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失業時生活保障のセーフティーネット

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(1)

失業時生活保障のセーフテ イー

ネッ ト 一雇用保険制度改正の課題 ―

 

失業時生活保障 のセー フテ ィーネ ッ ト

―雇用保険制度改正の課題 ―

 

 

日佐史

は じめに

現在、雇用保険改正 をめざす動 きが進 んでいる。中央職業安定審議会専 門調査委員雇用保 険部 会報告「雇用保険の見 なお しについて (中間報告)」 (1999年8月27日)をみる と、最 も強調 され ているのは「雇用保険財政の危機」である。「雇用保険が雇用面でのセーフテ ィーネッ トの中核」

であると述べてはいるが、失業時の生活保障の面で どれだけの役割 を果た しているのかについて は触れ られていない。 もっぱ ら「失業の予防、雇用の継続」が強調 され、労働移動の増加 に即 し た「職業 キャリアの形成 を支援する制度」に関心が向け られている。失業時の生活保障について は、給付削減のみがめ ざされ、前職賃金の補償 とい う雇用保険の本来的役割に照 らして どの よう な改善すべ き課題があるのかは残念 なが ら論 じられていない。

本稿 は失業時の生活保障 を改善・充実 させ る必要性 を確認 し、雇用保険法改正 にあたって検 討 すべ き課題 を明 らかに したい。

1章 失 業期 間 の長 期化・ 深 刻化 1節 失業期間の長期化

労働力調査 によれば、第1図に示 した とお り、失業期間が 1カ 月以内の短期 失業率 は・0。5%の

水準で大 きな変動がないのに反 し、失業期 間が半年以上の失業率 は90年代 に入 って上昇 しつづ け て きた。1999年 2月 の「労働力調査特別調査」では、半年以上の長期失業率は急激に上昇 し、

 2

(2)

経済研究4巻 3号

%台を越 えた。雇用保険の所定給付 日数 は最長 で300日 で あ るが 、失業期 間が それ よ りも長 い (失業期 間が調査時点で1年以上の)失業者が失業者全体 の四分 の一近 く (22.4%)を しめ る よ うになってお り、失業率でみて も1.2%へ急上昇 している。

失業の構造分析か らも、失業期間の長期化傾向が裏付 け られる。労働省の分析 によれば、失業 のなかで一貫 して比重 を高めて きたのが構造的・摩擦的失業(均衡失業)である1。 1998年平均 の完 全失業率4。1%のうち、需要不足失業率が0。9%なのに対 し、構造的 。摩擦的失業率(均衡 失業 率) は3.2%と 推計 している。全体の8割近 くを、構造的・摩擦 的失業が しめている (第 2図

)2。

1図

 

失 業 の長 期化

5.0

4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1,0 0.5 0.0

H O O ∞ 卜 ∞ 崎 ∞

∞ ∞ H∞

0 ト

一◆一 長期失業率 (1年以上)

E― 長期失業率

(半

年以上)

A― 短期失業率 (1カ 月以内)

‑0‑完

全失業率

出所 :労働省編『平成11年版労働白書』参

49、

50及び総務庁「平成11年2月 労働力調査特別調査結

(要

)」 より作成

1労働省『平成

11年

版労働 白書』、日本労働研究機構 、

1999年

7月 2日 、

P,33‑34。

2こ こでぃぅ、需要不足失業 とは、労働力需要が総量 として労働力供給を下回つている状態で存在す る失業であ り、国 民経済全体の生産により誘発 される雇用量が、すすんで働 きたい と考えるすべての人々の数を下回ることに よつて発生 する失業である。

―‑20‑―

(3)

失業時生活保障のセーフテイーネッ ト ー雇用保険制度改正の課題一

2図 構造的・ 摩擦的失業 と需要不足失業の推移

5.00

4.00

3.00

2.00

1.00

0.00

‑1.00

∞ O n 0 N O O ∞ 崎 ∞

ヽ ∞ ト 0 ト 0

∞ ト せ o 卜 8

一◆― 完全失業率

 

―‐― 構造的 。摩擦的失業率

 

A― 需要不足失業率

出所 :労 働省編『平成

11年

版労働自書』、

P。 34。

需要不足失業は景気や賃金水準 に左右 される ものであ り、日本経済が回復基調 にな り労働力需 要が増加す るか、労働市場 を均衡 させ るまで実質賃金の水準が低下することによって改善が期待 で きる ものである。他方、構造的・摩擦的失業は技能・資格・学歴 などの ミスマ ッチが要因となっ て生 じる ものであるが、これを引 き起 こす要因の中には、年齢・性 など、そ もそ も失業者本 人や 行政上の対応では取 り除 くことので きない もの も含 まれている。現時点で見る限 り短期間に景気 が回復 し需要不足失業が解消で きる望みはない。加 えて構造的・摩擦的失業の傾向的増加 は、失 業の長期化が傾向的に進むことを意味 している。99年8月 に「第9次雇用対策基本計画」が策定

摩擦的失業 とは、働 きたい と考える人が労働力需要側の求める条件 を備えていなが らも、求職情報が不足 していた り、

新 しい仕事 を探そうとする場合に費用がかかるなどで十分な求職活動がで きないために、新 しい仕事へ移行す る過程で 生ずる短期的失業である。

構造的失業は、労働力需要の構造的変化に労働力供給が適応で きない場合に発生する失業 と定義される。具体的には、

地域間、産業間、年齢間等で生 じる労働力需給の不適合による失業などであ り、①年齢や性別のように求職者の努力 に よる変更が不可能な理由による ミスマ ッチ と、②技能 ,資格 。学歴・地域など、求職者の努力 と費用負担、行政 による 職業副

