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谷 謙甫

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多次元検出器による強度変調放射線治療の 吸収線量分布検証に関する研究

2018

9

首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 博士後期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域

谷 謙甫

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博 士 学 位 論 文

多次元検出器による強度変調放射線治療の 吸収線量分布検証に関する研究

2018

7

6

日 提出

首都大学東京大学院

人間健康科学研究科 博士後期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域

学修番号:13997603 氏 名:谷 謙甫

指導教員名:齋藤 秀敏)

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2018

年度 博士後期課程学位論文要旨

強度変調放射線治療(Intensity modulated radiation therapy; IMRT)は、標的へ、その形状 に一致した高線量分布を投与すると同時に、近接するリスク臓器への線量を低減すること が可能な効果的な照射方法である。最終的に患者に投与されるIMRT線量分布の品質を保 証するためには、リニアック、治療計画装置、臨床において、それぞれ線量分布の確かさ を保証する必要がある。IMRT 線量検証の目的は、リニアックの投与線量分布および治療 計画装置の計算線量分布の確かさを検証することである。しかし、そのリニアックおよび 治療計画装置、双方の線量分布の確かさを検証するためのIMRT線量検証システムもまた 不確かさを有している。そのため、最終的に患者に投与されるIMRT線量分布の品質を保 証するためには、まずIMRT線量検証システムの確かさを保証することが重要である。

IMRT線量検証システムに求められる要件は、1) 吸収線量評価が可能であること、2) 心領域における累積線量分布評価が可能であること、さらに3) 3次元での線量分布評価が 可能であることである。すなわち3次元吸収線量分布検証である。一般的な線量検証方法 である電離箱線量計による評価点吸収線量検証およびフィルムによる相対線量分布検証で は、これらの要件を満たすことは難しい。そのため、3 次元吸収線量分布検証を実現する ためには、関心領域における累積線量分布評価が可能な多次元検出器を用いることが現在、

最も可能性が高いと考えられる。しかし、その多次元検出器を用いて確かな3次元吸収線 量分布検証を実現するためには2つの問題点がある。本論文では、関心領域における累積 線量分布評価が可能な多次元検出器であるDelta4(ScandiDos, Inc., Ashland, VA)に注目し て、その2つの問題点に対して、吸収線量分布検証に関する研究を行った。

学位論文題名

多次元検出器による強度変調放射線治療の吸収線量分布検証に関する研究

学位の種類: 博士(放射線学)

首都大学東京大学院

人間健康科学研究科 博士後期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域 学修番号 13997603

氏 名: 谷 謙甫

(指導教員名: 齋藤 秀敏 )

(9)

1 つ目の問題点は、検出器のクロスキャリブレーションにおいて、固体ファントム中の 水吸収線量の評価が不確かであるため、多次元検出器の測定線量分布が不確かであること である。そのため、Delta4検出器の校正線量の確かさについて研究を行った。通常、Delta4 のクロスキャリブレーションでは、固体ファントム中に挿入した電離箱線量計の表示値を、

水ファントム中の水吸収線量の標準計測プロトコルと同様に、線量評価を行う。しかし、

このフォーマリズムにより得られた吸収線量が確かな固体ファントム中の水吸収線量であ るかどうかは明らかになっていない。そのため、本研究では、我々が測定可能な吸収線量 は水ファントム中の水吸収線量のみであるとし、電離箱線量計を用いて測定した水ファン トム中の水吸収線量から、理論計算により固体ファントム中の水吸収線量を求めた。その 理論計算により求めた固体ファントム中の水吸収線量と、固体ファントム中の電離箱線量 計の表示値に対して水吸収線量計測プロトコルに従い評価した測定線量を比較した。本比

較によりDelta4のクロスキャリブレーションにおける水吸収線量評価の確かさを明らかに

し、Delta4の測定線量分布の確かさを明らかにした。

2 つ目の問題点は、ファントム材質に対する最適な密度スケーリング係数が明らかにな っていないため、ファントム中の計算線量分布が不確かであることである。そのため、

Delta4 ファントムの密度スケーリング係数について研究を行った。Delta4 に関する先行研

究は多く、IMRT Patient-Specific QAにおける臨床使用、IMRTのコミッショニング、また は線量計算アルゴリズムの比較など、Delta4は様々な線量検証に使用されている。しかし、

これまでに Delta4 ファントムの最適な密度スケーリング係数が明らかになっていないた め、それらの先行研究では同一システムを使用しているにもかかわらず、密度スケーリン グ係数の違いにより、約2 %の線量差が生じている。そのため、本研究では、測定および 計算の相対深部線量の比較から密度スケーリング係数を求める方法を提案し、本研究の密 度スケーリング係数DSFを求めた。さらに公称物理密度、公称相対電子密度、DSFをそれ ぞれ密度スケーリング係数に採用し、線量検証を行い、Detla4 ファントムの最適な密度ス ケーリング係数を明らかにした。

本研究結果により、Delta4の測定線量分布およびDelta4ファントム中の計算線量分布の 確かさが保証されたため、Delta4によるIMRT3次元吸収線量分布検証が可能になった。

今後、本研究結果が、各施設のDelta4によるIMRT線量検証のためのリファレンスの1つ となり、最終的には各患者に投与されるIMRT線量分布の品質の向上に寄与することを期 待する。

(10)

目次

要旨

1章 序論 ... 1

1.1 強度変調放射線治療(IMRT)の技術的概要 ... 1

1.2 IMRT線量分布の特⾧と不確かさ ... 4

1.2.1 IMRTの特⾧と注意点 ... 4

1.2.2 IMRT線量分布の不確かさ ... 7

1.2.2.1 投与線量分布へ影響を与える因子... 8

1.2.2.2 計算線量分布へ影響を与える因子... 10

1.3 IMRT線量検証... 13

1.3.1 IMRT線量検証の目的と許容値 ... 13

1.3.2 IMRT線量検証に使用される代表的な検出器の特性 ... 16

1.3.3 IMRTの第3者評価 ... 19

1.3.4 IMRT線量検証における問題点 ... 21

1.4 研究の目的 ... 25

1.5 論文の構成 ... 26

2章 多次元検出器Delta4 ... 28

2.1 Delta4の概要 ... 29

2.2 Delta4による IMRT線量検証における問題点 ... 31

3章 電離量変換係数算出のフォーマリズム ... 33

3.1 背景 ... 33

3.2 目的 ... 40

3.3 方法 ... 41

3.4 結果・考察 ... 44

3.5 結論 ... 48

(11)

