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アメリカの連邦教育補助金:

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(1)

アメリカの連邦教育補助金:

「集権化」傾向に内蔵される分権構造⑵

加 藤 美穂子

年代の州レベルの「実験室」

前節で検討した 年代から

NCLB

に至るプロセスにおいて,州レベルで 進められた教育改革が「実験室」として機能した。その主な事例を取り上げ,

これらが連邦政府の側の主導性によるものではなく,州政府の側の主体性に基 づいて歴史的に進められてきたことの意味を考えたい。すなわち,これらの州 で歴史的に構築されてきた教育改革の理念と仕組みの実績が前提となり,全米 的な枠組みが形成されたという視角から検討したい。

既述のように,教育改革はブッシュ(子)大統領が最も重視していた内政政 策であったため,同大統領は就任後すぐに教育改革に関する政権の方針を示す ブループリント,No Child Left Behind を公表した。その内容は,同大統領が 知事を務めたテキサス州の教育改革をモデルとしたものとされるが,より重要 なのは, 年代に多くの州で教育改革が進展していたという全米的な状況 である。

たしかに第 節でみたように, 年の二法の下では各州レベルの改革の 進展にバラツキと遅れが生じていたため,NCLBに体現されたような連邦政府 からの誘導策の強化が必要となった。しかしその反面, 年代に各州レベ ルの教育改革がそれぞれの州の主体性に基づいて模索されていたことが,

年代に入って

NCLB

の下で教育改革を実施・普及させるための基本的な条件

( ) U. S. Department of Education, Office of the Secretary,( .

( ) Ravitch( , pp. ; 松尾( , p. .

(2)

を与えた面を見逃してはならない。例えば,本節で検討する 年の連邦議 会公聴会で取り上げられるフロリダ州やペンシルバニア州,デラウェア州,メ リーランド州の教育改革が,NCLBのための「実験室」の役割を果たしたので ある。

このブッシュ(子)共和党政権による

NCLB

の提案は,連邦議会で

ESEA

の再授権法案として審議され,最終的に超党派的な合意がなされる形へと練り 上げられた。その過程では,先進的な教育改革を行っている州について公聴会 が開催され,テキサス州以外の州レベルでの「実験室」の成果も

NCLB

に反 映されることになる。この分析視角を持って,「実験室」となった主な州の教 育改革を検討していこう。

..テキサス州

...NCLB に先行する 年代のテキサス州の教育改革

第 節でみたように,ブッシュ(父)共和党政権の下でスタンダード・ベー ス教育改革の全米的な枠組みが模索された時期に,テキサス州では 年に

Texas Assessment of Academic Skills(以下,TAAS

と略記)プログラムが開始 された。TAASプログラムは,読解と作文と算数の学力評価試験を第 ・ ・

・ ・ 学年に実施するものであった(第 学年は卒業資格試験として実 施)。 学校年には,算数と読解については第 〜 学年及び第 学年,

作文は第 ・ ・ 学年,科学と社会科は第 学年に,学力評価試験を毎年 実施するよう変更され,第 学年の算数と読解と作文の試験が高校の卒業資 格試験とされた。TAASは州内統一的な教育アカウンタビリティ・システムに とって重要な仕組みとして位置づけられ,その結果は学校と親に示された。そ してそのデータは全生徒の集計値だけではなく,黒人とヒスパニックと白人の 人種別,および貧困層に分けたデータも作成された

( ) 本稿のテキサス州の教育改革の説明については,Cruse , Cruse and Twing ,

Texas Education Agency( , )に依拠している。

( ) TAASに関する以下の記述は,Cruse and Twing( , pp. Texas Education Agency( , pp. − を参照。

(3)

この 年代におけるテキサス州の教育改革の実施過程の中心にいたのが,

後にブッシュ(子)共和党政権の連邦教育省の長官として

NCLB

の立法化と 初期の運用の立ち上げを主導した

Paige

氏である。同氏は 年からヒュー ストン学校区の教育委員会に勤務し, 年には教育長に就任している

そして,ブッシュ(子)大統領がテキサス州の知事を務めていた 年に は,TAASよりも包括的な学力評価プログ ラ ム と し て

Texas Assessment of Knowledge and Skills(TAKS)の開発が決定され,それは,州政府がマンデイ

トとするカリキュラムである

Texas Essential Knowledge and Skills(TEKS)を

測定できるように設計された。なお,実際に実施されたのは,ブッシュ(子)

共和党政権の下で

Paige

連邦教育長官が

NCLB

を推進していた 年であっ た。

このようなテキサス州で進められた教育改革は, 年にブッシュ(子)共 和党政権の下で成立した

NCLB

の原型を成すものといえよう。後述のように,

TAAS

TAKS

は,テキサス州で歴史的に時間をかけて構築されてきた州規模 の試験や情報作成,それを活用するアカウンタビリティ・システムの上に形成 されたものであり,他の州で進展していた同様の教育改革とともに,NCLB とつながっていったといえる。このようなテキサス州における教育改革の歴史 は,まさに

NCLB

に至る「実験室」の役割を果たすものであり,第 節にみ た連邦レベルの 年代の教育改革も,州の実験室の成果を現実的な根拠と していたのである。

...教育改革の前史

連邦レベルの

ESEA

が成立し,全米の各州で貧困児童に焦点を当て た教育改革が模索された時期に,テキサス州では州内の生徒の教育ニーズを把 握 す る た め の 調 査 が 行 わ れ た。 年 と 年 に 州 内 の 高 校 生 を 対 象 に

( ) Cruse and Twing( , p. .

