文 〕
〔論
児 童 期・ 青 年 期 にお け る友 人 関係 の発 達 と精 神 的 健 康
―児童期 。青年期に関する臨床心理学的考察―
福岡市障がい者更生相談所 佐 藤 倫 子
要
約
本研 究では ,友 人 に対す る意識 の性差 と発達的変化 を明 らかに し ,そ れ ら友人 に対す る意識 と 精神 的健康 との関連 を導 き出す こ とを通 して ,子 どもの よ り健康 な こころの状態 の実現 について 検討 した。 友人 に対す る意識 の性差 は ,発 達段階 に よ り異 な るこ とがあき らかになった。 小学生 で性差 の見 られ た項 目は ,中 学 ,高 校 で も継続 して性差 があ り ,発 達 に したがって性差 のある項 目が増 えていた。 つ ま り友人 に対す る意識 の性差 は ,高 校 生で ピー クにな る。性差 は女子 が男子 よ りも友人 に対 しよ り肯定的 な意識 を もつ傾 向にあつた。 友人 に対す る意識 と精神 的健康 との関 連 においては ,友 人 に対す る意識 が影響 を及 ぼす精神 的健康 要因 と ,及 ぼ さない要因があ ること があき らか となった。及 ぼ さない要因は身体症状 がほ とん どであ り ,身 体化現象 の複雑性 が うか が えた。友人 に対す る意識 が精神 的健康 に与 える影響 は ,小 。中・高及び性別 によ り異なってい た。友人 関係 に最 も性差 のあ らわれ るのは高校生 であった。 しか しその友人 関係 の影響 が最 も精 神 的健康 に及ぶ のは ,中 学生 の時期 だつた。 つ ま り ,友 人 に対す る意識 にお ける性差 が精神 的健 康 にそのまま影響す るわけではな く ,友 人 に対す る意識 にお ける性差 を含 めた友人 関係 のあ りよ うが ,精 神 的健康 に影響 を及 ぼ してい るのであ る。子 どもの呈す る症状 には複雑 な要 因が絡 んで お り ,周 囲が どの よ うに子 どもの姿 を受 け止 め , どの よ うにあろ うとす るかが問われてい る。
キー ワー ド :精 神的健康 ,友 人 関係 ,発 達的変化
は じめに
子 どもた ちの人 とのかかわ り方 は ,自 分 の子 ど も時代 とはまつた く違 うよ うに感 じることがある。
今子 どもた ちの こころは ,い ったい どの よ うな中 を揺 らいでい るのであろ うか。本 当の 自分 を求 め もが きなが ら ,子 どもは何 を感 じ ,何 を思い生 き
てい るのだ ろ うか。
人間は生物 的 。心理的 。社会的 に統合 され た存 在 であ り ,特 に発達過程 にある子 どもは ,よ りさ ま ざまな ものの影響 を受 けやすい ,敏 感 な存在 で ある。教育現場 にお けるさま ざまな状況が大 きな 社会 問題 とな る中 ,周 囲の関心 は問題行動 ばか り に行 きがちである。 しか し本来望まれているのは
,問題行動 を起 こす こ とな く児童 生徒 が健やかに成 長 してい くこ とで ある。
【 問題】
1)健 康の概念
健康 とは ,積 極的に望ま しい状態であ り ,病 気 ではない状態ではない。 1946年 に設立 された世 界保健機構 (World Health Organization,WHO) では
,「健康 とは身体 的 ,精 神 的・ 社 会 的 に完全 に良好 な状態であ り ,単 に疾病や虚弱が存在 しな い とい うことだけではない」 と定義 されてい る。
しか しなが ら ,実 際 に WHOの 定義す るよ うな身 体的・精神 的 。社会的 に良好 な状態 を保 ち続 ける ことは, とて も困難 な ことである。
時代 の変容 は価値観 の変化 を生み ,そ れ に とも ない健康 の概念 は変化 してきている。健康 の概念 を定説 として語 ることは難 しい。 しか し未来に向
けた健康の概念 は ,人 間 と社会 と調和 をはか りな
が ら心身 ともた くま しく生 きぬ く方 向性 を明確 に
示す ことを必要 としている②。
健康 の定義 は多数存在す るものの ,身 体的・精 神 的 。社 会 的 とい う3つ の側 面 を抜 きに健康 を語 るこ とはで きないだ ろ う。健康 とは病気 の反対の 言葉 ではな く ,も つ と広い意味をもつてお り ,単