1練

や費用負担により解消で きる ミスマ ッチの二つか らなる。

(以

上の定義については、前掲『労働白書』や、樋 口 美雄『労働経済学』東洋経済新報社、

1996年

、等 を参照。)

なお、構造的失業 と摩擦的失業 をあわせたものが均衡失業である。日本においては

1970年

までは均衡失業=摩擦 的失 業だったのが、それ以降、構造的失業が増大 し、

80年

代 には構造的失業 と摩擦的失業の比率が逆転 した ことはすで に指 摘 されている。

(水

野朝夫『日本の失業行動』、中央大学出版部、

1992年

3月

10日

P.132… 135。

)

(4)

経済研究4巻3号

されたが、その前提 となった「雇用政策研究会報告」は、今後 日本経済が一定の経済成長 を遂 げ て も

4%台

の失業率が継続 してい くもの と予測 している (第 1表)。 最長300日 の失業給付期 間で は、長期化す る失業 には対応 しきれない状況が進展 しているのである。

2節 失業の深刻化 と離転職 による賃金減少

失業の長期化のみな らず、失業の深刻度 を表す指標 (非自発的失業者の急増 、世帯主失業者 の 増加、仕事 を主にす る者の失業率の上昇)の悪化 も、つ とに指摘 されている ところである。

ここでは転職 。再就職 に伴 う労働条件 の低下か ら失業の深刻化 について概 観 してお こ う。失業 率が上昇 し、失業が深刻化 しているに もかかわ らず、一方で「求人は多い、贅沢 を言 わなけれ ば 仕事 はある」 とい う認識が まだ まだ根 強い ように思 われるか らである。

労働大 臣官房政策調査部「平成10年転職者総合実態調査結果 (速)」 (1999年 7月27日 )に

れば、離転職者の移動 は小 さい企業 (特5〜29人規模)への移動が多い。賃金の変動を見ると、

「賃金が減少 した」人が全体の41%を占め、とりわけ45歳を過 ぎた層 の賃金減少が著 しい (第

2

)。 3割以上賃金が減少 した人が転職者全体の うちに しめる割合 は、45〜49歳では15%、 50〜 54 歳では17%、 55〜 59歳では24%、 60歳以上では36%となっている。

日本労働研究機構が昨年 9月 に新宿公共職業安定所 の求職者 を対象 に行 なつた調査 は、求人側 と求職者の間で職業能力 0年 齢・賃金の ミスマ ッチが大 きい現状 を明 らか に した3。 調査 結 果 か

3日 本労働研究機構研究所

(労

働経済・労働需給 システム研究担当

)「

失業構造の実態調査報告

(中

間報告)一再就職が 厳 しい中高年層一」

(1999年

3月

25日

)

1表 2010年完全失業率の推計

仮 定

失業率

2010年まで国民一人あた り実質GDPが平均 して2%成 4.2%

2010年まで国民一人あた り実質GDPが平均 して1%成

5。

1%

アを基本ケースとして、以下の条件 を想定する

離職者 に占める離転職者訓練の対象者割合が 5割 増 になる

0。

4%

総実労働時間の短縮、パー トタイム労働者の増加

0.2%

65歳までの継続雇用制度の完全実施。育児休業受給率100%、 保育所在児数5割増 。

派遣労働者の就業者中比率5割増。 0.5%

出所 :雇 用政策研究会「労働力需給の展望 と課題」1999年5月 。

‑22‑―

(5)

(注

)1

2 3

失業時生活保障のセーフテ イーネ ッ ト ー雇用保険制度改正の課題一

*」

はサ ンプル数が10未満の ものである。

(  )内はそれぞれ「増加 した」、「減少 した」 を

100と

した構成比である。

離職理由の「希望退職」 とは、早期退職優遇制度、退職の募集等会社の中高年対策に応 じた定年前の 退職 をいう。

出所 :労働大臣官房政策調査部「平成10年転職者総合実態調査結果速報」

(平

11年7月

27日

)

らは、とりわけこの三つの ミスマ ッチが重な り合う中高年ホワイ トカラー失業者の再就職の困難 さがうきぼ りになった。

すなわち、再就職 した人は全体の62%、 再就職までに要 した日数は129日 とい うのが平均であ る。収入は中高年層ほど大幅に減少 し、40歳台では年収が前職564万円から約80%の457万円へ、

50歳台では526万円から75%の398万円へ減少 している (第3図)。 うま く再就職で きた人の場合 でもこうした状況である。

2表 性・ 年齢階級・ 離職理由、賃金の変化状況別転職者割合 性 。年齢

階級 。離 職理由

  

  

  

変わら ない

 

  

 

1割

未満

1〜

3

割未満

3割

以上

1割 未満

1〜

3

割未満

3割 以上

30.5(100.0) 33。6 49。

7

16。

7 28.3

41.2 (100.0)

26.5 26.4 男

27.8(100.0)

34.3

50。

7 15.0

29。

2

43.0(100.0)

23.5

46。4 30。

1 女

35。3 (100.0)

32.6 48.2 26.8

37.8 (100.0)

32.4 48.6

19歳以下 51.2(100.0) 25。

2 51.8 23.0 33.9

14。9 (100.0)

68.7 18.7 20〜

24歳 33.5(100.0)

