話しことばにおける状況省略
― spoken languageの欠落性の諸相 ―
澤 田 茂 保
0 はじめに
本稿では、英語の話しことば(spoken language/以下 SL)に観察される断片 化・欠落性に関わる様々な特徴のうち、とくに「状況省略(situational ellipsis)」 と呼ばれる言語現象とそれに関連する諸問題について考察する。省略という 現象は、その名称からすれば、言語論の中心とはなり得ないと思われるかも 知れないが、その認識は誤りである。省略・消失は人の言語産出・理解の根 幹に関わるプロセスである。それ故に過去の言語学者も注目し、様々な点か ら考察を加えてきた。しかしながら、その考察の多くは書かれた言語(written
language/以下WL)を対象にしたものであったと言わざるを得ない。本稿では、
状況省略というSLでのみ観察される省略のタイプに焦点を当てる。
本稿の構成は次の通りである。第一節では、英語文法における省略の扱い 方とその中での状況省略の位置づけを短く概観する。第二節では、状況省略 の特徴と分類、及び発生の頻度について述べる。第三節では、状況省略の発 生の原因について情報処理と英語音調の観点から考察する。第四節では、状 況省略に関連した個別的な事項を補完的に述べる。
1 省略について
「省略」は「消失(omission)」と呼ばれる言語現象の一つで、様々な言語学 的レベルで観察される。わかりやすいのは音韻論での音消失・音脱落で、そ
れにはとくにelisionという用語を当てている。例えば、becauseを ’causeと 表記する語頭音消失(aphaeresis)、I should’ve などの語中消失(syncope)などが ある。また、語形態論には、evacuateをevacとか、influenzaをfluなどと短 くする例など、いわゆるclippingと呼ばれる現象があり、これも音消失の一 例である。しかしながら、本論で述べようとする消失は、文構造上の要素が 消失する事例で、それにはとくにellipsisという用語を使っている。
1.1 文法論の中の省略の位置付け
省略について、Quirk et al. (1985)(以下、CGEL)は一章を割いて、詳細に述 べている。CGEL は節構造を中心に文法論を組み立てているため、まず節の 基本構造を述べてから、その構造を縮減する現象として、省略と代用形
(pro-forms)の使用について論述する流れを取っている。代用形と省略とを同
一線上においたとらえ方は卓見であるが、本論は代用形の使用については触 れないで、省略についてのみ考察する。
CGEL では、省略を「構造省略(structural ellipsis)」、「テキスト省略(textual ellipsis)」、「状況省略(situational ellipsis)」の三つに分類している。構造省略は 関係代名詞の省略やthinkやbelieveなどの認識動詞の補文標識thatの省略と いった事例である。現象として局所化できて、学校文法レベルでもおなじみ のものである。他方、テキスト省略の方は広範囲に観察される現象で、文法 構造上で何らかの平行性が存在するときに発生する省略である。文法構造と 密接に関わるため、これまでの省略研究では根幹的な現象と見なされ、研究 の中心であった。それに対して、状況省略は文法構造の平行性とは関係なく、
発話の場面に随伴して観察されるもので、言語構造の不完全さの一因として 見なされて、真面目な言語研究の対象とは考えられてこなかった。
状況省略の議論に行く前に、根幹的現象であるテキスト省略がどういうも のか概観してみよう。次の事例を参照して欲しい。
(1) a. He squeezed her hand, but △ met with no response.
b. She looks older than my mother △. c. A: When are you going to leave?
B: △ Next Friday.
(2) a. John likes coffee and Susan △ tea.
b. Mary told me to expect someone, but she didn't say who △.