に身体的健康 のみでな く ,精 神 的 に も健康 で ある こと ,つ ま りは総合的 ,総 括的 に健康で あること が求め られ ている。 また社会的 とい う側面 ,社 会
の一員であることが同時に重視 されてい る。
2)友 人 関係
子 どもたちの友人 関係 は ,変 化 した と言われ る。
現場 の教 師や大人 た ちが指摘 してい るよ うな子 ど もた ちの無気力状態や無気力傾 向 も ,友 人 関係 に
も広 が ってい る といわれ る (笠 井他 ,1995)。 本 来友人 関係 は ,夫 婦 ,親 子 ,指 定 ,同 僚 関係 とは 異 な り ,利 害関係 も上下関係 もない人間関係 であ り ,本 来的 には安心 して 自分 をだす ことのできる 関係 である。 しか し ,昨 今 の児童生徒 は ,表 面的
な親密 さや楽 しさを求め ,互 いに傷つ くことを恐 れ ,形 式的 な円満 な友人関係 を求 めなが ら ,関 係 が深 ま るこ とを避 ける傾 向が指摘 され てい る (栗
原 ,1989;岡 田 ,1995;千 石 ,1991な ど
)。友人関係 は中学生の代表的な学校 ス トレッサー 場面 の一つ としてみ なす ことがで きる (岡 安他
,1992)。 また笠井 らは ,青 年期 にお ける友人 関係 の発達的変化 を検討 し ,青 年期 の友だ ち とのつ き あい方が 「友達 と選択的 にかかわ ろ うとす るか」
とい う『 友達 とのかかわ り方 に関す る姿勢』 と
,「人を選択 し限定 した友達 とかかわろ うとするか―
広 い範 囲 の友達 とか かわ ろ うとす るか」 とい う
『 自分 がかか わ ろ うとす る相 手 の範 囲』 の二つ の 次元 を導 き出 してい る
0。二つ の次元 に よ り ,青
年期 の友 だ ち とのつ きあい方 を4パ ター ンに分 け
,友 だ ち とのつ きあい方がまず浅いつ きあい方 か ら 深 いつ きあい方へ と『友達 とのかかわ り方 に関す
る姿勢』 は変化 し
,『自分 がかかわ ろ うとす る相 手の範囲』の変化 が起 こることを明 らかに してい る。 また榎 本 (1999)に よる と ,友 人 に対 して
「ライバル意識」が中学生で強 く ,「 不安・懸念」
が 中学高校 で強 く
,「独 立」 の意識 が大学生 で強 い。
友人 関係 には ,(数 多 くの研 究 で も示唆 され て いるよ うに
,①② 00)性 差 が見 られ る。落合・佐藤 (1996)に よる と ,中 高生 にお いては性 差 がみ ら れ るものの ,大 学生ではみ られず ,年 齢 が増す に つれて性差がな くなる。 中学生で男子 に多 く女子 に少 ない 「浅 く狭 くかかわるつ きあい方」は ,高
校生では女子 に多 く男子 に少 な くな る。 また女子 は ,中 学生では 「深 く広 くかかわ るつ きあい方」
が男子 に比べ多 く ,高 校 生では 「深 く浅 くかかわ るつ きあい方」が男子 に比べ多 くなる。 また友人 に対 して ,男 子 は女子 に比べ 「ライバル 意識 」
「葛藤 」 を強 く感 じてお り ,女 子 は男 子 に比 べ
「信頼・安定」「不安・懸念」を感 じているとされ る (榎 本 , 1999)。
以上の よ うに ,青 年期 の友人 関係 については数 多 くの研 究がな され てい る。 しか し児童期以前 の 研 究 は少 ない。人 間の発達 は連続的過程 であ り
,友人 関係 も同様 であ る。 したがつて児童期 を含 め た友人関係 のあ りよ うを明 らかに してい くことは 重要 であ る と考 え ,本 研 究 の対象 とす る。
【目的】
精神 的健康 のあ りよ うの変化 は ,社 会 にお ける 人間関係 の変化 を同時にあ らわ してい る とも言 え る。人に対す る意識や信頼感 は ,時 代 とともに変 化 してい るよ うに思 われ る。児童生徒 は ,家 庭
,地域 ,学 校 な どにおいて , さま ざまな人間関係 を 抱 えなが ら生 きてい る。その中で特に友人関係 は
,生活 の大部分 を学校 で過 ごす児童生徒 に とって
,心理的にも重要な位置を占めていると考えられ る。
そ こで本研 究 においては