36.2

44。4 86.5(100.0)

37.2 43.2 25‐ ‑29月

34。9(100.0)

34.8 52.0

25。

6

39.5(100.0) 28。

3 54.5 30〜

34歳 28.8(100.0) 29。

5 57.1 13.4

34。3

36。

9(100.0)

29.6 47.4 23.0

35‑39月 記 32.3(100.0)

24.8

50。

6 24.5 27.0 40。

7(100.0) 25。

3

51。

3 23.4 40〜

44歳 36.5(100.0)

38。

8 43。

5 17.7

34.6(100,0) 22。9

51.1 45〜

49歳 25。3(100.0)

32.9 47.6

19。

5 24.0 50。

7(100.0)

24.2 44.9

30。

9 50〜

54歳

23.9 (100。 0) 43,5 43.9 12.6

28。

1

48.0(100.0)

18.3 45.7 36.0 55〜

59歳 12.7(100.0)

35。 3 53.8 11.0 25。

6 61.6(100.0) 15。9

44.5 39.6

60歳以上 17.2(100.0)

24.7 67.7 28.3

54.6(100.0)

24.4

66。

8

離職理由

自己都 合 32.7(100.0)

33.5 49.4 28.6

38。7(100.0)

. 29。 7 47.8 22.5

期間満了 40。9(100.0)

23.6 46.8

29。

6

19。9

39。

2(100.0)

20.6 35.8 43.6 定 年

*(*) (*) ( *) ( *)

12.3

76.0(100.0)

26.6 63.6 出 向

24。1(100.0)

57.5 36.3 53.5

22.5(100.0)

23.8 54.4 21.7

倒産 。

整理解雇 23.2(100.0)

38.5

29。

2

47.7(100.0)

22.0 52.6 25.5

希望退職 6.1(100.0)

71.9

74.9(100.0) 45。

9 46.4

(6)

経済研究4巻3号

60歳以上の人 も含めれば、中高年失業者が求人条件 に妥協す るには前職賃金の5〜 6割に希望 賃金 を下 げざるをえず、それでは生活費、住宅 ロー ン、教育費などを積 み上 げた希望最低生活 費 を満たす ことがで きない状態 になつている。「中高年失業者の求職活動 は、羅針盤 の無 い航海 に 放 り出された ような ものであ り、偶然が支配す る不確実性 の世界 に陥 つて しまい、希望 どお りの 再就職が実現す る確 率は きわめて低 い」 とい うのが、調査担 当者の ま とめの言葉 であ る

4。

対 応 として提起 されているのは「民間企業 レベルでの求人年齢制限緩和」や「年功賃金か ら職種 別 に 応 じた仕事別賃金体系への移行」などの長期的構造的対策であ り、直面する困難 な状況がす ぐに 改善で きる ものでない ことが示唆 されている。

3図 離職・ 再就職企業での平均収入

2 9

3 0

3 9

4 0

4 9

5 0

5 9

6 0

匡ヨ離職企業

   

匡コ再就職企業

出所

:日

本労働研究機構研究所「失業構造の実態調査報告

(中

間報告)一再就職が厳 しい中高年層一」

(1999年3月

25日

、発表)

4伊藤実

(日

本労働研究機構主任研究員

)「

雇用 ミスマ ッチの解消急げ」『日本経済新聞』

1999年 5月 25日

付。

‑24‑―

(7)

失業時生活保障のセーフテ イーネ ッ ト ー雇用保険制度改正の課題一

2章

 

雇用保険 によるカバ ー率の低下

失業が長期化・深刻化するもとで、失業時生活保障のセーフティーネットとして雇用保険制度 への期待はますます大 きくなっている。しかし現実には雇用保険のカバー範囲が狭まり、失業者 の中で雇用保険にカバーされない人たちが増加 している。それを財政面からみると、失業者が増 加 し失業率が上昇する比率に、雇用保険の受給者の増加比率や給付総額の伸びの比率が一致 しな いということでもある。

1節 雇用保険加入者比率の低下

まず、雇用保険が雇用者全体の うち、どれだけの人 を加入対象者 としてカバ ー しているか を見 てみ よう (第3表「雇用保険被保険者/雇用者」)。 雇用保険被保険者 が雇用者全体 に占め る比 率 を見 る と、83年63.5%から徐 々に高 ま り90年代末 に65%を超 えたが、90年代 に入 る と急速 に 比率は低下 し、99年3月 には63%ぎ りぎりの水準 に戻 つてい る。す なわ ち雇用者5,333万人 に対 し、雇用保険被保険者は3,359万人であ り、雇用保険制度が雇用労働 者 の4割近 くを適用対 象外 としているとい うことである。

雇用者の中で も公務員等共済組合の被保険者 は離職・失業時に雇用保険給付 に代わる措置があ るために雇用保険の適用除外 とされている。公務員 を除いて、民間雇用者中の雇用保険のカバ ー 率 を見 るなら、低下傾向は一層明 らかである。ここでは同 じ労働保険である労働災害補償保 険適 用労働者 と対比 して、雇用保険のカバ ー範囲を推定 してみた (第3表、「雇用保 険被保 険者

/労

災保険適用労働者」)。 これ を見 ると比率 は80年代初頭か ら一貫 して低下 しつづけている。98年 では労災保険適用労働者4,882万人 に対 し、雇用保険被保険者 は3,420万人 、比率 に して70%に ぎない。傾向的には70%を割 りこむ事態が予想 される。実数 で約1,400万人以上 の大量 の雇用者 が雇用保険か らは抜 け落ちているのである。