△で文法的な要素の省略がある。(1a)は等位構造を、 (1b)は比較構造を基本に した省略である。また、(1c)は、応答文における省略である。いずれも何ら かの文法構造上の平行性がある1。一方、生成文法では、(2a)には空所化
(gapping)、(2b)にはsluicingという名称を与えて、とりわけ構造面の研究対象
とされてきた。 (2)においても構造上の平行性が存在しているので、テキス ト省略の一つである。
SL でのみ発生する省略という点で、(1c)は状況省略と似ている。しかし、
状況省略はテキスト省略の特徴である文法構造上の平行性がなくても発生す る。テキスト省略では、文法構造上の平行性から省略された要素がテキスト 文脈から復元されるが、状況省略では、話し手と聞き手が共有する言語知識 と場面によって復元される点が異なる。応答における省略と状況省略とは判 然としない事例もあるが、この両者は基本的に区別されるべきである。
2 状況省略
本節では、状況省略に焦点を絞って、その特徴と分布を考察する。まず、
2.1節では、状況省略を簡単なサンプルで概説する。2.2節では、CGELの記 述をもとに、状況省略の批判的な分類を行う。そして、2.3節では、ラジオ・
ドラマの一話全体を分析して、具体的な事例分布を見る。
2.1 状況省略のサンプル的事例
(3)は、あるラジオドラマの冒頭部分の会話である2。主人公 A はテキサス の友人宅からアルバカーキまで帰るのだが、高速道路を通らずに裏街道を 通ったために道に迷う。立ち寄ったガソリンスタンドの店員Bとの会話であ る。
れにはとくにelisionという用語を当てている。例えば、becauseを ’causeと 表記する語頭音消失(aphaeresis)、I should’ve などの語中消失(syncope)などが ある。また、語形態論には、evacuateをevacとか、influenzaをfluなどと短 くする例など、いわゆるclippingと呼ばれる現象があり、これも音消失の一 例である。しかしながら、本論で述べようとする消失は、文構造上の要素が 消失する事例で、それにはとくにellipsisという用語を使っている。
1.1 文法論の中の省略の位置付け
省略について、Quirk et al. (1985)(以下、CGEL)は一章を割いて、詳細に述 べている。CGEL は節構造を中心に文法論を組み立てているため、まず節の 基本構造を述べてから、その構造を縮減する現象として、省略と代用形
(pro-forms)の使用について論述する流れを取っている。代用形と省略とを同
一線上においたとらえ方は卓見であるが、本論は代用形の使用については触 れないで、省略についてのみ考察する。
CGEL では、省略を「構造省略(structural ellipsis)」、「テキスト省略(textual ellipsis)」、「状況省略(situational ellipsis)」の三つに分類している。構造省略は 関係代名詞の省略やthinkやbelieveなどの認識動詞の補文標識thatの省略と いった事例である。現象として局所化できて、学校文法レベルでもおなじみ のものである。他方、テキスト省略の方は広範囲に観察される現象で、文法 構造上で何らかの平行性が存在するときに発生する省略である。文法構造と 密接に関わるため、これまでの省略研究では根幹的な現象と見なされ、研究 の中心であった。それに対して、状況省略は文法構造の平行性とは関係なく、
発話の場面に随伴して観察されるもので、言語構造の不完全さの一因として 見なされて、真面目な言語研究の対象とは考えられてこなかった。
状況省略の議論に行く前に、根幹的現象であるテキスト省略がどういうも のか概観してみよう。次の事例を参照して欲しい。
(1) a. He squeezed her hand, but △ met with no response.
b. She looks older than my mother △. c. A: When are you going to leave?
B: △ Next Friday.
(2) a. John likes coffee and Susan △ tea.
b. Mary told me to expect someone, but she didn't say who △.
△で文法的な要素の省略がある。(1a)は等位構造を、 (1b)は比較構造を基本に した省略である。また、(1c)は、応答文における省略である。いずれも何ら かの文法構造上の平行性がある1。一方、生成文法では、(2a)には空所化
(gapping)、(2b)にはsluicingという名称を与えて、とりわけ構造面の研究対象
とされてきた。 (2)においても構造上の平行性が存在しているので、テキス ト省略の一つである。
SL でのみ発生する省略という点で、(1c)は状況省略と似ている。しかし、
状況省略はテキスト省略の特徴である文法構造上の平行性がなくても発生す る。テキスト省略では、文法構造上の平行性から省略された要素がテキスト 文脈から復元されるが、状況省略では、話し手と聞き手が共有する言語知識 と場面によって復元される点が異なる。応答における省略と状況省略とは判 然としない事例もあるが、この両者は基本的に区別されるべきである。
2 状況省略
本節では、状況省略に焦点を絞って、その特徴と分布を考察する。まず、
2.1節では、状況省略を簡単なサンプルで概説する。2.2節では、CGELの記 述をもとに、状況省略の批判的な分類を行う。そして、2.3節では、ラジオ・
ドラマの一話全体を分析して、具体的な事例分布を見る。
2.1 状況省略のサンプル的事例
(3)は、あるラジオドラマの冒頭部分の会話である2。主人公A はテキサス の友人宅からアルバカーキまで帰るのだが、高速道路を通らずに裏街道を 通ったために道に迷う。立ち寄ったガソリンスタンドの店員Bとの会話であ る。
(3) A1: Hey, anybody here?
B2: How do?
A3: Hi, can you fill it up?
B4: Don’t see why not. Convertible, huh? Um, one of those new foreign jobs.
A5: The gas cap’s under the license plate.
この対話で文法構造的に必要とされる要素を下線部で加えてみると、次のよ うになるだろう。
(4) A1: Hey, (a)is there anybody here?
B2: How (b)do you do?
A3: Hi, can you fill it up?
B4: (c)I Don’t see why (d)I can not (d)fill it up. (e)Is it a Convertible, huh? Um, (f)it’s one of those new foreign jobs.
A5: The gas cap’s under the license plate.
