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看護婦のバーンアウトとストレス, 対処行動,ソーシャル・サポート1)

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看護婦のバーンアウトとストレス,

対処行動,ソーシャル・サポート1)

黒 田 浩 司

1.はじめに

近年,医療システムにおいては,超近代的な医療機器や機材の導入,医学知 識や技術の絶え間ない発展があり,現場のスタッフは高度な医学知識や技術を 要求されるようになっている。しかしその一方で,複雑化・多様化する技術に 対応するような医療組織体制や労働環境が充分整備されておらず、慢性的な人 手不足も手伝って医療従事者は常に強度なストレスにさらされており,そのメ

ンタルヘルスの危機を訴えている識者も少なくない(例えば,土居1988,稲 岡1989など)。特に,医療現場での決定権が少なく,労働条件においても恵ま れない看護婦は,心身の疲労と感情の枯渇をともなうBurnout(燃えつき症候 群)に陥りやすいといわれる。Burnout状態に陥った看護婦は,患者への接

し方が機械的・表面的となり,心の通った暖かいケアがおこなえなくなってし まう。その結果,看護の質が低下することとなり,患者の自然回復力が阻害さ れてしまうことになるのてある。看護婦のBurnoutに関する実証的研究は日 本でも1984年に稲岡らによって初めておこなわれて以来,数多くおこなわれて

きている。そして,Burnout状態を導きやすい要因としては,看護婦の年齢 や経験年数看護婦個人のパーソナリティやモチベーションの影響,職場の心 理社会要因の影響が指摘されている(稲岡ら1984,井部ら1984,舛森ら1988,

中村・稲岡 1985,中沢・猪下1985,斎藤・稲岡1985,山本ら1987)。

一方,近年の心理社会的ストレスの研究においては,外的なストレスの程度 が直接その人の精神衛生に影響を与えるのではなく,媒介変数としての対処行 動やソーシャル・サポートの効果が重要視されている(Rabkin&Struening 1976,Thoits 1983など)。対処行動とは『ある個人のもつ適応資源を超える,

(2)

あるいは, この能力に負担になるような諸要請を,克服,低減,容認しよう とする認知的行動的努力』と定義され(Perlin&Schooler 1978, Lazarus&

Folkman 1984),①ストレス状況に直接働きかけ,状況を改善しようとする 行動(問題焦点型対処行動あるいは問題解決型対処行動),②ストレス状況に よって引き起こされる感情や苦痛をやわらげたり,コントロールしようとする 行動(緊張緩和型対処行動あるいは感情調整型対処行動),③ストレス状況か

ら引きこもったり,感情を爆発させようとする行動(退行発散型対処行動ある いは回避型対処行動),の3タイプに分類されている(Billings&Moos 1981,

Billings&Moos 1984)。対処行動の効果についてはストレスを多く受けてい る人ほどより多くの対処行動をとっているという図式があり,対処行動が心身 の健康維持に役立っているという研究は少ないが,黒田(1991)などによれば,

バランスのよい対処行動パターン(問題焦点型対処に緊張緩和型対処あるいは 退行発散型対処がともなっている場合)をとっている人は,ストレスが高まっ てもある程度の精神的健康度を維持できることが確かめられている。

また,ソーシャル・サポートとは,『ある人を取り巻く様々な他者(家族,

友人,職場や地域の人々,種々の専門家など)から得られる様々な形の援助』

と定義することができ,そこには物質的・行動的なサポートだけでなく,情緒 的・評価的サポートなどの幅広いサポートが含まれる。ソーシャル・サポート はその人のストレス対応能力を高めると考えられ,ソーシャル・サポートが質 的・量的に豊かであるほど,その人の心身の健康が維持・増進されるという多 くの実証研究がある(例えば,Cassel 1976, Cobb 1976, Gottlieb 1978な

ど)。

看護婦のBurnoutについてもソーシャル・サポートの予防効果が確かめら れている(井部ら1984,山本ら1987)。しかし,対処行動の効果については 近澤(1988)の研究が認められるだけで、その有効性は充分には検討されてい ない。本研究においては看護婦のBurnout症状に対する,ストレス,対処行 動,ソーシャル・サポートの効果を質問紙調査により検討した。対処行動やソー

シャル・サポートがBurnoutを予防する資源となりうるのかどうかを病棟勤 務の看護婦について検討した。

(3)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,       21

対処行動,ソーシャル・サポート

H.方  法

《質問紙の構成》

質問紙は以下の項目によって構成されている。

(1)PinesのBurnout Scale

Pinesが作成し,宗像・椎谷(1986)によって翻訳・修正されたものを用い た。このスケールは20項目により構成されており,調査対象者はBurnout状 態と想定される項目についてそれぞれどれくらいの頻度で感じるかを7段階で 評定した。このスケールは多くの研究によってその信頼性・妥当性が検証され

ている。

(2)MaslachのBurnout Scale

Maslach&Jackson(1981)がヒューマンサービスの専門家のBurnoutを 測定するために作成したものを筆者が翻訳してもちいた。この尺度はもともと は25項目のBurnout状態と想定される項目について,それぞれどのくらいの 頻度と強さで感じるかを7段階で評定するものである。しかし,今回は質問紙 への記入を簡略化して,感じる頻度を,「たびたびあった」,「ときどきあった」,

「あまりなかった」,「まったくなかった」の4段階で評定してもらった。

なお,Maslach&Jackson(1981)は因子分析によって, Burnoutを,情 緒的消耗仕事の達成感,脱人格化,巻き込まれ,の4つのSubscaleに分類

