消費者行動にもとづく商品類型論 : その歴史的展 望
その他のタイトル A Historical Review of the Classification of Consumer Goods
著者 佐々木 土師二
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 1
号 1
ページ 78‑105
発行年 1970‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00023240
消費者行動にもとづく商品類型論
—その歴史的展望―
目 次
I序
II
消費者行動にもとづく商品類型論の展開 1 . 商品類型論の発端
2.
商品類型の記述的定義
3.商品分類の操作的基準の追求
4.購買意思決定過程にもとづく商品類型
5. •伝統的 商品類型論の帰結
m
商品のマーケティング特徴による類型論
w
結 論
文 献
I
序
佐 々 木 土 師 ニ
商品購買における消費者行動の特徴的な差異は,各種の商品を分類し,類型化する試みのなか で重要な手がかりとされている。商品は,その物理的あるいは化学的特性によって分類すること ができるし,また,商品の用途を基準にして分類することも可能である。そして,それぞれの分 類は採用される基準の精度やレベルに応じて,構成される類型の数を異にする。いうまでもな く,商品購買における種々の行動的特徴にもとづく類型化も,その細部に目を向けるならば,多 様な現実を反映して容易には整理できない混沌状態におち入るものと思われる。しかし他方にお いて,商品の供給・販売条件は比較的限定されており,また供給・販売条件と消費者/購買者と の関係には空間的,時間的,経済的な制約が課せられているところから,ある程度の単純構造を その類型化に期待することも可能である。
われわれが,ここで 商品類型論 と呼んでいるものは,商品選択における「いつ」「どこで」
「どんな方法で」「なぜ」などの諸側面を中心とする消費者/購買者行動を分類の基礎として,多種 多様な商品(消費者用品)をできるだけ単純構造を有する類型のなかに位置づけようとする,一連 の論議を指している。そして,とくに, われわれは “最寄り品(便益品)• 買い回り品 専 門品 という商品類型を構成するために行なわれている論議に,主たる関心を向けることにした
‑ 7 8 ‑
い 。
このような商品類型論の発端を,われわれは,今世紀の初め,今から
50余年前に求めることが できる。そして,その後の論議の進展について,
(i)分類の基礎としていかなる消費者/購買者 行動に関心を向けているか,
(ii)どのような方法で類型特徴を規定しているか,
(iii)構成され た類型相互のあいだの関連性をどのように把握しているか,
(iv)類型論の基本的な立場はどこにあるか,などという観点からこれを整理することができるであろう。
われわれは,商品類型論の進展をこのような観点から分析するとき,総括的にいって,それが 科学的心理学の研究課題としての濃度を次第に強めてきている,ということができると考える。
そして,それは,今や商品を分類するための論議であるだけでなく,消費者行動分析そのものと して新しい意義をもつに到っている。
このような認識に立って,本稿は,商品類型論の展開を文献史的に考察するものである。
]I
消 費 者 行 動 に も と づ く 商 品 類 型 論 の 展 開
1.
商品類型論の発端
その出発点における商品類型論では,分類の基礎となる消費者行動の諸側面を把握するために 多大の努力が傾注され,類型間の特徴的な差異が詳細に記述された。
( 1 ) 最寄り品と買い回り品
—- Parlinの2分類ー一
商品の購買行動において,男性と女性のあいだには明らかな差異があるという指摘をすること によって,
CharlesCoolidge Parlin (1915)は商品類型化のための彼の試みを出発させている。
その差異について,彼は,彼の妻とのあいだで体験した小さな出来事を総括し次のように述べて いる。
私が何軒かの店の品物を見ることによって自分の選択の知恵をまず満足させるということをせずに重要な 買い物をすることがあるということは,私の妻にとって考えられなかったことであるし, また私にとっ て,その店で買うつもりは全然ないのに商品を見せるように店の人に求めることは,どうも公正でないよう にみえた。
(1915,p. 297‑8)Parlinによれば,男性を購買行動に駆り立てるのは,便益性 (convenience),
衝動
(impulse)習慣
(custom),プランド
(brand)という
4要因であり,これらの影響のもとで行なわれる購買 行動を部分的に修正するために,価格
(price)が作用する。したがって,男性は,購入する商品 を決定するまえに,何軒かの店のあいだでその商品価値を比較するための 買い回り行動
(shop‑ping)•
をほとんど行なわない,というのである。
他方,
Parlinは,女性の購買行動には,はっきり区分できる 2つのクイプを認める。それは 最寄り品
(conveniencegoods)•と 買い回り品
(shoppinglines)•とに向けられる行動であ る。最寄り品は,雑貨,子供用靴下,低額の木綿生地などを含み,女性のさまざまな購買対象の なかで比較的下位
(lowerend)に置かれるものである。このような最寄り品に対する購買行動
‑79‑
関西大学「社会学部紀要」第
1巻第
1号
は,男性の購買行動を促した
4要因_便益性,衝動,習慣,プランドーーに影響され,商品価 値の比較はほとんど行なわれない。もうひとつの商品タイプである買い回り品は,コート,スー ッ,じゅうたん,婦人帽子,高級靴下,高級下着など女性の購買対象のなかで比較的上位