比較対象 として ドイッを見 るな ら、官 吏・公務員・軍人 を除 く全雇用労働者3,032万人 中、

2,728万人、実 に90%が失業保険に加入 している。失業時生活保 障 システムであ る失業保 険か ら 抜 け落 ちる人 を極力減 らそ うとする姿勢が ドイツにおいては貫かれている5。

5拙稿「 ドイツにおける失業時生活保障」『経済』m51,1999年

12月

号、P。

69‑79、

参照。

(8)

3表 雇用保険の カバー範囲の縮小 と雇用保険未加入者失業率の上昇

年 度

雇用保険 被保険者数

(万

)

受 給 者 実 人 員

(万

)

雇 用 者

(万

)

労災保険 適用労働者

(万

)

雇用保険

被保険者 /雇用者

雇用保険 被保険者

/

労災保険 適用者

受給者比率 雇用保険 未加入者 失 業 率 受給者

/

完全失業者

1983

2,670。 9 87.2

4,208

3,451

63.5% 77.4% 55。

90/0

4。3%

1984

2,713.5 4,265 3,520

63.6%

77.10/0

50。1% 4.9%

2,781.1 4,313 3,622 64.50/0

76.8% 40。

30/0

5。7%

1986

2,821.9 67.5 4,379 3,670

64.4% 76。9% 40。

40/0

6.0%

2,879。 3 4,428 3,880

65.0%

74.20/0

37.6% 6.5%

2,962.6 4,538 3,972

65.3% 74.6%

35.50/0

6.0%

1989

3,054。 2 4,679 4,125

65.3% 74.0% 35。

60/O

5。3%

3,156。 9 4,835 4,322

65.3%

73.00/0 36.00/0

4.9%

3,251。 7 5,002 4,447

65.0%

73.10/0

36.3% 4.7%

1992 3,324。 6 5,119

4,583

64.90/0 72.50/0

40.2% 4.5%

3,358。 1 5,202 4,663 64.60/0 72.00/0 42.10/0

5.0%

3,381.5 5,236 4,702 64.60/0

71.9% 40,6% 5.8%

1995

3,398。 1 5,263 4,725 64.60/0

71.9% 39。

90/0

6.3%

1996

3,419。

9 84。4

5,322 4,790 64。 30/0

71。4%

37.50/0

6.9%

1997

3,438。 7 5,391 4,844

63.8% 71.0%

39.10/0

6.7%

3,419。 5 105.3 5,368 4,882

63.7%

70.00/o

37.7% 8。2%

1999。 3 3.358.6 102.7 5,333 4,882 63.00/0

68。8% 32.7% 9。7%

出所

:・

『雇用保険事業年報』及び『労働白書』各年版をもとに作成。

経済研究4巻3号

この最大の要因は、雇用保険の適用除外規定が緩やかで、多 くの雇用者を適用対象外としてい ることにある。ここでいう適用除外は、雇用保険法第 6条 に規定されているだけでなく、行政上 の運用にも左右されている6。 具体例を列挙するなら、①年齢が65歳以上のもの、②季節的労働 (4カ月以内の雇用)、 ③公務員等、④法人の代表者、役員、⑤各種団体の役員、⑥昼間学生、

6雇用保険法は、次の ように適用除外 を規定 している

(雇

用保険法第6条)。

「次の各号 に掲げる者 については、この法律は、適用 しない。

1 65歳に達 した 日以後 に雇用 される者

(同

一の事業主の適用事業に同日の前 日か ら引 き続いて

65歳

に達 した 日以後 の 日において雇用 されている者及びこの法律 を適用することとした場合において第

38条

1項に規定す る短期雇用 特例被保険者又は第

43条

1項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除 く。)

1の2。 短時間労働者 (1週間の所定労働時間が、同一の適用事業 に雇用 される通常の労働者の1週間の所定労働 時 間に比 し短 く、かつ、労働大臣の定める時間数未満である者 をいう。第

13条

1項1号において同 じ。)であつて、

38条

1項各号 に掲げる者に該当するもの

(こ

の法律 を適用することとした場合において第

43条

1項に規定す る日雇労働被保険者に該当することとなる者 を除 く。)

1の3.第

42条

に規定する日雇労働者であつて、第

43条

1項各号のいずれに も該当 しない もの

(労

働省令 で定 め る ところにより公共職業安定所長の認可を受けた者を除 く。)

2 4箇月以内の期間を予定 して行われる季節的事業 に雇用 される者

船員保険法

(昭

14年

法律第

73号

)第

17条

の規定による船員保険の被保険者

国、都道府県、市町村その他 これ らに準ずるものの事業 に雇用 される者の うち、離職 した場合 に、他 の法令 、条 例、規則等 に基づいて支給 を受けるべ き諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容 を超 える と認 め られ

る者であつて、労働省令で定めるもの」。

―‑26‑―

(9)

失業時生活保障のセーフテ イーネッ ト ー雇用保険制度改正の課題 一

⑦外務員 ,外 交員 (事業主との委任関係)、 ③短時間就労者

(パ

ートタイム労働者

)7、

⑨臨時的内 職的に雇用 されるもの、⑩国外で就労するもの、⑪在 日外国人 (雇用関係の終了 と同時に帰国す ることが明らかな者)、 ⑫派遣労働者 (所定労働 日もしくは所定労働時間が極めて少 ない、 また は期間を限った派遣就業)である。使用者 との間に雇用関係があるかどうかを基準にするだけで なく、雇用期間によつても制限され、パー トタイマーでも就労が1年を超 える見込みのない場合 は、あらか じめ雇用保険の対象にはしないという対応をしている。派遣労働者や短期契約労働者な どが適用外 となる。また、昼間学生、短時間就労者、内職者など家計補助的な就労者は失業状態に なっても生活保障給付を必要としないので、雇用保険の対象としないという考え方が示されている。

