1 ニュートン (Newton) の運動の 3 法則
1.1 第 2 法則 (ニュートンの運動方程式)
¨§戸田§2-2¥¦t: 時刻 , r(t): 位置ベクトル,v(t) = dr
dt (t): 速度ベクトル,a(t) = d
2r
dt
2(t): 加速度ベクトル.
物体の加速度 a(t) は, 物体の受ける 力 ベクトル F(t) で決まる.
加速度 a(t) の向き: 力 F(t) の向きと同じ.
加速度 a(t) の大きさ: 質量 m に反比例, 力 F(t) の大きさに比例.
a(t) = 1
m F(t) すなわち m d
2r
dt
2(t) = F(t) (1.1)
これを ニュートンの運動方程式 という.
【注】式 (1.1) は左辺も右辺もベクトル.従って式 (1.1) は左辺の各成分と右辺の各
成分が等しいという 3 つの式をまとめて書いたもの.
基本ベクトル i, j, k を使って F(t) = F
x(t)i + F
y(t)j + F
z(t)k と成分で書くと運動方程式は m d
2x
dt
2(t) = F
x(t), (1.2)
m d
2y
dt
2(t) = F
y(t), (1.3)
m d
2z
dt
2(t) = F
z(t). (1.4)
となる。
【注】i = (1, 0, 0), j = (0, 1, 0), k = (0, 0, 1)
位置 r(t)
微分
→
積分
← 速度
v(t) =
drdt(t)
微分
→
積分
←
加速度 a(t) =
ddt22r(t)
比例(定数m)
←→
運動方程式
力 F(t)
(例題 1) 時刻を表す変数を t とするとき, 質量 m = 4 のある粒子の位置ベクトルの x 成分が x(t) =
14(1 − e
−4t) + 1 であるとする.速度ベクトルの x 成分,v(t) =
dxdt(t) と加速度ベクトル の x 成分, a(t) =
ddt2x2(t) を求めなさい.また,この粒子に働く力の x 成分 F (t) を求めなさい.
速度は,
dx
dt (t) = d dt
µ 1
4 (1 − e
−4t) + 1
¶
= e
−4t. (1.5)
加速度は,
d
2x
dt
2(t) = dv
dt (t) = d
dt e
−4t= −4e
−4t. (1.6) 力は,
F = m d
2x
dt
2(t) = −16e
−4t. (1.7)
(例題 2)
質量 m の物体に重力 F = −mgk = (0, 0, −mg) がはたらいている. このとき, 物体の運動は, r(t) = − 1
2 g t
2k + A t + B (1.8)
と書ける. ただし, A, B は時間によらないベクトル. これが第 2 法則 (1.1) を満たすことを示し なさい.
dr(t)
dt = −g t k + A, d
2r(t)
dt
2= −g k より,式 (1.1) の左辺と右辺が等しいことがわ かる。
1.2 第 1 法則 ( 慣性の法則 )
¨§戸田§2-1¥¦第 2 法則で, F = 0 のとき,
m d
2r
dt
2(t) = 0 (1.9)
となる.これは 「物体は, ‘力’ の作用を受けないかぎり, 等速直線運動をする」 ことを意味 する。(特に, 速度 0 すなわち静止の場合もある)
慣性: 物体が運動状態をそのまま保持しようとする性質.
例: エアホッケーのパック, 電車の中の風船
例でないもの: 地面を転がるボール, 自転車, 自動車.
観測者は地面に固定されているとは限らない.
等速直線運動する電車, 飛行機, エレベータでもよい.
このような,外から力が作用しない物体が静止あるいは等速直線運動を続けるような座標系を 慣性系 と呼ぶ。
加速, 減速する電車やエレベータ, 自転する地球 では成り立たない.
1.3 第 3 法則 (作用 · 反作用の法則)
¨§戸田§2-3¥¦物体 1 が物体 2 に力 F
12を及ぼすとき, 物体 2 も物体 1 に力 F
21を及ぼす. その向きは反対, 大 きさは同じ.
F
12= −F
21(1.10)
例: 銃の発射の反動. 地球とりんご (重力). 下敷と髪の毛 (電気力), 水に浮かぶ 2 せきのボート
で, 一方がもう一方を押したとき.
(参考) 作用・反作用の法則から運動量保存の法則 (
§戸田p.24¦) が導かれる.
2 つの物体が衝突する場合,あるいは一般に互いに力を及ぼしあう場合,他から何の力も受け ないならば,2 つの物体の運動量の和は一定である.