7つの文構造が認められ、うち5つで省略が見られる。しかし、状況省略の 特徴を持つ例は(a), (c), (e), (f)である。 (b)は状況省略として一般化することの 困難な事例である。母語話者には、“How do?”が、応答としての“Can do”や“No can do” あるいは、挨拶としての“Long time no see”のような接触言語に聞こえ るという。強い欠落感とともに固定した定型表現である。他方、(d)は、1.2 節で述べたsluicingの事例である。
他方、誰の発言で省略があるか、という点からみると、主人公はA₁のみで あるが、Bではすべての発話で省略が見られる。SLの分析では、誰がどうい う状況で述べているか、といった社会言語学的な視点も必要である。
2.2 状況省略の分類
本節では、状況省略を系統的に分類してみる。状況省略は、CGEL におい て指摘され、その後のSLの研究であるBiber et al. 1999 (以下、LGSWE)
やCarter and McCarthy 2006(以下、C&M)で繰り返して取り上げられている。
この三つの文献は独自の項目立てを行っているので、三つを横断的に整理し てみる。
三つの文献の事例を整理して並べると、表1のようになる。○は事例の記 載があるもの、*は事例としてあげてないが、説明から存在は否定していない 場合である。また、△は別の箇所で言及している事柄で、空白は言及がない 事項である。ここでOPは疑問文形成で倒置される第一助動詞である。
省略の起こる文法的な要素 CGEL LGSWE C&M
① 陳述文で、一人称主語 ○ ○ ○
② 陳述文で、一人称主語とOP ○ ○ *
③ 陳述文で、二人称主語 ○ * ○
④ 陳述文で、三人称主語 ○ * *
⑤ 陳述文で、it ○ ○ ○
⑥ 陳述文で、itとOP ○ * ○
⑦ 陳述文で、存在のthere ○ ○ ○
⑧ 疑問文で、二人称主語とOP ○ * ○
⑨ 疑問文で、三人称主語とOP ○ * *
⑩ 疑問文で、itとOP ○ * *
⑪ 疑問文で、存在のthereとOP ○ * *
⑫ 疑問文で、OPのみ ○ ○ ○
⑬ 本動詞の省略 △ ○
⑭ 冠詞の省略 ○ ○
⑮ 条件のifの消失 ○
⑯ 定型表現 ○
⑰ 前置詞の省略 △ ○ 表1
(3) A1: Hey, anybody here?
B2: How do?
A3: Hi, can you fill it up?
B4: Don’t see why not. Convertible, huh? Um, one of those new foreign jobs.
A5: The gas cap’s under the license plate.
この対話で文法構造的に必要とされる要素を下線部で加えてみると、次のよ うになるだろう。
(4) A1: Hey, (a)is there anybody here?
B2: How (b)do you do?
A3: Hi, can you fill it up?
B4: (c)I Don’t see why (d)I can not (d)fill it up. (e)Is it a Convertible, huh? Um, (f)it’s one of those new foreign jobs.
A5: The gas cap’s under the license plate.
7つの文構造が認められ、うち5つで省略が見られる。しかし、状況省略の 特徴を持つ例は(a), (c), (e), (f)である。 (b)は状況省略として一般化することの 困難な事例である。母語話者には、“How do?”が、応答としての“Can do”や“No can do” あるいは、挨拶としての“Long time no see”のような接触言語に聞こえ るという。強い欠落感とともに固定した定型表現である。他方、(d)は、1.2 節で述べたsluicingの事例である。
他方、誰の発言で省略があるか、という点からみると、主人公はA₁のみで あるが、Bではすべての発話で省略が見られる。SLの分析では、誰がどうい う状況で述べているか、といった社会言語学的な視点も必要である。
2.2 状況省略の分類
本節では、状況省略を系統的に分類してみる。状況省略は、CGEL におい て指摘され、その後のSLの研究であるBiber et al. 1999 (以下、LGSWE)
やCarter and McCarthy 2006(以下、C&M)で繰り返して取り上げられている。
この三つの文献は独自の項目立てを行っているので、三つを横断的に整理し てみる。
三つの文献の事例を整理して並べると、表1のようになる。○は事例の記 載があるもの、*は事例としてあげてないが、説明から存在は否定していない 場合である。また、△は別の箇所で言及している事柄で、空白は言及がない 事項である。ここでOPは疑問文形成で倒置される第一助動詞である。
省略の起こる文法的な要素 CGEL LGSWE C&M
① 陳述文で、一人称主語 ○ ○ ○
② 陳述文で、一人称主語とOP ○ ○ *
③ 陳述文で、二人称主語 ○ * ○
④ 陳述文で、三人称主語 ○ * *
⑤ 陳述文で、it ○ ○ ○
⑥ 陳述文で、itとOP ○ * ○
⑦ 陳述文で、存在のthere ○ ○ ○
⑧ 疑問文で、二人称主語とOP ○ * ○
⑨ 疑問文で、三人称主語とOP ○ * *
⑩ 疑問文で、itとOP ○ * *
⑪ 疑問文で、存在のthereとOP ○ * *
⑫ 疑問文で、OPのみ ○ ○ ○
⑬ 本動詞の省略 △ ○
⑭ 冠詞の省略 ○ ○
⑮ 条件のifの消失 ○
⑯ 定型表現 ○
⑰ 前置詞の省略 △ ○ 表1
状況省略として典型的なものは①から⑫である。典型的な状況省略は次の ような基準で分類できる。
(5) a. 文の形式(陳述文か疑問文か)
b. 主語の人称代名詞の種類(一人称、二人称、三人称及びit/there)
c. OPの同時消失の有無
(5)の基準に関わる文法的な要素は節単位の冒頭部に現れる。これはとりもな おさず、状況省略は節単位の冒頭部に発生することを示している。(5)の基準 が独立していれば、理論的には20 通りの可能性がある3。もっともすべての 事例を網羅的に挙げている文献はない。以下では、CGEL が上げている典型 例に絞って、批判的に検討したい。
(6)から(18)は、CGEL で挙げられている事例を、表1の丸番号に沿って並 べ替えたものである。(CGELで記載されている区分とは一致しない)
(6) ① (△=Iの事例) a. △ Beg your pardon.
