社 会 系 教 科 教 育 学 会 『 社 会 系 教 科 教育 学 研 究 』 第13 号 2001 (pp.9-19)
意 思 決 定 の 過 程 を 内 省 し , 認 識 の 社 会 化 を は か る 社 会 科 授 業
Designing' a Teaching Plan m Social Studies, Focusing Students' Reflecting on Their
Decision Making Process and Socializing Their Understanding".
豊 嶌 啓 司
(福岡教育大学教育学部附属小倉中学校)
は じ め に
戦 後 , 社 会 科 が 新 教 科 と し て
創 設 さ れ て 以 来 , 匚社 会 科 授 業 を
如 何 に つ く る か」 様 々 な 授 業 論
を も っ て 議 論 さ れ て き た 。 そ し
て , そ の 多 く は 匚社 会 の 何 を ど
の よ う に 教 え る か 」 と い う ス タ
ン ス か ら 匚授 業 の 論 理 」 に 照 射
し た も の で も あ っ た。 そ こ で は,
「 ̄
子 ど も は社 会 を ど の よ う に 学 ぶ
か 」 と い う 「 子 ど も の 心 理 」 が
十 分 考 慮 さ れ て こ な か っ た の で
は な い か 。 確 か に 社 会 科 の 授 業
を つ く る こ と と は , 最 終 的 に
厂如 何 な る 内 容 を 如 何 に 配 列 す る
か」 に 帰 着 を み る 厂
( 社 会 科 ) 授
業 の 論 理 」 を 確 立 す る こ と で あ
り , こ の 教 科 が 抱 え る 問 題 の 基
幹 部 分 そ の も の と い え る 。
し か
し , 社 会 科 が 授 業 論 と し て 成 立
し 学 術 に 貢 献 す る 前 提 と し て ,
社 会 科 は 教 育 活 動 と し て 成 立 し
子 ど も に 貢 献 し な け れ ば な ら な
い は ず で あ る 。 教 室 で 子 ど も と
共 に 社 会 科 の 授 業 を つ く る 実 践
表 1 .
社会 的な 見方・ 考え 方 の分析 による 社会科 授業論 類型
育成する認識 事実的味方・ 考え方巫視 価値的な味方・考え方巫視
授業論の類型 理 解 型 説 明 型 問囲解決型 意思決定型
社 会 認 識 の
具体的な記述
「 ∼なので,∼である」
「 ∼(民主主義・平和主義)なので,∼すべき」
「人間は∼のために,
∼をする」 「 社会的事象は∼なので,∼である」
見方・ 考え方の
理 論 基 盤
人間 ( 個人・集団 ・
組 織体) の
行為と その結果 の事実問題 解決的
を 体験・ 追体験・ 理解
させることを通し て育
成される, 社 会生 活に
関する見方・考え方
社 会的事象を 科学的
に説明させることによっ
て, 事象を 脱明し解 釈
す る理論であ る「社 会
認 識体制」 として の見
方・考え方
子供や 社会の 問題を
取り上げ,それを知的・
実賎 的に解決さ せるこ
とを迎 して,知 識・理
解, 態度, 能力 か結 び
ついた見方・ 考え方
社 会的な 論争問 皿を
取り上げ, 目的・ 目標
を 達成 するため の最も
合理的な手 段・方 法を
判断する ための 見方 ・
考え方
見方・考え方の
分 析 的 視 点
① 人 間の問題場 面で
の行為 につい ての理
解
② 行 為を 目的 と手段
の関係 から説 明する
目的論的理解
③ 結果 として, 人々
の生活は維持・向上・
発展し たという, 行
為の社 会的憲 味につ
いての理解
④ 行為は その後の社
会の生 活の維 持・向
上・ 発展に も役立 つ
ている という, 行為
の歴史 的意義 につい
ての理解
⑤
て,各地域, 各時代,人 間の行 為によ っ
各社 会領域 は他と は
