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社会的引きこもり生徒の再登校への支援

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(1)

社会的引きこもり生徒の再登校への支援

著者 小野 昌彦, 三好 義弘, 小林 重雄

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 10

ページ 77‑84

発行年 2001‑03‑31

その他のタイトル Shaping Going‑to‑school Behavior in a

Withdrawn Junior High School Student with  Non‑attendance at School

URL http://hdl.handle.net/10105/4159

(2)

小 野 昌 彦

(奈良教育大学附属教育実践総合センター) 三 好 義 弘

(石金病院) 小 林 重 雄 (吉備国際大学)

Shapmg Going‑to‑schoo一 Behavior in a Withdrawn Junior High School Student

with Non‑attendance at Schoo一

Masahiko ONO

(Center for Educational Reserch and Development, Nara University of Education) Yosihiro MIYOSHI

(Isigane Hospital) Sigeo KOBAYASHI (Kibi Internatinal University)

Abstract : The present study has discussed the programs to shape going‑to‑school behavior in a social withdrawal boy of 13 years with non‑attendance at school. The non‑attendance problem was seemed to be due to social withdrawal. And his behavior of staying at home was kept by video games. The contents of sessions included development of fundamental academic skills, social skills training, training for attending school at morning, maintaining close ties with school and guidance for mother. He returned to school after 42 sessions which extended over 6 Jnonths and which were divided into 3 time periods. It was considered effective to shape his going‑

to‑school behavior and to eliminate factors of his non‑attendance at school at the same time. Comprehensive support by the construction of whole educational treatment brought his modification of behavior successfully.

辛‑ワード:不登校non‑attendance at school、アセスメントassessment、社会的引きこもりsocial withdrawal

1.問題と目的

不登校とは、 「基本的には、家庭一学校丁家庭とい う往復パターンが家庭で停滞し、断続してしまった状 態」 (小林ら、 19899))をさしている。

最近、この不登校の先行条件または随伴症状として 社会的ひきこもり(social withdrawal)がみられる 事例が報告されている(高下・杉山、 199317))。

この社会的ひきこもりとは、 「対人関係を必要とす る場面で、適切な行動をとることができない状態」

(小林、 19898))と定義される。具体的には、対人場 面をあらかじめ避けてしまったり、対人場面から逃避 したりする。また、対人場面では自発的、積極的に行 動せず、傍観的、消極的、受け身的にしか対応するこ

とができないことである(小林、 19898))。従って、

社会的ひきこもりは、社会的行動の不足(Strain and Kerr,198115))、対人関係維持困難(Herbert, 1986") 等の問題が生じやすいとの指摘がなされている。

我が国における臨床研究においても、不登校を伴う 社会的ひきこもり‑の対応にあたって、主に社会的ス キルの訓練といったことから取り組みがなされてきた (高石・東、 198516) ;山崎、 198518))。

本研究においては、不登校を伴う社会的引きこもり 生徒の再登校行動形成の為の介入を取り上げ検討する。

2.不登校の行動のアセスメントと トリートメントの着眼点

(3)

2.1.不登校の行動アセスメントの着眼点

不登校行動の行動アセスメントは、「不登校状態を 形成し、それを維持している条件を明らかにし、再登 校行動のシェービングにあたって必要とされる情報を 収集することである」(小林、19886))と定義される。

情報収集は、(1)発症前の発達状況、学習状況も含む 行動特性、(2)発症から慢性化にいたるまでの経過、(3)

生活状況、日中変動も含む全般的症状の変化、(4㌢学校・

学習をめぐる状況、(5)家庭をめぐる状況、(6)その他

(不登校により生じた対人関係を含む生活全般的な乱 れ一体力・学力の低下などを含む)といった項目を中 心に行われる(小林、19886);小林ら、19899))。

2.2.トリートメントの着眼点

アセスメントで得られた情報を統合してトリートメ ントは進められる。基本的な考え方としては、「不登 校状態を誘発し、持続させている要因の除去または軽 減と登校するという行動パターンの形成を如何に有効 に効率的に進めるかが問題となる」(小林、19805))

