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大学教育機能開発総合研究センター 渡 遼 淳 子

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Academic year: 2021

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学部生指導員の活用によるグループ指導の試み 一平成 2 4 年度ライティング指導室実践報告一

はじめに

大学教育機能開発総合研究センター 渡 遼 淳 子

ライティング指導室では、開設 2 年目の平成 24 年度、学部生を指導員として活用する新たな取り 組みに着手した。本指導室における指導形態には個人セッション(面談、オンライン)とグ、ループ指導 の 2 通りあるが、開設当初より少人数クラス制によるグループ指導が占めるウエートが圧倒的に高くな っている。学部生指導員は、グループ指導の中で学生のナピゲーター役を果たした。

大学授業におけるライティング教育に関しては、少人数での演習形式で学生が相互に学び合う手法が 有効であるとする見方がある(白石,鈴木, 2 0 0 9 ,  p . p . 3 1 ‑ 3 3 ) 。例えば、学生問、あるいは教師一学生 間の関係性の再検討と「協働学習J (ピア・ラーニング)導入の提唱(池田, 2 0 0 9 ) などはその好例で あろう。

このほか、国内の大学におけるライティング教育の新たな動きとしては、 2000 年代に入って設立の動 きが見え始めた、ライティング・センターがある。ライティング・センターの場合、授業と違い、持ち 込まれた文章について指導を行うとしづ性格上、一対ーの指導が主となる。その指導法は、添削により

「いい文章 J の完成、つまり「書いた結果 J を重視する従来の文章指導とは違い、「書く前 J や「書い ている途中Jにおける評価に重点をおいている ( N o r t h , 1 9 8 4 ) 。この考え方は、 W r it i n g  P r o c e s sと呼ば れ、ほとんどのライティング・センターの基本的理念のひとつとなっているだけでなく、集団による授 業プログラムのデザインにおいても、上記協働学習とともに採用されるべきものとされている(池田,

2 0 0 9 ) 。

本指導室も、基本的には WritingP r o c e s s の考え方を踏襲している。ただ、その形態は、多くのラ イティング・センターと違い、少人数クラス制に重きを置いている。それは、指導室を「文章のトレー ニング場 J と考えたからである。このため、指導は学生によって持ち込まれた文章に対する指導ではな く、指導する側が与えるテーマにそって一緒に文章を完成させていくというやり方を採用している。そ して、学生のトレーニングに寄り添い、いくつもの「気づき Jを引き出す役割を担うのが、学部生指導 員である。

本稿では、学部指導員導入の背景と実践に関する本指導室の 1 年間の取り組みを報告する。

1.指導員導入の背景

1 . 1 個人セッションからグ、ループ指導へ

本指導室における指導形態の重心は、開設後わずか 1 カ月で、当初構想していた個人セッションから

複数の少人数クラスに分けたグ、ループ指導へとシフトすることを余儀なくされた。理由は二つある。ひ

とつは、指導を希望する学生の数が見込みをはるかに上回ったことである。平成 2 3 年度のスタッフ(指

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導室統括者 1 人、事務補佐員 2 人)で希望学生を全員受け入れるためには、早急に効率的な指導形態を 構築する必要に迫られた。

もうひとつは、個人セッションを進める上で浮上した問題である。例えば、正規授業の課題レポート 原稿を不完全な形で丸投げするなど、指導者に対する依存度を高める学生が現れ始めた。また、本指導 室がめざす「対話を通じ自立した書き手の育成 J という試みも、指導する側が学生側の消極的な姿勢に 直面し、対話というよりも指導者側からのアドバイス一辺倒になるという状況がしばしばとなった。ま た 、 1 人の学生に割くことができる時間も少なくなり、結果として一方向的な知識の伝達という形にな

りがちとなった。

もちろん、個人セッションには、①学生のレベルに応じたきめ細かな指導ができる、②持ち込まれた さまざまな文章に対応することで幅広いニーズにも応えることができる、という利点があった

o

しかし、

限られたスタッフで対応するには限界があり、指導体制の見直しは必然的なものであった。こうした状 況の中で浮上したのが、少人数クラス制によるグループ指導と学部生指導員の活用である。指導室では 個人セッションを希望する学生を曜日と時間ごとに 4‑‑7 人の少人数のグ、ループに編成し、「特別コー スJと銘打ったグループ指導を開始した。また、次年度の学部指導員確保を見据えたコースの開設も企 図し現在に至っている。