こうしたことから、現在不安定な雇用形態にある人たち、すなわち、失業に直面するリスクが大 きい雇用形態にある人たちが、実際には雇用保険にカバーされていないという事態が生 じている。。

2節 受給者比率の低下

雇用保険に加入 し失業 とい うリスクに備 えている人の比率が低下 して きた結果、実際 に失業 し た際 に、雇用保険か ら給付 を受 けることがで きる人の割合 も低下 して きた。完全失業者 と雇用保 険受給者の推移 を示 したのが、第4図である。雇用保険の求職者給付受給者 は、90年代 に入 つて 増加 して きたが完全失業者の急激 な増加 に比べ るとギ ャップが拡大 している。第3表に も示 した ように、月平均の雇用保険求職者給付受給者数は大 きく変動 している。絶対数では90年代初 頭 に 50万人 を切 った受給者が、百万人を越 えるまで急増 して きた。 しか し、完全失業者 中に占め る 雇用保険受給者比率 をみ る と、80年代初頭 には60%近かったのが、逆に33%を割るまで大 きく低下 して きた。完全失業者のうち雇用保険か ら給付 を受けているのは三分の一の人に過 ぎないのである。

ちなみに20年間長期大量失業 に直面 して きた ドイツでは、登録失業者 の うち44%が失業保 険給 付 を受給 している。さらに30%が失業扶助給付 を受給 している。あわせて失業者の うち四分 の三 が失業時の生活保障給付 を受給 している。いずれ も受給で きない失業者 とその家族が困窮状態 に なれば、最後のセーフテ イーネ ッ トである公的扶助 (社会扶助)から生活保障給付が支給 されて

7短時間就労者が被保険者 となるのは、イ)1週間の所定労働時間カリ

0時

間以上で、口)1年以上引 き続 き雇用されること が見こまれ、ハ)収入の年額力鴻

0万

円以上あると見 こまれる場合である。これを満たさなければ、適用対象 とならない。

8雇用保険のカバー率が低下 している要因として、業績不振や労働 コス トの重 さを理由に、雇用保険の手続 きを怠 って いる企業が増加 していることもあげられよう。これが どの程度存在するかを示す資料はないが、企業が負担の重 さを理 由に して雇用保険を始め とする社会保険保険料 を拠出 しないでいるのに対 し、監督官庁が「理解ある対応」 を してい る

とい う話は良 く聞 くこところである。

(10)

経済研究4巻 3号

いる9。 これ と比べ ると、日本ではそ もそ も雇用保険給付 を受給 している人の割合が低 く、 しか もそれ を補完す る他の給付 は機能 していない。最後のセーフテ ィーネッ トである生活保護におい て、法の主 旨に反 し、稼働能力 を有す る失業者 に対 し補足性原理 をたてにして給付 を認めない と い う運用が されているのは周知の事態である。

失業率が高 ま り、失業が長期化 0深 刻化す るもとで、雇用保険が失業者及びその家族の生活 を 保障す るカバ ー範囲は、期待 に反 して低下 して きているのである。

この ことは、前掲第3表の「雇用保険未加入者失業率」が急上昇 していることか らも裏付 け ら れる。この指標 は、雇用保険の対象外の ところで失業が増加 している日本の現状 を的確 に示 す も のであるЮ。90年代初頭 には4.5%ま で低下 していたこの雇用保険未加入者失業率 は、90年代 後半 に急上昇 し、10%に達 しようとしている。雇用保険制度が失業 に直面 した労働者及びその家族 の 生活 を保障する制度 としては、その役割 を縮小 させて きていることが ここに明 らかである。

4図 完全失業者 と雇用保険求職者給付受給者の推移

(万

)

350

300

250

200

150

100

50

0

19831984198519861987198819891990199119921993199419951996199719981999.3

出所 :『 雇用保険事業年報』及び『労働白書』各年版をもとに作成。

9前 掲拙稿、参照。

Ю雇用保険未加入失業率=(完全失業者一受給者

)÷ 1(雇

用者一被保険者

)十 (完

全失業者一受給者

)│

この指標については、大竹文雄「失業と雇用保険制度」『季刊理論経済学』第

37巻

第 3号 、および、水野朝夫『日本 の失業行動』中央大学出版、

1992年

P。

284、

を参照。

―…

28‑―

(11)

失業時生活保障のセーフテ イーネッ ト ー雇用保険制度改正の課題一

3節

 

給付制限

完全失業者に占める雇用保険受給者の比率が低下 しているが、さらに指摘 しておかなければな らないのは、受給資格があったとしても、失業 してからす ぐに受給ができるわけではないとい う 現状である。いわゆる自己都合離職者への「給付制限」の問題である

n。

正当な理由な く自己の 都合で離職 した場合、就労の意思が弱いとみなされ、制裁 として1カ月もしくは3カ月、支給開 始が先延ば しにされる。

ここで確認 してお くべ きは、自己都合退職なら全てこの制裁を受けるのではな く、「正当な理 由」のある自己都合離職は制裁の対象 とならないことである。「正当な理由」の事例は以下のよ うなものである。