( ) U. S. Department of Education(

( ) Texas Education Agency( , p. . 公立高校の卒業要件として,TAKSの算数,英 語,科学,社会科の 分野における卒業資格試験を合格しなければならないとされた。

(4)

American College Test

(以下では

ACT

と略記)を実施し,その結果を分析して,

同州の初等中等教育の質的向上に役立てようとするものであった

この調査結果を踏まえて,州教育局はスタンダード・ベースの目標準拠試験

(criterion referenced test)の有用性を検討し始めた。そして 年と 年には,

州教育局は読解及び算数の目標準拠試験を州規模で実施し,生徒の様々な属性 別の成績格差が定量的に把握され,「要改善の生徒」に関する州規模の成績デ ータが教育関係者の間で情報共有されるようになり,スタンダード・ベース試 験の有用性が証明された

さらに 年には職業教育に関する州規模の評価が実施され,連邦資金を 導入する財源方式や,州内の既存の職業教育の成果を測るための民間業者によ る試験の開発や,州教育局と地域教育センターと都市部学校区と民間業者の協 働による学習者の成果(指標:引用者)の選択と評価試験の構築などが行われ

そして 年には州教育局の内部に生徒の成績データ管理の部局を設置し,

教育者等が広範に利用できるようにした。さらに同年に,このような 代の教育改革についての包括的な報告書が作成され,州教育局から学校区や新 聞社や州議会等に提示され、それを受けて州議会は,スタンダード・ベース試 験(第 ・ ・ 学年の全生徒に対する算数,読解,作文の試験)を州全体で 義務化する州法を成立させた

年代になると,連邦レベルでは

A Nation at Risk

の公表などによってレ ーガン共和党政権下で貧困児童向けの教育改革に焦点が当てられる時期に,テ キサス州では先進的な教育改革が一層進展していた。 年から 年には州 内統一の形で学力到達度を把握するためのスタンダード・ベース試験(Texas

Assessment of Basic Skills,以下では TABS

と略記)が実施された。個々の生徒 や親や教師に学力情報が提供されるとともに,学校別・学校区別のデータの公

( ) Texas Education Agency( , pp.ⅲ, ; Cruse( , p. .

( ) Cruse( , p. .

( ) Cruse( , p. .

( ) Cruse( , p. ; Texas Education Agency( , p. .

(5)

表が義務付けられた。また人種別や家計所得別や英語力別という属性別のデー タも構築された。これらの仕組みが連邦レベルの

NCLB

の原型になっている と考えられる。テキサス州教育局の

Cruse

氏は,「学校区の間の比較が可能に なり,また急激に生徒の学習に注目が」集まり,「教育関係者は,授業方法を 検証し,学力到達度の向上できるものを採用した」ので,「全体の学力が向上 すると同時に,マイノリティ集団とマジョリティ集団との学力到達度格差も縮 小した」と評価した

また同氏は,「TABSプログラムが広く支持された一因は,州政府の補助金 である」として,それは,「(貧困層の生徒が該当する:引用者)無料あるいは 低価格の昼食の受給資格のある生徒数を基準として学校区に配分され」,その 補助金は

TABS

プログラムで測られた学力格差を是正するために使用された。

そのため

TABS

プログラムは,「(貧困層の生徒を支援する:引用者)州補助 金へのニーズを測るもの」と位置づけられたので,それに反対する圧力団体が 存在しなかったと述べている

さらにテキサス州の 年の包括的な教育改革法によって,州教育委員会 の構造改革や教育財源の調達方法の変更,生徒の学習要件の厳格化や教員の 資 格 試 験 の 義 務 化 な ど と と も に,TABSが 改 正 さ れ て

Texas Educational Assessment of Minimum Skills(以下では TEAMS

と略記)が 学校年から 導入された。TEAMSでは,第 ・ ・ ・ ・ ・ 学年の全生徒が毎年 受験することになった。TABSとの相違は,TEAMSでは,第 に州教育委員 会が合格ラインを設定し,第 に第 学年の試験が高校の卒業資格試験とな り,第 に生徒が 学年ごとに試験を受けることになり,第 に州教育局は全 米的な比較のためのデータを作成し,第 に学校区は不合格の生徒に補習教育 を行うことが義務付けられた。特に,第 と第 の仕組みも後の

NCLB

の構 想に活かされていると思われる。

( ) Cruse( , p. .

( ) Cruse( , p. .

( ) Cruse( , pp. ; Texas Education Agency( , p. .

(6)

前節でみたように,ブッシュ(父)共和党政権の下で 年にバージニア 州で開催された教育サミットを起点として, 年代に進行した「教育機会 の保障」から「教育成果の保障」への転換があったが,その転換にとって,す でに 年代のテキサス州で実施されていた改革は一つの「実験室」の役割 を果たしていたといえよう。

また,Cruse氏によれば,テキサス州政府が

TEAMS

による成果評価で確立 されるアカウンタビリティ・システムを推進する目的は,世界市場での競争の ために必要な人材を確保するためであった

。この表現からは,本稿第 節で述 べた, 年代からのグローバル化によるアメリカ経済社会の労働編成の変 化への対応の必要性という課題について,テキサス州ではすでに 年代か らそれを意識して教育改革を進めてきたと解釈できる。そのような意味でも,

連邦レベルの

NCLB

にとってテキサス州は先駆的な「実験室」であったとい えよう

..フロリダ州:Crist 教育局長の証言

連邦議会は,NCLBの審議の中で, 年代の州レベルの教育改革につい てフィールド・ヒアリング(現地での公聴会)を開催している。その一つとし て,連邦議会下院の

Committee on Education and the Workforce

年 月 日にフロリダ州の

Bradenton

で開催したフィールド・ヒアリングを取り上げ たい

同委員会の

Boehner

委員長(オハイオ州, 共和党)は公聴会の冒頭で,この フロリダ州でのヒアリングでは,「全ての子供たちに質の高い教育を保証する ためのアカウンタビリティ,フレキシビリティ,その他の政策手段に焦点を当

( ) Cruse( , p. .