といえる。

基本的な手順は、(1)本人、家庭そして学校との治療 教育関係の設定、(2)治療教育計画の予定表の設定、(3)

トリートメント内容<1>として体力・学力の増強、

社会的スキル訓練などの基礎的アプローチ、(4)トリー トメント内容<2>として神経症的不安や再登校行動 のシェービング等の問題解決のための技法が選択され る、(5)トリートメント<3>その他として登校安定化 の為の介入や再発時の再介入、追跡調査が組み込まれ る(小林、19805);小林、19886);小林ら、19899))。

3.事例研究

3.1.対象:N.男子.13歳(治療教育開始時、中学 2年生)

3.2.主訴:不登校、引きこもり 3.3.不登校をめぐる情報

前述の着眼点を基に以下の情報を収集した。

(1)発症前の行動特性:幼い頃から友人は少なかった。

人混みを避け、家にこもりがちであった。成績は、全 般的に上位であったが、体育は苦手であった。性格的

には、几帳面なところがあった。

(2)発症の経過:中学2年に進級し、4月に所属する陸 上競技部の先輩とトラブルがあったことを母親に訴え

ていた。5月から腹痛を訴え、欠席5日、遅刻2日で あった。部活動はこのころから参加しなくなった。6 月は、登校前の下痢を理由に欠席13日、遅刻1日であっ た。7月は、期末テストの2日と他に土曜日1日のみ の出席であった。8月31日に家族に向かって「明日か

ら学校に行かない」と宣言し、9月1日から継続不登 校の状態となった。12月16日に母親がT大学のK研究 室を訪問した。

Nの不登校は、断続から継続不登校というパターン であった。断続不登校期においては、登校した際には、

普通通り授業に参加していた。

Nは、中学2年生3学期よりK研究室への適所訓練 を開始し5月16日より単独適所が可能となった。

(3)全般的症状の変化:断続不登校期には、Nは、腹痛、

吐き気を毎朝訴えた。しかし、継続不登校期において は、身体症状の訴えは消失した。

(4)学校・学習との関連:断続不登校期においては、同 学年男子の友人が下校後、家に立ち寄った際に、一緒 にファミコンをして遊ぶことが可能であった。担任が 家庭訪問した際に面会は不可能であったが、電話では 話すことが可能であった。学校からの配布物(テスト、

宿題)には目を通し、高校受験に向けて学習をしてい た。

(5)家庭の状況:家族構成は、父親、母親、N(中学2 年)、次男(中学1年)、三男(小学5年)である。母 親は、幼少の頃からNを家庭外に出さないように対応 したとのことであった。特にお祭など人が集まる催し には、Nが不安感を訴えたので出さないようにしたと のこと。Nは、家庭に特定の友人を連れてきたことは あったが、自分から友だちの家に行くことはほとんど なかったとのこと。母親は、Nが継続不登校状態となっ てから、趣味の習い事、水泳などを中止し家に滞在す る時間を長くし、食事などの世話をしていた。

家庭内でNは、午前7時に起床し、午前中は、1〜

2時間の勉強をしていた。午後は、弟が帰宅すると、

弟とその友だちと一緒に家でファミコンゲームをして いた。長期休暇の時期は、午後3〜4時間ファミコンゲー ムをしていた。就寝は、午後12時前後であった。

(6)その他:友人とのかかわりは、ファミコンゲームを 実施したり、ゲームソフトの貸し借りが主であった。

漫画類を愛読していた。家族以外では、親戚の男子大 学生と仲が良いとのことであった。家庭からの外出は、

週1回月曜日の午前5時30分に雑誌を購入するために コンビニエンスストアに行くこと、月1回午後2時頃 散髪に約50メートル離れた理髪店に行くこと、週1回 約50メートル離れた自動販売機にジュースを買いに行

くことであった。また、Nは電話には、母親が不在時 には出ることができた。

3.4.行動アセスメントとしての情報統合 Nの不登校行動の形成は以下のように考えられた。

本事例は、Nの主に社会的スキルの欠如により学校の 対人場面を中心に不快事態が生じ回避するようになっ た。そして、家庭に滞留する行動が、弟とその友だち とファミコンゲームに従事すること、母親の世話やき