,『友 人 に対す る意識 や実際の友人関係 は精神 的健康 と関連 があるので はないか』 とい う仮説 の もと , 1)友 人 に対す る 意識 の性差 と発達的変化 , 2)友 人 に対す る意識
(友 人 関係 )と 精神 的健康 との関連 を ,小 。中・
高にそれ ぞれ について明 らかに し ,子 どもの よ り 健康 な こころの状態の実現 について検討す ること
を 目的 とす る。
調査 :2004年 11〜 12月 に鹿児 島県内において行 っ た『 心の健康ア ンケー ト』調査 を用いた。調査対 象・ 調 査対象 地 区は ,Table I‑1・ 2の 通 りで
あった。鹿児島県全域 を市部・郡部・離島に分 け
,地域性 を考慮 し ,人 口比率 を参考に して対象学校 選定 した。鹿児 島県都市部 ,郡 部 ,離 島部 の対象
校 ,お よび対象児童生徒 は ,す べ て同一地 区 ,同
一学年 ,同 一学校 であった。
調査 内容 お よび調査方法 :日 本 学校保健 会
(1982)の施行 した児童生徒 の 「′ いの健康」 に関す る調査 と全 く同一 の30項 目に ,項 目 「親 友 の有 無 」 と
「親友 の内容」 を付加 した。 ア ンケー トは ,無 記
名 ,直 接 回答 で行 つた。
調査 の実施 と調査機 関
:企画 。実施
鹿児 島純心女子大学大学院 人間科学研 究科
協 力 鹿児 島県教育委員会保健体育課
【 結果】
1)友 人 に対す る意識 の性差 と発達的変化 友人 に対 す る意識 には性 差 が あ る と考 え ,t検
定 を行 った (Tablel)。 項 目 boc・ g「 話 の話題 がた くさんあって楽 しく , 自分 の知 らない こ とを 教 えて くれ る」「趣 味や好 み が同 じで性 格 が似 て い る」「言 いたい ことが言 い合 え ,素 直 につ きあ
える」では ,小 中高すべ てにおいて有意差 は認 め
児童期 。青年期における友人関係の発達 と精神的健康 佐藤倫子
られ なかつた。特に項 目gは ,t値 も低 く ,ほ ぼ同
様 の数値 であつた。 その他 の項 目で も ,男 子 が女 子 よ りも有意 に高い ものはな く ,全 体的 に女子 が 男子 よ りも高かった。
小学生 においては ,項 目
e・f「 何 か をす る とき に一緒 に行動 で き ,い つ も一緒 にい る」「何 か を す る ときに一緒 に行動 で き ,い つ も一緒 にい る」
において ,女 子 が男子 よ り高か つた。 その他 の項 目について も ,有 意 ではないが女子 が男子 よ り高 い傾 向にあつた。
中学 生 においては ,項 目 aodof・ h・ j「 困 つ た ときに助 けて くれた り ,お 互いに協力できる」
「自分を今 よ りも ,向 上 させ て くれ る」「何かをす る ときに一緒 に行 動 で き ,い つ も一緒 にい る」
「お互いに とつて役立つ ことができ ,頼 れ る」「悩 みや心配 ごとを うちあけることがで きた り ,何 で
も話 して くれ る」において ,女 子が男子 よ り高かっ た。その他 の項 目で も女子が高い傾 向にあつた。
高校生においては ,10項 目の うちの
7項目aod・
e・ f・
h・
i・j「 困 つた ときに助 けて くれ た り
,お互 い に協力 で きる」「自分 を今 よ りも ,向 上 さ
せ て くれ る」「よく気 がつ いて ,相 手 の気持 ち を
思 いや つて くれ る」「何 か をす る ときに一緒 に行 動 で き ,い つ も一緒 にい る」「お互い に とつて役 立つ こ とができ ,頼 れ る」「自分 を必 要 と して く れ た り自分の性格や気持 ちを大事 に して くれ る」
「悩みや心配 ごとを うちあけることができた り
,何 で も話 して くれ る」 において ,女 子 が男子 よ り
も高か つた。
発 達的 に見 る と ,性 差 のあった項 目は小学生で は
e。1中 学生ではa・ e・ f・ h・ j,高 校生では
a・
d・ eof・ h・
i・jで あった。 小学生で性差 の見 ら れた項 目は ,中 学 ,高 校 で も継続 して性差があ り
,発達 に したがつて性差 のある項 目が増 えていた。
2)友 人 に対す る意識 と精神 的健康 との関連
「友人 の内容 」 10項 目につ いて ,小 。中・ 高 別 に ク ラス ター分析