「特別コース j では、学生が持ち込んだ文章を指導するのではなく、指導する側が共通のテーマを与 え、構想から文章完成までの一連の行程を体験させることを狙った。「指導室はトレーニング、の場で、あ る」という考えに立った指導法は、グループごとに目指す目標を決め、柔軟に組んでいる。例えば、 2000

‑ ‑ 5 0 0 0 字程度のレポート作成をめざすクラスでは、 6 回程度の指導でアカデミック・ライティングの基 礎から資料読みこみ、討論、発表を経て文章を完成させる。さらに上級のスキルをめざす希望学生には、

後期、特別コース内に開講する「論文作成講座 J で 1 万字程度の論文作成に挑ませることになる。

( 表 1) 特別コースを中心としたグループ指導実績

平成 2 3 年度 平成 2 4 年度

特別コース 6 ‑ 7 月 6 クラス X6 回 特別コース 6 ‑ 8 月 7 クラス X6 回 (前期一般) 3 0 人 (前期一般) 2 5 人

特別コース 1 0 ‑ 2 月 3 クラス x12 固 特別コース 1 0 2   F . I   4  ??A  x  1 5 回 l

(後期一般) 1 3 人 (後期一般) 1 2 人

特別コース 10‑2 月 2 クラス x15 回 学際科目 1 0 ‑ 2 月 1 クラス X15 回 (論文作成講座) 1 0 人 論文作成講座 1 4 人

1 年目の平成 2 3 年度は前後期合わせて 1 1 クラスを開講し、 5 3 人が受講した。このうち論文作成講座 は 2 クラス、 1 0 人だ、った

o

24 年度は特別コースが前後期計 1 1 クラスで 3 7 人が受講した。 24 年度から は、学際科目として同名の授業も指導室が担当し、 1 4 人が受講した(表 1) 。現在の学部指導員は、平

‑ 31‑

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成 23 年度の論文作成講座受講生の中から選ばれたものである。

なお、個人セッションについては、時聞が合わなかったり、特別な事情でグ、ループ学習を回避した い学生に対して門戸を聞いている。また、グループ指導を受ける学生の学習上の悩みなどに対応するた めにも機能させている。

1 . 2院生チューターか学部指導員か

全学横断的なライティング指導セクションを持つ大学には、指導する側に学生を取り込んでいるケー スが多い。例えば、早稲田大ライティング・センターは、統括者である准教授 (1 人)と 1 0 人のスタ ッフ(助教 1 人、助手 6 人、受付職員 3 人)以外に指導の実働部隊として大学院生 22 人をチューター として採用し、大学院生が学部生を指導するという効率的な指導システムを取っている。高いチュータ ーの質を維持するためには、採用の条件として大学院におけるライティング関連講座を受講することを 条件付け、チューター採用後も指導法について継続した研修を続けている。また、平成 2 4 年度開設の 関西大学「ライティングラボJ (スタッフ:特任准教授 1 人、特任助教 3 人)は、大学院生 1 3人をチ ューターとして採用し、卒業論文やゼミレポートなどの個別指導などを行っている。

ライティング・センター発祥の地・アメリカに目を転じると、例えば、 PrincetonUniversity には、

Writing Program というセクションがあり、 Fellow と呼ばれる学生指導員が活躍する。 Fellow は、上 から WritingCenter Head Fellow 、 WritingCenter Outreach Fellow 、 WritingCenter Fellow と 3 つ の階級に分かれ、学部 1 年生から大学院生まで能力があれば決められたトレーニングを経て雇用する形 を取っている。

また、学部生向けセンターと大学院生向けセンターに分かれている Universityof California Los  Angeles  ( U C L A ) は、学部生向けセンターに PeerLearning Facilitator として学部生、大学院生向け センターに WritingConsultant として大学院生を配置している。