1.4 運動方程式を解く
しばらく, 運動が x 方向に限られた場合を考えよう. つまり,
r(t) = (x(t), 0, 0), v(t) = (v(t), 0, 0), a(t) = (a(t), 0, 0), F = (F, 0, 0) (1.11) である場合を考えよう.
力 (の x 成分) F が与えられたときに, 運動方程式を解いて t の関数 x(t) を求めるのが, 力学 の典型的な問題.
(例題 3)
時間を表す変数を t とする. 質量 m = 1 の物体が, 力 F = e
−tを受けて運動している. 時刻 t = 0 で x = 0 に静止していた物体の運動を求めなさい.
言葉の使い方:
運動を求めよ ⇔ 時刻 t での位置 x(t) を t の関数として表せ.
静止していた ⇔ 速度が 0 だった ⇔ v(0) = 0.
運動方程式は
d
2x
dt
2(t) = e
−t(1.12)
となる。 v(t) = dx(t)/dt を用いて 1 階微分だけで書くと, dv
dt (t) = e
−t(1.13)
となる.両辺を t で (不定) 積分して,
v(t) = −e
−t+ C
1C
1:積分定数 (1.14) を得る。v(t) = dx
dt (t) なので,上の式より dx
dt (t) = −e
−t+ C
1(1.15)
が得られる.
両辺を t でもう一度 (不定) 積分して,
x(t) = e
−t+ C
1t + C
2C
2:積分定数 (1.16) が得られる.問題の与えている条件,
v(0) = 0 = −e
0+ C
1(1.17)
x(0) = 0 = +e
0+ C
1· 0 + C
2(1.18) を満たすように C
1,C
2を決めると C
1= 1, C
2= −1 を得る。
以上より
x(t) = e
−t+ t − 1. (1.19)
これで運動方程式が ‘解けた’ (t の関数 x(t) が求まった).
解が求まったら検算をしよう.
x(t) =e
−t+ t − 1. x(0) =0. (1.20)
v (t) = dx
dt (t) = −e
−t+ 1. v(0) =0. (1.21)
a(t) = d
2x
dt
2(t) = +e
−t. (1.22)
よって, (1.19) は確かに問題の条件を満たす運動方程式の解になっている.
運動方程式 を解くために積分 (2 回!) すると, 積分定数 (2 個) が出てくる. これを決定する のに, 初期条件 ( 2 個. 今なら x(0), v(0)) を使う.
1.5 力の働かないときの 3 次元の運動
力が働かない ⇔ F = 0 = 0i + 0j + 0k Ã
m
ddt22x(t) = 0, m
ddt22y(t) = 0, m
ddt22z(t) = 0.
(1.23)
x(t) は, 上の方法で求められる.
dv
dt (t) = 0 より v(t) = C
1. (C
1は積分定数) (1.24) よって,
dx
dt (t) = C
1より x(t) = C
1t + D
1. (D
1は積分定数) (1.25) y, z 成分も同様.
x(t) = C
1t + D
1, y(t) = C
2t + D
2, z(t) = C
3t + D
3,
別の書き方
x(t) y(t) z(t)
=
C
1C
2C
3
t +
D
1D
2D
3
(1.26)
または
r(t)=C t+D . (1.27)
ここで
C =
C
1C
2C
3
, D =
D
1D
2D
3
(1.28)
等速直線運動 ! · · · 第 1 法則の結論 C
1, C
2, C
3, D
1, D
2, D
3は積分定数.
D C
t=0
t=2 t=1
O
1.6 微分方程式
未知関数 x(t) に関する方程式で, 微分を含んでいるものを 微分方程式 という.
求めるのは未知数でなく未知関数!
関数 x(t) を求めることを, 微分方程式を解く (微分方程式を積分する) という.
x(0) = 0 や
dxdt(3) = 2 のような, 特定の時刻 t についての条件を, 初期条件 という.
ここまで出てきた微分方程式はいちばん簡単なタイプ. (2 階常微分方程式の中の特別に簡単な
もの)
2 変数分離型微分方程式
ここでの目標
• 空気抵抗の力 (だけ) を受ける物体の運動方程式が書ける.
• 変数分離型微分方程式が解ける.
2.1 空気抵抗のある場合の運動
¨§戸田p.34¥¦空気抵抗だけを受ける, 1 次元の運動を考えよう. たとえば, エアホッケーのパックの運動.
