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骨盤内臓神経と骨盤神経節の電子顕微鏡的研究

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骨盤内臓神経と骨盤神経節の電子顕微鏡的研究

特に骨盤内臓神経切断後のシナプスの変性について

金沢大学大学院医学研究科産科婦人科学講座(主任 赤須文男教授)

金沢大学大学院医学研究科解剖学第一講座(主任 本陣良平教授)

        山  田  光  興

         (昭和44年12,月13日受付)

 神経線維切断後の神経線維およびその終末の変性に 関する組織学的検索は,主として鍍銀法を用いた各種 の標本の可視光顕微鏡(以下「光顕」と略記)による 観察によって行なわれた.仙髄副交感系に属する骨盤 内臓神経と骨盤神経節は,下腹動脈神経(交感姓)と ともに膀胱,直腸,子宮などの骨盤内諸臓器の神経支 配に関与し,これらの神経線維連絡の追究もまたその 例に漏れず,井村1),谷口2),中村3)らは写真銀法の 本陣変法4)によって骨盤神経節内の神経細胞周囲終末 が,骨盤内臓神経切断により変性に陥ることを報告し た.しかるに,神経終末部に起こる変性のきわめて初 期の徴候や,その後の変性像の微細構造上の推移の究 明に対しては,光顕的観察による場合,対象とするシ ナプスが光顕分解能の限界を超える問題を多く含み,

しかも光顕標本作製の際の壁構造の破壊が著しいた め,ほとんど不可能と言っても過言ではない.この問 題の究明には解像力の優秀な電子顕微鏡(以下「電顕」

と略記)による検索がぜひ必要である.

セ近年,神経終末,ことにシナプスの電顕的研究が進 歩し,De Robertis 5),本陣6), Grayら7)などによ って概括総説されている.しかし骨盤神経節内のシナ プスの微細構造に関しては,最近大石8)が正常なマウ スのそれについての報告を行なっているほか報告がな い.一方神経終末の変性についての電顕検索は,De Robertis 9)のモルモットのventral acoustic gang.

1ionにおける記載以後多数の報告がなされている10)一

]9).しかし,これらの報告は中枢神経系におけるもの で,末梢神経系では交感神経節20) 24)ならびに運動終 板25)26)に関するものが少数あるに過ぎず,骨盤神経節 内の神経終末の変性に関しては全く知見が報告されて

いない.しかもこれの究明は生理学臨床医学の各方面 から強く望まれている.

 著者はこの時点に立って,骨盤内臓神経の線維構成 と当該神経切断後の骨盤神経節内の神経終末の変性を 明らかならしめるため,本研究を企図した.

材料と方法

 実験動物には,成熟雌性KH−A種マウス(1吻8

〃σg〃θガvar.σ1∂〃6;KH−A strain)を用い,正 常骨盤内臓神経ならびに正常および下記の変性実験を 施した動物の骨盤神経節を使用した.試料の採取およ び手術はすべてエーテル麻酔下で実施した.

 骨盤内臓神経の採取には,開腹後,大腰筋を広く露 出させ,その筋線維束間を深く分け入り,後腹壁下中 を骨盤内含に向う骨盤内臓神経を,長さ約5mmに

わたって切り取った.

 骨盤神経節の摘出は,恥骨結合部を離開し,骨盤内 諸臓器を一括して:取り出し,投射照明付双眼実体顕微 鏡下で神経節を分離した.新鮮材料では,骨盤神経節 は子宮頸部背外側の藍島結合織内に,灰白色の小腫瘤 として認められる.

 神経切断実験は,上記の要領で右側の骨盤内臓神経 を露出させ,これを完全に切断し,術後24,48時間,

3,4,6,8,14,27日間動物を約23。Cの恒温室 内で生存させた後,同側骨盤神経節を摘出した.

 採取した試料は直ちに0〜4C。の氷室内で次の方 法で固定した.(1)veronal acetate緩衝 (pH:7.4)

1%OsO4液27)28)にて2〜3時間,(2)0.1M phos・

phate緩衝(pH:7.4)2.5〜6%glutaraldehyde液 29)で15〜60分間前固定後,同緩衝1%OsO4液にて  Electron Microscopic Studies on the Pelvic Splanchnic Nerve and Pelvic Ganglion of the Mouse, with Special Reference to the Degeneration in Synapses following Nerve Severance.:Mitsuoki Yamada, Department of Obstetrics and Gynecology

(Director:Prof・F・Akasu), Department of Anatomy(Director:Prof. R. Honjin),

School of Medicine, Kanazawa University.

(2)

2時間.二重固定の場合,glutaraldehydeの濃度を 4%とし,固定時間を30分間としたものが最良の結果 を示した.固定後,試料を漸次高濃度のethanol系 列で脱水,propylene oxideを使用し, Epon812に て包埋した30).

 切片の作製はガラスナイフを用い,LKB 4800A Ultrotomeによった.はじめに1〜5μの切片を作り 0.1%toluidine blue染色(pH 7.14)を施し,組織 のorientationと光顕標本の製作に供した. 超薄切 片はsilverないしsilver−goldの干渉色を呈する ものを選んだ.切片をシートメッシュに載押後,飽和 酢酸ウランとPb(佐藤氏液31))の二重染色法を施 し,HU−11P, H:U−11DSおよびJEM−7の3種類の 電顕により,直接倍率2,500〜20,000倍で撮影した.

微細構造の数値測定は,陰画原板を20倍に投影拡大し たものについて行なった.

工.骨盤内臓神経  1.光顕所見

 マウス骨盤内臓神経は,神経上帯,周膜および内膜 を備え,内膜に区切られて束をなして走る多数の有髄 および無髄線維からなる(写真1,2).小径(5μ以 下),中開(5〜10μ),国辱(10μ以上)の選民髄線維 および無髄線維の骨盤内臓神経管における分布は,部 位によって一様ではない.有髄線維の数の比率は,小 径が最も多く,大径が最も少ない1)傳3).無髄線維の数

の光顕による計測は,1個のSchwann細胞に含まれ る個々の軸索の完全な識別が不可能であることが判明 した今日,無意味と言わねばならない32) 36)。従って 次に著者は,骨盤内臓神経の一横断面を,電顕を使用

し連続的に部位を変え撮影し,繋ぎ写真として検討し た(写真9).

