である事が分かった。 キーワード:環境 DNA,ミジンコ,高等学校,教材開発 兵庫教育大学学校教育学研究, 2019, 第32巻, pp.101-105 1

. はじめに

 水中・土壌中・空気中に放出されている,そこに生息 する生物由来の DNA の総称を環境 DNA(environmental DNA, eDNA)という。環境 DNA 分析は以前より微生 物の調査に利用されていたが,近年マクロな生物の生 態調査に応用する手法が構築されつつある(Takahara ら 2016)。従来の生態調査に比べて労力や時間の大幅な削 減が期待できる事から,従来の生態調査を補完する新た な手法として研究されている(福岡ら 2016,Minamoto ら 2016)。  ミジンコ(主としてDaphnia属)は,小・中学校では 顕微鏡観察に多く用いられている一般的な淡水産プラ ンクトンである(わくわく理科 5 年,未来へ広がるサイ エンス 3)。しかし日周期における鉛直移動があるため, 早朝や夕暮れ時を除き湖沼では日中に採取・観察しにく い現状があった(花里 1998)。また盛夏や厳冬には生育 温度が適さない事から生体数の大幅な減少がある事も 採取を困難としていた(Mizuno ら 1960)。そのため環 境 DNA 分析の手法を用い,時間を問わない生態調査の 方法を確立したいと考えた。また,現行の学習指導要 領(文部科学省 2009)における高等学校生物分野の内 容は,分子生物学の内容が大幅に増加している。環境 DNA 分析は,身近な環境への関心を高める教材である と同時に,一般的な DNA の抽出や PCR 法,電気泳動 等の手法やバイオインフォマティクスな分野を一貫し て学習できる最適な教材である(図 1)。これらを踏ま え,高等学校での実施可能な分子生物学的手法の習得と それを利用した探究活動に繋がる教材開発を目標にし, 環境 DNA 分析を利用したDaphnia属の検出方法につい ての基礎的研究を行った。 2

. 実験方法

(1)eDNA 抽出方法の検討  ① 濾過方法  eDNA の濃縮・抽出には,環境水のフィルターによ る濾過,限外濾過,エタノール沈殿等の方法がある。 限外濾過は専用のチューブ等が必要となり経済的で はない事から除外し,フィルターによる濾過とエタ ノール沈殿からの濾過による eDNA 抽出量の違いを 比較した。以下の A),B)の各手順で濾過し,C)の 手順で eDNA を抽出した。 A) 滅菌したイオン交換水(以下滅菌水)に,サケ (Oncorhynchus keta)から抽出された純 DNA(wako)

を 500 ng/L ま た は 5 µg/L の 濃 度 で 混 入 し た。 eDNA 抽出 採水 PCR での増幅と 泳動確認 eDNA 濃縮 図 1 環境 DNA 分析の流れ 101 *兵庫県立津名高等学校  令和元年7月10日受理 **兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻理数系教科マネジメントコース 教授

(2)

