現実脱感作法による社会的ひきこもり生徒の外出行 動形成への援助
著者 小野 昌彦, 三好 義弘, 小林 重雄
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 11
ページ 107‑112
発行年 2002‑03‑31
その他のタイトル Support for Shaping of Going‑out behavior for a Student with Withdrawal by In Vivo
Desensitization
URL http://hdl.handle.net/10105/4095
小 野 昌 彦
(奈良教育大学附属教育実践総合センター) 三 好 義 弘
(石金病院) 小 林 重 雄 (吉備国際大学)
Support for Shaping of Going‑out behavior for a Student with Withdrawal by In Vivo Desensitization
Masahiko ONO
(Center for Educational Research and Development, Nara University of Education) Yosihiro MIYOSHI
(Isigane Hospital) Sigeo KOBAYASHI (Kibi Internatinal University)
要旨:中学生男子社会的引きこもり児N (14歳)への外出行動を目的とした援助について検討し問題点を整理した。
本事例は、 6ケ月間家庭内に引きこもっていた。 Nの対人関係困難場面からの回避行動を周囲の人が強化的対応をし てしまったことにより、引きこもり状態が誘発されたと考えられた。そして、 Nが家庭に滞留する行動が、母親から の世話やき、ファミコンゲームといった強化刺激が伴うことにより維持されていると分析された。 Nへの援助として、
現実脱感作法を適用し4期間(6ケ月間)、電話指導、家庭訪問、外出援助、通室援助、母親指導の結果、通室行動 が形成された。通室行動形成と家庭における滞留パターン維持要因除去の同時実施が有効であったといえよう。社会 的ひきこもり事例の場合、行動アセスメント項目として、対人関係における正・負の要因、外出行動レパートリーに 関する情報を収集することの有効性が示唆された。
辛‑ワード:アセスメントassessment、社会的引きこもりsocialwithdrawal、 かかわり形成makingofcontact、
外出行動形成shaping of going‑out behavior
1.問題と目的
社会的ひきこもり(socialwithdrawal)とは、 「対 人関係を必要とする場面で、適切な行動をとることが できない状態」 (小林、 1989)と定義される。具体的 には、 「対人場面をあらかじめ避けてしまったり、対 人場面から逃避したりする。また、対人場面では自発 的、積極的に行動せず、傍観的、消極的、受け身的に しか対応することができないこと」である(小林、
1989)。従って、社会的ひきこもりは、社会的行動の 不足(Strain and Kerr, 1981)、対人関係維持困難 (Herbert, 1986)等の問題が生じやすいとの指摘がな されている。
我が国における臨床研究においては、主に不登校を 伴う社会的ひきこもりへの対応にあたって、社会的ス キルの訓練といったことから取り組みがなされてきた (高下・杉山、 1993;高石・東、 1985 ;山崎、 1985)c また、社会的引きこもり児の再登校への社会的スキル 訓練を中心とした援助の取り組みも報告されている (小野・三好・小林、 2001)。
しかしながら、社会的引きこもりへの臨床研究は少 なく、杉山(1989)は、社会的スキル訓練においても 比較的重度の事例や幼児の事例に関しては必ずしも十 分な効果を挙げているとは言い難いと指摘している。
特に重度の社会的ひきこもり事例の場合、他者が援 助を実施すること自体が困難であること、通常の心理
療法による関係設定、すなわちクライエントの専門機 関訪問による援助関係設定自体が困難であるという問 題解決が要請されるといえよう。
杉山(1989)は、このような重度の社会的引きこも り事例に関しては、社会的スキルを形成する前段階と して「対人関係という文脈」の中で行動することの学 習が必要であるとしている。すなわち、人と積極的に かかわりを持っ行動形成が必要であるとしている。
そこで本研究では、社会的スキル訓練中心の再登校 援助(小野・三好・小林、 2001で発表)の前段階にお いて人と積極的にかかわりを持っ行動形成、外出行動 形成といった問題解決のために家庭訪問による個別プ ログラムが要請された援助過程を整理し、問題点を検
,;‑Kる。.
