奈良教育大学学術リポジトリNEAR
学校の組織特性と教師の教育活動に関する研究(1
)
著者 小野 擴男, 小野 由美子, 畑本 恵子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 42
号 1
ページ 71‑80
発行年 1993‑11‑25
その他のタイトル Teachers' Perceptions of Their Workplace, Teachers' Educational Beliefs and Teachers' Instructional Behaviors : Some Preliminary Results
URL http://hdl.handle.net/10105/1699
奈良教育大学紀要 第42巻第1号(人文・社会)平成5年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.42, No. 1 (Cult.&Soc.). 1993
学校の組織特性と教師の教育活動に関する研究( 1 )
小 野 摸 男 (奈良教育大学教育方法学研究室)
小 野 由美子
(鳴門教育大学)
!.│li ¥こ 患 { (広島中央女子短期大学) (平成5年4月30日受理)
緒 盲
学校経営と授業研究はともに学校教育を対象としながらも、これまで接点を持たないまま別個 に研究が進められてきた。そのため、これらの研究が学校の教育効果の改善に重要な意味を持っ 研究成果を蓄積してきたにもかかわらず、互いにその成果を生かすことなく今日に至っている。
たとえば、学校の組織特性や経営過程と教育成果との関係に着目した英米の研究は、同じような リソースやインプットを持つ学校でも、組織特性、経営過程の違いによって学校の成果が異なる ことを一貫して実証している(Brookover et al, 1′979; Rutter et al, 1979; Mortimore, 1988)。
他方、教師のどのような働きかけが子どもの学習成果と関連するかを解明することは、授業研究 における中心的課題であった。教師の有効性研究(teaching effectiveness research)と呼ばれ る一連の授業研究は、アウトプットと関連する学級での教師の教授行動、指導技術の解明に研究 成果を蓄積した(Stallings et al, 1977, 1978; Rosenshine, 1979; Berliner, 1979; Good and
Grouws, 1979)。
学校の教育効果を高めるためには、両者の研究成果を統合することが必要かつ有用なことは、
すでに1980年代の初めに指摘されていた(Edmonds, 1982)。確かに、組織特性と学校の教育成 果の関連は認められるものの、組織特性が子どもの学習成果に直接影響するとは考えにくい。む しろ、教師を媒介として間接的に子どもに影響を及ぼすものととらえるべきであろう。また、授 業研究は教育効果の高い教授行動、指導技術があることを明らかにしたにもかかわらず、すべて の学校で、すべての教師がそれを採用し、実践しているわけではない。このことは、学校の組織 特性の違い、すなわち、教師が教育活動に熱意を注ぎ、成長を続けていくのを支えるような組織 特性をもつ学校とそうでない学校が存在することを示唆する。とすれば、教育効果と関係する学 校、学級レベルの要因を取り出し、そうした要因の相互関連を同じ図式の中に正しく位置づけて こそ、教育効果改善のための有効かつ具体的な方策を論ずることが可能となる。
本研究は、学校改善の理論研究や授業研究の成果を踏まえ、公立学校教員を対象に、教師の有 効性と学校の組織特性の関係を実証的に究明することを意図している。本稿では、紙幅の関係か
71
72 小 野 蝶 男・小 野 由美子・畑 本 恵 子
ら、第1報として調査の概要と、実際に学級で授業を担当している教諭・講師の回答の分析結果 の一部を報告する。
1調査の対象と方法
本調査は、 N県の公立小学校教員を対象に平成4年11月に実施した。まず、 N県の教職員名 簿をもとに無作為抽出により52校を選び、そこに在籍する校長以下、教頭、教諭、講師、養護 教諭、計1,233名を調査対象とした。該当者全員に個別に調査票とアンケート依頼状を郵送し、
無記名回答の後、各自で調査票を返送してもらうこととした。 11月30日の締切を前に、全員に 督促状を出し、最終的に回収した調査票数は461、うち有効回答数は440であった。有効回収率
は35.7%である。表1‑2は回答者の内訳を示す。
表1 回答者の職位
男 女 計