4章 多次元検出器クロスキャリブレーションのための水吸収線量評価 ... 49

4.1 目的 ... 49

4.2 方法 ... 51

4.3 結果 ... 54

4.4 考察 ... 55

4.5 結論 ... 56

5章 多次元検出器ファントム材質の密度スケーリング係数 ... 57

5.1 背景 ... 57

5.2 目的 ... 59

5.3 方法 ... 60

5.4 結果 ... 64

5.5 考察 ... 68

5.6 結論 ... 70

6章 最適な密度スケーリング係数の評価 ... 71

6.1 目的 ... 71

6.2 方法 ... 73

6.3 結果 ... 75

6.4 考察 ... 84

6.5 結論 ... 86

7章 結語 ... 87

参考文献 ... 90

謝辞 ... 96

(12)
(13)

1

1 章 序 論

1.1 強度変調放射線治療IMRTの技術的概要

強度変調放射線治療(Intensity modulated radiation therapy; IMRT)とは、「リスク臓器等に 近接する標的への限局的な照射において、空間的・時間的に強度変調を施した線束を利用 し、逆方向治療計画にてリスク臓器等を避けながら標的形状と一致した最適な3次元線量 分布を作成し治療する照射療法」と、日本放射線腫瘍学会より発刊されたガイドライン 1) において定義されている。

1.1に前立腺癌に対する、3次元原体照射(3 dimensional conformal radiation therapy; 3D-

CRT)、およびIMRTそれぞれの治療計画線量分布の一例を示した。ビーム角度に依存した

線量分布を形成している 3D-CRT に比べて、IMRT では、直腸などのリスク臓器および標 的の外側で線量を急峻に低減できていると共に、標的には、その形状に一致した高線量分 布を形成している。

(a)3D-CRT線量分布 (b)IMRT線量分布

1.1 前立腺癌に対する(a)3D-CRTおよび(b)IMRTの計画線量分布の一例

(14)

2

治療計画装置(Radiation treatment planning system; RTPS)での3D-CRT治療計画では、計 画立案者は標的等に対して、ビームの照射角度、照射形状および照射線量を設定し、治療 計画装置が計算した線量分布をDose volume histogram(DVH)上などで評価する事で計画 を作成する。

IMRTで用いられる逆方向治療計画(Inverse planning)は、DVH上で、ターゲットやリ スク臓器などの関心領域(Region of interest; ROI)に対して、線量制約とその優先度を設定 し、望ましい線量分布が得られるような照射野形状とその投与線量、すなわちセグメント を最適化計算によって求める計画手法である。逆方向治療計画は図 1.2 に示すように、主 2つの最適化を繰り返し計算する。1 つはフルエンスマップの最適化であり、設定され た線量制約を満たすようにフルエンスマップの最適化を行う。もう1つは、そのフルエン スマップを再現するためのセグメントの最適化を行う。その最適化されたセグメントより 線量計算された体内線量分布と、設定された線量制約との相違を最小化するように、これ らの2つの最適化および線量計算を繰り返し行い、最終的には最適化されたセグメントか ら成る治療ビームを作成する。

1.2 逆方向治療計画における最適化計算の概要2)

Optimize 1.

フルエンスマップの最適化 Optimize 2.

セグメントの最適化

体内線量分布と線量制約の相違を評価

(15)

3

使用する装置によって強度変調方法および照射方法は様々であるが、最も多くの施設で 実施されているのは、汎用型リニアックに搭載されているMulti-leaf collimator(MLC)を 用いた方法である。本論文では主にこのMLCを用いたIMRTについて述べる。

この MLC を用いた強度変調方法には、主に 2 つの方法があり、segmental multi-leaf collimator IMRT(SMLC)とdynamic multi-leaf collimator IMRT(DMLC)に大別される1) SMLC は、複数の固定ガントリー角度において、照射野形状を照射中は一定にし、照射停 止中に MLCを移動させ、照射野形状を変化させる方法で、一般的にStep & Shoot と呼ば れている。

DMLC は、複数の固定ガントリー角度において、照射中に MLC を移動させ、照射野形 状を連続的に変化させながら強度変調させる方法である。このDMLCに加えて、同時にガ ントリーを回転させ、そのガントリー回転速度および照射線量率も変調させる回転型の IMRTは、Volumetric modulated radiation therapy(VMAT)と呼ばれている。他の強度変調方 法として、TomoTherapy(Accuray)によるHelical IMRTや、CyberKnife(Accuray)による 多数のナロービームを利用した集光的な強度変調方法などがある。

IMRTでは、主にMLCに関して、リニアックの幾何学的誤差および治療計画装置の線量 計算パラメータのわずかな違いが、最終的に患者に投与される線量に大きく影響を与える 危険性を含んでいる。そのため、IMRTを臨床導入するためには、MLCの位置精度を中心 としたリニアックの品質保証に加えて、治療計画装置の線量計算パラメータが最適である かどうかの検証および最適化を行うコミッショニングを十分に実施する必要がある。しか し、インバースプランニングにて立案される患者ごとに異なる全ての照射条件をこのコミ ッショニング過程で確認することは困難である 1)。そのため、いずれの照射方法を利用す る場合においても、全てのIMRT治療計画に対して、治療開始前に線量検証を実施し、リ ニアックの投与線量分布および治療計画装置の計算線量分布の確かさ、およびその安全性 を確認しなければならない1,3-6)