(upper end)に置かれるものから成っており,欲しいと思ったときには彼女の頭の中の買い物控え
に忘れることのない記録としてとどめておき,繁華街へ出かける機会がくるまでそれを買うのを 延期することができるような商品である。そして,それを買う場合には,品質・価格・スクイル など商品価値の比較をすることを望む商品である。
つまり
Parlinは商品を 最寄り品 と 買い回り品 に分類した。しかし,この商品類型に 対応した購買行動は女性にのみ認められ,男性にとっては商品はすべて最寄り品的であると考え た 。
消費者の購買行動や購買習慣にみられる一般的な特徴にもとづいて商品分類を行なおうとする 試みは, 一般的には,
Parlinにおいて最初であると考えられている。 しかし, 上述のような 形で行なわれた
Parlinの商品分類をもって商品類型論の出発点とすることについては,疑問の 余地がないわけではない。
Edward H. Gardner (1945)
は,その
30年前に
Parlinがその職にあった
CurtisPublishing Companyの調査責任者である
DonaldM. Hobaitに問い合わせた手紙の返事を紹介している が,それは,次のような内容である:
(i)最寄り品,買い回り品という表現を
Parlinが使う以 前に誰かが使用したということもありうる,
(ii)Parlinの仕事に関する限り, それが初めて印 刷された形で表わされているのは
1912年
10月付の調査報告書である,
(iii)その報告書で「女性 の買い物の分類」 という表題で最寄り品, 緊急品
(emergencygoods) ,買い回り品という
3類 型の特徴が説明されている。
そして,
Hobaitの手紙は,
Parlinによる
1912年の調査報告書には商品の
3類型について次 のような記述がみられる,と述べている。
最寄り品とは,グロッサリー,エプロン用ギンガム生地,子供用靴下のように日常的に購入する品目で,
一般に,価値が小さいものとか,すぐに使うのに必要なものである。これらの商品は,かなりの租度,価値 の比較をせずに最も便利なところで買われ,それが買い回りの問題としてよりも便益性の問題として買われ
るという事実が………〔中略)………。
緊急品は.なんらかの予期しない出来事によってすぐに必要となるような医薬品から成っている。………
〔中略〕……•••。
買い回り品は,スーツ, ドレス,高級下着,あらゆる種類の高級衣類などのように,考慮を要するほど重 要で,延期することができるような買い物のすべてを含んでいる。女性は,これらのものを,彼女の頭の中 の決して忘れることがない買い物控えにリストしており,次の機会に彼女が街へ行った折には,品目がひと つずつ検討され,価値が比較され,支出額に対してもっとも高い価値を得るために,真険な努力がなされる。
(1945, p. 275‑6)
‑80‑
つまり
Hobaitゃ
Gardnerは,最寄り品や買い回り品という商品類型は,
Parlinの創作に よるものではなく,当時すでに使用されていた分類法を
Parlinが採用した可能性がある,とい うのである。
しかし,われわれにとって「誰が商品類型論の創始者であるか」ということを解明するより も,消費者行動を基礎にした商品分類がどのような根拠によって行なわれているかを知ることの 方が重要であろう。すくなくとも
Parlinらによる商品類型に関する論議の端初においては,
買い回り行動(買い探し行動)の有無 ということを中心として,それが生じる原因ー一例えば
商品価値の問題—ゃ,その表われ方一~ つま
り 購買の仕方 が中心であって 用途 はとりあげられなかった, といえるであろう。 緊急 品 が
Parlin(1915)によって独立した類型となされていないのは,このためであろう。このよ
うな方向は,その後の商品類型論の展開のなかに一貫して流れているといえる。
( 2 )
Copelandによる
3類型 —最寄り品・買い回り品・専門品一一
商品分類の論議の進展を歴史的にふりかえってみるとき,
MelvinThomas Copelandが果し た大きな役割りについては誰もがそれを認めなければならない。彼は,
Parlinによる
2類型に 甚礎をおきつつ,それを発展させて
3類型を提唱した。そして,その
3類型は,マーケティング 活動のすべての分野において,とくに価格・販売・流通に関する諸問題を分析し具体化するため の基礎となる概念として,実際的有用性をもつとともに,・マーケティングの教科書にも必らず登 場してその理論的価値を高める存在となっている。
Copeland (1924)
は,その第
1次的な商品分類を,小売流通のために販売される消費者用品あ るいは消費財
(consumers'goods)と産業的目的のために販売される産業用品あるいは業務用品
(industrial goods)とのあいだで行ない, 産業用品に対比させたときの消費者用品の行動的特徴 として,
Ci)購入者の数がきわめて多い,
(ii)それを購入する個々の消費者は彼の個人的欲求 や家族の欲求を満たすことを求めている,
(iii)小さな単位に分割され, 個人的利用のためにそ れを購入する個々の消費者に小売りできるような仕方で流通されている,などを挙げている。
次に,第
2次的商品分類として,それぞれがさらに下位分類を構成するが,消費者用品は消費 者の愛顧動機
(patronagemotives)や購買習慣
(buyinghabit)によって,それが行なわれる。