( ) テキサス州政府の側は教育改革の成果を主張しているが,他方で実際には同州の成果 はそれ程大きくなかったという報告もある(Haney ),Klein, et. al.,( ),Ravitch

, p. )。本稿の問題意識からは,ブッシュ(子)共和党政権がテキサス州の成果 を根拠としてNCLBを提案し,また,全米の多くの州や地域で成果評価によるアカウン タビリティを軸とする教育改革への支持があったという事実に着目したい。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( a).

(7)

てたい」とした上で,以下のように続けた

特に,フロリダ州で 年に成立した,A Plus Plan for Education(以下,A-Plus Plan 法と略記: 引用者)に対して強い関心がある。同州のアカウンタビリティ・システム の中心をなすのが,学校に対する report cards であり,Florida Comprehensive Assessment

Test(以下ではFCATと略記:引用者)の成績に基づいて,学校にAからFまでの格

付けをするものである。よい実績を出した学校は報奨金を受け取り,パフォーマンス の低い学校は改善のための追加資源が提供される。しかし, 年連続してFランクを 受けた学校については,親が良いランクの学校に子供を通わせることを選択する場合 に,その費用を賄うために授業料の奨学金を提供する。

Boehner

委員長が,フロリダ州の教育改革の中でテストの成績に基づくアカ

ウンタビリティ・システムとともに,本稿第 節で検討したようなブッシュ

(子)共和党政権の学校選択の方向を強く意識していることがわかる。

さて 番目の証言者は,そのフロリダ州の教育改革のリーダーである

Crist

教育局長である

私の祖父はギリシャからの移民であり,教育の持つ向上力の生き証人であった。祖父 の就学は第 学年までであり,靴を磨く生涯であったが,父も含めて全ての子供には 教育を受けさせ,父は医者になった。孫の私にまで祖父は教育の重要性を説いた。そ れ故に,私は教育の効用が全ての子どもに届くような政策に情熱を持っている。

Crist

教育局長の証言のこの部分は,貧しいギリシャ移民の一族が教育機会

によってアメリカン・ドリームを実現できた事例をもって,貧困児童に焦点を 当てる教育改革の重要性を説明しているといえよう。

同教育局長は,同州の教育改革の核はアカウンタビリティであり,支出や意 思決定や成果に対するアカウンタビリティがその基礎をなすとした。その背後

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( a), p. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( a), pp. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( a), p. .

(8)

には,「あまりにも多くの租税資金が,肥大化する教育官僚制によって吸収さ れている」という問題があり,支出は組織に対してではなく児童に向けて行わ れるべきであり,そのために教育資金をクラスルームに向かわせる戦略をとる という。委託やアウトソーシングによって捻出する資金と資源を教育の質を高 めるために重点的に投入する分野について,以下のように述べている

フロリダ州では教員不足が大きな問題となっている。カレッジ修了後にフロリダ州の 学校で教えることに同意したフロリダ州の公立高校の卒業生に対して,年間 千ドル の奨学金を提供するプログラムを検討中である。…(中略)…

年にLawton Chiles知事の下でフロリダ州はSunshine State Standardsという厳格な 学力到達度スタンダードを採用した。それは,キンダーガーデンから高校を通じて,

理解すべきことと理解できることを示すものである。生徒の到達度を測るために,

FCATが開発され, 年に初めて実施された。その試験結果に基づいて学校格付け が始まった。

こうして構築されたアカウンタビリティ・システムを前提として,フロリダ

州では 年に

Jeb Bush

知事(ブッシュ(子)大統領の弟:引用者)の下で

教育改革のための

A-Plus Plan

法が成立した。その内容は,改革のための追加 資源,教員一人当たりの生徒数の削減,授業時間の増加,読み書き・算数とい うコア科目の重視であり,まさに「no child is left behind」の政策だというので ある。先に

Boehner

委員長が力点を置いた学校選択の問題については以下のよ うに述べている。

公立学校は,FCAT等の生徒の成績に基づいてAからFまでに格付けされる。 年間 F判定を 回受けた学校に通う生徒は,より高いランクの公立学校あるいは私立学 校を選択できるようにするための奨学金を受ける適格性を与えられる。

奨学金に関して,最上位の生徒達だけが他の学校に通うことを選択するという神話が ある。公立学校が放棄されるとか,それらに通う児童が取り残されるという見解と同

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( a), p. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( a), pp. .

(9)

様に,この神話はフロリダ州では誤りである。ほぼ同数の高い成績の生徒と低い成績 の生徒が,他の学校に通うことを選択している。

そしてこの学校選択のための奨学金が,実績の悪い学校に改善努力を促す効 果があるという調査報告を紹介している。しかしそれと同時に,Crist教育局 長は,FCATの 年目に

F

ランクの学校が全くなかったことについて,「同州 のアカウンタビリティ・システムが,鞭だけでなく,多くのニンジンも備えて いる」ことによって,ニンジンが現場の学校教育に良いインセンティブを与え ることも強調するのである。

なお

Greene(

)によれば,テキサス州の

TAAS

とフロリダ州の

A-Plus

Plan

の重要な違いは,フロリダ州のそれは低パフォーマンスの学校に対する潜 在的な制裁としてバウチャー(Crist教育局長が証言した学校選択のための奨 学金のこと:引用者)を利用するが,テキサス州等のアカウンタビリティ・シ ステムでは低パフォーマンスに対する制裁として財政的制裁や学校再編を用い ることである。

ところで,テキサス州と同様に,フロリダ州にも教育改革の前史がある。フ ロリダ州も, 年に

Educational Accountability Act

を制定してアカウンタビ リティを中心に据えた包括的な教育改革を実施し,州のカリキュラム・スタン ダードを設定した上で,生徒への学力試験を要請し,その成績を生徒間,学校 間,学校区間,さらには他州や他国と比較できるようにした。そして,テキサ ス州と同様に, 年代初頭にブッシュ(父)共和党政権の下でスタンダー ド・ベース教育改革の全米的な枠組みが模索された時期に、フロリダ州におい ても州議会が

Blue print

を制定し,州評価試験の厳格化と拡充をした。ま た,それぞれの学校に対して年間進捗度の自己評価を求め,州教育目標の達成 に基づいたインセンティブと懲罰の仕組みを伴う,学校改善プログラムが創設 された。

( ) Greene( , p. .