(ward・平方 ユ ー ク リッ ト 距離 )を 行 い ,グ ルー ピングを行 った。 グループ サイ ズ ,信 頼性 か ら2グ ル ー プ を採 用 した。 平均
Table I‑1
学年 別 回収 率男 女 不 明 合 計
/1ヽ
6
204214
418/1ヽ
2
224188
1 413高 2
263192
455合 計 691 594
1 1,286Table I‑2
地 区別調 査 対 象校/1ヽ
中 一局
(普通科) (職業科)
合 計
市 部 3 3 3
0乙9
郡 部 2
93
︐7
離島部
1 12 4
合 計 6 6 8
(4) (4) 20値 の高い グル ー プを Hグ ル ープ ,低 い グループを Lグ ル ー プ とした。全 てにおいて平均値 には有意 差 がある。
抽 出 した2つ の グル ー プ H(友 人 に対す る期待 が高い )と L(友 人 に対す る期待 が低 い群 )の 精
神 的健 康 の あ りよ うの比 較 を行 つた。 基本 30項 目と親 友 の有無 を問 う付カロ 項 目b「 ′ いか ら親 しい と思 え る友 人 がい ます か」 につ いて ク ロス集 計
(χ
2検 定 ,片 側 )を 行 った。性別 による違 いがあ る と考 え ,男 子 ,女 子それ ぞれ について も分析 を 行 った。小 。中 。高それ ぞれ の結果 は ,Table2
の通 りである。
項 目 9017・ 20・ 21・ 22「 朝 起 き るの がつ ら い と思 うこと」「こわい夢 をみ ること」「めまいや 立 ち くらみがす るこ と」「手足 の しびれや冷 た く な る こと」「下痢や便秘 にな ること」 では ,全 て
において有意 な差は示 されなかった。反対 に ,項
目
1・ 3・30・ b「 毎 日の気 分 が よ くない」「学校 での生活 が楽 しくない」「悩みや心配事 の相談 を した こ とが ある」「′ いか ら親 しい と思 える友 だ ち がいない」 においては ,小 中高それぞれ の全体
,性 別 す べ て にお い て有意差 が認 め られ た。 項 目 30の み Lグ ル ー プ よ り Hグ ル ー プの方 が高 くなっ てお り ,そ の他 の3項 目で は Lグ ル ー プの方 が高 か った。 また項 目10で は小・ 高 にお いてす べ て で Lグ ル ー プの方 が Hグ ル ー プ よ りも高 く ,中 学
生で も男女それぞれ にお ける有意差は認 め られ な かつた ものの ,全 体では小 。高 と同様 の差が認 め
られ ,Lグ ル ープの方が よ り多かつた。
全体的 に Lグ ル ープ の方 が Hグ ル ー プ よ り多 く の症状 を呈 していた。 Hグ ルー プにおいては ,相
談事 を した こ とのあ る人 が Lグ ル ー プ に比べ多い ことがあき らか となった。性別 でみ ると ,男 子 に
おいてのみ有意差のあった項 目は ,中 学生では項 目 6・ 12(H<L),高 校 生 で は項 目 29(H>L)
で あつた。 女子 においては ,小 学生 では項 目
6・11・ 12・ 16・ 18(6・ 11・ 12・ 18;H<L, 16;
H>L),高 校 生 では項 目5。 12・ 24・ 26(H<L)
であ り ,中 学生ではなかった。
【 考察】
1)性 差 と発達的変化 か らみた友人 に対す る意識 のあ りよ う
性別 に よ り友人関係 のあ りよ うを比べてみると
,小 中高 と経 るご とに性差の表れ る項 目は増 えるこ とが明 らか となった。 これ は ,友 人関係 の性差 は
高校 生で ピー クにな る とい う落合・佐藤 の先行研 究 と一致 していた
0。また本研 究では ,性 差 の生 じた項 目は ,そ のまま高校生まで性差が続 いてい ることが示唆 された。小学生であきらか となった 性差 が ,高 校生 に至 るまで続 くのであ る。 これ は 女子 にお ける友人 に対す る意識 の基礎や発達 的な
Table l性 別による友人の内容各項 目の平均値 と
t検定
「今のあなたの友だちはどんな友だちです力」
榔 カ
里 十イ祠彗
セ カ
里 14t
卍 を
里
a困
ったときに助けてくれたり,お
互いに協力できるb話
の話題がたくさんあって楽しく,自分の知らないことを教えてくれるc―