 2.電顕所見

 骨盤内臓神経の超壁構造は,従来記載の哺乳類末梢 神経のそれと原則的に一致する32)曜38).本神経を形成 する個4の神経線維束は,3〜6層の薄い結合組織性 神経周膜細胞と,その内部に包み込まれた大小の有髄 神経線維,通常1個のSchwann細胞に数本ないし数 十本の軸索を包含した多数の無髄軸索集団,ならびに それらの間の神経内膜鞘に相当する結合組織性成分な どからなる.通常神経線維東内には,線維束と平行し て走る1本以上の毛細血管を認める.各線凹凹間は疎 性結合組織によって占められ,全体として神経上膜を 形成し,線維芽細胞,膠原細線維,脂肪細胞,mast cell(後述),大食細胞(後述),毛細血管などを含

む.

 有髄神経線維の髄鞘は,軸索を中心として通常十数 層ないし数十層にわたって明暗離層構造を有し,Os 単独固定材料では,130〜160.Aの周;期を示す. Ran・

vier氏絞輪39)も所々に認められ,小径線維の場合に 多い.Schmidt−Lanterman氏切痕40)の構造は,大 畑ないし中径有髄線維に限られ,小径線維には見られ

なかった.

有髄線維の軸索内には,直径約100Aの神経細線維

(neurofilaments,以下「n.f.」と略記),細管構造 くneurotubules,以下「n.t.」と略記)ならびに mi・

tochondria(以下「mito.」と略記)などが縦走し,

外面を軸索膜がおおっている.軸索内にはこのほか granular vesicles, lysosome様の小体およびRo・

bertson 39),本陣ら41)がRanvier氏絞輪部で記述 したmultivesicular bodies(以後「m. v. b.」と略 す)などが認められる.

 無髄神経線維の軸索の微細構造は,有髄軸索のそれ とほとんど全く一致する.ただ無髄の場合,時として 多数のn.t.やgranular vesiclesを含むものがあ

る,

 無髄線維では,軸索が1個のSchwann細胞内に 普通集団的に内包され,個4の軸索間に薄いSch・

wann細胞の細胞質が介在している場合と,軸索同志 が隣接し両者閥にSchwann細胞層を認めず, mesa・

xonを通じ外部基底膜下に繋がる幅約200Aの明る い層のみを認める場合とがある.後者は断面でSch・

wann細胞中心部に近い軸索に多く認められる傾向が ある.無髄軸索は一般に有髄軸索より細く,通常直径 0.4〜0.8μの間にあるが,ときに径2.0〜3.6μを示 す太い軸索も認められる.

 著者は,1個のSchwann細胞に含まれる無等軸端 数を,660個のSchwann細胞について検した結果,

1〜5本が最も多く,以下6〜10本,11〜15本と順次 減少し,平均14,2本の軸索を含むことを観察した.多 い場合・には,Schwann細胞1個内に最高91本の軸索 を含んでいるものに遭遇した.

 有髄および無髄神経線維のSchwann細胞の外面に は,幅約200Aの電子密度小な層を介して厚さ約400A の基底膜を有し,さらにその外囲は,神経線維束にほ ぼ平行して配列する膠原細線維によって占められ,神 経内膜鞘を形成する42).

 神経周膜細胞は,横断面できわめて細長い核を有 し,細胞質内にはmito.,粗面小胞体,発達の悪い Golgi体,さらにpinocytotic vesiclesなどを含 む.各周膜細胞は所々で接触しtight junctionを形

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成する.またThomasら43)のhemidesmosomeの

存在を認めた.

皿.骨盤神経節  1.光顕所見   1)正常骨盤神経節

 正常マウス骨盤神経節の解剖学的ならびに組織学的 所見に関しては,すでに井村1),谷口2),中村3),大石 8)らによる各種の染色法4)44)による知見が報告されて いる.著者はOs固定材料に, toluidine blue染色 を施した標本にて観察し,次の結果を得た.

 骨盤神経節は,神経細胞とその外套細胞,Schwann 細胞,クローム親和細胞,神経細胞の突起である有髄 および無髄神経などからなり,その外囲は神経二二に よりおおわれている(写真3,4).神経細胞は,大 部分直径15〜30μ程度の多極性神経細胞で,双極性や 単極性と思われるものも存する.細胞質の染色性の相 違から,比較的暗調な細胞と明調な細胞が区別され る.神経細胞の細胞体またはその突起の表面には,お そらく細胞周囲終末と考えられる小腫瘤像を認める場 合がある.神経細胞の突起の出る極性部に通常1個以 上の外套細胞の核がみられる.まれに1個の外套細胞 の核が,隣接した2個の神経細胞に跨がって存する場 合がある・Schwann細胞の核は,神経線維の走行に 応じて細長い形をとり,外套細胞の核より一層濃染し ている.神経節内では有髄に比し無髄神経線維がはる かに多く,無髄線維は主として,外来性線維と骨盤神 経節内の神経細胞の神経突起とからなる,無髄線維間 には,少数の外来性の小径有髄線維が走り,ときに丁 令のものも認められるが,大江線維はほとんど認めら れない.

 また神経節内には,神経細胞より小型(8〜17μ)の 濃染する細胞集団が見られ,これは井村D,谷口2),

中村3),大石8)らが写真銀法4)にて細胞質内に黒褐色願 粒を証明したクローム親和細胞に相当する,この細胞 は数個集まり外套細胞に包まれている(写真5,6).

 なお,マウス骨盤神経節内には,胞体内にtoluidi・

ne blue染色にて赤紫色を呈する(metachromasia)

多数の粗大な穎粒を満たしたmast cellがしばしば 認められる・mast ce11は神経節内のみならず,神経 周膜細胞間や神経節外の神経上膜に相当する疎性結合 織内にもしばしば観察され(写真4),一般に毛細血 管周辺部に存在することが多い.骨盤神経節内の mast cellは,後述の骨盤内臓神経切断実験によって 量的および質的な認むべき変化を示さなかった.この ほか神経節内には毛細血管,線維芽細胞があり,また ときに白血球ならびに大食細胞なども出現する.