2.事例研究
2. 1.対象:N.男子. 13歳(援助開始時、中学2 年生)
2. 2.主訴:家に引きこもり、外出ができない。不 登校。
2. 3.社会的引きこもりをめぐる情報
小野・三好・小林(2001)の行動アセスメントの項 目を基に記述する。
(1)発現前の行動特性:幼い頃から友人は少なかった。
普段から人混みを避け、家にこもりがちであった。
成績は、全般的に上位であったが、体育は苦手であっ た。性格的には、凡帳面なところがあった。
(2)発現の経過:中学2年時に4月に所属する陸上競技 部の先輩とトラブルがあったことを母親に訴えてい た。 5月から腹痛を訴え、欠席5日、遅刻2日であっ た。部活動はこのころから参加しなくなった。 6月 は、登校前の下痢を理由に欠席13日、遅刻1日であっ た。 7月は、期末テストの2日と他に土曜日1日の みの出席であった。 8月31日に家族に向かって「明 日から学校に行かない」と宣言し、 9月1日から家 に引きこもりの状態となった。 12月16日に母親がT 大学の相談室を訪問した。
(3)全般的症状の変化:断続不登校期には、腹痛、吐き 気を毎朝訴えた。しかし、継続不登校期においては、
身体症状の訴えは消失した。
(4)学校・学習との関連:断続不登校期においては、同 学年男子の友人が下校後、家に立ち寄った際に、一 緒にファミコンをして遊ぶことが可能であった。担 任が家庭訪問した際に面会は不可能であったが、電 話で話すことは可能であった。学校からの配布物 (テスト、宿題)は受け取り、高校受験に向けて学 習をしていた。
(5)家庭状況をめぐる項目:家族構成は、父親、母親、
N (中学2年)、次男(中学1年)、三男(小学5年) であった。母親は、幼少の頃からNを家庭外に出さ ないように対応したとのことであった。お祭など人 が集まる催しには、 Nが不安感を訴えたので出さな いようにしたと言う。 Nは、家庭に特定の友人を連 れてきたことはあったが、自分から友だちの家に行 くことはほとんどなかったと言う。母親は、 Nが継 続不登校状態となってから、趣味の習い事、水泳な どを中止し家に滞在する時間を長くし、食事などの 世話をしていた。
家庭内でNは、午前7時に起床し、午前中は、 1
‑2時間の勉強をしていた。午後は、弟が帰宅する と、弟とその友だちと一緒に家でファミコンゲーム をしていた。就寝は、午後12時前後であった。
(6)その他:友人とのかかわりは、ファミコンゲームを 実施したり、ゲームソフトの貸し借りが主であった。
漫画類を愛読していた。家族以外では、親戚の男子 大学生と仲が良いとのことであった。家庭からの外 出は、過1回月曜日の午前5時30分に雑誌を購入す
るためにコンビニエンスストアに行くこと、月1回
午後2時頃散髪に約50メートル離れた理髪店に行く こと、週1回約50メートル離れた自動販売機にジュー スを買いに行くことであった。また、 Nは電話には、
母親が不在時には出ることができた。
2. 4.行動アセスメントとしての情報統合
Nの社会的引きこもり行動の形成は以下のように考 えられた。 Nの社会的スキルの欠如により学校の対人 場面を中心に不快事態が生じ回避するようになった。
そして、家庭に滞留する行動が、弟とその友だちとファ ミコンゲームに従事すること、母親の世話やきといっ た強化刺激が伴うことにより維持していると分析され た。
2. 5.外出行動形成における援助方針
本事例は、社会的引きこもり状態を改善するために は、援助担当スタッフとのかかわり形成、外出行動の 形成、援助機関への通室行動の形成が要請された。そ のためには、 Nとのかかわりの形成、緊張・不安の低 い段階からの外出行動形成、そして家庭における滞留 バク‑ン維持要因の除去を試みることが考えられた。
2. 6.援助内容について
Nへの援助は以下の手続きで実施した。基本的には 加藤ら(1981)の選択性場面繊黙児への手続きを参考 にし、現実脱感作法(in vivo desensitization)を適 用した。現実脱感作法は、不安・恐怖に対する行動療 法の技法の一つである。不安・恐怖誘発刺激そのもの を,実際に現実場面で誘発力の弱いものから段階的に