b. △ Told you so.
c. △ Wonder what they’re doing d. △ Hope he’s there.
e. △ Don’t know what to say f. △ Think I’ll go now.
(a)は、Thank youと同様、かなり定型化が進んだ表現で、発話・使用状況の
密着性が高い4。同様に、(b)は、「俺のいったことが正しかっただろう」といっ た相手を責めるような響きを持ち、これにも場面に密着した定型性が認めら れる。 (6)のタイプで多いのは、(c)から(f)に見られる認識動詞類における一 人称主語の省略である。
②は、定型化している場合が多く、またOPはbe動詞が多い。
(7) ② (△=I’mの事例) a. △ Sorry I couldn’t be there.
b. △ Afraid not.
OPがbe動詞でない例として、CGELでは、“(I’ll) See you later.”と“(We’ve) Got
to go now.”の例を挙げている。いずれも主語と縮約するOPに限られる。
③はCGELの分類における最大の問題である。
(8) ③ (△=youの事例) a. △ Turned out all right?
b. △ Want a drink?
c. △ Had a good time, did you?
d. △ Want a drink, do you?
CGELは③をyouの省略された陳述文としている。しかし、③の例は形態的 には陳述文に見えるが、音調から疑問文として分析されるべきである。(a)と (b)は上昇調の音調のみが許され、下降調は存在しない。また、(c)と(d)は、極 性が同じ付加疑問文で、状況省略とタグ表現と混在した話しことば特有の表 現である。これについては後述する5。端的に言えば、陳述文における二人称 代名詞の状況省略は原則として存在しない。その理由は陳述文は下降調であ り、命令文と誤解されるからである。
状況省略の分類では、人称代名詞を下位区分した方が実態がわかりやすい。
状況省略は場面に依存した省略なので、その場面では一人称と二人称の指示 対象は論理的に必ず存在する。しかし、he/she/they の指示対象は場面から聞 き手が特定しなければならず、場面から切り離すと意味が一意的に復元でき ない。それ故に希になる。
(9) ④ (he/she/theyなどの三人称代名詞の例) a. (He/she) Doesn’t look too well.
状況省略として典型的なものは①から⑫である。典型的な状況省略は次の ような基準で分類できる。
(5) a. 文の形式(陳述文か疑問文か)
b. 主語の人称代名詞の種類(一人称、二人称、三人称及びit/there)
c. OPの同時消失の有無
(5)の基準に関わる文法的な要素は節単位の冒頭部に現れる。これはとりもな おさず、状況省略は節単位の冒頭部に発生することを示している。(5)の基準 が独立していれば、理論的には20通りの可能性がある3。もっともすべての 事例を網羅的に挙げている文献はない。以下では、CGEL が上げている典型 例に絞って、批判的に検討したい。
(6)から(18)は、CGEL で挙げられている事例を、表1の丸番号に沿って並 べ替えたものである。(CGELで記載されている区分とは一致しない)
(6) ① (△=Iの事例) a. △ Beg your pardon.
b. △ Told you so.
c. △ Wonder what they’re doing d. △ Hope he’s there.
e. △ Don’t know what to say f. △ Think I’ll go now.
(a)は、Thank youと同様、かなり定型化が進んだ表現で、発話・使用状況の
密着性が高い4。同様に、(b)は、「俺のいったことが正しかっただろう」といっ た相手を責めるような響きを持ち、これにも場面に密着した定型性が認めら れる。 (6)のタイプで多いのは、(c)から(f)に見られる認識動詞類における一 人称主語の省略である。
②は、定型化している場合が多く、またOPはbe動詞が多い。
(7) ② (△=I’mの事例) a. △ Sorry I couldn’t be there.
b. △ Afraid not.
