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バッティングにおける斜面台を用いた練習が身体の回旋及び重心移動に与える影響

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Academic year: 2021

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バッティングにおける斜面台を用いた練習が

身体の回旋及び重心移動に与える影響

伊藤栄治

(体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科)

 須田雄太

(大学院体育学研究科)

山田 洋

(体育学部体育学科)

 小河原慶太

(体育学部体育学科)

大宜見 諒

(社会医学技術学院)

 宮崎誠司

(体育学部武道学科、スポーツ医科学研究所)

The effect that the exercise using the inclined plane in the batting gives for

the rotation of the body and movement of center of gravity

Eiji ITOH, Yuta SUDA, Hiroshi YAMADA, Keita OGAWARA, Ryo OHGIMI and Seiji MIYAZAKI

Abstract

The purpose of this study was to examine the effect that the exercise using the inclined plane in the batting gives for the rotation of the body and movement of center of gravity. The subjects were 6 middle school baseball players belonging to Little Senior Leagues (Age: 13.5 ± 0.5[yrs], Heght: 155.8 ± 11.44 [cm], Weight: 47.7 ± 8.58 [kg]). Through video analysis, we compared the shoulder peak twist angle, waist twist angle, body center of gravity travel distance,and trunk forward inclination angle, required time from maximum floor reaction force to impactin trials before and after training. As a result, the angle decreases significantly at the waist twist angle, but no difference was found for other analysis items.These results suggested that theinclined plane training is effective in suppressing the opening of the lower limbs.

(Tokai J. Sports Med. Sci. No. 30, 39-44, 2018)

Ⅰ.緒言

近年、野球の指導法に関する研究は数多くされ ており、その視点は多岐にわたる。打撃練習や投 球練習時の、少しの工夫が選手の能力を飛躍的に 向上させることもある。しかしながら、その指導 方法や表現の仕方は数多く存在しているのが現状 である。 打撃練習の効果においては指導法の違いが顕著 に出る部分であり、選手のタイプ(パワーヒッタ ー、アベレージヒッターなど)によってもそのア プローチの仕方、表現の仕方は異なる。その中で も、打撃中の体重移動や体の開きはどのタイプの 打者においても非常に重要なポイントであり、そ のスムーズさが打撃の精度を上げると言っても過 言ではない。平野ら1)は打撃中の身体重心の移動 様式について検討をしており、大学生選手におい ては軸脚に重心を残しながら踏込みをすることに よって、その後の重心移動距離を増加させている ということを報告している。また、高木ら2)の打 撃動作における構えからステップ動作終了時まで の重心移動について検討した研究では、野球熟練 者において、バックスイング時の捕手方向への重 心変位が有意に小さいことを報告している。 本研究で行う軸脚に斜面台を設置した状態での

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打撃練習や投球練習は、蔭山ら3)4)によって提案 されている。この研究では、上体が突っ込む傾向 に見られる大学生選手 1 名に対し、一定期間( 4 週間)斜面台トレーニング(傾斜10°)を行わせ、 身体合成重心の移動距離の減少及び、試合時にお ける打率の向上を報告している。 このように、打撃時の重心移動などについては 様々な視点から検討されているものの、中学生を 対象とし、即時的な効果を検討した研究は見当た らない5) また、斜面台の角度設定においては予備実験に おいて30°にしてしまうと、軸脚への荷重が困難 であるという内省の報告と先行研究で用いられて いる10°では技術、体力共に未熟な中学生では、 軸脚への荷重が意識づけされないことを参考とし、 20°の斜面台を軸脚の下に置いた状態でのティー 打撃練習(図 1 )がその後の打撃動作に与える即 時的効果について検証した。本研究を始めとして、 今後のジュニア世代の打撃指導に関する一つの練 習方法を提案することを目的とした。

Ⅱ.方法

1.被験者 被験者は S リトルシニアに所属する中学硬式 野球選手 6 名(年齢13.6±0.74[歳],身長158.8 ±11.91[cm],体重49.5±8.65[kg])であった。 被験者は右打ち 2 名、左打ち 4 名であり、測定は 東海大学15号館 7 階共同実験室で実施した。なお、 本研究は、東海大学「人を対象とする研究」に関 する倫理委員会の承認を得た上で実施されたもの である(承認番号15054)。また、被験者およびそ の保護者には実験の内容について十分な説明をし たのち、同意を得て実験を行った。 2.運動課題 運動課題は、先行研究にならい 3 m 先のネッ トに対して、ティー打撃を行うものとした4)。台 の高さは身長の55 %の高さとし、コースは真ん 中に設定をした。実験プロトコルを図 2 に示す (図 2 )。まず、平面でのティー打撃を全力で 3 球 行い、その後、斜面台を設置した状態で10球のテ ィー打撃をさせた。最後に、平面でのティー打撃 を 3 球のティー打撃を行った。中学硬式野球連盟 公認のバット(Vcong、黒、800 g、ミズノ社製) を使用した。ボールは硬式球(ミズノ社製)を使 用した。 3.測定 三次元動作解析による測定では、身体部位及び その他部位に35点の反射マーカーを貼付し、身体 各部位の三次元座標を計測した。身体部位32点は、 頭部 3 点(頭頂、左右の耳珠点)、上肢12点(左 右の肩峰、肘外側、肘内側、手首内果、手首外果、 第 3 中手指節関節)、体幹部 3 点(胸骨上縁、左 右の肋骨下端)、下肢14点(左右の大転子、大腿 骨内側上果、大腿骨外側上果、外果、内果、踵骨 隆起、第 3 中足骨頭)とした。また、使用したバ ットのトップとグリップエンド、ボールにもマー カーを貼付した。身体各部位の三次元座標は光学 図 1  斜面台を用いた打撃練習