具体的には, 販売されている商品が消費者によって購入される場合,
(i)買い回り行動を伴っているか,
(ii)最寄りの場所で買われるか, 中心的商業地域で買われるか,
(iii)商品のプラ ンドに対する態度はどうか,などという行動的特徴にもとづいて, 最寄り品 買い回り品
専門品
(specialtygoods)•という
3類型に分類される, というのが
Copelandの主張であ る 。
そこで
Copeland(1923, 1624)の説明にしたがって, この
3商品類型の諸特徽を一ーとくに消
費者行動における諸特徴に限定して—総括的に列挙すると,表 1 に示すように,きわめて多岐
にわたっている。そして,このような
3類型の特徴を,
Copelandは次のように要約的に表現す
関西大学『社会学部紀要」第 1 巻第 1 号 表
1 Copeland (1923, 1924)による商品類型とその特徴
最 寄 り 品 買 い 回 り 品 専 門 品 習慣的に買い,他と比較し 価格,品質,スタイルなど 特別の魅力をもつ商品を他 商品の買い方 ない。代理品でも十分間に をいろいろと比較(買い回 と比較せずに買う。それに ム 口 つ ・ 。 り)したうえで買うものを 固執性をもち,代りのもの
決める。 を受け入れない。
欲求が生じてから 欲求が生じると,すぐにそ 欲求を感じてから購入する 商品に対する特別の欲求が 購入するまでの時 れを満たそうとして購入す までにしばらく時間があ 生じ,それを買うことを決 間 る 。 る。欲求をすぐに満たすこ 定してから,購入までにし
とはさほど重要ではない。 ばらく時間がある。
商品についての購 それを熟知している。 欲しい商品の正確な特性 あらかじめ買うものの性質 入前の知識 は,買い回り前には明確に をよく知っており,決めて
なっていない。 いる。
容易に行くことができる店 特にショッピング・センタ 買うことをあらかじめ決め で買う。特定品を入手する ‑ (繁華街)へ買いに行 ている特定の店で買う。そ 購入先(店) ために遠くの店へ行くこと く。何軒かの店で比較した の店へ行くためには特別の はない。 うえで買うものを決める。 努力をしたり,不便な経験
さえする。
近くて,買いに行くのに便 多様な品揃えを用意してい 品質やサービスについて特 店の愛顧動機 利なこと。 る。サービスが良いこと。 に強い印象を与え,信頼感
をもっていること。
主たる買い手
I Iほとんど女性。
1男女を問わない。
プランド・ロイア
1ない
J
レプイ
゜ I I非常に強い。
商品の価格
I一般に安価。
I I一般に高価。
購 入 頻 度
I一般に高く,反復される。
1比較的小さい。
I一般に稀であるが,商品に よる差が大きい。
缶入りスープ,たばこ,電 ギンガム生地,女性用手 男性用洋服,男性用靴,高 球,菓子,クラッカー,安 袋,陶器 級家具,真空掃除機,蓄音 典型的商品 全カミソリ刃,靴墨,洗濯 機。一般に耐久的商品であ
石けん,歯みがき,大衆雑 る 。
誌
ることによって,各商品類型を規定している。
最寄り品とは,簡単に行くことができる店で習慣的に買われる商品である。その実例は,缶入りスープ,
たばこ,電球,安全かみそり刃,靴墨,洗濯石けん,クラッカー,大衆雑誌,菓子,歯磨きなどである。
買い回り品とは,消費者が価格・品質・スタイルを購入の時点で比較したいと思っている商品である。消 費者は,通常,この比較を何軒かの店で行ないたいと思っている。典型的な買い回り品は,ギンガム生地,
女性用手袋,陶器類,服飾品などである。典型的な買い回り用小売店は百貨店である。買い回り品はほとん ど女性によって購入され,通常,このような商品を買う目的でショッビング・センターヘの買い物旅行
(trip)がなされる。
‑82‑
専門品は,それが売られている店を訪問するための特別な努力を消費者に払わせ,買い回りをせずに購入 するように誘導する価格以外のなんらかの魅力をそなえている商品である。専門品の実例をあげれば,紳 士用衣類,紳士用靴,高級家具,真空掃除機,蓄音機,乗用車などである。
(1924,p. 14)以上のように,
Copelandの類型論は,最寄り品,買い回り品については
Parlin説を受けつ いでいるが,それが男女を問わず共通にみられる購買行動を基礎にしているという点で普遍的で あり,専門品に独自のカテゴリイを与えているという点で発展的である。しかも,さらに発展的 な点は, 3類型の関係について加えられている若干の検討にみることができよう。
商品の類型化を試みる最初の段階に位置するものとして, 当然のことではあるが,
Parlinは 各類型の目立った特徴を明らかにすることに重点をおいている。したがって,最寄り品と買い回
り品の独自性を強調する姿勢でその主張を進めている。
女性の購買は.ふたつの明瞭に分けられる類型
(twodistinct classes)について行なわれる。そこで,
製造業者の立場に立てば,これらふたつの類型のうちのどちらを販売しようとするかについて,マーチャン ダイジングの方法でまったく違いが生じる。
(1915, p. 268)Copeland
も「小売店を通して販売される商品の大多数は主要
3類型のどれかひとつに入れる ことができ,この分類にもとづいてマーケティングの方法が選択される」という基本的な立場か ら,各類型の特徴や差異を詳しく分析しているが,それとともに,
3類型の特徴を重複的にそな えている商品も多いことを強調している。
実際上は,あらゆる購買において,買い回り品,最寄り品,専門品などの購買にみられるいくつかの要素 が影響を与えている
(1924, p.15)。
ある商品の場合には.