物体の受ける 空気抵抗 は, 向きは速度 v(t) =
dxdt(t) と反対向き, 大きさは速さ |v(t)| = |
dxdt(t)|
に比例 (比例定数は k) する場合を考える.
空気抵抗の力の大きさ |F | = k|v(t)| = k
¯ ¯
¯ ¯ dx dt (t)
¯ ¯
¯ ¯ (k は正の比例定数) (2.1) 向きまで考えると
空気抵抗の力 F =
−|F | ; 物体が右向きに運動
|F | ; 物体が左向きに運動
= −k × dx
dt (t) (2.2)
力の符号がこれでよいことを確かめる. −: 物体が右向き, +: 物体が左向きの運動.
速度
dxdt(t) 力 F = −k
dxdt(t) 右向き (+) (−) × (+) = (−) 左向き (−) (−) × (−) = (+)
−k ×
dxdt(t) の − は速度ベクトルと反対向きの力であることを意味する.
x 0
v>0 v<0
F<0
F>0
-1
質量を m とすると運動方程式は,
m d
2x
dt
2(t) = −k dx
dt (t) (2.3)
となる.1 階微分で書こう. v(t) =
dxdt(t) を用いると上の式は dv
dt (t) = − k
m v(t). (2.4)
となる.
微分すると自分の −k/m 倍になる関数を思いつけば
v (t) = Ce
−m tk. C : 積分定数 (2.5)
となることがわかる。
思いつかない場合に備えて,しばらくこのタイプの微分方程式の解き方を考えよう.
2.2 変数分離型微分方程式の解き方
¨§和達p.66¥¦(例題 2.1) 次の性質を満たす関数 x(t) を求めよう.
dx
dt (t) = 2x(t), 初期条件 x(0) = 4. (2.6)
(文字 v を x に変えましたが, 深い意味はありません).
(間違いの例 1.) 両辺を ‘積分’ して,
x = x
2+ C. よって x = +1 + √
1
2− 4C
2 . (2.7)
x は t の関数 x(t) のはずでは?
間違った点: 左辺は t で, 右辺は x で積分してしまった 両辺を t で積分する (両辺に R
· · · dt をつける) なら間違いではないが;
(間違いの例 2.) 両辺を t で積分して,
x(t) = Z
2x(t)dt + C. (2.8)
正しくない点: 右辺に未知関数 x(t) が残っているので,解を求めたことになっていない.
2 次方程式 x
2+ 2x + 1 = 0 の解を x = −
12(x
2+ 1) と答えるようなもの.
正しい解き方の例
dx
dt (t) =2x(t) (2.9)
まず x(t) を左辺に集める. 今の式には t はないが, あれば右辺に集める. 以下の例題を参照.
1 x(t)
dx
dt (t) =2 (2.10)
両辺を t で積分
Z 1 x(t)
dx
dt (t) dt = Z
2 dt (2.11)
ここで,
右辺 = Z
2 dt = 2t + C
1. (2.12)
一方, 左辺で積分変数を t から s = x(t) に変えて置換積分をすると ds = ds
dt dt = dx
dt (t) dt (2.13)
なので,
左辺 = Z 1
s ds = log |s| + C
2= log |x(t)| + C
2. (2.14) よって,
log |x(t)| = 2t + C
0(2.15) を得る。ここで C
0= C
1− C
2とおいた.指数関数と対数関数は逆関数の関係にあるので
|x(t)| = exp (log |x(t)|) = exp(2t + C
0) = C
00exp(2t) (2.16) となる.ここで C
00= exp(C
0) とおいた.これより x(t) = C
00exp(2t) か x(t) = −C
00exp(2t) と なる.どちらの場合も
x(t) = C exp(2t), C は積分定数 (2.17)
の形をしている.上の式 (2.17) が式 (2.6) の微分方程式の一般解である.積分定数 C は初期条 件 x(0) = 4 を満たすように決める;x(0) = C exp(0) = C より,C = 4 となる。以上から式 (2.6) の解は
x(t) = 4 e
2t(2.18)
となる。
空気抵抗のある場合の運動の解 dv
dt (t) = − k
m v(t), v (0) = 2 (2.19)
の解を求める.