校 長 31(96.8) 1 (3.1) 32 (7.3) 教 頭 23(79.3) 6(20.6) 29 (6.6) 教 諭 117(35.2) 2 15(64.8) 332(75.5) 養 護 教 諭 1 (4.3) 22(95.7) (5.2) 講 師 2 (9.5) 19(9 0.5) 21 (4.8)
無 回 答 3 (100) 3 (0.7)
合計人(%) 174(39.5) 266(60.5) 440 (100)
表2 回答者の年齢構成(教諭・講師のみ)
男 % 女 % 人 %
2 0 ‑ 2 9 2 0(3 3 .9 ) 39 (6 6 .1) 5 9 (16 .7 ) 0 ‑ 34 2 0(3 6 .5 ) 32 (6 1 .5 ) 5 2 (14 .7 ) 3 5 ‑ 3 9 4 3(3 4 .7 ) 8 1(6 5 .3 ) 1 2 4 (3 5 .1 ) 4 0 ‑ 4 4 2 7(3 5 .5 ) 4 9 (64 .5 ) 7 6 (2 1.5 ) イ5 ‑ 19 4 (2 1 .1 ) 15 (78 .9 ) 19 (5 .3 ) 5 0 〜 5 (2 1 .7 ) 18 (78 .3 ) 2 3 (6 .5 ) 1 1 9(3 3 .7 ) 2 3 4 (66 .3 ) 3 5 3 (1 0 0 )
調査の枠組みは、 ①教師個人の信念、 ②教師が認知する学校レベルの組織特性、 ③教師の授 業観および学級での教師の具体的な教授行動・指導技術の3つから成り立っ。調査項目は学校組 織、学校改善、 「教育効果の高い学校」研究、授業研究の各領域での先行研究を参考に作成した。
また、調査項目に用いた用語の適切さ、質問文の分かりやすさについては、あらかじめ公立学校 教師10名から意見を求めた。その結果、以下の3領域、計80の質問項目とフェイスシートから 構成された質問票を使用し、それぞれの項目について、 ⑤まったくそうである、 ④ややそうで ある、 ③どちらともいえない、 ②ややそうでない、 ①まったくそうでない、の5段階による回 答を求めた。
(A)現在の勤務校の認知:意思決定への参加、リーダーシップ、協働、同僚との交流、研修、
保護者の協力を問う33項目。
(B)教職観・教育観:教職に対する満足観、教育観、教師の授業力量観について問う21項目。
(C)授業実践:授業実践に対する確信、自信とともに、教育効果と関連する教授行動、指導技 術を用いているかどうかを問う26項目。
回答は、 「まったくそうである」 5点、 「ややそうである」 4点、 「どちらともいえない」 3点、
「ややそうでない」 2点、 「まったくそうでない」 1点として平均とSDを算出した。
2 結果と考察
まず、調査結果のうち、教諭・講師の回答にみられる男女差、年齢差について述べる。
学校の組織特性と教師の教育活動に関する研究( 1 )
表3 性別比較(教諭・講師)
女 DS
M
D
S
M
A14 学校組織の中で、自分に何が期待されているのか、はっきりしない。' A15 学校運営において、自分の地位や役割が認められている。
A16 校長の教育観は自分と似ている。
A17 校長は適切なリーダーシップを発揮していると思う。
A19 校長は教師を励ますことが多い。
A20 校長には、教師の事務的な負担を軽減しようとする姿勢がみられる。
B19 児童たちの下校時刻が待ち遠しいことがあるo' C5 何とか思い通りの授業ができる。
C9 授業研究等で、進んで授業を公開するようにしている。
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73
男女で回答に有意差のあるもののみ p<〕05
表3は男女によって回答に有意差のみられた項目である(pく.05)。 Aの勤務校の認知に関す る質問項目が6、 Bの教職観、教育観が1項目、 Cの授業実践が2項目の計9項目であり、後述 する年齢差に比べると項目数は少ない。
Aの項目をみると、女性の場合、学校組織での役割期待、地位・役割の認知という点で男性 を下回っている。また、校長のリーダーシップを尋ねた項目A16、 17、 19、 20は男女の回答平 均値がほとんど「3 どちらともいえない」を下回り(2.5‑3.1)、回答者は男女とも勤務校の 校長のリ‑ダーシップには厳しい評価を下していることがわかる。その傾向はとりわけ女性に顕 著である。
Bの項目では、消極的コミットメントを表す「B19 児童たちの下校時刻が待ち遠しいことが ある。」という項目で、女性の平均値(2.8)が男性(2.4)より高い。 Cの授業実践の項目では、
「C5 なんとか思いどおりの授業ができる。」という授業力量の自己評価では女性(3.2)の方が 男性(2.9)を上回るのに、 「C9 授業研究等で、進んで授業を公開するようにしている。」とい
