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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:朴 希 眞

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:ポーラスアスファルト混合物の新粒度指標による垂直入射吸音率の評価に関する研究

社会の成熟に伴い,人は健康で快適な生活の質の向上を望むようになる。しかし,多くの地域の生活 環境に係る問題は未だに解決されていないことが多い。例えば,全国の生活環境に係る苦情件数のうち 騒音に関する苦情が全体の2割以上を占めている。その中でも,自動車交通騒音は,沿道住民の生活や健 康に影響を及ぼすため,継続的に自動車交通騒音対策として,交通流対策,沿道環境対策,そして道路 構造対策等が実施されている。しかし,交通流対策は,広域における騒音対策となりきめ細かい対策と なり難い面がある。また,市街地での沿道環境対策として,遮音壁や環境施設帯等の設置があるが,景 観問題や沿道利用上の制約,そして用地確保が困難といった点がある。そこで,道路構造対策の中一つ である低騒音舗装を適用されることが多い。

低騒音舗装は,連続した高空隙率を持つポーラスアスファルト混合物(Porous Asphalt Mixture:PAM) を表層に用い,自動車からの騒音を低減させる。この騒音低減効果は,PAM内部の大きな連続空隙に入 射した騒音エネルギーの減尐が,空隙内での摩擦や共鳴によって生じるためである。一般的に騒音低減 効果は,PAM供試体を用いた垂直入射吸音率で評価されている。現在の評価方法は2通りあり,1つ目は JISに示された垂直入射吸音率試験で求めた吸音率を用いる方法である。2つ目は,PAMの空隙内での摩 擦と共鳴を考慮した吸音インピーダンスモデル式によって求めた垂直入射吸音率を用いる方法である。

前者は,PAMを構成する骨材の粒度(大小の骨材粒子の混合割合)をもとに作製した供試体を用いて試 験を行うため,時間的効率が悪い。後者は,PAM供試体が事前に作られていることを前提とし,吸音イ ンピーダンスモデル式に適用するPAMの因子を選んで垂直入射吸音率を推定するが,使用する因子のう ちのいくつかは他の試験方法によって直接求めなければならないことや,残りの因子についても経験的 に知られた値を適宜用いるといった煩雑さが内在している。そこで,PAM供試体の空隙率が事前に分か れば,空隙率のみで垂直入射吸音率が推定できる修正吸音インピーダンスモデル式の提案もされている が,骨材粒度によって空隙率が変化することから,この場合も供試体を作製して空隙率を求めるか,も しくは骨材粒度を示す指標によって空隙率を評価し,それによって垂直入射吸音率を推定することが必 要となる。供試体を作製して空隙率を求める場合も時間的な効率性は悪い。また,骨材粒度を示す既存 の指標はあるが,空隙率や垂直入射吸音率を示す指標として利用できるとは言い難い。低騒音舗装を適 用する場合,事前に効率よくPAMの垂直入射吸音率を知ることは骨材選択や施工法の選択,さらには施 工費用や工期の把握を行う上で重要であるが,PAMの垂直入射吸音率を骨材粒度のみで効率よく知る方 法は無いと言える。

本研究では,低騒音舗装を導入する際に計画段階で,その吸音特性に影響するPAMの垂直入射吸音率 を使用予定の骨材とその粒度のみで評価できる予測式を提示することとした。そのために①既存の吸音 インピーダンスモデル式を整理し,予測式に適用できる因子の選択を行う。併せて測定周波数によって 変化するPAM供試体の垂直入射吸音率によって吸音性を評価する煩雑性を避けるために垂直入射平均吸 音率を用いることを示す。②既存の骨材粒度を示す指標がPAMの垂直入射平均吸音率の推定に適用でき るか否かを,PAMの内部空隙の状態(大きさ,形状)を基に検証する。その後骨材粒度分布図を用いて 示した新たな粒度指標(新粒度指標,Particle Distribution IndexPDI)とPAMの空隙状態との関係を明ら かにする。③PAMの新粒度指標 PDIを用いて垂直入射平均吸音率を予測できる実験式を提示し,その適 用性について考察する。

本論文は7章から構成されており,各章の内容は以下の通りである。

「第1章 序論」では,研究の背景として,自動車交通騒音の低減を図るために適用されている低騒 音舗装表層のPAMの垂直入射吸音率を求める必要性とその問題点を示し,さらにPAMを構成する骨材粒 度によってその垂直入射吸音率を評価する目的と意義を示した。

「第2章 ポーラスアスファルト混合物の吸音特性に及ぼす因子の整理および評価方法」では,既存 の垂直入射吸音率を推定する吸音インピーダンスモデル式を用いて,PAMの吸音特性に及ぼす因子を整

