【問題と目的】
住田(1999)は,幼児期に所属する家族集団 のメンバーは親や兄弟などの自分を受容してく れる身内であり,その中で各々の家族集団内で 社会化された価値や思考・行動様式を身につけ るが,児童期に所属する仲間集団のメンバーは 常に受容してくれる身内とは異なる対等な他人 であり,仲間集団内で求められる価値や思考・
行動様式が家族集団内で求められるそれとは必 ずしも一致しておらず,はじめて異なる価値や 思考・行動を持つ他人と折り合っていく経験を することになる。これは他人との人間関係を取 り結ぶ現実の社会生活の縮図に近づいてくるも のとなり,個人は自己中心性を減少させ,互い に他人の存在を認め,他人の権利を認めること が必要であることを学んでいくと指摘してい る。このように他者との関わりを経験し始め,
かつ仲間集団を形成する体験を積み重ねる小学 校および中学校の時期に,まずは様々な他者と 関わる体験を持てることが重要になり,その中 では各々が持つ異なる家庭集団の価値や思考・
行動様式をより仲間集団や学校集団に受入れら れる価値や思考・行動様式に変化させるような 経験が必要となると考えられる。
仲間集団については,小学生の
84.5%,中学
生の
70.7%が普段よく一緒に遊ぶ友達は同じク
ラスの友人であると回答しており(厚生労働 省,2009),また中学生の
89%が特定の友人グ
ループに所属している(幸本,2009),中学2
年生の女子の93%が仲良しグループに所属し
ている(武内,1993)と指摘されている。さら に,グループは同じクラス内で構成され(小学 生男子の84.5%,女子の 87.9%,中学生男子の
60.5%,女子の 66.1%),構成メンバーはいつ
も同じ(小学生男子の
56.4%,女子の 65.3%,
中学生男子の
61.5%,女子の 76.7%)(藤田・
伊藤・坂口,1996)とも指摘されている。つま り,児童生徒は最低
1
年間を同じメンバーで過 ごす学級内で,親友のような親密な二者関係お よび集団的な複数の友人と人間関係を結ぶ仲間 集団を形成すると考えられる。よって,学級と いう公的集団内において仲間集団という私的集 団を形成しながら,個人の思考や態度,価値観 や規範を形成するのである。学級という公的集団内における社会化につい ては河村(2010)が,児童生徒にとっての社会 ともいえる学級や学校の集団に,継続的に参加 させ,集団のルールに準じて行動する,互いの 人権を尊重しあいながら他者と関わる,共同活 動の中で役割を遂行し責任を果たす,などの体 験学習が必要であることを提起している。ま
た
Ladd(2005)によると,①仲間関係は子ど
もの社会的能力の発達と社会化の手段である,
児童期青年期の友人関係研究の展望
―
個人間要因,環境要因,集団的友人関係の視点から
―武 蔵 由 佳
②仲間集団の相互作用により,向社会的行動 や,仲間入りの戦略,指導性発揮の試み,性役 割など,多様な社会的行動を経験する,③仲間 関係が乏しいと不適応行動を起こすリスクが高 い,などと指摘されている(田丸,
2009)。よっ
て,児童生徒が思考や態度,価値観や規範を形 成し,社会化していく際には,個人が所属する 学級集団とその学級内の友人や仲間関係との関 わりの質が大きな影響を及ぼすものとなると考 えられる。このような点を踏まえ,本研究では本邦の児 童期青年期の友人関係の特徴について他者との 関係性や集団との関係性の観点から整理し,そ の上で,友人関係研究における課題を抽出する ことを目的とする。
【方法】
児童期・青年期の学級集団内で展開される友 人関係を概観し,動向と課題を明らかにする。
その際には,わが国の友人関係の動向をまず概 観する。文献検索は友人,友達,仲間をキー ワードに
1970
年から2015
年までの学会論文を 検索した。研究雑誌は,心理学研究,教育心理 学研究,発達心理学研究,カウンセリング研 究,青年心理学研究,パーソナリティ研究,性 格心理学研究,社会心理学研究,対人社会心理 学研究,実験社会心理学研究をあたった。ま た,これらの研究雑誌に掲載されていた論文中 で頻繁に引用されている論文は,大学紀要等で も抽出した。1970年~2015
年までに国内の研 究225