う項目では男性の平均値のほうが高い(3.5 > 3.2)。
授業力量の評価で女性の方が高いことは注目に値する。先行研究では、男性の方が「教育指導 の自信、成長」の得点が高いという報告があるからである(原岡、 1992)。もし、自己評価どお り、女性の方が授業力量において優れていると仮定すると、なぜ、 「進んで授業を公開する」、
「学校組織での役割期待」、 「地位・役割の認知」の項目で女性の得点が男性を下回るのか疑問が 残る。
次に、年齢別で有意差のあった項目をみてみよう。表4からもわかるように、項目数でいうと、
Aでは16、 Bでは2、 Cでは7、計25項目にのぼり、性別で有意差がみられたのが9項目で あったことと比べると、項目数はかなり多くなっている。性別比較と合わせて考えると、 Bの教 職観、教育観は、 Aの組織観、 Cの授業実践観に比して、性、年齢による影響を受けにくいと考 えられる。
加齢とともにスコアが単純に上昇もしくは減少するパターンを示す項目は少なく、 「A26 授 業実践で何か困った時には同僚から援助や助言を得ることができる。」と「C3 教えることは むずかしい。」の2項目のみである。授業力量の自己評価が経験年数(年齢)と正の関係にある ことは先行研究の示唆するところである(岸本他、 1980;原岡1992)c われわれの今回の調査で も、 「C5 何とか思いどおりの授業ができる。」という項目は、 45‑49歳のグループで一時的
74 小 野 摸 男・小 野 由美子・畑 本 恵 子 表4 年齢別比較(教諭・講師)
20‑29 30‑34 35‑39 40‑44 45‑49 50‑
M M M M M M (SD)(SD)(SD)(SD)(SD)(SD) A2 この学校には教育目標について教師同士が話し合う雰 3.6 3.5 3.4 3.3 3.3 3.6
園気がある (1.2) (1.0) (1.1) (1.2) (1.3) (1.0) A5 職員会議では、活発な討論が行われ、各自の意見を自 3.4 3.6 3.3 3.4 3.5 3.6 由に交換できる (1.3) (1.1) (1.1) (1.2) (1.2) (1.1) A7 この学校には、児童の学習について明確な達成目標が 3.7 3.5 3.3 3.5 3.5 4.0
ある (0.9) (0.9) (0.9) (1.1) (1.2) (0.9) All 自分の担任でない児童の生徒指導にも配慮する教師が 3.8 3.8 3.6 3.5 3.5 3.5
多い (1.0) (0.8) (1.0) (1.1) (1.2) (1.2) A13 この学校の問題点は、自分にも責任の一端があると感 3.0 3.5 3.4 3.4 3.6 3.6
じている。 (1.2) (0.9) (1.0) (1.1) (0.9) (1.2) A14 学校組織の中で、自分に何が期待されているのかはっ"2.7 2.8 2.7 2.5 2.9 2.6
きりしない (1.1) (1.0) (1.0) (1.0) (1.3) (1.0) A15 学校運営において、自分の地位や役割が認められてい 3.4 3.5 3.6 3.5 3.4 3.8
る (1.2) (0.9) (0.9) (1.0) (1.1) (0.7) A16 校長の教育感は自分と似ている 2.5 2.8 2.8 2.7 2.9 3.3
(1.1) (1.1) (1.1) (1.1) (1.3) (1.0)
A17 校長は適切なリーダーシップを発揮していると思う 2.6 2.6 2.6 2.5 2.5 2.9
(1.2) (1.3) (1.2) (1.3) (1.4) (1.0)
A20 校長には、教師の事務的な負担を軽減しようとする姿 2.7 2.7 2.7 2.5 2.8 3.3 勢がみられる (1.3) (1.2) (ll) (1.3) (1.1) (1.0) A22 この学校には、教師一人ひとりの意欲を大切にする雰 3.8 3.7 3.3 3.4 3.4 3.6
囲気がある (1.0) (1.0) (1.0) (1.1) (1.3) (0.9) A23 他の学校に替わることができるとしても、現在の学校 3.2 3.3 3.2 3.2 3.5 3.7
で勤務を続けたい (1.4) (1.0) (1.1) (1.2) (1.0) (1.1) A26 授業実践で何か困った時には、同僚から援助や助言を 4.3 4.2 4.0 3.9 3.7 3.5
得ることができる (1.0) (0.8) (0.9) (0.9) (1.2) (1.1) A28 この学校には、すぐれた授業力量を持っ教師がいる 4.1 4.3 3.7 3.5 3.5 3.8