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理し,その因子の評価方法とその因子の選択について述べた。PAMの垂直入射吸音率を推定する吸音イ ンピーダンスモデルは,大別すると微視的構造吸音インピーダンスモデルと現象論的吸音インピーダン スモデルがある。これらの吸音インピーダンスモデルに示された因子は,実験により直接求めるものと 経験や推定により間接的に求めるものがある。本研究では,垂直入射吸音率を推定する場合,必要とな る因子が尐ない現象論的吸音インピーダンスモデルに適用される因子に注目し,PAMの流れ抵抗,形状 係数および垂直入射吸音率を選んだ。特に,本研究では,垂直入射吸音率は周波数に依存するために評 価が難しいことから,周波数平均化した垂直入射平均吸音率の考えを示し,PAMの垂直入射吸音率を評 価することとした。

「第3章 ポーラスアスファルト混合物の粒度による空隙状態の検証」では,PAMの骨材粒度が内部 の空隙の状態(大きさ,形状)に影響を与え,その結果垂直入射平均吸音率が変化させることを明らか にした。粒度を変えた鋼球,砕石およびPAMを用いて流れ抵抗および垂直入射平均吸音率を検討したと ころ,空隙率が異なる影響もあるが,鋼球や砕石の配列,そしてPAM骨材のかみ合わせによって生じる 内部の空隙状態(大きさ,形状)の変化によって,流れ抵抗と垂直入射平均吸音率が変化することを明 らかにした。そこで,これらの材料から作られた円筒供試体を3等分に切断して各断面での空隙の大きさ

(面積)と空隙形状(凹凸の角の数(角数))の分布をみたところ,分布の偏りを示す歪度と流れ抵抗,

形状係数および垂直入射平均吸音率との間に高い相関性が見られ,PAMにおいても粒度が垂直入射吸音 率に大きな影響を与えることを明らかにした。

「第4章 既存の粒度指標によるポーラスアスファルト混合物の粒度の検討」では,既存の粒度指標 を用いてPAMの粒度指標として適用できるかを検討した。骨材の粒度指標としては,一般に地盤工学や コンクリート工学の分野で使われている均等係数,曲率係数,粗粒率,分級係数などがある。PAMの粒 度の特徴は,最大粒径20mmまたは13mmの場合,粒径4.75mmで変曲点を有し,粒径4.75mm以下の細骨 材分の含有量によって空隙率が変化した。既存の粒度指標を用いて,PAMの粒度と流れ抵抗および垂直 入射平均吸音率の関係を見たところ,既存の粒度指標は粒度分布の形状や配合の状態を示すものである ため,PAMの粒径の範囲とその中に含まれる骨材の配合量を示すことができないことが明らかになり,

流れ抵抗と垂直入射平均吸音率の相関性は良くなかった。

「第5章 ポーラスアスファルト混合物の新粒度指標の提案と混合物の空隙状態および吸音特性の検 討」では,累積残留率を用いたPAMの骨材粒度分布図を基にして,粗骨材分の粒径範囲と残留率の積に 対する細骨材分の粒径範囲と残留率の積との比をとったものをPAMの新粒度指標(以下PDI)として提 案し,PDIによる空隙の状態と垂直入射平均吸音率の関係を検討した。ここでは,PAMの粒度の特徴を 考慮し,空隙状態に影響する4.75mm以下の細かい骨材の含有量の情報も含んだPAM用の新たな粒度指 PDIを示した。これはPAMの骨材を骨材粒径と累積残留率のグラフにプロットした粒度分布図を基 に,粒径0.0754.75mm範囲とその間の細かい骨材(細骨材分)の残留率との積と,4.75mm~最大粒径 の範囲とその間の粗い骨材(粗骨材分)の積との比を求めて示したものであり,PDI が大きくなると細 骨材分を多く含むことを意味する。PDIPAMの空隙状態を示す空隙面積分布の歪度および角数分布の 歪度との関係を見たところ,相関性の高いことが明らかとなった。さらに,流れ抵抗,形状係数および 垂直入射平均吸音率の関係を見たところ,いずれも高い相関性のあることが判明した。

「第6章 ポーラスアスファルト混合物の新粒度指標による垂直入射平均吸音率の評価」では,第5 章で示した結果に基づき,PAMPDIによる垂直入射平均吸音率の評価方法とその検討結果を示した。

PDIを用いた場合,PAMの垂直入射平均吸音率を2次多項式で近似できることを他の研究者が報告し ているデータを基にして検証した。その結果,本章で示したPDI2次多項式は他のデータを概ね実測 値の±15%の範囲で,PAMの垂直入射平均吸音率を評価できることを示した。

「第7章 結論」では,本研究の成果について述べた。本研究では,PAMの粒度が内部の空隙の面積 や角数を変化させ,その結果PAM の垂直入射平均吸音率に影響を与えることを明らかにした。そこで,

PAMの粒度の特徴を表すPDIを示し,これがPAMの空隙の状態と垂直入射吸音率と高い相関性がある ことを明らかにした。この結果に基づき,PAMの垂直入射平均吸音率はPDI2次多項式で近似できる ことを明らかにした。以上のことから,PAMの粒度分布を基にすれば,事前に供試体を作ることもなく,

PAMの垂直入射吸音率の評価ができることを示した。

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