  2)変性実験施行後の骨盤神経節内の変化  骨盤内臓神経切断後,同側骨盤神経節内に認められ

る変化を,術後24時間より27日間にわたって経時的に 観察した.光顕的には主な変化は有髄神経線維に認め

られ,神経細胞には変化を認めなかった.すなわち,

有髄線維は切断後24時間で髄鞘と軸索の明白な対比が 多少失われる,この傾向は中野線維に著しい.切断後 48時問になると,中径のみならず小径線維も横断面に て扁平,棍棒状となり,さらに所々で総れを生じ瓢箪 形,数珠状を呈す. 軸索は縮小し一部の線維では消 失,髄鞘が塊状となる.しかし正常のように見える有 髄線維も存在している.切断3日後では,変化は一層 進み,正常の走行を失って数珠状ないし頼粒状に断裂 する(写真5). このとき無髄線維の走行は強い紆曲 を示し,多少とも鋸歯状を呈する.Schwann細胞は 腫大して見える.4日後では断片化した有髄線維がそ の数珠状の配列を失って,塊状ないし頼粒状となり無 髄線維問に点在する.Schwann細胞の核は明らかに 腫大してくるが,外套細胞は認むべき変化を示さな

い.

 6日後になると,有髄線維は完全に崩壊し,ほとん どその原位置をも識別し得ない状態となり,わずかに 無髄線維間に少数の穎粒状遺残物に化する(写真6).

無髄線維の鋸歯状走行はさらに乱れ交錯する. Sch・

wann細胞は腫脹し楕円形の細胞と化し,そのほか細 胞質内に渦巻状の髄鞘崩壊産物を含む.8日後では,

大多数の有髄線維は神経節内から消失し,きわめて少 数の塊状または穎粒状遺残物を見るのみとなる(写真 7). しかし,ほとんど正常に見える少数の小径有髄 線維を認めることがある.14日および27日後では変性 物質はほとんど全く認められなくなる(写真8).

 2.電顕所見   1)正常骨盤神経節

 正常骨盤神経節の電顕知見は,マウスに関する大石 8)の報告が過去における唯一の存在である.著者は変 性実験の対照として正常骨盤神経節を電顕的に観察し た結果,大石が触れなかった新たな二三の知見を得た ので以下に述べる.

  i)神経細胞         ・

 骨盤神経節の神経細胞は胞状を呈し,その一極から 通常1本の太い突起と比較的細い多数の突起を出す.

前者はn.f.とn. t.に富むが,粗面小胞体やリボゾ ームに乏しく神経突起(axon)と考えられ,後者は粗 面小胞体,遊離リボゾームに富み樹状突起(dendrite)

と考えられる.

 神経細胞の表面には,幅約200Aの密度小な層を介

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して外套細胞が接し,神経細胞およびその突起の全周 をほとんど完全に包囲している.通常外套細胞の核 は,神経細胞の突起の起始部近くに存することが多く

,この部分には外来の神経線維の終末枝,および隣接 の神経細胞から由来すると思われる突起(dendrite)

が多数入り込んでいる.後者の場合,神経細胞体との 間に,通常のシナプス結合と異なる特殊の分化を示す ことがある(後述).

 神経細胞の核や細胞質内のmito., Niss1小体,

Golgi体などの微構造特徴に関する著者の所見はおお むね大石8)の知見に一致する.大石8)は,骨盤神経節 内の神経細胞に,主として粗面小胞体の多寡により暗 調細胞(dark ce11)と明調細胞(light ce11)の両種 の細胞を報告しているが,著者もこの知見を電顕所見 で確認した.一般に骨盤神経節においては,暗調な細 胞が多く認められる.しかし両者の移行型と思われる ものも多い.

 そのほか細胞質内にはn.f., n.t., coated vesicles,

subsurface cistern,中心にcoreを有するgranular vesicles 45)46), m. v. b., dense bodiesなどが存す

る.中村47)がマウス半月神経節で報告した,粗面小胞 体cistern内部に出現する密巨大な穎悟ときわめて 類似した穎粒の存在を認めた(写真10,11). この種 の穎粒はそれ自弁限界膜をもたず,直径800〜1,200A

(平均1,000A.)のほぼ球形を呈し,ときに円筒状構造 の傾斜断面を想起させるような,楕円形ないし馬蹄形 の断面を示す(写真11).

 神経細胞中に,時として中心小体(centrioles)や 繊毛(cilia)の存在を見いだした(写真12,13)。中心 小体は通常核近傍のGolgi体に取り囲まれて出現す

る(写真12).その微細構造はHonjinら48)の知見に 一致する.しかし8群の周辺小管からなるものは観察

されなかった.繊毛(径300〜380mμ)は,一般に他 の細胞に見られる9群の周辺小管と1対の中心小管か らなる正常繊毛(9+2型)とは異なり,8群の周辺 小管と1群の中心小管を有するもの(8+1型)(写 真13),9群の周辺小管のみからなるもの(9+0型)

および9群の不規則な配列を示すものが見られた.

繊毛は,一般に神経細胞の表面もしくは表面近くから 生じ,神経細胞の表面の陥凹部から出て,外套細胞に よって作られた間隙に位置する.繊毛の周辺小管は,

その起始部にて基底小体を形成する.基底小体の周辺 部には,小胞の集合(ciliary vesicles48))やSorokin 49)が言うsatellitesと思われる構造物が見られたが,

周期性横紋を示す根小毛は認められなかった.