(16)

4 1.2 IMRT線量分布の特長と不確かさ

1.2.1 IMRTの特長と注意点

IMRT とはリスク臓器等を避けながら標的形状と一致した最適な 3次元線量分布を作成 し治療する照射方法である1)。そのため、IMRTの特⾧は、標的には従来よりも高線量を投 与することで治療効果を高める可能性があることと同時に、リスク臓器内もしくは近傍で 急峻な線量勾配を作成することで、副作用を低減することが可能なことである。

Zelefsky らは、前立腺癌に対する放射線治療において、投与線量の違いによる前立腺特

異抗原(Prostate-specific antigen; PSA)の無再発生存割合、およびGrade 2以上の晩期直腸 障害発生率に関して報告している7)。この報告では、高リスク前立腺癌における5PSA 無再発生存割合が、図1.3に示したように、81 Gy投与した群では67 %、75.6 Gy投与した

群では43 %、64.8-70.2 Gy投与した群では21 %であったことが示され、投与線量の増加に

より有意に治療成績が向上した。

参考文献7) Fig.3. Kaplan-Meier actuarial probability of achieving PSA relapse-free survival in unfavorable prognostic risk subgroups according to 3 dose levels.引用

1.3 3つの投与線量群の高リスク前立腺癌におけるPSA無再発生存割合7)

(17)

5

一方、Grade 2以上の晩期直腸障害発生率については、図1.4に示したように、64.8-70.2

Gy3D-CRTで投与した群では5 %程度であったが、75.6 Gy以上を3D-CRTで投与した

群では、有意にこの発生率が増加した。しかし、IMRTにより直腸線量を低減して、81 Gy を投与された群は、3D-CRTによる治療を実施した群と比べて、Grade 2以上の直腸障害発 生率を大幅に低減できることが明らかになった。そのため、投与線量の増加をIMRTによ り実施することで副作用を最小に保ちながら、治療成績が向上する可能性が示された。

参考文献7) Fig.4. Kaplan-Meier actuarial probability of grade 2 or greater late rectal toxicity, that is rectal bleeding, according to dose.引用

1.4 投与線量群別のGrade 2以上の晩期直腸障害発生率7)

(18)

6

IMRTの処方線量は一般的に計画標的体積(Planning Target Volume; PTV)の95 %の体積 をカバーする線量(D95%)などの体積処方で定義される。IMRTは標的とリスク臓器間に急 峻な線量勾配を作成するため、D95%で線量処方される場合、PTVのうち5 %の体積部分で リスク臓器とのオーバーラップがあれば、PTVの最小線量の線量制約を満たしつつ線量勾 配を作成することが症例によっては可能である。そのため、前立腺癌では、図 1.5 に示す ように、PTVから直腸のオーバーラップ部分を除いた領域に処方線量が投与されるよう計 画立案されるのが一般的であり、オーバーラップ部分が大きくならないように画像誘導放 射線治療(Image guided radiation therapy; IGRT)を併用することでマージンの縮小などが検 討される。しかし、線量勾配を形成している部分はマージンがほぼ無効化するばかりでは なく、PTV とリスク臓器のオーバーラップ領域の形状に合わせて線量勾配が形成される。

IGRT を用いたとしても、基本的に IGRT は標的の位置を照射中心へ照合するのみである。

そのため、IMRTでは計画CTと比較して、治療時の標的とリスク臓器の位置と形状の関係 が治療期間に渡り、許容範囲内に保たれていることが非常に重要であり、注意が必要であ 8

また、前立腺など多くの臓器は照射中も位置変動(Intra-fractional motion)がある9)ため、

治療中の位置精度および治療時間の短縮も重要となる。Intra-fractional motionの影響により 臨床成績が低下した事例として、Engelsらは、IGRT手法を骨照合から金マーカー照合に変 更したことを機に、マージンを10 mm(直腸側6 mm)から5 mm(直腸側3 mm)に半減 させたが、5PSA無再発率が91 %から58 %に低下したことを報告した10)

IMRT を安全かつ効果的に臨床運用するためには、線量分布の確かさを中心とした物理 的項目と、モーションマネジメントを中心とした臨床的項目の両者を、品質保証しなけれ ばならない。

1.5 PTVD95%で線量処方した前立腺IMRT線量分布の一例

(19)

7 1.2.2 IMRT線量分布の不確かさ

1.3および1.4に示したように高リスク前立腺癌では、投与線量が約5 Gy、およそ6-

7 %変化すると、5PSA無再発生存割合が約20 %変化し、Grade2以上の晩期直腸障害発

生率が約13 %変化した7)

IMRT は理想的な線量分布を作成することが可能である一方、患者に最終的に投与され る線量分布の品質は様々な因子の影響を受けて大きく変化する可能性がある。それらの因 子が影響を与える品質は、リニアック投与線量分布の確かさ、治療計画装置の計算線量分 布の確かさ、およびモーションマネジメントを中心とした臨床的な位置の確かさに大別さ れる。IMRT 線量検証で品質保証する部分は、治療計画のデータ転送を含めて、リニアッ ク投与線量分布および治療計画装置の計算線量分布の確かさである。

IMRTは、照射野内でMLCにより形成したセグメントを連続的に変化させることで強度 変調を行う。そのため、IMRT 線量分布の確かさにおいて、リニアックおよび治療計画装 置では、MLCに関連した投与線量および計算線量の確かさが特に重要となる。1.2.2.1項で は、IMRT投与線量分布へのMLC位置精度の影響について、1.2.2.2項では、IMRT計算線 量分布へのMLC線量計算パラメータの影響について述べる。本論文では取り扱わないが、

Organ motion8,9)、ROI 描出の不確かさ 11-13)、IMRT 治療計画の質のばらつき 14,15)なども、

IMRT線量分布の不確かさに大きな影響を与える。

(20)