① 結婚に伴 う住所移転のため、通勤が困難になった。

② 育児を親族に依頼するため、事業所への通勤が困難になった。

③ 親族の疾病のため、本人の看護が必要になった。

④ 採用条件 と実際の労働条件が著 しく異なる。

③ 賃金の未払い、遅配が続いた。

③ 賃金が安い (同種での75%以)など、19項目。

会社側の問題が理由で退職 したにもかかわらず、形式上は自己都合 という形を取 らざるを得 な い例は決 して少なくない。また、育児や介護は社会的に必要なものとの認識 も高まっている。に もかかわらず「正当な理由」は限定されたまま運用 されてきた。こうしたことから、3カ 月の給 付制限の件数は非常に多い (第4表、第5表)。

99年3月 をとれば、受給資格が認定された件数が21万件、当月の初回受給者が16.6万 (第 6 )に対 し、給付制限 (3カ 月)の件数は9。7万件 という多さである。実務 を見 るなら、給付制 限期間が1カ月という事例は少なく、ほとんどが給付制限3カ月となっている。給付 を制限する としても、期間を短縮するよう、基準要件を再検討することがのぞまれる。

Hこれは雇用保険法第

33条

にもとづ く。

「被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職し

た場合には、第

21条

の規定による期間の満了後1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期 間は、基本 手当を支給 しない。ただ し、公共職業安定所長の指示 した公共職業訓練等 を受ける期間及び当該公共職業訓練等 を受 け終わった 日後の期間については、この限 りでない。

(12)

経済研究4巻 3号

4表

 

給付 制 限状 況 (短 時 間 を含 む)

(平

成 9年 度、単位 :件)

一般      1,077,264

自己都合退職

      1,075,743

うち一カ月

       10,322

重責解雇

      1,319

うち一カ月

       24

就職拒否

      1

職業訓練拒否

       200

職業指導拒否

      1

高年齢

      2,887

自己都合退職 うち一 カ月 重責解雇 うち一 カ月 その他 8 5 9 0 0 特例

       1,078

自己都合退職 うち一 カ月 重責解雇 うち一 カ月 その他 出所 :『 雇用保険事業年報 (9年)』

P。

37 5表  (一+短時 間)給付制 限 (短 時 間高齢 を除 く

)平

成 11年 3月 +      97,538 自己都合退職

      97,357

重責解雇

       154

就職拒否

      1

職業訓練拒否

      25

離職表提出

       222,502

受給資格決定

      219,117

出所 :『 雇用保険事業月報』

(平

11年3月)、

P。 32,

P44よ り作成

6表 平成11年 3月 給付状況 [一+短時間(短時間高齢者 を除 く

)]

初回受給者

         1    165,796

受給実人員

         1   1,084,931

資料出所 :『 雇用保 険事業 月報』(平11年

3月

)、

P.34

‑30‑―

(13)

失業時生活保障のセーフテ イーネ ッ ト ー雇用保険制度改正の課題 ―

3章 雇用保 険給 付 の構 造 1節 失業等給付の構造

雇用保険制度 にお ける給付の構造は第5図に示 した とお りである。失業の予防や失業 を経 ない 労働力移動 な どを 目的 とするいわゆる「三事業」の検討は別の機会 に譲 り、ここでは失業時 の生 活保障セーフティーネ ッ トの基本である「失業等給付」を見てお こう。

失業等給付 の中心 は求職者給付であ り、「労使の雇用関係 を前提 に、一時的 にその雇用 関係 か ら外れた (=離)労働者が、再 び雇用関係 に入 ろうとする意思能力 を有す るに もかかわ らず就 職で きない場合 (=失)に、必要 な給付 を行い、その生活の安定 を図 りつつ再就職 を援 助 しよ うとい うものである」2。

5図に示 したように求職者給付 は対象の特性 に応 じて一般、高年齢、短期雇用、日雇の4本 の柱か らなっているが、予算額か ら見てそのほ とん どを しめているのが一般求職者給付 (基本手 )である。月平均 の受給者実人員は増加 して きてお り、95年度では83万人だったのが 、98年 6 月には100万人 を超 えた。支給額 は月額で1,700億円、年間2兆円規模 に達 した。99年度一 般求職 者給付予算 は約2兆円であ り、雇用保険予算総額3.3兆円の6割を しめている。(第 7表、第8表)

失業者各 自にとつての給付総額 は、給付 日数 と給付額

(日

)で決 まって くる。

給付 日数 は離職時における「年齢」 と「被保険者であった期 間(算定基礎期 間)」 に応 じて、90

300日の間 となる。この受給期 間が満了 して も失業状態が継続 してい る場合 には、延長給付 制 度 として、個別延長給付 、訓練延長給付 、広域延長給付及 び全国延長給付が設け られている。 た だ し、その運用実態 は第7表に示 した ように広域延長給付 の適用 は皆無であ り、個別延長給付 で

も年間総数で15万人ほ ど、月平均でみると3万人 とい う少 なさである。

給付額 (給付 日額)は、離職前 6カ 月間の賃金の合計 (ボーナス除 く)を180で除 した額 (賃 金 日額)に、その賃金 日額 に応 じた率 (60歳未満 な ら60〜80%、 60歳以上65歳未満 なら50〜80%) を乗 じた額 となる。前職の賃金が低い場合 には乗 じる率が80%、 高賃金 だった場合 には60%と うように、前職賃金の多寡 によって、給付 日額が調整 される。また、給付 日額 には上限が設定 さ れているが、単身生活が想定 される30歳未満では上限額 を低 くし、年齢か らして被扶養家族 を多 く抱 えている世代であろう45歳60歳未満層の上 限額が一番高 く設定 されている。