件を抽出し,これらの論文を対象に文献 研究を行った。この225
件の中から,①児童期 から青年期までの友人関係を対象としているこ と,②児童期青年期の友人関係に関連していること,③一般の児童生徒学生を対象としている 研究であること,④展望論文でないこと,とい う
4
つの基準を用いてその後の分析の対象とす る研究を選択した。この基準にて各研究を検討 した結果,幼児や高齢者の友人関係に関する研 究,親子関係や恋愛関係に関する研究,非行少 年の友人関係に関する研究,展望論文など合 計124
本が対象外となった。このような過程を 踏み,最終的に101
本の論文を対象に文献研究 を実施した。分析の結果,友人関係の研究の枠 組みとして,1.友人関係の構造に関する研究,2.友人関係の構造と様々な要因との関連研究,
3.友人関係の発達的変化に関する研究の大き
く3
つの視点がある(落合・竹中,2004)こと が明らかになった。近年では,友人関係の構造 と様々な要因との関連に関する研究に関する応 用研究が発展している傾向がある。そこで本研 究では落合・竹中(2004)の枠組みに則しなが らも,それらをさらに細分化させて,1.友人 関係の発達的変化,2.友人関係の構造,3.友 人関係の男女差,4.個人内要因,5.個人間要 因,6.電子媒体要因,7.仲間・グループ要因,8.学校場面,としてまとめた。上記 1
~4
までは武蔵(2016)で報告しているため,本稿で は,5.個人間要因から
8.学校場面までを記述
しまとめることとした。なお,1本の論文中で 複数の領域を検討しているものは,それぞれの 項目に分割して記載するかあるいは主となる知 見の比重が高い項目に分類することとした。【結果】
5.個人間要因
1)親密化
友人関係の親密化に関連する研究を示す。
渡辺・今川(2011)は,大学入学
3
ヶ月の間 の最も親しい友人について調査したところ,1
~2
回目で同一の友人を選択した者は全体の57.2%,2
~3
回目で同一の友人を選択した者は全体の
67.1%であり,一度も変更しなかった
ものは
44.4%であったことを明らかにした。山
中(1998)は,友人関係の親密化に関する時系 列的変化を追跡し,大学入学時点の友人に対す る好意度はその後持続しないが,共に行動す る行動頻度は持続することを示している。和 田(2001)は,新友人よりも旧友人で関係満足 感および心的疲労感が高く,考え方への影響が 大きいこと,新旧友人の相違が友人関係期待に おける協力,情報,自己向上,共行動,真正 さ,自己開示で見いだされ,新友人よりも旧友 人に対し,自己向上,真正さ,自己開示を重視 していたこと,情報,協力,共行動は,旧友人 よりも新友人に求めていることが明らかにされ た。下斗米(2000)は,同性友人関係の親密化 過程の段階によって期待される役割行動の様相 が異なり,これに応じて葛藤原因として顕在化 し易い,あるいは顕在化し難い役割行動も異な ることを明らかにした。中村(1990)は社会的 交換モデルを,投入や成果などに着目して比較 検討をし,出会いから時間が経過して投入の蓄 積に関する情報が豊富になるにつれ,コミット メントを決めるのに重要な役割を果たすように なることが示された。相澤(2003)は,同性友 人関係について,衡平理論の概念である怒りや 罪悪感という感情も含めてコミットメントへの 影響を調べた結果,コミットメントへはその関 係への満足が大きな影響を与えていた。池田・
葉山・高坂・佐藤(2013)は,友人関係が親密 になることに伴い現れる共有様式は多様になっ
ていくこと,親密度の違いにかかわらず,かけ がえない友達であるという関係の共有が友達と の関係満足度を高め,友達との深いつきあいを 促すこと,悩みや否定的な感情,物品を共有す ることは関係満足度を低めてしまうが,悩みや 否定的な感情を共有することは友達との深い付 き合い方にもつながっていることを明らかにし た。このように友人関係の親密化過程に関する 研究は,主に社会心理学の研究が多く,行動の 頻度や友人選択の割合等に関する検討が行われ ていた。
2) 心理的距離・類似性,共有,魅力,同調・
悩み,相談
他者との関係性に関連する研究を示す。藤井