異な るすぐ れた個性
( 特色)を 生み
いる という 特色につ出して
いての理解
① 社会的 事象がな ぜ
生じ たの かの原因 究
明を 行う 見方・考 え
方
② 社 会的事象がど う
な るかを予 測する 見
方・考え方
③ 社 会的事象を 説
し 解釈 するため の科明
学的知識である概念・
法 則・理 論とし て見
方・考え方
① 問題の事 実に関 す
る見方・考え方
② 問題の原 因につい
ての見方・ 考え方
③ 問題解決 の
関わる見方・考え方判断 に
① 論 争問題 の事 実と
原因に関 する 見方・
考え方
② 達成すべ き目 的・
目標についての見方・
考え方
③ 枚数存在する手段・
方法( 行動案) の中
からより 望ましい も
のを選択・ 決定 し,
それを 根拠づ ける見
方・考え方
推 進 基 盤 学習指導要領
安井俊夫氏ら 森分孝治氏ら
社会科 の初志 をっ らぬ
く会
日本生活教育辿盟
エ ングル,メト カーフ,
オリバ ー,シェイバー,
マシヤラス,カルトソー
ニ ス,バースら
哲 学 的 基 盤
W. ディルタイの解釈
学 におけ る歴史的生 な
ど, ド イツ精神科学 派
の「理解J Verstehenの
理 論に基づ く。追 体験
し「 意味( ①事象を生
み出し た意図・目的・
志 向, ②事象か全 体的
関辿 の中で もつ価値)」
を理解する。
K. ボパ ーら の批判的
合理 主義 の科学 論 に基
づく。理論(仮脱)を,
事 例に基づ き吟 味・ 修
正 (反証) してい く過
程を へて発 見・ 習得 し
て い く合 理 的 手 順 に
「科学的」の基準をおく。
J. デューイらのプ ラグマティズムに基づく。
「 認識は経験,つまり環境との相互作用である」
との考えに強く彫容を受けた経験主義の方法原理。
者 と し て ,「 何 を 考 え さ せ る か」 ※ 小原友行1998「社会的な見方・ 考え方を育成する社会科授翦 命の革新」, 社会系教科教育学会『社会系教科教育学研究』
第10号pp.5-5 などを もとに筆者作成 _
内 容 あ っ て の 社 会 科 で あ る こ と
は必 要条 件 と して いう まで もない が,「 ど のよう
にして 考え させ るか」 活 動 のプ ロ グラ ムで ある こ
と も欠 か せない授業 づ くり の十 分条件 と考え る。
本小 論で は, 社 会科を 学ぶ「 子ど もの心理」 に
重 きを 置 き,「 社会 認識 形成 と市民 ( 公民) 的 資
質 の統一的 育成」 を視点 に問題 を整理 し た後, 両
− 9−
者 の統一 的育成 を めざ す方 法原理 を 厂
意思決定」
型社会科 学習 に求 める。 その際, 既 に実 践さ れて
き た 匚意思決 定」型 授業 について , ①意思決 定過
程 の内省, ②認 識 の社会 化, の2点 から改善 し た
授業計 画を提 案す る。
1 。 こ れ ま で の 社 会 科 授 業 論 の
ど こ が 問 題 な の か , な ぜ そ れ
が 問 題 な の か
(1) こ れ ま で の 社 会 科 授 業 論 が
孕 む 実 践 上 の 問 題 点
こ こ で は , こ れ ま で 様 々 に 主
張 さ れ て き た 社 会 科 授 業 論 が 実
際 の 授 業 実 践 に か か わ っ て 孕 む
現 実 的 な 問 題 点 は 何 だ っ た の か ,
研 究 者 が 明 ら か に し て き た 点 を
も と に , 筆 者 が 実 践 的 反 省 を 加
え , ま と め て み た ( 表 2)。 そ の
際 , こ れ ま で の 社 会 科 授 業 論 を
匚問 題 解 決 型 」「 理 解 型 」 匚説 明 型
( 科 学 探 求 型 )
」 匚意 思 決 定 型 」 の
4 タ イ プ に 代 表 さ せ た 譫I こ れ ら
4 タ イ プ の 社 会 科 授 業 論 を 定 義