じで性格力似 ているd自
分な よりも,向
上させてくれるeよ
く気がついて 相手の気持ちを思いやつてくれるf何
力を するときに■緒に行動てき,い
つも■緒にいるg言
いたいことが言い合え 素直につきあえるhお
互tヽにとって役立つことができ,頼
れる1自 分を必要としてくれたり自分の性格や気持ちを大事にしてくれる
j悩
みヽ配 ごとをうちあけることができたり,何
でも話してくれる3.76 3 88 1 40 3 93 4 11 1 87 3.24 3 44 1̲93 3 27 3.32 0 51 3 27 3 60 3 10※X 3.94 4.10 1 43 3 71 3 72 0.08 3 70 3 81 1.02 3 22 3 39 1 61
3.14 3.62 423表
嵐3 51 3 93 4 66X"
3.33 3 90 0.75
3.31 3.41 111
3 21 3 27 0.65 3.24 3 55 3 11嵐 3.72 4.10 3.95棗 楽 3 65 3.64 ‑0.16 3.46 3 67 2 06楽 3 24 3 41 1 67 3 27 3 75 4 39※ 凛
3 69 4.20 6 07` ※ 3 84 4.00 1 79 3 28 3 40 1 65 3̲30 3 60 3.20X※
3 34 3 87 5 68× ※ 3.66 4.02 3.71X※
3.65 3.71 0 62 3 50 3 85 3 82※X 3.30 3 76 5 05※ ※ 3.32 3.69 3.70※X
1※※ ※:
児童期 。青年期における友人関係の発達 と精神的健康 佐藤倫子
過程 をあ らわ してい るよ うに も思 える。
性差 のあ らわれ ていつた友人 に対す る意識 の内 容 としては ,小 学生では ,よ く気 がついて相手 の 気持 ちを思いや って くれ る とい う 「敏感 さ」 と
,悩みや心配 ご とを うちあけるこ とができた り何 で も話 して くれ る とい う「自己開示」 の意識 であっ た。その二つ に加 え ,中 学 では ,困 つた ときに助 けて くれ た り ,お 互 い に協力 で きる 「協力」 ,何
か をす るときに一緒 に行動 でき ,い つ も一緒 にい る 「共行動 」 ,お 互 い に とつて役 立つ こ とができ 頼れ る とい う 「相 互依存 (協 力
)」が加 わ る。 さ らに高校生では 「自分 を今 よ りも ,向 上 させ て く れ る とい う 「自己向上」 , 自分 を必要 として くれ た り自分の性格や気持 ちを大事 に して くれ る とい う 「尊重」 が加 わ り ,全 10領 域 中7領 域 において 女子 が男子 よ りも友人 に対 し高い期待 を抱 いてい るこ とが示唆 され た。
性差 が どの よ うにあ らわれ てい くか を考 えてみ る。 中学 において初 めて性差 のあ らわれ る3項 目 につ いてみ る と
,「協力」 は ,女 子 では 中学生 で
Table 2友 人に対する意識の違いによる精神的健康各項 目
問 事 項 男
注 1)※
:p<05※
※:p<Ol※※※:p<001※
※※※:p<oo01
注 2)※・※※・※※※:H<L*・
**・***:H<L
小学生 よ り期待 が高 くなってい る。「共行動」 は
,男子 では中学生で小学生 よ りも期待 が低 くなって お り ,女 子 にお ける変化 はない。「相互依存 (協
力
)」は ,男 子 も女子 も中学生 で小学生 よ りも低 くなっていた。 高校 生 において性差の初 めてあ ら われ る2項 目について見 ると ,「 自己向上」「尊重」
共 に ,女 子 において高校 生が 中学生 よ り高 くなつ てお り ,男 子 は変化 がみ られ ない。
女子 にお ける友人 に対す る意識 は ,男 子 に比ベ
小学生 の時点 で 「敏感 さ」「自己開示 」 とい う意 識 を よ り強 く持 ってお り ,中 学生 になる と 「共行 動」 の意識 が高ま る。 さらに高校 生では 「自己向 上」「尊重」の意識 の高ま りを見せ る。
男子 においては ,友 人 に対 して全体的 に女子 よ りも期待の低 い様相 を呈 してい る。男子の場合
,中学 生 にな る と 「協力 」,「 共行 動 」,「 相 互依 存
(協 力
)」において意識 が低 まつてい る。高校生 に な る と 「協力 」 は高 くな り