OPがbe動詞でない例として、CGELでは、“(I’ll) See you later.”と“(We’ve) Got
to go now.”の例を挙げている。いずれも主語と縮約するOPに限られる。
③はCGELの分類における最大の問題である。
(8) ③ (△=youの事例) a. △ Turned out all right?
b. △ Want a drink?
c. △ Had a good time, did you?
d. △ Want a drink, do you?
CGELは③をyouの省略された陳述文としている。しかし、③の例は形態的 には陳述文に見えるが、音調から疑問文として分析されるべきである。(a)と (b)は上昇調の音調のみが許され、下降調は存在しない。また、(c)と(d)は、極 性が同じ付加疑問文で、状況省略とタグ表現と混在した話しことば特有の表 現である。これについては後述する5。端的に言えば、陳述文における二人称 代名詞の状況省略は原則として存在しない。その理由は陳述文は下降調であ り、命令文と誤解されるからである。
状況省略の分類では、人称代名詞を下位区分した方が実態がわかりやすい。
状況省略は場面に依存した省略なので、その場面では一人称と二人称の指示 対象は論理的に必ず存在する。しかし、he/she/they の指示対象は場面から聞 き手が特定しなければならず、場面から切り離すと意味が一意的に復元でき ない。それ故に希になる。
(9) ④ (he/she/theyなどの三人称代名詞の例) a. (He/she) Doesn’t look too well.
b. (He/she/they) Can’t play at all.
he/she/theyは場面からの復元の負荷量は高いが、(9)のように実例としては存
在する。なお、CGELの例は否定語がついた OP だけだが、必ずしも否定語 と共に使われるわけではない。
(10)は非人称代名詞it の省略で、これは発生頻度が高い。英語では、非人 称代名詞itの使用領域が広いことと場面からの復元の負荷量が低いからであ ろう。⑤には多様なitが混在している。
(10) ⑤ (△=itの事例) a. △ Serves you right.
b. △ Doesn’t matter.
c. △ Looks like rain.
d. △ Must be hot in Panama.
e. △ Seems full.
f. △ makes too much noise.
g. △ Sounds fine to me.
h. △ Won’t be any use.
(a, b)で省略されているのは、CGELではanticipatory itと呼ばれ、例えば、It doesn’t matter that Xのような文を基底にしている。(c, d)は時間、天候、距離 などを漠然と指す‘pro’ subject itの例である。また、(e, f)では、発話場面でな んらかの事物を指す指示代名詞 it が省略されたものと見なすことができる。
(g, h)では、省略されたitがいずれにも特定しがたい例である。itは用法の違
いとは無関係に状況省略を受ける。
itにbe動詞が後続すると義務的に省略される。それは典型的には縮約され るからである。しかし、強勢を置いたからといって、⑥でbe動詞が残ること は絶対にない6。
(11) ⑥ (△=it’sの事例) a. △ Good to see you.
b. △ No wonder she’s late.
c. △ No use worrying.
d. △ Odd he won’t help us.
e. △ (A) Shame he’s late.
f. △ Not that I mind.
CGELが挙げている⑥はanticipatory itの状況省略の事例だけである。しかし、
実際は、itの用法やOPは必ずしもこれだけに限らない。また、(b), (c), (d) (e) ではthatも消失しており、副詞化の傾向が認められる7。
次は存在のthereの省略である。
(12) ⑦ (△=thereの事例)
a. △ Ought be some coffee in the pot.
b. △ Must be somebody waiting for you.
c. △ May be some children outside.
d. △ Won’t be anything left for supper.
e. △ Appears to be a big crowd in the hall.
There文でも、OPとしてbe動詞が残る例はない。(a)から(d)は法助動詞があ
る。willの場合、won’tはあるが、単独のwillはない、とCGELは記述して
いる。これはthere willはSLでは、There’llと縮約されるからであろうと思う。
以上見たように、陳述文においては、OPが主語代名詞と縮約可能なOPで あれば義務的に消えてしまう。また、主語を残して、縮約可能な OPだけが 消失することはない。逆に、音声上弱化しない・縮約できないOP、つまり、
法助動詞や否定辞を伴うOPであれば、主語は消失しても、それは残る。
(13)からは、疑問文の事例である。まず、疑問文では、一人称主語代名詞 の消失は原則として存在しない。それは、自分自身について、場面の中で相
b. (He/she/they) Can’t play at all.
he/she/theyは場面からの復元の負荷量は高いが、(9)のように実例としては存
在する。なお、CGEL の例は否定語がついた OPだけだが、必ずしも否定語 と共に使われるわけではない。
(10)は非人称代名詞it の省略で、これは発生頻度が高い。英語では、非人 称代名詞itの使用領域が広いことと場面からの復元の負荷量が低いからであ ろう。⑤には多様なitが混在している。
(10) ⑤ (△=itの事例) a. △ Serves you right.
b. △ Doesn’t matter.
c. △ Looks like rain.
d. △ Must be hot in Panama.
e. △ Seems full.
f. △ makes too much noise.
g. △ Sounds fine to me.
h. △ Won’t be any use.