学校教育学研究, 2019, 第32巻

DNA を混入したイオン交換水を Glass microfiber filter(ポアサイズ 0.7 µm/Whatman)(以下 GF/F フィ ルター)を使用し,リユーザブルフィルターユニッ ト(AS ONE)と水流アスピレーターを使って濾 過した。 B) 30 mL の滅菌水に 500 ng のサケ DNA を添加後, 99.8 %の 2 - プロパノール 18 mL を加えボルテッ クスした。その後 GF/F フィルターを使用し,リ ユーザブルフィルターユニットと水流アスピレー ターを使って濾過した。 C) A)・B)それぞれのフィルターを 1.5 mL マイクロ チューブに入れ,Buffer 溶液(Buffer AL (QIAGEN) 又は Tris - EDTA(TE)溶液)400 µL,ProteinaseK  40 µL(QIAGEN)をフィルターに浸透させ,ボル テックスにかけた。ボルテックス後,フィルター を取り除き,DNeasy Blood & Tissue Kit (QIAGEN) の手順に従い,最終量 100 µL で eDNA を抽出した。  いずれもピンセット,濾過装置等は 1 %の次亜塩素 酸ナトリウムで洗浄したのち水道水・純水で複数回 洗浄し,乾燥させたものを使用した。抽出した eDNA は分光光度計(ND - 1000 / Nano Drop)で濃度を測 定した。  ② 濾紙の選択  eDNA の濾過に使用されるフィルターとして GF/ F フィルターを使用してきたが,1.5 mL のマイクロ チューブに入れて使用するには少し厚く,Buffer の浸 透が困難な時もあった。また実際の環境水を試験的に 濾過すると,目詰まりを起こしやすかった。このため 経済性と素材やポアサイズを考慮し,以下の 3 種類の フィルターについて比較検討を行った。  500 ng/L の 濃 度 で サ ケ DNA を 混 合 し た 滅 菌 水 1 L を,A) GF/F フ ィ ル タ ー( ポ ア サ イ ズ 0.7 µm/ Whatman),B) Glass Microfiber Filter (GF/C フィルター / ポ ア サ イ ズ 1.2 µm/Whatman),C) Mixed Cellulose Ester Filter(MCE フ ィ ル タ ー / ポ ア サ イ ズ 0.8 µm/ Membrane Solutions)をそれぞれ使用して濾過し,① C) の手順に従い eDNA を抽出し(以下浸透法という), eDNA 濃度を分光光度計で測定した。  ③ 抽出方法  フィルターからの抽出方法としては,以下の A)・B) 2 種類の方法を比較した。 A) 滅菌水に 500 ng/L の濃度になるようにサケ DNA を混合し,GF/F・GF/C・MCE の 3 種類のフィルター を使用して濾過した。濾過後のフィルターを上記 ① C)の手順に従って抽出した。抽出した eDNA 濃度を分光光度計で測定した。 B) 滅菌水に 500 ng/L の濃度になるようにサケ DNA を混合し,GF/F・GF/C・MCE の 3 種類のフィル ターを使用して濾過した。底に針で穴を開けた 0.5 mL マイクロチューブに濾過後のフィルターを入 れ,そのマイクロチューブをさらに 1.5 mL マイ クロチューブに入れた(以下二重チューブ法とい う)。Buffer AL を 400 µL,ProteinaseK を 40 µL フィ ルターに浸透させ,ボルテックスにかけた。遠心 機(MiniSpin/Eppendorf)を用い 8000 rpm(6500 g) で 1 分間遠心し,1.5 mL マイクロチューブに浸透 液を集めた。その後,DNeasy Blood & Tissue Kit の手順に従い eDNA を抽出し,濃度を分光光度計 で測定した。

(2)プライマーの作成と PCR による増幅

 プライマーの作成には NCBI よりD. similis のミトコ ン ド リ ア DNA の 全 配 列(Accession No.KP721459) を 取得し,プライマー作成ソフト primer3 を用いた。プ ライマーセットの有効性の確認のため,D. pulex,D. pulicaria,D. similis の生体から抽出した DNA を使用し,

96 ℃ 10 秒,(98 ℃ 10 秒,54 ℃ 30 秒,72 ℃ 40 秒)× 35 サイクルの条件で PCR を行った。増幅した DNA を 2 %アガロースゲルで電気泳動し,DNA の増幅の有無 を確認した。 (3)飼育水からの環境 DNA 分析  1L の 広 口 T 型 ボ ト ル(AS ONE) そ れ ぞ れ にD. similis の成体を 5 匹・10 匹・20 匹,D. pulicaria の成体 を 5 匹入れた。餌は初日にのみ 30 µL の生淡水産濃縮ク ロレラω((有)日海センター)を与えた。最低 1 回の 脱皮が行われるのを考慮して,日長時間を 14 時間明 10 時間暗の条件で人工気象器(LH-40CCFL-TMDT/ 日本 医化器械製作所)で 5 日間飼育した。さらに,より自 然に近い環境を再現するため,20 L 水槽に水道水を入 れ,底砂(ベストサンド /GEX),水草としてアマゾン ソード( Echinodorus amazonicus ),金魚藻( Cabomba aquatica ),パールグラス( Hemianthus micranthemoides )

を各 1 束植え,5 日間放置した。その後 2.5 匹 /L の密度 となるよう 50 匹のD. similis を入れた。クロレラは与え ず,5 日間飼育した。  次に個体密度が A)5 匹 /L B) 10 匹 /L C) 20 匹 / L D) 2.5 匹 /L(自然水槽)(以上D. similis ),E)5 匹 /L(D. pulicaria ) となる 5 種類の飼育水槽から 1L の飼 育水を採水した。生体の混入を防ぐため,ナイロンメッ シュ(150 メッシュ,ポアサイズ 108 µm /(株)NBC Meshtec)で濾過したのち,上記(1)① C) の方法で eDNA を抽出し,分光光度計で濃度を測定した。 抽出 した eDNA をサンプルとし,(2)で確認したプライマー セットを用い,3 回繰り返し PCR を行った。その後 2 %アガロースゲルによる電気泳動で目的の DNA の増幅 を確認した。バンドが出なかった場合は PCR 産物を 10 倍希釈し,それを鋳型として 2 回目の PCR (以下 2 nd PCR) を同条件で行い,再度電気泳動で確認した。バン ドが確認されたサンプルはゲルを切り出し,Nucleo Spin Gel and PCR Clean-up (MACHEREY-NAGEL)の手順に 従って精製した後,MACROGEN Japan(京都市)に依 102