している。

(3)職場ストレス尺度

一般的な病棟勤務の看護婦が日常の業務で経験しそうなストレスを20項目想 定したσ調査対象者は各自の職場においてそれぞれのストレスをどの程度感じ ているかを,「大いに感じてる」,「まあ感じている」,「どちらともいえない」,

「あまり感じていない」,「まったく感じない」,の5段階で回答した。

(4)対処行動チェックリスト

Lazarus&Folkman(1984)の概念にもとづき,宮田(1988)が作成・修 正したもの30項目をもちいた(黒田ら1988,宮田1988,黒田1991)。この尺 度は困難な状況に陥った場合にそれぞれの対処行動を,「する」,「しない」,の 2件法でについて回答を求めた。この30項目は因子分析により,問題焦点型対 処(11項目),緊張緩和型対処(10項目),退行発散型対処(5項目),の3つ のSubscaleに分類されている。

(4)

(5)ソーシャル・サポート尺度

職場で困難な状況に陥った場合に同僚や上司,友人,家族などが助けてくれ るか,支えになってくれるか,など10項目について回答を求めた。

(6)回答者の属性

回答者の,性別,年齢,経験年数,勤務している病棟,資格(正看護婦,准 看護婦,助産婦),職位(婦長,婦長代行,一般看護婦),婚姻状態,住居,な

どについてたずねている。

《調査対象者》

調査対象者となったのは首都圏にある,ある公立の総合病院の病棟勤務の看 護婦(士)全員である。質問紙配布対象者は145名であり,有効回収数は106 名(不備なものはのぞく),有効回収率は73.1%であった。回答者の性比は男 性1名,女性105名であり,全員が正看護婦(士)の資格を有しており,助産 婦として勤務しているものが2名いた。今回はデータの均一性を保つ観点から 男性と助産婦を除いた103名のデータを分析対象とした(質問紙配布対象者の7 1.0%にあたる)。分析対象者は全員が三交替勤務をしており,平均年齢は28.4 歳(標準偏差8.4歳),平均経験年数は7.1年(標準偏差82年)であった。

皿.結  果

1.Burnout Scaleの得点化

PinesのBurnout Scaleは宗像・椎谷(1986)の方法により集計された。

各項目において,心身ともに消耗し,仕事への熱意を喪失している状態につい て回答者が,「まったくない」,「ごくまれにある」,「まれにある」,「ときどき ある」と答えた場合を0点,「しばしばある」,「たいていある」,「いつもある」,

と答えた場合を1点として,各項目の得点を加算合計して・Burnout得点とし た(以下,PB得点と省略)。 PB得点は1点以下であると心身ともに健康であ

り,2〜4点であるとBurnoutの徴候がある状態,5点以上であるとBurn一 out状態であると定義されている。

今回分析対象となった103名のPB得点の平均は4.5点(標準偏差4.1点)であ り,Burnout群と言われる5点以上の回答者は全体の35.9%であった。これ は宗像・椎谷(1986)におけるBurnout状態にある看護婦(士)が31.7%と いう割合よりも高く,今回調査対象となった総合病院においても多くの看護婦

(5)

黒田:

Q緻喫玖號燦黙   23

Table 1.MaslachのBurnout Scaleの因子分析

項目      回転後の因子負荷量

番号      I   H  皿   IV

【第1因子:情緒的消耗】

1.仕事によって精神的に消耗していると感じことが       0.70 0.12 −0.34 0.01

2.仕事が終ると疲れ切ってしまった感じがすることが      0.68 0.18−0.28 0.27

3・

嚥E1沸から仕事に出かけなければならないときに疲労感α71σ・・鰯位・3

4.一日中,人の中で仕事をすることに緊張を感じることが     0.62 0.19−0.15−0.25

5.仕事によってへとへとになってしまうような感じがすることが  0.72 0.25−0.37 025 6.仕事にフラストレートヨンを感じることが      0.60 0.25−0,16−0。03

7.自分は働きすぎていると感じることが      0.51 0.23 −0.22 0.18 8.人の中で働くことによってストレスを感じることが       0.64 −0.02 0.09 −0.10

乳諜齢霧暑論塑璽亜一一廻…立旦む璽・堕

1哩霧騒健赫に感じているかを容易に理解する・とが』器・44』併α17

1L担当の患者にかかわる問題を効果的に処理できること感じることが  一〇.46 0.50 0.05 0.28 12.自分の仕事は患者の生活に好ましい影響を与えていると感じることが一〇.36 0.69 −0.01 0.07

13.元気旺盛であると感じることが      一〇.37 0.60 0。22−0.15

4・

?T農糸スした雰囲筆容易につくりだす・とが一q27・・54α・・3・・6

15.患者のそばで働いたあとは気分が良いと感じることが     一〇26 0.60 0.04 −0.22 16.自分は非常に重要な仕事をしていると感じることが      一〇。03 0.60−0.17 0.13

17・

ラ5鶴}わる儲的な問題をおだやかに遡できていると感窺17α55α12−・・2

一一一

b繭ギ競緬忌「 一  一一一一 一一一 一  一『一一…一一  一一 『一一一『一一一一一一一一一一一一一一一一一一一

18.患者をもののようにあつかってしまったと感じることが    0.25 0.05 0.58 0.35

19・

a竺舞ついてから人に対してよ撫感覚・冷淡になったとα37α・3位48㈱

20.今の仕事は自分を無情・冷淡にしているのではないかと思うことが  0.29 −0.15 0.40 0.70

21・

ノ誤2:鶴讐聾・ている問題・・ついて充分なケアができていα35・⑳q・3㎝・

翌鵠藷繋鶏拠鰻遡塑塑Σ」塑9L墜・里

23.自分は多くの点で患者と以ていると思うことが        0.41 0.16 0.40 −0.47 24.患者の問題にまきこまれているような気がすることが     0.38 0.04 0.53 −0.31 25.担当の患者にうまく対処できていないような感じがすることが  0.45 0.26 0.43−0.24 固有値    5.50 3.09 2.18 1.90