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式モーションキャプチャーシステム(フレームレ ー ト500 fps、 サ ン プ リ ン グ 周 波 数1000 Hz、 Mac3D、Motion Analysis 社製)を用い、 3 次元 ビデオ動作解析システム(Frame-DIAS V、DKH 社製)にて算出した。 Mac 3 Dのキャリブレーションによるカメラ11 台の較正点の実測三次元座標値と算出された三次 元座標値の平均誤差は 1 mm 以下であった。分析 試技については、十分なウォーミングアップの後、 斜面台トレーニング前の 3 回の試技のうち、最後 に行った試技およびトレーニング後は斜面台の感 覚が最も残っている 1 回目の試技を採用した。 4.分析範囲 分析範囲についてはバックスイング開始(ステ ップ脚が動いた瞬間)から、スイング完了(バッ トヘッドと利き手側大転子の合成距離におけるイ ンパクト後最小値)までとし、スイング時間を 100%で規格化し,インパクト時の各分析項目の 数値を算出した。インパクトの瞬間は、バットの 両端を結ぶ線とバットの下端とボールを結ぶ線の なす角度が最も小さくなった瞬間と定義した(図 3A)。なお、各データは Butterworth Low pass Filter(遮断周波数 6 Hz)にて平滑化処理を行い、 分析をした。 5.分析項目 本研究では、インパクト時における以下の項目 を斜面台使用前後で比較した。 1)身体合成重心の投手方向に対する速度(以下、 重心移動速度)。 2)体幹前傾角度(大転子中点と胸骨上縁を結ん 図 2  実験プロトコル Fig. 2 Experiment protocol.

図 3  分析定義

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だ線と垂直軸がなす角度)。

3)水平面上における投手プレートの中心とホー

ムベースの中心を結んだ線と両肩峰を結んだ線分 がなす肩峰捻り角度(Upper Body Tilting Angle、 以下 UTA)(図 3 B)。

4)水平面上における投手プレートの中心とホー

ムベースの中心を結んだ線と両大転子を結んだ線 分のなす腰捻り角度(Lower Body Tilting Angle、 以下 LTA)(図 3 C)。

5)腰開き角度から肩開き角度の差分である体幹

捻転角度(Trunks Tilting Angle、以下 TTA)。

6.統計解析 斜面台トレーニング前後の各算出項目において、 統計解析ソフト(IBM SPSS、バージョン16.0) を用いて、Wilcoxon の符号順位検定を行い、有 意水準は 5 %未満とした。

Ⅲ.結果・考察

図 4 はスイング開始から終了までの各分析項目 の経時的変化の代表例を示す。重心移動速度、 UTA、LTA、体幹前傾角度、TTA においてもイ ンパクト前後に変化する(図 4 )。 各被験者の重心移動速度および体幹前傾角度は トレーニング前後に有意差は見られなかった(図 5A, B)。高木ら2)によれば、大学生野球部員の 重心移動においては、ボールを見る眼の上下左右 へのブレを少なくするために、フォワードスイン 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 規格化時間 (スイング開始) (スイング終了) (インパクト) 1.2 0 150 0 -100 150 0 -50 20 (deg) 0 体幹前傾角度 腰開き角度 重心移動速度 肩峰捻り角度 (deg) (deg) (m) Pre Post –0.6 0 30 -60 -30 10 30 100 50 -50 50 100 –0.3 0.3 0.6 体幹捻転角度 (deg) 図 4  打撃動作中の各指標の時系列データ