(0.9) (0.7) (1.0) (1.0) (1.1) (0.8)
A32 この学校では、研修の種類や内容について十分な話し 3.5 3.6 3.4 3.3 3.5 3.8 台いが行われている (1.2) (1.1) (1.0) (1.1) (1.1) (0.8) A33 この学校では、懇談会や学校行事に出席する保護者が 3.5 3.2 3.0 3.2 3.1 3.6
多い (1.1) (1.0) .(1.0) (1.1) (1.2) (1.0) B6 教師の授業実践を向上させるのに役立つ理論というも 3.5 3.8 3.7 3.8 3.7 3.9
のがある (1.0) (0.8) (0.8) (0.9) (0.7) (0.8) Bll 教育的力量を高めるためには、教師間の協力は欠かせ 4.7 4.7 4.5 4.5 4.8 4.4
ない (0.7) (0.5) (0.7) (0.7) (0.4) (0.7) C3 教えることは難しい 4.8 4.7 4.4 4.4 4.3 4.3
(0.4) (0.5) (0.7) (0.9) (0.8) (0.7)
C5 何とか恩いどおりの授業ができる 2.7 2.9 3.2 3.2 3.1 3.6
(1.0) (0.7) (0.8) (1.1) (0.8) (0.9)
C7 この学校には、授業の悩みを気軽に相談できる同僚が 3.9 4.3 3.9 3.7 3.6 3.6 いる (1.3) (0.9) (1.0) (1.0) (1.3) (1.1) C15 授業は時刻通りに始めるようにしている 4.2 4.1 4.0 4.3 4.6 4.5
(0.7) (0.8) (0.9) (0.7) (0.6) (0.6)
C19 授業では、発間を重要視している 3.8 4.2 4.0 4.3 4.4 4.3
(0.9) (0.8) (0.7) (0.6) (0.8) (0.6)
C23 指導内容は、自分なりに重点化をはかりながら、教え 3.9 4.1 4.1 4.4 4.2 4.3 ている (0.9) (0.6) (0.6) (0.7) (0.6) (0.5) C25 テストの結果を授業に生かすようにしている。 3.5 3.6 3.6 4.1 40 4.1
(0.9) (0.8) (0.8) (0.7) (0.9) (0.8)
年齢別で有意差のあった項目のみ P<.05
学校の組織特性と教師の教育活動に関する研究( 1 ) 75
にスコアが下がってはいるが、 50歳以上のグループで再び上昇に転じており、年齢が上がるに つれて力量の評価が高くなる傾向は認められるといってさしつかえなかろう。教師のライフサイ クルでは、年齢が高くなるにつれて、職場では中堅教師、あるいは核となるべき教師、ベテラン 教師とみなされ、他の若手教師を援助するような地位にもっき、そうした役割を果たすことが期 待される。とすれば、年齢が高くなるに従って、気軽に同僚から援助や助言を得ることがむずか
しくなるというのは容易に想像がつく。
年齢で有意差の見られた授業関連の質問項目(C15、 19、 23、 25)では、 35‑39歳の年齢層 と40‑44歳の回答スコアのギャップが興味深い。すなわち、 35‑39歳で低下したり、横ばい であったスコアが、 40‑44歳のグループでかなり上昇する(0.3‑0.5)のである。平均値はそ の後も変動はするがその差のレンジは小さい(0.1‑0.3)c
また、 Aの組織特性の認知に関する質問では、総じて、 50歳代の平均値が他の年齢層より高 くなっている(A2、 5、 7、 13、 15、 16、 17、20、23、32、 33)e 同時に、こうした項目では 35‑39歳、 40‑44歳のグループで回答の平均値が低い傾向が読み取れる。組織特性の認知で 年齢による回答差が多くみられたことは、年齢によって立場の転換もしくは移行が起こり、それ によって組織の見方、組織に要求するものが異なってくるということが考えられる。
たとえば、 A26と関連する項目であるが、 「C7 この学校には、授業の悩みを気軽に相談で きる同僚がいる。」では、 30‑34歳代でスコアが最も高くなり(4.3)、その前後の年齢グループ では、平均値はともに3.9である。年齢による差を総合して考えると、授業での指導技術や学級 経営に関する悩みを気軽に相談できるのはこの年齢まで、あるいはその年齢までに一人前の教師 として一人立ちすることが周囲から暗黙のうちに期待されているのかもしれない。そして、 35
