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Vol.68 , No.2(2020)087權 圓濟「比丘の七不退法に見られる修行道――部派仏教系〈涅槃経〉に基づいて――」

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Academic year: 2021

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(1)

印度學佛敎學硏究第68巻第2号 令和2年3月 (60) ― 1047 ―

比丘の七不退法に見られる修行道

―部派仏教系〈涅槃経〉に基づいて―

權   圓 濟

1

.はじめに

部派仏教系〈涅槃経〉(以下,涅槃経)の冒頭には1),ヴァッジ族の七不退法を 導入部として,種々の仏教教団あるいは修行僧のための七不退法(以下,比丘の七 不退法)が説かれている.そのうち,第1セットの比丘の七不退法は,ヴァッジ 族の七不退法と内容的に対応しており,すでに最初から涅槃経に含まれていたも のとして,諸研究者により理解されている.一方,それに続けて説かれる 「修行 に関わる七不退法」は,これまでほとんど考察が行われてこなかった. しかし詳細に分析すれば,後代に付加されたと考えられる修行に関わる七不退 法の場合には2),禅定の予備段階から本格的な修習の順に沿って配されたもので あることが分かる.以下,その概要を提示したい.

2

.七不退法における修行体系

2.1. 「七覚支」を中心とする修行の階梯 ここで言う涅槃経とは,Mahāparinibbāna-suttanta (=MPS-P), Mahāparinirvāṇa-sūtra (=MPS-S),『長阿含経』「遊行経」(=『遊行』),『仏般泥 経』(=『仏般』),『般 泥 経』(=『般泥』),『大般涅槃経』(=『大般』)の六本である3).この六本におけ る比丘の七不退法の内容と列挙順番は,次の表1の通りである.まとめると,① ヴァッジ族の七不退法に対応する七不退法(A群),②修行に関わる七不退法(B 群∼H群),③和合のための六不退法(I群),④その他の修行に関わる七不退法 (『遊行』のJ群,『大般』のE群)の順に列挙されている.このうち,修行に関わる ものは,②と④であるが,今回は②についてのみ考察し,④については今後の課 題にしたい4)

(2)

(61) ― 1046 ― 比丘の七不退法に見られる修行道(權) 上の表から明らかなように,修行に関わる七不退法(B群∼H群)に共通してい る項目は,七守(B群),七正法(C群)そして七覚支(F群)の3種類であり,「禅 定の予備段階→本格的な修習」の順に列挙されている.具体的に言うと,まず, 七不退法(B群)は,禅定修行のために最も基本的に備えるべき行動規範である5) 次に,七正法(C群) は,内容的に五根・五力と関連しており,他の経典では四 禅の予備段階として現れている6).最後に,主として禅定に関係している七覚支 (F群)は,基本的に五蓋を断じた段階であり,悟りもしくは不還果をもたらすも のとして記述されている.したがって,「七守(B群)→七正法(C群)→七覚支(F 表1 涅槃経五本における比丘の七不退法 群 内 容(基本的にMPS-Pに準じる) MPS-P 大般 遊行列挙順番MPS-S 般尼 A ヴァッジ族の七不退法に対応する七不退法 I I I I I B (七守) ①活動,②談話,③睡眠,④交際を楽しま ない.⑤悪い欲求,⑥悪い友人を持たな い.⑦わずかばかりの境地を持って途中で 中止することに至らない. II II II III II C (七正法) ①確信,②慚,③愧をそなえる.④多聞に なる.⑤精進に励む.⑥念を確立する.⑦ 慧を備える.

III III III IV IV

D (七敬) ①師,②法,③教訓,④教理,⑤不放逸, ⑥供給,⑦三昧を尊敬,尊重,恭敬,供養 し,親近する. ̶ ̶ IV II III E (七知) ①法,②意味,③適時,④適量,⑤自己,⑥衆会,⑦人の長短を知る. ̶ VII ̶ V VI F (七覚支) ①念覚支,②択法覚支,③精進覚支,④喜 覚支,⑤軽安覚支,⑥定覚支,⑦捨覚支を 修習する. IV IV VI VI V G (七想) ①無常想,②無我想,③不浄想,④危険 想,⑤捨想,⑥厭離想,⑦滅想を修習す る. V V V ̶ ̶ H (七思惟) ①惟經道… ②惟人生無不有苦… ③惟精進 … ④惟謙虚… ⑤惟降意… ⑥惟躯中但盛 臭穢… ⑦惟自觀形如糞土… ̶ ̶ ̶ ̶ VII I (六和敬法) ①慈愛ある身業,②慈愛ある口業,③慈愛 ある意業を,同梵行者たちに対して行う. ④利得物を同梵行者たちと共同で享受す る.⑤同梵行者たちと戒と,⑥見解を同じ くして過ごす.

