調査名 時期 ( 年月 ) 2015.11-12 2015.11-12 2015.11 2015.10 2015.7-9 2015.4-9 アンケート①で回答が 得られた施設(30施設) アンケート①②で回答が 得られた自治体・施設 対象自治体※1 (39の市町村及び特別区) F県内の通所型幼老 複合施設(2施設) F県内の通所型幼老 複合施設(2施設) ※1 平成25年厚労省資料より、対象自治体を抽出 設立の経緯、財政支援および交流の 意義について運営者目線から把握 財政支援及び福祉の取組について アンケート(回収率69%)を行い、 施設と自治体の関係を把握 アンケート調査①の内容を基に、 アンケート(回収率63%)を行い、 施設内容、交流の実態を把握 特徴的な取り組みが確認された 自治体および施設に対し、電話で追 加ヒアリングを行い、実態を把握 ヒアリング調査①で訪問した施設を 対象に観察調査を行い、交流の実態 を把握 対象 観察調査 ヒアリング調査② アンケート調査② アンケート調査① ヒアリング調査① 文献・資料調査 内容 書籍、web、厚生労働省 既往研究、統計資料、web上の記事 および、厚生労働省へ電話で問い合 わせを行い、現状を把握 29-1
幼老複合施設の運用と世代間交流の実態に関する研究
1. 研究の背景と目的 核家族化の進行や単身高齢者の増加、脆弱化した地 域内コミュニティの再生といった社会的背景から、世 代間交流の価値が再認識され、幼児と高齢者が交流す る施設の重要性が指摘されている文 1) 。国の施策として も 1993 年に厚生省から高齢者、児童福祉施設の合築・ 併設を促進するよう通知文 2) が出されて以降、幼老複合 施設は増加傾向にある文 3)。 建築計画分野における幼老複合施設の研究は 1990 年 前後から始まり、「併設内容」や「幼・老施設の接続関係」、 「交流の実態把握」を中心に進められてきた注 1) 。しかし、 複合施設であることや行政管轄が複数にまたがること から部分的な把握に留まり、体系的な観点から行われ た知見は極めて少ない。さらに自治体と施設の関係に ついて不明瞭な点が多く、また、幼老複合施設最大の 特徴である精神的・身体的差の大きい乳幼児と高齢者 の利用者目線から捉えた空間に対する要求に言及され たものは確認できない。 本研究では全国的な共生型サービスの資料を基に、 幼児と高齢者の交流が確認できた施設及びその自治体 を対象に合築の経緯や動向を分析した上で、交流の実 中 遼太郎 表 4 世代間交流・施設に関する法律および施策 表 3 本研究における交流の定義 表 2 幼老複合施設と類似施設との比較 表 1 調査概要 態と運営者・自治体の取り組み及び保育室まわりの平 面構成の分析から体系的な知見の把握を行い、今後の 幼老複合施設の計画指針を得ることを目的とする。 2. 幼老複合施設と世代間交流 2-1. 類似施設との比較 幼老複合施設とは、子供施設と高齢者施設の複合施 設であり、子供施設は保育所から小学校、高齢者施設 はデイサービスセンター ( 以下 DS) から養護老人ホー ムまで含む幅広い施設名称である文 1) 。類似施設として は共生型福祉施設や世代間交流施設といった施設が挙 げられるものの、利用対象や目的、法的位置づけといっ た点において各施設の意味合いは異なる ( 表 2)。 2-2. 本研究における交流と施設 本研究における交流の定義を表 3 に示す。本研究では、 幼児と高齢者により言語的・身体的接触を伴う交流 ( 世 代間交流 ) に着目して行うため、子供施設の利用者か ら児童を除き乳幼児のみとする。さらに、世代間交流 の中でも計画的交流と自然発生的交流の双方を期待す ることができる保育所や DS といった幼・老施設共に通 所サービス事業を行っている幼老複合施設を中心に分 析・考察を行う。 