‑39歳代では、視点が「自分の授業⊥学級」から「勤務する学校」へと拡大し、職員会議のよ うな公的な場での話し合いの雰囲気、一人ひとりの意欲を大切にする雰囲気の有無が見えてくる のではなかろうか。先にも触れたように、この年齢段階で、授業の指導技術のスコアが停滞する という点を考慮すると、この年齢段階で教師に新たな役割が与えられ、これまでとは異なった力 量の習得に力点をおくため、授業に集中できないという解釈も可能である。続く40‑44歳では、
依然として組織の認知は他の年齢層よりも厳しいが、役割に必要とされる力量の習得が一段落し、
教師集団の中心としての自らの役割の自覚、あるいは自信が生まれるのか、授業にのぞむ態度の 得点が上昇に転じるとも理解できる。この点に関しては、さらに、教務主任、学年主任など分掌 校務との関係を見ることが必要である。
続いて、因子分析の結果に移ろう。
表5は教諭・講師による組織特性の認知の因子分析結果である。固有値が1以上の6因子に対 して、高い因子負荷量を示す質問項目(.50以上)をもとに、それぞれの因子を次のように命名 した。 「因子1同僚とのインフォーマルな学習交流機会」、 「因子2 校長のリーダーシップ」、
「因子3 生徒指導の一貫性」、 「因子4 専門職集団としての一体感」、 「因子5 職務に対する 責任感」、 「因子6 生徒指導上の問題がない」である。このなかで、 「因子6 生徒指導上の問 題がない」は組織の特性であると同時に、成果(アウトプット)とも解釈されよう。
次に、 B教職観、教育観の因子分析結果をみてみよう(表6)。ここでは、固有値が1以上の 因子は3である。第1因子は「下校が待ち遠しい」、 「学校へいかないで家にいようかと思うこと がある。」というマイナスのコミットメントを表出する項目と関連がある。第2因子と関連する のは、 「教師の授業力量の違いによって、児童の学力も異なると恩う」、 「教師の授業実践を向上
76 小 野 摸 男・小 野 由美子・畑 本 恵 子
表5 組織特性認知項目の因子負荷量(教諭・講師)
A 1 同 じ 教 育 観
F a cto r 1 F ac to r 2 F a c to r 3 F a cto r 4 F a cto r 5 F ac to r 6 同 僚 と の イ 校 長 の リ ‑ 生 徒 指 導 の 専 門 職 集 団 職 務 に 対 す 生 徒 指 導 上
ン フ ォ ー マ ル な 学 習 交 流 機 会
ダ ー シ ッ プ 一 貫 性 と し て の 一 体 感
る 責 任 感 の 問 題 が な い
.2 74 .15 ‑ .0 0 7 .5 2 5 .0 4 6 .0 9 4
A 5 活 発 討 論 ‑ .0 5 5 .0 9 6 .2 3 .5 7 .1 12 ‑ .0 7 1
A 8 方 針 が 明 確 .0 56 .11 9 .8 6 4 .1 6 6 .0 5 7 .0 6
A 9 方 針 が 実 践 に 生 か さ れ る .2 0 3 .1 1 9 .8 1 8 .2 4 9 .0 0 3 .0 1 7
A 1 0 問 題 が 深 刻 で な い ‑ .0 1 .0 5 4 .0 6 6 .0 4 2 .0 15 .9 3 1
A 1 2 経 営 方 針 に 満 足 .1 3 1 .3 9 8 .2 3 3 .5 8 6 .10 8 .1 3 1
A 1 3 日 分 に も 責 任 の 一 端 .0 38 .1 5 3 .0 2 6 .0 5 4 .9 3 8 .0 1 5
A 1 4 日 分 へ の 期 待 は っ き り し な い i .0 4 6 i .1 5 9 ‑ .1 1 2 ‑ .0 7 1 .1 .0 3 8
A 1 5 役 割 が 認 め ら れ て い る .0 9 1 .1 3 1 .1 0 2 .2 7 3 .11 6 .1 4
A 1 6 校 長 の 教 育 観 ‑ .0 2 3 .8 5 4 .0 9 2 .1 6 3 .0 9 5 .0 2 6
A 1 7 校 長 の リ ー ダ ー シ ッ プ .1 0 5 .8 7 5 .0 7 3 .1 03 .0 1 3 .0 0 9
A 1 8 校 長 が 適 切 に 指 導 .2 0 1 .8 2 4 .0 3 6 .0 58 .0 5 .0 1 2
A 1 9 校 長 が 教 師 を 励 ま す .1 4 8 .8 2 5 .0 5 4 .19 8 .0 8 2 一 .0 0 2
A 2 0 教 師 の 事 務 を 軽 減 .0 5 6 .7 9 8 .0 7 5 .18 1 ‑ .0 0 1 .0 4 8
A 2 1 教 師 の 工 夫 を 奨 励 .0 7 1 .3 4 5 .1 32 .5 4 5 ‑ .1 6 7 .0 1 7