( ) Herrington( , pp. を参照。

(10)

そして上述のように,テキサス州でブッシュ(子)知事の下で

TAKS

の開 発が決定していた 年に,その弟の

Jeb Bush

知事の下で

A-Plus Plan

法が 成立するが,それは過去 年間の取り組みの延長線上にあるとされる。その アカウンタビリティ・システムは,「スタンダード」,「評価」,「情報公開」,

「Consequences(正と負のインセンティブ:引用者)」の つの構成要素からな り,具体的には以下の通りである。

第 の「スタンダード」となるのが,州政府が開発した

Sunshine State Standards

であり,A-Plus Planの基盤をなしている。それは 年代の前半に州と地方 の教育者が一体となって開発し, 年に公式に採用された。

第 の「評価」については,A-Plus Planは従来の

FCAT

を拡大し,読解と 作文と算数に加えて科学を追加し,さらに読解と算数については第 − 学年 を通じて学力評価試験を行うように変更した。そして,学年レベルの学力到達 基準と共に,年間の学力進捗度を測ることも求めた。

第 の情報公開に関しては,フロリダ州ではすでに,生徒,教員,財務に関 する学校レベルのデータの公表を要請していたが, 年にはさらに,州政 府は各学校に,学校年次報告に基づいて州教育目標に向けた進捗度を自己評価 し,低パフォーマンスの場合には学校改善計画を策定することを要請した。し かしこの自己評価に基づく仕組みが上手く機能しなかったため,州政府が生徒 の学力到達度のみに基づいてパフォーマンスの悪い学校を指定する仕組みが作 られ, 年には「極めて低い」と評価された学校を公表した。その後,こ の指定は 段階の格付けへと変更され,それが

A-Plus Plan

の格付けへと進化 した。

第 の「Consequences」について,A-Plus Planには,生徒の学力到達度に基 づいた様々な正と負のインセンティブが組み込まれた。フロリダ州では,

年から高校卒業資格の要件として卒業試験の合格を州法で求めていた。A-Plus

Plan

では,卒業試験を,従来よりも厳しい第 学年の

FCAT

に置き換え,ま

( ) Herrington( , p. .

( ) Herrington( , pp. − を参照。

(11)

た,学年レベルの到達期待値(achievement expectations)に学力が満たない生 徒の対策に優先的に資金を集中させることを学校区に要請した。

こうして整備されるアカウンタビリティ・システムを前提として,先にみた

Crist

教育局長の証言にある学校選択の仕組みが導入されることになる。

いうまでもなく,このようなフロリダ州の積極的な教育改革は,第 節でみ た連邦レベルの改革の枠組み作りの現実的な根拠となったのであるが,上述の テキサス州の改革と同様に,フロリダ州もかなり早い時期からアカウンタビリ ティ志向の改革が進められており,その歴史的な経緯そのものがアメリカ全体 の機運の高まりをもたらすものであったと考えられる。

..東部 州(ペンシルバニア州,デラウェア州,メリーランド州)

連邦議会下院の

Committee on Education and the Workforce

は,フロリダ州に 続いて首都ワシントンで東部の州の教育改革の実績に関する公聴会を

月 日に開催している。

Boehner

委員長は開会演説で,ペンシルバニア州とデラウェア州とメリーラ

ンド州の教育改革について,「これらの改革は連邦政府よりも先行して」おり,

「それらの実績から学び,全米の改革に活かすべきである」として,以下のよ うに続けている。

ブッシュ(子)共和党政権の教育改革案は,(州・地方政府による補助金の使い方の:

引用者)柔軟性と同時に,成果評価と成果への報酬と失敗への罰則を含む(州・地方 政府の側の:引用者)アカウンタビリティ・システムの確立を目的とする。その意図 は明確であり,アメリカの公教育のアカウンタビリティは,(従来のような:引用者)

納税者の税金の使い方(にかかわる説明責任:引用者)ではなく,児童への教育成果 に基づくべきである。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b).

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .

(12)

Boehner

委員長が明確に述べるように,教育成果を向上させることを目的と して,地域ごとの多様な事情に適した取り組みを可能とするために連邦補助金 の柔軟性を高めると共に,成果に関してアカウンタビリティを厳格に求めると いうのが,NCLBの基本スタンスである。その枠組みの参考とすべく,「厳し いアカウンタビリティの基準を制定し,生徒の学力を測定するためのテストを 毎年実施してきた」ペンシルバニア州とデラウェア州とメリーランド州の教育 改革の実践を,「実験室」として参考にするというのであり,その 年代の

「実験室」の具体例として以下のように述べている。

ペンシルバニア州とデラウェア州は,Ed-Flex states(後述のように,一種のウェイバー の仕組み:引用者)として承認され,連邦補助金の使用に関する一層の裁量性を得る 一方で,生徒,とりわけ不利な状況下にある生徒の学力到達度の厳格な評価に基づい て学校区の成果に応じた制裁及び報奨政策を実施している。

ブッシュ(子)共和党政権の教育改革案は,教育成果と結びついた毎年のテストや制 裁及び報奨政策や,州政府と学校区に政策の新たな選択肢を生み出す柔軟性を手段と しており,これらの州の実践から学ぶことができる。