付 け る た め , 小 原 氏 が 主 張 す る
社 会 的 な 見 方 考 え 方 の 分 析 を も
と に 作 成 し た タ イ プ ご と の 概 略
を , 以 下 の 表 凵 こ整 理 し 確 認 し
て お く 。
こ れ ら の 授 業 論 は ど れ
も, 学 び 手 の 発 達 段 階 ・ 分 野 ・
表 2. 社会 科授業 論類 型に みる 実践上 の長所 ・短 所
授業諭の羝型 理 解 型 説 明 型 問皿解決型 意思決定型
長 所
M1:知識と態度の同時形
成を保証
M2:1つの社会的事象を
社会 的・歴史 的な全 体
の中 で総合的 に理解 す
る能力 の形成
M3:同心円的拡大原理 に
基づ くカリ キュラ ム樹
成が有効
M4:「理解」の過程・方
法 は, 日常生 活でか か
わっ ていく過 程と近似
してい るので, 学習過
程が子 ど もた ちになじ
みやすい。
M5:追体験という方法は,
学習を主体的 にする。
MI:学習者 か科学 の研究
成 果を生 み出し た過程
に主体的 に参加 するこ
とを通して, 科学 の基
本 的な概念, 探究 の方
法 を獲得 すると ともに
科 学的な態 度を形 成す
る。
M2:認識の内容と方法を
明 砲である ため, 短い
スパン の授業 過 程から
長 い スパ ンの年 間指 導
計 画とい ったカ リキュ
ラム化か比 較的容 易で
ある。
M3:子どもの対話(脱明)
的活 動により, 知 識か
問主観的に吟味される。
この意味で, 授業 は知
識 の成長過 程となり う
る。
M1:見学・調査という学
習方法 により, 子ど も
の常 識的観念 では実態
を 脱明でき ないことを
眼 の前 の事実で 示し,
素朴 な疑問を生 じや す
くさ せ, 自 ら疑問を 解
こうと意欲させる。
M2:子どもたちの心理的
発達系 統に基づ いて学
習を計 画するた め, 社
会的事 象を自 分の問皿
として とらえや すく,
学習 が主体化さ れやす
い。
M3:単なる事実の記憶・
説明・ 抽象概念 の把握
より も, まず子ど もた
ちか事実, 目的, 推論
を使 って知識を 再組織
化す ることが可 能とな
る。
M1:科学的な事実認識と
反省的 に吟味さ れた価
値 判断 に基 づいて の学
習 は, 社会認識 の形成
と公民的 資質 の統一的
育成か可能。
M2:国際化,情報化,少
子 高齢化, 地球環 境の
悪 化など の社会論 争問
題 が内容と なり, これ
か らの時代 を生 きる市
民 (公民) に求 められ
る資質や能 力か育 まれ
る。
M3:実践的判断を行う学
習 が, 自 己の未来 の生
き方の追求として継続・
発展する。
短 所
D1:社会的事象を分析す
る概念 や理論 にとぼし
い。
D2:子ど もだちか追体験
的に追求 しえ ない社会
的事象 (恐慌 や峨争な
ど) は学習しにくい。
D3:客観化された文化を
「理解」するというのが
この理 論の中心 的課皿
なので, 与え られた学
習内容を受 容す る授業
となる傾向かある。
D4:授業 過程が意味把握
や価値づ けで終 わるの
で, 社会の学習 が道徳
主 義的 となる恐 れがあ
る。
D5: わからせようとする
社会的事 象を象 徴する
キー・パ ーソ ンが存在
しないと成立しない。
D6:既 に完結した行為へ
の意味付 けに終始 して
しまいがちになる。
D1:依拠 する社会科学 の
認 識内容や 認識方法 の
目的 化・固定 化 に陥る
可能性かある。
D2:社会諸科学 の成果と
して の手統 きや内容,
すなわち授業 の 匚論理」
と子 ど もの社会認識 の
「心理」との隔たりがで
きて しまう可 能性が あ
る。
D3: 公民的資質 として の
価値 関係的 な態度形 成
を極端 に軽視, もし く
は無視する傾向に陥る。
D4:将来 の学び手 が日常
生活 におけ る社会実 践
で目 指すゴ ールは必 ず
しも科学者ではないo