(a, b)で省略されているのは、CGELではanticipatory itと呼ばれ、例えば、It doesn’t matter that Xのような文を基底にしている。(c, d)は時間、天候、距離 などを漠然と指す‘pro’ subject itの例である。また、(e, f)では、発話場面でな んらかの事物を指す指示代名詞 it が省略されたものと見なすことができる。
(g, h)では、省略されたitがいずれにも特定しがたい例である。itは用法の違
いとは無関係に状況省略を受ける。
itにbe動詞が後続すると義務的に省略される。それは典型的には縮約され るからである。しかし、強勢を置いたからといって、⑥でbe動詞が残ること は絶対にない6。
(11) ⑥ (△=it’sの事例) a. △ Good to see you.
b. △ No wonder she’s late.
c. △ No use worrying.
d. △ Odd he won’t help us.
e. △ (A) Shame he’s late.
f. △ Not that I mind.
CGELが挙げている⑥はanticipatory itの状況省略の事例だけである。しかし、
実際は、itの用法やOPは必ずしもこれだけに限らない。また、(b), (c), (d) (e) ではthatも消失しており、副詞化の傾向が認められる7。
次は存在のthereの省略である。
(12) ⑦ (△=thereの事例)
a. △ Ought be some coffee in the pot.
b. △ Must be somebody waiting for you.
c. △ May be some children outside.
d. △ Won’t be anything left for supper.
e. △ Appears to be a big crowd in the hall.
There文でも、OPとしてbe動詞が残る例はない。(a)から(d)は法助動詞があ
る。willの場合、won’tはあるが、単独のwillはない、とCGELは記述して
いる。これはthere willはSLでは、There’llと縮約されるからであろうと思う。
以上見たように、陳述文においては、OPが主語代名詞と縮約可能なOPで あれば義務的に消えてしまう。また、主語を残して、縮約可能なOP だけが 消失することはない。逆に、音声上弱化しない・縮約できないOP、つまり、
法助動詞や否定辞を伴うOPであれば、主語は消失しても、それは残る。
(13)からは、疑問文の事例である。まず、疑問文では、一人称主語代名詞 の消失は原則として存在しない。それは、自分自身について、場面の中で相
手に聞く事態が想定できないからである8。従って、確認としての聞き返しの ような場合を除いて、存在しない。
⑧は、二人称主語代名詞がOPと同時に消失している例である。
(13) ⑧ (OP+二人称主語の事例) a. (Are you) Happy?
b. (Are you) Afraid of him?
c. (Are you) Hot?
d. (Are you) In trouble?
b. (Do you) Want some?
c. (Are you) Looking for anybody?
d. (Have you) Got any chocolate?
e. (Have you) Ever seen one of these?
状況省略は場面の存在を前提にしており、そこでは常に目の前にyouが存在 している。従って、二人称主語代名詞が省略されるのは、もっとも場面から の復元の負荷量が低いからである。上昇調で発話すれば、命令文との差は明 らかで誤解の発生の余地はない。ただし、音声的に主語と縮約する OPも消 えているので、状況省略形だけを見れば、倒置が起こっているかどうかは判 定できない。
(14) ⑨ OP+三人称主語の事例
a. (Are they) Happy?
b. (Is she) In trouble?
c. (Are they) Torn?
d. “Why can’t he get up? △ Too weak?” (△=is he)
⑨は場面の依存性が強く、もしコンテクストから抜き出すと指示解釈が混乱 してしまう。コンテクストから音調とともに抜き出せば、⑨は、⑧のように、
目の前の人に対する疑問としてふつうは解釈される。
(15) ⑩ OP+itの事例 a. (Is it) Hot?
⑨と同様に、⑩も場面の依存性が強く、適切な文脈がなければ、(a)はAre you hot?の意味で解釈される、とCGELが指摘している。
(16) ⑪ 存在のthereとOPの省略 b. (Is there) Anyone in?
c. (Is there) Any coffee left?
⑪の事例では、OPはisのみである。文脈によっては、⑪はdo you haveといっ た部分が消失しているのか区別がつかない。そのため、後述する本動詞類の 省略に近づいている。
次に、疑問文で主語を残したままOPだけが消失する例である。
(17) ⑫ 疑問文におけるOPの省略
a. (Is) Anything the matter?
b. (Is) Nothing coming? c. (Is) That you, Shirley?
d. (Does) Anybody need a lift?
e. (Has) Joanna done her homework?
f. (Are) You hungry?
g. (Would) You rather I waited?9 h. Where (are) you going? i. What (do) you want?