寄与率   21.9%12。4% 8.7% 7.6%累積寄与率    34.3%43.0%50.6%

(6)

Table 2.PinesとMaslachのBurnout得点の相関

PB得点    MB1得点   MB2得点   MB3得点 PR得点      一       一       一       一 MB1得点    0.49艸     一      一      一 MB2得点    0.29料     0.18     −      一 MB3得点    0.24纏     0.29榊    0.12     一

寧*

oく0.01

がBurnout状態にあることが推測される。

MaslachのBurnout Scaleについてはその信頼性,妥当性についての研究 も少なく,今回は評定の方法も変更したので,まず因子分析をおこなった。因 子分析はMaslach&Jackson(1981)にならって主因子法で4因子でおこな

は、Maslach&Jackson(1981)の因子分析による分類にもとついて項目を 並べてある。第1因子と第H因子はMaslach&Jackson(1981)の分類と一 致しており、第皿因子も一項目(項目番号21)を除いてだいたい一致している。

しかし,第IV因子はMaslach&Jackson(1981)とは一致せず,因子の構i造 もいまひとつはっきりしていない。この第IV因子は項目数も3と少ないので,

今回は第皿因子までをSubuscaleとして扱った。 Maslach&Jackson(1981)

の分類にもとついて、「たびたびあった」を4点,「ときどきあった」を3点,

「あまりなかった」を2点,「まったくなかった」を1点として,因子ごとに合 計してSubscale得点とし,情緒的消耗得点(以下, MB1得点と表示),仕事 での達成感のなさ得点(以下,MB2得点と表示)2),脱人格化得点(以下, M B3得点と表示)を算出した。

また,PinesのBurnout得点と, MaslachのBurnout得点の相関をみて みると(Table 2.), PB得点とMB 1得点の相関が0.49とやや高いものの,そ のほかは低く,2つの尺度が測定しているものは必ずしも一致していないこと

がわかる。

2.ストレス,対処行動,ソーシャル・サポートの得点化.

まず,職場ストレス尺度20項目に対して因子分析(主因子法)を行なった。

固有値1.0を基準として5つの因子を採択し,バリマックス回転をおこなった。

(7)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,       25

対処行動,ソーシャル・サポート

Table 3.ストレス項目の因子分析

番号       1  皿  皿  IV  V

【第1因子:人間関係のトスレス】

1.スタッフ間の協力・チームワークが取れない。     0.89 0.20 0.02−0.10 0.05 2.性格の合わないスタッフがいる。      0.87 0.08−0.10−0.0010.08 3.スタッフ間のコミニュケーションがうまく取れない。  0.81 0.22 0.08 0.01 0.01 20.仕事上の悩みや問題,葛藤を気軽に話し合える雰囲気  0.77−0.06 0.16 0.04−0.09

がない。

19.現在の職場では自分の能力が発揮できない。      0.65 0.05 0.30 0.05−0.31

一 一一一一  一一一一   一一一一 一一一一一一}一一一一『一一一一}一一一一一r一一一一一一r一一一一一一一一一}一一一一一一一一一一一一一一一一一一 

【第皿因子:重篤な看護のストレス1

11.心停止などの救急事態が多い。       0.22 0.87 0.03 0.09−0.02 13.重篤な患者・不安定な患者が多い。      0.06 0.83 −0.01 0.14 022 10.死亡する患者が多い。       0.02 0.81 0.12 0.13 −0.07 6.仕事が忙しい。       −0.15 0・44 0・27 0・08 0・66

}一一一一一一一一一一}一一一_一一___一_一一一}r−r一一r−r一一一一 一一一一一一一一一一一一一}一}一}一一一一一一}一一一}}一一一一一一一一一

【第皿因子:職場待遇のストレス】

9.休みが満足にとれない。      −0.02 0.12 0.80 0,15 0.05 5.給料が安い。       0.05 0.10 0.71−0.28 0.07

4.上司や病院上層部に理解がない。      0.39 0.01 0.56 0.04 0.02 18.自分たちの行っている仕事の意義が認められていない。  0.25 −0.12 0.56 022 −0.01 8.スタッフが不足している。       −0.20 0.29 0.54 −0.09 0.46

一一一一一 一一一一 一 一一一一一 一一一一一一一一一    一一一}一一一一一一一一一一r−一一一一 一一一 一一 一一一一一一一一一一一  一一一一一一

【第W因子:能力以上の仕事のトスレス】

15.経験・能力不足を感じる。       0.03 0.04 −0.08 0.90 0.05 16.知識不足を感じる。      −0.11 0.10 0.04 0.82 0.23

12.仕事上の責任が重い(意思決定などを強いられるなど)。 −0.07 0.34 0.11 0.51 0.24

14.慣れない状況(新しい器材,新しいスタッフなど)で  0.24 0,26 0.17 0.51−0.29

仕事をしている。

一一一一一』一一一一一一一一』一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 一㎜皿 一一一一一一一一一一一一一一一一㎜ 一一一一一一一}一 一一一 一一一一一

【第V因子:忙しさのストレス】

17.研修医や看護学生の世話が大変である。        0.05 −0.07−0.09 0.09 0.71

6.仕事が忙しい。       −0.15 0.44 0.27 0.08 0.66 9.休みが満足にとれない。      −0.02 0.12 0.80 0.15 0.55 7.自分の時間が取れない。      0.04 0.06 0.36 0.26 0.55 8.スタッフが不足している。       −0.20 0.29 0.54−0.09 0.46