 今回の検索によって,後に述べる軸索の終末と局所

ノイロンとの間に形成されるaxo−somatic, axo−den・

dritic synapses以外に,おそらく局所ノイロンの樹 状突起によって形成される局所ノイロン間の結合が見 いだされた(写真14,15).すなわち,神経細胞体ま たは樹状突起の起始部に,おそらく近隣の神経細胞か ら由来すると思われる樹状突起が接触し,その局所 の膜の電子密度の増大を伴なったdendro−somatic,

       ノdendro−dendritic contactとでも言うべき結合が存 する.その微細構造上の特徴から一種のdesmosome 構造と考えられる.dendro−soma亡ic contactの場 合,樹状突起の先端は多少太くなり,神経細胞体内に はまり込んだ状態を呈し,両者の間に密度小な幅約 200〜250Aの薄層を認めるに過ぎない.この種の結 合は,細胞膜が特殊の分化を示す点で通常のシナプス と類似するが,シナプス小胞に相当するものはなく,

遊離リボゾーム,粗面小胞体,mito., granular vesi・

cles, coated vescles, m.v,b.などを含み樹状突起 としての特徴を備えている点がいわゆるシナプスと相 違ずる.写真14では,上下2個の神経細胞を中間の外 套細胞が共通に包んでおり,上の神経細胞から出たと 思われる樹状突起が直接に下側の神経細胞体に進入 し,dendro−somatic contactを営んでいる.この:種 の結合は神経細胞体のみならず,樹状突起の起始部近 くにも認められ(dendro_dendritic c6ntact),この 場合,しばしば双方の樹状突起が入り組まないで直線 的に接触していることが多い(写真15).骨盤内臓神 経切断実験の後,この種の結合には微細構造上全く変 化が現われない.

 なおときに,この種のdesmosome様の構造物は,

神経節内局所ノイロンとその外套細胞の間』5)46)(写真 16),および同一ノイロンに生じた陥凹部でも認め られ(写真17),後者に関しては,Burgosら50)

がapical desmosomeとして人胎盤のsyncytio trophoblastで報告したものに類似する.

  ii)神経線維

 骨盤神経節内には,Schwann細胞に包まれた多数 の無髄軸索集団と,比較的少数の有髄線維が認められ る.これら有髄および無髄神経線維の超微構造は,骨 盤内臓神経のそれとほとんど全く一致する.ただ神経 節内では,terminal myelinがしばしば認められ,

また無髄神経線維においては,軸索内に小胞構造,特 にシナプス小胞の豊:富なものが多い.この種の多数の 小胞を有する無髄軸索は,神経終末に近い部位と思わ れる. 終末に近い軸索を含む部位のSchwann細胞 は,神経節神経細胞の突起をも同時に受け入れ,ここ にaxo−dendritic synapseを形成している場合があ

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る(後述). このような場合にはその近傍に神経要素 を囲むSchwann細胞による common mesaxon−

mesodendriteの形成が見られる.

 なおglutaraldehyde−Os二重固定は, Os単独固 定と比較し,軸索内部の小器官,とくにn.t.をよく 固定しその出現頻度が高くなる.このことはWebs・

terら51), Sandbornら52), Cravioto 53),中村47)ら の知見に一致する,1

  iii)クローム親和細胞

 クローム親和細胞に関してもすでに大石8)の報告が あり,今回の所見も多くはこれを肯定する結果となっ たが,二三の新知見も得られた.

 クローム親和細胞は直径800〜2,500A.の円形,紡 錘形または秤状形の小穎粒とこれを囲む限界膜からな

り,限界膜と頼粒の間には,100〜2,000A.の密度小な 層が存する.時として,クローム親和馬面にきわめて 類似した面面が,クローム親和細胞近傍の組織腔内に 見いだされる.おそらく放出されたクローム親和顯粒 と考えられる,

 骨盤神経節内のクローム親和細胞は,通常数個から 5〜6個程度集如して存し,各細胞は幅約100〜200A の密度小な層を介して接している.このような2個の 細胞の相接する細胞膜がときに所々密度大となり,

desmosome様の結合を示すことがある. しかしこ の部への張原線維群の集中は見られず,小胞の集積も 認められない.同様な特殊分化はラット副腎髄質細胞 においてすでに記述されている54)55).クローム親和細 胞の小群落は,通常外套細胞によっておおわれている が,神経細胞のように全周が完全に包囲されず,その 一部が直接に基底膜と接している場合がある.ときに 隣接したノイロンとクローム親和細胞が,1個の外套 細胞によって共通に囲続されている.クローム親和細 胞の外套細胞内に,神経細胞の場合と同様,しばしば 無髄神経線維が進入し,まれにクローム親和細胞表面 とシナプスを形成することがある.クローム親和細胞 に対するシナプスの電顕像に関しては,最近交感系で Siegristら56),副交感系で大石8)の報告がある.なお

クローム親和細胞には,しばしば孤立性の繊毛を認め る.この繊毛の微構造は神経細胞のものにほとんど全 く一致する.

  iv)肥満細胞(Mast Cell)

 骨盤神経節内,神経周島細胞相互間および神経油膜 内には,電顕上細胞質内に多数の粗大顯粒を含んだ細 胞がしばしば出現する,この細胞はその出現部位,細 胞体の形態と大きさ,包含穎粒:の大きさ(径0.3〜2.4 μ)などから光顕的に観察されたtoluidine blueに

       へ

て異調染色性訟訴を有するmast ce11に相当するも のである(写真18).細胞体の形は周囲の構造に順応 して種々の形を呈しそれらの間隙を埋めている,核は 断面で卵円形,楕円形または歯状形で,内部にchro−

matin granulesが散在している。核小体は概して小 さい.細胞膜は一般に不完全で,一部が断絶している ことがあり,このような場合には溢出を含んだ腔(1a・

cunae)が直接に組織腔に開放され,このlacunae 内に組織腔から膠原細線維が侵入している. ときに mast ce11の二言と全く同様の穎粒が,近傍の組織腔 内に発見されることがある.

 mast cellの細胞膜には,しばしば長さ約1.0μ程 度の絨毛が認められ,この突起は通常細胞膜面に平行 に近く位置している.細胞質内はほとんど顯粒によっ て占められ,細胞内小器官に乏しいが,Golgi体の発 達は比較的良好な場合がある.inito.は穎二間に少数 存在しており,ときに核近辺に中心小体を認める.

 mast cellの最:大の特徴は,細胞質内に多数含まれ る大小の頼粒の存在で,その大きさ,電子密度,内部 の性状などから次のA,B, C 3種類に分類できる.

 A型頼粒は,円形,楕円形の断面を示し,一般に小 型(径0.3〜0.8μ)で,電子密度が3種類のうち最も 大である.穎粒はさらに微細な小粒子が密に集合する

ことによって形成されている.