(a)から(g)では、主語に強勢が置かれるという特徴がある。とくに、(c)のよう
手に聞く事態が想定できないからである8。従って、確認としての聞き返しの ような場合を除いて、存在しない。
⑧は、二人称主語代名詞がOPと同時に消失している例である。
(13) ⑧ (OP+二人称主語の事例) a. (Are you) Happy?
b. (Are you) Afraid of him?
c. (Are you) Hot?
d. (Are you) In trouble?
b. (Do you) Want some?
c. (Are you) Looking for anybody?
d. (Have you) Got any chocolate?
e. (Have you) Ever seen one of these?
状況省略は場面の存在を前提にしており、そこでは常に目の前にyouが存在 している。従って、二人称主語代名詞が省略されるのは、もっとも場面から の復元の負荷量が低いからである。上昇調で発話すれば、命令文との差は明 らかで誤解の発生の余地はない。ただし、音声的に主語と縮約するOP も消 えているので、状況省略形だけを見れば、倒置が起こっているかどうかは判 定できない。
(14) ⑨ OP+三人称主語の事例
a. (Are they) Happy?
b. (Is she) In trouble?
c. (Are they) Torn?
d. “Why can’t he get up? △ Too weak?” (△=is he)
⑨は場面の依存性が強く、もしコンテクストから抜き出すと指示解釈が混乱 してしまう。コンテクストから音調とともに抜き出せば、⑨は、⑧のように、
目の前の人に対する疑問としてふつうは解釈される。
(15) ⑩ OP+itの事例 a. (Is it) Hot?
⑨と同様に、⑩も場面の依存性が強く、適切な文脈がなければ、(a)はAre you hot?の意味で解釈される、とCGELが指摘している。
(16) ⑪ 存在のthereとOPの省略 b. (Is there) Anyone in?
c. (Is there) Any coffee left?
⑪の事例では、OPはisのみである。文脈によっては、⑪はdo you haveといっ た部分が消失しているのか区別がつかない。そのため、後述する本動詞類の 省略に近づいている。
次に、疑問文で主語を残したままOPだけが消失する例である。
(17) ⑫ 疑問文におけるOPの省略
a. (Is) Anything the matter?
b. (Is) Nothing coming?
c. (Is) That you, Shirley?
d. (Does) Anybody need a lift?
e. (Has) Joanna done her homework?
f. (Are) You hungry?
g. (Would) You rather I waited?9 h. Where (are) you going?
i. What (do) you want?
(a)から(g)では、主語に強勢が置かれるという特徴がある。とくに、(c)のよう
な二人称代名詞においても強勢が置かれる。もしyouに強勢がない場合は、
are you全体が省略される。(g)は法助動詞が省略されているので、例外的であ
る。むしろwould ratherやhad betterでは、wouldやhadが弱化を経て消失し た例として見なさせる。
(h)と(i)は、wh-疑問文の事例である。この場合、代名詞主語に強勢はなく、
残った主語は疑問詞と義務的に縮約し、音変化を起こす。この wh-疑問文の 形式は主語はyouに限定される。つまり、what does she want?は、what’s she want となっても、what she want?のようにならない。また、what’s he doing?がwhat
he doingのようになることはない。つまり、二人称以外の代名詞でOPの消失
することはない。従って、(h-i)のような wh-疑問文の形式は、状況省略なの か、ある種の音変化なのか、判別できない。
以上、陳述文と疑問文に分けて、典型的な状況省略を見てきた。特徴をま とめると、次のようになる。
(18) 状況省略の特徴
a. 発話の先頭部において消失する。
b. 消失する要素は主語と縮約が起こる助動詞類までである。
c. 消失する主語は人称代名詞などの機能語である。
e. 省略される主語は、典型的には、二人称代名詞、次に一人称代名詞が 省略され、he/she/theyなどの三人称代名詞の省略は希である。
(a)と(b)から、状況省略は「文から初めての強勢が置かれるところまでが消失 する」ということになる。機能語でも、OP が法助動詞や否定辞があればそ れは省略されない。なぜなら縮約しないからである。(c)と(e)は場面からの復 元負荷量に関係している。発話場面があれば、Iと you の指示対象である話 し手と聞き手が存在する。従って、もっとも復元負荷量が低い。逆に、
he/she/they の指示対象は場面の中で、個々に特定されるべきものなので、復
元負荷量が著しく高くなる。他方、機能語主語のit/thereは、言語構造からの 復元なので復元の負荷量はもともと低い。同様に、CGEL には指摘されてい
ないが、現在形以外の時制は、時制情報の高さから、省略されにくい。つま り、一人称と二人称代名詞及び現在時制は場面からの復元負荷量が低く、そ の他の人称代名詞と時制形式は個別的に特定されなければならない情報を 担っているので、省略されないと言うより、省略されれば曖昧性が増大し、
言葉の情報伝達機能が失われるので、復元の負荷量が著しく高いので希にな る。
さて、CGEL の分類の中から分かるのは、三人称主語が残ったままで OP が省略される形式では、疑問文はあるが陳述文はないことである。これは偶 然のことではなく、状況省略としては存在しない形式である。(19b)のような 省略は、かりにheに強勢を置いたとしても、存在しない形式である。
(19) a. He’s listening to the radio.
b. He △ listening to the radio.