3つのカテゴリイのなかのひとつ以上に入る品目がみられる
(1923, p. 285)。 そして,このような境界的な位置にある商品は,商品が非常に多種多様である場合(例えば靴),
従来ある類型に属すると思われていたものをマーケティング政策によって他の類型に変えようと・
する場合(例えば女性既製服を買い回り品から専門品にする試みのような場合)などに,現われることを 指摘している。
2.
商品類型の記述的定義
Parlin
から
Copelandに受けつがれた商品類型論の立場は,商品の購買の仕方にみられる差 異を分析し,その差異をもたらす購買動機を検討するとともに,その差異に対応するようなマー チャンダイジングあるいはディストリビューションの諸方策を指摘することを通して, 多面的 に,能弁に,各商品類型の特徴を描写するというものであった。したがって,その類型論の実際 的価値はきわめて高いものであっただろうことは,容易に推察されるのである。
これらの論議を踏まえて,次に,商品類型を定義づけようとする動きがみられる。つまり商品
の多面的な特徴のなかで,どの特徴をもっとも重視し,商品間の分類を行なう基準的な働きをす
るものとして評価するか,という 論議の整理 への指向がみられるのである。
関西大学「社会学部紀要』第 1 巻第 1 号
( l l
NAMT定 義
Copeland
によって提唱された商品(消費者用品)の
3分類は,
Copeland自身も一時的に参加 した
NationalAssociation of Marketing Teachers(NAMT) の定義委員会
(Committeeon Definition)によって, そのまま支持されている。 すなわち,この
NAMT定 義
(1935)は 消 費者用品 について,次のように述べている。
個々の最終的消費者による使用に向けられた商品で,それ以上の商業的な加工をほどこさないで,その消 費者によって使用されるような形のもの。典型的消費者の行動の観点から,それらは買い回り品,最寄り 品,専門品として分類されうる。
(1935,p.151)そして,この定義は,
3商品類型のそれぞれについて
も ,
Copelandの見解を踏襲している。
最寄り品
顧客が,通常,頻繁に,手近かに,最少の努力で買おうとする消費者用品。
通常,最寄り品として買われる商品の例をあげると:たばこ製品,石けん,ほとんどの医薬品類,新聞や 雑誌,チューインガム,小単位包装菓子類,および多くの食料雑貨品。
コメント―これらの品物は単価の低いものであり,かさばっていない。しかしながら,定義は,典型的 消費者によって採用されている購買の根拠と方法に沿って行なわれている。その基本となるものは消費者の 態度と習慣である。
(1935,p. 151)買い回り品
消費者が選択と購入の過程において,適合性,品質,価格およびスタイルなどにもとづいて比較すること を特徴とする消費者用品。
ほとんどの消費者がおそらく買い回り品として買う商品の例は:婦人帽子,家具, ドレス,紳士用および 女性用既成服,靴,装身用宝石類,住宅(投機目的で買われるのでない)など。
コメントー~ある品物が,ある顧客には買い回り品として買われ,別の顧客には専門品あるいは最寄り品 して買われるということは強調されるべきであろう。しかしながら,その一般的な分類は,平均的または典 型的な購買者がそれを買う仕方に依存している。
(1935,p. 163)専門品
ある典型的な購買者が,それに固執するのを特徴とし,それに対して喜んで特別な購買努力を払うような 特有の消費者用品。
通常,専門品として買われる商品の例は:特珍種食品雑貨類,高級腕時計,高級紳士靴,そしておそらく 乗用車も。
コメント—マーケティング研究者のあいだで,“買い回り品”や“最寄り品” という言葉の使用にあた ってはかなり高い程度の統一があるようであるが, 専門品 に関しては非常に大きい差異がある。 買い回 り品 と 最寄り品 が商品の世界での相反する極を占めているということはかなり明白であるが,両者の あいだにはただ術語的に無人の広い領域があるのか,それとも,それが第 3のカテゴリィによって区分さ れるのかということについては,かなり疑問があるようにみえる。かりにこの第 3の類型が存在するとして
も,その境界については何ら意見の一致がみられていない。
‑ 8 4 ‑