対象児に直面させながら不安・恐怖反応を克服してい く方法である。
Nの場合は、 Nの提案した状況への参加を実際に遂 行するように試みた。家庭訪問の際は、緊張程度表で 評価を実施することとした。評価項目が、全て1点以 下となった場合、次の段階に進むこととした。緊張程 度が低減しない場合には、 Nの不安と浩抗した刺激を 活用して不安低減を図る。評価の信頼性は、 2名の評 定者による評定の一致率を算出した。
以上の手続きで①家庭訪問によるかかわりの形成、
②外出行動の形成、 ③通室行動の形成を試みる。
また、上記の目標達成を促進するために母親指導を 実施する。母親の家庭外の刺激をNから避けさせる対 応を変容させ、外出行動へ強化刺激を提示できるよう に助言をする。
2. 7.援助経過
Nへの外出行動形成の援助経過(約6ケ月)をその 援助内容から4期に分けて記述する。援助スタッフは、
1名のス‑パ‑パイザー、主担当者(以下にTと略す)、
他3名となった。
2. 7. 1.第l期(12月16日‑1月22日)
この時期は、かかわり形成を目的として母親面接1 回と電話指導2回を実施した。
第1回面接(12月16日)
母親のみ来談した。 Tから相談室における前述した 援助方針を説明した。母親は、 Nに関する情報を自発 的に話した。
第1回電話指導(1月18日)
午前10時頃、 Tが、 Nとのかかわり形成を目的とし て自宅に電話をかけた。母親が取り次ぎ、 Nが電話口 にでることが可能であった。母親が来談したこと、ファ ミコンの話、当相談室では不登校の多くの援助経験が あることを伝えると「今ゲーム中ですから切ってもい いですか」と答えた。そこで、また電話する旨を伝え て電話を切った。
第2回電話指導(1月22日)
午後3時、 TがNの自宅に電話をかけた。母親が不 在でNが直接電話に出ることが可能であった。話し合 いの中で、家でNとかかわり形成の可能性が見込まれ た。 Nは1月26日の午後1時30分に家でスタッフと会
うことを提案したので了承した。
2. 7. 2.第Il期(1月26日‑2月23日)
この時期は、スタッフとの直接的なかかわり形成の 目的で家庭訪問を4回実施した。
第1回家庭訪問(1月26日: 13時30分〜15時) 約束の時刻にスタッフ2名(T、男子大学生スタッ フ)が家庭訪問した。スタッフ2名がNと2階で面会
を試みた。 Tが、大学生スタッフにNの状態を見なか ら接近する距離、角度、言葉かけの内容を指示しなが ら対応した。 Nの緊張程度をTablelの段階表で評価 した。評定方法は、面接終了後、その日の4つの場面 について、参加した2名のスタッフが独立に評定した。
この回の過程をFig.1に示す。最終的にこたっを囲 んでの対面事態となり、次回の訪問の日時を約束して 終了した。
Tablel 緊張程度の段階
票
0 1 2 3 4
距 離 1 m 以 下 1 ′) 2 m 2 3 m 3 ′} 4 m 4 m 以 上
対 人 態 度
正 面 に 向 き 正 面 に 向 き 横 向 き に位 背 中 を 向 け 合 う
ア イ コ ン タ ク トが取 れ る
合 う ア イ コ ン タ
ク トは合 わ ず
ify f ; て い る
接 近
自分 か ら接 自分の リラツ 自分の リラツ 自分の リラツ こち らが 行 近 す る ク スす る 刺 ク スす る 刺 ク ス す る # . く と逃 げ る 行 動 激 と一 緒 に 激 と一 緒 に 激 と一 緒 に
会 う…外 会 う… 横 会 う…膝 上 接 触
時 間
3 時 間 以上 2 〜 3 時 間 1 〜 2 時 間 1 時 間 〜3 0
・>}
3 0 分 以 下
姿 勢
腰 を 落 と し 腰 を 落 と し 中腰 で座 る 中 腰 で座 る うつ 伏 せ で て座 る
肩 が下 が る て 座 る 肩 が 下 が る
肩 が下 が る 肩 が 上 が る ,t> 蝣'.