固有値   4.35 3.48 2.10 1.71 127 寄与率  21.8%17.4%10.5% 8.6% 6.3%

累積寄与率    392%49.7%58.3%64.6%

(8)

因子分析の結果はTable 3.に示されている。第1因子は人間関係のストレス と推測され,「スタッフ間のチームワークが取れない」,「性格のあわないスタッ フがいる」,など5項目から成っている。第H因子は重篤な看護のストレスと 推測され,「心停止などの救急事態が多い」,「重篤な患者が多い」,など4項目 から成っている。第皿因子は職場待遇のストレスと推測され,「休みが満足に 取れない」,「給料が安い」,など5項目から成っている。第IV因子は能力以上 の仕事のストレスと推測され,「仕事上の責任が重い」,「経験・技能不足を感 じる」,など4項目から成っている。第V因子は忙しさのストレスと推測され,

「研修医や看護学生の世話が大変である」,「仕事が忙しい」など5項目から成っ

ている。

それぞれのストレス項目について,「大いに感じている」と回答した場合を 5点,「まあ感じている」と回答した場合を4点,「どちらともいえない」と回 答した場合を3点、「あまり感じていない」と回答した場合を2点,「まった く感じていない」と回答した場合を1点として,5つの因子を看護職場ストレ スの下位尺度としてそれぞれ加算合計して得点化した。また,20項目の合計を 総ストレス得点とした。

また,対処行動は困難な状況に陥った時にそれぞれの行動を「する」と答え た場合を1点,「しない」と答えた場合を0点として,問題焦点型対処,緊張 緩和型対処,退行発散型対処ごとに合計し,得点化した。また,ソーシャル・

サポートは,それぞれの項目でサポートが「ある」と回答した場合を1点,

「ない」あるいは「わからない」と回答した場合を0点として,10項目の合計 をソーシャル・サポート得点とした。

3.回答者の属性とBurnout得点の関係.

婚姻状態,子供の有無,住居と各Burnout得点の関連をTable 4 a.〜Table 4c.に示す。婚姻状態については既婚者と未婚者の間でいずれのBurnout得 点についても目立つ差はなく,t検定による有意差も認められなかった。子供 の有無に関しても,有意差はみとめられなかった。住居に関しては,PB得点 が一人暮らしをしているものが5.5点とやや高く,寮暮らしをしているものが3.

5点とやや低い傾向が認められたが,有意差を見出すにはいたらなかった。

(9)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,       27

対処行動,ソーシャル・サポート

Table 4 a.婚姻状態とBurnout得点の関連

婚 姻 状 態

既  婚     未  婚     全  体n

(22名)      (79名)      (103名)

PB得点       4.2        4.4        4,5

( 4.5 )      ( 3.9 )      ( 4.1 )

MB1得点      16.7       17.4        17.2

( 4.8 )       ( 4.5 )       ( 4㌔5 )

MB2得点      9.3       9.2       9.2

( 2.6 )       ( 3.2 )       ( 3.1 )

MB3得点       6.8        7.5        7.3

( 1.9 )       ( 2.3 )      ( 2.2 )

カッコ内は標準偏差

)配偶者と死別などが2名含まれている

Table 4b.子供の有無とBurnout得点の関連

子 供 の 有 無 い   る       いない

(21名)      (82名)

PB得点       5.0        4.3

( 5.0 )      ( 3.9 )

MB1得点      16,9       17.3

( 4.9 )      ( 4.5 )

MB2得点      9.6       9.1

( 2.5 )       ( 3.2 )

MB3得点      6.6       7.5

( 1.9 )      ( 2.3 )

カッコ内は標準偏差

Table 4 c.住居形態とBurnout得点の関連 住     居

家族と同居  一人暮らし    寮     その他

(48名)    (23名)    (30名)    (2名)

PB得点      4.5     5.5     3,5     一

( 4.4 )       ( 4.7 )        ( 3.1 )

MB1得点     17.5     16.7     17.3

( 4.5 )        ( 5.6 )        ( 3.8 )

MB2得点     9.3     9.6     8.7     一

( 2.4 )        ( 3.7 )         (3.5)

MB3得点     7.2     7.5     7.5     一

(2.1)    (2.6)    (2.2)

カッコ内は標準偏差

(10)

経験年数とBurnout得点の関係をTab15.に示す。 PB得点, MB1得点, MB 2得点は経験年数が1年目の群がもっとも高く,それに次いで2〜3年あるい は経験年数11年以上が高い。経験年数4〜5年,6〜10年の群ではBurnout 得点は相対的に低くなっている。MB3得点は他のBurnout得点と同様に経験 年数1年目の群で最も高いが,経験年数が高くなるに従って低くなっており,

11年以上の群でもっとも低くなっている。

Table 5.経験年数とBurnout得点の関連

経験 年 数

1年目  2〜3年  4〜5年  6〜10年  11年以上

(23名)  (23名)  (21名)  (12名)  (23名)

PB得点     6、4    4.5    2.6    2,8    5.1

( 4.6 )     ( 3.9 )     ( 1.9 )     ( 2.2 )     ( 5.2 )

MB1得点    19.2   17.8   16.5   14.1   17,2

( 4.9 )     ( 4。0 )     ( 3.2 )     ( 5.3 )     ( 4.4 )

MB2得点    10.0    9.7    8.8    8.5    8.7

( 2.4 )     ( 3.7 )      (2.7)      ( 3.8 )     ( 2.9 )

MB3得点     8.3    7.8    7,0    7.0    6.5

( 2.4 )      (2.0)      ( 2.3 )     ( 2.4 )     ( 1.8 )

ヵッコ内は標準偏差

4.ストレス,対処行動,ソーシャル・サポートのBurnoutへの影響.