8 1.2.2.1 投与線量分布へ影響を与える因子

IMRTは、照射野内でMLCにより形成したセグメントを連続的に変化させることで強度 変調を行う。そのため、IMRT の投与線量分布の確かさにおいて最も重要な項目の 1 つと して、MLCの位置精度が挙げられる。3D-CRTでは、このMLCの位置精度は主にPTV 縁の位置誤差のみに影響していたが、IMRTでは線量分布形状全体に、MLCの位置精度が 影響を与える。さらにVMATでは、MLCが連続的に動作しながら、ガントリーが回転し、

その回転速度および照射線量率も変調する。そのため、リニアックの機械的な位置および 線量の確かさは、IMRTの投与線量分布の確かさにおいて非常に重要となる。

MLC 位置精度の IMRT投与線量分布への影響については、LoSasso 16)DMLC 方式 で、1 cmMLC間隙幅に対して、1 mmMLC位置誤差がある場合、約10 %の線量変化 が標的内に生じることを示した。

実際に MLC の位置誤差が生じる原因に関しては、多くの原因が考えられ、駆動限界、

モーター劣化、ガントリー角度およびコリメータ角度に依存する重力の影響17)、キャリブ レーションエラー、リニアックコンソールとMLC制御機構の通信遅延 18)などが挙げられ る。この MLC の位置誤差は、駆動限界などに起因するランダムエラーと、キャリブレー ションエラーやモーターの劣化などに起因するシステマティックエラーに分類される。

Rangel19)は、前立腺癌および頭頸部癌のIMRTにおけるMLCのランダムエラーおよ

びシステマティックエラーの位置誤差の影響を、線量分布および、臨床標的体積(Clinical Target Volume; CTV)とリスク臓器の等価均一線量(Equivalent Uniform Dose; EUD)につい て評価した。図 1.6 に示すように、線量分布に対するランダムエラーの影響は非常に小さ かった一方で、システマティックエラーの影響は非常に大きかった。これらの結果に基づ き、Rangel19)は、図1.7に示すように、MLC位置誤差による線量分布の変化が、より大 きい頭頸部IMRTにおいて、ターゲットに対しては2 %のEUDの変化を、リスク臓器に対 しては2 GyEUDの変化を基準に、MLC位置誤差の許容値として、ランダムエラーでは

2 mm、システマティックエラーでは0.3 mm と報告した。このMLC の位置精度について

は、米国医学物理学会(American Association of Physics in Medicene; AAPM)のTG-14220) は、1 mm以内、本邦においては、日本放射線腫瘍学会QA委員会1)より、許容レベルとし て、MLC位置精度がSMLC1.0 mm、DMLC0.5 mm、位置および開度再現性がSMLC

およびDMLC共に0.2 mmと参考値として、示されている。

(21)

9

参考文献19) Fig.1. Cumulative DVHs of a prostate and a H&N IMRT plans with systematic errors of ±1 mm and random errors of 2 mm in the MLC position. 引用

(a) 前立腺癌IMRT (b) 頭頸部癌IMRT

1.6 MLC位置を、±1 mmのシステマティックエラーと2 mmのランダムエ ラーを発生させた(a)前立腺癌および(b)頭頸部癌IMRTDVHの変化19)

参考文献19) Fig. 2. Sensitivity of the EUDs of the structures of interest to systematic errors in all leaves. Every 1 mm error leads to average changes of 2.7% of the prostate CTV EUD and 5.6% of the H&N CTV EUD.引用

1.7 MLCシステマティックエラー量に対する 前立腺癌および頭頸部癌のCTVEUDの変化19)

(22)

10 1.2.2.2 計算線量分布へ影響を与える因子

治療計画装置は、様々な線量計算パラメータをそれぞれ独自に有している。IMRT のコ ミッショニングを行う際には、確かさが保証された測定線量分布に合うように、様々な線 量計算パラメータを最適化する必要がある。一般的に、MLC Offset(またはDosimetric Leaf

Gap; DLG)やMLC Transmissionは、ベンダー推奨の専用の測定を実施することで値を取得

するが、多くの場合、それらの値を線量計算パラメータとして使用しても IMRT線量検証 結果は一致しない。

1.8TrueBeam (Varian Medical Systems, Palo Alto, CA)の6 MV X線のVMATに対する 電離箱線量計による評価点吸収線量検証の結果の一例を示した。治療計画装置にはEclipse (Ver. 13, Varian Medical Systems)を使用し、線量計算アルゴリズムには、AcurosXB(計算グ

リッド2 mm;線量付与媒質は水)を使用した。電離箱線量計はPTW31010 Semiflexを使用

した。線量計算パラメータは、2 種類検討し、1 つは測定により得た DLG および MLC Transmissionを使用して線量計算を実施したDefault Parametersである。もう1つはコミッ ショニングを通じて、それらの線量計算パラメータを最適化して線量計算を実施した

Optimized Parametersである。この2種類の計算線量に関して、電離箱線量計の測定線量に

対する相対線量差を求めた。VMAT の治療計画には、AAPM TG-11921) C-Shape および Multi TargetAAPM Medical Physics Practice Guideline (MPPG) No.522) Abdomen Simultaneous Integrated Boost(SIB)プラン、RTOG 093323)の線量制約に従い立案した Hippocampal Avoidance Whole Brain (Brain)、頭頸部SIB(HnN)を2例、全骨盤SIB(W.Pelvis)

2例、使用した。

1.8に示したように、線量計算パラメータが違うこと、また最適化されたことにより、

計算線量および線量検証結果は大きく変化した。

(23)

11

1.8 VMATの電離箱線量計による評価点吸収線量検証結果の一例

-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

Default parameters Optimized parameters

D os e di ff er en ce ( % )

C-shape Multi Target Abdomen Brain HnN1 HnN2 W.Pelvis1 W.Pelvis2

(24)