(2001)は,「ヤマアラシ・ジレンマ」として,
自分が傷つくなどの対自的要因によるジレンマ と相手を傷つけるなどの対他的要因によるジレ ンマを抽出し,対自的要因ほど「萎縮」「しが みつき」「見切り」などの心理的対処反応に結 びつきやすく,それは相手との心理的距離を遠 く認知しているほど強まることを明らかにして いる。坂本・髙橋(2009)は,現実の友人との 心理的距離と理想の友人との心理的距離が一致 している群の疎外感が低いことを報告してい る。藤原(1976)は,仲間集団への同調と年齢 との関係は,小
4
から小6(9–12
歳)を頂点と する2
次曲線的な関係にあったことを指摘して いる。谷口・大坊(2002)は,同性友人関係の 社会的望ましさ要因は友人に対する魅力判断に おいて類似性認知よりも効果が大きいが,パー ソナリティ特性次元および対人魅力次元の組み 合わせによっては類似性認知の効果が大きい場 合も示された。石田(2006)は,自己と友人は自己の諸側面の重要度(関与度)という自己定 義において類似していること,関与度の類似性 が高いほど親密性は高いことを示した。高坂・
池田・葉山・佐藤(2010)は,中学生の同性友 人関係における共有の心理的機能には「動機づ け」「楽しさの増大」「周囲からの親和的評価 の獲得」「周囲からの達成的評価の獲得」など のポジティブな機能と「負担感の増加」「周囲 からの否定的評価の増大」などのネガティブな 機能の両面があることを明らかにした。西浦・
大坊(2010)は,同性友人に感じる魅力(安心 感,よい刺激,誠実さ,自立性)から,対象者 を安心感重視群,刺激重視群,自立性重視群,
非重視群の
4
群に分類し,自立性重視群ではよ い刺激が最も関係継続動機に影響を与え,他の3
群では,安心感が最も影響を与えていた。丹 野(2007)は,多くの相互作用のある友人関係 とあまり相互作用がない友人関係とを比較する と,友人関係機能尺度の得点から,相互作用の 多い友人関係では,日常で得られる相手からの 支援が多く,一緒に何らかの活動をする頻度が 高いことが明らかとなった。西田(2000)は,友人の悩みの相談に対してどのような応答をす るのかについて検討した。小学生全体では「意 見」が最も多く,「反映」と「質問」は出現し なかった。小学生男子は「指示」が多く,小学 生女子と短大生は「支持」が多く出現した。人 間関係能力の高い児童が
3
つの観点(尊重性,共感性,具体性)にすぐれた応答をすることが 示された。永井・新井(2007)は,利益・コス トと相談行動の関係を検討した結果,悩みを抱 え,相談実行の結果「ポジティブな効果」が予 期された場合や,悩みを相談しないことによ る「問題の維持」が予期された場合に,相談行
動は促進される,一方で「自助努力」のよう に,自分で何とかしたいという思いがある場 合,相談行動は減じることを明らかにした。小 川(2014)は,中高大学生を対象に,慰め方(励 まし,共感,何もせずそっと離れる)による感 情生起について検討し,励ましや共感は何もせ ずそっと離れるよりも,受けての感謝の感情が 高く,反発の感情が低かったことを指摘してい る。以上,他者との関係性については心理的距 離・類似性,共有,魅力,同調・悩み,相談な ど様々な視点から検討されていた。
6.電子媒体
電子媒体を使用した際の他者との関係性に関 する検討がある。赤坂・高木(2005)は,メー ル使用と友人関係の希薄化との関連を検討し,
メール使用がさかんなほど,友人関係が密な ものであることを示した。古谷・坂田・高口
(2005)は,友人との親密度が高くなると,対 面では将来の目標や悩み事に関する自己開示が 増加し,携帯メールではうわさ話の開示が増加 した。一方,親密度が変化しなかったり下がっ ても,携帯メールの開示量は変化しなかった。
対面での開示が行われることが前提となって,
携帯メールの開示が親密度に影響していた。古 谷・坂田(2006)は,距離の異なる同性の友人 関係におけるコミュニケーションの形態と関係 満足度との関連を検討した。あらゆるメディア を使用可能な近距離友人関係や,関係期間の短 い友人関係については,対面でのコミュニケー ションの重要性が認められた。また,近距離友 人関係および関係期間の長い遠距離友人関係で は,携帯メールでのコミュニケーションを行う ことで,関係を維持できる可能性があることが