次に,Burnoutを導くストレス,対処行動,ソーシャル・サポートの要因 を検討するために,各Burnout得点について分析対象の103名を高得点群,中 得点群,低得点群に分類した。PB得点については宗像・椎谷(1986)にもと ついて1点以下のPB低群(27名),2〜4点のPB中群(39名),5点以上の PB高群(37名),の3群に分類した。また, MaslachのScaleによるMB1得点,

MB2得点, MB 3得点は103名がだいたい均等に分かれるように低群,中群,高 群の3群に分類した。MB1得点は低群が15点以下(31名),中群が16〜19点

(42名),高群が20点以上(30名),MB2得点は低群が7点以下(28名),中群 が8〜10点(42点),高群が11点以上(33名),MB3得点は低群が6点以下(4 1名),中群が7〜8点(31名),高群が9点以上(31名),であった。

次に,各Burnout得点の低群,中群,高群ごとに,総ストレス得点,各スト レス得点,各対処行動得点,ソーシャル・サポート得点の平均を算出したのが Table 6a.〜Table 6d.である。この表には得点高群と低群の間の平均値のt検 定の結果も同時に示してある。この表によれば,PB得点については, PB高群

(11)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,       29

対処行動,ソーシャル・サポート

Table 6a.Burnoutの程度とストレス,対処行動,ソーシャル・サポート(PB得点)

Burnoutの程度

PB低群   PB中群   PB高群  高一低群間

(27名)   (39名)   (37名)  のt検定 総ストレス得点        51.7    54.6    57.5   p〈0.01

( 6.9 )     ( 7.4 )     ( 7.4 )

人間関係のストレス得点  11.4    11,4    13.3   有意差なし

( 3.7 )     ( 3.7 )     ( 4.2 )

重篤な看護ストレス得点  12.1    12,8   14,4   p〈0.05

( 3.7 )     ( 3.5 )     ( 3.4 )

職場待遇のストレス得点  18.8    19,6   19.6  有意差なし

( 3.2 )     ( 3.3 )     ( 3.6 )

能力以上の仕事のストレ  13.9   15.1   15.8   p〈0.01

ス得点         (2.5)  (2.5)  (2.9)

忙しさのストレス得点   18.7   19.9   20.8   p〈0.05

( 3.2 )     ( 3.1 )     ( 3.3 )

一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 C一一一一一一一一

問題焦点型対処得点      8.1    7.3    6,8   p〈0.05

( 2.2 )      ( 2.2 )      ( 3.0 )

緊張緩和型対処得点      5。7    5.9    6.5   有意差なし

( 2.3 )      ( 2,3 )      ( 2.3 )

退行発散型対処得点      2.1    2.1    2.4   有意差なし

(1.0)  (1.0)  (1.0)

ソーシャル・サポート得点   8.3    8.5    8.1  有意差なし

( 1.6 )      ( 1.3 )      ( 2.1 )

ヵッコ内は標準偏差

(12)

Table 6bBurnoutの程度とストレス,対処行動,ソーシャル・サポート(MB1得点)

Burnoutの程度

MB1低群  MB1中群  MB1高群  高一低群間

(31名)   (42名)   (30名)  のt検定

総ストレス得点       50.5    54.8    59.7   p〈0.01      (7.4)      (6。7)       (6.0)

人間関係のストレス得点  11.3    12.6    12.3   有意差なし

( 3.1 )     ( 4.4 )     ( 4.0 )

重篤な看護ストレス得点  11.7    13.0    15」   p〈0.01      (3.7)      (3.1)       (3.0)

職場待遇のストレス得点  18.6    19.5    20.2   有意差なし

( 3.2 )      ( 3.4 )      ( 3.1 )

聾離上の仕事のストレ(11:1)(11:1)(11:1)P〈°・°1

忙しさのストレス得点   18.3   19.9   21.6   p〈0.01      (3.1)      (3.1)       (3.6)

一一一一 一一一一一一『一 一一一一一 一一一一一 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一_________________________

問題焦点型対処得点      7,0    7.9    6.9   有意差なし

( 2.1 )      ( 2.3 )      ( 2.7 )

緊張緩和型対処得点      6.5    5.2    6。9   有意差なし

( 2.0 )      ( 2.3 )      ( 2.2 )

退行発散型対処得点      2.0    2.2    2.4   有意差なし

( 1.0 )      ( 1.1 )      ( 0.9 )

ソーシャル・サポート得点   7.8    8.4    8.7   有意差なし

(2.1)  (1.6)  (1.2)

カッコ内は標準偏差

(13)

黒田:看護婦gバーンアウトとストレス,       31   対処行動,ソーシャル・サポート

Table 6c.Burnoutの程度とストレス,対処行動,ソーシャル・サポート(MB2得点)

Burnoutの程度

MB2低群  MB2中群  MB2高群  高一低群間(28名)       (42名)       (33名) のt検定

総ストレス得点       54.6    54.9    55.2   有意差なし

( 8.2 )      ( 7.2 )      ( 7.5 )

人間関係のストレス得点  11.3    12.1    12.9   有意差なし

( 4.4 )      ( 3.8 )      ( 3.6 )

重篤な看護ストレス得点  13.1    12.7    14.0   有意差なし

( 3.8 )      ( 3.2 )      ( 3,6 )