A 2 2 意 欲 を 大 切 に す る .2 1 4 .2 6 4 .1 24 .6 2 9 一 .0 6 2 I .0 5 9
A 2 3 現 在 の 学 校 で 続 け た い .l l .2 1 3 .1 4 .7 13 .0 3 4 .1 8 9
A 2 4 仲 間 意 識 が あ る .3 0 5 .1 3 9 .1 68 .6 17 .0 8 9 ‑ .1 2 2
A 2 6 同 僚 の 援 助 が 得 ら れ る .6 6 4 .1 2 9 .09 6 .2 5 4 .0 9 9 .1 2 1
A 2 7 私 的 な 助 言 を 受 け る .8 0 8 .0 8 7 .1 14 .0 6 6 .1 4 1 .0 1 4
A 2 8 す ぐ れ た 教 師 が い る .5 4 3 .0 5 7 .02 5 .1 8 8 i .0 1 8 .1 7 8
A 2 9 授 業 内 容 が 活 発 .2 1 9 .1 1 9 .13 6 .1 1 2 .0 8 5 .09 3
A 30 校 内 研 修 が 意 欲 的 .1 7 .18 8 .16 2 .2 9 6 .0 4 9 ‑ .0 3 3
A 3 1 校 外 研 修 の 話 題 が 出 る .2 9 5 .18 6 .0 5 8 .2 9 1 .1 3 2 .02 3
A 32 研 修 に つ い て の 話 し 合 い が 十 分 .0 7 4 .18 1 .2 0 2 .4 1 5 .0 5 4 一 .0 4 8
固 有 値 l l .9 6 9 2 .77 9 1 .4 6 3 1 .3 6 1 1 .1 1 4 1 .0 8 7
( 因 子 寄 与 率 ) (3 7 .4 ) (8 .7 ) ( 4 .6 ) (4 .3 ) (3 .5 ) (3 .4 )
表6 教職観・教育観項目の因子負荷量(教諭・講師)
F a c to r 1 F a c to r 2 F a c to r 3 消 極 的 コ ミ
ッ トメ ン ト
力 量 習 得 論 力 量 環 境 依 存 論
B 1 教 職 を 続 け る .2 1 .0 3 4 .0 7
B 4 や り が い i .2 6 5 .1 3 2 ‑ .0 44
B 5 才 能 に よ る .0 0 6 .0 7 8 .0 1 7
B 6 向 上 の 理 論 .0 4 1 .6 1 1 .0 97
B 12 教 師 の 力 量 に よ る .0 5 2 .8 8 6 .0 35
B 14 雰 囲 気 に よ る .2 1 1 .0 4 9 .78 6
B 1 5 校 長 の リー ダ ー シ ッ プ .1 9 7 .08 3 .8 2 9
B 1 9 下 校 が 待 ち 遠 しい .8 2 9 .0 1 5 ‑ .0 11
B 2 0 学 校 へ 行 か な い .8 4 2 ‑ .03 1 .0 0 4
固 有 値 2 .2 3 6 1 .5 1 2 1 .1 1 6
(因 子 寄 与 率 ) (2 4 .8 ) (1 6 .8 ) (1 2 .4 )
学校の組織特性と教師の教育活動に関する研究( 1 )
表7 授業実践項目の因子負荷量(教諭・講師)
F a c to r 1 F a c to r 2 F a c to r c F a c to r 4 自 分 の 実 践
に 対 す る 確 信
不 干 渉 主 義 実 践 の 共 有 化
コ ミュニ ケ I シ ヨ ンに よ る フイ】 ドバック
C 1 力 量 が 認 め ら れ て い る .6 0 4 〜 .0 6 2 .2 7 5 .0 15
C 5 思 い ど お り の 授 業 が で き る .7 9 1 ‑ .0 7 9 .0 6 2 .0 9
C 6 確 信 が 持 て な い ‑ .7 4 2 .1 2 7 .0 6 4 i .1 1 7
C 9 進 ん で 授 業 を 公 開 す る .14 .4 8 6 .5 8 5 .0 1 9
C 10 子 供 が 手 ご た え の あ る 反 応 .6 14 ‑ .1 1 9 .2 3 7 .1 8 3
C 11 授 業 を 他 の 教 師 に話 さ な い ‑ .1 14 .7 4 4 .0 1 3 】 .1 2 5
C 1 2 日 分 か ら ア ドバ イ ス し な い ‑ .12 1 .8 2 3 ‑ .1 2 7 .1 12
C 1 6 宿 題 を す ぐ点 検 し て 返 す .0 7 3 ‑ .0 5 6 一 .0 5 2 .8 0 3
C 1 7 授 業 で グ ル I プ学 習 .2 1 ‑ .1 6 9 .2 4 3 .7 5