示された。松尾・大西・安藤・坂元(2006)は,
携帯メールの使用や趣味・関心を目的とする携 帯電話通話が友人数を増やすが,友人数の増加 が選択的友人関係志向を高めるというよりは,
「趣味・関心」や「家族のこと」を目的とする 携帯電話通話が選択的友人関係志向を高めるこ とが示された。赤坂・坂元(2008)は,携帯電 話の使用が友人関係の深さに及ぼす影響は,小 中高ともに全般的に弱いこと,中学生ではイン ターネット量,真実の心理的一体感,情報伝達,
情緒的依存が高いほど,友人関係の密着性が低 下し,高校生では,虚構の心理的一体感,情緒 的依存が高いほど,密着性が増加したことを指 摘している。黒川・吉武・中山・三島・大西・
吉田(2015)は,SNSの普及により,大学生 のコミュニケーション形態は変化しつつも,
FTF(Face to Face)によるコミュニケーショ
ンを行う機会をもっている場合におけるSNS
コミュニケーションは,FTFコミュニケーショ ンの物理的・時間的制約に対する補完的な役割 を果たすにとどまり,いつの時期においても友 人関係には対面での相互作用が重要であること を示した。以上より,電子コミュニケーション ツールを媒介として友人関係の親密度に差異が あることが示された。7.仲間集団・グループ要因
三島(2008a)は児童の仲間集団指向性は「独 占的な親密関係指向」「固定的な集団指向」の
2
因子にわかれることを指摘した。難波(2005)は,青年期後期の仲間概念を面接を通して探索 的に検討し,仲間は親友に次ぐ親しさであるこ と,互いを認識できる複数の規模での関係であ ることを,青年期後期の仲間関係は,児童期や
青年期前期・中期の仲間関係とは区別されてい たことを明らかにした。また,親密さと,目 的・行動の共有という
2
軸によって,仲間,友 だち,親友を布置したところ,仲間を他の関係 から分離する指標として目的・行動の共有が有 効であることを指摘した。三好(2002)は,女 子短大生に自分とグループの関係をイメージし て絵に描いてもらい,「自分」「私」などの自己 同定のあり方や個別性の観点から自己や他者を どう捉えているかについて考察した。大嶽・多 川・吉田(2010)は,「ひとりぼっち回避行動」の捉え方の変化を検討したところ,青年期前期 にはグループ成員が互いに束縛し合う傾向をも ち,一緒にいることで得られる安心感と,形と して群れている状態への漠然とした不安感とが 共存していることがわかった。青年期後期にな ると,ほどよいゆるやかな友人関係を習得し,
情緒的にも道具的にも満たされた主観的な満足 感を獲得することが示唆された。吉原・藤生
(2005)は,高校生の友人グループ内の「関係 拒否性」「親密性」「依存性」「無関心性」が学 校ストレッサーとストレス反応に影響を与える ことを示した。吉原・藤生(2012)は,高校生 男子では友人グループの状態が直接ストレス反 応に,女子では友人グループの状態から主観的 学校ストレッサーを経由してストレス反応に影 響を与えることを明らかにしている。以上,グ ループに関する研究では肯定的な側面のみでな く,固定的集団指向,ひとりぼっち回避行動,
反社会的傾向,ストレスなどの否定的な側面も 扱われていることが明らかになった。
8.学校場面
1)学習・学業との関連
磯崎・高橋(1988,
1993)は,成績の認知と
実際の学業成績において,自己と心理的に近い 他者については,自己評価を維持できるような 形で友人選択がなされていることが示された。岡田(2008)は,学習の援助要請は友人関係に 対する自律的な動機づけおよび充実感と関連 し,援助提供は学習に対する自律的な動機づけ および充実感と関連していた。さらに相互学習 は友人に対する自律的な動機づけと関連し,学 習と友人関係の両方に対する充実感と関連して いたことを指摘している。外山(2004)は,仲 のよい友人の学業成績が低いときには,自分自 身の学業成績の高さと学業コンピテンスを対応 させることができるが,仲のよい友人の学業成 績が高いときには,自分自身の学業成績の高さ と学業コンピテンスを対応させることができな くなると指摘している。外山(2006)は,中学