(4)

といった強化刺激が伴うことにより維持していると分 析された。

3.5.指導方針及び介入内容

本事例に再登校行動を形成するための指導方針とし て、Nの社会的スキルの補強を中心とした再登校行動 形成のための介入と不登校を誘発・維持していると考 えられた家庭要因の除去を試みることが要請された。

以下に介入の内容を示す。

(1)社会的スキルの補強:社会的スキルの形成を目的と して、場面に応じた社会的スキル訓練を試みる。コー チング法(佐藤ら、199314))の適用。子ども用主張行 動尺度(CABS:Children sAssertiveBehaviorScale)

の実施(MichelsonL,et,a1.,198710))。

(2)学習の補強:学習の補強を目的として英語・数学の 学習指導を試みる。(中学校3年生教科書の内容)。

(3)将来像のイメージ化:Nとの話し合いを通して将来 像のイメージ化を試みる。

(4)登校予定日の設定:本人に登校予定日(小林、198 05))を設定させる。

(5)再登校行動の形成:再登校行動の形成を目的として 早朝登校訓練(小林、19805))の通用を試みる。

(6)不安の低減:Nの不安を訴える場面の不安低減を目 的に系統的脱感作法の適用を試みる。

(7)学校との連携:担任と連絡を取り合い、受け入れ態 勢の調整と学校参加状況の記録を依頼。

(8)家庭への指導:父母のNへの関わり方の指導を試み る(会話の仕方、誉め方等)と同時に外出記録の記入 依頼。

(9)学校活動参加率による評価の実施:再登校後、学校 活動参加率による評価を行う。学校活動参加率は、高 下・杉山(1993)用を一部修正し、以下のように算出 された。

学校活動参加率(%) 参加学校活動数 全学校活動数

×100

学校活動数の単位は、高下・杉山(1993)17)の「授 業、朝の会、給食・昼休みを各1単位とする」ことを 一部修正し、基本的に朝自習、朝の会、各授業、休み 時間、給食、昼休み、帰りの会、掃除を各1単位とし た。また、学級担任からの報告により週毎に算出した。

3.6.指導経過

以下にNの登校行動の再形成経過を、その指導内容 から3期に分けて記述する。

指導スタッフは、1名のスーパーバイザー、K研究 室所属の院生(主担当者)他3名となった。

(1)第I期(5月16日〜8月23日):この時期は、前述 した指導方針の内、学習の補強、登校予定日の設定、

不安低減を目的とし週2回、1セッション1時間を基 本として23セッション実施した。Tablelに第I期の

Table1 第I期のセッション状況

セッション日時(回数) セッション内容

5月16日(1)

23日(2)

26日(3)

30日(4)

6月1日(5)

5日(6)8日(7)

12日(8)15日(9)

19日(10)22日(11)

26日(12)29日(13)

7月3日(14)

6日(15)10日(16)

13日(17)17日(18)

20日(19)

8月1日(20)8日(21)

17日(22)

22日(23)

(5)

セッション状況を示す。

(2)第Ⅱ期(8月24日〜10月25日):この時期は、前述 した指導方針の内、社会的スキルの補強、学習の補強、

再登校行動の形成、学校との連携を目的とし週2回、

1セッション1時間30分を基本として14回実施した。

セッションメニューは、各回とも10:00〜10:15、面 接、10:15〜10:55、社会的スキル訓練、11:00〜11:

30、学習(英語、数学)であった。

社会的スキル訓練の手続きは以下の通りであった。

①ベースライン測定及び標的行動の選択:ゲーム及び 勉強場面をビデオ撮影し、ランダムに5分間抽出した。

訓練モジュール(MichelsonL,et,,a1.,198710))による

15項目(人を褒める、不満の述べ方、断り方等)を基 に基本的には3回分をベースライン評定した。3名の 評定間一致率80%以上のものを標的行動とした。その

結果、Nの標的行動としては、「褒める行動」、「お礼・

挨拶」となった。②訓練方法:コーチング法(佐藤ら、

199314))を適用した。「褒める行動」の場合は、以下 のように実施した。T:「あなたは、どんな場面だっ たら、人のことをすごいと思う?」、N:「ゲームで 相手が勝ったとき」、T:「じゃあ、すごいと思った ら相手に何て言えばいいかな?」、N:「すごいです ね」、T:「そうだね」。③評価方法:設定場面をビデ オ撮影し正反応率を算出した。3名の評定間一致率は、

Table2 第Ⅱ期のセッション状況

セッション日時(回数) セッション内容

8月24[](24)

29日(25)

31日(26)

9月5日(27)

7日(28)

12日(29)

14日(30)

19日(31)

21日(32)

26日(33)

28日(34)

10月3日(35)

5日(36)

12日(37)

17日(38)

19日(39)

大学からの帰宅途中で同級生にあった場合のやりとりのロールプレイ練習。

同級生:「どうして学校に来ないの」、N:「今大学で学校に行くための 準備をしています。10月26日から学校へ行きます。」

子供用主張行動尺度(CABS)を実施。

標的行動のテーマ話し合い。

同上

「他人を褒める」行動のベースライン測定(ゲーム場面)の実施。

同上

′′

「すごいですね」(Tがコンピュータゲームをクリアした場面)のコーチ ング実施。「挨拶」・「お礼」行動のベースライン測定(Nの勉強・ゲー ム場面)の実施。

ベースライン測定。

「すごいですね」(Tがサッカーゲームに勝った場面)のコーチング実施。

「ありがとうございます」(Nがゲームで褒められた場面)のコーチング 実施。

評価実施。

同上

「お廠いします」・「ありがとうございました」(ゲーム時)のコーチン グ実施。

評価実施。

同上

Table3 早朝登校訓練の状況

早朝登校訓練日時(回数) 訓練内容

9月5日(1)

7日(2)

12日(3)14日(4)

19日(5)21日(6)

26日(7)28日(8)

10月3日(9)5日(10)

10日(11)12日(12)

17日(13)19日(14)

午前6時10分に校門前に行く。

同上

午前6時20分に校門前で担任に会う。

同上

午前7時の校門の前で担任と会う。

同上 同上

午前7時30分に校門前で担任と会う。

(6)

正反応率(%)100 褒める(コン

ピューターゲ ーム場面)

正反応率(%)100 褒める(サッ カーゲーム場 面)

正反応率(%)100 褒められた時 のお礼

正反応率(%)100 ゲーム時の 挨拶

l                                            ▲           ▲           ▲           −

 ̄   ̄   ̄   ̄   ̄   ̄   ̄  「 i i l l l l

 ̄         ●         ▼         ●         ●   1

l  l  I  l  l  I  l  l  l  l

9/7  9/12   9/14  9/19   9/21   9/26  9/28   10/3  10/5

Fig.1社会的スキル訓練(1)

l

」 一 一 一 一 一 一 「 I I I

/ l I l

●     ●     ●  I

!  ! l I

9/19  9/21  9/26  9/28   10/12 10/17  10/19 10/24

Fig.2 社会的スキル訓練の結果(2)

10/12

(月 日)

(月 日)

(7)

Fig.3 CABA(仲間)の結果

Table4 第Ⅲ期のセッション及び登校状況

日時(回数) セッション内容及び登校状況

10月26日 27日 29日 31日

11月1日 2日 4日 5日

7日8日 9日(40)

10日 11日(41)

14日(42)