12中

央職業安定審議会専門調査委員雇用保険部会報告「雇用保険の見なお しについて

(中

間報告)」

1999年

8月

27日

り。

(14)

5図 雇用保険制度の概要 2兆円】

保険料率

14.5/1,000 (但

5年度以降

当分の間は

11.5/1,000)

財源

・ 保険料

(労

使折半)

料率 11.0/1,000

(但

5年度以降

当分の間は

8.0/1,000)

・ 国庫負担

・ 国庫負担 1/4

(但

5年度以降

当分の間は

1/5) (更

10年

度以降当

分の間はこの7割)

・ 国庫負担 1/8

(但

5年度以降

当分の間は1/10)

(更

10年

度以降当 分の間はこの7割)

530億円】

1,1∞

億円】

280億円】

2,4∞

億円】

270億円】

900億円】

320億円】

130億円】

予算で取崩 し 。支出弾力

(雇

用調整助成金等)

(職

業能力開発施設の設置運営等)

被保険者であつた期間、年齢等により90〜 300日 (短時間の受給資格者については90〜

210日

)

65歳以上の失業者に対 し、被保険者であつた期間 によリー時金 として30〜

75日

季節労働者 に一時金 として

50日

失業のつ ど一 日単位

支給残 日数に応 じて一時金 として30〜

120日

教育訓練の受講に係 る費用の80%相当額 を支給

60歳以後の賃金額の25%相当額 を支給

育児休業取得前の賃金額の25%相当額 を支給

介護休業取得前の賃金額の25%相当額 を支給

︱ l ω N I I

7,0∞

億円】

財源

・ 保険料 (事業主のみ負担)

料率 3.5/1,000

(注

)【金額】は11年度予算額。

雇用安定事業 能力開発事業 雇用福祉事業

一 般 求 職 者 給 付 (基 本 手 当)

求 職 者 給 付 失 業 等 給 付

高 年 齢 求 職 者 給 付

日雇労働求職者給付

教 育 訓 練 給 付 金

高年齢雇用継続給付

育 児 休 業 給 付

介 護 休 業 給 付

(労働者の就職、雇入れ等 についての相談、援助等)

剰余組 入 れ

(15)

回 受 給 受 給 者 実 人 員

95年   96年   97年 95年  96年  97年 95年

     96年

     97年

基本手当

基本分 個別延長給付 訓練延長給付 広域延長給付 特例訓練給付

1,717,302   1,705,895   1,881,073 78,471     134,036     154,902 35,169      34,807      36,680 0       0       0 641         619         661

836,587   843,985   898,980 17,749    27,330    34,511 11,266    11,198    11,743 0         0         0 265       258       271

1,488,888,634   1,544,813,704   1,678,941,571 1,444,172,024   1,481,145,819   1,600,537,905 23,278,975      42,275,365      55,776,254 20,908,546      20,884,272      22,068,219 0       0       0 529,089         508,248         559,192 技能習得手当

受講手当 特定職種受講手当 通所手当

42,730      42,467      44,516 2,784       2,658       2,972 40,198      39,966      41,981

19,693    19,730    20,845 1,672     1,569     1,730 18,464    18,534    19,603

4,749,514       4,766,962       5,043,812 2,606,801       2,595,950       2,730,311 40,499      38,504      42,061 2,102,214       2,132,508       2,271,440

寄宿手当 8,811       7,231       5,716

傷病手当 16,930      16,698      16,636 3,605     3,624     3,493 7,470,359       7,683,115       7,518,843 7表 求職者給付の支給状況

出所:『雇用保険事業年報』

(平

9年)、

P。 11

8表 一般求職者給付 (基本手当)受給者 の推移

(単

:人、千 円)

! l ω ∞ ︱ ︱

初回受給者

(千

) 受給者実人員

(千

) 支給額

(百

万円)

1998年

3月 141,049

4月 142,688

5月 139,904

6月 1,045 162,752

7月 1,094

171,004

8月 1,107

162,798

9月 1,110 174.457

10月 1,100 169。

655

11月 1,065 159。

128

12月 1,063 159,289

1999年

1月 1,052

168.548

2月 1,046

147.860

(16)

経済研究4巻 3号

2節 求職者給付の給付水準

日本の雇用保険給付 については、「すべての視点 (給付額、給付期間、家族形態)を考慮 に入 れて総合的に判断すると、OECD諸国の中でわが国の失業保険制度の手厚 さは最低であ る」 との 橘木氏 による厳 しい批判があるB。 氏 は低 さの要因 として、日本の雇用保 険制度 はボーナス を保 険料拠 出の算定 には入れるが、給付額決定の際の前職賃金の中には算入 していないことをあげ、

日本の雇用保険の置 き換 え率が約30%に過 ぎない と結論 している。 また最 長で300日 とい う失業 給付給付 日数 は、他の国 と比較 した とき極端 に短い ことを指摘 している。

ここでは、失業世帯の実質可処分所得ベースによ りちかづけた検討 をするため、失業保険 の前 職賃金の置 き換 え率 に加 えて、税負担、社会的給付 (公的扶助、住宅手当、児童手当)を組 み込 んだOECDの研究成果 をもとに、 日本の失業時生活保障給付 の代替率 を検討 しておこう(第9表)。