本学指導室も、指導形態の重心をグループ指導へシフトした時点で、将来的な学生の取り込みを構想 し育成プログラムをスタートさせた。すなわち、特別コースに組み込んだ「論文作成講座 J がそれであ る。そして、平成 24 年度に 3 人の学部生(法学部・男、文学部・女、教育学部・女)を初代の学部指 導員として採用し現在に至っている。

2 . 学部生指導員の運用 2 .   1 採用の流れ

本指導室が指導スタッフを大学院生でなく 学部生に求めたのは、大学院生に比べ学部生の 方が①継続してアカデミック・ライティングの スキルを体系的に学ぶことが可能、②長期的に メンバーを固定化することが可能、であること からである。

①に関しては、本指導室が全学部の初年次生 を対象とした教養教育科目「ベーシック J ( 全

( 図 1 )平成 2 3 年度学部生指導員採用の流れ 5 月 ベーシック(レポート作成の基本)

5 ‑ 8 月 特別コース(一般)

1 0 ‑ 2 月 特別コース(論文作成講座)

2 月 論 文 提 出

3 月 審 査 、 合 否 通 知

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8 コマ)中、「レポート作成の基本J (2 コマ)を担当し、専門教育のとば口に立った学生にアカデ、ミ ック・ライティングの基礎を指導していることに由来する。指導室を訪れる学生のほとんどがベーシッ クで刺激を受けた学生であることから、これらの学生を指導員として育てることは、最も理にかなった 方法である。また、②に関しては、指導員としての活動期聞がより長く確保できることで、指導室運営 や指導の一貫性を担保できると考えた。

指導員の採用までの流れは、図 1 の通りである。学生は前期、ベーシックに続き「特別コース J ( 一 般)を受講し、後期は論文作成講座で 1 万字の論文を作成する。平成 2 3 年度は、完成した論文を 3 人 の教官らが審査し、合否の判定を行った。

2 . 2活用法

学部生指導員の勤務時間は、平成 24 年度、 1 人当たり週 3 時間とした。各人が複数の少人数クラス を担当し、ディスカッションのリード、文章作成過程での各種アドバイスなどに当たった。 24 年度のグ ループ指導実績は、前期が 7 クラスに対し 6 回(計 4 2 回)、後期は 4 クラスに対して 1 5 回(計 60 回)だ

った(表 1) 。

グループ指導においては、クラス内ディスカッションのナピゲートが指導員の最も重要な仕事である。

これは、発表、質問、回答を繰り返すことで、資料の吟味や主張に対する内省を迫るものであり、アカ デミック・ライティングを指導する上で指導室が特に重視している要素の一つでもある。学部生指導員 の役割は、論点がぱらぱらになったり、逆に意見が出ないといった議論の場にあって、質問を中心とし た発言で常に方向性を見失わせずに学生を導き、

内省を促すことにある。そのためには、アカデミ ック・ライティングに関する基礎的なスキルに加 え、与えられたテーマに関しても、あらかじめ一 般学生よりも理解を深める必要がある。そこで、

指導員には週 1 回、指導室統括者による文章指導 を受けることを義務として課した。また、指導員 同士も毎週、ミーティングを持ち、自主学習を重 ねて指導に備えた。

( 表 2) 平成 24 年度学部生指導員関連の 主な講義・イベント

5 ‑ 7 月 ベーシック

5 ‑ 8月 特別コース(一般) 7 月 高 大 連 携

9 月 2 1 世紀型大学教育セミナー『ライティング 指導の必要性 J (於・熊本大)

グループ指導以外では、ベーシックや高大連携、 I 1 0 2 月 特別コース(論文作成講座) セミナーといった、本指導室関連の授業やイベン I 1 0 ‑ 2 月 学際科目『論文作成講座 J

トの支援にも積極的に活用した。また、これらの I 3 月 シンポジウム『ライティングセンター 日本 授業・イベントにおいては、指導員がプレゼンテ│の現状と課題 J (於・関西大)