12

Chang 24)は、3台の TrueBeamリニアックの測定データを、Glide-Hurst 25)は、多施 設で実施した 5台の TrueBeam リニアックのコミッショニング結果を報告している。どち らの報告も、リニアックの個体差は非常に小さく、それぞれリニアック間のビームデータ の差はほぼ無視出来る程度のものであると報告している。しかし、DLG および MLC Transmissionについて、Chang24)は測定値(Measured)を、Glide-Hurst25)はコミッシ ョニングを通じて最適化した値(Commissioned)を報告しており、それらの結果を表1.1 まとめて示す。両者はTrueBeamリニアックの個体差が非常に小さいことを示した一方で、

両者が報告したDLGおよびMLC Transmissionには大きな差があった。そのため、MLC 算パラメータは、コミッショニングを通じた最適化が必要であることが同様に示された。

さらに、ここで非常に重要となるのが、これらの IMRTコミッショニングに使用した線 量検証システム自体が最適化されているかどうかである。DLGTransmission、焦点サイ 26)等の線量計算パラメータは、線量検証システムで測定した測定線量分布に一致するよ うに、線量検証システムのファントム中の計算線量分布を調整する。そのため、線量検証 システムの測定線量の確かさ、および固体ファントム中の計算線量分布の確かさを保証す ることが、治療計画装置のためのIMRTコミッショニングにおいてはまず重要となる。す なわち IMRT 線量検証システムの確かさ自体も、IMRT 線量分布の品質に影響を与える因 子の1つである。

本論文では、IMRT 線量検証に用いられる検出器および固体ファントム等の組み合わせ IMRT線量検証システムと定義する。

1.1 Chang24)およびGlide-Hurst25)が報告した TrueBeamリニアックのDLGおよびMLC Transmission X-ray energy Measured

DLG (mm)

Commissioned DLG (mm)

Measured Transmission (%)

Commissioned Transmission (%) 6 MV 0.82 ± 0.02 1.33 ± 0.23 1.3 ± 0.1 1.58 ± 0.07 10 MV 0.93 ± 0.02 1.57 ± 0.24 1.6 ± 0.1 1.79 ± 0.04 6 MV FFF 0.71 ± 0.06 1.16 ± 0.22 1.1 ± 0.1 1.36 ± 0.11 10 MV FFF 0.89 ± 0.03 1.44 ± 0.30 1.4 ± 0.1 1.63 ± 0.10

(25)

13 1.3 IMRT線量検証

1.3.1 IMRT線量検証の目的と許容値

IMRT線量検証とは、IMRT治療計画におけるリニアックの投与線量分布と治療計画装置 の計算線量分布が許容範囲内で一致することを確認する行為である 1)。この IMRT 線量検 証の実施目的は、IMRTコミッショニングとPatient-Specific QAに大別される。

IMRT コミッショニングは、主にリニアックおよび治療計画装置の新規導入時に行う IMRT線量検証である。IMRTコミッショニングでは、複雑なIMRT線量分布をリニアック が計画通りに照射できるかをまず検証する。さらに治療計画装置の種々の線量計算パラメ ータが適切であることを検証する。その検証結果に応じて、計算線量分布を測定線量分布 に合わせこむように線量計算パラメータを最適化することが、IMRT コミッショニングの 主たる線量検証の目的である。

Patient-Specific QAは、IMRTによる放射線治療を実施する各患者の治療計画が計画通り

に照射可能であること、また投与線量分布と計算線量分布が治療実施のために問題がない 範囲内で一致していることを保証するために、治療実施前に行うIMRT線量検証である。

Patient-Specific QAでは、このIMRTコミッショニングで決定された線量計算パラメータ

を使用した計算線量分布と、定期的に実施されるリニアックQAによって品質が担保され たリニアックの投与線量分布の一致度を評価する。そのワークフローの概略を図 1.9 にま とめて示す。

1.9 に示したように、Patient-Specific QA において、線量検証結果が許容値外となり、

患者計画特有のランダムエラーであった場合、一般的にはIMRT治療計画の再計画が必要 となる。ここで問題となるのは、再計画される治療計画は、線量検証結果が改善されるよ うに逆方向治療計画における線量制約を緩くせざるを得ないことである。逆方向治療計画 における線量制約を緩くするということは、すなわち標的への線量均一性を悪化させるこ とや、近接するリスク臓器への線量を増加させることになる。そのような治療計画で

Patient-Specific QAの結果が許容値内となったとしても、それは物理的には品質が保証され

た一方で、臨床的には品質が損なわれることとなる。そのため、可能な限り、Patient-Specific QAで許容値外となることがないように、IMRTコミッショニングを臨床開始前に、十分に 確からしく実施することが重要である。

(26)

14

1.9 コミッショニングからPatient-Specific QA、治療開始への IMRT線量検証に関するワークフローの概略

No

線量検証結果が 許容値内

No

Yes

Yes

No Yes

患者計画特有の ランダムエラー

IMRTコミッショニング

Patient-Specific QA

IMRT治療開始 線量検証結果が

許容値内 患者治療計画作成

(27)

15

IMRTコミッショニングでは、Patient-Specific QAよりも厳しい許容値でIMRT線量検証 が実施される必要がある。Patient-Specific QAで用いられる許容値は、Dose difference3 % 以内およびDistance to agreement2 mm以内(3 % / 2 mm)、またはそれらをクライテリア として評価したγ-index(低線量しきい値:10 %)のパス率が、Tolerance limitとして95 %、

Action limit90 %として示されている1,27)。IMRTコミッショニングでは、それらよりも

厳しい2 % / 2 mmのクライテリアによる評価が推奨されている22)。図1.10IMRT線量 検証の許容値をまとめた。

1.10 IMRT線量検証の評価目的および評価方法ごとの許容値

IMRT

線量検証

電離箱線量計

評価点吸収線量検証22) [Low-gradient Target region]

Tolerance:2 % [OAR region]

Tolerance:3 %

(相対差は処方線量に対して算出)

フィルム・多次元検出器 線量分布検証(γ-index)22) Criteria: 2 % / 2 mm

Pass rate tolerance:None (but areas that do not pass

need to be investigated)