保育所,幼稚園,学童保育所 児童館,児童公園,乳児院・養護施設 心身障害者施設,小児病院等 「(高齢者)通所+泊り+子育て支援」 「総合相談+見守り支援」 「居宅サービス」 「三者の共生サービスや地域交流」 「福祉避難所」の機能を持つ※3) ※1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「共生型福祉施設設置運営支援事業報告書」2013年, ※2)種村俊昭他、「世代間交流施設における複合タイプ別の計画特性と運営者からみた交流実態」2009年, ※3)厚生労働省「被災地における共生型福祉施設の設置について」別添資料,2014年 (不特定世代に対して) 公民館,温泉施設等 (幼児に対して) 児童館、保育所等 (高齢者に対して) DS,高齢者ふれあい室等※2) (特別)養護老人ホーム,老人ホーム 高齢者用住宅,高齢者福祉センター ケアハウス,一般総合病院,DS等 幼老複合施設 乳幼児から児童 高齢者 子供施設と高齢者福祉 施設を併設した施設 なし あり なし 乳幼児から児童 障害児・者、高齢者 (各施設毎に様々に設定)不特定 定義 法的位置づけ 幼児施設 高齢者 施設 対象 名称 共生型福祉施設 世代間交流施設 「利用者相互の関係化を 図ることを重視し、複合 的な施設機能を備えた 地域施設※2)」 「通所や泊まりサービス、 相談(アウトリーチ含む) 等を包括的に提供する※1)」 施設 施設 交流名 内容 自然発生的交流計画的交流 世代間交流 (※高齢者が居室から遊ぶ幼児を眺める等、一方のみの認知は世代間交流に含めない)幼児と高齢者により行われる言語的・身体的接触を伴う交流 運営者の働きかけにより行われるプログラムを介した交流 運営者の働きかけにより行われるプログラムを介さない交流注2) 年 1993 1994 1995 1997 1998 1999 2000 2002 2004 2006 2009 2011 2012 2014 厚生省「高齢者福祉施設児童福祉施設の合築併設を促進するよう通知」 高齢者との世代間交流の手引き 余裕教室活用方針 「このゆびとーまれ」開所(富山型の誕生) 新ゴールドプラン,老人保健福祉計画 地域総合整備事業(債) 子育て支援のための総合計画(エンゼルプラン) 余裕教室活用財産処分手続きの簡素化 「放課後児童クラブ」 宮城県「宅老所の多機能(共生)型の政策化研究」 ゴールドプラン21,介護保険施行に向けての実施計画策定 共生のまち推進事業 地方分権一括法,介護保険制度の発足 新エンゼルプラン 地域福祉計画策定に関する指針,少子・高齢化対策事業 長野県「宅幼老所」 熊本県「地域の縁がわ」事業開始 「富山型デイサービス推進特区」特例措置が全国展開 鳥取県「鳥取ふれあい共生ホーム」整備促進事業 東日本大震災 鳥取県「鳥取ふれあい共生ホーム」整備事業補助金 高知県「あったかふれあいセンター」事業費補助金 厚労省「共生型福祉施設の設置運営支援事業」の検討開始 被災三県にて国庫補助による共生型福祉施設の運用開始 ※種村俊昭ほか「世代間交流施設における複合タイプ別の計画特性と運営者から見た交流実態」2009年, 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「共生型福祉施設の設置運営支援事業報告書」2013年, 平野隆之「共生型ケア拠点の政策化の経過と今後の支援課題」2015年,を基に作成 項目29-2 表 5 対象自治体の概要と調査区分 図 1 自治体の取り組みと施設の実態 図 2 行政からみた交流・施設に対する認識 ■対象自治体 ■本調査での自治体区分 ※うち 2 市では幼老複合施設を把握していなかったため、調査辞退 区分 政令市・特別区 政令指定都市東京特別区 人口規模が最も大きく、保育所の認可権を持つ自治体区分 保育所の認可権を持つ自治体区分 中核市と同程度の人口規模を持つものの 保育所の認可権を持たない自治体区分 その他の市町村 中核市 人口20万人 以上の市 人口20万人 未満の市町村 中核市 その他市 (20万人以上) その他市町村 (20万人未満) 対象資料 対象自治体 対象自治体規模 市町村および特別区 対象 概要 有効回答数 3 5 5 14 「共生型サービスの実施状況について注 4」 「高齢者通所型施設」と「幼児保育所型施設」を併設した施設が確認された自治体 + その他独自の取り組みを行っている自治体(41市区町村) 3. 