番目の証言者はペンシルバニア州の

Ridge

知事であるが,その登場の前に 同州選出の

Greenwood

議員(共和党)が次のように紹介している。

Ridge知事は, 年に連邦議会下院議員に当選し, 年にはペンシルバニア州知

事に当選した。 年に同州知事に再選され, 年 月には共和党知事会の議長に 指名された。

ペンシルバニア州のEducation Empowerment Actは,抜本的な学校区改革のために公立 チャーター・スクールの設立の奨励,厳しい教育スタンダードの採用に加えて,教員 資格要件の厳格化(教員育成プログラムの参加や教科領域の単位取得等)の実施を求 めている。また, 年間で 億ドルの予算でRead to Succeed Program(第 学年末まで に全生徒に読解と作文を学習させる)や,Link to Learn Technology Initiative(公立及び

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), p. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), p. .

(13)

私立の学校の技術的改善)が実施されている。

さらに,同知事は,放課後授業経費(適格家庭に対し ドルを上限とする)等の支 援や,企業による州内の学校への寄付金に対する半額の税額控除などの企画の予算要 求をしている。

そして,ブッシュ(子)共和党政権の

NCLB

案にも同様の仕組みが織り込 まれているので,Ridge知事がペンシルバニア州で行った取り組みが参考にな るというのである。それでは,その

Ridge

知事の証言をみてみよう。

まず,Ridge知事自身も,同州で効果的に機能している仕組みが,ブッシュ

(子)共和党政権の

NCLB

案に盛り込まれているとして,州の「実験室」の成 果を基盤として連邦レベルの枠組みが形成されることを強調している。そし て,アメリカ経済社会の全体で教育改革に取り組む理由として,「全米の知事 や下院議員や上院議員は常に, 世紀の知識集約型経済において子供たちに とって必要な能力について心配」しており,「教育は能力の獲得にとって最も 重要な道具であり, 世紀に入って,世界で一流の教育へのアクセスと質の 確保への手段が必要になっている」と述べている。前項でみたフロリダ州の

Crist

教育局長の証言にあったギリシャ移民のアメリカン・ドリームを 世紀

のグローバル化の下で実現するためにも,教育改革が必要ということになる。

世紀の知識集約型経済は 世紀型の教育を求めており,これまでの教育 を,そして政策的優先順位を再評価せねばならない」として,以下のように続 けている。

ペンシルバニア州では 年前に州スタンダードを変更した。算数と読解のスタンダー ドを引き上げており,次に科学についても引き上げる。しかし,アカウンタビリティ のための成果評価を伴わずにスタンダードを引き上げることは,仕事の半分でしかな い。同州では,州政府がテストを実施している。NCLB案では第 〜 学年でテストを 実施するとしているが,現在の同州は第 ・ 学年で実施しており,第 学年における

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .

(14)

Pennsylvania Scholastic Assessment Testも予定している。

しかし,テキサス州のような集権的なシステムもあれば,ペンシルバニア州のような 分権的なシステムもある。 ペンシルバニア州には の郡があり, の学校区がある。

フィラデルフィアの学校区以外は,コミュニティで選ばれた代表者が公立学校を運営 する。地方政府レベルにおける裁量性が重要であり,それがまさにペンシルバニア・

システムである。

共和党の有力政治家である

Ridge

知事は,ペンシルバニア州の成功事例で実 施されてきた仕組みがブッシュ(子)共和党政権の

NCLB

案にも取り込まれ ているという「州の実験室」の役割と意義を明示して,NCLB案の現実的かつ 具体的な根拠としているが,他方では,州政府の側の主体性と権限を再確認し たうえで,ブッシュ(子)共和党政権案の枠組みが画一的に強制されることに 歯止めをかけようとしている。そして具体的に,以下の論点を提示するので ある。

NCLB

案に関する第 の論点は,州内統一テストについてである。

ブッシュ(子)共和党政権のいうように,テストがアカウンタビリティの重要な仕組 みであることは認める。ペンシルバニア州も含めて多くの州で州スタンダードを変更 したが,テストの変更には少し時間がかかる。同州の方法では,他の生徒との関係の 中で各自の順位付けをするため,どこを改善すればよいのか,教師にも親にも生徒本 人にも分からなかった。そこでテストの仕組みを変更するために,第 学年の読解に ついて診断的なテストを開発中であり, 億ドルを投入した。NCLB案の中にあるよう な,第 学年の最後に読解のレベルをテストするためのRead to Succeed programを有 しているが,新スタンダードに合う新しいテストの作成には,少し時間がかかる。時 間とお金が必要であり,連邦政府からの支援が必要である。

次に,NCLB案の第 の論点として成績の良い学校区と学校に対する「報酬」

を取り上げ,それらを「良策」と評価しつつも,自州の仕組みの利点を主張し ている。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .

(15)

ペンシルバニア州にも学校区や学校に対する報酬制度があるが,学校区や学校の間の 競争が必要とは思わない。それぞれの前年の実績を基準として,そこからの試験成績 や出席状況の向上の程度を判断して,報奨金を提供する。

年以来,州内に , ある全ての学校の成果情報を公表しており,市民による チェックを学校や学校区は受けている。

そして同州では,州スタンダードを引き上げるとともに,教員の資格基準も引き上げ た。大学での履修単位や教職試験の難易度の引き上げ,さらに学校区レベルだけでは なく,学校別でも教師の成果評価(試験結果の向上や教育方法の改善等)による報奨 金の制度を設けた。

第 の論点として,ペンシルバニア州の「早期警戒システム」について説明 する。

第 学年のテストで 年間にわたって最低基準を満たさない学校は「学業困難(in academic distress)」と指定されるが,州政府は管理下に置くことはせず,財政的支援を 強化して,技術的支援を行い, 年間の改善の猶予期間を与える。 世紀の教育は,