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グ時の重心移動を小さくしていると報告している。 今回の測定において変化が見られなかったのは、 このような先行研究から見ても妥当であると考え られる。また、蔭山ら3)の研究では、体幹前傾角 度が 0 °に近い状態のままインパクトまで動き、 インパクト後に背中を反るような動作をとってい るという報告がされている。代表例で示した選手 ではインパクト前に体幹をより前傾させ、インパ クトにかけて背中を反らしていくような動きであ った。また、インパクト後ではトレーニング後の 方が数値の変化がほとんどなかった。本研究では、 体幹前傾角度が経時的に変化する選手が多く、上 体のブレが出現している選手がみられた。 UTAは斜面台トレーニング前後に有意差は見 られなかった(図 5 C)。本研究では軸脚への意 識のもと、主に下肢の動作を制限するような介入 トレーニングであった。肩開き角度においては、 運動連鎖の観点6)から見ても角度が小さくなるこ とを予測していたが、それとは異なる結果であっ た。 一方で、LTA は、斜面台トレーニング後に有 意に低値を示し(p <0.05)、これはトレーニング の効果によってインパクト時に骨盤の回転が抑制 されていることを意味していた(図 5 D)。これは、 トレーニング試技において軸脚股関節がしっかり と屈曲されるトレーニングとなることやステップ 脚及び軸脚が固定された状態でのスイング動作の 反復によって得られた結果ではないかと考えられ る。実際の打撃時においても、その感覚が残り、 バックスイング時における軸脚でのタメやステッ プ脚の踏ん張りがより意識しなくともできるよう になったのではないかと考えられる。 体幹捻転角度において本研究で行った斜面台ト レーニング前後に有意差は見られなかった(図 図 5  各算出項目における被験者の平均値

Fig. 5 The aberage value of subjects in each calculation item. Pre Post 20 32 26 (deg) D 体幹前傾角度 N.S Pre Post 0 0.6 0.3 A 重心移動速度 N.S Pre Post 60 120 90 C 腰捻り角度 * B 肩捻り角度 Pre Post 60 120 90 N.S 0 15 30 (deg) N.S Pre Post E 体幹捻転角度

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5E)。平均すると有為な差とは言えないが個別 にみると腰開き角度の減少がみられたことから、 体幹の捻転動作を作り出している可能性がある。 平野は指導書7)のなかで、「体幹の捻転角度は先 に腰が先導し肩が残っている状態がボールに力を 加えるためには理想的である」と述べている。こ のような観点から、今後は打者の特徴を捉え、肩 開き角度においてもインパクトまでの回転を抑え ることが求められてくるのではないかと考える。 また、今後の展開として、各打者による「体が 突っ込む」、「体重移動が上手くできない」、「UTA が先行する」、「LTA が先行する」、「UTA と LTA が同時に回転する」などといった打者の特徴ごと にタイプ分けを行い、効果を期待できると予想さ れる打者のタイプを割り出すことなどにより、指 導現場により密着した理論を作成できる根拠資料 を求めていく。

Ⅴ.結言

本研究の目的は、バッティングにおける斜面台 を用いた運動が体の回転と重心の運動に与える影 響を検討し、今後の練習方法に関する提案をする ことであった。リトルシニアリーグに所属する中 学生 6 名を対象として、 3 次元映像解析により、 身体重心移動速度、体幹前傾角度、UTA、LTA、 TTAを比較した。 その結果、LTA では角度が有 意に減少するが、他の解析項目では差が見られな かった。 これらの結果から、打撃練習時の斜面 台トレーニングは下肢の開きの抑制に有効である ことが示唆された。 参考文献 1)平野裕一,町永智丈:野球の打撃中の身体重心移 動様式,日本バイオメカニクス学会編 「バイオメ カニクス研究1990」,メディカルプレス,pp226-228, 1990. 2)高木斗希夫,湯浅景元:野球のバッティングにお ける構えからステップ動作終了時までの重心移動, 中京大学体育学論義,45-1 71-75, 2003. 3)蔭山雅洋,中島 一,鈴木智晴,前田 明:大学 野球選手における傾斜台を用いた打撃トレーニン グが試合での打率に及ぼす影響─打撃動作中の身 体重心の移動に着目して─,スポーツパフォーマン ス研究,9-94-110, 2017. 4)蔭山雅洋,中島 一,藤井雅文,前田 明:傾斜 台を用いた投球トレーニングが投球速度および投 球動作に及ぼす即時的効果─ある小学生投手の場 合─,スポーツパフォーマンス研究,7: 42-54, 2015. 5)田子孝仁阿,江通 良,大貫克英,石井喜八:野 球バッティング時における回転または並進運動の 有効性∼肩部・腰部・膝部の動きに注目して∼,日 本体育学会大会号,52-373, 2001. 6)山田 洋,長尾秀行,小松真二,内山秀一,小河原 慶太:野球のピッチングにおける投法の違いが動 作に与える影響,東海大学スポーツ医科学雑誌,26: 45-51, 2014. 7)平野裕一:科学する野球バッティング&ベース ランニング,ベースボールマガジン社,2016.

参照

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