 B型頼粒は,やはり類円形で大きさ(径0.3〜1.5μ)

および密度はほぼA型穎粒とC高温粒の中閥に位置 し,内部には微細な粒子状および線維状の物質が比較 的密に網工を形成している.

 C二二粒は,3種のうち最も大きく(直径0.6〜2.4 μ),全体としての密度は最も小さい.一般に類円形を 呈するが,しばしば境界不鮮明な不正形をなす.内部 は微細二二および細線維状物質によって,蜂巣状ない

し網状の配列を示す.

 以上,3種の頼粒はいずれも一般に限界膜は不明瞭 なことが多い.A, B, C 3種の穎粒相互間には移行 型も存し,また同一顯粒内でも部位的に,2種類の瓢 粒の特徴を同時に併有する場合がある.

  v)神経細胞の生理的変性像

 正常なマウス骨盤神経節内の神経細胞間に,まれに 通常の神経細胞と多少趣を異にした,遊離リボゾーム に富む暗調な細胞が認められることがある(写真19).

この細胞は普通単独性に出現し,胞体は断面にて円形 または卵円形をなすことが多く,大きさは神経細胞と ほぼ同程度か,またはこれよりやや小さい.本細胞の 最大の特徴は,核が胞体の一側に偏在し,扁平となっ ていることである.また外套細胞を欠くか,または細

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胞の一側のみを外套細胞が囲んでいる.リボゾーム様 の穎粒群は所々でとくに密に集合し,その間にmito.,

Golgi体,空胞などが認められる.とくに外套細胞の 被包を欠く部には空胞が多く,組織腔に直接する部か ら細胞が崩壊している像に接す.る.細胞質内には上記 のほか密度大なりポフスチン様穎粒,granular vesi.

cles,粗面小胞体cistern内部の球状丁半, m.v.b.

などが見られる.この種の細胞が何であるかはにわか に断じ難いが,外套細胞を不完全ながら有し,核が偏 在し,細胞質の微構造が神経細胞に類似する点から,

おそらく生理的な変性に陥った神経細胞と推測する.

  vi)骨盤神経節内のシナプス

 骨盤神経節内ノイロンには神経終末がシナプスを形 成して終わっている.そのほかクローム親和細胞にも 終わる神経終末が存在する.大石8)は,神経終末部

(前シナプス部)の存在部位と内部に含まれるシナプス 小胞との差異に基づき,神経節内のシナプスを,1型

・]1型・皿型の3種の局所ノイロンに終わるシナプス とクローム親和細胞に終わる終末とに分類した.彼に よると工面の終末は大型で分葉を示し,spineを有し,

主として局所ノイロンの細胞体上に(axo−somatic)

終わり,一部のものは樹状突起の起始部に(axo−

dendritic)終わる.]1型は小型で分葉やspineはな く無蓋粒性S一型シナプス小胞を有し,主としてaxo

−dendritic,一部はaxo−somaticである.皿型は終 末内に穎粒性シナプス小胞と無頴磁性S一型シナプス 小胞を含み,大部分が細胞体からかなり離れた部で axo−dendriticに終わる.クローム親和細胞に終わる 終末は頼両性シナプス小胞と無穎心性S一型シナプス 小胞を含む.著者の今回の検索では,S一型とF一型 の無穎粒性シナプス小胞の固定液の種に応ずる態度の 問題を除けば,ほぼ類似の知見が得られた.従って今 回著者は,骨盤神経節内の神経終末の正常像に関して 後述の変性実験施行後の所見との対比という観点から 簡単に触れるにとどめる.一

 無穎粒性シナプス小胞(agranular synaptic vesi・

cles)に混じって,一部の神経終末内に見られる穎粒:

性シナプス小胞(granular synaptic vesicles)は交 感神経節・腸筋神経節などでも見られるもので57)醇61),

これはまたすでに述べたperikaryon内のgranular vesiclesとその形態上全く区別できない(写真20,

21,22,23).この小胞は直径800〜1,600Aで,内部 にある密度大な穎粒の直径は400〜1,400Aである.

シナプス小胞のほか終末内には,mito., n.f., n.t.,

グリコーゲン丁丁と思われる電子密度大な小頼粒,

coated vesiclesならびにdense bodiesなどが存

在する.

  2)変性実験施行後の骨盤神経節内の変化   i)神経線維の変化

 骨盤内臓神経切断によって,骨盤神経節内のほとん どすべての有髄神経線維と一部の無髄神経線維が変性 に陥る.変性は線維の種類や大小により,また個4の 線維によって変化の種類と速度にかなり異なった経過 を示す.その様相はほぼ過去の報告結果に一致する62)

胃65).

 有髄神経線維の変性は,髄鞘よりむしろ軸索により 早く認められる62)陶65).軸索に惹起される変性変化は,

一般に小径よりも比較的大面の線維に多少早く認めら れる傾向がある.軸索はすべて術後8日目までに,髄 鞘はそのほとんど大部分が14日後までに変性消失し た.しかしきわめてまれであるが,術後27日の材料に 変性有髄線維の存在を認めた.軸索に見られる変化 は,n.f., n.t., mitoの崩壊とaxoplasmの凝縮数 珠化および軸索膜の剥離であり,髄鞘の変化は変形と 崩壊の2段階を示し,変形は髄鞘の内謙または外面に よる不規則な屈曲像として示めされ,髄鞘の崩壊は,

髄鞘板層膜剥離(exfoliation of myelin membrane),

疎化髄鞘(loosed myelin)の形成,髄鞘薄膜巻込体

(spiral myelin globules)の形成,髄鞘小胞または 髄〔鞘空胞(myelin vesicles or myelin vacuoles)

の形成,髄鞘融解(dissolution of myelin),類結晶 体(crystaloids)の形成などの変化である63)〜65).