1 v(t)
dv
dt (t) = − k
m (2.20)
の両辺を
t
で積分する.(
左辺の積分) = Z 1
v(t) dv(t)
dt dt
置換積分= Z 1
v dv = log |v| + C
1(2.21)
(
右辺の積分) = − k m
Z
dt = − k
m t + C
2(2.22)
より
log |v(t)| = − k
m t + C
0(C
0= C
1− C
2) (2.23)
両辺の
exp
をとってe
log|v(t)|= exp µ
− k
m t + C
0¶
(2.24)
|v(t)| = exp µ
− k m t
¶
e
C0(2.25)
v(t) = ± e
C0exp µ
− k m t
¶
(2.26)
±e
C0 は任意の実数値をとれる.
これを積分定数C
とおく. v(t) =C exp
µ
− k m t
¶
(2.27)
初期条件
v(0) = 2
より, C = 2
v(t) =2 exp µ
− k m t
¶
(2.28)
これが答えとなる
.
v(t) のグラフ m = 1,k = 1, 2
k
k
t v
2.3 一般の変数分離形 上で見た解き方は,
dx
dt (t) = f (x)g(t) (2.29)
のような形 ( 変数分離形 ) のときに使える.
( 解き方の手順 )
(1) x を左辺に,t を右辺に集める;
1 f(x(t))
dx(t)
dt = g(t) (2.30)
(2) 両辺を t で積分する; Z 1 f (x(t))
dx(t) dt dt =
Z
g(t) dt (2.31)
(3) 上の式の左辺は積分変数を t から x に変えて x の積分の形にする;
Z dx f(x) =
Z
g(t) dt (2.32)
いままにでてきた微分方程式も, 実は変数分離形と思える. 当面, すべての微分方程式はまずこ の方法を試してみよう.
変数分離形でない例
dx
dt (t) = t + x(t) (2.33)
右辺が掛け算になっていない.
例. 落体の運動 運動方程式は,
m dv
dt (t) = −mg (2.34)
これは変数分離形 ( f(x) = 1, g(t) = −g などと思える). 上の解き方の手順 (2.32) より Z
1 dv = Z
(−g) dt (2.35)
v(t) = − gt + C, (C は積分定数) (2.36)
( 例題 2.2)
dx
dt (t) = −t x(t), x(0) = 2. (2.37)
を解こう (答 2.2)
式 (2.32) で f(x) = x,g(t) = −t とおいて Z dx
x = − Z
t dt (2.38)
log(|x|) = − 1
2 t
2+ C
0(2.39)
|x| =e
C0exp µ
− 1 2 t
2¶
(2.40) x =C exp
µ
− 1 2 t
2¶
C; 積分定数 (2.41)
ただし上で x の正負にあわせて ±e
C0を C とおいた.初期条件より C = 2;
x(t) = 2 exp ¡
−
12t
2¢
(2.42)
[問] 次の微分方程式を, それぞれ, 初期条件のもとで解こう.
dx
dt (t) = −3x(t), x(0) = 2. Ãx(t) = Ce
−3t, C = 2. (2.43) dx
dt (t) = −x(t)
2, x(0) = 2. Ãx(t) = 1
t + C , C = 1/2. (2.44) dx
dt (t) = −t
2, x(0) = 2. Ãx(t) = − 1
3 t
3+ C, C = 2. (2.45) dx
dt (t) = −1 − x(t), x(0) = 2. Ãx(t) = −1 + Ce
−t, C = 3. (2.46)
3 空気抵抗のある場合の落下運動
ここでの目標
• 空気抵抗の力と重力の両方を受けて鉛直方向にだけ運動する物体の運動方程式が書ける.
• 部分分数展開を用いて変数分離型微分方程式が解ける.
3.1 鉛直方向の運動
¨§戸田p.34¥¦質量 m の物体が重力 −mg と速さに比 例する空気抵抗の力 −k
dzdt(t) のもとで 運動する. ただし,鉛直上向きに z 軸を とり, 時刻 t での物体の位置を z(t) と した.
-1
g
g
空気抵抗による力は
k ×
+ ¯
¯
dzdt
(t) ¯
¯ (
dzdt(t) < 0, ↓)
− ¯ ¯
dzdt
(t) ¯ ¯ (
dzdt(t) > 0, ↑)
= k × (−1) × dz(t)
dt (3.1)
と表される。この式 (3.1) の符号がこれでよいことを確認しておこう;
速度
dzdt(t) (−1) ×
dzdt(t) 下向き ↓ (−) (−) × (−) = (+) 上向き ↑ (+) (−) × (+) = (−) k × (−1) × dz(t)
dt の (−1) は速度ベクトルと反対向きの力であることを意味する.