腹痛を訴え、担任に電話をして欠席した。

午前8時05分、自習時間に教室に入った。その後テストを受け 放課後まで参加した。

全日登校。

2時間目から登校。

同上 文化祭参加。

全日登校 大学で面接実施。

2時間目から登校。

大学で面接実施。

終結面接。中学校でN、校長先生、担任、母親、スタッフで 面接を実施。

90%であった。Table2に第Ⅱ期のセッション状況を 主に社会的スキル訓練の内容を中心に示す。

また、Fig.1に「褒める行動」、Fig.2に「お礼・

挨拶」の社会的スキル訓練の結果及びFig.3に子ど も用主張行動尺度(CARS)の結果及び早朝登校訓練 の状況をTable3に示す。

(3)第Ⅲ期(10月26日〜11月14日):この時期は、Nの 登校とセッションの併行実施期であった。大学におけ る面接1回及び学校における終結面接1回を実施し、

それ以外の日は登校した。Table4に第Ⅱ期のセッショ ン及び登校状況を示す。

3.7.予後の状況

終結面接以降は、母親による外出記録表と担任によ る学校活動参加状況の記録により学校活動参加率を算 出した。週毎の学校活動参加率は、冬休み前まで96%、

91%、80%、91%、100%、93%であった。その後、

担任からの情報によると中学卒業まで欠席もなく登校 したとのことであった。

4.考察

4.1.不登校症状の形成について

(8)

本事例は、Nの主に社会的スキルの欠如により学校 の対人場面を中心に不快事態が生じ回避するようになっ たと考えられた。そして、Nの家庭に滞留する行動が、

ファミコンゲームに従事すること、母親の世話やきと いった強化刺激が伴うことにより維持されていると分 析された。

したがって、本事例は典型的な神経症発症メカニズ ム(Johnson,et,a1.,19414))とは異なるタイプと考え られる。すなわち、基本的には、不安・恐怖感が言語 応答や客観的尺度に明白に現れないタイプ(上里、

19851);茨木、19863))に対応するといえよう。

4.2.登校行動の再形成をめぐって

本事例への登校行動再形成の為の介入は、社会的ス キル訓練、学習指導、将来像のイメージ化、登校予定 日の設定、再登校行動の形成(早朝登校訓練)、系統 的脱感作法、学校との連携、家庭への指導であった。

その結果、42セッション(約6ケ月)で再登校行動が 形成された。

社会的スキル訓練は、CABS(子供用主張行動尺度)

の情報に基づいて、対象はNの得意な年上の人物から 同年齢の人物という系列で訓練を実施した。そして、

実際の登校訓練時にも担任から同級生という系列で学 校への接近を試みたことが有効であったと考えられる。

また、登校直前のテスト結果から同年齢児への「肯定」、

「要求」、「会話」、「感情」の正反応得点の上昇が、再 登校と関連していると考えられる。

また、併行して学習指導等の再登校行動のシェービ ング及びシェービングの阻害要因となる不安低減を実 施し、Nの生活リ.ズムに合わせて早朝からの登校訓練 を実施したことが有効であったと考えられる。

以上のように社会的スキル訓練を中心とした再登校 行動のシェービングと不登校誘発・維持要因の除去を 並行して実施したことが有効であったと考えられる。

本事例の治療教育全体の構成は、小林(1980)5)、

小林ら(1989)9)、小野・小林(1993)11)、小野ら

(1999)13)と同様に総合的なアプローチであるといえ よう。

本研究におけるアプローチは、基本的に「従来の不 登校治療におけるはおっておきなさいという発想とは 異なり、学校をめぐる刺激を積極的に提示していく立 場」(小林、19898))といえる。的確なアセスメント

による積極的アプローチ(小野、199712))の有効性が 示唆されたといえるが、本事例への支援が真に有効で あったかは追跡研究による検討(小林、19847))が必 要である。

4.3.今後の課題

Nの行動ノヾターンとして「テストを受けないと進学 できないから出席する」というように負の刺激の予測

によって登校行動を維持している面があった。従って、

今後のNの登校行動の維持のためには、学校場面にお いて正の強化刺激が随伴しやすい行動レパートリーを 増加させる必要がある。Nが、将来的に直面すると予 測される学校場面における課題が本人にとって未学習 のことであるか、既学習のことであるかを判断し、必 要であれば事前に準備を試みることが必要である。

特にCABSにより「仲間」の対人関係における

「否定場面」の得点が低いことが示されている。その 為、このような対人関係場面に直面したときにN自身 がどのように対応していくかが追跡研究において重要 なポイントとなる。