1
年生において日頃学業成績が高い友人と比較 をしている生徒の中で,学業コンピテンスが高 い生徒は学業成績が向上したが,学業コンピテ ンスが低い生徒は学業成績が向上しなかった。一方,学業成績が低い友人と比較をする生徒 は,学業コンピテンスの高低にかかわらず,学 業成績が低下したことを指摘している。以上よ り,友人関係が個人の学業成績にも影響してい ることが示された。
2)学級集団
楠見(1988)は,学級集団の構造を
4
パター ンに分類し,児童の友人関係特性として,欲求 と現実の友人の一致度および両次元の友人選 択の安定性との関連について検討した。黒川(2006)は,仲間集団以外成員とのかかわりが 学級の級友適応に及ぼす影響について検討し,
集団外成員受容が高いほど,級友適応が高いこ と,仲間集団内地位(中心性)が低いほど集団 外成員との積極的な関わりは低く,仲間集団の 周辺児ほど仲間集団以外の成員とかかわってい くことにより排斥される危険がある。さらに他 者の立場になって考えられることが仲間集団境 界問題の改善に有効であることを示唆してい る。黒川・吉田(2006)は,学級内の仲間集団 内における個人と集団の他成員との双方向によ る役割期待遂行度が,関係満足度に与える影響 を検討した。結果,男子および小集団では,個 人と集団の他成員が一致して重要と捉える役割 期待領域が多くなり,女子および大集団では重 要性の一致した役割期待項目において,個人が 他の集団成員の期待に応えることで,高い関係 満足度を得ていることが示された。黒川・吉田
(2009)は,小学校
5・6
年生を対象に,授業の 班活動における仲間の効果と個人の集団透過性 の効果を明らかにした。仲間が同じ班にいる場 合はいない場合よりも,また個人の集団透過性 が高い児童の方が低い児童よりも,学習活動は 明るく,優しい雰囲気のもとで行われ,さらに 班成員から受けるサポートは多いことが示され た。よって,学級集団内の友人関係の様相が明 らかにされている。3)適応
上野・上瀬・松井・福富(1994)は,友人と の関係において内面的な心理的距離が大きく,
外面的な同調性が高い“表面群”は対人的な不 適応を示すことを指摘している。石本・久川・
齊藤・上長・則定・日潟・森口(2009)は,中
学生女子の友人関係では,心理的距離が近く同 調性の高い密着した関係をとる者は適応的であ るが,高校生女子は,心理的距離は近くとも同 調的ではない友人関係を持つことが適応的であ ることを示している。楠見(1986)は,欲求お よび現実次元で安定した友人関係をもつ児童 は,学級内で自分の希望に沿う友人を獲得して いるため満足感が高く,現実の相互作用を伴っ た親密な友人関係をもつ児童は,お互いの行動 様式や意見を比較することによって自分たちの 社会的現実を吟味する機会に恵まれ,かつ相互 の理解の深まりから相互選択関係の成立が促進 されることを示している。山本・沖田・小林
(2000)は小・中学生の友人関係認知と教師関 係認知は,学校享受感に対して直接に,また各 種ストレス反応を経由して間接に影響を及ぼし ていたことを指摘している。また,小学生では 無気力,中学生では不機嫌・怒りのストレス反 応が学校享受感にネガティブな影響を及ぼして いた。小学生で友人関係認知の能動的側面や教 師関係認知の受動的側面をネガティブに認知し ている子どもは,不機嫌・怒りや無気力といっ たストレス反応を表出する。中学生で友人関係 認知の受動的側面をネガティブに認知している 子どもは学校享受感が低く,また抑うつ・不安 や無気力といったストレス反応を表出する。中 谷(2002)は,社会的責任目標は社会的責任行 動について検討し,児童の教室における規範や ルールを守る行動や,友人に対する思いやりの ある行動は,クラスメイトにとって対人関係を 築く上で好意的に認知されるものであり,その ため友人から受け入れを促進していると指摘し ている。井上(2002)は,“ひとりでいい(Lw 型)”と言う子どもは,“友人を多く持つ(F型)”
子どもと比べると,適応の困難さを裏付ける特 徴が明らかとなったことを示している。勝間・