職場待遇のストレス得点  19.3    19.3    19.7   有意差なし

( 3.5 )     ( 3.5 )     ( 2、9 )

聾儲上の仕事のストレ(11:1)( 1:1)(11:1)龍差なし

忙しさのストレス得点   19.5   20.4   19.7  有意差なし

( 3,8 )     ( 2.9 )     ( 3,0 )

}一一皿一一一一 一一『一 一一一一}一一『 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一________________________

問題鯉対鵬点

@ (1:1)(1:1)(1:1)・〈…1

緊張緩和型対処得点      5.6    6.0    6。7   有意差なし

( 2.4 )      ( 2.1 )      ( 2.3 )

退行発散型対処得点      2.2    2.1    2.3   有意差なし

( 0.9 )      ( 1.0 )      ( 1.1 )

ソーシャル サポート得点

i1:1)(1:1)(1:1)・〈°・°1

カッコ内は標準偏差

(14)

Table 6d.Burnoutの程度とストレス,対処行動,ソーシャル・サポート(MB3得点)

Burnoutの程度

MB3低群  MB3中群  MB3高群  高一低群間

(41名)  (31名)  (31名)  のt検定 総ストレス徽

@  (51:1)(51:§)(51:1)P<°・°1

燗関係のストレス繍 i1P:1)(11:1)(11:8)有意差なし

重篤な看護ストレス徽 i1P:1)(11:1)(11:1)P〈°・°1

職場待遇のストレス徽 i1P:1)(11:1)(21:1)P〈°・°1

襲礁上の仕事のストレ(14.8        14.5 2.7 )     ( 2.8)(11:1)有意差なし

忙しさのストレス得点

i1P:1)(21:8)(21:1)有意差なし

_______________________一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一}一一}一一一一 一一一一『一一一一一一一一一一}一一

問題鯨型対処得点 @ (1:1)(1:1)(1:1)有意差なし

緊張緩和型対処得点

@ (1:1)(1:1)(1:1)有意差なし

退行発散型対処得点

@ (1:1)(1:1)(1:1)Pく゜・°1

ソーシャル・サポート得点   8.3    8.5    8.3   有意差なし

( 1.5 )     ( 1.4 )     ( 2.2 )

ヵッコ内は標準偏差

がPB低群よりも有意に総ストレス得点,重篤な看護ストレス得点,能力以上 の仕事のストレス得点,忙しさのストレス得点,が高く,問題焦点型対処得点 が有意に低かった。次に,MB1得点については,MB1高群が, MB1低群よりも,

有意に総ストレス得点,重篤な看護ストレス得点,能力以上の仕事のストレス 得点,忙しさのストレス得点が高かった。MB2得点については, MB2高群が,

MB2低群よりも有意に,問題焦点型対処得点,ソーシャル・サポート得点が 低かった。MB3得点については, MB3高群が, MB3低群よりも有意に総スト

レス得点,重篤な看護ストレス得点,職場待遇のストレス得点,退行発散型対 処得点が高かった。

(15)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,       33

対処行動,ソーシャル・サポート

】V.考  察

《Burnoutを導く要因について》

本研究ではBurnout状態を導く要因として,経験年数ストレス,対処行動,

ソーシャル・サポートの効果が認められた。まず、経験年数については,PB 得点,MB1得点, MB2得点, MB3得点のいずれもが,経験年数1年目の看護 婦に得点が最も高く,MB3得点以外の3つのBurnout得点はそれに続いて2〜

3年の看護婦,11年以上の看護婦に高いBurnoutの傾向が認められた。 MB3得 点は経験年数を経るにしたがって値が低くなっている。Burnoutと経験年数の 関連については,経験年数5〜10年の中堅の看護婦にBurnoutの傾向が高いと いう研究が多く(稲岡ら1984,中村・稲岡1985,斎藤・稲岡1985,舛森ら1988),

経験年数が3年以下の群に相対的にBurnoutが高いという研究は見当たらない。

むしろ,従来の研究では経験年数3年以下はBurnoutが低い傾向があり,斎藤・

稲岡(1985)のICU看護婦に関する研究だけが,経験年数5〜10年の看護婦に 続いて2年以下の看護婦にBurnoutが多いという結果を得ている。この結果の 違いは一概には論じられないが,調査対象となった病院の特徴として,新人看 護婦にとってのストレスが強大であるのかもしれない。今回,MB 3得点だけ が経験年数を経るにしたがって低くなった。MB 3得点は脱人格化の得点であ り,ケアが無感情・冷淡になってしまう傾向であるが,この傾向は看護婦とし て経験を積むことにより,患者に対して適切に応対ができるという自信が湧く

という現象によるのかもしれない。

また,PB得点, MB 1得点, MB 3得点に関しては, Burnout得点が高群と 低群の間で総ストレス得点に有意差が認められ,Burnout状態にある看護婦の 方が多くのストレスを感じていることがわかったが,下位尺度ごとに見てみる と,どんなストレスが影響しているかについては,Burnout Scaleによって若 干異なる。総ストレス得点について有意差の見られた3つのBurnout Scaleす べてに関係していたのは,重篤な看護ストレスであり,重篤な患者が多かった

り,救急事態が多かったり,死亡する患者が多いというストレスは看護婦を Burnoutに導きやすいといえる。また,職場待遇のストレスがMB 3得点高群 で高く,能力以上の仕事のストレスと忙しさのストレスがPB得点高群, MB 1 高群で高かった。人間関係のストレスはいずれのScaleにおいても高群と低群 の間に有意差が認められなかった。

(16)