(3)

環境DNAを利用したDaphnia属の検出と教材化 頼し DNA 塩基配列を決定した。 3

. 結果および考察

(1)eDNA 抽出方法の検討 ①濾過方法  A)ではサケ DNA を 500 ng/L で混合した滅菌水か ら eDNA を抽出した。抽出した eDNA 濃度は,1.1 ~ 4.5 ng/µL となった。10 倍量である 5 µg の DNA を混 合した滅菌水から抽出すると,その eDNA 濃度は 5.4 ng/µL となった。B) では 2 - プロパノール沈殿後濾過 を行った。抽出した eDNA 濃度は 0.7 ~ 1.5 ng/µL となっ た。これより,わずかであるが A) の方が抽出効率が 高かった。 ②濾紙の選択  3 種類のフィルターで濾過を行い,抽出した eDNA 濃度を比較した。結果,GF/F フィルターで濾過した 場合の eDNA 濃度は 1.3~ 1.8 ng/µL,GF/C フィルター で濾過した場合の eDNA 濃度は 1.1~ 1.3 ng/µL,MCE フィルターで濾過した場合の eDNA 濃度は 1.5~ 1.6 ng/µL であった。結果に大きな差がなかったため,経 済性を考慮すると MCE フィルター(8000 円 /100 枚 程度)が良いと考えられる。 ③抽出方法  A)では②の通り,浸透法を使用した場合での eDNA 濃度は,GF/F フィルター使用時では 1.3 ~ 1.8 ng/µL,GF/C フィルター使用時では 1.1 ~ 1.3 ng/µL, MCE フィルター使用時では 1.5 ~ 1.6 ng/µL となった。 B)の二重チューブ法で抽出した場合の eDNA 濃度は, GF/F フィルター使用時は 0.4 ~ 0.9 ng/µL,GF/C フィ ルター使用時は 0.8 ~ 0.9 ng/µL,MCE フィルター使用 時は 0.5 ng/µL であった。いずれのフィルターを使用 しても,浸透法で抽出した方が eDNA 濃度が高かった。 (2)プライマーの作成と PCR による増幅

 NCBI よりD. simiisのミトコンドリア DNA の全配 列(Accession No.KP721459) を 取 得 し, プ ラ イ マ ー 作 成 ソ フ ト primer3 を 用 い て,ND5 領 域 付 近 の 560 bp を 増 幅 す る プ ラ イ マ ー セ ッ ト similisND560F ( 5ʼ- TCCCTGGGTCTAGGACCATC -3ʼ ) , similisND560R ( 5ʼ-CTGGCGTACCCCTGCAA - 3ʼ )  を 作 成 し た。 同 様に 16S rRNA 領域付近の配列を使用し,プライマー セット eDNA4F ( 5ʼ- GGTCGCAAACCTTCTTATCG -3ʼ ), eDNA4R ( 5ʼ- GTTGGGGCGACAGAGAGTAA -3ʼ ) を作 成した。