個々の顧客が同じ品物を購入する方法において差異があるということは常に銘記すべきであろう。ある人 はそれを専門品として買うだろう,別の人は買い回り品として買うだろう。品物は,平均的あるいは典型的 な購買者がそれを買う仕方や根拠に従って,マーケティング目的のために分類される。
(1935,p.163‑4)この定義は,全体的には
Copelandを受けつぐものではあるが,次の
3点に関しては
Cop‑eland
においてはみられなかったことであり,その後の商品類型をめぐる論議に現われる主要な 問題点を提起したものであった。
i)
最寄り品と買い回り品は対照的な特性をもっているとみることができる。
ii)
専門品が独自の類型として存在するか否かは疑問である。
iii)
同一商品でも個々の消費者によっては異なる類型とされうる。したがって類型化は平均的購 買者の購買行動によるべきである。
( 2 )
A M A定 義
1948
年 ,
AmericanMarketing Association(AMA) の定義委員会は,上述の
NAMT定義 を改定した新らしい定義を発表した。それによると,最寄り品,買い回り品の
2類型は
NAMT定義と完全に同一の表現で記述されている。専門品については,
NAMT定義が「ある典型的 な購買者が,それに固執するのを特徴とし………」という表現をとっているのを, 「相当大きい 購買者群が,それに固執するのを特徴とし………」と変えたが,そのコメントでは,
NAMT定 義と同じく,専門品を独自のカテゴリィとすることに強い疑問を提出している。
買い回り品と専門品のあいだの区分がなお妥当であるか,有効であるかについては,かなり疑問の余地が あるように思われる。買い回り品という類型の妥当性についての疑問は,専門品の場合よりもすくない。専 門品がここに含められたのは,多くのマーケティング研究者がなおそれを有効であると考えており,そのま ま置いておくことを望んでいるようにみえるからである。
(1948,p. 215)つまり,この
AMA定義では,専門品はそれが実際上使用されているから,類型のひとつとして 残しておくが,その必然性はあまり認めていないのである。いわば,買い回り品に吸収されるべき 類型であると考えられている。しかし,このような消極性は,後に
RichardH. Holton (1958)による,より積極的な位置づけがなされるまで,ほとんど問題にされていないようである。
AMA
は
1960年にも消費者用品の
3類型に関する定義を発表しているが,その内容は,若干の 表現上の修正をのぞいて,
1948年定義とほぼ同じである。その新
AMA定 義
(1960)は , 次のよ うな簡潔な形をとっており,現在,商品類型に関するもっとも一般化された規定とされている。
最寄り品*
顧客が通常,頻繁に,手軽に,そして比較,購買には最少の努力で,購入する消費財である。最寄り品と して通例買われている商品の実例を示せば,たばこ製品,石けん,新聞,雑誌,チューインガム,小単位包 装菓子類,その他の各種食料品がある。
(p.25)買い回り品
消費者が選択購入の過程において,適合性,品質,価格およびスタイルなどに基づいて比較することを特
*以下の定義は,深見•関口 (1963) による。ただし,原訳では“最寄り品”が“便宜品(最寄品)”, 買 い回り品 が 買回品 となっている。示されているページも原訳のものである。
‑ 85‑
関西大学『社会学部紀要』第 1 巻第 1 号 徴とする消費者用品のことである。
多くの消費者がだいたい買い回り品として購入する商品の例は,婦人帽子,家具, ドレス,婦人既成服お よび靴,中古自動車,大型の家庭用具などである。
(p.54)専門品
特有の特色を持つか/あるいは,商標によって区別される消費者用品であって,それに対して相当大きい 購買者群が,慣習的に喜んで特別な購買努力をするものである。
通常,専門品として購入される品物を例示すれば,特珍種食品の特別の商標および型,ハイファイ部品,
スボーツ用品のうちのある型,写真用具ならびに紳士服がある。
(p.54‑5)この新
AMA定義は,旧定義
(1948)にみられた専門品に対する消極的な姿勢をうかがわせる ような表現はとっていない。それにはこの新定義が発表される数年前に
Holton(1958)によって 提出された見解とそれをめぐる
Luck(1959)との論争が, 専門品の位置づけに対する一種の裏 づけを与えたものと思われる。その論争というのは,専門品を中心として,商品分類の操作的基 準について交わされたものである。
3.