電離箱線量計

評価点吸収線量検証27) Tolerance limit: 2 % Action limit: 3 %

フィルム・多次元検出器 線量分布検証(γ-index)27) Criteria: 3 % / 2 mm Pass rate tolerance;

Tolerance limit:95 % Action limit: 90 %

(10% dose threshold)

IMRT

コミッショニング

Patient-Specific QA

(28)

16

1.3.2 IMRT線量検証に用いられる代表的な検出器の特性

IMRT は多方向から強度変調したビームを照射して、標的の形状と処方に一致した高線 量分布を形成し、近接したリスク臓器内もしくは標的との間に急峻な線量勾配を形成する。

そのため、IMRT線量検証では、3次元線量分布全体、特に高線量領域および急峻な線量勾 配において、測定線量分布と計算線量分布が一致していることが重要である。理想的には、

患者の CT 画像と同一の不均質ファントム中に、正確に吸収線量を評価できる微小検出器 が高空間分解能で3次元的に配列されたIMRT線量検証システムを用いて、患者ごとに吸 収線量分布全体の評価をすることが望ましいが、それは現実的ではない。そのため、形状 と材質が決まっている固体ファントムと、検出器を組み合わせて、固体ファントム中の測 定線量分布と、治療計画装置で再計算した固体ファントム中の計算線量分布を比較し、そ の一致度を評価することが一般的である。

IMRT 線量検証は、電離箱線量計を用いた評価点吸収線量検証とフィルムによる相対線 量分布検証が一般的である 1,28)。全ての IMRT 線量検証システムには利点と注意点がそれ ぞれあるが、理想的には、1) 吸収線量評価が可能であること、2) 関心領域における累積線 量分布評価が可能であること、3) 3次元での線量分布評価が可能であることが求められる

29)。それらの要件に対して IMRT 線量検証に用いられる検出器の特性を表 1.2 にまとめて 示す。表 1.2 では、代表的な IMRT線量検証用検出器として、電離箱線量計、フィルム、

平面検出器および多次元検出器を挙げた。また多次元検出器では、ファントム中心に検出 器が配列されているものとファントム中心外に検出器が配列されているものがあり、それ らは 2) 関心領域における累積線量分布評価が可能であること、という点において異なる ため、別々に扱う事とした。

電離箱線量計は、水吸収線量計測のフォーマリズムが確立されているため、最も確から しい水吸収線量計測が可能である大きな利点を有する。IMRT 線量検証における電離箱線 量計の注意点としては、体積平均効果および点線量の評価であることが挙げられる。IMRT では多方向から強度変調した形状が様々なビームの線量を積算して、評価する必要がある が、電離箱線量計では体積平均効果の影響から、基本的には線量勾配が平坦な領域のみ評 価可能である。そのような平坦領域における点線量の検証結果が、治療計画全体を代表す る検証結果であるかどうかは、判断が難しく、電離箱線量計による評価点吸収線量検証単 独では検証能力が十分ではないことが示唆されている27,30)

(29)

17

フィルムにおいては、高空間分解能で相対線量分布を測定できる一方で、そのフィルム 濃度を吸収線量分布として評価する事が困難である。そのため、一般的には任意の点で相 対線量に正規化する必要があるが、その正規化点により、評価結果が異なるという事が注 意点として挙げられる。

平面検出器では、クロスキャリブレーションにより、2 次元線量分布を簡便に評価でき る一方で、検出器の方向依存性の問題からビーム軸に対して、常に垂直方向に検出器面が 位置していないと確からしい測定ができない注意点がある。さらに、ガントリー0 度から の線量検証は、Fieldごとの評価(Perpendicular field-by-field; PFF)31,32)や積算線量分布によ るプランの評価(Perpendicular composite; PC)33, 34)に関わらず推奨されていない27)

多次元検出器に関しては、クロスキャリブレーションにより3次元線量分布を簡便に評 価できる一方で、検出器がファントム中心外に配列されている場合は、ほとんどの場合、

高線量領域および急峻な線量勾配などの関心領域における評価をする事が難しい。検出器 がファントム中心に配列されている多次元検出器では、3 次元線量分布を関心領域におい て、評価する事が可能である。これらの中で最も理想に近いIMRT線量検証システムは、

検出器がファントム中心に配列された多次元検出器であると考えられる。

1.2 IMRT線量検証に用いられる代表的な検出器の特性

検出器 電離箱線量計 フィルム 平面検出器 多次元検出器

ファントム中心に 検出器が配列

多次元検出器

ファントム中心外 に検出器が配列

吸収線量評価

が可能

体積効果等の 影響有

×

任意点で相対線量 へ正規化が必要

クロスキャリブレ ーションが必要

クロスキャリブレ ーションが必要

クロスキャリブレ ーションが必要

関心領域の 累積線量分布

評価が可能

平坦領域の 点線量のみ

照射方向固定

×

3次元線量分布 評価が可能

×

複数回測定が 必要

照射方向に対して 測定方向一定の 元、線量再構成

(30)

18

検出器に関わらず、一般的な IMRT 線量検証の手順は、図1.1128)に示したように、治療 計画装置において患者 CT 画像上で立案した治療計画(図 1.11(a))を、線量検証に用い る固体ファントムのCT画像上で再計算し、計算線量分布を得る(図1.11(b))。さらに立 案した治療計画を実際にリニアックにおいて、線量検証用ファントムに照射して、測定線 量を得る(図1.11(c))。最終的に、それらの測定線量および計算線量の一致度を評価する が、(b)の検証プランの線量計算をする際には、治療計画装置中で固体ファントムに対し て、密度スケーリング係数を与える必要がある。その値により固体ファントム中の計算線 量分布は変化するため、最適な密度スケーリング係数を用いて検証プランの線量計算を行 う必要がある。