また、社会的スキル訓練において榎的行動としたス キルが、学校場面においては学校活動参加率という指 標によって評価された。今後、可能であるならば対象 児の所属集団内における評価が必要である。

謝辞:論文発表をご承諾くださいましたご両親に感謝 いたします。また、本研究を行うに当たり、筑波大学 行動情緒障害研究室(当時)の川島直亮氏、豊田麻衣 子氏、結城西小学校、稲葉豊氏のご協力を得ました。

厚く御礼申し上げます。

付記:本研究は、日本教育心理学会第39回大会(平成 9年9月)において発表したものに加筆・修正を施し たものである。本臨床研究の実施においては、小野、

三好がNへの直接指導を担当し、小林はスーパーバイ ザーを担当した。論文執筆は、小野、三好が担当した。

引用・参考文献:

1)上里一郎(編):「行動療法ケース研究2・登校 拒否」、岩崎学術出版社、1985

2)Herbert,M∴Socialskillstrainingwithchildren,

Handbook of social skills trainlng,1,11−32・,

1986

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4)Johnson,A.M.,Falstein,E.I.,Szurek,S.A.,and Svendsen.M:SchooIphobia,AmericanJournal OfOrtho−pSyChiatry,11,702−711,1941

5)小林重雄:「登校拒否症について」、『行動療法研 究』、5、44−49、1980

6)小林重雄:「登校拒否の行動論的アプローチ一再 登校行動のシェービング法−」、『日本心理学会第 52回大全発表論文集』、36、6−1、1988 7)小林重雄:「行動療法による臨床の展開」、『新版

行動療法入門』、150−157、1984

8)小林重雄:「登校拒否:思春期の混乱による無気

(9)

力化により生じた不登校例」、『メンタルヘルス・

シリーズ:子どものかかわり障害』、同朋舎出版、

199−207、1989

9)小林重雄・加藤哲文・小野昌彦・大場誠紀:「登 校拒否治療への積極的アプローチー行動アセスメ

ントとその臨床例への適用−」、『安田生命社会事 業団研究助成論文集』、24(2)、61−68、1989 10)Michelson,L.,Sugai,D.P.,Wood,R.P.,and

Kazadin,A.E:高山厳・佐藤正二・佐藤容子・園 田順一訳、「子どもの対人行動評定尺度」、岩崎学 術出版社、1987

11)小野昌彦・小林重雄:「中学生不登校の治療一総 合的行動アセスメントと対応的処遇−」、『行動療 法ケース研究9・登校拒否Ⅱ』、岩崎学術出版社、

70−90、1993

12)小野昌彦:「不登校の研究動向一症状論、原因論、

治療論、そして積極的アプローチへ一」、『特殊教 育学研究』、35(1)、45−55、1997

13)小野昌彦・豊田麻衣子・川島直亮・三好義弘・小 林重雄:「不登校姉妹への再登校行動の形成一家 庭内の不登校誘発・維持要因により生じた事例−」、

『特殊教育学研究』、37、(1)、23−31、1999 14)佐藤容子・佐藤正二・高山厳:「攻撃的な幼児に

対する社会的スキル訓練−コーチング法の使用と 訓練の般化性一」、『行動療法研究』、19(1)、13−

27、1993

15)Strain,P.S.andKerr,M.M.:Modifyingchildren−s

social wit,hdrawal:Issuesin assessment and

Clinicalintervention,In M.Hersen,R.MっEisler,

and P.Miller(Eds.),Progressin behavior modification,Academic Press,1,2,203−248,

1981

16)高石昇・東豊:「不登校を示す中学生の社会性 訓練による治療」、上里一郎(編)、『行動療法ケー ス研究2・登校拒否』、岩崎学術出版、45−61、

1985

17)高下洋之・杉山雅彦:「不登校を伴う社会的ひき こもり児に関する社会的スキル訓練」、『特殊教育 学研究』、31(2)、1−11、1993

18)山崎健一:「登校拒否児に対する対人技術訓練工

『行動療法研究』、11(1)、34−41、1985

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