運動方程式は
m d
2z(t)
dt
2= − mg − k dz(t)
dt (3.2)
となる.式 (3.2) を解こう.
まず速度 v(t) = dz
dt (t) についての微分方程式は次のようになる;
dv(t)
dt = −g − k
m v(t). (3.3)
この式は変数分離型なので,
Z dv
v +
m gk= − k m
Z
dt (3.4)
と変形できる。以下 log
¯ ¯
¯v + m g k
¯ ¯
¯ = − k
m t + C
0¯ ¯
¯v + m g k
¯ ¯
¯ = C
00exp
³
− k m t
´
; C
00= e
C0v + m g
k = C exp ³
− k m t ´
; C = ±C
00より
v(t) = − mg
k + Ce
−m tk(3.5)
が得られる.v(t) = dz(t)
dt なので,式 (3.5) をもう一度, t について積分すると z(t) が得られる;
式 (3.5) の左辺の積分 = z(t) 式 (3.5) の右辺の積分 = C
2− mg
k t + C
1e
−mkt; C
1= − m
k C から
z(t) = C
2− mg
k t + C
1e
−m tk(3.6)
となる。
[問] 時刻 t = 0 に位置 z = h から初速度 v
0で物体を落下させた時の物体の運動を求めなさい.
[答] v(0) = v
0,z(0) = h となるように積分定数を定める。まず式 (3.5) より C = m g
k + v
0と なる.C
1= −
mkC なので式 (3.6) より C
2= h − C
1= h + m
2g
k
2+ m
k v
0となる.
以上より以下が得られる
v(t) = − mg k +
³
v
0+ mg k
´
e
−mk t(3.7)
z(t) = h − mg
k t + m k
³ mg k + v
0´ ³
1 − e
−mk t´
(3.8)
下の図は g = 9.8[m/s
2],h = 1[m],v
0=5[m/s], k/m =3[s
−1] の場合に v(t) と z(t) を t に対し て描いた.細い線は空気抵抗が無い場合 (k = 0) を示す.
0.5 1 1.5 2
−6
−4
−2 2 4 6
v(t)
t v
0.5 1 1.5 2
−4
−3
−2
−1 1 2 3
Z(t)
t
終端速度
§戸田p.56¦上の解から, t → ∞ で初速度 v
0によらず v(t) → v
∞= − mg
k となることがわかる. この v
∞を 終端速度 という. 終端速度は, 微分方程式を解かなくても次のように得ることができる;
t → ∞ で v(t) → v
∞(定数) となることが予想できるので,v = v
∞を運動方程式 (3.3) に代入 する. dv
∞dt = 0 なので
0 = −g − k
m v
∞(3.9)
より,v
∞= − mg
k が得られる.
【注】 t → ∞ で v(t) が v
∞に近づくことは運動方程式 (3.3) を v
∞を用いて dv (t)
dt = − k
m (v(t) − v
∞) (3.10)
と書き換えるとわかりやすい.この式から v(t) < v
∞の場合 dv(t)
dt > 0 となり v (t) は増加 v(t) > v
∞の場合 dv(t)
dt < 0 となり v (t) は減少 することがわかる.つまり v(t) は常に v
∞に近づくように変化する.
O dv(t)/dt
v
v
v(t) ߪᷫዋ v(t) ߪჇട
実際の抵抗力は速度の大きさに比例する力と速度の大きさの 2 乗に比例する力の和であり,物 体の速さが大きくなると 2 乗に比例する力が重要になってくる.
今度は,速度の大きさの 2 乗に比例する空気抵抗と重力とを受ける物体の落下運動を考えよう;
空気抵抗による力は
−k
2×
¯ ¯
¯ ¯ dz (t) dt
¯ ¯
¯ ¯ dz(t)
dt (3.11)
と表される.(符号がこれでよいことを確認すること.) 運動方程式は, m d
2z(t)
dt
2= −m g − k
2¯ ¯
¯ ¯ dz(t) dt
¯ ¯
¯ ¯ dz(t)
dt (3.12)
となる.これより速度 v(t) = dz(t)
dt に対する微分方程式は以下となる;
dv(t)
dt = −g − k
2m |v(t)| v(t) (3.13)
[答] v(t) = v
∞を式 (3.13) に代入して得られる 0 = −g − k
2m |v
∞| v
∞より |v
∞| v
∞= − g m k
2が得 られる.これより v
∞< 0 がわかるので以下となる;
v
∞= − r g m
k
2この値に v(t) が t → ∞ で近づくことは式 (3.13) の右辺を v に対して描いた下の図よりわ かる;
dv(t)/dt
v
- g
v
Ov(t) ߪჇട v(t) ߪᷫዋ
[問] 時刻 t = 0 に, 速度 v
0(< 0) で物体を落下させる.速度 v(t) =
dzdt(t) を求めなさい.