C 2 1 教 材 開 発 に努 力 し て い る .0 0 7 ‑ .2 6 8 .5 3 7 .0 0 7
C 2 6 授 業 の 記 録 を 残 す .15 9 .0 4 1 .8 3 3 .1 4 1
固 有 値 1 Q fi PQ .O KJO 1 .3 58 1 .19 4 1 .0 8 4
( 因 子 寄 与 率 ) (2 8 .3 ) (9 .7) (8 .5 ) (7 .7 )
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させるのに役立つ理論というものがあると思う」という項目である。このことから「力量習得 論」と名づけた。第3因子は、 「職場の雰囲気」と、雰囲気を規定する要因としての「校長の
リ‑ダーシップ」の項目で因子負荷量が高く、 「力量の環境依存論」と呼ぶことにした。
最後は授業実践に関する項目である(表7)。因子分析の結果得られたのは4因子である。ま ず、因子1は「校長も他の教師も、私の授業力量を認めている」、 「思い通りの授業ができる」、
「子どもが手ごたえある反応をしている」といった、 「個人的な授業実践力量に対する確信」を表 すと解釈できる。第2因子は、 「頼まれない限り、自分から授業実践についてアドバイスしない」
や「どのような授業をしているか他の教師に話すことは少ない」、 「進んで授業を公開する」 (因 子負荷量は負)と関連しており、 「非公開、不干渉」の因子である。第3因子は、 「授業の記録を 残す」、 「進んで授業を公開する」、 「教材開発に努力している」といった項目と関連が強い因子で あることから、 「優れた実践の共有化」と解釈した。因子4は「宿題をすぐ点検して返す」、 「授 業でグループ学習も取り入れている」という項目で因子負荷量が高い。これは「コミュニケ‑
ションによるフィードバック」を表す因子と理解した。
以上のように、因子分析の結果、学校組織特性(A)で6因子、教師の教職、教育に関する信 念(B)で3因子、授業観・学級での教授行動(C)では4因子、計13因子が確認された(表8)0 因子問の相互関連を解明することは次の課題であるが、ここでは、調査項目を作成する前提と なった理論枠組みに基づいて、学校の教育効果生産のモデルとして因子を整理しておきたい。
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職員会議、研修等、公的な場で目標、目標実現の方法を話し合い、教師の問に共通理解を作り 上げるのはリーダーとしての校長の役割である(A2)。そして、目標実現のための異体的な方 針が一貫して実施されるようモニタ‑するのも校長の職務である(A3)。こうして、校長は何 に努力を傾注すべきかを教師に伝達する。しかし、目標を実現するための具体的な方策において は、専門職としての教師の意欲、工夫を尊重する(A4)。こうした教師の積極的なコミットメ ントと関係するのが、教師の間に、職務に関する本質的なこと、すなわち学級で教えるというこ
78 小 野 接 男・小 野 由美子・畑 本 意 子
表8 潜在構造因子 A組織特性
因子Al 因子A2 因子A3 因子A4 因子A5 閃l'A6 B個人の教育観
因子Bl
同僚とのインフォーマルな学習交流機会 校長のリーダーシップ
生徒指導の一貫性 専門職集団としての一体感 職務に対する責任感 生徒指導上の問題がない 消極的コミットメント 因子B2 力量習得論
因子B 3 力量環境依存論 C授業実践
因子C 1 個人的な授業実践力量に対する確信 因子C2 不干渉主義
因子C3 優れた実践の共有化 因子C4 積極的フィードバック
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子どもの学習成果 図1学校の教育成果生産モデル
とをめぐって交流し、学習する風土、機会(Al)である。専門職としての教師のコミットメン トは効果的な指導技術の探求を促すであろう(C4)。インフォーマルな専門的交流、学習の機 会を通じて、新たな技術を獲得し、教師は自らの授業力量に確信を深める(CD。専門的な交 流、学習の機会はまた、優れた実践を独占するのではなく、共有することを促す(C3)。その 結果、生徒指導上の問題がない(A6)、学習成果が上がる、教師としての満足観、成長観が得 られる。こうした成果の得られないところでは、消極的コミットメント(Bl)を生じる。力量 は習得されるべきもの、成長するものとみなすことと、授業力量に対する確信は関連があろう。
力量が職場環境に依存するという見方(B3)は、組織評価の低さと関係しているかもしれない。