 骨盤内臓神経切断によって,電顕上変性として認識 される無髄神経線維は少数に過ぎない.無髄線維の変 性の時期は,従来末梢および中枢神経系で報告されて いるように遅いものではなく,その徴候はかなり早期 から認められ比較的早い経過をとる.神経切断面すで に24時間で一部の線維に変化が認められ,軸索は腫大 し,axoplasmは全体的に明るくなる. n.f.は部分的 に溶解し,大部分は微細顯粒状を呈するが,この時期 におそらくn.t.由来と推定される太鼓檸状または瓢 箪形の小胞が出現することがある.mito.は腫大し,

matrixの密度:は増加するが, cristaeはなお明瞭に 認められる.変性軸索の確認は,変性初期においては ma saxonの存在により比較的容易であるが,変性が 進行するにつれて困難となる.48時間後には腫大傾向 がさらに強くなり,3日後にはaxOPlasmは明調と なる.この状態ではn.f.の構造は全く観察できない.

変性軸索はSchwann細胞に含まれる軸索群のうち1 本において認められるが,ときに2本以上のこともあ

る.膨大した軸索は次いで収縮凝集し,6日以後急速 に収縮 8日後ではほとんど認められなくなる.

(7)

 Schwann細胞は術後48時間で多少肥大傾向を示 し,3日後,細胞質の腫脹は明瞭となり,しばしばよ く発達した粗面小胞体やmito.を認め,ときに巨大 なmito.を観察することがある。 リボゾームはかな り豊富となり,またGolgi胞や粗面小胞体のcistern が拡大し,空胞状を呈する場合もある.このような変 化は,変性した無髄軸索を含むものより,変性有髄線 維を含むSchwann細胞でより顕著である.4〜6日 後,細胞質は複雑に突起を周囲に伸ばし,細胞質内に は多数の大小の空胞がしばしば認められる.外套細胞 にも若干同様の変化が起こるがSchwann細胞程著明 ではない.Schwann tube 66)内には増殖した細胞質 突起がブロック状に互いに接触している.変性神経線 維がほとんど消失した14日後では,細胞は細い突起を 多数周囲の組織腔に向かって伸ばしている.Thomas 66)67)がウサギの腓腹筋内側頭への神経の二次変性およ び再生にて観察したSchwann tubeのcollapseに よるfoldingは,術後24時間より27日聞までを通じ て常に認められた.

  ii)大食細胞(Macrophage)と白血球  正常および変性骨盤神経節内に,時として大食細胞 が出現する68) 72).大食細胞は特定の形をなさず,概 して卵円形または細長い形を呈することが多く,しば しばミクロビリー様の突起を有する.また本細胞は基 底膜を備えない.変性実験の場合,この基底膜の存否 は崩壊有髄神経線維をいれたSchwann細胞との重要 な鑑別点となる.大食細胞はほとんど常に細胞質内に 外部から取り込んだと推定される密度大な物質を有し ている.この物質は内部に大小の空胞を含んだ不正形 の穎粒からなる.細胞質内にはlysosomeと考えられ る密度大な小体や粗面小胞体が観察され,短冊状形ま たは卵円形のmito.核近辺のGolgi体,大小区々の 空胞,脂肪滴などが認められる.大食細胞は神経切断 実験後,細胞質内に髄鞘の崩壊物質を含むことがあ る.著者はこのほか術後6日の材料で,好酸球胞体内 にmyelin debrisを包み込んでいるものに遭遇した

.この事実は好酸球の寅食作用を示すものと解され

る.

  iii)シナプスにおける変性変化

 言うまでもなくシナプスにおいては,化学的伝達物 質放出による神経興奮の伝達がなされると考えられ るから,電顕的に見られるシナプス像も微構造が恒常 ではない.しかも神経線維の変性の項でも触れたよう に,その微構造変化や時間的推移は必ずしも恒常では ない.従って実験的切断によってシナプスが受ける変 性変化を適確に把握することは容易ではない.ことに

きわめて初期の変化においてこの感が深い.それゆえ 正常ならびに変性神経終末の精査とともに,切断実験 後の経時的な観察がぜひ必要とされ,これによって全 体的な神経終末変性像を捕えんとした.変性変化は節 前神経線維の最末梢端,すなわち前シナプス部に最も 顕著に現われる.具体的には,内部のシナプス小胞の 減少崩壊,神経終末自体の縮小,シナプス結合の解 離外套細胞の反応性増大による終末部に対する重層 囲続,さらに終末部の消失などであるが,不幸にして 電顕では変化過程を連続して追及できず,固定の時点 における変化像を見るにとどまるため,正常ならびに 術後24時間から8日間にわたる間の変化を観察し,シ

ナプス部の微細構造が示す特徴によって,シナプスを A型からG型までの7型に分類し,正常時ならびに変 性半期でこれらがいかなる推移を示すかを検討した.

付図はAからGまでの各型の神経終末の特徴を示す模 式図である.なお実験に際して所見の正確を期するた め,実験動物は術後の各時期で少なくとも10匹以上を 使用し,固定(Os単独固定),脱水,包埋などの諸条 件をすべて同一にして検索した.

   ① A  型

 正常状態にて最も一般的に認められるタイプで,正 常神経終末としてすでに述べた1・皿・凹型の特徴を 示す. シナプス小胞は無穎粒一匹胞(径500〜700A)

を主とし,一部のものはこれに加えるに少数の穎粒性 小胞(径800〜1,600A)を含む(写真20,21,22,

23)

   ②B  型

 B型神経終末は,A型の約2倍の直径を有し,内部 のほぼ全域にきわめて多数の小胞が密集している.無 頼野性小胞を含むものでは小胞がA型におけるよりや や小で(径400〜600A),内部の密度はやや大であ る.小胞の限界膜が不明瞭なものもある.しかし次の C型終末に見られるような小胞の部分的密集による不 均等配列は認められない.mito.はほぼ正常である が,ときにそのmatrixの密度が大となったものも見 られる(写真24,25).

   ③ C  型

 小胞分布は不均等で部分的に密集し,この密集部の 小胞の一部は輪廓が不鮮明となり溶解像を思わしめ る.概して小ざい終末では,その中心部に小胞が密集 している.小胞密集部以外のaxOPlasmは一般に明 るい.シナプス小胞の直径は,B型と同じくやや小さ いものが多く,穎野性小胞では,内部の顯粒がやや不 明瞭となったものがある.mito.は正常と区別し難い ものもあるが,一部は膨化し,matrixの密度が大と

(8)

なり,cristaeが不明確である(写真26,29).