D5: 「 脱明」型 と冠 され
てい るほど対 話的活動
が重 視さ れて こなか っ
た。
D1:他の社会的事象へ の
応用が利きづらい。
D2:抽象的かつ複雑な社
会全体的 な ものは学習
対象 にされにくい。
D3: 教育内容の論理的発
展系列を 明示化 するこ
とが雌しい。
D4: 社会科では, 社会的
な問題を 解決す ること
自体不可能で はないか。
D5: 一 人一 人か「 問晒」
を 持つ ことか可能 なの
か?「 問題」 が生まれ
る過程 の榊造的把 握か
弱かったので はないか。
D6: その子なりに習得す
る知識 の在り方 が重視
され, 知識 の間主観的
なあり 様や知識 自体の
吟 味・成長 は求 められ
ていかない。
D1:社会的 ジレンマか深
まり, かえ って意思 決
定しづ らくなる。
D2:社会的 ジレンマが深
まり, 自己 の意思決 定
に十 分満足, 納得で き
なくなる。
D3:授業者が, 社会認識
に かかわる 内容面 の分
析活動を設定する中で,
暗黙 のうち に, 方法 と
して の「決 め方」を押
しつけてしまって いる。
D4:(共感,同情的) 情
意や好悪感情に強く引っ
張ら れただ けの判断 に
陥ることがある。
D5:教室の判断が正当化,
固定 意識イ匕さ れるこ と
があるo
D6: 集団 の合意を形成 す
る意思 決定 にお いて,
個々 の決定を どう活 か
すか明 らか にされて い
ない。
内 六
石 ・ 方 法ヽ` な ゛ `
よ と , 我 々 教 師 が 授 ゛ て ※
社会認識教育学会H31994『社会科教育学ハンドブック』明治図書,日本社会科教育学会編2000『社会科教育事典』ぎょうせ伊東亮三・池野範男・吉川幸男「社会科授業理論の認識論的基礎づけI∼Ⅲ」『日本教科教育学会誌』第8巻,第1号,
。 , い,森分孝治・片上宗二 編2000『社会科m要語300の基礎知識』明治図書出版,谷川彰英1998『問題解決学習の理論と方法』
業 を 構 成 し よ つ と す る 際 に 考 慮 明治図書pp.58-59,拙稿1999「構成主義的 アプロ ーチによる社会科『意思決定』 型学習指導過程」全国社会科教育学会編
『社会科研究51号JI』p.41-50を もとに,筆者か実践を反省的に付加して作成。
し な け れ ば な ら な い 条 件 次 第 で ,
か なりの メリ ット を持つ もので あり, 頼 る部分 が
大 きいこ とを断 ってお きたい からで あ る。
(2) 学 ぶ必 然性 と して の「 学 習者 の 価値 意識 」
を 否定す べき か
子 ど もたち は, 授業で 社会 につい て学習 す る以
前 から, 日 常生活 にお いて自己 を社 会と かか わら
せ, 既に彼 らなり の社会 認識を 形成 してい る。 そ
こで の社会 認識 は「広 がり」 や「深 さ」 において
様々 であ るが,社 会実践 にお いて自 己と の関係 の
必然 性を強 く感 じる場合, 子 ど もたち の学 び は必
然 とな る。 この自己 との関係 の必然 性を強 く規定
す るのが, 子ど もたち の「価 値意識」 で はない か
と考 え る。
事 象を対 象化 し客観的 ・科学 的 に社会 の見方を
習得 す ることを 強く主 張す るとと もに,社 会科 は
態 度形 成 か ら一 歩 退 くべ きと して,「 価値 意 識」
−
を排 除しよ うとす る授業論 か おる。 社 会 の見 方を
形 成 する授業 論 の研 究 として学術 ( 社会科学) 的
に研 ぎ澄ま さ れた主 張で あり, 授業 実 践にお いて
も不可 欠な「 社会を 認識 する ため のツ ール」 とい
う意 味か ら示 唆 に富 む。 しか し, 教室 で 匚
子 ど も
の心理」 に生 で直面 す る立 場 から は,受 け入 れが
たい現 実を 匚
価値意 識」 の存 在に感 じてし まわざ
るを得 ない。