研究の方法 3-1. 調査対象 福祉施設に関する統計としては厚労省による「社会 福祉施設等調査」が挙げられるものの、2003 年に「福 祉施設における併設」が項目から削除されたため、調 査時点で施設計画の動向を俯瞰できる資料が存在しな かった注 3)。そのため本研究では、2013 年に厚労省が全 国の自治体に対して行った共生型サービスに関する資 料注 4) を基に「高齢者通所型施設」と「幼児保育所型施 設」の併設事例が存在する全国の市町村・特別区なら びに施設を調査対象とする。 3-2. 調査方法 本研究の調査概要を表 1 に示す。まず資料調査及び F 県内の事例から行ったヒアリングを基に幼老複合施設 の実態把握とアンケート項目の作成を行った。2 回のア ンケート調査のうち、1 回目では調査対象となった 39 の市町村及び特別区に対して施設に対する支援制度や 情況、認識に焦点を当てて行った。2 回目の調査では、 回答のあった自治体の施設を対象に合築の経緯や施設 概要、交流実績の収集を行った。最後に、アンケート の回答を具体的に把握するため F 県内の 2 事例で観察 調査を行い、交流の実態を把握した。 4. 幼老複合施設に対する自治体の動向 4-1. 人口規模による分類 幼児施設に対する自治体の動向をつかむため、アン ケート調査で回答のあった自治体の人口を基に 4 つに 区分した ( 表 5)。このうち保育所の認可権のある自治 体は「政令市・特別区」、「中核市」の 2 つ、それ以外 の市町村は中核市と同程度の人口規模を持つ「市 (20 万以上)」と「市 (20 万未満 )」2 つとしている。 4-2. 自治体における取り組みと設置主の区分 自治体の取り組みと施設の設置主の区分を図 1 に示 す。まず世代間交流事業に行政として「取り組んでいる」 と回答した自治体は全体の 25.9%であり、内訳は幼老 複合施設に関するものが 4 件、交流事業に対するもの が 2 件、長期計画に盛り込むものが 1 件であった。 施設の設置主はいずれの区分でも社会福祉法人が最 多であったものの、人口規模が最も小さい 20 万人未満 の市町村の方が、設置主に幅があることが確認された。 これは、都心部中心で考察されてきた幼老複合施設に おいて極めて特殊であり、都市と地方で設置される理 由が異なることが考えられる。 自治体を対象とした施設の複合理由では、20 万人未 満の市町村では、施設の経営多角化と地域コミュニティ 改善の箇所に集中している。土地の高度利用とした回 ■施設を複合する理由(自治体編) ■独立した施設同士の交流実態 政令指定都市 東京特別区 中核市 その他市町村 (20万人未満) 全体 その他市町村 (20万人以上) 政令指定都市 東京特別区 区分 要因 中核市 その他市町村 (20万人未満) 全体 2 3 6 1 9 4 その他市町村 (20万人以上) 3 5 14 27 5 取り組み 設置主 設置方法 取り組み 設置主 設置方法 取り組み 設置主 設置方法 取り組み 設置主 設置方法 取り組み 設置主 設置方法 取り組み の内訳 区分 数 項目 0 20 40 60 80 100[%] 社会福祉法人(8) あり なし 新設 社会福祉法人(3) 株式会社(1) 市(1) 幼→複 幼→複 幼 あり なし 新設 社会福祉法人(4) 高→複 高 高 株式会社(1) なし なし 観察中 他 新設 あり 新設 なし 社会福祉法人(26) 株式 医療 市 社会福祉法人(6) 医療法人(3) 株式(2) 市(2)有限 NPO あり 新設 ※( )は回答数。