ーションに立つ場を積極的に設けるなど、あらゆ I 3 月 学部生指導員選考 る機会をとらえて、自己研さんを重ねさせた(表 2) 。

2 . 3導入の効果

学部生指導員の導入は、指導する側と指導される側双方の学生が、互いに意識し合うことで、学習に 対する高いモチベーションの維持へと結びついている

o

特に指導員となった学生には、常に見られてい

‑ 33 ー

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る存在であるという自覚が高い。このため、日ごろから指導室を拠点に自主的な学習に取り組み、スキ ルアップを図っている。

また、学部生の起用は圏内ではあまり見られないケースだけに、他大学もその取り組みに注目すると ころである。 3 月 1 6 、 1 7 日に関西大学で開催されたシンポジウム「ライティングセンター 日本の現 状と課題 j では、主催者からの要請を受け、学部生指導員がポスター発表を行った

o

また、早稲田大、

関西大など先行する大学ライティング・センターのチューター(大学院生)らとの意見交換会にも臨ん だ 。

こうした指導員の存在は、指導を受ける側の目標にもなっている。特に初年次生の中には、指導員を めざして「論文作成講座 J に挑む学生も少なくない。指導室としても、「学び合い J の再生産と拡大に 向けた機運と受け取っている。

おわりに

学部生指導員導入の最大の目的は、年齢の近い学生同士が「学び合い J を通じて自律性を育むことに ある。 1 年間の実践において、 3 人の学生指導員は学生指導に向けた自己啓発だけでなく、指導室運営 に関しても自主性を発揮しながら積極的にかかわってきた。その成長ぶりは、当初の予想を超えたもの であった。

その一方で、指導室としての課題も見えてきた。最大の課題は、経験の浅い学部生をどこまで指導に かかわらせることができるかということである。初年度、少人数クラスのリーダーとしてグループ内デ イスカッションを円滑に導くという点では、ほぽ合格点を与えることができる。ただ、今後、指導の範 囲を個人セッションやさまざまな持ち込み文章の指導に広げることを想定すると、指導員の力量不足は 否めない。指導員採用後の有効な育成法を確立することが急務となっている。

指導員の確保も頭の痛い問題である。幸いにして、現在、数人の学生が指導員を目指し論文作成講座 に挑んで、いる。新年度は 1 ‑ . . 2 人程度を採用する予定である。ただ、採用に当たっては、その技量はも ちろんのこと、学年、学部のバランスも加味することになるために、一気に態勢を整えることは不可能 である。新人と引退者の 収支"のバランスが取れるまでには数年を要することになる。指導室を円滑 に運営していくためには、その問、いかに指導員の技量を上げて守備範囲を広げ、効率的に活用するか ということにもかかってくるだろう。

本指導室が学生にとって魅力ある学びの場とするためにも、学生の力は必要不可欠である。将来的に は、対象を大学院生にまで広げることも考えたい。

参考文献

池田玲子, ( 2 0 0 9 ) ,池田玲子,協働的アプローチで授業をデザインする, w 大学の授業をデザインする

日本語表現能力を育む授業のアイデア~,ひつじ書房, p p . 2 7 ‑ 4 2 .  

白石藍子,鈴木宏昭, ( 2 0 0 9 ) ,相互レビューによる論証スキルの獲得, w 学び合いが生み出す書くカ

大学におけるレポートライティング教育の試み~ ,丸善プラネット, p p .   3 1 ‑ 5 4 .   N o r t h ,  S .   M . ,  ( 1 9 8 4 ) ,  T h e   I d e a  o f  a  W r i t i n g  C e n t e r .   C o l l e g e  E n g l i s h ,  4 6 ( 5 ) ,  4 3 3 ‑ 4 4 6 .  

P r i n c e t o n   U n i  v e r s i  t y ,  P r i n c e t o n   W r i  t i n g   P r o g r a m ,  f r o m   h t t o : / / W M v . o r i n c e t o n . e d u / w r i t i n   g , 1

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2 0 1 3 / 3 / 1 3 .  

n i  v e r s i  t y '   o f   C a l i f q r n i a   L o s   A n g e l e s   ,  U C L A   W r i  t i n g   C e n t e r   a ! l d W r i  t i n g   P r o g r a m ,  f r o m  

httP://Mvw.wp~~cla.edu/, 2 0 1 3 / 3 / 1 3 .  

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参照

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