表 情
口元 が緩 む 口 を 閉 じて 口 を 閉 じて 口 を きつ く
笑 い声 が 出 い る い る 結 ぶ
る 無 表 情 頬 の 緊 張 な 頬 の 緊 張 あ 時 々 笑 い 声 し り 発 語
自発 語 他 か らの話 しか け に 単 語 で 応 答
・"> 'i t"主 事
発 語 な し
第2回家庭訪問(2月2日:13時〜14時)
午後1時、前回と同様のスタッフで訪問した。 Nは、
1階のテレビの前で座っていた。テレビゲームを20分 間実施した後、こたっでゲームの感想、今後の予定と
いった内容の話し合いを行った。 Nから次回の家庭訪 問の目時は2月16日午後1時との提案があった。
第3回家庭訪問(2月16日: 13時〜14時)
午後1時に、前回と同様のスタッフで家庭訪問した。
前回と同様1階でNが待っていた。ファミコンゲーム をしてから面接を実施した。 Nから現状のままではよ
くないと思っているとの発言があった。三国志に登場 する人物を例に挙げ将来像の方向から話を進めた。 T が家庭訪問時に大学生に家庭学習を見てもらうことを 提案すると同意した。次回の家庭訪問希望の日時を聞
くと2月23日午後1時の提案があった。
第4回家庭訪問(2月23巨: 13時〜14時)
約束した時間に前回と同様のスタッフで家庭訪問を した。今回から学習指導、面接指導、ファミコンの順 番とした。学習指導は、大学生スタッフが担当し、科 目は英語(中学3年教科書の内容)を実施した。 Nは、
「3月3[]午後8時に近所の自動販売機でスタッフと 会う」という目標を提案した。 Fig.2に家庭面接場面 の緊張程度の推移を示す。第4回の家庭訪問において、
3 Z l
緊 張 程 度
Fig‑1 家庭面接場面の緊張程度の推移(第1回家庭訪問)
家庭増面 2
㊥‑
度 勤 臆 行 雑 人 近 弊 情 梼 距 対 は 姿 衰 発
団Ej n u
Tl :主担当者
Tz :男子大学生スタッフ C.1対叔i?
D:犬 M:母親
国 距が Eヨ 対人態度 [コ 接近行動 日 姿勢 薗 sid 随 発語
主担当者
男子大学生スタッフ 対象児
Fig.2 家庭面接場面の緊張程度とポジションの推移(第2回〜第咽) 緊張程度は各項E]において1点以下となった(信頼性
83%)c
2. 7. 3.第=期(3月3日‑3月23日)
外出行動形成を目的として夜間外出練習3回を実施 した。
第1回夜間外出訓練(3月3日)
定刻となってもNが現れず、代わりに母親が走って きた。母親からNが、玄関の前で動かないでいる。今 日は、行けそうにないので課題を中止してもらえない かとのことであった。母親に、 Nの状況を見てから判 断することを伝え、玄関へ移動した。 T及びスタッフ は、玄関に行き、 「どうしました」とNを促すと玄関 から出ることが可能となり、課題を援助を伴った形で 達成した。 Tが賞賛するとNは「にこり」とした。次 回はNから3月9日午後8時理髪店前との提案があっ
た。
第2回夜間外出訓練(3月9日)
前述の課題が自発的に達成された。次回はNから午 後5時、駅のそばのポストとの提案があった。
第3回夜間外出訓練(3月16日) 前述の課題が達成された。
第5回家庭訪問(3月23日: 15時〜17時)
午後3時にスタッフ2名で家庭訪問した。大学生ス タッフにより中学2年生の英語の学習指導が行われた。
次回は、 「月曜日午前5時30分にコンビニエンススト アに行く」とNから提案された。学習指導もNの方か ら継続したい旨の発言があった。そこで、以後、家庭 における学習指導と単独適所練習を並行して実施する
こととした。
2. 7. 4.第JV期(3月28日‑5月9日)
この時期は、 7回の単独通室練習と3回の家庭訪問 による学習指導を実施した。 Table 2に早朝単独通室 練習の行動計画表を示す。 4月18日の課題の際に午前 5時30分に家を出れないということでNからT宅に電 話があった。スタッフ2名が家庭訪問し車にNを同乗 させて駅に行った。 4月21日には家庭訪問し行動観察 したが、自発的に課題が達成できた。その他の課題は 予定通り実行され5月9 []に単独通室が可能となった。
Table2 単独通室訓練の行動計画
3月28日 1J ‑I H 4月11日 4月18日 4月21日 4月27E]
5月2日
5月9日