各設問の割合において未回答は除く ■世代間交流に関する取り組みと幼老複合施設の設置区分 ※取り組み内容に関しては複数回答可、自治体以外の事業主の取り組み回答は除く 待機児童 解消 高齢者施設不足 経営の多角化 土地の高度利用地域のコミュニティ その他 自治体設置・運営(1) 自治体設置・民間運営(3) 財政的支援(2)長期計画・交流事業支援(1) 独立した 2 施設の交流 0 20 40 60 80 100[%] なし(8) あり(18) 行政 民間 世代間交流 幼老複合施設 0 20 40 60 80 100[%] 必要(17) 必要(3) やや必要(6) どちらとも言えない(15) やや不要(2) やや必要(5) どちらとも言えない(4) ■世代間交流・幼老複合施設の必要性 ■世代間交流に政策として取り組むべき自治体規模 ■自治体規模を考える理由 ※複数回答可 政令指定都市 東京特別区 中核市 その他市町村 (20万人未満) 全体 その他市 (20万人以上) 3 5 14 27 5 区分 数 項目 0 20 40 60 80 100[%] 社協・民間(2) その他(1) その他(1) その他(2) 国・都道府県(3) 社協・民間(2) 国・都道府県(1) 社協・民間(3) 国・都道府県(8) 国・都道府県(12) 社協・民間(4) 社協・民間(11) 市区町村(1) 市区町村(1) 取り組むべき 自 治 体 規 模 取り組むべき 自 治 体 規 模 取り組むべき 自 治 体 規 模 取り組むべき 自 治 体 規 模 取り組むべき 自 治 体 規 模 政令指定都市 東京特別区 区分 要因 中核市 その他市町村 (20万人未満) 7 6 全体 11 10 4 4 10 1 4 その他市町村 (20万人以上) 高齢単身・夫婦 世帯のため 核家族世帯の子供のため 地域内自発交流の限界 既に自然な交流が存在 民間提案の方が良い 子供の減少 その他
■計画的交流の内容 ■自然発生的交流の許可 ■自然発生的交流の発生空間 ■計画的交流の頻度 ■計画的交流の発生空間 敬老の日 訪問 お茶会・食事会 お遊戯会 節句 クリスマス 誕生日 その他 5 5 4 交流 0 50 100[%] 0 50 100[%] 0 50 100[%] N=17 N=18 N=17 N=14 N=16 14 13 1 4 0 11 7 7 6 6 5 11 エントランス 食堂 園庭 DS 関連 保育室 遊技場 その他 交流 交流 主体 幼・高双方とも 幼児のみ 高齢者のみ 交流できない 0 50 100[%] 5 5 4 4 0 50 100[%] 2 2 4 年1回 2・3か月に1回 毎月 半月に1回 毎週 週に数回 毎日 その他 3 0 0 2 2 幼・高 35.7% 14.3 14.3 7.1 7.1 7.17.1 7.1 幼:幼児側の空間 高:高齢者側の空間 共:共用部,全:施設全体 高 全 幼 幼・共 高・共共・他 共 29-3 図 3 施設の規模計画と全体の傾向 図 5 施設規模別にみた接続関係と交流空間 延床規模と傾向 幼老複合施設 アンケート、パンフレット、 図面を参考に主に交流を行って いる階を基準に分類を行った。 (複数階存在する場合) ■幼・老施設の接続の類型化 ■幼・老施設の接続関係と延床規模<施設分棟型> 接続関係と計画的交流空間 幼児 幼児施設規模の方が 大きい、もしくは同等 グループA グループB グループC 並置型 積層型 1 0 7 施設数 幼児側 高齢者側 共用 分棟型 高齢者施設規模が幼児 施設規模の1~4倍以内 高齢者施設規模が 幼児施設規模の4倍以上 保育所 通所(+居住) 高齢者 幼児 保育所 (+通所)居住 高齢者 幼児 保育所 (児童館) 通所・居住 高齢者 計画的交流 4 0 ※交流空間は複数回答可 1 1 0 2 施設数 幼児側 高齢者側 共用 計画的交流 施設数 幼児側 高齢者側 共用 計画的交流 幼児 施設 高齢者施設 幼児 施設 幼児施設 高齢者 施設 高齢者施設 <施設一体型> <並置型> <積層型> 保育所+高齢者通所 保育所+高齢者通所、居住 保育所+高齢者居住 児童館+高齢者通所、居住 図 4 計画的・自然発生的交流の実態 答は 1 件のみで、あまり意識されていないことが伺える。 