商品分類の操作的基準の追求
旧
AMA定義
(1948)によって簡潔に記述された各商品類型は, その一般的概念を明瞭にする ための意味は大きかったが,具体的に,ひとつの商品を類型化しようとする場合には,分類のた めの用具として直接的に使えるものではなかった。そこで,商品類型を構成する特性を測定する ための方法を示唆した,操作的な基準にもとづく類型論が提唱された。
(1) Holton
による旧
AMA定義の批判的発展
旧
AMA定義では, 消費者用品の
3類型のあいだの区分が明瞭でないので, その定義が意図 する 精神 を生かして, より正確に各類型を規定することを目的として
RichardH. Holton(1958)
は非常に示唆的な考察を行なっている。彼は,操作的で,尺度化された分類基準を提唱 し,商品類型をめぐる論議に新しい発展をもたらした。
Holton
は , まず,最寄り品と買い回り品との区分を試みた。買い回り品に関する旧
AMA定 義は,そのコメントで「ある消費者にとって買い回り品である品物が別の消費者にとっては最寄 り品であるということがみられる」と述べていたが,このことは,旧
AMA定義が,商品類型の 正確な定義づけを行なうことは個々の消費者の態度や習慣にもとづいて商品をとらえる場合に初 めて可能である,という立場から行なわれていることを意味しているといえよう。この立場に立 って,両類型をさらに明瞭に区分するものとして,
Holtonは次のような定義づけを行なった。
最寄り品
個々の消費者にとって,選択可能な売り手のあいだでその商品の価格や品質の比較をすることによって得 ると期待できる利益
(probablegain)が,時間,金銭,努力に関する買い探しコストについてのその消費者の見積りに比して,小さいと考えられている商品。
(1958, p. 53)買い回り品
個々の消費者にとって,選択可能な売り手のあいだでその商品の価格や品質の比較をすることによって得
‑86‑
ると期待できる利益が,時間,金銭,努力に関する買い探しコストについてのその消費者の見積りに比し て,大きいと考えられている商品。
(1958, p.53‑4)つまり
Holtonによれば,買い回り品と最寄り品を分類する基準は 価格や品質の比較のため の買い探し行動に要するコストとその結果得られる利益との大小関係 である。その発想はきわ めて経済学的であり,したがって 費用 と 金銭的利益 との関係として経済学的メジャーに よって測定できる場合もあるが,
Holtonによれば,中心的概念である コスト も 利益 も ともに 消費者の評価 というフィルターを通しているために, 主観的であり, 心理学的な特 性をもつものとなっている。つまり,利益は 満足感 充実感 喜び 達成感 あるいは 良い買い物をしたという感じ などをあらわす心理学的メジャーで測定されることになる。
コストについても同様であり, 時間 などは単にその客観的長さによるのではなく,「その時間を 別の活動に使えばどんな楽しみを得ることができるか」というような 機会コスト
(opportunity cost)•としてとらえられる。
この定義が旧
AMA定義にくらべて進歩していると思われる点は,主として次の通りである:
i)
購買動機に焦点を当てており,消費者行動を統一的に説明できる。
同じ商品でも人によって違った買われ方をするし,また,同じ人でも状況が違えば別の買い方をすること がある。このような現象について コストと利益との関係についての認知の仕方の差異 によって統一的に 説明しようとする。
ii)各商品を一次元的な連続的尺度のうえに操作的に位置づける。
商品が純枠の最寄り品と純粋の買い回り品とを両極とする仮説的な心理的尺度のうえに位置づけられ,そ の尺度構成のためのメジャーも明瞭である。この限りにおいて,商品は重複的に分類されるようなことは ない。
iii)
定義の曖昧さを除去している。
例えば,
AMA定義によれば最寄り品は「通常,頻繁に買われる」という特性をもつものであるが「頻繁 に買われない」最寄り品も数多い。このような定義内容の矛盾や曖昧さがない。
こうして,最寄り品と買い回り品を分類する基準は非常に明瞭にされたのである。
旧
AMA定義が専門品についてきわめて消極的であることは前述の通りであるが,
Holton説 によれば,すべての商品が最寄り品と買い回り品に関するスケールのうえに位置づけられるとこ ろから,結果的には旧
AMA定義と同様に,専門品の類型としての独自性に疑いをもたせること になる。また,その定義は,専門品の規定にあたって,次の点で他の
2類型の場合と異なってい た:
(i)専門品として考えているものに品物だけでなくブランドも含んでいる, ( i i ) 「相当大 きい購買者群が………」という表現によって市場の需要の大きさを考慮している(他の 2 類型では 個々の消費者の商品購買行動だけによって定義していた)。
Holton
は,専門品を独自の類型として定義づけるためには, 商品に対する個々の消費者の行 動や習慣にその分類基準を求めるのではなく,商品の市場の需要の大きさを分類の基礎とすべき
‑87‑
関西大学『社会学部紀要」第
1巻第
1サ である,と考えた。そして,次のように,その論を進めている。
旧
AMA定義では専門品の基本的な特性を「喜んで特別な購買努力をする」ということに求めて いるが,この 意図性 は「特別な購買努力をしなければならない」という 必要性 と別のも のである。そこで,かりに 意図性 が専門品を特徴づける消費者態度であるならば,特定ブラ ンドの煙草も,場合によってはバンやガソリンも,専門品とされるべき場合がある。もちろん,
これらの品物が専門品であるということをその定義は意味しているのではない。 したがって,
Holton
は , 専門品に関する旧
AMA定義で 需要の大きさ がひとつの要素としてとりあげ られている点に注目して,個々の消費者に 特別の購買努力を必要とさせる 状態をつくり出す ような 需要の大きさ を専門品の特性であるとした方が,より明瞭であると考えた。この 努 カの必要性 は,その商品の需要が限られているために,それを販売する小売店の数がすくない ということから生じるというのである。