翻 って,学 び手 の 匚
価値 意識」 を重 視して き た
とさ れてい る 匚
問題 解決」 型 厂
意思決 定」型 など
既存 の授業論 にお いて も納 得 いく実践 に辿り 着い
てい な い と考 え る。 匚
認 識主 体 として の学 び手 が
対象 の意味 と関係 を積極 的に 構成す るこ と」 と捉
え る構成主 義的立場S2 から社会 認識形 成を 目指 す
際, 社会科 にお ける対象 すな わち 匚社会」を 学 び
手で あ る子 ど もが 匚
自己」 と関係付 け る手 だて と
10 −
第 二 の 前 提 は , こ の よ う な も の ご と の 意 味 は ,
個 人 が そ の 仲 間 と 一 緒 に 参 加 す る 社 会 的 相 互 作 用
か ら 導 き 出 さ れ , 発 生 す る と い う こ と で あ る o
第 三 の 前 提 は , こ の よ う な 意 味 は , 個 人 が , 自
分 の 出 会 っ た も の ご と に 対 処 す る な か で , そ の 個
人 が 用 い る 解 釈 の 過 程 に よ っ て あ つ か わ れ た り ,
修 正 さ れ た り す る と い う こ と で あ る 譫11
授 業 モ デ ル 2 で 提 案 し よ う と す る ② 「 認 識 の 社
会 化 」 に つ い て は , こ の シ ン ボ リ ッ ク 相 互 作 用 論
の 基 本 原 理 を も と に 考 え た い 。
一 般 に 社 会 学 や 社 会 心 理 学 に お い て 寸 社 会 化
(socialize) 」 は ,「 ̄
政 治 的 ・ ・ ・ 」 匚職 業 的 ・ ・ ・ 」
「 法 的 ・ ・ ・ 」 匚道 徳 的 ・ ・ ・ 」 と い っ た 領 域 に 分
化 さ れ , 厂パ ー ソ ナ リ テ ィ ー の 社 会 的 形 成 」 の 意
味 で 用 い ら れ て い る よ う で あ る 譫12 ま た , 既 に 成
立 し て い る 社 会 の シ ス テ ム 及 び そ れ ら 付 与 さ れ る
規 範 や 価 値 へ の
冂順応 一 批 判 」 と い う 関 係 か ら
匚社 会 化 一 対 抗 社 会 化 」 な る 分 類 も な さ れ て い る 。
し か し , 本 小 論 で の 授 業 モ デ ル 2 に お け る 匚社 会
化(socialize)
」 は , 単 に パ ー ソ ナ リ テ ィ の 社 会
的 形 成 に 限 定 せ ず , 大 江 氏 に よ る 過 程 に 着 目 し た
下 に 示 す 概 念 的 モ デ ル を 拠 り 所 と す る 。
Socialization ―Process (field, change, object ;
s七瓧e)
こ こ で , 社 会 化 は , ① あ る 場 に お い て(field),
あ る も の (obj
ect) を め ぐ っ て 変 化 が 生
じ(chan-ge),
② そ れ に よ っ て , あ る 帰 結 が も た ら さ れ る
(state)
よ う な 過 程 と い う こ と に な る 。 こ の 四 つ
の 属 性 の う ち, field, object, c
hangeの 三 者 は ,
あ る 種 の 活 動 「匚社 会 化 の 活 動 」), そ し てstate は
あ る 状 態 (「 社 会 化 の 状 態 」) と し て ま と め ら れ
る 譫13
こ の 大 江 氏 の モ デ ル を 前 述 し た シ ン ボ リ ッ ク 相
互 作 用 論 の 基 本 原 理 と , 以 下 の よ う に 結 び つ け た
い 。
厂社 会 化 の 活 動 」 = も の ご と に 対 し て の 行 為 ・ 社
会 的 相 互 作 用
下 社 会 化 め 状 態 」 = も の ご と が 自 己 ( 自 己