ハリスバーグ(ペンシルバニア州の州都:引用者)の州政府やワシントンの連邦教育 省よりも,親や教師や子供がより関わるべきである。彼らの方が問題の所在と解決策 を知っている。

番目の証言者はデラウェア州選出の

Carper

上院議員(民主党,デラウェ ア州の前知事)である。同議員についてデラウェア州選出の

Castle

下院議員が 以下のように紹介している。

Carper前知事は,当時,全米知事会(National Governors Association)の会長として,Ed -Flex waiver authorityを全米 州に適用するCastle-Roemer法の成立に尽力した。また,

( ) この公聴会の同知事の提出資料によれば,過去 年間にペンシルバニア州政府は報奨 金制度を実施し,例えば,Lackawanna郡のDunmore高校に対して 千ドルが提供さ れ,またMontgomery郡のColonial学校区の優秀教師に報奨金を提供した(U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), p. .)。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .

(16)

デラウェア州では包括的なシステム(州スタンダードの制定,アカウンタビリティ,

教育の地方自治)の構築を先進的に推進した。全米で初めて全ての教室にインターネッ トを導入し,最も包括的な公立学校選択制度を確立した。学級人数の縮小,教員の能 力給,デラウェア州内の全学校区の算数及び読解のテスト成績向上の実績があり,連 邦教育補助金の柔軟な使い方で,全ての生徒に対する教育スタンダードの引き上げや 到達度の評価が可能になることを示してくれた。これらの功績によって,民主党と共 和党の違いを超えて共有できる教育政策を構築できることを示してくれた。

このように絶賛された

Carper

上院議員(デラウェア州前知事)は,この教 育改革について次のような証言を行った。まず, 世紀型の教育の必要性に ついて,「 世紀の多くの職業は肉体労働であったが, 世紀は頭脳労働」に なり,「全ての州にとって,ビジネスと経済成長に必要な条件,交通システ ム,低犯罪率,低税率,公共サービス,合理的な規制」だけではなく,「読解 や作文や算数を会得し,思考力と技能を有する」労働者を育成することが,「

世紀の経済的成功に不可欠」であると述べている。

Carper

上院議員は,この公聴会の 年前にデラウェア州知事となり,全米で

いち早く,算数と科学と国語(英語)と社会に意欲的なスタンダードを設定し て,定期的にそのスタンダードに基づく生徒の進捗度の評価を実施し,さらに,

親や政治家や教師や生徒に対するアカウンタビリティ・システムも構築してき た先駆性を回顧した。そして,「 年後の今日では, 州で教育スタンダード を設定しており,その多くの州がデラウェア州と同様に算数と科学と国語(英 語)と社会のスタンダードを設け,半分以上の州ではそのスタンダードに沿っ てテストを毎年実施している」と続けた上で,以下のように述べるのである。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .

( ) 年に前任者のCastle知事(現在はこの委員会の下院議員:引用者)と交代して

Carper知事が就任した頃に,経済界と教育界の協同によるGap Analysisが実施され,到

達すべき学力レベルに比べて,多くの生徒に格差があることが指摘された。そして,そ の格差を解消して卒業生が就職あるいは大学進学できるようにする対策が取られはじめ た(U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), p. )。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), p. .

(17)

私が全米知事会の会長に在任中には,生徒の学力到達度の向上に焦点を当てた。全米 の州に出かけ,オハイオ州や今日ここに集っている多くの州で,生徒の到達度を上昇 させている取り組みについて知る機会を得た。

我々は,お互いにあらゆる良い知恵を共有したのであり,それが知事としての仕事で ある。

すなわち,この発言は, 年代に先進的な州による様々な教育改革の全 米的な普及のプロセスにおいて,他州で成功した政策実験を積極的に吸収しよ うとする主体的な州政府の活動を示すものであり,まさに「民主主義の実験室」

の具体的な一端といえよう。そしてそのような状況を前提として, 世紀の 始まりに提示された

NCLB

は,それらをさらに全米的な枠組みに集約したと いう歴史的な位置付けを示す発言ともいえよう。

番目の証言者はメリーランド州の

Grasmick

教育局長である。同局長も,

「メリーランド州の州スタンダードとアカウンタビリティとテストの包括的な システムは, 年前から実施している」として,NCLB案よりもはるかに早 い時期から州の教育改革の優れた実績を有することを強調したのち,次のよう に続けている。

メリーランド州は,第 ・ ・ 学年では同州の学力評価を,第 ・ ・ 学年では

(全米的な:引用者)標準テストを実施する。そして高校(第 〜 学年)では卒業要

( ) さらに興味深いことに次のような施策も紹介している(U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. .)。

デラウェア州では,幼稚園に入る前の 歳以下の教育も重視しており,さらに,ティーンエイジの妊 娠の防止策や,妊娠時のケアなどとも連携する総合的な政策を実施している。

また,Growing Together Portfolio(妊娠時から子育てに至る教本:引用者)を交付しており,それを母 子への健康診断とも連動させている。また,連邦補助金を使って保育も充実させている。Head Start ついては連邦資金だけでは不足するので州資金も追加して充実させている。

すなわち,教育改革を他の福祉政策と組み合わせて運用することの重要性を説明して いるが,逆にみれば,NCLBの焦点が福祉政策の対象となり得る底辺階層にかかわる初 等中等教育の底上げを目的とする側面を明解に表現する発言といえよう。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), pp. , .