 D. pulex,D. pulicaria,D. similis, の 生 体 か ら 抽 出 した DNA を使用し 96 ℃ 10 秒 , (98 ℃ 10 秒 , 54 ℃ 30 秒 , 72 ℃ 40 秒) × 35 サイクルの条件で PCR を行い, 2 %アガロースゲルで電気泳動を行った。その結果, similisND560FR プライマーを使用するとD. similis にお いて約 560 bp のバンドが確認できた(図 2)。他の 2 種 においては 100 bp のバンドが確認された。eDNA4FR プ ライマーを使用するとD. pulex,D. pulicaria,D. similis, すべてで約 150 bp のバンドが確認された(図 3)。 (3)飼育水からの環境 DNA 分析  まず A)5 匹 /L,B) 10 匹 /L,C) 20 匹 /L の飼育水か らの環境 DNA 分析を行った。飼育 5 日後のD. similis の現存数は 0 日と同数の 5 匹,10 匹,20 匹であり,仔 虫の産出及び死んだ個体はなかった。1L の飼育水から 抽出された eDNA 濃度は A) 5.5 ng/μL,B) 12 ng/μL, C) 10 ng/μL,であった。プライマー similisND560FR を 使用して 3 回の繰り返し PCR をした結果,いずれも約 560 bp のバンドが確認された。図 4 ① ~ ⑨までのバン ドの長さがポジティブコントロールより長く見えたが, 確認できたバンドの塩基配列を決定した所,いずれもD. similisの ND5 領域が増幅されていた。  次に D) 2.5 匹 /L の水槽,E) 5 匹 /L(D. pulicaria )の 飼育水からの環境 DNA 分析を行った。5 日後の D) の 現存数は,死んだ個体数が確認できなかったため,正 確な生育数は分らなかった。E) は産仔の結果,40 匹以 上の生存が確認できた。抽出された eDNA 濃度は D) は 10.8 ng/μL, E)は 15.0 ng/μL であった。これらの eDNA を鋳型としてプライマー similisND560FR を使用し PCR を行った。1 回目では 560 bp のバンドは確認できなかっ たため,PCR 産物を 10 倍に希釈し,2 nd PCR を行ったが, 図3 生体から抽出したDNAを使用してのプライマーの確認 (プライマーeDNA4FRを使用)

①D. pulex ②D. pulicaria ③D. similis すべての種で150bpのバンドが増幅した。

図2 生体から抽出したDNAを使用してのプライマーの確認 (プライマーsimilisND560FR使用)

①D. pulex ②D. pulicaria ③D. similis

D. similisではおよそ560bpのバンドが増幅した。 ① ② ③ M 500bp 1500bp 150bp ① ② ③ M 500bp 1500bp 560bp 200bp 図 2 生体から抽出した DNA を使用してのプライマー の確認(プライマー similisND560FR 使用)    ①D.pulex ②D.pulicaria ③D.similis     D.similisではおよそ 560bp のバンドが増幅した。

図3 生体から抽出したDNAを使用してのプライマーの確認 (プライマーeDNA4FRを使用)

①D. pulex ②D. pulicaria ③D. similis すべての種で150bpのバンドが増幅した。

図2 生体から抽出したDNAを使用してのプライマーの確認 (プライマーsimilisND560FR使用)

①D. pulex ②D. pulicaria ③D. similis

D. similisではおよそ560bpのバンドが増幅した。 ① ② ③ M 500bp 1500bp 150bp ① ② ③ M 500bp 1500bp 560bp 200bp 図 3 生体から抽出した DNA を使用してのプライマー の確認(プライマー eDNA4FR を使用)    ①D.pulex ②D.pulicaria ③D.similis      すべての種で 150bp のバンドが増幅した。

(4)

学校教育学研究, 2019, 第32巻 560 bp のバンドは確認できなかった。eDNA4FR プライ マーを使用し PCR を行うと,D) 2.5 匹 /L には約 150 bp のバンドが確認できなかったが,E) 5 匹 /L にはバンド が確認できた。2 nd PCR を行ったところ,図 5 の様に D),E) 共に約 150 bp のバンドが確認できた。確認でき たバンドの塩基配列を決定した所,D) はD. similis の,E) はD. pulicaria (D. pulex)の目的とする 16S rRNA 領域が 増幅されていた。similisND560 と eDNA4FR を使用した 際の結果の違いは,eDNA より増幅された DNA の長さ と分解者の量によるものと考えられる。eDNA は分解者 や水環境にある DNase によって速やかに断片化されて いくが,より長い eDNA の方が分解される確率が高く, eDNA の抽出量によっては PCR で増幅できなくなって いる可能性がある。D) がより自然にちかい水槽を用い たことで分解者が 1L ボトルよりも多く,eDNA の断片 化が進んだため 560 bp の長さは存在しにくかったと考 えられる。環境 DNA 分析の成功には,より短い eDNA を増幅する方が,分解者による eDNA の断片化を確率 的に回避する事ができ,成功に繋がると思われる。その 点,150 bp は適当な長さであると考えられる。  以上より 2 回連続で PCR を行う事により,高等学校 の設備・内容でDaphnia 属の検出が可能である事が分 かった。 4