,「依存」 は さ らに低 くなる。男子 が女子 に比べ強 く抱 くとい う友人 に 対す るライバル 意識 ① も ,関 係 してい るよ うに思
小学生 女
いと思 うこ と
10学
校 へ 行 き た く な い14何
の た め に 生 き て い る の16悩
み や 心 配 ご とした り胸 が苦 しくな る こと
われ る。
男女別 に友人 に対す る意識 の発達的変化 をみ る と ,女 子 は男子 よ りも徐 々に高 くな り ,男 子 は変 化 しない ,あ るいは徐 々に低 くなる といつた もの が多 くを占めていた。 本研究 において設定 した 1 0領 域 の うち7領 域 に及 ぶ。 全体 的 に も ,女 子 が 男子 よ りも意識 を高 く持 っていた。 しか し ,両 者
に は性 差 のみ られ なか つた残 り3項 目 「情 報 」
「類似」「真正 さ」の共通性 もある。 また ,落 合・
佐 藤 (1996)│こ よる と ,性 差 は大学生 で はみ ら れず ,年 齢 とともに無 くな る とい う。友人 に対す
る意識 の発達的変化 は ,性 別 に よ り歩む道 は少 し 異 なるこ とはあって も ,最 終的 には同様 の意識 に 至 ると言 えるだろ う。
2)友 人 関係 と精神 的健康
友人 に対す る意識 のあ りよ うによ り分類 した グ ル ープでの分析 においては ,心 か ら親 しい と思 え る友だちがいる人は ,友 人の内容 (友 人 に対す る 意識 )を 問 う10項 目で も ,友 人 を肯 定的 に と ら えてい ることが うかがえた。 当然の ことの よ うに も思われ る。 しか し細か くみてい くと ,親 しい友
だ ちがいなが らも ,友 人 について肯定的な意識 を 持 ち合 わせ ていない児童生徒が多数いることがわ か つた。それは友人に対す る期待が低い グループ の うち ,小 学生 では約 67%,中 学生では約 59%,
高校 生 で は約 55%に 及 ぶ。 また逆 に ,友 人 がい ない と しなが らも ,友 人 に対 し期待 を抱 き ,肯 定 的 な意識 を持 ってい る児童生徒 もいた。それ は肯 定的な意識 を持つ グループの うち ,小 学生 では約
5%,中 学 生 。高校 生 で は約 10%で あった。 (以
下 ,便 宜的に本文中の Hグ ループを肯定的なグルー プ ,Lグ ル ー プ を否定的なグループ とあ らわす。
)心か ら親 しい と思 える友人がいない と認識 しなが らも ,現 在 の友人 に対 して肯定的に とらえてい る のである。 その理 由 として ,現 在 の友人 関係 に不 満 はないが心か ら親 しい とは感 じられ ない ,あ る
いは友人 に対す る期待度が もともと低 いために否 定的 にはな らない ,現 在 の友人 との伸 に満足 しな が らもさらに仲 良 くな りたいな どの期待 を持 って
い る ,な どが考 え られ る。 どの よ うな理 由に して も , どこか孤独感や空虚感 のよ うな ものが感 じら れ る結果で もある。
友人 に対す る意識 が影響 を及 ぼす精神的健康要 因 と ,及 ぼ さない要因があることもあきらか となっ た。 また ,友 人 に対す る意識 が精神 的健康 に与 え る影響 は ,小 。中・高及び性別 によ り異なること わかつた。つま り ,友 人 に対 して同様 の意識 を有
しているとしても ,そ の個人に対する影響は異なっ て くるとい うことである。先述の結果 2)か らも わか るよ うに ,友 人 関係 の性差は高校 生で ピー ク にな る。 その性差は女子 が男子 よ りも友人 に対 し よ り肯定的な意識 をもつ傾 向にある。言い換 えれ ば ,女 子 の方 が男子 よ りも友人 関係 によ り依存的 である と表現す ることができる。
しか し本研究 において ,友 人 関係 のあ りよ うに よ り精神 的健康状態 に性差が最 もあ らわれ る時期 は ,高 校 生ではな く中学生であった。つま り友人 に対す る意識 における性差の影響 を最 も受 けやす いのは ,中 学生であ ることがわか る。その ことか ら ,高 校 生の女子 は男子 に比べ多 くの点で友人 に 対 し期待 を抱 き信頼 を寄せ てい るものの ,依 存す るこ とな く過 ごしてい ることが うかがえる。高校 生女子のあ りよ うか ら考 える と ,中 学生女子 にお ける友人 関係 は ,彼 女 た ちに とつて大 きな影響要 因 となつてい るこ とがわか る。友人 に対 し中学生 に比べ て期待 を寄せ てい る高校生女子 よ りも ,精