山崎(2008)は,小学校
4
年生の男子のみ,関 係性攻撃に対する自己評定と仲間評定に有意な 正の相関が見られたことを示している。濱口・江口(2009)は,児童の主張行動は仲間関係の 適応諸指標に有意な寄与を示し,中でも特に肯 定的主張と権利防衛の重要性が示された。穏健 群,低主張群,高攻撃群,平均群の
4
群のうち,主張行動と向社会的行動が多く攻撃行動が少な い穏健群が最も適応的で,すべての主張行動と 向社会的行動がともに少ない低主張群と攻撃行 動の顕著さを示す高攻撃群が最も不適応である ことが明らかになった。吉澤・吉田(2010)は,
単一の親友や仲間集団の反社会的傾向が個人の 同傾向に与える影響を,相互影響モデルに基づ いて検討した。高校生を対象とした研究におい て,仲間集団からの影響が単一の親友からの影 響よりも強いことが示された。中学生を対象と した研究において,親友や仲間集団との反社会 的傾向は,行動傾向のレベルではなく主に認知 レベルにおいて相互に影響していることが示さ れた。親友と仲間集団とで影響の方向が異なる ことから,単一の親友との相互影響は,個人が 逸脱的な他者を親友として意図的に選択するこ とを意味し,仲間集団との相互影響は,個人が 仲間集団から逸脱性のトレーニングを受けてい ることを意味する可能性が示唆された。渡部・
松井(2011)は,高校生時には主張性における
「情動制御」や「主体性」が,大学生時には「情 動制御」や「素直な表現」が友人関係満足感を 高めていた。同様に渡部(2010)も主張性と友 人関係における適応との関連を指摘している。
高坂(2010)は,異質拒否傾向および被異質視
不安が友人関係満足度を低めることを明らかに している。したがって,適応と関連しているの は,心理的距離の近さ,同調性の高さ,親密性 の希求,主張性,異質視不安などであることが 示された。これらのことから,学校内の友人関 係が児童生徒の主張性や悩みに対する応答,ス トレスや反社会的行動などと関連していること が示された。
4)いじめ
三島(2003)は,親しい友人からいじめられ た経験は男子に比べて女子に多く,親しくない 友人からいじめられた経験に性差はなかったこ と,親しい友人からいじめられた経験が友人に 対する満足感に与える負の影響は女子の方が 大きかったことを指摘している。黒川(2010)
は,伝統的いじめ被害経験と電子いじめ被害経 験をもとにいじめ被害群を
7
つに類型化した。伝統的間接いじめ被害優位群は,いじめ被害低 群よりも学校適応感が低く,不機嫌・怒り感 情,抑うつ・不安感情,身体的反応といったス トレス反応が高いことが示された。電子的間接 いじめ被害優位群は,いじめ被害低群よりも,
抑うつ・不安感情が高いことが示された。伝統 的直接いじめ被害優位群は,いじめ被害低群よ りも,抑うつ・不安感情や無気力的認知,思考 が高いことが示された。全般的いじめ被害群 は,いじめ被害低群よりも,不機嫌・怒りの感 情,抑うつ・不安感情,無気力的認知・思考が 高いことが示された。不特定他者を含めた電子 いじめ被害優位群は,いじめ被害低群よりも抑 うつ・不安感情が高く,また学級内の仲間の人 数が少ないことが示された。三島(2008b)は,
小学校高学年の頃に親しい友人からの「いじ
め」を体験をした生徒は,体験しなかった生徒 に比べ,高校生になってからも学校不適応感を より強く持ち,友人に対しても不安・懸念が強 いことが示唆された。長谷川(2014)は,「仲 間はずれ」とよばれる,異質な他者を集団から 排除することについての判断の発達を検討し た。小中学生では,閉鎖的,固定的な集団への 志向性および友人への同調欲求が高いと,集団 排除を認めることが示された。これらのことか ら友人関係の負の側面である「いじめ」に関す る様相が明らかになった。
【考察】
以上,友人関係は個人内要因のみならず,他 者との関係性や集団への適応などと関連してい ることが明らかになった。ただし,研究を概観 すると次のような課題も抽出される。
1
点目は,集団的な友人関係に関する検討の 必要性である。児童生徒は親友のような最も親 密な二者関係を形成する他に,集団的な友人関 係であるグループを形成する。その背景には「ひとりぼっち回避行動(大嶽・多川・吉田,
