社
会
系
教
科
教
育
学
会
『社
会
系
教
科
教
育
学
研
究
』
第24
号 2012
(p.125-126)
【課題
研
究報
告
】エネルギー・環境問題をめぐる不易と流行
一厂
社会科教育でも,社会科教育で
しか,社会科教
育でこそ」−
(2012
年
2
月19
日開
催)
I
問題の所在
−エネルギー
・環境問題
をめ
ぐ
る二つの立場
と社会科教育実践者の専門性
−
「あと30
∼40
年で石油が枯渇する。
」このよう
な専門
家の言葉
を我々は社会科教育実践者と
して
無批判に事実
として用いた
りは
しなか
ったか
。何
か匚
○○問題
」が起
こる度にそれ
(流行
)
に飛びつ
き
,匚
○○教育」という名のもと,結果的にでは
あれ
,授
業を通
して推進
,反対いずれかの
立場に
荷担
しは
しなかったか
。 3.
nに関わる一連の問題
が
,専門家の言葉の信頼性
を大きく揺るが
したよ
うに
,社会科教育実践者の専門家としての
あり方
を問う必要が
あるのでは
ないか
。
この
ような問題の所在か
ら
,エネルギー
・環境
問題を社会科教育と
してどのように捉
え
,どのよ
うな社会科の授
業を開発
し
,実践
を行
うか,大き
く二つに分ける
ことができる
。社会問題
を目的
と
する立場
と方法
とする立場である
。
前者は,
3.11
に関わ
るエネルギ
ー
・環境問題
を,
匚
社会科教育でも
」より積極的に取り上げ,教育
内容化
し
,子どもたちに議論
させ
,提
案,参加で
きるようにすべ
きだ
。市民的資質,公民的資質の
育成をめざす匚
社会科教育でこそ
」
,直接的にこ
の問題に関わ
っていくべ
きだ
,という立場である
。
後者は,
3.11
に関わ
るエネルギ
ー
・環境問題に
間接的に関わ
り
,論争問題を手段と
しなが
ら,そ
の中にみ
られ
る概念や価値を分析
,習得
させよう
とする
。その過程で,子
どもたちに問題解決の難
しさ
を再認識
させ
,問題
を問題
と
して捉
えさせ
る。
そ
して学習する前よ
りも
一段深
いところで迷
い,
より将来にわ
たって探求できるようにする
。行動
については消極
的と言われ
ても行動する前によ
り
粘
り強
く子どもたちに問題に向き合わ
せる
。この
ことに
会科教
こそ
育でこそ
,匚
社会科教育で
」なすべ
き方向性があるのではな
しか
」できない,
「 ̄
社
中
本
和
彦
(四天王寺大学)
いか
,と考える立場である。
H
社会問題批判学習
と授
業モデル
本発表では
,新
しい社会問題の解釈そのもの
を
習得する
ことを目的とす
るのでは
なく
,解釈の過
程
を通
して必要となる理論
(概念
)の習得や立場
のちが
いなど
,社会についての深
い理解
を目的と
する
。すなわち
,社会認識体制を深化
・拡大させ
ることを目的と
し
,社会問題はそのための手段
と
する学習モデル
を示
した
。それ
は,いわば匚
社会
問題批判学習」とでも
いう学習である。
剛単元の
目標
①
フクシマの事故に
ついての
現状
を理解する
。
②
−
1
社会問題は立場の違
いによってそれ
ぞれ
問題と
しての現れ方が異
なる
ことを理解する
。
②
−2
社会問題
を自己の
問題と
して理解する。
②
−3
社会問題の
現れ
方に
ついてメタ認識する
。
③
日本の原子
力政策推進の背景を探求する
。
④
限界概念を習得する
。
⑤
④
を活用
して費用便益分析
を習得す
る
。
⑥
④⑤
を活用
して社会問題についての
認識
を深
めるとともに
,取得
した理論の限界性,価値観
の問題に気付
く
。
(2)
単元構成
(次頁)
(授
業展開は発表
レジュメ
を参照願
いたい。
)
Ⅲ
本発表の意義
本発表は
,授業モデルの提示によって
,以下の
三つの意義を示す
ことが
できた
。
①
社会問題が事実
,理論
,価値の
レベルにお
い
て構成
されるものであることを認識させる授
業
モデル
を示
したこと。
②
社会認識形成の成長を図る授
業モ
デルを示
し
た
こと
(次頁下図参照)
。
③
する授
可謬性の認識と知的廉直
業モデル
を示
したこと。
,科学的態度
を育成
125
(2)単 元 構 成 時 学習 過 程 主 な 問 い 第 一 次 ① 導 入 心 問 題 の 自 己 内 部 化 心/ 学 習課 題 の提 示 ( 問題 解 釈1) 事実 の習得 (問 題 解釈 2) 回 福 島第 一原 子力 発電 所 の事故 と は, い っ たい ど んな 問題 だ とい え るで し ょう ? ○ まず, 福 島 第一 原子力 発電 所 の ̄事裁 ̄と ̄芒 ̄浴後 につ い て, ど んな こ と かお こ った, あ るい はおこ っ てい る でし ょ う ?調 べて み まし ょう。 (回)福 島第 一原 子力 発 電所 の事故 と は, い った い どん な 問題 だ といえ る でし ょ う ? ② 問題 の個別 化 自己 の問題 化 (問 題 解釈 3) 問題 解 釈過 程 のメ タ認 識 ○福 島 の子 ど もや大 人 た ちに と って, 福 島 第一 原子 力 発電 所 の事 故 とは, い っ たい ど んな 問 題な のでし ょ う ? ○中 小企 業 の工 場 の人 に とっ て, 福 島第 一原 子力 発電所 の事故 とは, い っ たい ど んな 問題 な ので し ょう ? ○関 西 の50社 の企業 は, 福島 第一 原 子力 発電 所 の事 故 によ っ て議 論さ れてい る 原子力 発電 につい て どう 考え て い る のでし ょ う ? ○お 父さ ん か東 電 で働 い てい る ゆう だい 君 に とって , 福 島第一 原 子力 発 電所 の事 故 と は, い っ たい ど んな 問題 な ので し ょう ? ○あ な たに と って, 福 島 第一 原子力 発電 所 の事故 とは, い っ たい ど んな 問題 だ と思 い ます か ? (9)福 島第一 原 子力 発 電所 の事故 と は, い った い どんな 問 題 だ といえ る でし ょ う ? ○ど うし て そう 思 った の です か ?説 明し て くだ さい 。 第 一 一 次 ③ 理 論 の 習 得 日本 の原 子力 政 策 の 探求 ○ な ぜ , 日 本 は , 事 故 の 危 険 を 冒 し て ま で 原 発 を 推 進 し た の で し ょ う ? ○ な ぜ , 実 際 に 事 故 が 起 こ っ た り , 放 射 性 廃 棄 物 が 出 て , そ の 処 理 に 膨 大 な お 金 と 時 間 が か か る と い う デ メ リ ッ ト か あ る の に , 原 子 力 発 電 を 進 め た の で し ょ う ? = J = = = = = = = = = = 〒〒 y冒冒¶冒¶ -■一冒■ -■ - - ■■■■■邏一膕 a a = = J = J = = = = - = = = = = = = = 〒¶ y , y r ¶冒■冒冒冒冒■冒■冒 -■ -■邏■■ -■■■ g = - = U J = = = = 亠 = - 〒 = J = = = = = = ¶〒 r冒 y¶ 冒一冒一冒■■冒■ -■■邏■■■ - a 畆 a』亠 = - = - J = = = = J = = = = = ■■ ④ 深化 し た問 題 の設定 (問 題 解釈 4) 限界 概 念 の習 得 ( 限 界効用 逓 減) ( 限 界費 用逓 増) 限界 分 析 の吟 味 <教 室掃 除 の シミ ュレ ー ショ ン > ○活 動1 回 1回 で, 徐 々 に満足 が 得 ら れたこ とを 何 と言 う でし ょ う ? ○ま た, 活動 1 回 1回 で, 徐 々に 時 間や 手 間が かか っ たこ とを 何 と言 う でし ょう ? ○ みんな は, 今 回 の教 室 のゴ ミを 拾 う掃 除 は, 何回 ま で の労力 ( 費用 ) で満 足 か得 ら れる もので し たか ?な ぜ そう 思 った の か, 理 由 も教え て くだ さい 。 ⑤ 費用 便益 分 析 の習 得 ( 費用 と効用) ( 限 界分 析) ( 限 界費 用逓 増) ( 限 界効 用逓 減) ( 費用 便益 分析) <元 気 町 の町長 の悩 み「 どこ まで キ レイ にす ればよ い のか ?」 > ○浄 化 の費用 と利益 には具 体 的 に何 かあ る か。 ○費 用 と利益 を 考え 合 わせ る とい う こと は どうい う こ と ? ○浄 化 の度合 い を高 める と, な ぜ 費用 が ます ます か か るよ う にな る のか ? ○浄 化 の度合 を 高 める と, な ぜ利 益 は次 第 に減 って く る のか ? ○ど の程 度 まで 浄化 す れ ばよい だ ろ うか ?そ れはな ぜ か ? 第 一一 一 次 ⑥ 理 論 の 応 用 解 釈 費用 便益 分 析 の応用 ( 費用 と効用) ( 限 界分 析) ( 限 界費 用逓 増) ( 限 界効 用逓 減) 費用 便益 分 析 の応 用 の吟 味 問題 の再解 釈 (問 題 解釈 5) ○ 厂○電力 確 保 に よる 経済 的な 安 定 と原 発 のない 安 全な 暮 らし を守 る に は, どう し た らよ い ので し ょう ?」 という 問 いに 対 して, 費 用 便益 分析 が活用 で きる か どう か, 考え て い き まし ょ う。 ○具 体的 に, 費 用 便益 分析 の シ ミュレ ーショ ンに当 て は めて考 え る と, レモ ン 湖が キレ イ に な るこ と と,浄 化 に かか る費 用 に該 当す る も のは 何だ ろ う? ○費 用 と利益 には 具体 的 に何 かあ る だろ う か ? ○費 用 と利益 を 考え 合 わせ る とい う こと は どうい う こ と ? ○安 心 の度合 い を高 める と費用 が ま すま す かか るよ う にな る とい える か ?そ れ はな ぜ か? ○安 心 の度合 を 高 める と, な ぜ利 益 は次 第 に減 って く る のか ?そ れ はな ぜか ? ○費 用 便益 分 析 は, 匚○電力 確 保 によ る 経済 的 な安 定 と 原発 のな い安 全 な 暮 らし を守 るに は, どう した ら よい ので し ょう ?」 に 活用 で き るだ ろう か ? ○ 電力 確 保 に よる 経 済的 な安 定 と 原 発 のな い安 全 な 暮 らしを 守 る に は, どうし たら よい の でし ょう ? − 一 一 ← 探 求 習 得 一一 一一---( 授 業 前 の 知 識) ⑥問 題 解 釈 5 ④ 問 題 解 釈4 4 一一 一一● ② 問 題 解 釈 3 ①問 題 解 釈 1