. おわりに

 環境 DNA 分析は水中の標的生物の有無を,水を採取 するだけで検出できる手法である。環境 DNA 分析の実 験系では,一般的な DNA の抽出や PCR 法,電気泳動等 の手法やバイオインフォマティクスな分野を一貫して 学習する事ができる。本研究により,身近な生物種であ るミジンコにおいて,高等学校の設備・内容でDaphnia 属の環境 DNA を検出できる事から,身近なため池や湖 沼といった環境への関心を高め,同時に分子生物学の内 容を学ぶ事ができる教材となりうることが分かった。 5

. 謝辞

 環境 DNA 分析の第一人者である神戸大学大学院人間 発達環境学研究科源利文准教授ならびに研究室の皆様 には,多くの知識や示唆をいただきました。この場を借 りて厚くお礼申し上げます。

引用文献

文部科学省.2009. 高等学校学習指導要領 理科 福岡有紗 , 高原輝彦 , 松本宗弘,兵庫県立農業高等学校 生物部,丑丸敦史,源利文 . 2016. 在来希少種カワバ タモロコの環境 DNA による検出系の確立 . 日本生態 学会誌 66:613–620. 花里孝幸 1998. ミジンコ その生態と湖沼環境問題. 名古屋大学出版会. 石浦 章一 , 鎌田 正裕 ほか 54 名(2016)わくわく理科  5 年 啓林館 . 平成 26 年検定 .

Minamoto, T., Naka, T., Moji,K., and Maruyama, A. 2016. Techniques for the Practical Collection of Environmental DNA: Filter Selection, Preservation, and Extraction. Limnology 17(1): 23–32.

Mizuno, T., Hata, S., and Kono, I. 1960. Daphnia pulex の季

図4 飼育水からの環境DNA分析(プライマーsimilisND560を使用) ①~③ 5匹/L ④~⑥ 10匹/L ⑦~⑨ 20匹/L ⑩ポジティブコントロール(D. similis生体DNA) ⑪ネガティブコントロール ①~⑨までのバンドは⑩より長く見えるが、シーエンスを行うと全てD. similisの ND5領域が増幅されていた。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 560bp M 500bp 1500bp 図5 飼育水からの環境DNA分析(プライマーeDNA4FRを使用) ①~③ 2.5匹/L(自然水槽/D. similis) ④~⑥ 5匹/L(D. pulicaria) ⑦ポジティブコントロール(D. similis生体DNA) 約150bpのバンドが増幅されていた。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 150bp M 500bp 図 4 飼育水からの環境 DNA 分析(プライマー similisND560 を使用)    ①~③ 5 匹 /L ④~⑥ 10 匹 /L ⑦~⑨ 20 匹 /L     ⑩ポジティブコントロール(D.similis生体 DNA) ⑪ネガティブコントロール     ①~⑨までのバンドは⑩より長く見えるが,シーエンスを行うと全てD.similisの ND5 領域が増幅されていた。 図4 飼育水からの環境DNA分析(プライマーsimilisND560を使用) ①~③ 5匹/L ④~⑥ 10匹/L ⑦~⑨ 20匹/L ⑩ポジティブコントロール(D. similis生体DNA) ⑪ネガティブコントロール ①~⑨までのバンドは⑩より長く見えるが、シーエンスを行うと全てD. similisの ND5領域が増幅されていた。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 560bp M 500bp 1500bp 図5 飼育水からの環境DNA分析(プライマーeDNA4FRを使用) ①~③ 2.5匹/L(自然水槽/D. similis) ④~⑥ 5匹/L(D. pulicaria) ⑦ポジティブコントロール(D. similis生体DNA) 約150bpのバンドが増幅されていた。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 150bp M 500bp 図 5 飼育水からの環境 DNA 分析(プライマー eDNA4FR を使用)       ①~③ 2.5 匹 /L(自然水槽 /D.similis) ④~⑥ 5 匹 /L(D.pulicaria)        ⑦ポジティブコントロール(D.similis生体 DNA)        約 150bp のバンドが増幅されていた。 104 104

(5)

環境DNAを利用したDaphnia属の検出と教材化

節的消長とその要因分析Ⅰ 生活環と水温の関係 . 日本 生態学会誌 10(1): 1–6.

NCBI サイト  https://www.ncbi.nlm.nih.gov

Takahara, T., Minamoto, T., and Doi, H. 2016. 環境 DNA 分 析の手法開発の現状 ~淡水域の研究事例を中心にし て~ . Ecological Research 66(3): 583–599.

塚田捷 他 61 名(2017)未来へひろがるサイエンス 1・ 3 啓林館.平成 27 年検定 .

参照

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