さしあたっては、因子分析の結果得られた因子問の相関関係の分析を試みること、管理職者の 組織認知、教職観・教育観の因子分析と教諭・講師の因子分析結果との比較が今後の課題である。
学校の組織特性と教師の教育活動に関する研究( 1 ) 79
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Teachers Perceptions of Their Workplace, Teachers Educational Beliefs and Teachers Instructional Behaviors :
Some Preliminary Results
Hiroo Ono
{Department of Educational Foundations, Nara University of Education, Nara, 630, Japan) Yumiko Ono
(Naruto Graduate School of Teacher Education, Tokushima, 772, Japan) and
Keiko Hatamoto
{Hiroshima Chuo Women 's College, Hiroshima, 731 ‑ 01, Japan) (Received April 30, 1993)
School organization research and research on teaching have foused on different aspects of schools and accumulated results to improve school effectiveness. Adovocates of Effective Schools research argue that it is necessary to integrate these two lines of research. Little is known, however, about the relationship between teachers'perception of their workplace, their educational belief, and their classroom instuructional behavior.
This article investigates this issue. A questionnare survey to public elementary school teachers was earned out in November, 1992. Preliminary analysis indicates that educa‑
tional beliefs of teachers are least influenced by sex or experience. As to sex difference, female teachers evaluated principals less favorable than male counterparts, although overall ratings of principals leadership were siginificantly lower than other orgnaizatio‑
nal features. As to experience, the data suggests that perceptions of school organization are more critical among 35‑39 and 40‑44 age groups. 35‑39 age group shows lower scores in classroom instructional behaviors. This may imply some change in their role expecta‑
tion occurs in this age group (35‑39) and they can allocate less efforts for classrooms in order to learn new skills and techniques to implement their roles effectively. Factor analysis shows that 13 factors contributed to variation of answers. A prelimary model for further analysis is presented.