2010)」や「固定的な集団指向(三島,2008a)」
という従来の友人関係研究では指摘されてこな かった心性があると考えられる。また近年では このようなグループの具体的な様相として,① 学校を基盤として形成され,②メンバーの流動 性が少なく,③小規模化しており,④グループ の境界が明瞭かつ固定的になってきている(藤 田・伊藤・坂口,1996)と指摘されている。こ のようなグループの様相が児童生徒にどのよう な影響を及ぼすのか,について検討が必要であ ると考えられる。さらに,日本においては,ス クールカースト,つまり学級集団内の生徒の相
対的な地位が同性や異性からの人気やコミュニ ケーション能力の高さで表される階層関係(森 口,
2007;鈴木, 2012)があることが指摘され,
スクールカーストの低いグループ内にいじめが 発生しやすい(森口,
2007)などと指摘される。
しかし,研究論文としてまとめられているもの はまだない。したがって,どのようなグループ が児童生徒個々人の発達を促進したり,退行さ せたりするのかについて検討する必要があると 考えられる。
2
点目として,児童生徒の友人関係のほとん どは学校を通じて形成されるため,学校場面と の関連で友人関係を検討する必要があると考え られる。子どもたちが一日の大半を過ごす学級 集団は,最低一年間メンバーが固定され,一日 の大半を過ごし,学習や生活をともにする集団 である。学級集団のメンバー内に友人がいて良 好な人間関係があれば,相互に愛他性や受容性 が高まり,個人の発達にもプラスの影響を与え ると考えられる。反対に学級集団のメンバー間 に攻撃的な言動,喧嘩や対立,防衛的な関係が ある場合は相互に傷つけ合うため,個人の発達 にマイナスの影響をもたらすと考えられる。こ の点についてはまだ詳細に検討されていない。したがって,学級集団の状態と児童生徒個々人 の友人関係との関連を検討する必要があると考 える。
これらのことから,仲間集団の具体的な特徴 について明らかにするような研究が求められる だろう。
引用文献
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赤坂瑠以・坂元章 2008 携帯電話の使用が友人関 係に及ぼす影響:パネル調査による因果関係の 推定 パーソナリティ研究,16,363–377.
赤坂瑠以・高木秀明 2005 携帯電話のメールによ るコミュニケーションと高校生の友人関係にお ける発達の特徴との関連 パーソナリティ研究,
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146–155.
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全国9都県での質問紙調査の結果より― 東京 大学大学院教育学研究科紀要,36,105–127.
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193–201.
古谷嘉一郎・坂田桐子 2006 対面,携帯電話,携 帯メールでのコミュニケーションが友人との関 係維持に及ぼす効果:コミュニケーションのメ ディアと内容の適合性に注目して 社会心理学 研究,22,72–84.
古谷嘉一郎・坂田桐子・高口央 2005 友人関係に おける親密度と対面・携帯メールの自己開示と の関連 対人社会心理学研究,5,21–29.
濱口佳和・江口めぐみ 2009 児童の主張行動と仲 間関係の適応との関連―アサーションは本当に 児童の仲間関係の適応に役立つのか? カウンセ リング研究,42,60–70.
長谷川真里 2014 他者の多様性への寛容:—児童 と青年における集団からの排除についての判 断— 教育心理学研究,62,13–23.
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黒川雅幸・吉田俊和 2009 仲間の存在と個人の集 団透過性が学習班活動に及ぼす効果 実験社会 心理学研究,49,45–57.
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