これによると日本では平均的賃金 を得ていた40歳単 身男性が失業 に陥った場合、生活保障給付 と して雇用保険か らだけ給付 を受け、それに対す る課税 はな く、結局、前職賃金の63%が保 障 され ることになる。四人家族 (40歳男性で平均賃金 を得ていた夫が失業、妻は専業主婦、子供2人)

の場合 は、代替率は若干低下 し59%となっている。

国際的にみて失業時の生活保障水準 としては可処分所得ベースで70〜80%の代替率 を保障す る ことが 目標 とされている状況か らす ると、充分 な水準 にあるとは言 えない。第9表に示 されてい るように、日本 は家族扶助や住宅扶助 など雇用保険 を補完する失業時所得保障給付 を持たない。

雇用保険の給付水準の引 き上げが失業者の生活 を支 える唯一の手段 なのである。

なお可処分所得ベース とい う点では、このOECDの分析 はまだ不充分である。社会保 険料負担 が検討 されていないか らである。例 えば ドイツでは失業者が失業保険 もしくは失業扶助 を受給 し ている間、公的医療保険等の社会保険料 は国及び連邦雇用庁が肩代 わ りしていることに着 目しな ければならない。 日本 と異 な り、社会保険料支払いが失業者の家計 を圧迫す ることはな く、その 分 だけ可処分所得 を引 き上げ失業者の家計 を楽 に している。 ドイツにおける可処分所得ベースの 代替率 はこの表 に示 された数値 よ り高い もの と評価で きる。ひるがえって 日本では離職 した場合、

被用者健康保険の任意継続被保険者 となるか、国民健康保険に加入することになるが、いず れ に して も保険料 は全額本人負担である。「雇用情勢の悪化で失業 したサラ リーマ ンが企業 の健康保 険か ら国保 に移 る事態が進 んでいる」

(『

日本経済新聞』1999年11月 2日 付)が、保険料 は前 年収

13橘

木俊詔「失業時の所得保障制度の役割 とその経済効果」、『 日本労働研究雑誌』、

No。 466、

19"年5月 号、

P.43。

―‑34‑―

(17)

失業時生活保障のセーフテイーネット ー雇用保険制度改正の課題一

入 を基礎 に算定 されるため、失業世帯 は高い医療保険料 を雇用保険給付やそれ までの蓄 えの中か ら正面 しなければな らず、生活が大 きく圧迫 されて しまうのが現実である。失業の深刻化 に よつ て保険料が拠 出で きない層が増加 し、無保険者が増加することが危惧 される。

以上 は失業 して 1カ 月後で、雇用保険 を受給で きている世帯 を前提 に した生活保障水準である。

先の事例の40歳男性 は最長210日間 しか雇用保険 を受給で きない。 日本 の雇用 保 険の給付 日数が 世界的に見て短 く限定 されていることは、橘木氏が強調 しているとお りである。失業が長期化 す

るな ら様相は一変 し、貧困に直面することになる。

そ もそ も雇用保険 を受給で きるとい う前提が完全失業者の三分の一に しかあてはまらないこと は先 に見た とお りである。給付 日数が短いことも日本の特徴である。 しか し、雇用保険に加入 し ていなかつた失業者、加入期間が受給要件 に満たない失業者、雇用保険の給付 日数が満了 して も 仕事 に就 けない失業者 に対 して、 日本では労働政策 として次 なる所得保障のセーフテ イーネ ッ ト を用意 していない。これ らの失業者及びその家族が困窮 に直面 した場合 、生活保護制度が最後 の セーフテ ィーネッ トとしてその世帯の文化的社会的生活 を保障す ることにはなっている。ただし、

良 く知 られていることであるが、稼働能力 を有する人が生活保護の申請のために福祉事務所 を訪 れて も、「就労可能」 とい うことで申請 もなかなかで きないのが 日本の生活保護 の運用実態 であ る。雇用保険の枠か ら外れた失業者 とその家族に対 してどの程度の水準で生活保障が なされている のか

│よ

制度の建前 をもとにするのでな く、こうした運用実態 を踏 まえて検討 しなければならない。

雇用保険制度の見直 しにあたつて、「年功賃金体系の もとで、直前の賃金水 準 だけ を基 に失業 給付額 を決定 していると、中高年 は生産性以上の賃金の職 を求め続 け、長期失業 を経験す る こ と になる。この問題 を解消す るためには、失業給付 をよ り長期の賃金か ら算定す るか、定額常1度 す ることである。社会保険の役割 として、失業直前の生活保障が重要であるとい う意見 もある。

た しかに、流動性制約 に直面 している場合 には、重要である。その意味 で は、失職直後 の2,3カ 月は、失職直前の賃金 を基 に算定す ることも意味がある。 しか し、長期の給付 をその水準で行 う 合理的理由にはな らない」 とい う見解があるM。 この ように前職賃金保 障の原則 は3カ 月 まで と し、それ をす ぎれば「長期の給付」 となるので、「給付額 を逓減 させ る」 とい うのは以上 の現状 を踏 まえれば、今で さえ代替率が低 い失業者世帯 に大幅な給付削減 をもた らす ものであ り、極論 といわ ざるをえない。

14大

竹文雄「高失業率時代における雇用政策」『日本労働研究雑誌』

No。 466、 1999年 5月

号、P。

23.

参照

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3 日本労働研究雑誌

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     補足的失業補僧制の生成      二八

*2 支給要件期間とは ◆