   ④D  型

 終末部は全般的に明るく,大小不同種々の形の断面 を示す密度平な物質(dense bodies)を比較的多数 含んでいる.これらの物質の間には少数の小胞が散在 するが,小胞の大きさに大小のばらつきが著しい.こ の型の終末では,synaptic contactを失い終末が局 所の神経細胞体あるいは突起(後シナプス部)の表面 から分離し,神経細胞体の近くの外套細胞内や Sch・

wann細胞内に包まれて存する.終末内にn.f.やn.t.

が多く存する場合がある(写真27).

   ⑦ G  型

 神経終末は一般に小器官に乏しく明るい様相を呈 し,少数の大小不同の小胞を含む.しばしば楕円形ま たは秤状形の断面を示す小胞や断裂した鮮場を散見す る場合がある.mito.は膨大または反対に萎縮し,

matrixは前者では密度小で,後者では大である.こ の型にはaxo−dendritic contactはなく,axo−soma−

tic contactをなお保つものもあるが,全く分離した ものもある.この型は変性の比較的後期に増加する傾 向がある(写真31,32).

 以上の各型の間には移行型も存在する.ことにA,

付図.変性骨盤神経節内の二型神経終末の模式図

A型終末(A),B型終末(B), C型終末(C), D型終末(D), E型終末(E),

F型終末(F1, F2, F3), G型終末(G),局所ノイロン(LN),外套細胞(S)

   ⑤ E  型  「

 n.f.が終末内に多数認められ,その走行は一定せ ず,蛇行を示し,終末の中央部を中心として渦巻状の 配列を示すこともある。mito.にときに腫大崩壊を認 める.ζの型の終末は後シナプス部から分離している

(写真28).

   ⑥F  型

 変性がかなり進んだ時の所見で,これには種々の形 態のものが認められる.終末部は全体的に明るいもの が多く,内部微構造の変化には種4の相があり.(1)

axoplasmが溶解凝集したもの(F1)(写真28), (2)

膜と小胞が集積したもの(F2)(写真29),〔3)Birks ら26)がカエル縫工筋の神経筋接合部にて指摘した,

honeycomb structureにきわめてi類似した構造物 を示すもの(F3)(写真30)などとして現われる.こ の型では神経終末は後シナプス部から分離している.

B,C3型の相互間,またC型とG型, E型とF型な どの間に認あられる.また同一の終末内に,部位的に 2種類以上の型の特徴を同時に備えているものがあ る.たとえば,B型またはC型とD型, B型またはD 型とE型などにおいて見られる.従って著者は分類基 準のうち,シナプス小胞の分布状態を第一に考え,2 者以上の特色を併有するものは,いずれの特徴が顕著 であるかによって分類した.変性各時期でそれぞれ神 経終末100個を選び,これを上記A〜Gの7型に分類 し,各期で何個出現するかを示したのが付表である.

 神経終末の選択に当っては,固定状態のよい,すべ て外套細胞内に包まれ,局所神経細胞体または突起に 近接のものについて行ない,synaptic contactをな しているものを優先した.また1個の神経細胞に数個 以上の終末が認められる場合には,その中の典型的な もの1個だけを選出し,神経終末の分枝による同一終

(9)

付表正常時および変性各期における各型終末数

A B C D E F

正  常

G

67 19 5 9 0 0 0

24時間

24 58 7 8 2 1 0

48時間

31 30 17 14 4 3 1

3日 28 18 27 16 8 2 1

4日 11 16 55 13 2 3 0

6日 44

8 25 7 5 8 3

8日 52

9 15 6 1 3 14

末の重複算入の危険をできるだけ避けた.

 奇異に感ぜられることは,正常時にB,C, D型が 少数ながら見いだされることで,正常時でも機能状態 によっては,このような程度の構造変化はあり得るの であろう。D型はおそらくsynaptic contactの局所 ではなく,それよりやや離れた軸索の部であろう.

 術後24時間では,正常時に最も多数認められたA型 は約3分の1(%)に減少し,代りにB型終末が約3 倍に増加している.このことは明らかにB型に見られ

る変化が,少なくともその一部が,神経切断による影 響であることを示している.B型の大部分はaxo−

somatic contactをなす.またE型, F型が少数なが ら出現している.なお同一外套細胞内に,A型とF型 とが同時に存在するのが認められた(写真28).

 術後48時間ではB型終末は著減し,かわってC,

D,F型が増加し, G型も登場する.この時期の材料 に,典型的な honeycomb structureを示すF3 型終末が見られた(写真30). また神経細胞体に嵌入 し,胞体との間にaxo−somatic contactを示すG型 終末を観察した.

 3日後ではB型はさらに減少し,C型の増加が一層 強くなる.次いで4日後にはA型は最少となり,逆に C型は最:も多く神経終末の半数以上を占めるようにな る.従ってこの時期は,一応骨盤神経節内神経終末の 変性の極期と考えられる.この時期ではaxo−somatic synapseの数がやや減少傾向を示す.またしばしば 軸索終末は,数層ないし5,6層にわたって外套細胞 の突起に板層状に取り巻かれている(1amellation).

 6日後ではA型が一躍4倍を示すが,この際A型の 大部分は樹状突起上のaxo−dendriticな終末であ り,このことはaxO−somaticな神経終末の変性崩壊 消失の結果による相対的な増加を示すものである.B 型とC型は減少し,F型とG型が増加する.8日後で

は,上記の傾向がさらに進み,G型が増加している.

胞体内にはまり込んでaxo−somatic contactを営ん でいた神経終末は,変性の進行とともに漸次ノイロン から退縮し,っいにこれより離れる.注目すべきこと は,この時期においてはaxo−somatic contactをな す終末がさらに減少しほとんど見られなくなるのに対

し,axo−dendritic contactは多数存することであ る,このことは骨盤内臓神経由来の節前線維が骨盤神 経節の局所ノイロンとaxo−somatic synapseを形成 することを示している.14日ないし27日後において も,A型のaxo−dendritic synapseはなお多数残存 するが,axo−somatic synapseは非常に少なかっ

た.