また、独立した 2 施設の相互交流については、約 7 割が把握しており、ほぼすべての施設で何らかの交流 が行われていると回答した自治体もあった。 4-3. 行政からみた世代間交流に対する認識 交流及び施設に関する行政側の認識についてまとめ たものを図 2 に示す。世代間交流の必要性については「や や必要」まで含め 8 割を超えており、一定の理解が進 んでいることが伺える。幼老複合施設に関しては、事 例の少なさから「どちらとも言えない」が圧倒的に多 かったものの、一定数の必要意見が見られた。ただし、 「その他市」以上の区分において「やや不要」とした回 答があり、既存施設の整備が進んでいる都市部では、 複合化する以外で世代間交流を行える環境が伺えた。 取り組むべき自治体の規模に関しては、全体で「国・ 都道府県レベル」と「社協・民間レベル」の 2 つが均 衡している。しかし、自治体規模ごとの回答を見ると 自治体規模が小さくなるにつれ、国・都道府県レベル の取り組みとすべきという傾向が現れた。 4-4. 幼老複合施設に対する財政的な支援 自治体が行う財政的な支援は、幼・老各施設の施設 面積に応じて支援するというものが大半であった。そ のような中で、合築により財政的支援を受けた、行っ たと回答した施設及び自治体が複数確認された。1 例を 除いてすべて県単位で行われた施策であり、中には被 災三県に対する共生型福祉施設に対する支援等、国レ ベルでの支援が行われていることが明らかとなった。 5. 幼老複合施設の動向 5-1. 施設規模における特徴 幼・老施設の施設規模から分析したものを図 3 に示 す。まず、幼児施設と高齢者施設の面積比(以下面積比) では高齢者施設が DS か居住施設であるのかで傾向が異 なる。保育所と DS の施設では、面積比 1 以下、幼児施 設 700 ~ 1300 ㎡の所に集中した。高齢者居住施設を含 む施設が 1 件あるが、これは乳児棟と幼児棟に分離し て保育を行うことに起因する。保育所と高齢者居住施 設はすべて面積比 1 ~ 4 の間にあり、保育所より面積 の小さい高齢者居住施設は存在していない。DS と居住 施設を含む施設はいずれも幼児施設は DS のみの施設よ り小規模となり、その面積比は 10 を超えている。 施設の階数は 2 ∼ 3 階が 6 割以上、敷地面積は 2 ∼ 3,000 ㎡に集中しており、階数及び敷地規模から大きな地域 差は見られない。また、自治体区分と併せて考察する と政令市で 3 階建てが主流となるものの、すべての区 分で 2 ∼ 3 階建ては過半数を占めている。 5-2. 交流の実態と特徴 計画的交流と自然発生的交流の調査を図 4 に示す。 計画的交流は「敬老の日」と「定期的な訪問」を中心 に行われ、半数を超えたのはこの 2 項目のみであった。 「その他」では外部空間、施設敷地の外、文化継承のた めの交流といったものが含まれる。頻度は年 1 回から その他までいずれも 3 割を超えることなく均等に分散 したが、これは回答した施設の形態が高齢者通所・居 住事業と幅があったことが影響していると考えられる。 