[答] 問題の運動では, 常に v(t) = dz(t)
dt < 0 であるので, v(t) に対する微分方程式 (3.13) は dv(t)
dt = −g + k
2m v(t)
2(3.14)
となる.
部分分数展開
上の微分方程式 (3.14) を解こう. 記号が多いとややこしいので, まず, dv (t)
dt = k
2m
µ
v(t)
2− mg k
2¶
(3.15)
で a = k
2m , b = q
mgk2
とおいて記号を整理する;
dv (t) dt = a
³
v(t)
2− b
2´
, 初期条件 v(0) = v
0(3.16)
上の微分方程式は変数分離形となっているので,まず 1
v(t)
2− b
2dv(t)
dt = a (3.17)
と変形してから両辺を t で積分すると
Z 1
v(t)
2− b
2dv(t)
dt dt = a Z
dt (3.18)
となる.左辺の積分は積分変数を t から v に変えると
Z 1
v
2− b
2dv (3.19)
となる.ここで
1
v
2− b
2= A
v − b + B
v + b (3.20)
とおいて, A, B を上の等式が成り立つように決めて得られる 部分分数展開 1
v
2− b
2= 1 2b
µ 1
v − b − 1 v + b
¶
(3.21) を利用すると,以下のように積分が式の形で求まる;
Z 1 2b
µ 1
v − b − 1 v + b
¶ dv =a
Z
dt (3.22)
1
2b (log |v − b| − log |v + b|) =at + C , C は積分定数 (3.23) 以下,v(t) = · · · の形に変形していく;
log
¯ ¯
¯ ¯ v − b v + b
¯ ¯
¯ ¯ = 2 a b t + C
0すなわち v − b
v + b = ±e
C0· e
2abtC, C
0は積分定数. C
00= ±e
C0とおく. ここで C
00を決めておく. 初期条件により, t = 0 のとき v(0) = v
0なので,
C
00= v
0− b v
0+ b . 元に戻って, 分母を払った
{v (t) − b} = C
00· e
2abt{v(t) + b}
は v(t) について 1 次方程式なので, v(t) について解くと, v(t) = b × 1 + C
00e
2abt1 − C
00e
2abt= −b × C
00+ e
−2abtC
00− e
−2abtとなる.計算の途中で使った記号 a =
km2, b = q
mg
k2
を元に戻すと,
v(t) = − q
mgk2
× C
00+ e
−2rk2g m ·t
C
00− e
−2rk2g m ·t
= − q
mgk2
1 + 2 e
−2rk2g m ·t
C
00− e
−2rk2g m ·t
(3.24)
ここで C
00は以下で与えられる;
C
00=
v
0− q
mg k2
v
0+ q
mg k2
. (3.25)
ここで, e
−2rk2g m ·t
→ 0 (t → ∞) より,確かに初期値 v
0に関係なく時間が経過すると v (t) → v
∞= −
r mg
k
2(3.26)
となる.
(参考) v (t) = dz(t)
dt なので式 (3.24) を t について積分すると z(t) が得られる;
z(t) = 式 (3.24) の右辺の積分 = − q
mgk2
Z
dt − 2 q
mgk2
Z e
−2rk2g m ·t
C
00− e
−2rk2g m ·t
dt
= −
q
mgk2
t − m k
2Z d dt log
¯ ¯
¯ ¯
¯ C
00− e
−2rk2g m ·t
¯ ¯
¯ ¯
¯ dt
= −
q
mgk2
t − m k
2log
¯ ¯
¯ ¯
¯ C
00− e
−2rk2g m ·t
¯ ¯
¯ ¯
¯ + C
3, C
3; 積分定数 (3.27) 下の図は g = 9.8[m/s
2],z(0) = 1[m],v
0=-1[m/s], k
2/m =3[s
−1] の場合に v(t) と z(t) を t に 対して描いた.細い線は空気抵抗が無い場合 (k
2= 0) を示す.