神 的健康 に及 ぼす影響は大きいのだ。その理 由は
,中高生 において性差 のあ らわれ ていた各項 目内容 を見 る と ,よ りあき らかにな る。高校生において のみ性差の認 め られた項 目は 「自分 を今 よ りも
,向上 させ て くれ る」「自分 を必要 として くれ た り
自分 の性格や気持 ちを大事 に して くれ る」 の2つ
で あつた。 この2つ の項 目は , 自立 のた めの信頼
関係 をあ らわ してい るよ うに思 われ る。友人関係
の発達 の最終段階 は この2項 目であ り ,そ の過程
で揺れ てい る中学生女子 の姿が浮 かぶ。「悩みや
相談事 を した こ とがあ ります か」において唯一有
意差が あ らわれ なかた こ とも ,中 学生女子 の友人
に対す る信頼感 の揺 らぎが うかがえる。
児童期 。青年期における友人関係の発達 と精神的健康 佐藤倫子
友人 に対す る意識 の肯定的な グループが否 定的 なグループ よ りも症状 を呈 していたのは ,中 学生 男子 にお け る 「疲 れやす い と思 うこ と」「両親 に 反抗 したい と思 うこ と」 の2項 目で あつた。 これ は一見疑間を抱いて しま う結果で もある。 しか し 榎 本 (1999)に よる と ,男 子 は女 子 に比 べ 「ラ イバル意識 」「葛藤 」 を強 く感 じてお り ,女 子 は
男子 に比べ 「信頼・懸念 」「不安・懸念 」 を感 じ てい る とされ てい る。 中学生男子が小学生男子 に 比べ友人 に対す る期待 が低 い傾 向 にある理 由の
1つ である とも考 え られ る。友人関係 に対す る意識 が肯定的であるか否 かだけでは ,精 神 的健康状態
ははかれ ないのだ。 これ は友人 関係 だけでな く
,その他 の影響要因 も含 め考 えてい く必要性 を示唆
してい る。男子 において友人 に対す るライバル意 識や葛藤 が女子 に比べ強い と考 える と ,疲 れやす
い こ とや親 に反抗 したい とい う気持 ちになること が多いの も理解 できる。 同時に ,友 人 関係 に対 し
て否定的な児童生徒 は ,そ の ライバル意識や葛藤 を持 ち合 わせ ていない ,も しくはその感情 を ,友
人 に対す る否 定的な意識 として表現 してい るので はないだ ろ うか。 また親 に反抗 したい とい う感情 は ,必 ず しも精神 的 に健康 でない こ とをあ らわす のではな く ,反 抗 したい気持 ちにな るこ とを表現 で きるとい う点で ,む しろ精神 的に健康 な状態 に 近 い と考 え られ る。
友人 に対す る意識 にお け る性差 と ,精 神 的健康
状態 にお ける性差 のあ らわれ方 は一致 しない。友 人 関係 に最 も性 差 のあ らわれ るのは高校 生で あつ た。 しか しその友人関係 の影響 が最 も精神的健康 に及ぶのは ,中 学生 の時期 だつた。つ ま り ,友 人
に対す る意識 にお ける性差が精神的健康 にそのま ま影響す るわけではな く ,友 人 に対す る意識 にお ける性差 を含 めた友人関係 のあ りよ うが ,精 神 的
健康 に影響 を及 ぼ してい るのである。友人関係 の 発達 のあ りよ うが さらに信頼 のお けるもの とな る と同時 に ,本 研 究 にお ける仮説 が さらに後押 しさ れ る結果 となった。
一方 ,今 回の分析 において ,友 人 に対す る意識
が影響 を及 ぼす とは認 め られ なかつた項 目には
,「朝起 きるのがつ らい と思 うこと」「こわい夢 をみ ること」「めまいや 立 ち くらみがす るこ と」「手足 の しびれや冷 た くな るこ と」「下痢や便秘 にな る こ と」があった。身体的な症状 を問 う項 目が中心 であった。身体症状 に及ぶ要因 とは ,決 して一つ
の もので語 ることのできない ものであることが う かが えた。
【 展望】