自然発生的交流の許可は全体で 7 割以上が双方に対 し認めてられており、発生する空間はエントランス部 10 00 20 00 30 00 40 00 50 00 60 00 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 8075 10631 6218 [㎡] [㎡] 2000 保育所+DS※ 保育所+L 保育所+DS,L 児童館+DS,L W S RC SRC S+RC 建築構造 0 20 40 60 80 100[%] 27.8% 16.7% 27.8% 27.8% 3階 3階 3階 3階 2階 2階 2階 13 階 7階 5階 5階 4階 4階 政令市 特別区 中核市 20万 未満市 20満 以上市 2階 3階 4階 5階7 13 RC S SRCW 敷地面積 1 2 3 4 5 13 7 幼児施設面積 (b) ※DS: 高齢者通所施設 L : 高齢者居住施設 ■幼児施設部分と高齢者施設部分の延床面積比 ■敷地面積と階数の関係 ※13階建は13階のうち2,3階部分を利用 ■自治体規模と階数 N=18 ■構造と階数 構造 階数 高齢者施設面積 (a) グループA グループB グループC 1 2 3 4 5 [×103㎡] S+RC 階 数
29-4 謝辞 本研究にあたり、各自治体の関係者の方々、ならびに各施設の方々に多大なるご 協力をいただきました。末筆ながら記して心より感謝いたします。 注釈 注 1) 横山俊祐らの一連の研究による。 注 2)運営者の影響が完全に及ばない幼児と高齢者による自然発生的交流の実現は 幼児・高齢者双方の安全確保の観点から厳しい。そのためここでの自然発生的交 流は、「安全確保のために行われる運営者の一定の監視下において」行われるプロ グラムを介さない交流のことを指す。 注 3)厚生労働省に電話にて確認 注 4) 厚生労働省平成 24 年 2 月 10 日付事務連絡「いわゆる「宅幼老所」をはじめとす る共生型サービスの実施状況について」のこと。各都道府県、政令指定都市、中核 市の社会福祉施設等整備担当者あてに「高齢者、障害者・児、乳幼児などを一体 的に受け入れ、かつ日常的な交流を行っている施設の全国調査」を行っている。 参考文献 文 1) 広井良典 :「老人と子ども」統合ケア―新しい高齢者ケアの姿をもとめて , 中 央法規出版 ,2000 文 2) 厚生省 : 老人保健福祉施設と児童福祉施設との合築形成の促進等について , 厚生省通達 ,1993 文 3)種村俊昭ほか : 世代間交流施設における複合タイプ別の計画特性と運営者か ら見た交流実態 , 日本建築学会計画系論文集 ,636 号 ,pp355-362,2009 ①保育室・ほふく室からWCへのアクセスがそれぞれ独立 高齢者施設がDSのみ 基本構成 高齢者施設がDS&L <ホール一体型> <園庭挿入型> <積層分離型> <ホール分離型(積層)> <ほふく室接続型> ホール WC NR NR NR NR DS DS 廊 下 WC NR NR NR NR NR <並置分離型> <特殊型> <ホール分離型(並置)> <並置分離型> <交流スペース介在型> CR CR 管理諸室 廊 下 園庭 WC DS 保育室 ほふく室 デイサービス高齢者居住施設 CR NR NR CR ホール WC WC L 高齢者施設がLのみ 一体並置 分離 2 1995 一体積層 共用 5 2015 分棟 分離 3 1999 一体並置 分離 4 2011 一体並置 分離 5 2006 一体積層 共用 3 2002 WR会 NN会 HS会 一体並置 分離 3 1995 TY会 SK会 TW会 IZ会 高齢者施設がDSのみ 高齢者施設がDS&L <並置分離・乳児分棟型> 廊 下 WC NR NR NR NR NR DS + ホール NR NR CR CR DS 保育所 食堂 WC WC NR NR NR NR 園庭 WC DS NR NR ホール WC CR L WC ホール 地域交流 スペース NR NR DS WC DS + NR NR NR NR NR 廊下 WC CR CR CR 廊 下 NR NR 廊 下 