VI VI VII VII VIII

J

(3)

(62) ― 1045 ― 比丘の七不退法に見られる修行道(權) 群)」 という構造の上で,七敬(D群)や七想(G群)などの他の七不退法が加え られているものと推測されるのである. 2.2. 「三十七菩提分法」との関連性 ここでは,涅槃経の他の箇所を参照し,修行に関わる七不退法(B群∼H群)と 「三十七菩提分法」の七覚支とが深い関連にあることを確認したい. 『仏般』を除いた涅槃経五本では,3ヶ月後の入滅宣言の場面において,七覚 支を含むいわゆる「三十七菩提分法」が実践すべき「法」の内容として説かれ る.MPS-P,MPS-S,『大般』の場合には,四念住,四正断,四神足,五根,五 力,七覚支,八正道の三十七法を列挙している.一方,『遊行』と『般尼」の場 合には,四神足と五根の間に 「四禅」が加えられ,四十一法が述べられている7) このうち,七覚支は,他の個所で実践修行法として特に強調される.MPS-S (30.10–30)と『般尼』(T6, 184b16–184c18)では,悟りを得るための実践法として説 かれており,MPS-P(DN II 83.18–32)では,過去・未来・現在のあらゆる正等覚者 が,四念処や七覚支の修習により正等覚を得たと述べられている.このように, 「七覚支」は実践・修習する法として明確に説かれているものの,八聖道の場合 は実践道としては直接的に説かれていない8) 以上を総合的に考慮すると,涅槃経の他の箇所で記述されている三十七菩提分 法の中でも特に七覚支の修習を重視する傾向が,七不退法(B群∼H群)にも同様 に反映されていることが読み取れる.

3

.終わりに

要約すると,涅槃経の修行に関わる七不退法(B群∼H群)は,「七覚支」を中 心に据えながら,そこに至る予備段階として,それぞれ七種の徳目を配列したも のであることが分かる.加えて,それらの徳目は,「三十七菩提分法」の修行体 系が暗に前提とされているものと理解される. 1)六本中,『大般涅槃経』の場合は,ブッダの発病から始まるので,七不退法が冒頭に据 えられていない. 2)和 (1927, 113),Bareau(1971, 28–29),中村(1984, 128)は,第1セットを除いた他 の比丘の七不退法は,後に加わったものと想定する.その根拠として,(1)ヴァッジ族 の七不退法とそれに対応する比丘の七不退法が短編経典として存在していること,(2) 涅槃経諸本でその内容が一致していないことを挙げている.

(4)

(63)

― 1044 ―

比丘の七不退法に見られる修行道(權)

3)①Mahāparinibbāna-suttanta(DN II 72–168) ②Mahāparinirvāṇa-sūtra(Waldschmidt 1950– 1951. 中央アジアトルファン出土.有部系の漢訳律蔵の『根本説一切有部毘奈耶雑事』 (T24, no. 1451, 382a–414b)と,蔵訳 'Dul ba phran tshegs kyi gzhi (北京版No. 1035, デルゲ版

No. 3)にも同一の内容が含まれている) ③仏陀耶舍・竺仏念訳『長阿含経』「遊行経」 三巻(T1, no. 1, 11a–30b) ④白法祖訳『仏佛般泥 経』二巻(T1, no. 5, 160b–175c)

⑤失訳『般泥 経』二巻(T1 no. 6, 176a–191a) ⑥法顕訳『大般涅槃経』三巻(T1 no. 7,

191b–207c).

4)『仏般』は,他とは異なる独自の教理をもっているため,本稿では考察の対象としな

い.

5)「七守」は,身・受・心・法に対する随観の前提要件(AN III 449f.)と説明している箇

所もあるため,本稿では修行道に含まれるものとして見なす.

6)Nagaropama-sutta(AN 7.63),Sekha-sutta(MN第53経),『中阿含』「城喩経」(T1 no. 26, 422c09).

7)「三十七道品」という語は『大般』にのみ見られる.

8)最後の弟子であるSubhaddaの出家の場面でブッダは,「ある法と律において八聖道が

知られるならば,そこで沙門の四果も知られる」と説く. 〈一次文献〉

AN= The Aṅguttara-nikāya. Ed. R. Morris and E. Hardy. 5 vols. London: Pali Text Society, 1885– 1900.

DN= The Dīghanikāya. Ed. T. W. Rhys Davids and J. E Carpenter. 3 vols. London: Pali Text Society, 1899–1911.

MN= Majjhimanikāya. Ed. V. Trenckner, R. Chamlmers. 3 vols. London: Pali Text Society, 1887– 1902.

MPS-S= Das Mahāparinirvāṇasūtra: Text in Sanskrit und Tibetisch, verglichen mit dem Pāli nebst

ein-er Übein-ersetzung dein-er Chinesischen Entsprechung im Vinaya dein-er Mūlasarvāstivādins. Ed.

Waldschmidt, Ernst. Berlin: Akademie-Verlag, 1950–1951.

『般泥』『般泥 經』失訳,T1, no. 6.

『遊行』『長阿含經』「遊行經」仏陀耶舍・竺仏念訳,T1, no. 1.

『大般』『大般涅槃經』法顯訳,T1, no. 7.

『仏般』『佛般泥 經』白法祖訳,T1, no. 5.

〈二次文献〉

Bareau, André. 1971. Recherches sur la biographie du Buddha dans les sūtrapiṭaka et les vinayapiṭaka

anciens, part 2. Les derniers mois, le parinirvāṇa et les funérailles. Paris: Ecole Française

d Extrême-Orient. 中村元 1984『遊行経』上,大蔵出版. 和 哲郎 1927『原始仏教の実践哲学』岩波書店. 〈キーワード〉 涅槃経,七不退法,七覚支,三十七菩提分法,Mahāparinibbāna-suttantaMahāparinirvāṇa-sūtra,遊行経,大般涅槃経,般泥 経,仏般泥 経 (東京大学大学院)

参照

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