(18)

件につながる形で学力評価を実施している。また,就学前の 割の児童のサンプリン グ調査の開発や,英語能力が低い児童や障害児も対象に含めて州評価を実施している。

同州では,出席状況に加えて,これらの州評価の結果も全て公表しており,それらは 学校別,人種別などに示されている。テスト結果の情報は,必要な対策につながる。

特に,最低ランクの学校に対して,州政府が学校長の資質を問い,実現性のある改善 計画や,その改善のための基準設定等を求める。

そして,同州の最大の都市であるボルチモア市において,過去 年間の実績 に基づいて 校を要改善校に指定して,地域の教育システムから分離し,第三 者に業務委託した事例を取り上げている。

新しい運営とリーダーシップと教育プログラムの下で,これらの学校は改善しつつあ る。素晴らしいことに, 百人の生徒の学校で,かつては地域教育への親の参加は最 大でも 人であったが,現在は 百人の大人が参加するようになった。バウチャー(に よる学校選択:引用者)に頼らずとも,メリーランド州方式でこれらの劣悪な学校を 再生できる。

メリーランド州は,NCLB案のスタンダードやアカウンタビリティの包括的 なシステムという考えには賛成しつつも,学校選択には否定的な姿勢を示して いる。そして,連邦レベルと各地域レベルの提携の下で,各州がそれぞれの条 件に合う形で教育改革を進められる連邦政府の枠組み(ウェイバーの仕組みな ど)の有用性を強調するのである。

すなわちメリーランド州の

Grasmick

教育局長の証言も,同州における先進 的な改革の実績を根拠として,初等中等教育の分野における州・地方政府の本 質的な役割と権限による多様な教育改革と,それを包むような連邦レベルの大 枠という分権的な基本構造を再確認していると言えよう。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce,( b), p. .

(19)

..連邦教育省のスタンス: 年 月公聴会

これまでみてきた州・地方レベルの教育改革が,NCLBの「実験室」の役割 を果たしたことが根拠となって,各州政府が自立的で分権的な立場を主張する のに対して,ブッシュ(子)共和党政権の側が示す姿勢を検討しよう。

フロリダ州や東部のペンシルバニア州,デラウェア州,メリーランド州に関 する議会公聴会と同じ時期, 年 月 日の連邦議会下院の

Committee on Education and the Workforce

の公聴会で,連邦教育省の

Paige

長官も議会で教育 改革に向かう強い姿勢を示していた。

Paige

長官は,第 に

NCLB

案は,民主党も共和党も含めて全国民が協力し

て初等中等教育を強化するための枠組みであり,第 にこれまでの教育改革の 努力を前提として,州政府や学校区や学校が成し遂げてきたことを尊重し,そ の改革を一層精力的に進めるものであるとする。ただし,(クリントン民主党 政権による:引用者) 年の

ESEA

の再授権法は正しい方向を示したが,

十分な成果を得られなかったとして,上述の州・地方レベルの改革の成果を前 提とする全米的な改革のための枠組みについて,次のように述べている。

州政府と学校区のレベルでうまく機能してきた戦略を連邦レベルの教育政策に取り入 れる必要がある。具体的には,生徒のパフォーマンスに対するアカウンタビリティの 増加や,効果のある科学的根拠に基づいた実践の重視,教育現場における官僚主義的 な仕事の削減と柔軟性の拡大や,親とコミュニティの権利行使(学校選択を指すと思 われる:引用者)に有用な情報の提供である。…(中略)…

NCLB案の核は,第 〜 学年の全生徒に対する毎年の読解と算数の州規模テストの実 施による成果評価である。私の経験(同長官はテキサス州ヒューストンの教育長等を 経験している:引用者)から,生徒や学校にとって毎年の成果の情報に代わるものは ないと断言できる。取り残された生徒を見つけるのに 年も 年も待つことはできな い。問題が生じたら,即座に発見して対処すべきであり,その情報がテストのデータ で提供される。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c).

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), pp. .

(20)

そして同長官は

NCLB

案のアカウンタビリティ・システムの概要を説明し たのちに,州政府や学校区や教師や親に,そのアカウンタビリティ・システム の確立を支援するための手段と柔軟性(本稿の第 節及び第 節で検討した補 助金の転用や統合,チャータースクール等による学校選択の柔軟性の拡大な ど:引用者)を

NCLB

が提供することを強調した。同法の概要については既 に本稿第 節で詳しく検討しているので,ここでは,同委員会の議員との質疑 応答をみておこう。

Hoekstra

議員(共和党,ミシガン州)の「これまでの膨大な連邦教育補助金

の投入にもかかわらず学力到達度の格差が拡大して」おり,「生徒の学習に対 するアカウンタビリティ・システムが整備されていないのに,連邦教育補助金 を増大させるべきなのか」という質問に対して,Paige長官は以下のように答 えている。

連邦政府は(州・地方政府に対して:引用者)重要な支援を提供しており,とりわけ

「支援の必要が大きい学校」における「支援の必要が大きい生徒」に対してそうした役 割を果たしている。しかし,成果の監視とアカウンタビリティがうまく機能していな い。予算を増大する時には,アカウンタビリティに焦点を当てるべきである。もっと 予算を増大させるには,アカウンタビリティ・システムの質的向上と,その支出が政 策意図に向かうことと,意図する成果を達成することが必要である。

この答弁を受けて

Hoekstra

議員が,NCLB案における「第 〜 学年の生徒 に算数と読解のテストを毎年実施する」という規定が,各州の運営に及ぼす影 響について分析したか,と質問した。Paige長官は以下のように答えている。

これまでの分析の結果,その規定を満たす州も多く存在するが,他方で,全州の 分 の あるいは半分が,(現行の制度をNCLBに整合するために:引用者)かなりの制度 改革が必要である。しかし 年法の規定(クリントン民主党政権下のIASA:引用

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), pp. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), p. .