 クローム親和細胞に終わる神経終末を,骨盤内臓神 経切断後の各時期について検索したが,術後48時間の 材料にB型を示すものを見たほか,術後のすべての時 期で神経終末はA型を示した.

 1.骨盤内臓神経

 哺乳類の骨盤内臓神経の線維構成を,光顕にて検し た報告は比較的多いが1) 3)73)卿75),電顕検:索に関して はきわめて少ない。

 Schnitzleinら75)はサルにっいての電顕像を得てい るが,詳細というにはほど遠いものである.電顕の出 現によって末梢神経の無髄神経線維は, 1個のSch−

wann細胞に通常数本以上の無髄軸索が非常に密接し て(最少200〜300A)包含されていることが明らか

となり32) 36)38)76)卿77),個々の無髄軸索の識別は,光顕 の分解能(約0.2μ)を超え,電顕の使用によっての み可能である.従って,従来の光顕による無髄軸索数 の計測はきわめて不確実なもので,今回の著者の検索 によって,無髄軸索の実数が従来の計測数の約14倍に

(10)

も及び,有髄線維1に対し無髄線維約10の割合とな り,無髄線維の骨盤内臓神経において占める比率は,

有髄線維のそれをはるかに凌駕していることが明らか となった.

 2.骨盤神経節   1)正常所見

  i)中心小体および繊毛

 今回著者は,骨盤神経節内のノイロンとクローム親 和細胞に,中心小体と繊毛の存在を確認した.一般 に,中心小体は細胞のmitosisに際して重要な役割 をなし,繊毛は中心小体から形成されることはよく知

られている.成体の神経細胞における中心小体の存在 は古くから論議のあるところであるが78)79),中心小体 の光顕的観察は,分解能の限界からおのずと明確性を 欠き,これから派生する繊毛とともに,その存在の確 証と構造上の細部にわたる知見は,電顕検索を待たね ばならなかった.

 過去,電顕上神経細胞に見られた繊毛については,

末梢神経系では,Taxi 80)がカエルの交感神経節で,

Grilloら81)はラットの上頸節でそれぞれ記述してお り,中枢神経系では,Palay 82)が金魚のpreoptic nucleusで, Dahl 83)がラットの海馬(Fascia den・

tata)で,また教室の同僚伊藤84)はマウス脊髄灰白質 においてその存在を確認している.神経系でそのほか Schwann細胞81)やGlia細胞83)などでも観察され,

またクローム親和細胞55)85)でも認められている.

  ii)M:ast Ce11

 著者は今回マウス骨盤神経節の内外に,toluidine blue染色にて著明なmetachrolnasiaを呈する粗大 穎粒を多数包含した細胞を認め,電顕的にもその特徴 を捕えmast cellと同定した.マウスのmast cell の電顕像に関しては,正常材料の場合,Rogers 86)が 生後3日目の動物の真皮で,Burtonら87)は皮下組織 および腹腔内滲出液の組織培養試料で,萩原88)は腹水 についてそれぞれ報告を行なっている.神経線維の周 辺部にしばしばmast cellが集中的に出現すること は古くから知られているが,神経系に存するmast ce11の電顕検索の報告は著者の調べた範囲では見ら れなかった,

 mast cellの最大の特徴は,細胞質内に含まれる特 殊穎粒の存在で,その微細構造に関して,従来,均質 性(homogeneous),微細穎粒状(finely granular)

ないし細線維状(filamentous)などと記載されてい るものと,板層構造 (lamellar, myelin−figure,

scrollなど)の出現を指摘しているものが報告されて いる.『著者は今回,Os単独およびglutaraldehyde

一〇s二重固定の2種類の固定方法を使用したが板層 構造を認めなかった.筆者は大きさと電子密度を異に したA,B, C 3種類の穎粒を観察したが(写真18),

これらの岬町の間には移行型が存し,また同一の穎粒 に2種類の特徴を同時に備えている場合もあり,これ らは順次移行し得る成熟の過程を示すものであろう.

  2)変性所見   i)神経線維

 神経線維の切断が,その末梢側に一連の経時的変化 をひき起こすことは,Waller(1850)の発見以後多 数の先人達によって追試され,さらに電顕の出現によ って数4の新たな知見がこれに加えられた62) 65)69)89)

97),先入の論争の中心は,神経線維の直径の大小によ る変性進行速度の差異,軸索と髄鞘のいずれに最初の 変化が認められるか,軸索内野小器官の変性経過なら びに髄鞘の変形崩壊過程と変性崩壊産物の成因などに 関してであった.今回著者は,骨盤神経節内の有髄線 維の変性変化を電顕的に観察し,Honjinら62)64),高 橋63),小坂65)らの所見に原則的に一致する結果を得

た,

 骨盤内臓神経切断によって,大多数の有髄線維は変 性するが,なおごく少数の正常とみなされる小径有髄 線維が,変性下期を通じて常に認められる.これは井 村1),谷口2),中村3)らの光顕による知見に一致する.

この線維の由来に関しては,今回の実験結果からは断 定できないが,可能性として第1は下腹動脈神経その 他に由来する外来性の遠心性神経線維,第2に骨盤神 経節内の局所ノイロンの節後線維などである.

 無髄神経線維の二次変性についての電顕的報告は,

有髄線維のそれに比較し非常に少なく62)65)94),無髄神 経の変性が有髄に比し,かなり遅れることを指摘して いる.著者は骨盤内臓神経切断後,少なくとも一部の 線維において,有髄神経線維とほぼ同時か,または軸 索消失の点に関してはこれよりむしろすみやかに経過 する無髄軸索を観察した.神経節内で有髄線維は髄鞘 を脱し無髄となるので,Honlinら62)64),高橋63),小 坂65)らの知見から判断すると,このように早期に変性 に陥る無髄軸索は,変性した有髄線維の終末枝に相当 するものであろう.

  ii)神経終末

 神経切断後の神経終末,ことにシナプス部の変性像 に関する電顕的知見は,De Robertis 9)がモルモット の一側の蝸牛を破壊後の前庭神経核について観察して 以来,多数の報告がある.末梢神経系に関するもの は,交感神経節20)弓24)と神経筋接合部25)26)で見られ る. 中枢神経系では,哺乳類の外側膝状体12)17)18)98)一

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