先述 した よ うに ,友 人 関係 は人 間関係 の
1つの 基礎 とな る。 しか し子 どもが友人 よ りも先 に接す る , さらなる基礎 とな るのは ,家 族・親戚 関係 で ある。 しか し親戚や地域 との関係 が薄れてきた現 在 ,家 庭 の担 うものが大 き くな りす ぎて しまった よ うにも感 じる。血縁 にも地域社会 に も ,か つ て
の よ うな協力体制はないのだ。児童生徒 の精神 的 健康 を支 えるもの として ,今 , どの よ うな ものが 考 え られ るで あろ うか。
誰 もが , 自分一人 では ど うしよ うもできない よ うな状況 に陥 ることがある。 ど うした らいいのだ ろ うとい う感情 さえも ,意 識 され な くなって しま うこ ともある。意識化す るこ とな く ,症 状 を呈す
るこ とも少 な くない。現代 の子 どもたちは ,い つ
も過 ごす家庭や学校 だけでは救われ な くなってき てい る。
人的な ものを含 め , どの よ うな資源 があつた と して も, どのよ うに用い るかで毒にも薬 にもなる。
ただ ,子 どものために社会 が変化す ることの大切 さを ,こ こでは述べてお きたい。社会的に子 ども の問題 が取 りざた され るよ うになって久 しい。何 もせず に 「問題 だ」 と言 つて も何 も変わ らない。
大人 が変 わ らなけれ ば ,子 どもは変わ らない。
忘れ てはな らないのは ,最 も大切 な こ とは精神 的不健康状態 に陥 らず に過 ごせ るよ うな『 予防』
のための 日々のあ りよ うである ,と い うことだ。
それ は ,悩 まず に過 ごす ことを意味 してい るので はない。 日の前の出来事 と向き合い ,悩 み なが ら も ,心 を失 わない こ とであ る。悩 め る力 こそ ,生
きてい く力 とも言 える。
本研 究 において ,発 達段階 に よる さま ざまな違
いが明 らか となった。同時に ,児 童生徒の症状に
,内な る声が秘 め られてい るであろ うことも うかが われ た。私たち大人 にできることは , 日々の出来 事 に ,子 どものこころの動 きを感 じることである。
子 どもの発達 に大人 が応 じるこ とがで きれ ば ,子
どもは さま ざまな ことへ気づいてい くのではない だ ろ うか。子 どもは時代 を映す鏡 であると言われ る。それ は同時に ,子 どもが大人の鏡 であること をあ らわ してい るよ うに思 う。大切 な ことは ,大
人 が時 に ,子 どもの鏡 になるとい うことである
c子 どもの こころを映 し出す鏡 と して ,子 どもの こ
ころに 日々丁寧 にかかわることができた とき ,子
どもは精神 的な成長へ と向かつてい くだろ う。
日々の 「小 さな出来事」 と言われ るよ うな出来 事 に 目を向けるこ と。それは ,心 理 臨床家が誰か の気持 ちに心を寄せ ることと , どこか似 てい るよ うな気 がす る。 日々の小 さな積 み重ね こそが ,人
を救 うのか も しれ ない。その際 ,相 手 の今 い る世 界 (発 達段 階 )を 理解 してお くことの重要性 が
,本研究 を通 して感 じられ た。 その世界 とは ,年 齢
や性別だけで判断 されるものではなく , 日の前に いる一人の存在に心を寄せ ることか ら感 じられて くるものではないだろ うか。
付記
本論文作成にあた りご指導頂きま した久留一郎 先生は じめ ,支 えていただきま した全ての方々に 心より感謝 申し上げます。
【 参考・ 引用文献】
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井隆久 。村松健司・保坂亨・三浦香苗
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中学生の無気力感 とその関連要因 教育心理学研究 ,43,424‑
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合隼雄
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(0長 尾博
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(6)佐