(20) a. Everybody’s happy.
b. Everybody happy.
(21) a. Everybody △ been studying hard.
b. John △ never seen them.
(19b)の形式は上昇調で発話されれば状況省略として存在する。しかし、陳述
文としては許されない。代名詞形ではない(20)や(21)でも同じである。いずれ も、上昇調で発話されて、疑問文としての解釈では、状況省略は可能である が、陳述文としては許されないのである。(b)の形式は状況省略としては存在 しない。意味は分かるが、標準的には、状況省略は起きないのである。従っ て、状況省略は、例えば、弱化といった音声面のみの理由による現象ではない。
しかしながら、(b)の形式は、標準的英語には存在しないが、黒人の英語 (African-American vernacular English/ Ebonics)ではごく普通である。社会言語的 な考察になるが、ラップの影響からは若者英語では、(b)のような形式はどん どん増えてくるかも知れない。だが、現在のところ、まだstigmatizedな印象 がつきまとう10。
な二人称代名詞においても強勢が置かれる。もしyouに強勢がない場合は、
are you全体が省略される。(g)は法助動詞が省略されているので、例外的であ
る。むしろwould ratherやhad betterでは、wouldやhadが弱化を経て消失し た例として見なさせる。
(h)と(i)は、wh-疑問文の事例である。この場合、代名詞主語に強勢はなく、
残った主語は疑問詞と義務的に縮約し、音変化を起こす。この wh-疑問文の 形式は主語はyouに限定される。つまり、what does she want?は、what’s she want となっても、what she want?のようにならない。また、what’s he doing?がwhat
he doingのようになることはない。つまり、二人称以外の代名詞でOPの消失
することはない。従って、(h-i)のような wh-疑問文の形式は、状況省略なの か、ある種の音変化なのか、判別できない。
以上、陳述文と疑問文に分けて、典型的な状況省略を見てきた。特徴をま とめると、次のようになる。
(18) 状況省略の特徴
a. 発話の先頭部において消失する。
b. 消失する要素は主語と縮約が起こる助動詞類までである。
c. 消失する主語は人称代名詞などの機能語である。
e. 省略される主語は、典型的には、二人称代名詞、次に一人称代名詞が 省略され、he/she/theyなどの三人称代名詞の省略は希である。
(a)と(b)から、状況省略は「文から初めての強勢が置かれるところまでが消失 する」ということになる。機能語でも、OP が法助動詞や否定辞があればそ れは省略されない。なぜなら縮約しないからである。(c)と(e)は場面からの復 元負荷量に関係している。発話場面があれば、Iと you の指示対象である話 し手と聞き手が存在する。従って、もっとも復元負荷量が低い。逆に、
he/she/they の指示対象は場面の中で、個々に特定されるべきものなので、復
元負荷量が著しく高くなる。他方、機能語主語のit/thereは、言語構造からの 復元なので復元の負荷量はもともと低い。同様に、CGEL には指摘されてい
ないが、現在形以外の時制は、時制情報の高さから、省略されにくい。つま り、一人称と二人称代名詞及び現在時制は場面からの復元負荷量が低く、そ の他の人称代名詞と時制形式は個別的に特定されなければならない情報を 担っているので、省略されないと言うより、省略されれば曖昧性が増大し、
言葉の情報伝達機能が失われるので、復元の負荷量が著しく高いので希にな る。
さて、CGEL の分類の中から分かるのは、三人称主語が残ったままで OP が省略される形式では、疑問文はあるが陳述文はないことである。これは偶 然のことではなく、状況省略としては存在しない形式である。(19b)のような 省略は、かりにheに強勢を置いたとしても、存在しない形式である。
(19) a. He’s listening to the radio.
b. He △ listening to the radio.
(20) a. Everybody’s happy.
b. Everybody happy.
(21) a. Everybody △ been studying hard.
b. John △ never seen them.
(19b)の形式は上昇調で発話されれば状況省略として存在する。しかし、陳述
文としては許されない。代名詞形ではない(20)や(21)でも同じである。いずれ も、上昇調で発話されて、疑問文としての解釈では、状況省略は可能である が、陳述文としては許されないのである。(b)の形式は状況省略としては存在 しない。意味は分かるが、標準的には、状況省略は起きないのである。従っ て、状況省略は、例えば、弱化といった音声面のみの理由による現象ではない。
しかしながら、(b)の形式は、標準的英語には存在しないが、黒人の英語 (African-American vernacular English/ Ebonics)ではごく普通である。社会言語的 な考察になるが、ラップの影響からは若者英語では、(b)のような形式はどん どん増えてくるかも知れない。だが、現在のところ、まだstigmatizedな印象 がつきまとう10。