本論文において、密度スケーリング係数とは、治療計画装置において固体ファントムの 密度として割り当てる値のこととして定義する。

参考文献28) 6.1 引用

(a)治療計画 (b)検証プラン (c)測定

1.11 電離箱線量計による評価点吸収線量検証における(a)治療計画、

(b)検証プランの計算および(c)測定の各工程の外観28)

(31)

19 1.3.3 IMRTの第 3 者評価

現行の IMRT線量検証は、評価の確かさをより向上させる必要があることが第3者評価 の報告から示されている。Image and Radiation Oncology Core-Houston(IROC)のMolineu

は、図1.12(a)に示す頭頸部擬人ファントムを用いて、郵送により実施したIMRT3

評価の結果を報告した35)。この第3者評価では、ファントムを水で満たし、CT撮像、IMRT 計画立案、ファントム設置、そして照射を行う。標的およびリスク臓器を模擬した部分に Thermoluminescent dosimeters(TLD)およびフィルムが挿入され、照射後、郵送し、IROC で解析を行う。許容値は7 % / 4 mmと広いクライテリアで評価される。しかし、約20 %の ビームがこの広いクライテリアをPassすることが出来なかった。

また、European Society for Radiotherapy and Oncology(ESTRO)の Quality Assurance of Intensity Modulated Radiation Oncology(QUASIMODO)ネットワークは、IMRTを実施して いる9施設それぞれのシステムで図1.12(b)に示すファントムを用いて、馬蹄形のIMRT プランを作成し、そのファントムに挿入した電離箱線量計の測定線量とその施設の治療計 画装置の計算線量とを比較した 36)。その線量誤差は最大で、標的領域において3.5 %、リ スク臓器領域で 5.8 %となった。IROCおよび QUASIMODO共に、IMRT3者評価によ り、施設によって許容値以上の線量誤差が生じていることを示した。

さらに、Kly らは、施設の IMRT 線量検証が必ずしもアクセプトされない治療計画を検 出するわけではないことを報告した37)。彼らの報告では、施設のIMRT線量検証をPass IMRTプランのうち 14 %のプランが第3 者評価によりFail と判断された。言い換える と、あるIMRTプランが、ある線量検証システムでPassと判断されたとしても、他の線量 検証システムでPassと判断されるかは定かではないという不確かさがIMRT線量検証には あると言える。IMRT 線量検証は、測定線量および計算線量双方に様々な誤差要因を有す るため、これらの不一致について様々な原因が考えられるが、まずはIMRT線量検証に使 用する線量検証システムの評価の確かさを向上させる必要がある。

(32)

20

参考文献35) Fig.1 RPC H&N phantom for IMRT credentialing.引用

参考文献36) Fig. 1. (a) Transverse and sagittal view of the polystyrene slab (CarPet) phantom conceived for the dosimetric verification of IMRT of prostate cancer. 引用

(a)IROCの頭頸部擬人 ファントムの外観35)

(b)ESTRO QUASIMODOで使用した ファントムの模式図36)

1.12 IMRT3者評価に使用された(a)IROCの頭頸部擬人ファントムの外観および

(b)ESTRO QUASIMODOネットワークのファントムの模式図

(33)

21 1.3.4 IMRT線量検証における問題点

IMRT 線量検証は、固体ファントム中の検出器による測定線量分布と、治療計画装置で 計算された固体ファントム中の計算線量分布とを比較することにより行われる。この IMRT線量検証は、双方の3次元的な線量分布をGy単位の吸収線量で評価する吸収線量分 布検証により評価されることが理想的である27,29)

1.13に示したように、一般的には、電離箱線量計を用いて評価点の吸収線量を評価す る評価点吸収線量検証、およびフィルムを用いて評価断面の相対的な線量分布を評価する 相対線量分布検証を組み合わせた、IMRT線量検証が推奨されている1,28)。表1.2に示した ように、電離箱線量計およびフィルムは、双方共に単独では、吸収線量分布検証を行うこ とはできない。そのため、電離箱線量計による評価点吸収線量検証とフィルムによる相対 線量分布検証は、相互補完的に組み合わせることで吸収線量検証となることが期待される。

しかし、実際には、それぞれの検証結果が示すものが異なり、相互補完的な吸収線量分布 検証は成り立たない場合が多い。

参考文献28) 2.1 引用

1.13 IMRT線量検証の検証方法および検出器の構成28)

(34)

22

1.14に位置誤差がある場合とない場合の測定線量分布(Dmeas)と計算線量分布(Dcalc との比較を示した。評価点吸収線量検証では、電離箱の線量勾配が平坦な領域でのみ、確 からしい線量検証が可能である。一方で、IMRT は、線量勾配が平坦な領域の吸収線量が 一致していることのみならず、急峻な線量勾配が測定と計算で正確に一致していることが 重要である。電離箱線量計を用いた評価点吸収線量検証では、図1.14のような場合、位置 誤差の有無に関わらず平坦領域では測定線量と計算線量が一致しているため、治療計画全 体の確かさを保証できるような十分な検証を行うことは難しい27,30)。さらに近年では、辺 縁処方により標的内の線量を上げて、IMRT 治療計画を作成する手法が普及しており、線 量勾配が平坦な領域がないIMRT治療計画も多い。

(a) 位置誤差0 mmの測定線量分布と

計算線量分布との比較

(b) 位置誤差3 mmの測定線量分布と 計算線量分布との比較

1.14 位置誤差の有無によるIMRT線量検証結果の一例

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

-100.0 -50.0 0.0 50.0 100.0

Dmeas Dcalc

Absorbed Dose (Gy)

Position (mm)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

-100.0 -50.0 0.0 50.0 100.0

Dmeas Dcalc

Absorbed Dose (Gy)

Position (mm) Dcalc

Dmeas

Dcalc

Dmeas

(35)