過去の研究においては看護婦をBurnoutに導くストレス要因としては,「病 院の働きにくい組織構造」,「設備・機器の不備」,「規則や規律の問題」,といっ た物理的な要因よりも,職場における心理的・社会的な要因の方が効果が大き いと指摘されてきている(稲岡ら1984,中村・稲岡1985,斎藤・稲岡1985,舛 森ら1988)。しかし,本研究においてはもっとも社会心理的な要因と思われる 人間関係のストレスはBurnoutの程度と関係が認められなかった。 Burnout関 連が強いのは重篤な看護のストレスとか、忙しさのストレスといった,職場の 慢性的な要因であった。

次にBurnoutと対処行動の関連を見てみると,問題焦点型対処得点がPB高 群とPB低群, MB2高群とMB2低群の間で有意差があり, Burnout状態に陥っ ていない看護i婦ほど問題焦点型対処を多く取っている。また,退行発散型対処 得点がMB3低群の間で有意差があり, Burnoutに陥っている看護婦の方が退行 発散型対処を多く取っている。つまり,問題焦点型対処はBurnoutを抑制し,

退行発散型対処はBurnoutを促進すると言える。対処行動をパーソナリティの 一側面ようにとらえて本研究の結果を解釈すると,退行発散型対処をとりやす い看護婦に比べて問題焦点型対処をとりやすい看護婦の方がBurnoutに陥りに

くく,精神的に健康であるということになる。

問題焦点型対処がBurnoutを抑制するという結果は先行研究と若干異なって いる。近澤(1988)は問題解決コーピング(本研究の問題焦点型対処)はBur noutとは関連せず,感情調整コーピング(本研究の緊張緩和型対処)および 回避的コーピング(本研究の退行発散型対処)がBurnoutを促進するという結 果を得ている。また,一般の会社員の精神衛生に関する宮田(1988),黒田ら

(1988),黒田(1991)においても問題焦点型対処は精神的不健康とは関連が低 く,緊張緩和型対処および退行発散型対処と精神的不健康との間に有意な正の 相関関係が認められている。本研究と先行研究の相違について,第一に考えら れるのはストレスの強度の関与である。黒田(1991)は本研究と同一の対処行 動の尺度をもちいているが、この研究の111名の女子会社員の平均対処行動数 は,問題焦点型対処6。6(標準偏差2.3),緊張緩和型対処2.9(標準偏差2.3),

退行発散型対処1.5(標準偏差1.0)であるのに対して,本研究では問題焦点型 対処が7.3(標準偏差2。5),緊張緩和型対処6.1(標準偏差2.3),退行発散型対 処2.2(標準偏差1.0)といずれの得点も高い。そして経験しているストレスが 多ければ,それだけとっている対処行動も多いということが当然想定される。

(17)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,       35   対処行動,ソーシャル・サポート

OLと看護婦の経験しているストレスを比べれば,当然看護婦の方が強度のス トレスにさらされていると想定され,とっている対処行動の多さはそのことを 反映していると思われる。本研究においても対処行動チェックリストにおいて

「する」という回答をされた項目の総数と総ストレス得点の間には0.41の相関 が認められている。そして黒田ら(1988),黒田(1991)で示されたように経 験しているストレスの強度が低い場合にはどのような対処行動をとるかによっ て精神的健康度は大きく変わらないが,ストレスの強度が大きい場合には,問 題焦点型対処を中心とするバランスの良い対処行動をとっている群の方が精神 的健康を維持できることが示されている。今回の調査対象となった病院はスト レス度が相当高いと推測され,それゆえ,問題焦点型対処のBurnout抑制効果 が示されたのではないだろうか。このことは今回の調査対象者のうち宗像・椎 谷(1986)の基準でBurnout状態にあると考えられる看護婦の割合が宗像・椎 谷(1986)よりも多いことからも示唆される。また,Burnoutを導くストレス 要因として人間関係などの社会心理的ストレス要因の効果が認められないもの,

このストレス・レベルが関係しているのがもしれない。

また,近澤(1988)の研究と本研究の対処行動の効果の違いとして考えられ るのは,もちいている問題焦点対処の項目の違いである。Perlin&Schooler

(1978)は問題焦点型対処行動を,④直接的行動によって状況を修正しようと いう反応(本研究にもちいられた問題焦点型対処では例えば,「問題解決のた めに当事者や関係者と話し合ってみる」,「他のことで気が散らないようにして その問題に集中する」)と,⑧問題となっている状況のとらえ方を変えようとす る行動(同じく,「この苦労を味あうことは,自分の成長に役立つことだと自 分にいいきかせる」,「物事の明るい面を見つけようとする」),に分類している。

本研究における問題焦点型対処の中には④と③の両方のタイプの対処行動が含 まれているが,近澤(1988)には④のタイプのものしか含まれていない。問題 状況のとらえ方を変えるとか,問題状況の肯定的な面を見つけるような対処は 問題状況が直接行動による修正が不可能あるいは困難な場合に効果的な対処と 考えられ,そういった項目が含まれていないために近澤(1988)では問題焦点 対処のBurnout抑制効果があらわらなかった可能性もあるであろう。

ソーシャル・サポートはMB2得点についてのみ, MB2高群とMB2低群の間 で有意差があり,Burnout群の方がソーシャル・サポートが少なく,豊かなソー シャル・サポートがBurnoutを抑制する効果があることが示唆された。

(18)

《4つのBurnout得点の相違について》

本研究において日本のBurnout研究において頻繁にもちいられているPines のBurnout ScaleとMaslachによるBurnout Scaleをもちいた。 Burnoutの程度 を規定する要因として経験年数の効果はMB3得点が経験11年以上の群で低く なることを除けば,いずれのScaleについても同じように影響していた。しか し,ストレス,対処行動ソーシャルサポートの効果は,Scaleによってその 効果が若干異なっていた。PinesのPB得点は,ストレス(重篤な看護のストレ ス,能力以上の仕事のストレス,忙しさのストレス)を多く感じており,問題 焦点型対処をあまりとっていない看護婦に高かった。MB 1得点は,ストレス