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
−3
−2.5
−2
−1.5
−1
−0.5
v(t) t
v
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
−2
−1.5
−1
−0.5 0.5 1 1.5
Z(t)
t
4 空気抵抗のある 3 次元の運動
4.1 空気抵抗がない場合の放物運動
¨§戸田p.52¥¦鉛直方向に z 軸, 水平面内に x, y 軸をとる. 地表の高さ
を z = 0 とする.
xy z
- mg
ਅ
㋦⋥ਅะ߈
㋦⋥ะ߈
㊀ജ
᳓ᐔ
地表近くの, 質量 m の物体には, 大きさ m g, 鉛直下向きの 重力
F = (F
x, F
y, F
z) = (0, 0, −mg) (4.1) が働く.g = 9.8 · · · [m/s
2] は 重力加速度 の大きさを表す.
運動方程式
m
ddt2x2(t) = 0 m
ddt22y(t) = 0 m
ddt22z(t) = −mg
(4.2)
の解は
x(t) = V
xt + C
x, y(t) = V
yt + C
y,
z(t) = −
12gt
2+ V
zt + C
z.
(4.3)
となる.V
x, V
y, V
z, C
1, C
2, C
3は積分定数.2 階 の微分方程式が 3 個あるので 2 × 3 = 6 個の積 分定数が解に現れる..
簡単のため, C
x= C
y= C
z= 0, V
y= 0 の場合を考える;
y(t) =0, (4.4)
x(t) =V
xt, (4.5)
z(t) = − 1
2 gt
2+ V
zt. (4.6)
x(t) の式と z(t) の式から t を消去して運動の 軌跡 を求めると;
z = − 1 2
g
V
x2(x − x
m)
2+ z
m(4.7)
ただし,
x
m= V
xV
zg , z
m= V
z22g . (4.8)
となる.これは 放物線 を表す.
4.2 空気抵抗がある場合の放物運動
§戸田p.55¦重力の他に, 速さに比例する空気抵抗の力 (比例定数 k > 0) があるとする. z 軸の正の向きの方 向の単位ベクトルを k = (0, 0, 1) とかくと,質量 m の物体の運動方程式は
m d
2r
dt
2(t) = −mgk − k dr
dt (t). (4.9)
となる.r(t) = (x(t), y(t), z(t)) は時刻 t の物体の位置ベクトルを表す.成分で書くと m d
2x
dt
2(t) = − k dx
dt (t) , (4.10)
m d
2y
dt
2(t) = − k dy
dt (t) , (4.11)
m d
2z
dt
2(t) = − mg − k dz
dt (t) (4.12)
となる.まず, v
x(t) =
dx(t)dt,v
y(t) =
dy(t)dtv
z(t) =
dz(t)dtとおいて v
x(t),v
y(t),v
z(t) に対する 1 階の微分方程式;
dv
xdt (t) = − k
m v
x(t) , (4.13)
dv
ydt (t) = − k
m v
y(t) , (4.14)
dv
zdt (t) = − g − k
m v
z(t) (4.15)
が得られる.式 (4.13) は §2.1 の式 (2.4) や (2.19) と同じ形なので,式 (2.5) や (2.27) から v
x(t) = dx(t)
dt = C
1e
−m tkC
1; 積分定数 (4.16) であることがわかる.t についてもう一度積分して x(t) が得られる;
x(t) = C
2− m
k C
1e
−m tkC
2; 積分定数 (4.17)
時刻 t = 0 での物体の x 座標を x
0,速度の x 成分を V
xとすると,C
1= V
x,C
2= x
0+
mkV
xとなる
v
x(t) = V
xe
−m tk(4.18)
x(t) = x
0+ m k V
xµ
1 − e
−m tk¶
(4.19)
y(t) の満たす微分方程式は x(t) と同じ形のなので, 時刻 t = 0 での物体の y 座標を y
0,速度 の y 成分が V
yの場合に以下が得られる;
v
y(t) = V
ye
−m tk(4.20)
y(t) = y
0+ m k V
yµ
1 − e
−m tk¶
(4.21)
次に,式 (4.14) は §3.1 の式 (3.3) と同じ形なので,式 (3.7),(3.8) より v
z(t) = − mg
k +
³
V
z+ mg k
´
e
−mk t(4.22)
z(t) = z
0− mg
k t + m k
³ mg k + V
z´ ³
1 − e
−mk t´
(4.23)
となる。ただし,時刻 t = 0 での物体の z 座標を z
0,速度の z 成分を V
zとした.