Holtonは , 相当大きい購買者群がそれに固執する ことを特徴とし,それに対して喜んで特別の睛買努力をする消費者用品 ( 旧
AMA定義)とする よりも, 僅かな購買者群
(aninsignificant group)がそれに固執するのを特徴とし,したがって 購買者において特別の購買努力を必要とする消費者用品 とするほうが,専門品の定義として適
当であると主張する。
そこで
Holton説によれば, 個々の消費者にとって, 最寄り品や買い回り品が同時に専門品 である場合も生じるわけである。つまり,その商品を販売する店が非常にすくないために,それ を欲しいと思う消費者には特別の購買努力が必要であるが,店のあいだで価格や品質の差がない ために_たとえ多少の差があったとしても遠く離れている他の店へ行ってみるほどの差ではな いと思われるために_買い探しをするほどではないという場合には,この商品は専門品である とともに最寄り品である。他方,販売店の数はすくないが,それでも店のあいだで価格や品質の 比較をすればそれだけの成果があると考えられている商品は,専門品であるとともに買い回り品 である。
このように,最寄り品と買い回り品 を分類する基準と専門品であるか否か を決める基準とは別のものであって,
両者は互いに独立しているのである。
これを示したのが表
2であるが,専門 品という商品類型は,その特性におい て,他の
2類型と重複するが,いずれ
表
2 Holton (1958)による商品分類の基準と類型
‑‑ 分類基準 ( 2 ) 市場の需要(購買者の数)
分類基準 I l l 1 ‑ 小 さ い
l大 き い
買い探しによ
って得ると期待 大きい 専 門 品 買い回り品 できる利益 の
買い探しコス
卜 . , ,
Iこ対する比小さい 専 門 品 最 寄 り 品 の類型の特性をもっていても,市場の需要(購買者の数)が小さいために販売店の数が限られてお
り
, したがって購買者にとって特別の購買努力が 心要 であるものは,これを 専門品 と呼 ぶのである。 こうして
Holtonは 市場の需要 という分類基準によって, 専門品の類型とし ての存在を明確にできると考えた。
‑ 8 8 ‑
(2)
専門品をめぐる
Luckと
Holtonの論議
専門品の定義において 特別の購買努力をする必要性 を重視した
Holton説は,
DavidJ.Luck (1959)
による批判を受けたが, これに対して
Holton(1959)が直ちに反論するというひ と幕があった。
Luckの批判は,まず,
Holton説の基本的立場は専門品の存在を否定するもの であるという点に向けられているが, これは
Holtonによって「
Luck教授は風車と戦ってい る」と皮肉られているように,多分に誤解にもとづくものであるといえよう。むしろ,
Holtonは,他の
2類型との特性上の重複はあるにしても操作的な分類基準を明確に示して専門品を規定 している点で,旧
AMA定義にみられる消極性を捨てているということができるのである。専門 品が他の 2類型との特性上の重複をもつということは, 2種類の分類基準の組合わせによって商 品分類をするという方法をとる場合には避けることができないのであって,この点については,
Holton
の「
Luckが最寄り品と買い回り品の分類に関しては
Holtonに賛成しているにもかか わらず,この
2類型とは独立に専門品が存在すると考えているのは矛盾である」という意味の反 論が正しいといえよう。
次に
Luckは,専門品の定義内容について
Holton説に反対した。その主要な点は,次のよ うに要約される。
i)
市場の需要が小さくない商品でも,選択的流通政策をとっている場合には,その販売店が限 られていて,そのために購買者はそれを買うとき特別の購買努力をする 必要性 がある。
ii)
この意味から,専門品を定義づけるためには,購買者が特別の努力をしなければならないと いう 必要性 よりも,喜んで特別の努力をするという 意図性 を考慮するほうが,その性 格を明確にできる。
iii)
プランド・ロイアルティが高い商品は,購買者と販売店の両方にとって専門品である。
Luck
の批判は,総じて,専門品の定義においては 特別の努力の意図性 が重要であること を指摘することに向けられている。彼は, 特別な努力の必要性 の生じる原因は 需要が小さ い ということに限られるのではなく,そのあいだに 流通政策 が介在するというのである が,それであるからこそ,
Holtonの主張するように,専門品を独自の類型として定義づけるた めには,商品に対する個々の消費者の行動や習慣にその分類基準を求めるのではなく,商品の市 場需要あるいは購買者数という条件に,分類の基礎を置くことが要請されるのである。つまり,
Luck
のいうような条件によって 努力の必要性 の意味するところが異なってくるために,こ れを分類基準としないのである。
また, プランド・ロイアルティが高い商品というのは,
Holtonによれば 専門品 でなく 最寄り品 である。そのような商品については買い手の側に十分な知識があるために買い探し によって得ると期待できる利益がそれに要するコストに比して,相対的に小さい。したがって,
それを販売している最寄りの店で購入される。
Holton
の
Luckに対する反論は非常に明確であって, 彼のあげている
2タイプの分類基準
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関 西 大 学 『 社 会 学 部 紀 要
J]第
1巻 第
1号
による商品類型はきわめて理解しやすいものである。しかし, 利益 や コスト といい, ま た 市場の需要 といい,その経済学的な発想に対する抵抗は,今日まで続いている商品類型を めぐる論議のなかに絶えることなく見出すことができるのである。
( 3 )
Bucklinによる新旧類型論の統合の試み
Louis P. Bucklin (1963)
は ,
Holton説が
(i)Copelandのオリジナルな考えのエッセン スを含んでいる,
(ii)操作的に非常に有効である,