あ る 社 会 シ ス テ ム の 細 か な 実 行 プ ラ ンを 考 え る 際
に こ の タ イプ の問 い の方 が よ い 場 合 が あ る こ と を
否 定 は し な い。 し か し , ゼ ロ か ら 学 習 対 象 と な る
社 会 シス テ ムの プ ラ ンを 考 え な け れ ば な ら な い よ
う な 状 況 は現 実 的 で はな い。 すで に 今 日 ま で 維 持
継 続 さ れ て い る 社 会 シ ス テ ム に は 大 局 的 且 つ 対 極
的 な 選 択 肢 が 自 身 に 内 包 さ れて い る 。 そ れ ら の 存
在 を 受 け 容 れ, さ ら に そ の 二 律 背 反 , 二 者 択 一 的
な 選 択 を 迫 ら れ る か ら こそ 必 然 的 に 選 択 に か か わ
る 社 会 認 識 を 深 めて い く必 要 に迫 ら れ る。
以 上 よ り , こ れ か ら の社 会 科 に お い て 「 ̄
社 会 的
文 脈 に 自 己 を 位 置 づ け る」 授 業 の 方 法 論 は , ① 意
思 決 定 過 程 の 内 省 , ② 認 識 の 社 会 化 を 加 味 し た 意
思 決 定 型 ( 授 業 モ デ ル 2) と 考 え る。
ま た, 授 業 モ デ ル 2 で は, そ の フ レ ー ム ワ ー ク
と し て , 水 山 氏 が 提 案 す る 合 意 形 成 分 析 フ レ ー ム
ワ ー ク ( 表 3) を 一 部 援 用 し た。凹 水 山 氏 は, 合
意 形 成 の 社 会 科 授 業 を 構 成 す る 視 点 と し て , 匚合
意 の実 質 ( 重 な り と 深 さ )」 匚合 意 の 手 続 き 」 匚合
意 の コ ス ト 」 厂
合 意 後 へ の 制 約 」 の 4点 を 提 唱 し,
そ れ ぞ れ に つ い て の下 位 要 素 を 表 中 厂視 点 を 構 成
す る 要 素 」 と して , 以 下 の よ う に設 定 し て い る。
こ の フ レ ー ム ワ ー ク は, 合 意 形 成 を 前 提 と し た 社
会 科 授 業 の も ので あ る が , 水 山 氏 に よ れ ば, 以 下
の よ う な 理 由 か ら こ の フ レ ー ム ワ ー ク に基 づ く思
考 ・ 活 動 過 程 は, 個 人 的 意 思 決 定 に お い て も援 用
が 可 能 と さ れ る。
決 定 者 各 人 に よ って な さ れ る 意 思 決 定 は, 意 思
決 定 の 主 体 者 に よ る 匚自 分 の 中 の も う 一 人 の 自 分
( あ る い は 複 数 人 ) と の 対 話 ( 自 己 内 対 話 ) に も
と づ く 合 意 形 成 」( デ ィ ベ ー ト に お け る い わ ゆ る
セ ル フ デ ィ ベ ート ) で あ る と 捉え る こ と もで き る。
よ って , 授業 モ デ ル 2で は, こ の合 意 形 成 フ レ ー
ム ワ ー ク で の視 点 「 合 意 の 実 質 」 を 援 用 し た 対 話
的 活 動 を 通 し て 匚自 己 フ ォ ー カ ス(self-focus) 」
に当 た ら せ る。
表 3. 合意 形成分 析フ レー ムワ ーク
を 含 む集 団) に対 して
持 つ意 味・解 釈
子ど もたち に開か れ た価値 意識 の スタ ン
スを同 じ くして, 提案 型 の授業 論 があ る。
視 点 合意の実質 合意の手統き 合意後への制約 合意のコスト
視点を構成
する要素
・合意の重なり
・合意の深さ
・合意の質( 強い
致,リーズナプル一
な不一 致, 強い不
一致)
・ 論題の設定
・情報の提供
・ 議論のスタイル
・結果 の処理( 多数
決・全且一致・ 結
論の先送り等)
・行為とのかかわり
・時間
・手間
・合意の危険性
14 ―