終端速度
終端速度 v
∞= lim
t→∞
v(t) は次のようになる;
v
∞=
³
0 , 0 , − m g k
´
(4.24)
[問] 質量 m の物体を水平面から速度の大きさ V ,水平面からの角度 θ で投射する.物体には
重力 (重力加速度の大きさ g) と速度の大きさに比例する空気抵抗 (比例定数 k) がはたらく.物
体の位置が最も高くなった時,物体は投射した点から水平方向にどれだけ離れた点の真上にあ るかを答えなさい.
[答] 鉛直上向きに z 軸をとり,z = 0 が水平面となるように z 軸の原点をとる.また,物体の 初速度ベクトルが x − z 平面内になるように x 軸をとる.物体を投射した時刻を t = 0 とする と,式 (4.18)-(4.23) に現れる定数は
V
x= V cos(θ) , V
y= 0 , V
z= V sin(θ) , x
0= 0 , y
0= 0 , z
0= 0 (4.25)
となるので物体の運動は次の式で表される
v
x(t) = V cos(θ) e
−m tk(4.26)
x(t) = m
k V cos(θ) µ
1 − e
−m tk¶
(4.27)
v
y(t) = 0 , y(t) = 0 (4.28)
v
z(t) = − mg k +
³
V sin(θ) + mg k
´
e
−mk t(4.29)
z(t) = − mg
k t + m k
³ mg
k + V sin(θ)
´ ³
1 − e
−mk t´
(4.30) 物体の位置が最も高くなるのは dz(t)
dt = v
z(t) = 0 となるときなので,その時刻を t = t
1とす ると
0 = − mg k + ³
V sin(θ) + mg k
´
e
−mk t1(4.31)
となる.これを式 (4.27) に代入して
x(t
1) = m
k V cos(θ) µ
1 − e
−m tk 1¶
= m
k V cos(θ) Ã
1 − 1
1 +
V sin(θ)mg k!
= V
2sin(θ) cos(θ) Áµ
g + V sin(θ)k m
¶
(4.32)
が得られる.物体が最高点に達した時,物体は投射した点から水平方向に上記の x(t
1) だけ離 れた点の真上にある.
下の図は g = 9.8[m/s
2],V =10[m/s],θ = π/4[rad],k/m =1[s
−1] の場合を示す.細い線は空 気抵抗が無い場合 (k = 0) を示す.
(参考) 物体が再び水平面に達した時の投射点からの距離 R(θ) を最大にする θ の値 θ
maxは
k が増加すると小さくなる.
5 斜面に沿う運動と摩擦力
.
¨
§
¥ 戸田3-2¦
ここでの目標
• 斜面をすべる物体に働く力 (重力, 垂直抗力 , 摩擦力 ) を理解し,運動方程式が たてられる.
以下, i, j, k は基本ベクトル ( x, y, z 軸の正の向きの単位ベクトル) です.
5.1 なめらかな水平面上の運動 (摩擦なし)
力を受けずに水平でなめらかな机の面をすべる運動を考 える. z 軸を鉛直上向きにとり,x-y 平面が机の面となる ように z 軸の原点 z = 0 を決める.
z x
-mg N=mg
dx/dt
物体には重力 −mgk = (0 , 0 , −mg) と机から物体を支える力 N = N k = (0 , 0 , N) がはたら く. N は面に垂直で上向きであり, 垂直抗力 と呼ばれる. (N の大きさは以下で説明する. ) 時刻 t での物体の位置ベクトルを r(t) = (x(t) , y(t) , z(t)) とすると運動方程式は
m d
2r(t)
dt
2= −mgk + N (5.1)
となる.運動方程式の x 成分と y 成分は m d
2x(t)
dt
2= 0 , m d
2y(t)
dt
2= 0 (5.2)
となる.また,運動方程式の z 成分は m d
2z(t)
dt
2= −mg + N (5.3)
となる.全ての時刻に対して z(t) = 0 であるという 運動に対する制限条件 を運動方程式 (5.3) に代入すると
0 = −mg + N より N = mg (5.4)
となり垂直抗力の大きさ N が決まる.
今までは,与えられた力のもとに運動方程式を解いて物体の運動を求めていた.この例のよう に物体の運動にかせられた制限条件 ( 拘束条件 とか 束縛条件 とか呼ばれる,この例で
は z(t) = 0) から,運動方程式を用いて,物体の運動を制限する力 ( 拘束力 とか 束縛力
とか呼ばれる,この例では垂直抗力 N) が求まる場合がある.
わかっている力
運動方程式
→
物体の運動 運動に対する 制限条件
運動方程式