(21)

者)によって大半の州にはすでに,同様の制度が存在するので,そこで蓄積された経 験が役立つ。

たしかに同長官が言うように, 年代に各州でそれぞれ進められてきた アカウンタビリティ・システムのための改革が,NCLBの最重要な基盤となる と思われる。

だが,実際に

NCLB

が成立して各州の教育現場で上記の規定に整合するた めの制度変更を実施し始めると,各州と各学校区と各学校から広範な反発がで てくるのは次節でみるとおりである。NCLBの提案時点における連邦議会の公 聴会でこのことが指摘されていたので,実施プロセスで発生する広範な反発は 想定されていたはずである。実際には,その反発を受け止めながら,連邦レベ ルの大枠である

NCLB

と各州・各学校区における実施作業のすり合わせを経 て,NCLBが目指す全米規模の教育改革が実質的に普及するという過程にな る。それについては第 節で詳しく検討するので,その前に,この貴重な公聴 会の検討をもう少し続けよう。

McKeon

議員(共和党,カリフォルニア州)は

Paige

長官の証言に全面的な 賛意を表して,第 に同長官の(テキサス州ヒューストン学校区の:引用者)

教育長としての経歴が役立つことと,第 に

NCLB

案の「第 〜 学年の生 徒に対する算数及び読解のテストの毎年の実施」を軸とするアカウンタビリ ティ・システムの重要性を述べている。それに対して,同長官は,毎年実施す るテストが「州政府が決定したスタンダード」に基づくことを強調している。

あくまでも,州政府の側の主体性を前提とする連邦レベルの大枠という

NCLB

の基本構造を確認していると考えられる。

次に民主党の

Roemer

議員(インディアナ州)は,NCLB案の中の連邦補助 金の統合と柔軟な運用には賛成であるが,制度の鍵となるテストの仕組みにつ いて議論の必要があるとして,以下のように述べている。

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), p. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), p. .

(22)

NCLB案では,インディアナ州に対して,現行制度よりも多くの学年でより多くの量の テストを求めている。テストの内容や量について厳しい議論(第 〜 学年の全生徒 に対して毎年実施する必要があるのか,など:引用者)はあるが,さらに,無財源マ ンデイト(unfunded mandate)の問題がある。テストの拡大の費用,テスト成績の悪い 生徒に対する補習授業等の費用が想定されるのだが,アカウンタビリティ・システム のための追加の補助金はあるのか?

Paige

長官は,NCLB案にはテストの作成費用のための支援は織り込まれて

おり,さらにその実施費用のための追加資金も検討していると答えたうえで,

以下のように続けている。

(同長官が教育長であった当時のテキサス州の:引用者)ヒューストン学校区の経験か らいうと,州政府が義務付けていた第 ・ ・ 学年のテストに加えて,第 〜 年に対して Stanford のテストを使用したが,そのコストは生徒一人当たり 〜 ドルであった。当時は学校区がその費用を捻出していたが,独自にテストを作成する コストと比べてどちらが安いかはわからない。各州の事情は多様であろうが,NCLB は新規のテスト作成を想定しており,その費用に対する追加補助金はあるが,実施費 用については未定である。

次はデラウェア州選出の

Castle

議員(共和党)である。Paige長官の

a strong

person

という人柄が,断固かつスピーディな教育改革に必要であると述べた

後,「

ESEA

によって求められていたにもかかわらず,まだ算数と読解 の州スタンダードの作成が完了していない州」もあり,「(クリントン民主党政 権下の:引用者)連邦政府は,教育成果の出ない学校への改善策を含めて,

年法が要請するスタンダード・ベース改革を(州政府に:引用者)実施させる ための行動を怠り,教育的改善を大きく阻害している」と続け,いかにして

NCLB

の教育改革を徹底できるかと質問した。

この発言は,Paige長官の個人的な人柄の話題を使って,NCLBの教育改革

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), p. .

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), pp. .

(23)

を断固実現すべしという,共和党の側の強い姿勢を示したものと考えられる。

第 節にみるように, 年のブッシュ(子)共和党政権の第 期では

Paige

長官が強い姿勢を貫き,州政府側の反発を招き,それを経て州=連邦間

の調整の作業に至るのである。

そして,この公聴会の最後にフロリダ州選出の

Keller

議員が,NCLBが成立 した場合にその教育改革の成果について楽観的になれるかと質問し,Paige 官は以下のように答えた。

私は全米で 番目に大きな都市にある全米で 番目に大きな学校区で働いてきた。そ こでは生徒の %が,無料あるいは低価格のランチの適格性(貧困である証拠:引用 者)を有した。しかし,それらの高い貧困率の学校で,「落ちこぼれのリスクのある生 徒たち(at-risk students)」の学力が向上し,学力到達度の格差が縮小し始めるのを経験 したので,NCLB案についても楽観的になれる。

以上の議会公聴会におけるブッシュ(子)共和党政権の

Paige

長官の発言か らは,同政権の強い姿勢を読み取ることができた。特に同長官のテキサス州に おける教育改革の経験が,NCLB案を同政権が推進する根拠と自信につながっ ているといえよう。

上述のように,ブッシュ(子)共和党政権は,テキサス州において教育改革 を推進してきた

Paige

氏を連邦教育省長官に任命し,その改革に向けた強い姿 勢を示したのであり,それは 年代のクリントン民主党政権期における改 革を一歩進めるためにも必要であったと思われる。しかし他方では, 代に各州で進められてきた改革が多様であったため,ブッシュ(子)共和党政 権の強い姿勢は当然ながら州・地方レベルの反発を招いた。

しかし本稿の問題意識からみれば,アメリカの州=連邦関係の分権的な構造 の上では,連邦政府の側の強いイニシアティブが働かなければ大枠としての仕 組みの構築は始まらず,その仕組みの原型が示されたのちに,州=連邦関係の

( ) U. S. House, Committee on Education and the Workforce( c), pp. .

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