(重篤な看護のストレス,能力以上のストレス,忙しさのストレス)を多く感 じている看護婦に高かった。MB2得点は,ストレスの程度はあまり影響せず,

問題焦点型対処をあまりとらず,ソーシャルサポートが少ない看護婦に高かっ た。また,MB3得点は,ストレス(重篤な看護のストレス,職場待遇のスト レス)を多く感じており,退行発散型対処を多くとっている看護婦に高い傾向

があった。

この4つのBurnout得点への影響の相違はそれぞれのBurnout得点があらし ている側面の違いであろう。まず,MB1得点は情緒的な消耗度をあらわして おり,慢性的で膨大なストレス(重篤な看護,能力以上の仕事,忙しさ)を経 験することによって,看護婦は情緒的にすり切れてしまうと言える。また,M B2得点は仕事に対する達成感や満足感を失っている状態をあらわしており,

問題焦点型対処をあまり取っていなかったり,周囲からのサポートが少ないこ とで看護婦は仕事に生きがいを失いやすいと言える。また,MB3得点は無感 情・冷淡になってしまって,ケアが機械的になってしまう程度をあらわしてお り,膨大なストレス(重篤な看護,職場待遇の悪さ)にさらわれて,退行発散 型対処をとりやすいことで,看護婦は無感情で機械的になりやすいと言えよう。

MB3得点において経験年数が高まるにしたがって得点が下がるのは,経験を 積むことによって適切な患者への対応の仕方を身につき,看護婦としての自信 がついてくるためではないかと推測される。PB得点についてはその項目内容 を見ると,MB1, MB2, MB3のすべての側面が含まれており,3つの得点の 総和的な効果があらわれているのではないかと推測される。

(19)

黒田:看護婦のバーンアウトとストレス,        37 対処行動,ソーシャル・サポート

V.最後に

Burnoutという状態はある意味でSeligman(1975)め言う学習された無力感 の状態ということができるであろう。Burnout状態に陥った看護婦というのは 自らの仕事の意義や職業についての生き甲斐を見つけることができず,絶望感 や無力感を学習してしまっているといえる。本研究の結果から推測するに経験 年数3年以下の看護婦は,就職して一度に体験する業務の多さや責任の重さ,

自分の能力の限界,理想と現実のギャップにより無力さを学習してしまい,経 験年数11年以上の看護婦はベテランの域にはいり,増える業務,変わらない待 遇の悪さや,自らの仕事の将来性について無力さを学習しているのではないか。

これは,統制不可能性の知覚と看護婦のBurnoutの関連を検討したGlass,

Mcknight&Valdimarsdottir(1993)の研究からも示唆されであろう。そう いった状況の中で,問題焦点型対処,特に問題状況とらえ方を変え,状況の肯 定的な面を見出し,看護婦自身が看護の仕事の意義や生き甲斐を見い出し続け ることのできる対処行動をとることは無力感を学習することを予防する効果が あるであろう。また,豊かなソーシャル・サポートの存在は看護婦が自らの仕 事の意義を周囲から評価されて,認めてもらえる機会をえる資源となり,無力 感を学習することを予防する効果があるのだろう。

本研究の結果,看護婦の職場の強度なストレスは看護婦をBurnoutに陥らせ やすく,問題点型対処行動とソーシャル・サポートはBurnoutを予防する効果 があることが推測された。この結果を看護婦の精神衛生の向上に役立てるとす れば,看護職場の膨大なストレスを減らすことは難しいであろうが,対処行動 やソーシャル・サポートについては応用が比較的可能であろう。例えば,看護 婦が自らの業務の中に意義や生き甲斐を見い出し続けるような対処行動を促進 する研修の場や,そういった対処行動を促進しあうグループを作ることで看護 婦の精神衛生を向上させる可能性があるであろう。また,看護組織の中にサポー

ト・システムとして機能するような組織をあらたに作ることや,既存のシステ ムの中に存在するサポート・システム機能を強化することができるのではない か。筆者の経験からすると,看護婦のさまざまなカンファレンスや研修という のはどちらかと言うと生真面目で,自分自身の欠点や弱点に焦点をあてるもの が多いように思われる。しかし,そのような動きは,自分自身の否定的な側面 ばかりを深く掘り下げることになり,看護婦のアイデンティティに負の強化を

(20)

与えていることにもなるのではないか。看護婦が自分の仕事に意義や生き甲斐 をもてるような,看護婦がアイデンティティに正の強化を受け続けることがで きるような職場のステムや研修のあり方を考慮する時期が来ているのではない

だろうか。

【注】

D 本研究は国立千葉病院精神神経科看護婦,西尾桂子との共同研究の一部を追加分

析したものである。この共同研究は西尾(1994)によりまとめられている。また,

本研究を実施する際して多大なる協力を得た国立千葉病院精神神経科の冨永格医長 ならび北二病棟のスタッフに深謝する。

2)Maslach&Jackson(1981)においてこのSubscaleはそのまま得点化されてい るが,ここでは点数が高いほどBurnoutの程度が強いということを表すように,す

べての項目を逆転項目として扱った。

【引 用 文 献】

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(5)Cobb, S.:Social support as a mediater of life stress. Psychosomatic Medicine,38, p300−314,1976.

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(21)

黒田:

チ窺㌣写1鰍掲   39

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