午前5時30分にコンビニエンスストアに行き、
週刊漫画を購入する。
午前5時30分に家を出て駅のポストに行き、帰 路コンビニエンスストアで週刊漫画を購入する。
同上
午前5時30分に駅に行く。
同上
午前7時にT駅(本相談室の最寄りの駅)の改 札でスタッフと会うO
午前7時にT駅でスタッフと会う。スタッフの 車で本相談室まで行く。
本相談室で英語のパソコンゲームを5分間する。
午前7時にT駅に行き、バスで本相談室に行く。
本相談室では英単語の学習をする。
3.考 察
3. 1.社会的ひきこもり状態形成について
Nは幼少時から対人場面をあらかじめ避けてしまっ たり、対人場面から逃避したりしたため、社会的スキ ルを学習する機会が少なかったと考えられる。そして、
中学2年生となり、部活動において複雑な対人スキル が必要とされた場面を回避し、徐々に学校を回避し家 庭内に引きこもり状態になったと考えられた。そして、
家庭に引きこもる行動が母親の世話やき、弟の友達と のテレビゲームといった強化刺激が伴うことにより維 持されていると分析された。
Nに実施したCMI健康調査表の結果は、 I型であっ た。これは、神経症者であるという仮定が5%の有意 水準で棄却されるという点において心理的正常と判断 して妥当であることを示している(金久・深町、 1983)。
また、 Y‑G性格検査の結果は、 C'型であった。
これは、典型例ではないが安定消極型であることを示 している(辻岡、 1965)。
したがって、本事例は不登校のタイプとしては、 19 80年以降増加してきたと言われている不安感・恐怖感 が言語反応や客観的尺度に明白に現れないタイプ(上 里、 1985 ;茨木、 1986)と対応する。
3. 2.社会的引きこもりへの援助について 3. 2. 1.かかわり形成について
Nとスタッフとのかかわり形成を目的として、電話 2回、家庭訪問8回を実施した。 Nとスタッフの1対
1状況でのやりとりの回数の増加、かかわり時間の増 加を現実脱感作法により達成した。 Nが、かかわり可 能な時期・場所・人に関する情報を収集し、それを基 に段階的な課題設定を実施し、遂行したことが有効で あったといえよう。また、 Nが親戚の男子大学生と良 好な関係にあることから男子大学生スタッフを配置し たことも援助促進要因であったといえよう。
また、緊張段階表は、加藤・小林・財部(1981)、
加藤・小林・山中(1985)を参考に作成し適用した。
これらのチェックリストの指標は、表情、回避行動、
発話(加藤ら、 1981)、表情、回避行動、発語と声量、
体の緊張(加藤ら、 1985)であった。本研究における チェックリストの指標は、距離、対人態度、接近行動、
接触時間、姿勢、表情、発語であった。距離、時間と いった客観的な指標と対人態度、接近行動というスタッ フとNとの関係に関する項目を追加した点、さらにN の特徴的な状況に応じた項目を作成した点に特徴があっ た。この緊張段階表の各項目が1点以下となり、緊張 の低減が確認された時点で課題を外出行動へ移行し、
順調に課題が遂行されたことから一応の目安となった といえよう。しかしながら、評価方法の妥当性と信頼 性の検討が今後必要であるといえよう。
3. 2. 2 外出行動から援助教育機関への通室行動 の形成
Nの外出行動の形成は、不安・緊張が低い夜間外出 行動から通室行動という順序で実施した。基本的に現 実脱感作法を適用した。 Nのその時点における外出レ パートリーの情報を活用して、段階的な外出行動の目 標設定と家庭内の滞留パターン維持要因の除去を並行 して実施したことが有効であったと言えよう。また、
家庭訪問期においてスタッフがNの不安抵抗反応刺激 として機能していたことも促進要因であったといえよ
‑1 ^
小野・小林(2000)において援助初期のかかわり形 成困難な不登校において友人関係の正の要因に関する 情報収集の重要性が示唆されている。社会的引きこも り児に外出行動を形成する場合においては、友人関係 における正・負の要因とさらに外出のレパ‑トリーに 関する情報を収集することの重要性が示唆された。
謝 辞
論文発表をご承諾くださいましたご両親に感謝いた します。
引用・参考文献
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