WC WC DS + CR CR 法人名 計画交流の実施 自然発生的交流の容認 高齢者のみ容認実施 実施容認 実施 容認 実施容認 実施容認 実施不可 実施不可 実施容認 実施容認 実施 容認 実施容認 実施容認 実施 容認 実施 容認 計画交流の実施 自然発生的交流の容認 幼・老接続 アクセス 階数 建築(併設)年 保育室 ほふく室 デイサービス高齢者居住施設 法人名 幼・老接続 アクセス 階数 建築(併設)年 ②ほふく室は室からWCへアクセス、もしくは保育室・ほふく室ともに各室からWCへアクセス 一体並置 分離 1 2000 一体並置 分離 2 1996 一体積層 共用 3 1999 一体積層 共用 13 1998 一体並置 分離 3 2000 一体並置 分離 2 2011 一体並置 分離 3 2002 YK会 FB会 TC会 AI会 TK会 HN会 AO会 基本構成 廊 下 WC WC NR CR 廊 下 WC NR CR 図 6 保育室まわりの平面構成 分と食堂が最多であった。エントランス部分は幼・老 施設で分離された計画が多かったにも拘わらず最多で あったため、自然発生的交流が最も発生しやすい空間 であることが考えられる。 5-3. 幼・老施設の接続関係と交流空間 図 3 で分類した 3 つのグループと幼・老施設の接続 関係を基に、交流空間と図面の分析を行った ( 図 4)。 その結果、幼児空間と高齢者通所空間を平面的に接続 し、それらで交流を行っているものが多く確認された。 高齢者居住空間に関しては、通所事業があるなしに関 係なく、すべて別階・別棟の計画であった。なお、計 画的交流空間は幼児・高齢者側での大きな偏りはなく、 適宜それぞれの空間に訪問することが確認された。 5-4. 保育室まわりの平面構成 最後に、保育室まわりの平面構成の分類を行った ( 図 5)。①のグループでは動線計画の都合上、保育所部分 の独立性が高い傾向にある。DS のみの施設の場合、施 設同士を積層・並置し、独立性の高い施設としたものと、 施設の中心にホールや園庭を配置し、小規模な DS と保 育所が一体性の高い計画としたものが確認された。② のグループにおいて、居住機能のみを持つ施設の保育 所にはすべて中心にホールが存在した。これは他の施 設とは異なり、DS 空間を交流空間として利用できない ことによるものだと考えられる。DS のみの施設では中 廊下の空間構成が①とは異なっていた。 施設一体計画で幼・老施設を平面的につなぐ事例は DS がある事例でのみ確認された。また、すべての事例 において居住施設部分は独立して計画がなされていた。 積層した 5 事例中 4 事例でエントランス部分の共用が 見られ、平面的なつながりを補っていると考えられる。 6. まとめと今後の課題 本研究では世代間交流が実施されている幼老複合施 設及び施設が存在する自治体を対象に、以下のことを 明らかにした。まず、全国的な自治体調査により 1) 施 設の複合化は土地の高度利用を目的として起こる都心 部のみでの現象ではなく、地方においてもより多様な 法人が各地方の問題と経営の多角化のために積極的に 参画していること。2)幼老複合施設に対する国庫補助 は大半が幼児施設と高齢者施設の各面積に応じたもの であるものの、複数の自治体において合築そのものに 対して補助を行う例が確認されたこと。次に施設調査 では、3)幼・老施設の施設面積比率は、高齢者施設の「居 住」・「通所」の機能の有無によって一定の傾向が存在し、 敷地面積は、地域、階数に関係なく 2 ∼ 3,000 ㎡に集中 すること。さらに保育室周りの平面構成の特徴として、 4)DS と高齢者居住機能の有無により幼・老施設の接続 及び保育所の施設計画に一定の傾向がみられたこと。 今後は、幼老複合施設の全国的な動向を念頭に地域 ごとの複合要因及び交流実態から捉えた交流空間の体 系化が必要であると考えられる。