(iii)消費者の買い回り行動の程度を左右す る基本的な条件を明らかにしている,などという点で商品類型論の進展に大きく寄与するもので あるという評価を与えているが, 同時に, それが
Copelandのオリジナルな考えのなかに含ま れていたある種の 豊かさ を犠牲にしている点に不満をもっている。 したがって,
Bucklinは ,
Copelandによって示されていながら,その後ほとんど検討されていないひとつの問題に光 を当てるとともに,そこに
Holton説の操作的で明確な分類基準をとり入れることによって,
新旧の商品類型論にみられる諸説を統合しうると考えた。
Copeland
は,消費者が商品を買いに出かける前に自分が買おうとしている商品の性質につい てどの程度正しい認知をしているかということについて述べていた(表
1参照)。つまり, 最寄 り品と専門品を買う場合には,消費者は自分が買おうとする商品についての知識,あるいは,そ の商品が入手できない場合に代理の役を果す商品についての知識を,すでに買い物に出かける前 に十分に持っているが,買い回り品の場合にはその知識が十分でない,と述べられていた。後者 の場合には,買い物をするということは,商品を 購入する という目的に加えて,自分が買お うと思う商品を 発見する という目的を果さなければならないので,探索的な買い回り行動を 行なう必要が生じるのである。
したがって,
Copelandによるならば商品はまず 買い回り品 と 非買い回り品 に
2分さ れる,と
Bucklinは指摘する。
買い回り品は,購買行動をする前には購入したいと思う品物の性質についての 完全な知識 を購買者が持っていないという条件に対応している。その購入に当ってどの程度の買い回り行動 をとるかという範囲の決定にあたっては,
Holtonの 買い探しコストと買い探しによって得る と期待できる利益との関係 という概念を用いることができる。ある程度まで買い探しを行なえ ばそれ以上買い探しを拡大しても,増大するコストに見合うだけの利益の増加が得られないとい う水準に達するが,その水準において買い探し行動は中止される,と考えるのである。
Bucklinは,また,購買行動を商品に対する欲求を解消するための 問題解決行動 の一種としてとらえ ているが,買い回り品は「商品に対する欲求が生じるたびに,いつも,その欲求解消をはかるた
めの新しい方法を消費者が形成する商品である」とされている。
非買い回り品は,購買行動を起す前に購入したいと思う商品についての十分な知識を消費者が もっている場合の購買対象であり,それに対する購買行動は「欲求にこたえるような商品を発見 するという課題に対して,これまでにとってきた方法を利用しようと欲し,また,現にそのよう
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な方法を利用する」という 問題解決 の仕方であるとされている。したがって,非買い回り品 が有する重要な購買決定要因は,前回の購入とその次の購入のあいだで変化しないと認知されて いたり,あるいは,ごく僅かな変化であると認知されているのが一般的である。
このような非買い回り品は, 最寄り品 と 専門品 という
2類型に分けられるが, その分 類のために
Bucklinは プリファレンス・マップ
(preferencemap)•という仮説的な概念を 導入した。プリファレンス・マップーーいわば“好みの配置”—ーというのは, 「消費者がその 欲求を満たす場合にとりうる方法にはいろいろあるが,それらの方法に対して消費者が自分の好 み
(preference)に従ってつけている相対的な順位序列
(relativeranking)である」と考えられ ている。購買行動の場合には,消費者の欲求を満たす可能性をもっているいくつかの商品のあい だで,その消費者の好みに従ってつけられている順位である。ところで,このプリファレンス・
アップにはふたつのタイプがある。ひとつのタイプは,個々の商品の順位が厳格につけられてい て,もっとも好ましいものからもっとも好ましくないものまで整然と順序づけられている 垂直 型 のマップであり,他のひとつのクイプは,順位をつけ難く同等の好みのレベルの商品が並ん でいる 水平型 のマップである。そして
Bucklinは,水平型のプリファレンス・マップは最 寄り品に対して構成され,垂直型のマップは専門品に対して構成されるとするのであるが,多く の非買い回り品はこの両者を極とする中間にある。ある欲求を満たすために存在するいくつかの 商品のあいだの好みの順位づけは,完全に水平的である場合も多くないし,また完全に垂直的で ある場合も少ない。
このような中間的な商品を最寄り品と専門品に区分するために,ふたたび
Holtonの 購買努 カの仮説 がとり入れられた。消費者は買いたいと望む品物を手に入れるためにより大きい努力 を傾ける方向を採用するか,あるいは,そのような努力をするよりも手近かな容易に入手しうる ものを買うかという違いが,その品物が専門品であるか最寄り品であるかを決めるというので ある。この 非買い回り品のための購買努力 をどの程度行なうかという意思決定は,買い回り 品のために努力をはらう場合とはかなり異なった状況のもとでなされる。つまり,非買い回り品 の場合には,消費者は購買努力をはらうことによってどれだけ自分が望むものに近づくことがで さるかということや,そのためにどれだけのコストが要求されるかということを,買い回り品の 買い探しの場合よりも正確に見積ることができるので,どれだけ努力をすればよいかについても 正確に評価できるのである。
Bucklin
は,このような考察を総括して,
3商品類型を次のように定義している。 この定義 は ,
Ci)購入に対する欲求によって行動を起す前の商品に対する知識の程度
(Bucklinによれば プリファレンス・マップの構成の有無),
(ii)買いたいと思う品物を手に入れるための努力の程度
(プリファレンス・マップの構造),という
Copelandと
Holtonの説をともに導入した
2段階の 分類基準によって商品を規定するものである。
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