23

そういった電離箱線量計による評価点吸収線量検証の不足を補完するためのフィルムを 用いた相対線量分布検証は、相対線量への正規化による問題点がある。図1.15に吸収線量 と相対線量で評価した同一の IMRT治療計画における線量分布検証の一例を示した。吸収 線量で評価した場合は、高線量領域に線量差があることが示されている。一方、高線量領 域で相対線量正規化した場合は、正規化位置での線量差が線量分布全体へ影響を与え、相 対線量評価では低線量領域で線量差があるかのように示されている。そのため、線量分布 検証において、相対線量評価は誤った評価を導くことがあるため、線量分布検証は吸収線 量評価で行うことが必要である。さらにフィルムは、スキャナ特性に依存した不確かさな ど、正規化の他にも課題があり、確からしい線量検証結果を得ることが難しい。

電離箱線量計による評価点吸収線量検証とフィルムによる相対線量分布検証は、相互補 完的な役割を期待されるが、図1.15のような場合に、電離箱線量計で確からしい評価点吸 収線量検証を高線量領域および低線量領域の双方で行うことができたとしても、フィルム の検証結果は全く逆の矛盾した検証結果を示すことになる。その矛盾は、Patient-Specific QA におけるPassFailかの判断を難しくさせるだけではなく、IMRTコミッショニング における線量計算パラメータの最適化を行う際に、誤った線量計算パラメータの決定へと 導くことになる。そのため、単一の3次元線量検証システムにおいて、吸収線量分布検証 が可能であることが必要である。

(a) 吸収線量で評価した測定線量分布と

計算線量分布との比較

(b) 相対線量に正規化した測定線量分布 と計算線量分布との比較

1.15 吸収線量と相対線量それぞれで評価したIMRT線量分布検証の一例

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

-100.0 -50.0 0.0 50.0 100.0

Dmeas Dcalc

Absorbed Dose (Gy)

Position (mm)

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

-100.0 -50.0 0.0 50.0 100.0

Dmeas Dcalc

Relative Dose (%)

Position (mm)

Dcalc Dcalc

Dmeas Dmeas

(36)

24

多次元検出器の測定線量は、主に電離箱線量計とのクロスキャリブレーションにより決 定される。多次元検出器は、図1.16に示したように、固体ファントム中に挿入された電離 箱線量計により測定した吸収線量と、検出器板上の中央の検出器の応答とのクロスキャリ ブレーションを行うことで、Gy 単位で吸収線量分布を測定することが可能になる。しか し、この固体ファントム中に挿入された電離箱線量計の表示値 Mplから固体ファントム中 の水吸収線量を評価するフォーマリズムはないため、水ファントム中の水吸収線量評価フ ォーマリズムに従って吸収線量が評価される。そのため、多次元検出器の測定線量の確か さを保証するためには、クロスキャリブレーションにおける固体ファントム中の水吸収線 量評価の確かさを明らかにする必要があるが、その確かさは明らかになっていない。

さらに検出器に関わらずIMRT線量検証は、固体ファントム中の検出器による測定線量 分布と、治療計画装置で計算された固体ファントム中の計算線量分布の比較である。固体 ファントム中の計算線量分布を確からしく得るためには、治療計画装置中で固体ファント ムに最適な密度スケーリング係数を与える必要がある。しかし、多くの固体ファントムに おいて最適な密度スケーリングは明らかになっていない。

これらの問題点により現在、どのIMRT線量検証方法を用いても、吸収線量分布検証に よりIMRT治療計画を確からしく検証することが出来ていない。

(a)電離箱線量計による 校正線量測定

(b)クロスキャリブレーション時の 多次元検出器検出器板照射

1.16 電離箱線量計で測定した吸収線量に対する

多次元検出器の検出器応答のクロスキャリブレーションの一例

(37)

25 1.4 研究の目的

IMRT 線量検証には様々な線量検証システムがあるが、いずれのシステムを使用する場 合においても、リニアックの投与線量分布および治療計画装置の計算線量分布の双方を、

正しく評価することが重要である。すなわち、使用する検出器の測定線量の確かさを保証 すること、および使用する固体ファントム中の計算線量の確かさを保証することが重要で ある。なぜならば、IMRT線量検証システムの確かさは、IMRTコミッショニングにより決 定される線量計算パラメータの確かさに大きな影響を与えるため、最終的には患者に投与 されるIMRT線量分布の確かさに影響を与えることが主な理由である。

IMRT 線量検証のための全てのシステムには、利点と注意点がそれぞれあるが、理想的 には吸収線量評価が可能であること、関心領域における累積線量分布評価が可能であるこ と、さらに3次元線量分布評価が可能であることが求められる29)。検出器がファントム中 心に配列されている多次元検出器は、他の線量検証システムと比較して、その条件を最も 満たす可能性のある線量検証システムである。

しかし、多次元検出器もまた、測定線量および計算線量の双方に不確かさを有している。

その不確かさとは、測定線量に関しては、多次元検出器のクロスキャリブレーションにお ける校正線量の不確かさである。また計算線量に関しては、固体ファントムに対する最適 な密度スケーリング係数が明らかとなっていないことに起因する不確かさである。

そのため、本研究ではIMRT吸収線量分布検証を実現するために、多次元検出器の測定 線量、および多次元検出器ファントム中の計算線量の確かさについて、以下の題目につい て研究を行った。

1. 電離量変換係数算出のフォーマリズム

2. 多次元検出器クロスキャリブレーションのための水吸収線量評価

3. 多次元検出器ファントム材質の密度スケーリング係数

4. 最適な密度スケーリング係数の評価

これら4つの研究を行うことにより、本研究では、多次元検出器によるIMRT吸収線量 分布検証の可能性を検討する。

図 1.1 に前立腺癌に対する、 3 次元原体照射(3 dimensional conformal radiation therapy; 3D-
図 2.1  多列半導体線量検証システム Delta4(ScandiDos)の外観
表 2.1  水、PMMA、および PWDT の元素組成、物理密度( ρ )、
図 3.4  真鍮製、アルミニウム製、PMMA 製ビルドアップキャップ、
+7

参照

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